【実施例】
【0070】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0071】
(毛羽立ちの有無の評価方法)
繊維集合体の製造中における、繊維集合体の表面を目視にて確認し、繊維集合体の表面に毛羽立ちが発生したかどうかを評価した。
つまり、繊維集合体の主面に毛羽立ちが認められなかった場合には○印を記載し、繊維集合体の主面に毛羽立ちが若干認められた場合には△印を記載し、繊維集合体の主面に毛羽立ちが多数認められた場合には×印を記載した。
【0072】
(目付の測定方法)
繊維集合体の質量(単位:g)を測定し、測定された質量を前記繊維集合体における広い面積を有する面(主面)側から見た際の、1m
2あたりの質量に換算した値を目付(単位:g/m
2)とした。
【0073】
(繊維集合体に含まれる溶媒や水分の計測方法)
以下の式に、各測定された目付を代入することで、繊維集合体に含まれる溶媒や水分の百分率(%)を算出した。
A={(B−C)/C}×100
A:繊維集合体に含まれる溶媒や水分の百分率(%)
B:ステンレスメッシュの捕集面から引き剥がした直後(乾燥前)の繊維集合体の目付(g/m
2)
C:乾燥後の繊維集合体の目付(g/m
2)
【0074】
(紡糸原液Aの調製)
重量平均分子量20万のポリアクリロニトリル(PAN)を、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に質量比率が(PAN:DMF=16質量%:84質量%)となるように溶解させて、PANの濃度が16質量%の紡糸原液Aを調製した。
【0075】
(紡糸原液Bの調製)
フッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(ダイキン工業社製、品名:VT−470)を、DMFに質量比率が(前記共重合体:DMF=10質量%:90質量%)となるように溶解させて、前記共重合体の濃度が10質量%の溶液を得た。
次いで、導電性粒子としてカーボンブラック(電気化学工業株式会社製、デンカブラック(登録商標)粒状品、平均粒子径:35nm)を前記溶液に混合し、更にDMFを加えて希釈してカーボンブラックを分散させた紡糸原液Bを調製した。
なお、紡糸原液Bに含まれているカーボンブラックと前記共重合体の質量比率は(カーボンブラック:前記共重合体=40質量%:60質量%)であり、紡糸原液Bの濃度は12質量%(カーボンブラックと前記共重合体の合計:DMF=12質量%:88質量%)であった。
【0076】
(製造装置の準備)
図2に示すような製造装置を用意した。
つまり、ケースに周囲を囲われた空間(縦:1000mm、横:1000mm、高:1000mm)に、紡糸原液を放出できる、内径が0.33mmの金属製ノズルを固定した。そして、直流高電圧発生装置を金属製ノズルに接続することで、紡糸原液に電圧を印加できるようにした。
次いで、捕集体としてステンレスメッシュを用意しアースした。そして、アースしたステンレスメッシュを、金属製ノズルよりも
図2における紙面上の下方向側に設置した。
更に、金属製ノズルよりも
図2における紙面上の上方向側に、気体ポンプによって温度および湿度を調整した空気を紡糸空間へ供給できる、気体供給口を設けた。
また、ステンレスメッシュの捕集面(ステンレスメッシュの、
図2における紙面上の上方向側の面)に対向する裏面(ステンレスメッシュの、
図2における紙面上の下方向側の面)と対面し近接するようにして、気体排出口としてサクション装置のサクション口を設けた。なお、ステンレスメッシュの裏面とサクション口は平行を成して対面すると共に、ステンレスメッシュの裏面とサクション口が接触する状態にした。また、サクション口からサクションされた気体は、ケース外に排出されるようにした。
更に、ケースにおける、ノズルからステンレスメッシュに向かう方向において、サクション口よりも離れた位置(サクション口よりも、
図2における紙面上の下方向側の位置)に切り欠きを設けた。なお、切り欠きは気体をケース外へ排出する別の気体排出口として働き得るものであった。
【0077】
紡糸原液Aを用いて、以下の実施例1−5および比較例1−2の条件で繊維集合体を製造した。
【0078】
(実施例1)
以下の条件において、ステンレスメッシュの捕集面上に繊維集合体を製造した。
・金属製ノズルの先端とステンレスメッシュとの距離:8cm
・紡糸原液に印加した電圧:17kV
・気体供給口から供給した空気の、温度および湿度:温度25℃、湿度40%RH
・気体供給口から供給した、温度および湿度を調整した空気の体積:10L/秒
・サクション口からサクションした空気の体積:10L/秒
・気体流出入比率:1
・切り欠きからケース外へ排出された空気の体積:0L/秒
・紡糸原液の種類:紡糸原液A
・金属製ノズルから放出された紡糸原液の質量(紡糸量):2g/時間
なお、繊維集合体の製造中に、繊維集合体の表面に毛羽立ちは認められず、安定した紡糸状態を保ち繊維集合体を製造することができた。
次いで、ステンレスメッシュの捕集面に製造された繊維集合体を、ステンレスメッシュから引き剥がして目付を測定した。この時の繊維集合体の目付(乾燥前の目付)は、10.10g/m
2であった。
その後、引き剥がした繊維集合体を、60℃に調節したドライヤー装置へ30分間供することで、繊維集合体中から溶媒および水分を除去し乾燥させた。なお、乾燥後の繊維集合体の目付は10.00g/m
2であった。
【0079】
(実施例2)
以下のように紡糸条件を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ステンレスメッシュの捕集面上に繊維集合体を製造した。
・気体供給口から供給した、温度および湿度を調整した空気の体積:11L/秒
・サクション口からサクションした空気の体積:10L/秒
・気体流出入比率:1.1
・切り欠きからケース外へ排出された空気の体積:1L/秒
なお、繊維集合体の製造中に、繊維集合体の表面に毛羽立ちは認められず、安定した紡糸状態を保ち繊維集合体を製造することができた。
次いで、ステンレスメッシュの捕集面に製造された繊維集合体を、ステンレスメッシュから引き剥がして目付を測定した。この時の繊維集合体の目付(乾燥前の目付)は、15.15g/m
2であった。
その後、引き剥がした繊維集合体を、60℃に調節したドライヤー装置へ30分間供することで、繊維集合体中から溶媒および水分を除去し乾燥させた。なお、乾燥後の繊維集合体の目付は15.00g/m
2であった。
【0080】
(実施例3)
以下のように紡糸条件を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ステンレスメッシュの捕集面上に繊維集合体を製造した。
・気体供給口から供給した、温度および湿度を調整した空気の体積:15L/秒
・サクション口からサクションした空気の体積:10L/秒
・気体流出入比率:1.5
・切り欠きからケース外へ排出された空気の体積:5L/秒
なお、繊維集合体の製造中に、繊維集合体の表面に毛羽立ちは認められず、安定した紡糸状態を保ち繊維集合体を製造することができた。
次いで、ステンレスメッシュの捕集面に製造された繊維集合体を、ステンレスメッシュから引き剥がして目付を測定した。この時の繊維集合体の目付(乾燥前の目付)は、15.30g/m
2であった。
その後、引き剥がした繊維集合体を、60℃に調節したドライヤー装置へ30分間供することで、繊維集合体中から溶媒および水分を除去し乾燥させた。なお、乾燥後の繊維集合体の目付は15.00g/m
2であった。
【0081】
(実施例4)
以下のように紡糸条件を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ステンレスメッシュの捕集面上に繊維集合体を製造した。
・気体供給口から供給した、温度および湿度を調整した空気の体積:9L/秒
・サクション口からサクションした空気の体積:10L/秒
・気体流出入比率:0.9
・切り欠きからケース外へ排出された空気の体積:0L/秒
なお、繊維集合体の製造中に、繊維集合体の表面に繊維の若干毛羽立ちが発生したものの、繊維集合体を製造することができた。
次いで、ステンレスメッシュの捕集面に製造された繊維集合体を、ステンレスメッシュから引き剥がして目付を測定した。この時の繊維集合体の目付(乾燥前の目付)は、15.30g/m
2であった。
その後、引き剥がした繊維集合体を、60℃に調節したドライヤー装置へ30分間供することで、繊維集合体中から溶媒および水分を除去し乾燥させた。なお、乾燥後の繊維集合体の目付は15.00g/m
2であった。
【0082】
(実施例5)
以下のように紡糸条件を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ステンレスメッシュの捕集面上に繊維集合体を製造した。
・金属製ノズルから放出された紡糸原液の質量(紡糸量):10g/時間
なお、繊維集合体の製造中に、繊維集合体の表面に毛羽立ちは認められず、安定した紡糸状態を保ち繊維集合体を製造することができた。
次いで、ステンレスメッシュの捕集面に製造された繊維集合体を、ステンレスメッシュから引き剥がして目付を測定した。この時の繊維集合体の目付(乾燥前の目付)は、15.15g/m
2であった。
その後、引き剥がした繊維集合体を、60℃に調節したドライヤー装置へ30分間供することで、繊維集合体中から溶媒および水分を除去し乾燥させた。なお、乾燥後の繊維集合体の目付は15.00g/m
2であった。
【0083】
(比較例1)
気体供給口から温度および湿度を調整していない空気を供給したこと以外は、実施例1と同様にして、ステンレスメッシュの捕集面上に繊維集合体を製造した。
なお、繊維集合体の製造中に、繊維集合体の表面に毛羽立ちが多数存在しており、安定した紡糸状態を保ち繊維集合体を製造することができなかった。
次いで、ステンレスメッシュの捕集面に製造された繊維集合体を、ステンレスメッシュから引き剥がそうとしたものの、前記繊維集合体は取り扱い性が悪かったため、ステンレスメッシュから引き剥がすことができず目付の測定、および、後述する各種測定方法へ供することができなかった。
【0084】
(比較例2)
以下のように紡糸条件を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ステンレスメッシュの捕集面上に繊維集合体を製造した。
・気体供給口から供給した、温度および湿度を調整した空気の体積:10L/秒
・サクション口からサクションした空気の体積:0L/秒
・切り欠きからケース外へ排出された空気の体積:10L/秒
なお、繊維集合体の製造中に、繊維集合体の表面に毛羽立ちが多数存在しており、安定した紡糸状態を保ち繊維集合体を製造することができなかった。
次いで、ステンレスメッシュの捕集面に製造された繊維集合体を、ステンレスメッシュから引き剥がそうとしたものの、前記繊維集合体は取り扱い性が悪かったため、ステンレスメッシュから引き剥がすことができず目付の測定、および、後述する各種測定方法へ供することができなかった。
続いて、紡糸原液Bを用いて、以下の実施例6−11および比較例3−4の条件で繊維集合体を製造した。
【0085】
(実施例6)
以下の条件において、ステンレスメッシュの捕集面上に繊維集合体を製造した。
・金属製ノズルの先端とステンレスメッシュとの距離:15cm
・紡糸原液に印加した電圧:12kV
・気体供給口から供給した空気の、温度および湿度:温度25℃、湿度40%RH
・気体供給口から供給した、温度および湿度を調整した空気の体積:10L/秒
・サクション口からサクションした空気の体積:10L/秒
・気体流出入比率:1
・切り欠きからケース外へ排出された空気の体積:0L/秒
・紡糸原液の種類:紡糸原液B
・金属製ノズルから放出された紡糸原液の質量(紡糸量):2g/時間
なお、繊維集合体の製造中に、繊維集合体の表面に毛羽立ちは認められず、安定した紡糸状態を保ち繊維集合体を製造することができた。
次いで、ステンレスメッシュの捕集面に製造された繊維集合体を、ステンレスメッシュから引き剥がして目付を測定した。この時の繊維集合体の目付(乾燥前の目付)は、11.22g/m
2であった。
その後、引き剥がした繊維集合体を、60℃に調節したドライヤー装置へ30分間供することで、繊維集合体中から溶媒および水分を除去し乾燥させた。なお、乾燥後の繊維集合体の目付は11.00g/m
2であった。
【0086】
(実施例7)
以下のように紡糸条件を変更したこと以外は、実施例6と同様にして、ステンレスメッシュの捕集面上に繊維集合体を製造した。
・金属製ノズルの先端とステンレスメッシュとの距離:20cm
・紡糸原液に印加した電圧:15kV
・金属製ノズルから放出された紡糸原液の質量(紡糸量):10g/時間
なお、繊維集合体の製造中に、繊維集合体の表面に毛羽立ちは認められず、安定した紡糸状態を保ち繊維集合体を製造することができた。
次いで、ステンレスメッシュの捕集面に製造された繊維集合体を、ステンレスメッシュから引き剥がして目付を測定した。この時の繊維集合体の目付(乾燥前の目付)は、15.30g/m
2であった。
その後、引き剥がした繊維集合体を、60℃に調節したドライヤー装置へ30分間供することで、繊維集合体中から溶媒および水分を除去し乾燥させた。なお、乾燥後の繊維集合体の目付は15.00g/m
2であった。
【0087】
(実施例8)
以下のように紡糸条件を変更したこと以外は、実施例6と同様にして、ステンレスメッシュの捕集面上に繊維集合体を製造した。
・金属製ノズルから放出された紡糸原液の質量:30g/時間
なお、繊維集合体の製造中に、繊維集合体の表面に毛羽立ちは認められず、安定した紡糸状態を保ち繊維集合体を製造することができた。
次いで、ステンレスメッシュの捕集面に製造された繊維集合体を、ステンレスメッシュから引き剥がして目付を測定した。この時の繊維集合体の目付(乾燥前の目付)は、15.15g/m
2であった。
その後、引き剥がした繊維集合体を、60℃に調節したドライヤー装置へ30分間供することで、繊維集合体中から溶媒および水分を除去し乾燥させた。なお、乾燥後の繊維集合体の目付は15.00g/m
2であった。
【0088】
(実施例9)
以下のように紡糸条件を変更したこと以外は、実施例8と同様にして、ステンレスメッシュの捕集面上に繊維集合体を製造した。
・気体供給口から供給した、温度および湿度を調整した空気の体積:11L/秒
・サクション口からサクションした空気の体積:10L/秒
・気体流出入比率:1.1
・切り欠きからケース外へ排出された空気の体積:1L/秒
なお、繊維集合体の製造中に、繊維集合体の表面に毛羽立ちは認められず、安定した紡糸状態を保ち繊維集合体を製造することができた。
次いで、ステンレスメッシュの捕集面に製造された繊維集合体を、ステンレスメッシュから引き剥がして目付を測定した。この時の繊維集合体の目付(乾燥前の目付)は、15.30g/m
2であった。
その後、引き剥がした繊維集合体を、60℃に調節したドライヤー装置へ30分間供することで、繊維集合体中から溶媒および水分を除去し乾燥させた。なお、乾燥後の繊維集合体の目付は15.00g/m
2であった。
【0089】
(実施例10)
以下のように紡糸条件を変更したこと以外は、実施例8と同様にして、ステンレスメッシュの捕集面上に繊維集合体を製造した。
・気体供給口から供給した、温度および湿度を調整した空気の体積:15L/秒
・サクション口からサクションした空気の体積:10L/秒
・気体流出入比率:1.5
・切り欠きからケース外へ排出された空気の体積:5L/秒
なお、繊維集合体の製造中に、繊維集合体の表面に毛羽立ちは認められず、安定した紡糸状態を保ち繊維集合体を製造することができた。
次いで、ステンレスメッシュの捕集面に製造された繊維集合体を、ステンレスメッシュから引き剥がして目付を測定した。この時の繊維集合体の目付(乾燥前の目付)は、15.30g/m
2であった。
その後、引き剥がした繊維集合体を、60℃に調節したドライヤー装置へ30分間供することで、繊維集合体中から溶媒および水分を除去し乾燥させた。なお、乾燥後の繊維集合体の目付は15.00g/m
2であった。
【0090】
(実施例11)
以下のように紡糸条件を変更したこと以外は、実施例8と同様にして、ステンレスメッシュの捕集面上に繊維集合体を製造した。
・気体供給口から供給した、温度および湿度を調整した空気の体積:9L/秒
・サクション口からサクションした空気の体積:10L/秒
・気体流出入比率:0.9
・切り欠きからケース外へ排出された空気の体積:0L/秒
なお、繊維集合体の製造中に、繊維集合体の表面に繊維の若干毛羽立ちが発生したものの、繊維集合体を製造することができた。
次いで、ステンレスメッシュの捕集面に製造された繊維集合体を、ステンレスメッシュから引き剥がして目付を測定した。この時の繊維集合体の目付(乾燥前の目付)は、19.50g/m
2であった。
その後、引き剥がした繊維集合体を、60℃に調節したドライヤー装置へ30分間供することで、繊維集合体中から溶媒および水分を除去し乾燥させた。なお、乾燥後の繊維集合体の目付は15.00g/m
2であった。
【0091】
(比較例3)
気体供給口から温度および湿度を調整していない空気を供給したこと以外は、実施例6と同様にして、ステンレスメッシュの捕集面上に繊維集合体を製造した。
なお、繊維集合体の製造中に、繊維集合体の表面に立ち上がった繊維が多数存在しており、安定した紡糸状態を保ち繊維集合体を製造することができなかった。
次いで、ステンレスメッシュの捕集面に製造された繊維集合体を、ステンレスメッシュから引き剥がして目付を測定した。この時の繊維集合体の目付(乾燥前の目付)は、24.00g/m
2であった。
その後、引き剥がした繊維集合体を、60℃に調節したドライヤー装置へ30分間供することで、繊維集合体中から溶媒および水分を除去し乾燥させた。なお、乾燥後の繊維集合体の目付は15.00g/m
2であった。
【0092】
(比較例4)
以下のように紡糸条件を変更したこと以外は、実施例6と同様にして、ステンレスメッシュの捕集面上に繊維集合体を製造した。
・気体供給口から供給した、温度および湿度を調整した空気の体積:10L/秒
・サクション口からサクションした空気の体積:0L/秒
・切り欠きからケース外へ排出された空気の体積:10L/秒
なお、繊維集合体の製造中に、繊維集合体の表面に立ち上がった繊維が多数存在しており、安定した紡糸状態を保ち繊維集合体を製造することができなかった。
次いで、ステンレスメッシュの捕集面に製造された繊維集合体を、ステンレスメッシュから引き剥がして目付を測定した。この時の繊維集合体の目付(乾燥前の目付)は、29.70g/m
2であった。
その後、引き剥がした繊維集合体を、60℃に調節したドライヤー装置へ30分間供することで、繊維集合体中から溶媒および水分を除去し乾燥させた。なお、乾燥後の繊維集合体の目付は18.00g/m
2であった。
【0093】
実施例および比較例で製造した乾燥後の繊維集合体を、以下に記載する各種方法へ供することで繊維集合体の各種物性の評価を行い、表1および表2にまとめた。
【0094】
(厚さの計測方法)
繊維集合体を厚さ測定器(ミツトヨ社製、コードNo.547−401、測定力:3.5N以下)へ供し、計測した10点の厚さの算術平均値を厚さとした。
【0095】
(空隙率の計測方法)
本発明における空隙率(単位:%)は次の式から算出した。
P=100−(Fr1+Fr2+・・+Frn)
ここで、Frnは繊維集合体を構成する成分n(例えば、ポリマー、導電性粒子等)の充填率(単位:%)を示し、次の式から得られる値をいう。
Frn=[(M/T)×Prn/SGn]×100
ここで、Mは繊維集合体の目付(単位:g/m
2)、Tは繊維集合体の厚さ(単位:cm)、Prnは繊維集合体を構成する成分nの存在質量比率(単位:質量%)、SGnは成分nの密度(単位:g/cm
3)をそれぞれ意味する。
【0096】
(平均繊維径の計測方法)
繊維集合体の電子顕微鏡写真を測定し、無作為に選んだ40点における繊維直径の算術平均値を算出することで、平均繊維径を求めた。
なお、「繊維直径」とは、前記選択した繊維が、例えば導電性粒子などの粒子が露出した繊維のみである場合には、露出した粒子を含めた繊維横断面における直径を意味する。また、前記選択した繊維が、粒子が露出した繊維を含んでいない場合、あるいは、粒子が露出した繊維を含有していても粒子が露出していない部分を有する繊維を含んでいる場合には、繊維における粒子が露出していない部分の繊維横断面における直径を意味する。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
なお、表1および表2では、「金属製ノズルから放出された紡糸原液の質量」を「紡糸量」、そして、「繊維集合体に含まれる溶媒や水分の百分率」を「百分率」と記載している。
【0100】
実施例1と比較例1−2を比較した結果、ならびに、実施例6と比較例3−4を比較した結果から、本発明に係る繊維集合体の製造方法は、温度および湿度を調整した気体を紡糸空間へ供給すると共に、紡糸空間に存在する気体を、捕集体を通過させて、捕集面に対向する裏面と対面し近接して存在している気体排出口へ移動させることによって、繊維集合体の表面に毛羽立ちが発生するのを防いで、溶媒や水分を含む量の少ない繊維集合体を製造できることが判明した。
【0101】
更に、各実施例の結果から、次のことが判明した。
・実施例1と実施例5、ならびに、実施例6−8から、本発明の繊維集合体の製造方法は、紡糸量を多くした場合であっても、繊維集合体の表面に毛羽立ちが発生するのを防いで、溶媒や水分を含む量の少ない繊維集合体を製造できることが判明した。
・実施例1−3と
参考例1とを比較した結果、ならびに、実施例8−10と
参考例2とを比較した結果から、気体流出入比率を1以上に調整することで、毛羽立ちが発生するのを防ぐ、及び/又は、溶媒や水分を含む量が多い繊維集合体が製造されるのを防止できることが判明した。
【0102】
以上から、本発明の繊維集合体の製造方法及び製造装置は、紡糸量を問わず紡糸条件が意図せず変化するのを防止できる。