(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、一実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
まず一実施の形態の半導体装置の構成について、
図1〜
図5を用いて説明する。
【0014】
図1を参照して、一実施の形態の半導体装置は、半導体ウェハWFRの一部として切り取られた半導体チップCHPとして形成されている。半導体チップCHPの本体は主表面を有するたとえばシリコンの単結晶としての半導体基板である。半導体チップCHPの主表面上には、配線構造領域MCRと、発振子領域OCRと、ガードリング形成領域GRRとを有している。
【0015】
配線構造領域MCRとは、たとえばいわゆるMCU(Micro-Control Unit)と呼ばれる、1つの半導体チップCHPにいわゆるCPU(Central Processing Unit)、メモリ、入出力回路などを有する集積回路(マイコン製品)が配置された領域である。配線構造領域MCRには上記の集積回路(マイコン製品)と少なくとも1層(通常は複数の層)の金属配線により電気的に接続されるいわゆる(多層)配線構造が形成されている。
【0016】
発振子領域OCRとは、マイコン製品の(発振子としての)高速OCO回路が配置された領域であり、発振子領域OCRは配線構造領域MCRと並ぶように半導体チップCHPの主表面上に配置されている。ガードリング形成領域GRRとは、配線構造領域MCRと発振子領域OCRとを半導体チップCHPの基板上において互いに独立させるために(互いに対してガードするために)配置されるガードリングが配置される領域である。
【0017】
一例として、平面視における半導体チップCHPの一部(たとえば右上の領域)に矩形状の発振子領域OCRが配置され、平面視において発振子領域OCR以外の領域は配線構造領域MCRが配置される。また配線構造領域MCRと発振子領域OCRとの間に、発振子領域OCRを外側から取り囲むように、ガードリング形成領域GRRが配置されている。
【0018】
次に
図2を参照しながら、集積回路および多層配線構造について説明する。
図2を参照して、配線構造領域MCRには、たとえばMCUを含むいわゆる多層配線構造が形成されている。具体的には、配線構造領域MCRには、後述する配線層の金属配線A1〜ATが少なくとも1層(通常は複数の層)配置されている。ここでは金属配線A1〜A4および金属配線ATの5層形成されており、これら5層は互いに積層されて多層となるように配置されている。
【0019】
配線構造領域MCRにおける半導体基板SUBの主表面には、記憶と制御との双方の機能を有するいわゆるFMONOS型メモリ(図中では「FMONOS」と表記)と、論理回路としてのコアトランジスタと、入出力回路としてのI/Oトランジスタとが配置されており、これらにより集積回路が構成されている。
【0020】
FMONOS型メモリ、コアトランジスタおよびI/Oトランジスタはいずれも半導体基板SUBの主表面に形成されている。まずFMONOS型メモリは、n型不純物領域NRと、メモリゲート絶縁膜ONOと、メモリゲート電極MGと、コントロールゲート絶縁膜CIと、コントロールゲート電極CGと、側壁絶縁膜SWとを主に有している。
【0021】
半導体基板SUBの主表面にはp型ウェル領域PWLが配置されており、そのp型ウェル領域PWL内には、1対のn型不純物領域NRが、それぞれソース領域およびドレイン領域として互いに間隔をあけて配置されている。1対のn型不純物領域NRに挟まれるように、メモリゲート絶縁膜ONOとメモリゲート電極MGとからなるメモリゲートと、コントロールゲート絶縁膜CIとコントロールゲート電極CGとからなるコントロールゲートとが形成されている。
【0022】
メモリゲートとコントロールゲートとは、互いに隣り合うように配置される。このうちメモリゲートを構成するメモリゲート絶縁膜ONOは、コントロールゲートの側面に接するとともに半導体基板SUBの主表面上にまで延びる延長部を有するように形成されている。メモリゲート絶縁膜ONOは、たとえばシリコン酸化膜と、シリコン窒化膜と、シリコン酸化膜とがこの順に積層された3層構造を有している。メモリゲート電極MGは、メモリゲート絶縁膜ONOのコントロールゲートの側面に接する領域の表面および延長部の上面の双方に接するように形成されている。
【0023】
一方、コントロールゲート電極CGは、1対のn型不純物領域NRに挟まれる半導体基板SUBの主表面上に、たとえばシリコン酸化膜からなるコントロールゲート絶縁膜CIを介在して形成されている。
【0024】
次にコアトランジスタ、I/Oトランジスタは、いずれもn型MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタとp型MOSトランジスタとが組み合わせられたいわゆるCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)トランジスタである。すなわち、n型MOSトランジスタ(NMOS)は、n型不純物領域NRと、ゲート絶縁膜GIと、ゲート電極GEと、側壁絶縁膜SWとを主に有している。
【0025】
半導体基板SUBの主表面のp型ウェル領域PWL内には1対のn型不純物領域NRが、それぞれソース領域およびドレイン領域として形成されている。1対のn型不純物領域NRに挟まれるように、ゲート絶縁膜GIとゲート電極GEとからなるゲートが形成されている。ゲート絶縁膜GIは半導体基板SUBの主表面に形成された、たとえばシリコンの熱酸化膜のパターンである。
【0026】
p型MOSトランジスタ(PMOS)は、n型ウェル領域NWLに形成されており、1対のp型不純物領域PRを有する点において、n型MOSトランジスタと異なっているが、その他の点においてはn型MOSトランジスタと同様である。
【0027】
なおFMONOS型メモリ、コアトランジスタ、I/Oトランジスタのゲート電極CG,MG,GEは多結晶シリコンや金属膜などの導電体からなる。また不純物領域NR,PRの上面およびゲート電極MG,CG,GEの上面にはシリサイド層SCが形成されてもよい。ゲート電極MG,CG,GEの側壁には、たとえばシリコン酸化膜からなる側壁絶縁膜SWが形成されている。また個々のFMONOS型メモリ、NMOSおよびPMOSは、半導体基板SUBの主表面に形成された、たとえばシリコン酸化膜からなる分離絶縁膜SIにより、互いに電気的に分離されている。
【0028】
これらのトランジスタ(FMONOS、NMOSおよびPMOS)が形成された半導体基板SUBの主表面上には、たとえばシリコン酸化膜からなる層間絶縁膜II1,II2,II3,II4,II5,II6が積層されている。ここでは一例として6層の層間絶縁膜II1〜II6が形成されているが、層間絶縁膜の積層される数は任意である。
【0029】
層間絶縁膜II1,II2,II3,II4,II5のそれぞれの上面に接するように、それぞれ配線層M1,M2,M3,M4,MTが形成されている。なお配線層MTは、配線層M1〜MTのうち最上層の配線層である。
【0030】
配線層M1は金属配線A1と、その下面に接する積層膜LM1と、その上面に接する積層膜LM2とから構成される。同様に配線層M2〜M4は金属配線A2〜A4と、その下面に接する積層膜LM1と、その上面に接する積層膜LM2とから構成され、最上層の配線層MTは最上層金属配線ATと、その下面に接する積層膜LM1と、その上面に接する積層膜LM2とから構成される。積層膜LM1,LM2については後に詳述する。
【0031】
各トランジスタの不純物領域NR,PRはコンタクトCTを介在することにより、配線層M1と電気的に接続される。各配線層M1〜MTはヴィアV1,V2,V3,V4により互いに電気的に接続される。コンタクトCTおよびヴィアV1〜V4はたとえば層間絶縁膜の一部分に形成されたヴィアホールの内部に充填されたタングステンにより形成される。
【0032】
なお
図2においては一例として、層間絶縁膜II6の上面を覆うように、たとえばHDP酸化膜PSON、シリコン窒化膜SNおよびパッシベーション膜PIXがこの順に積層されている。外部の回路などと電気的に接続するために、I/Oトランジスタが形成される領域において最上層金属配線ATの上面の一部が露出している。
【0033】
配線構造領域MCRの最上層の配線層MTを構成する積層膜LM2は、
図1の発振子領域OCRにおいて、高速OCO回路などの発振子を含む回路に用いられる金属抵抗素子MRDと同一の層として形成される。言い換えれば配線構造領域MCRにおける最上層金属配線ATの上面を覆う導電膜(ここでは最上層金属配線ATの上面を覆う積層膜LM2の一部に相当する導電膜)と同一の層で金属抵抗素子層(金属抵抗素子MRDの一部)が形成されている。
【0034】
このことを示すために、
図2においては、I/Oトランジスタが形成される領域の最上層金属配線ATの上面に接する積層膜LM2が、屈曲しながら最上層金属配線ATの左側の側面上から、コアトランジスタが形成される領域のヴィアV4の上面にまで延在しており、コアトランジスタが形成される領域のヴィアV4の上面に接している。
【0035】
以上の
図2は、
図1の半導体チップCHPのうち配線構造領域MCRにおける構成のみを示している。しかし
図3においては上記配線構造領域MCRに加えてガードリング形成領域GRRおよび発振子領域OCRを含めた半導体チップCHPの構成が示される。
【0036】
図3を参照して、
図3は
図1のA−B線に沿う領域の断面構成を示しており、配線構造領域MCR、ガードリング形成領域GRRおよび発振子領域OCRにおける多層配線構造の構成を示している。ただし
図3においては層間絶縁膜II4より下方の層の図示が省略されている。
【0037】
ガードリング形成領域GRRにはガードリングGRが形成されており、ガードリングGRは、最上層金属配線ATと、その下面に接する積層膜LM1と、その上面に接する積層膜LM2とにより構成される。ガードリング形成領域GRRの最上層金属配線AT、積層膜LM1,LM2のそれぞれは、配線構造領域MCRの最上層金属配線AT、積層膜LM1,LM2のそれぞれと同一の層として配置されている。
【0038】
発振子領域OCRには、配線構造領域MCRおよびガードリング形成領域GRRの積層膜LM2と同一の層としての積層膜LM2が金属抵抗素子MRDとして配置されている。ただし発振子領域OCRには、たとえば配線構造領域MCRの最上層金属配線ATおよび積層膜LM1と同一の層は配置されていない。
【0039】
より具体的には、最上層の配線層MTが形成される層間絶縁膜II5は、配線構造領域MCRと発振子領域OCRとの間にあるガードリング形成領域GRRにおいて、やや下方に深く掘られ、段差を有する形状となっている。このためガードリングGRを構成する積層膜LM2は、最上層金属配線ATの上面上から、最上層金属配線ATの側面を通って、やや下方に深くなった層間絶縁膜II5の上面上にまで延びている。このように層間絶縁膜II5(の上面)が下方に深く掘られた態様は、ガードリング形成領域GRRと隣り合う発振子領域OCRにまで続いている。そのため発振子領域OCRにおいて、積層膜LM2は、配線構造領域MCRの積層膜LM1よりも下方に配置される。ここでは少なくとも発振子領域OCRの積層膜LM2(金属抵抗素子MRD)は、配線構造領域MCRの最上層金属配線ATの上面上の積層膜LM2よりも下方の位置に配置されることが好ましい。
【0040】
ただし実際には、
図2においては配線構造領域MCRのコアトランジスタが形成される領域の最上層金属配線ATの上面を覆う積層膜LM2と同一の層としての金属抵抗素子MRDが、コアトランジスタの形成領域に配置されている。これは現物において、発振子領域OCRから配線構造領域MCR(コアトランジスタの形成領域)にまで、両領域の間に形成されるガードリングの真下にて引き回すように、積層膜LM2が形成されるためである。
【0041】
次に
図4〜
図5を参照しながら、発振子領域OCRの金属抵抗素子についてより詳細に説明する。
【0042】
図4は
図1中の点線で囲んだ領域IVの平面視における態様である。
図4を参照して、
図2および
図3の金属抵抗素子MRDは、
図4中において金属抵抗素子MRD1,MRD2,MRD3,MRD4で示される、発振子領域OCR(高速OCO回路)における抵抗素子であり、
図4の左右方向に延在するように通常は複数(
図4においては4つ)、半導体基板SUBの主表面に沿う方向に関して互いに間隔をあけて配置されている。それぞれの金属抵抗素子MRD(MRD1〜MRD4)は延在する方向に関する両端部において、その下方の配線層M4と、ヴィアV4を介在して互いに電気的に接続されている。なお金属抵抗素子MRD1〜MRD4のパターンの加工精度を高めるため、金属抵抗素子MRD1〜MRD4の近傍には、金属抵抗素子MRD1〜MRD4と同一の層としてのダミー金属抵抗素子MRDdが配置されている。ダミー金属抵抗素子MRDdは、金属抵抗素子MRD1〜MRD4と同様の積層構成を有している。
【0043】
金属抵抗素子MRD1〜MRD4とヴィアV4を介在して互いに電気的に接続される配線層M4は、図の上下方向に並列する複数の金属抵抗素子MRD同士(MRD1〜MRD4)を互いに電気的に接続することにより、図の左方から右方へ向かう電流経路と、図の右方から左方へ向かう電流経路とが交互に組み合わされ、ジグザグ状に電流が流れる、単一の長い電流経路を形成している。
【0044】
具体的には、当該OCO回路と接続される電気経路は、まずたとえば
図2の配線層M3と同一の層として形成された導電膜である、他の導電膜Mot1から他のヴィアVot1を介在して、配線層M4と同一の層として形成された導電膜である入力用配線層Miに通じる。次に当該電気経路は、入力用配線層MiからヴィアV4を介在して金属抵抗素子MRD1に通じ、金属抵抗素子MRD1を左方から右方に流れて金属抵抗素子MRD1の右側のヴィアV4から配線層M4に通じる。さらに当該配線層M4からヴィアV4を介在して金属抵抗素子MRD2に通じ、金属抵抗素子MRD2を右方から左方に流れて金属抵抗素子MRD2の左側のヴィアV4から配線層M4に通じる。以降も同様に、配線層M4からヴィアV4を介在して金属抵抗素子MRD3に通じ、金属抵抗素子MRD3を右方へ流れて右方のヴィアV4から配線層M4に達する。その後は配線層M4からヴィアV4を介在して金属抵抗素子MRD4に通じ、金属抵抗素子MRD4を左方へ流れて左方のヴィアV4から出力用配線層Moに達する。出力用配線層Moから他のヴィアVot2を介在して、たとえば
図2の配線層M3と同一の層として形成された導電膜である他の導電膜Mot2に達する。ここで他の導電膜Mot1,Mot2は、たとえば外部の回路と電気的に接続されている。
【0045】
一方、たとえば
図4にはOCO回路の一部である抵抗等が示されている。また配線層M4には、上記のように金属抵抗素子MRDと電気的に接続されるものの他に、たとえば金属抵抗素子MRD1〜MRD4の真下を潜るように
図4の上下方向に延在するものが存在する。
【0046】
なお
図4においてはヴィアV4により金属抵抗素子MRDと接続されない、配線層M4と同一の層としての配線層M4が、
図4の上下方向に延在するように複数(ここでは5本)、互いに間隔をあけて配置されている。
【0047】
金属抵抗素子MRD1〜MRD4は、上記のOCO回路の長い電流経路の抵抗素子として配置される。上記のように金属抵抗素子MRD1〜MRD4(MRD)は配線層MTの最上層金属配線ATの上面を覆う積層膜LM2と同一の層として形成される。
【0048】
図5を参照して、
図5中の点線で囲んだ領域IIIは
図3中の点線で囲んだ領域Vに対応する。配線層M4に含まれる金属配線A4の上面を覆う積層膜LM2は、たとえば窒化チタン膜TNと、シリコン窒化膜SN1とがこの順に積層された構成である。積層膜LM2と同一の層が金属抵抗素子MRDを構成している。このため金属抵抗素子MRDもたとえば窒化チタン膜TNと、シリコン窒化膜SN1とがこの順に積層された構成である。金属抵抗素子MRDのうち窒化チタン膜TNが金属抵抗素子層Rmとして配置されており、窒化チタンで形成された、抵抗素子として機能する導電性の薄膜である。
【0049】
シリコン窒化膜SN1は俗にキャップ膜と呼ばれる酸化防止膜であり、かつ当該配線層M1〜M4などとその上層とを電気的に絶縁する。また配線層M4に含まれる金属配線A4の下面を覆う積層膜LM1は、たとえばチタン膜TIと窒化チタン膜TNとがこの順に積層された構成である。
【0050】
積層膜LM1,LM2を構成する導電膜であるチタン膜TIと窒化チタン膜TNは、金属配線A1〜A4などの上下面に接するように配置されることにより、金属配線A1〜A4と一体で配線の導電部として機能する。このため後述するように当該導電部がまとめて配線層M1〜M4と定義される。また積層膜LM1,LM2を構成する導電膜である窒化チタン膜TNは、金属配線A1〜A4中に含まれる銅原子などが外部のチタン膜TIなどの方に拡散されることを抑制する機能を有するいわゆるバリアメタル膜として形成される。
【0051】
図2および
図3の説明では配線層MTとは最上層金属配線ATと積層膜LM1と積層膜LM2とからなるものと説明しているが、実際にはチタン膜TIと窒化チタン膜TNとは導電膜であるがシリコン窒化膜SN1は絶縁膜であるため、正確には最上層の配線層MTとは導電膜である、積層膜LM1と最上層金属配線ATと積層膜LM2のうち下側の窒化チタン膜TNとにより構成されると考える。配線層M1〜M4についても同様に、積層膜LM1と金属配線A1〜A4と、積層膜LM2のうち下側の窒化チタン膜TNとにより構成されると考える。ただしガードリングGRは積層膜LM1と最上層金属配線ATと積層膜LM2との全体を合わせた領域と考える。
【0052】
したがって一実施の形態においては、少なくとも、配線構造の最上層金属配線ATの上面を覆うように形成された積層膜LM2を構成する最上層金属配線上導電膜としての窒化チタン膜TNと同一の層で、発振子領域OCRに金属抵抗素子層Rmとしての窒化チタン膜が配置されている。配線構造領域MCRの最上層金属配線ATの上面を覆う窒化チタン膜TNと金属抵抗素子層Rmとが同一の層であることは、窒化チタン膜TNと金属抵抗素子層Rmとの膜厚と組成分析(不純物の含有量などの調査)により検証可能である。殊に、ガードリングGRが配置される場合には、配線構造領域MCRの最上層金属配線ATの上面を覆う窒化チタン膜TNと、ガードリングGRの積層膜LM2を構成する窒化チタン膜TNとが同一の層であり、さらにガードリングGRの積層膜LM2を構成する窒化チタン膜TNと金属抵抗素子層Rmとが同一の層であることを検証することが好ましい。
【0053】
以上の説明において、最上層金属配線AT上の導電膜としての窒化チタン膜TNと、当該窒化チタン膜TNと同一の層として配置される金属抵抗素子層Rm(窒化チタン膜TN)とは、互いに離れた位置に独立して配置されている。
【0054】
次に
図6〜
図11を参照しながら、一実施の形態のたとえば
図2に示す半導体装置の製造方法について説明する。ただしここでは、最上層の配線層MTの製造方法を中心に説明し、
図2および
図3の層間絶縁膜II5より下側(半導体基板SUB側)の層については説明が省略される。
図6〜
図11は
図1中のA−B線に沿う領域の断面図で示される。
【0055】
図6を参照して、
図6中に示されないがたとえば
図2に示す、主表面を有するたとえばシリコンの単結晶としての半導体基板SUBが準備される。一般公知の方法により半導体基板SUBにFMONOS型メモリ、コアトランジスタおよびI/Oトランジスタが形成され、層間絶縁膜II1〜II5、配線層M1〜M4、ヴィアV1〜V4、OCO回路などが形成される。
図6には層間絶縁膜II5およびその上方の層のみ示されており、それらより下方の層は図示が省略されている。
【0056】
層間絶縁膜II5がCMP(Chemical Mechanical Polishing)と呼ばれる化学機械的研磨法によりその上面が平坦となるように研磨された後、通常の写真製版技術およびエッチング技術により、配線層M4に達するように層間絶縁膜II5にヴィアホールが形成される。上記ヴィアホールの内部には、たとえばPVD(Physical Vapor Deposition)法によりタングステンよりなる導電膜が充填され、再度CMPにより上面が平坦となるように研磨されることによりヴィアV4が形成される。
【0057】
次にたとえばPVD法によりチタン膜TIおよび窒化チタン膜TNがこの順に積層された積層膜LM1が形成され、さらにその上に、(複数層が)互いに積層されている金属配線が形成される。複数の層の金属配線のうち最上層である最上層金属配線ATが形成される。一例として、チタン膜TIは10nm、窒化チタン膜TNは20nm、最上層金属配線AT(アルミニウム銅からなる)は1μm形成される。積層膜LM1および最上層金属配線ATは、半導体基板SUBの主表面上のほぼ全面に形成される。
【0058】
次に、半導体基板SUBの主表面上のうち、配線構造領域MCRとなるべき領域(ガードリング形成領域GRRとなるべき領域の一部を含む)すなわち最上層金属配線ATが形成されるべき領域に最上層金属配線ATのパターンが残存するように、通常の写真製版技術がなされ、フォトレジストPHRのパターンが形成される。
【0059】
図7を参照して、
図6の工程において形成されたフォトレジストPHRのパターンを用いた通常のエッチング技術により、配線構造領域MCRとなるべき領域には最上層金属配線ATが形成される。ここで配線構造領域MCRとなるべき領域とは、半導体基板SUBの主表面上のうち、最上層金属配線ATを含む、少なくとも1層の金属配線が形成されて最終的に配線構造領域MCRとなるべき領域のことである。配線構造領域MCRとなるべき領域およびガードリング形成領域GRRとなるべき領域の一部に最上層金属配線ATのパターンが形成される。必要に応じてCMPにより上面が平坦となるように研磨される。
【0060】
なおここでは、(最終的に)ガードリング形成領域GRRとなるべき領域の一部および(最終的に)発振子領域OCRとなるべき領域のチタン膜TI、窒化チタン膜TNおよび最上層金属配線ATがすべてエッチング除去される。これは上記導電膜TI,TN,ATによる短絡不良の発生を抑制するためである。ガードリング形成領域GRRとなるべき領域の一部および発振子領域OCRとなるべき領域における上記導電膜TI,TN,ATを確実に除去することにより、導電膜が残存することによる短絡不良などを抑制する目的で、当該領域GRR,OCRの層間絶縁膜II5の一部がエッチングされる(オーバーエッチングされる)ようにすることが好ましい。以降においては上記の「なるべき領域」は省略される。
【0061】
図8を参照して、最上層金属配線ATの上面から、(半導体基板SUBの主表面上において配線構造領域MCRと並ぶ)発振子領域OCRにおいて(最上層金属配線ATの下面に接して配置される)層間絶縁膜II5まで延在する導電膜としての窒化チタン膜TNと、シリコン窒化膜SN1とがこの順に積層された積層膜LM2が形成される。具体的には、たとえばPVD法により一例として33nmの窒化チタン膜TNが形成された後、たとえばCVD(Chemical Vapor Deposition)法により一例として50nmのシリコン窒化膜SN1が形成される。
【0062】
ここでは配線構造領域MCRおよびガードリング形成領域GRRの一部には最上層金属配線ATのパターンが形成されるが、ガードリング形成領域GRRの一部および発振子領域OCRには最上層金属配線ATが形成されない。このため積層膜LM2は、最上層金属配線ATの上面および側面を覆い、かつ最上層金属配線ATが形成されない発振子領域OCR(ガードリング形成領域GRRの一部を含む)の最上面すなわち層間絶縁膜II5の上面を覆うように形成される。このため積層膜LM2は、最上層金属配線ATの上面から、最上層金属配線ATの側面を伝い、さらに層間絶縁膜II5の上面にまで延在するように、階段状の断面形状を有するように屈曲することが好ましい。また以上より、層間絶縁膜II5の上面を覆う積層膜LM2は、最上層金属配線ATの上面を覆う積層膜LM2よりも下方に形成されるといえる。
【0063】
図9を参照して、積層膜LM2の主表面上のうち、配線構造領域MCRにおける配線層MTが形成される領域、ガードリング形成領域GRRにおけるガードリングGRが形成される領域、および発振子領域OCRにおける金属抵抗素子MRDが形成される領域に積層膜LM2のパターンが残存するように通常の写真製版技術がなされ、フォトレジストPHRのパターンが形成される。
【0064】
図10を参照して、
図9の工程において形成されたフォトレジストPHRのパターンを用いた通常のエッチング技術により、積層膜LM2がパターニングされ、導電膜TNとシリコン窒化膜SN1とが積層されたパターン(積層膜LM2)が形成される。この積層されたパターンは、配線構造領域MCRのうち配線層MTが形成される領域、ガードリング形成領域GRRのうちガードリングGRが形成される領域、および発振子領域OCRのうち金属抵抗素子MRDが形成される領域に形成される。
【0065】
積層膜LM2が積層されたパターンは、配線構造領域MCRにおける最上層金属配線ATの真上に形成され、ガードリング形成領域GRRにおけるガードリングGRの最上層金属配線ATの上面および側面にも形成される。さらに積層膜LM2が積層されたパターンは、発振子領域OCRの層間絶縁膜II5の上面の一部にも形成される。これら3つの領域における積層膜LM2は、それぞれが互いに分離された位置に独立して配置される態様となるが互いに同一の層として形成される。
【0066】
配線構造領域MCRにおいては、最上層金属配線ATの上面を覆う最上層金属配線上導電膜TOAとして窒化チタン膜TNが形成され、積層膜LM1と最上層金属配線ATと最上層金属配線上導電膜TOA(窒化チタン膜TN)とにより、導電膜である最上層の配線層MTが形成される。そして配線層MTの上面を覆うように絶縁膜であるシリコン窒化膜SN1が酸化防止膜(キャップ膜)として形成される。配線構造領域MCRにおいては、最上層金属配線上導電膜TOAとその上のシリコン窒化膜SN1が酸化防止膜とからなる積層膜LM2が、金属配線ATの上面を覆うように形成される。
【0067】
ガードリング形成領域GRRにおいては、積層膜LM1と最上層金属配線ATとが積層された構造の上面から側面、さらにオーバーエッチングされた層間絶縁膜II5の上面にまで一体として延在するように最上層金属配線上導電膜TOAとしての窒化チタン膜TNが形成される。窒化チタン膜TNの上面を覆うようにシリコン窒化膜SN1が酸化防止膜(キャップ膜)として形成される。窒化チタン膜TNとシリコン窒化膜SN1とにより積層膜LM2が形成される。このようにして、積層膜LM1と最上層金属配線ATと積層膜LM2とからなるガードリングGRが形成される。
【0068】
発振子領域OCRにおいては最上層金属配線ATが存在しないため、層間絶縁膜II5の上面の一部に最上層金属配線上導電膜TOAと同一の層で金属抵抗素子層Rm(窒化チタン膜TN)が形成され、金属抵抗素子層Rmの上面を覆うようにシリコン窒化膜SN1が形成される。金属抵抗素子層Rm(窒化チタン膜TN)とシリコン窒化膜SN1とにより、積層膜LM2が金属抵抗素子MRDとして形成される。
【0069】
配線構造領域MCRの配線層MT、および発振子領域OCRの金属抵抗素子MRDは、層間絶縁膜II5に形成されたヴィアV4の真上に形成されることにより、ヴィアV4を介在して、ヴィアV4より下側の層と互いに電気的に接続されることが好ましい。
【0070】
図10に示す配線層MT、ガードリングGRおよび金属抵抗素子MRDが互いに分離されるように形成された態様は、
図3中の点線で囲んだ領域Xに対応する。
【0071】
これ以降については一般公知の方法により、たとえば
図2に示すいわゆるHDPシリコン酸化膜PSON、シリコン窒化膜SNおよびパッシベーション膜PIXがこの順に形成される。パッシベーション膜PIXは半導体装置全体を上方から保護するための薄膜であるが、たとえばシリコン窒化膜により形成される。以上により、一実施の形態に係る、たとえばマイコン製品が搭載された半導体装置が形成される。
【0072】
図11を参照して、これは
図10と基本的に同様の構成を有しているが、最上層金属配線ATがパターニングされる(
図7の)工程の際に領域GRR、OCRにおいて層間絶縁膜II5がオーバーエッチングされる深さが
図10よりも多く(深く)なっている。層間絶縁膜II5のエッチング量は任意であり、少なくとも発振子領域OCRに金属抵抗素子層Rmとして形成される窒化チタン膜TNのパターンは、配線構造領域MCRにおいて最上層の配線層MTを構成する、積層膜LM2の一部としての窒化チタン膜TNよりも下方(半導体基板SUB側)の位置に形成されることが好ましい。ただし
図10および
図11においてはここではたとえば配線層MTを構成する積層膜LM1よりも下方に金属抵抗素子層Rmが形成されている。
【0073】
次に
図12〜
図20の比較例を参照しながら、一実施の形態の作用効果について説明する。
【0074】
図12を参照して、比較例の半導体装置も一実施の形態の半導体装置と同様に、半導体ウェハWFRの一部として切り取られた半導体チップCHPとして形成されている。ただし比較例の半導体チップCHPの主表面上には、配線構造領域MCRと発振子領域OCRとのみが形成されており、ガードリング形成領域GRR(ガードリングGR)が形成されていない点において、
図12は
図1と異なっている。
【0075】
図13を参照して、ここでのマイコン製品を構成する集積回路と多層配線構造の構成は、基本的に
図2に示す一実施の形態に係る半導体装置と同様であるが、金属抵抗素子MRDが最上層の配線層MTの上面を覆うように形成された積層膜LM2と同一の層として形成されていない点において、
図2の構成と異なっている。具体的には金属抵抗素子MRDは(たとえば配線構造領域MCRのコアトランジスタが形成される領域において)最上層の配線層MTの上方(層間絶縁膜II6の上面上)に、最上層金属配線ATの積層膜LM2とは独立するように配置されており、金属抵抗素子MRDと配線層MTとがヴィアV5により電気的に接続されている。
【0076】
次に
図14〜
図20を参照しながら、比較例のたとえば
図13に示す半導体装置の製造方法について説明する。ここでも上記の一実施の形態の製造方法と同様に、最上層の配線層MTの製造方法を中心に説明する。
【0077】
図14を参照して、
図6と同様に層間絶縁膜II5、ヴィアV4、積層膜LM1、最上層金属配線ATが形成される。ここでは積層膜LM1および最上層金属配線ATは半導体基板SUBの主表面上のほぼ全面に形成される。次に最上層金属配線ATの上面のほぼ全面に、チタン膜TIと、窒化チタン膜TNと、CVD法により形成されるシリコン酸窒化膜SON1とがこの順に積層された積層膜LM2が形成される。ここでの積層膜LM2は、チタン膜TIとシリコン酸窒化膜SON1とを含む点において、一実施の形態と若干の相違がある。
【0078】
次に、半導体基板SUBの主表面上のうち、配線構造領域MCRおよび発振子領域OCRに最上層金属配線ATのパターンが残存するように通常の写真製版技術がなされ、フォトレジストPHRのパターンが形成される。
【0079】
図15を参照して、
図14の工程において形成されたフォトレジストPHRのパターンを用いた通常のエッチング技術により、配線構造領域MCRおよび発振子領域OCRには積層膜LM1、最上層金属配線ATおよび積層膜LM2が積層された構造が形成される。一方、配線構造領域MCRと発振子領域OCRとに挟まれた領域については、上記の積層膜LM1、最上層金属配線ATおよび積層膜LM2がエッチング除去され、さらにオーバーエッチングにより層間絶縁膜II5の一部が除去される。
【0080】
このようにして配線構造領域MCRには、積層膜LM1と、最上層金属配線ATと、積層膜LM2のうちのチタン膜TIおよび窒化チタン膜TNとからなる最上層の配線層MTが形成される。そして配線層MTの上面が絶縁膜(キャップ膜)としてのシリコン酸窒化膜SON1に覆われる。
【0081】
図16を参照して、シリコン酸窒化膜SON1および露出した層間絶縁膜II5を覆うように、一般公知の方法により、たとえばシリコン酸化膜からなる層間絶縁膜II6、およびこれを覆う下方反射防止膜BAが形成される。下方反射防止膜BAとは、通常の写真製版技術の特に露光処理を行なう際に用いられる光が、アルミニウムやタングステンシリコン(WSi)などからの反射の影響(定在波効果)が大きくなることにより、フォトレジストPHRの露光時に光の照射を意図しない領域が照射される不具合を低減するために形成される反射防止膜であり、通常はフォトレジストPHRの直下に形成される。この下方反射防止膜BAはたとえば酸窒化シリコン(SiON)により形成される。
【0082】
フォトレジストPHRおよび下方反射防止膜BAが通常の写真製版技術およびエッチング技術によりパターニングされる。
【0083】
図17を参照して、
図16の工程において形成されたフォトレジストPHR(および下方反射防止膜BA)のパターンを用いた通常のエッチング技術により発振子領域OCRの層間絶縁膜II6に、シリコン酸窒化膜SON1の上面に接するようにヴィアホールが形成され、当該ヴィアホールをタングステンで充填することによりヴィアV5が形成される。
【0084】
図18を参照して、層間絶縁膜II6およびヴィアV5の上面を覆うように、窒化チタン膜TNおよびシリコン窒化膜SN1がこの順に積層される。
【0085】
図19を参照して、発振子領域OCR(の最上層金属配線ATの真上)に最上層金属配線ATのパターンが残存するように通常の写真製版技術がなされ、フォトレジストPHRのパターンが形成される。
【0086】
図20を参照して、
図19の工程において形成されたフォトレジストPHRのパターンを用いた通常のエッチング技術により、層間絶縁膜II5上の窒化チタン膜TNおよびシリコン窒化膜SN1がパターニングされる。これにより、窒化チタン膜TNおよびシリコン窒化膜SN1との積層構造からなる金属抵抗素子MRDが、発振子領域OCRの最上層金属配線ATおよび積層膜LM2の真上に、ヴィアV5を介在して形成される。なお金属抵抗素子MRDを構成する窒化チタン膜TNは金属抵抗素子層Rmとして機能する。
【0087】
このように比較例においては金属抵抗素子層Rmとしての窒化チタン膜TNが、最上層の配線層MTを構成する窒化チタン膜TNと異なる層として、最上層の配線層MTを構成する窒化チタン膜TNが形成された後、改めて最上層の配線層MTの上方に形成される。このため比較例においては工程数が非常に多くなり、コスト高を招く可能性がある。
【0088】
一実施の形態においては、配線層MTを構成する最上層金属配線上導電膜TOAとしての窒化チタン膜TNと同時に、当該窒化チタン膜TNと同一の層として金属抵抗素子層Rmが形成される。このため比較例よりも工程数が削減され、製造コストを削減することができる。
【0089】
また一実施の形態においては、比較例の
図16における下方反射防止膜BAを形成する必要がなくなるという観点からも、一実施の形態においては工程数をより簡素にすることができる。ただし一実施の形態においても比較例の
図16と同様にフォトレジストPHRの下面を覆うように下方反射防止膜BAが形成されてもよい。
【0090】
一実施の形態の金属抵抗素子層Rmは、最上層金属配線ATの上面を覆う最上層金属配線上導電膜TOAとしての窒化チタン膜TNと同一の層として配置される。このため、たとえば最上層金属配線ATの下面を覆う窒化チタン膜TNと同一の層として金属抵抗素子層Rmが形成される場合に比べて、当該金属抵抗素子層Rmの膜厚の設計の自由度を高めることができる。これはたとえば最上層金属配線ATの下面を覆う窒化チタン膜TNの膜厚は、たとえば後工程においてダメージを受ける可能性などを考慮して設計される必要があるが、上面を覆う窒化チタン膜TNの膜厚を設計する上ではそのような必要が少ないためである。
【0091】
またそもそも、たとえば最上層金属配線ATの下面を覆う窒化チタン膜TNは、上層の最上層金属配線ATなどをパターニングする際に同時にダメージを受ける場合がある。上層のパターニングの影響を受けてダメージを受ける可能性がある層と同一の層を、他の素子領域である発振子領域OCRの金属抵抗素子層Rmに利用すれば、金属抵抗素子層Rmにも上記ダメージの影響が及ぼされる可能性がある。最上層金属配線ATの上面を覆う最上層金属配線上導電膜TOAと同一の層を金属抵抗素子層Rmに利用することにより、上記ダメージの影響が及ぼされる可能性を低減することができる。
【0092】
一実施の形態の金属抵抗素子層Rmは、少なくとも最上層金属配線上導電膜TOA(TN)より下方に配置される。このようにすれば、金属抵抗素子層Rmの上面を覆うパッシベーション膜PIXは、少なくとも最上層金属配線上導電膜TOAの上面を覆うパッシベーション膜PIXよりも厚くなるため、金属抵抗素子層Rmを上方からより確実に保護する効果を高めることができる。つまり、外部からの水分の浸入などによる金属抵抗素子層Rmへのダメージの発生などの不具合を確実に抑制することができる。
【0093】
なお一実施の形態においては最上層の配線層MTの積層膜LM1よりも下方に配置される(
図3、
図10参照)が、このようにすれば、金属抵抗素子層Rmの上方を覆うパッシベーション膜PIXがいっそう厚くなるため、上記のパッシベーション膜PIXによる保護効果をより高めることができる。
【0094】
次に一実施の形態においては配線構造領域MCRと発振子領域OCRとの間にガードリング形成領域GRRを備え、ガードリングGRが配置されている。このガードリングGRは、配線構造領域MCRの配線層MTおよび発振子領域OCRの金属抵抗素子MRDの双方と互いに分離するように独立して形成されている。このため、プロセスにおいてエッチング技術を施す際にパターンの残骸が配線構造領域MCRと発振子領域OCRとの間を往来することによる短絡不良などの発生を抑制する。
【0095】
配線構造領域MCRの配線層MTと金属抵抗素子MRDとが互いに離れた位置に独立して配置されるため、両者が電気的に互いに影響を及ぼし合う可能性が低減される。このため上記の影響に起因する金属抵抗素子層Rmの抵抗値の変動など精度の誤差を低減することができ、発振子領域OCRのOCO回路の信頼性をより高めることができる。
【0096】
またガードリングGRの存在により、たとえばガードリングGRに囲まれる領域(発振子領域OCR)の外側の配線構造領域MCRに形成される回路のレイアウトパターンが変わっても、ガードリングGRの内側(発振子領域OCR)は外側に対して応力の変動の影響を受けにくくなる。つまり、たとえば配線構造領域MCRにおける配線のパターンの疎密の程度にかかわらず、発振子領域OCRの金属抵抗素子MRDが受ける応力の条件はほぼ同じになる。
【0097】
配線構造領域MCRのレイアウトの状態や疎密などに応じて発振子領域OCRの金属抵抗素子MRDが受ける応力が変われば、金属抵抗素子MRDの抵抗値が変動し、OCO回路の発振特性が変わるために、OCO回路の信頼性が低下する可能性がある。しかしガードリングGRが上記の抵抗値および発振特性の変動を抑制する作用を有するため、OCO回路の安定した発振特性を確保することができる。
【0098】
なお一実施の形態において金属抵抗素子層Rmとして窒化チタン膜TNが用いられることにより、いわゆるピエゾ抵抗効果の発生を抑制することができるため、ピエゾ抵抗効果に起因する応力による抵抗値の変動が少なくなり、OCO回路の安定した発振特性を確保することができる。
【0099】
(実施の形態2)
図21を参照して、本実施の形態においては、実施の形態1と比較して、最上層の配線層MTを構成する最上層金属配線ATと、金属抵抗素子MRDの一部(金属抵抗素子層)と同一の層として形成される積層膜LM2(の一部)との間に挟まれるように、反射防止用絶縁膜ARFをさらに有している点において異なっている。この反射防止用絶縁膜ARFは、上記の下方反射防止膜BAと同様に、露光処理を行なう際の光の乱反射を抑制する機能を有する。
【0100】
より詳しくは、最上層金属配線ATと積層膜LM2との間に、積層膜LM3と反射防止用絶縁膜ARFとが、この順に積層されている。
【0101】
積層膜LM3は後述するように、積層膜LM1と同様にたとえばチタン膜TIと窒化チタン膜TNとがこの順に積層された構成であり、積層膜LM3は配線層MTの最上層金属配線ATの上面を覆うように形成されている。反射防止用絶縁膜ARFは積層膜LM3(窒化チタン膜TN)の上面を覆うように形成されており、たとえばプラズマCVD法により形成される酸窒化シリコン膜(SiON)であることが好ましい。
【0102】
ただし最上層以外の配線層M1〜M4については実施の形態1と同様、積層膜LM1と金属配線A1〜A4と、積層膜LM2の一部である窒化チタン膜TNとにより構成されていると考える。ここでも積層膜LM2は窒化チタン膜TNとシリコン窒化膜SN1とにより構成される。
【0103】
本実施の形態は以上の点において実施の形態1と異なっており、他の点においては実施の形態1と同様であるため、同一の要素については同一の符号を付しその説明を繰り返さない。また実施の形態1において説明した各構成要素を本実施の形態の半導体装置に加えてもよい。
【0104】
次に
図22〜
図26を参照しながら、一実施の形態のたとえば
図21に示す半導体装置の製造方法について、最上層の配線層MTの製造方法を中心に説明する。
【0105】
図22を参照して、
図6と同様に層間絶縁膜II5、ヴィアV4、積層膜LM1、最上層金属配線ATが形成される。ここでは積層膜LM1および最上層金属配線ATは半導体基板SUBの主表面上のほぼ全面に形成される。次に最上層金属配線ATの上面のほぼ全面に、チタン膜TIと窒化チタン膜TNとがこの順に積層された積層膜LM3と、プラズマCVD法により形成されるシリコン酸窒化膜SON1とがこの順に積層される。一例として、チタン膜TIは2.5nm、窒化チタン膜TNは23nm、シリコン酸窒化膜SON1は50nm、それぞれ形成される。シリコン酸窒化膜SON1は、最上層金属配線ATと、最上層金属配線上導電膜TOAとしての窒化チタン膜TN(
図26参照)との間に挟まれる反射防止用絶縁膜ARFとして形成される。
【0106】
なお最上層金属配線ATの上面にチタン膜TIと窒化チタン膜TNとシリコン酸窒化膜SON1がこの順に積層される点においては
図14(比較例)の積層膜LM2と同様であるが、ここでは便宜上、
図14とは異なる名称である積層膜LM3を採用している。
【0107】
次に、
図6と同様にフォトレジストPHRのパターンが形成される。
図23を参照して、
図7と同様に通常のエッチング技術により配線構造領域MCRおよびガードリング形成領域GRRの一部に最上層金属配線ATのパターンが形成される。
【0108】
図24〜
図26を参照して、基本的に実施の形態1の
図8〜
図10と同様の処理がなされることにより、本実施の形態に係る半導体装置が形成される。ただし
図24〜
図26の工程において最上層金属配線ATの上面および側面などを覆う、積層膜LM2の一部としての窒化チタン膜TNは、窒化チタンの薄膜である必要はなく、窒化チタンの代わりにたとえばタングステン、アルミニウム、クロムシリサイド(CrSi
2)などの薄膜が用いられてもよい。この点において
図24〜
図26の工程は
図8〜
図10の工程と異なっている。
【0109】
図26に示すように、配線構造領域MCRのうち配線層MTが形成される領域およびガードリングGRが形成される領域には、最上層金属配線ATの上面を覆うように積層膜LM3(チタン膜TIおよび窒化チタン膜TN)と反射防止用絶縁膜ARFと積層膜LM2(窒化チタン膜TNおよびシリコン窒化膜SN1)との積層構造が形成される。反射防止用絶縁膜ARFは、シリコン酸窒化膜SON1がパターニングされることにより形成される。
【0110】
なおここでは(絶縁膜としてのシリコン酸窒化膜SON1を含むものの)、最上層の配線層MTとは積層膜LM1と最上層金属配線ATと、積層膜LM3とシリコン酸窒化膜SON1(反射防止用絶縁膜ARF)と、積層膜LM2のうちの窒化チタン膜TNとからなるものと考える。ただしガードリングGRは積層膜LM1と最上層金属配線ATと積層膜LM3とシリコン酸窒化膜SON1(反射防止用絶縁膜ARF)と積層膜LM2との全体を合わせた領域と考える。
【0111】
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。本実施の形態においては実施の形態1の作用効果に加えて以下の作用効果を奏する。
【0112】
本実施の形態においては配線層MTにおいて、最上層金属配線ATと最上層金属配線上導電膜TOA(窒化チタン膜TN)との間に反射防止用絶縁膜ARF(シリコン酸窒化膜SON1)が挟まれるように形成されるため、最上層金属配線ATと最上層金属配線上導電膜TOA(TN)との間の短絡など、電流の導通を抑制することができる。
【0113】
したがって、金属抵抗素子層Rmと同一の層である最上層金属配線上導電膜TOA(窒化チタン膜TN)は、最上層金属配線ATの電気抵抗や電流に影響を受けにくくなるため、金属抵抗素子層Rmの抵抗値が変動したりOCO回路の発振特性が変動するなどの現象を抑制することができ、OCO回路の安定した発振特性を確保することができる。
【0114】
またその結果、積層膜LM2を構成する最上層金属配線上導電膜TOAとして、窒化チタンの薄膜に限定せず、タングステン、アルミニウム、クロムシリサイド(CrSi
2)などの薄膜を用いることが可能となり、材料の選択可能な範囲を広げることができる。たとえばアルミニウムは窒化チタンに比べて導電性が高いため、これが配線層MTなどを構成する導電部に用いられることにより、当該配線層MTなどの導電性をさらに高め、多層配線構造の駆動力などをさらに高めることができる。
【0115】
(参考例)
図2および
図21においては、コアトランジスタの形成領域のうち金属抵抗素子MRDが配置される領域は、他の領域に比べて層間絶縁膜II5の上面が下方に深く掘られている。これは
図3のガードリング形成領域GRRにおいて層間絶縁膜II5の上面が下方に深く掘られ、発振子領域OCRにおいて積層膜LM2が配線構造領域MCRの積層膜LM1より下方に配置されるのと同様の理由(オーバーエッチング)に基づく。しかしオーバーエッチングの量が極めて少ない場合には、
図27および
図28に示すようにコアトランジスタの形成領域のうち金属抵抗素子MRDが配置される領域の層間絶縁膜II5の上面が他の領域の層間絶縁膜II5の上面とほとんど同じ高さになる。
図27および
図28に示す態様であっても、当該金属抵抗素子MRDが最上層金属配線ATの上面を覆う積層膜LM2と同一の層である限り、上記の実施の形態と同様の作用効果を奏する。
【0116】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなくその要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。