特許第6120534号(P6120534)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本バイリーン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6120534-繊維集合体の製造方法及び製造装置 図000004
  • 特許6120534-繊維集合体の製造方法及び製造装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6120534
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】繊維集合体の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/728 20120101AFI20170417BHJP
   D01D 5/04 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   D04H1/728
   D01D5/04
【請求項の数】2
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-254223(P2012-254223)
(22)【出願日】2012年11月20日
(65)【公開番号】特開2014-101603(P2014-101603A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2015年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野口 健吾
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 達規
(72)【発明者】
【氏名】若元 佑太
(72)【発明者】
【氏名】多羅尾 隆
【審査官】 小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−202010(JP,A)
【文献】 特開2012−207351(JP,A)
【文献】 特開2010−121232(JP,A)
【文献】 特開2011−032593(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/102538(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00−18/04
D01D 1/00−13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)温度および湿度を調整した気体を紡糸空間へ供給すると共に、前記紡糸空間に存在する気体を、捕集体を通過させて気体排出口へ移動させる工程、
(2)紡糸原液を紡糸開始部から紡糸空間へ放出させ、主として電界の作用によって繊維化する工程、
(3)前記繊維を前記捕集体の捕集面に集積して、前記捕集面に繊維集合体を形成する工程、
を備える繊維集合体の製造方法であって、
前記気体排出口が前記捕集面に対向する裏面と対面し近接して存在しており、かつ前記気体の気体流出入比率を1よりも大きくしたこと
を特徴とする繊維集合体の製造方法。
【請求項2】
(1)紡糸空間へ温度および湿度を調整した気体を供給できる給気装置、
(2)前記紡糸空間に存在する気体を、捕集体を通過させて気体排出口へ移動できる、気
体排出口を供える排気装置、
(3)紡糸原液を紡糸空間へ放出できる紡糸開始部、
(4)前記紡糸開始部から放出された前記紡糸原液を、主として電界の作用によって繊維
化できる電界形成手段、
(5)前記繊維を前記捕集体の捕集面に集積して、前記捕集面に繊維集合体を形成できる
捕集体、
を備える繊維集合体の製造装置であって、
前記気体排出口が前記捕集面に対向する裏面と近接し、かつ前記気体の気体流出入比率を1よりも大きくしたこと
を特徴とする繊維集合体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維集合体の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平均繊維径の細い繊維からなる繊維集合体は、例えば、アルカリ電池用セパレータ、リチウム電池用セパレータ、キャパシター用セパレータあるいはレドックスフロー電池用セパレータ等の電気化学素子用セパレータ、各種電気化学素子用電極材料、ガス拡散層基材などの燃料電池や空気電池の構成部材、気体や液体の濾過材料、貼付剤用基材やプラスター剤用基材などの医療用材料、芯地などの衣料材料、化粧水等を保持したスキンケアシートやタオルあるいはオムツなどの衛生用品、ワイピング材や吸液シートなどの清掃用品、バイオリアクターや細胞培養基材などのバイオサイエンス材料など、様々な産業資材用途に有用であることが知られている。
【0003】
そして、平均繊維径の細い繊維からなる繊維集合体の製造方法として、紡糸原液を紡糸空間へ放出させて、電界の作用によって繊維化すると共に、繊維を捕集体の捕集面に集積する繊維集合体の製造方法(以降、静電紡糸法、と称することがある)が知られている。
例えば、特開2005−264401号公報(以降、特許文献1、と称する)には、所望相対湿度のガスを供給して、紡糸原液供給部周辺のみを所望相対湿度に維持することを特徴とする、静電紡糸法を用いた繊維集合体の製造方法が開示されている。
そして、特許文献1は所望相対湿度のガスを供給して、紡糸原液供給部周辺のみを確実に所望相対湿度に維持できるため、スケールアップした場合であっても、季節や天候による環境変化の影響を受けず、日によって繊維径がばらつくことなく繊維を製造できることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−264401号公報(特許請求の範囲、0009、図1など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1が開示する製造方法のように、静電紡糸法を用いて繊維集合体を製造することを検討したものの、目的の物性を備える繊維集合体を製造できないことがあった。この原因として、以下のことが考えられた。
【0006】
繊維集合体の製造中に、繊維集合体の表面で繊維が帯電して立ち上がること(以降、毛羽立ち、と称することがある)があった。また、溶媒や水分を多く含む繊維集合体が製造されることがあった。
そして、繊維集合体に毛羽立ちが多く生じるような条件で繊維集合体を製造した場合や、製造される繊維集合体に含まれる溶媒や水分の量が高くなる条件で繊維集合体を製造した場合には、安定した紡糸状態を保ち繊維集合体を製造することが困難となり、目的の物性を備えた繊維集合体が製造できなくなる傾向があった。また、最悪の場合には、捕集体から剥がすことすら困難であり取り扱い性に劣る繊維集合体が製造されることがあった。
【0007】
この理由として、紡糸空間に帯電して立ち上がった繊維が存在する場合、前記繊維の数が増えるのに伴い紡糸原液に作用する電界の力が変化したため、紡糸条件が意図せず変化したと考えられた。また、繊維集合体に含まれる溶媒や水分が多くなるのに伴い、繊維集合体の導電性能が変化することで紡糸原液に作用する電界の力が変化したため、紡糸条件が意図せず変化したと考えられた。
【0008】
特に、紡糸開始部から放出している単位時間あたりの紡糸原液の量(紡糸量)が多い場合には、意図せず変化した紡糸条件の影響を受け形成される繊維の量が多くなるため、目的の物性を備えた繊維集合体を製造するのがより困難となる傾向があった。
【0009】
そのため、紡糸量を問わず紡糸条件が意図せず変化するのを防止できる、繊維集合体の製造方法および製造装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
[1]「(1)温度および湿度を調整した気体を紡糸空間へ供給すると共に、前記紡糸空間に存在する気体を、捕集体を通過させて気体排出口へ移動させる工程、
(2)紡糸原液を紡糸開始部から紡糸空間へ放出させ、主として電界の作用によって繊維化する工程、
(3)前記繊維を前記捕集体の捕集面に集積して、前記捕集面に繊維集合体を形成する工程、
を備える繊維集合体の製造方法であって、
前記気体排出口が前記捕集面に対向する裏面と対面し近接して存在しており、かつ前述した気体の気体流入比率を1よりも大きくしたことを特徴とする繊維集合体の製造方法。」
そして、
[2]「(1)紡糸空間へ温度および湿度を調整した気体を供給できる給気装置、
(2)前記紡糸空間に存在する気体を、捕集体を通過させて気体排出口へ移動できる、気体排出口を供える排気装置、
(3)紡糸原液を紡糸空間へ放出できる紡糸開始部、
(4)前記紡糸開始部から放出された前記紡糸原液を、主として電界の作用によって繊維化できる電界形成手段、
(5)前記繊維を前記捕集体の捕集面に集積して、前記捕集面に繊維集合体を形成できる捕集体、
を備える繊維集合体の製造装置であって、
前記気体排出口が前記捕集面に対向する裏面と近接し、かつ前述した気体の気体流入比率を1よりも大きくしたことを特徴とする繊維集合体の製造装置。」
である。
【発明の効果】
【0011】
本発明者らは検討を続けた結果、静電紡糸法を用いた繊維集合体の製造方法において、温度および湿度を調整した気体を紡糸空間へ供給すると共に、紡糸空間に存在する気体を捕集体を通過させて、捕集面に対向する裏面と対面し近接して存在している気体排出口へ移動させることで、紡糸条件が意図せず変化するのを防ぐことができることを見出した。
【0012】
この理由は、完全に明らかになっていないが、温度および湿度を調整した気体を紡糸空間へ供給することで、紡糸空間の雰囲気が変化するのを防止し易くなること、並びに前記変化に伴い製造される繊維集合体に含まれる溶媒や水分の量が上昇するのを防止し易くなることが考えられる。
更に、捕集面に対向する裏面と対面し近接して存在している気体排出口によって、紡糸空間へ供給された気体が捕集体を通過して気体排出口へ移動するものとなり、その際、繊維集合体を通過する前記気体の力により、繊維が立ち上がるのを防止し易くして、紡糸原液に作用する電界の力が変化することに起因して紡糸条件が意図せず変化するのを防止できると考えられる。
【0013】
以上から、本発明の繊維集合体の製造方法は、紡糸量を問わず紡糸条件が意図せず変化するのを防止できる。
【0014】
そして、本発明の繊維集合体の製造装置は、上述した繊維集合体の製造方法を実施できるため、紡糸量を問わず紡糸条件が意図せず変化するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】繊維集合体の製造装置の模式的側面図である。
図2】別の繊維集合体の製造装置の模式的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の、繊維集合体の製造方法について、繊維集合体の製造装置の模式的側面図である図1を用いて説明する。
【0017】
本発明の繊維集合体の製造装置(100)は、主として、温度および湿度を調整した気体を気体供給口(2)からケース(3)内へ供給できる給気装置(1)、紡糸原液を吐出することのできる紡糸開始部(4)、紡糸原液に電圧を印加できるパワーサプライ(7)、パワーサプライ(7)のアース(5)、捕集体(8)、捕集体(8)の捕集面(9a)に対向する裏面(9b)と対面し近接して存在している気体排出口(10)を備えている。
【0018】
なお、図1では捕集体(8)がアース(6)されていることによって、紡糸開始部(4)から吐出された紡糸原液と捕集面(9a)の間の空間に電界が形成されており、前記空間が紡糸空間(11)となる。また、図1では、給気装置(1)により供給される気体の温度および湿度を調整する装置を省略して図示している。
【0019】
まず、本発明の繊維集合体の製造装置(100)では、給気装置(1)の働きによって温度および湿度を調整した気体が、気体供給口(2)からケース(3)内の紡糸空間(11)へ供給される。次いで、排気装置(12)の働きによって紡糸空間(11)に存在する気体は、捕集体(8)を通過して気体排出口(10)へ移動する。
【0020】
そして、紡糸原液はパワーサプライ(7)の働きによって電圧を印加され、紡糸原液とアース(6)されている捕集面(9a)の間に電界が形成される。
【0021】
次いで、紡糸開始部(4)から紡糸原液が紡糸空間(11)へ放出されると共に、放出された紡糸原液は主として電界の作用によって細径化して繊維化する。そして、繊維は捕集面(9a)に集積され、捕集面(9a)に繊維集合体(13)が製造される。
【0022】
上述のように紡糸が行われている間、排気装置(12)の働きによって紡糸空間(11)に存在する気体は、捕集体(8)を通過して気体排出口(10)へ移動するものとなり、その際、繊維集合体(13)を通過する。
【0023】
本発明の繊維集合体の製造方法及び製造装置は、温度および湿度を調整した気体を紡糸空間(11)へ供給することで、紡糸空間(11)の雰囲気が変化するのを防止し易くなること、並びに前記変化に伴い製造される繊維集合体(13)に含まれる溶媒や水分の量が上昇するのを防止し易くなることが考えられる。
【0024】
更に、紡糸空間(11)へ供給された気体が繊維集合体(13)を通過して気体排出口(10)へ移動するものとなり、その際、繊維集合体(13)を通過する前記気体の力により、繊維が立ち上がるのを防止し易くして、紡糸原液に作用する電界の力が変化することに起因して紡糸条件が意図せず変化するのを防止できると考えられる。
【0025】
以上から、本発明の繊維集合体の製造方法及び製造方法は、紡糸量を問わず紡糸条件が意図せず変化するのを防止できる。
【0026】
以降、本発明の詳細について説明する。
【0027】
本発明において紡糸空間(11)へ供給する気体の種類は、目的の物性を備える繊維集合体(13)を製造できるように適宜選択するが、例えば、空気、酸素、窒素、二酸化炭素、希ガスなどを単独で、あるいは混合して調製することができる。なお、利便性の観点から、空気を利用するのが好ましい。
気体の温度および湿度を調整する方法は適宜選択するが、一般的に入手可能な温湿度調整装置を用いることができる。
なお、本発明で使用する気体の温度および湿度は、目的の物性を備える繊維集合体(13)を製造できるように適宜調整するが、例えば、温度は0℃〜200℃であるのが好ましく、10℃〜100℃であるのがより好ましく、15℃〜30℃であるのが最も好ましい。また、湿度は0%〜100%の範囲内で調整可能であり、5%〜70%であるのが好ましく、5%〜50%であるのがより好ましい。また、調整した気体の温度や湿度の変動幅は少ないほど、目的の物性を備える繊維集合体(13)を製造し易くなる傾向があるため、気体の温度の変動幅は±1℃/時間以下であるのが好ましく、湿度の変動幅は±5RH%/時間以下となるように調整するのが好ましい。
【0028】
給気装置(1)の種類は適宜選択するが、例えば、流量計を備えた気体ポンプや、圧縮ガスを放出できるボンベなどを使用することができる。
なお、気体排出口(10)から供給されている温度および湿度を調整した気体の体積は、例えば、紡糸空間(11)の広さなどによって変化するため、目的の物性を備える繊維集合体(13)を製造できるように適宜選択する。
【0029】
紡糸空間(11)に設ける気体供給口(2)の位置は、目的の物性を備える繊維集合体(13)を製造できるように適宜調整するが、気体供給口(2)から供給された温度および湿度を調整した気体を、紡糸空間(11)全体に供給できるように、紡糸開始部(4)よりも図1における紙面上の上方向側に気体供給口(2)が設けられているのが好ましい。
また、気体供給口(2)の数は適宜調整するものであり、複数設けてもよい。
【0030】
更には、特許文献1が開示するように、例えば、金属又は樹脂製のパンチングプレート、布、不織布などの多孔性材料(図示せず)を間に介して、気体供給口(2)から温度および湿度を調整した気体を供給してもよい。多孔性材料の存在によって温度および湿度を調整した気体の供給が局所的に生じるのを防ぐことができ好ましい。
【0031】
本発明では、気体排出口(10)は裏面(9b)と対面し近接して存在していることを特徴としている。
ここでいう、気体排出口(10)が裏面(9b)と対面しているとは、気体排出口(10)と裏面(9b)が略平行あるいは平行をなすことを意味しており、近接しているとは、気体排出口(10)と裏面(9b)の離間する最短距離が30cm以下であることをいう。
【0032】
気体排出口(10)が裏面(9b)と近接し対面して存在しているため、紡糸空間(11)へ供給された温度および湿度を調整した気体が繊維集合体(13)を通過し易くなり、繊維集合体(13)を通過する気体の力によって繊維が立ち上がるのを防止し易くできる。
上述の効果が効果的に発揮されるように、気体排出口(10)と裏面(9b)の離間する距離は20cm以下であるのが好ましく、10cm以下であるのがより好ましく、理想的には図1に記載しているように0cm(気体排出口(10)と裏面(9b)が接触している状態)であるのが最も好ましい。
【0033】
気体排出口(10)を通過する気体の体積(例えば、排気装置(12)の働きにより気体排出口(10)からサクションされる気体の体積)は、紡糸空間(11)に存在する気体を、捕集体(8)を通過させて気体排出口(10)へ移動できるように調整するものであり、目的の物性を備える繊維集合体(13)を製造できるように適宜選択する。
【0034】
この時、気体供給口(2)から供給されている温度および湿度を調整した気体の体積(A)が、気体排出口(10)を通過する気体の体積(B)以上となる条件において繊維集合体(13)を製造すると、各種装置やケース(3)の隙間、あるいは、後述する別の気体排出口(図2における21)から紡糸空間(11)へ温度および湿度を調整していない気体が流入するのを防止でき、紡糸空間(11)の雰囲気が変化するのを防止し易くなり、毛羽立ちが発生するのを防ぐ、及び/又は、溶媒や水分を含む量が多い繊維集合体が製造されるのを防いで、紡糸条件が意図せず変化するのを防止でき好ましい。
【0035】
また、前記効果が確実に発揮されるように、気体の体積(A)と気体の体積(B)の比率(以降、気体流出入比率、と称する)は、1よりも大きいのが好ましく、具体的には1.1以上であるのがより好ましく、1.5以上であるのが最も好ましい。また、気体流出入比率の上限は適宜調整するものであるが、200以下であるのが好ましく、50以下がより好ましいが、エネルギー効率的には10以下が好ましい。気体流出入比率は以下の式から算出することができる。

気体流出入比率=A/B
A:気体供給口から供給されている、温度および湿度を調整した気体の体積(L/min)
B:気体排出口を通過する気体の体積(L/min)

なお、気体流出入比率が1よりも大きい条件で繊維集合体(13)を製造する場合、気体をケース(3)外(紡糸空間(11)外)に排出できるように、紡糸空間(11)を囲うケース(3)に後述する別の気体排出口(図2における21)を設けるのが好ましい。
【0036】
紡糸原液は、例えば、有機ポリマーや無機ポリマーを溶融させた溶融ポリマー、あるいは、有機ポリマーや無機ポリマーを溶媒に溶解させたポリマー溶液などを使用できる。あるいは、無機ポリマーを形成可能なモノマー化合物やオリゴマー化合物を溶媒に溶解させた溶液を使用できる。
【0037】
紡糸原液を構成する有機ポリマーや無機ポリマーの種類は、本発明において紡糸することができる限り、特に限定されるものではないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなど)、スチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂(ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、アクリル系樹脂、二トリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂などの公知の有機ポリマー、あるいは、金属アルコキシド(ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ホウ素、スズ、亜鉛などのメトキシド、エトキシド、プロポキシド、ブトキシドなど)が重合した無機ポリマーなどの公知の無機系化合物が重合してなるポリマーを用いることができる。
【0038】
これらのポリマーは、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、またポリマーがブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、またポリマーの立体構造や結晶性の有無がいかなるものでも、特に限定されるものではない。
【0039】
また、これら例示以外のポリマーも使用可能であり、例示以外の樹脂も含め、2種以上のポリマーからなる紡糸原液とすることもできる。
【0040】
なお、紡糸原液を構成する成分が、無機ポリマーを形成可能なモノマー化合物やオリゴマー化合物である場合、その種類は、本発明において紡糸することができる限り、特に限定されるものではないが前記化合物として、例えば、金属アルコキシド、金属アセチルアセトネート、酢酸塩、シュウ酸塩等の金属有機化合物を、単一あるいは複数混合して用いることができる。
【0041】
上述の有機ポリマーや無機ポリマーあるいは無機ポリマーを形成可能なモノマー化合物やオリゴマー化合物を溶媒に溶解させる場合、溶媒は紡糸条件によっても変化するため、特に限定されるものではないが、例えば、水、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、アセトニトリル、ギ酸、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、四塩化炭素、塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエタン、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートなどを挙げることができる。これら例示以外の溶媒も使用可能であり、例示以外の溶媒も含め、2種以上の溶媒が混和した混和溶媒を使用することもできる。
【0042】
また、紡糸原液における、有機ポリマーや無機ポリマーあるいは無機ポリマーを形成可能なモノマー化合物やオリゴマー化合物の濃度も、紡糸条件によって適宜調整する。
【0043】
なお、ポリマー溶液におけるポリマーの濃度は、目的の物性を備える繊維集合体(13)を製造できるように適宜調整するが、前記濃度(紡糸原液の質量に占める溶解しているポリマーの質量の百分率)が濃すぎても薄すぎても紡糸を行うことが困難になる傾向があることから、前記濃度は0.1質量%〜90質量%であるのが好ましく、0.5質量%〜50質量%であるのがより好ましく、1質量%〜30質量%であるのが最も好ましい。
【0044】
また、紡糸原液は必要に応じて、例えば、抗菌剤粒子、抗ウイルス剤粒子、抗カビ剤粒子、光触媒粒子、脱臭粒子、色素粒子、難燃剤粒子、防虫剤粒子、殺菌剤粒子、芳香剤粒子、導電性粒子などを混合しても良い。
【0045】
本発明の繊維集合体の製造方法および製造装置(100)において、導電性が向上した紡糸原液を用いて繊維集合体(13)を製造すると、紡糸量を多くした紡糸条件においても目的の物性を備える繊維集合体(13)を製造し易くなる傾向があり好ましい。この理由は完全に明らかになっていないが、紡糸原液の導電性が向上することによって、電界の作用が効率良く紡糸原液に作用することで紡糸条件が意図せず変化するのを防止し易くなり、目的の物性を備える繊維集合体(13)を製造できると考えられる。
【0046】
導電性が向上した紡糸原液として、例えば、導電性のポリマー及び/又は導電性の溶媒を含んだ紡糸原液、塩を溶解あるいは溶融させることで導電性を付与した紡糸原液、導電性粒子を含んだ紡糸原液などを挙げることができる。
【0047】
紡糸原液の導電性を向上させるために使用できる塩の種類として、例えば、塩化リチウムなどの金属塩、有機第4級アンモニウムのハロゲン塩などのハロゲン塩、酢酸アンモニウムやギ酸アンモニウムあるいはシュウ酸アンモニウムなどの有機塩などを挙げることができる。紡糸原液の質量に占める塩の質量の百分率は適宜調整するものであるが、0.001質量%〜90質量%であるのが好ましい。
なお、上述の塩は、紡糸原液中に完全に溶解あるいは融解している状態であっても、あるいは、紡糸原液中に固体で存在している状態であってもよい。
【0048】
また、前記紡糸原液を調製するのに使用できる導電性粒子の種類として、例えば、カーボンブラック、ホウ素変性カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、金属粒子、金属酸化物粒子などを挙げることができる。紡糸原液の質量に占める導電性粒子の質量の百分率は適宜調整するものであるが、前記百分率が高すぎると紡糸原液の繊維化が阻害される傾向があるため、90質量%以下であるのが好ましく、80質量%以下であるのがより好ましく、70質量%以下であるのが最も好ましい。また、前記百分率が低い場合には紡糸原液の導電性を向上する効果が得られ難いことから、0.01質量%以上であるのが好ましく、0.1質量%以上であるのがより好ましく、1質量%以上であるのが最も好ましい。
【0049】
そして、導電性粒子の平均粒子径は適宜調整するものであるが、製造した繊維集合体(13)から導電性粒子が脱落するのを防ぐと共に繊維形状の均一な繊維集合体(13)を製造することができるように、導電性粒子の平均粒子径は10μm以下であるのが好ましく、1μm以下であるのがより好ましく、0.1μm以下であるのが最も好ましい。また、前記平均粒子径の下限は適宜調製するものであるが、現実的には0.001μm以上であるのが好ましい。
【0050】
なお、本発明において平均粒子径とは、動的光散乱法による粒度分布計から求めた固体粒子の数平均粒子径を表すものとするが、例えばカーボンブラックなどのアグリゲートもしくはストラクチャーと呼ばれる状態を形成し得る粒子の平均粒子径を求める場合、上述した動的光散乱法では平均粒子径が正確に測定できない傾向がある。
そのため、アグリゲートもしくはストラクチャーと呼ばれる状態を形成し得る粒子の平均粒子径を求める場合には、粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、電子顕微鏡写真に写っている50個の粒子における各粒子の直径の平均値を算出することで求める。なお、電子顕微鏡写真に写る粒子の形状が非円形である場合には、電子顕微鏡写真に写る前記形状の粒子と同じ面積を有する円の直径を、粒子の直径とみなす。
【0051】
紡糸開始部(4)は紡糸原液を放出できる部材を指し、紡糸開始部(4)の種類や形状は、目的の物性を備える繊維集合体(13)を製造できるように適宜調整するが、例えば、ノズル、スリットなどを備える部材を使用することができる。また、繊維集合体の製造装置(100)に設ける紡糸開始部(4)の数も、目的の物性を備える繊維集合体(13)を製造できるように適宜調整する。例えば、特開2006−112023号公報に開示されているように、周回可能なエンドレス軌道に沿って運動する複数の紡糸開始部(4)を設けることができる。
【0052】
また、紡糸開始部(4)が金属製など導電性を有している場合には、図1のように紡糸開始部(4)に電圧を印加することで、紡糸原液に電圧を印加することができる。
【0053】
電界を形成する方法は適宜調整するが、パワーサプライ(7)により紡糸原液へ電圧を印加することで、帯電した紡糸原液と、アースした対向電極との間に電位差を形成させる方法を採用することができる。なお、紡糸原液に印加する電圧の極性は正極あるいは負極のいずれであっても構わず、目的の物性を備える繊維集合体(13)を製造できるように適宜調整する。
【0054】
後述する捕集体(8)が金属製など導電性を有している場合には、図1のように捕集体(8)をアース(6)することで対向電極とすることができる。また、捕集体(8)が導電性を有していない場合には、捕集体(8)の裏面(9b)側に別途アースされた対向電極(図示せず)を設けてもよい。
【0055】
なお、以上の説明ではパワーサプライ(7)によって紡糸原液に電圧を印加する態様を説明したが、紡糸原液をアースし、パワーサプライ(7)によって対向電極に電圧を印加してもよい。あるいは、紡糸原液と対向電極の間に電位差が形成されるように、パワーサプライ(7)によって紡糸原液および対向電極に電圧を印加してもよい。
【0056】
紡糸原液と対向電極との間の電位差は、目的の物性を備える繊維集合体(13)を製造できるように適宜調整するが、電位差が大きすぎると、対向電極と紡糸開始部(4)との間などの部材間で絶縁破壊が生じて紡糸ができなくなる恐れがあり、電位差が小さすぎると、紡糸原液が繊維化し難くなる傾向があることから、前記電位差は0.1〜10kV/cmであるのが好ましく、0.1〜5kV/cmであるのが最も好ましい。
【0057】
また、紡糸開始部(4)に電圧を印加する場合、紡糸開始部(4)と対向電極との距離は、目的の物性を備える繊維集合体(13)を製造できるように適宜調整するが、前記距離が長すぎると電界の作用が弱くて紡糸原液が繊維化し難くなる傾向があることから、前記距離は100cm以下であるのが好ましく、80cm以下であるのがより好ましく、50cm以下であるのが最も好ましい。また、前記距離が短すぎると、紡糸開始部(4)と対向電極との間などの部材間で絶縁破壊が生じて紡糸ができなくなる恐れがあることから、前記距離は1cm以上であるのが好ましい。
【0058】
本発明でいう「主として電界の作用によって繊維化」するとは、紡糸開始部(4)から紡糸空間(11)へ放出されている紡糸原液が繊維化するのに必要な力が、電界の作用であることを意味している。
なお、紡糸開始部(4)から紡糸空間(11)へ放出されている紡糸原液に、重力の作用や、気体供給口(2)から供給されている温度および湿度を調整した気体の流れなどの力が作用している場合であっても、前記力が紡糸原液の進行方向や進行速度を大きく変更させるほどの作用を示すものではない場合、あるいは、繊維化の程度を大きく変化させるほどの作用を示すものではない場合には、紡糸原液が主として電界の作用によって繊維化している範囲に含める。
【0059】
本発明の繊維集合体の製造方法および製造装置(100)は、「主として電界の作用によって繊維化」できるため、紡糸原液に過度の力が作用することを防いでおり、紡糸条件が意図せず変化し得る原因を少なくできるため、紡糸条件が意図せず変化するのを防止し易くなり、目的の物性を備える繊維集合体(13)を製造し易い。
そのため、紡糸開始部(4)から紡糸空間(11)へ放出されている紡糸原液に、電界の作用以外の過度の力が作用するのを避けるため、紡糸開始部(4)から紡糸空間(11)へ放出された紡糸原液の、進行方向や進行速度を大きく変更させるほどの作用を示す、あるいは、繊維化の程度を大きく変化させるほどの作用を示す力(例えば、ガス流、液流、遠心力などの力)を、紡糸開始部(4)から紡糸空間(11)へ放出された紡糸原液へ作用させることなく繊維集合体(13)を製造する。
【0060】
紡糸空間(11)へ供給された温度および湿度を調整した気体が通過できるように、捕集体(8)として、例えばネットや多孔フィルムあるいは布帛(例えば、不織布、織物、編み物など)などの通気性多孔体を使用する。
【0061】
また、図1では捕集体(8)として板状の部材を使用している態様を図示しているが、繊維集合体(13)を連続して製造することができるように、通気性多孔体からなるベルトコンベアなど繊維集合体(13)を搬送可能な捕集体(8)を使用してもよい。なお、捕集体(8)による繊維集合体(13)の搬送速度は、目的の物性を備える繊維集合体(13)を製造できるように、適宜調整する。
【0062】
そして、繊維集合体(13)と他の素材(例えば、ネットや多孔フィルムあるいは布帛など)との積層体を調製する場合には、前記素材を捕集体(8)として用いることで、他の素材に繊維を集積させて積層体を調製してもよい。
【0063】
なお、紡糸開始部(4)と捕集面(9a)との距離は、目的の物性を備える繊維集合体(13)を製造できるように適宜調整するが、前記距離は100cm以下であるのが好ましく、80cm以下であるのがより好ましく、50cm以下であるのが最も好ましい。また、前記距離の下限値は1cm以上であるのが現実的であり好ましい。
【0064】
また、捕集体(8)が繊維集合体(13)を搬送可能である場合、繊維集合体(13)の搬送方向における端部に、例えば回転するローラなどの繊維集合体(13)を巻き取ることのできる装置(図示せず)や、例えば、加熱処理、冷却処理、プラズマ処理やスルホン化処理あるいはフッ素処理などの表面改質処理、帯電処理など繊維集合体(13)を後加工するできる装置(図示せず)、あるいは、別途用意した素材と積層させる装置(図示せず)などを設けてもよい。
【0065】
以上に説明した本発明の繊維集合体の製造方法および製造装置(100)の変更例について、別の繊維集合体の製造装置の模式的側面図である図2を用いて説明する。
【0066】
別の繊維集合体の製造装置(200)は、上述した繊維集合体の製造装置(100)の構成以外に、紡糸開始部(4)から捕集体(8)に向かう方向において、捕集体(10)の裏面(9b)から気体排出口(10)よりも離れた位置(換言すれば、ケース(3)の終焉部分付近)に、別の気体排出口(21)を備えていることを特徴とする。
【0067】
別の繊維集合体の製造装置(200)では、別の気体排出口(21)を経てケース(3)内の気体がケース(3)外(紡糸空間(11)外)へ排出され得る。そのため、気体流出入比率が1よりも大きい条件で繊維集合体(13)を製造することが容易となるため、紡糸空間(11)へ温度および湿度を調整していない気体が流入するのを確実に防止できる。
なお、別の気体排出口(21)からケース(3)外へ排出する気体の体積は、目的の物性を備える繊維集合体(13)を製造できるように適宜調整する。
【0068】
別の気体排出口(21)から気体をケース(3)外へ排出する方法は適宜選択するが、例えば、図2に図示しているように、ケース(3)に穴を開けるなどして切り欠き部分を設ける方法や、別途設けた排気装置(図示せず)の動作によって気体を別の気体排出口(21)からケース(3)外へ排出する方法などを採用できる。また、別の気体供給口(21)の数は適宜調整するものであり、複数設けてもよい。
【0069】
更には、特許文献1が開示するように、例えば、金属又は樹脂製のパンチングプレート、布、不織布などの多孔性材料(図示せず)を間に介して、気体を別の気体排出口(21)からフレーム(3)外へ排出することで、多孔性材料の存在により排気が局所的に生じるのを防ぐことができ好ましい。
【実施例】
【0070】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0071】
(毛羽立ちの有無の評価方法)
繊維集合体の製造中における、繊維集合体の表面を目視にて確認し、繊維集合体の表面に毛羽立ちが発生したかどうかを評価した。
つまり、繊維集合体の主面に毛羽立ちが認められなかった場合には○印を記載し、繊維集合体の主面に毛羽立ちが若干認められた場合には△印を記載し、繊維集合体の主面に毛羽立ちが多数認められた場合には×印を記載した。
【0072】
(目付の測定方法)
繊維集合体の質量(単位:g)を測定し、測定された質量を前記繊維集合体における広い面積を有する面(主面)側から見た際の、1mあたりの質量に換算した値を目付(単位:g/m)とした。
【0073】
(繊維集合体に含まれる溶媒や水分の計測方法)
以下の式に、各測定された目付を代入することで、繊維集合体に含まれる溶媒や水分の百分率(%)を算出した。
A={(B−C)/C}×100
A:繊維集合体に含まれる溶媒や水分の百分率(%)
B:ステンレスメッシュの捕集面から引き剥がした直後(乾燥前)の繊維集合体の目付(g/m
C:乾燥後の繊維集合体の目付(g/m
【0074】
(紡糸原液Aの調製)
重量平均分子量20万のポリアクリロニトリル(PAN)を、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に質量比率が(PAN:DMF=16質量%:84質量%)となるように溶解させて、PANの濃度が16質量%の紡糸原液Aを調製した。
【0075】
(紡糸原液Bの調製)
フッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(ダイキン工業社製、品名:VT−470)を、DMFに質量比率が(前記共重合体:DMF=10質量%:90質量%)となるように溶解させて、前記共重合体の濃度が10質量%の溶液を得た。
次いで、導電性粒子としてカーボンブラック(電気化学工業株式会社製、デンカブラック(登録商標)粒状品、平均粒子径:35nm)を前記溶液に混合し、更にDMFを加えて希釈してカーボンブラックを分散させた紡糸原液Bを調製した。
なお、紡糸原液Bに含まれているカーボンブラックと前記共重合体の質量比率は(カーボンブラック:前記共重合体=40質量%:60質量%)であり、紡糸原液Bの濃度は12質量%(カーボンブラックと前記共重合体の合計:DMF=12質量%:88質量%)であった。
【0076】
(製造装置の準備)
図2に示すような製造装置を用意した。
つまり、ケースに周囲を囲われた空間(縦:1000mm、横:1000mm、高:1000mm)に、紡糸原液を放出できる、内径が0.33mmの金属製ノズルを固定した。そして、直流高電圧発生装置を金属製ノズルに接続することで、紡糸原液に電圧を印加できるようにした。
次いで、捕集体としてステンレスメッシュを用意しアースした。そして、アースしたステンレスメッシュを、金属製ノズルよりも図2における紙面上の下方向側に設置した。
更に、金属製ノズルよりも図2における紙面上の上方向側に、気体ポンプによって温度および湿度を調整した空気を紡糸空間へ供給できる、気体供給口を設けた。
また、ステンレスメッシュの捕集面(ステンレスメッシュの、図2における紙面上の上方向側の面)に対向する裏面(ステンレスメッシュの、図2における紙面上の下方向側の面)と対面し近接するようにして、気体排出口としてサクション装置のサクション口を設けた。なお、ステンレスメッシュの裏面とサクション口は平行を成して対面すると共に、ステンレスメッシュの裏面とサクション口が接触する状態にした。また、サクション口からサクションされた気体は、ケース外に排出されるようにした。
更に、ケースにおける、ノズルからステンレスメッシュに向かう方向において、サクション口よりも離れた位置(サクション口よりも、図2における紙面上の下方向側の位置)に切り欠きを設けた。なお、切り欠きは気体をケース外へ排出する別の気体排出口として働き得るものであった。
【0077】
紡糸原液Aを用いて、以下の実施例1−5および比較例1−2の条件で繊維集合体を製造した。
【0078】
(実施例1)
以下の条件において、ステンレスメッシュの捕集面上に繊維集合体を製造した。
・金属製ノズルの先端とステンレスメッシュとの距離:8cm
・紡糸原液に印加した電圧:17kV
・気体供給口から供給した空気の、温度および湿度:温度25℃、湿度40%RH
・気体供給口から供給した、温度および湿度を調整した空気の体積:10L/秒
・サクション口からサクションした空気の体積:10L/秒
・気体流出入比率:1
・切り欠きからケース外へ排出された空気の体積:0L/秒
・紡糸原液の種類:紡糸原液A
・金属製ノズルから放出された紡糸原液の質量(紡糸量):2g/時間

なお、繊維集合体の製造中に、繊維集合体の表面に毛羽立ちは認められず、安定した紡糸状態を保ち繊維集合体を製造することができた。
次いで、ステンレスメッシュの捕集面に製造された繊維集合体を、ステンレスメッシュから引き剥がして目付を測定した。この時の繊維集合体の目付(乾燥前の目付)は、10.10g/mであった。
その後、引き剥がした繊維集合体を、60℃に調節したドライヤー装置へ30分間供することで、繊維集合体中から溶媒および水分を除去し乾燥させた。なお、乾燥後の繊維集合体の目付は10.00g/mであった。
【0079】
(実施例2)
以下のように紡糸条件を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ステンレスメッシュの捕集面上に繊維集合体を製造した。
・気体供給口から供給した、温度および湿度を調整した空気の体積:11L/秒
・サクション口からサクションした空気の体積:10L/秒
・気体流出入比率:1.1
・切り欠きからケース外へ排出された空気の体積:1L/秒

なお、繊維集合体の製造中に、繊維集合体の表面に毛羽立ちは認められず、安定した紡糸状態を保ち繊維集合体を製造することができた。
次いで、ステンレスメッシュの捕集面に製造された繊維集合体を、ステンレスメッシュから引き剥がして目付を測定した。この時の繊維集合体の目付(乾燥前の目付)は、15.15g/mであった。
その後、引き剥がした繊維集合体を、60℃に調節したドライヤー装置へ30分間供することで、繊維集合体中から溶媒および水分を除去し乾燥させた。なお、乾燥後の繊維集合体の目付は15.00g/mであった。
【0080】
(実施例3)
以下のように紡糸条件を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ステンレスメッシュの捕集面上に繊維集合体を製造した。
・気体供給口から供給した、温度および湿度を調整した空気の体積:15L/秒
・サクション口からサクションした空気の体積:10L/秒
・気体流出入比率:1.5
・切り欠きからケース外へ排出された空気の体積:5L/秒

なお、繊維集合体の製造中に、繊維集合体の表面に毛羽立ちは認められず、安定した紡糸状態を保ち繊維集合体を製造することができた。
次いで、ステンレスメッシュの捕集面に製造された繊維集合体を、ステンレスメッシュから引き剥がして目付を測定した。この時の繊維集合体の目付(乾燥前の目付)は、15.30g/mであった。
その後、引き剥がした繊維集合体を、60℃に調節したドライヤー装置へ30分間供することで、繊維集合体中から溶媒および水分を除去し乾燥させた。なお、乾燥後の繊維集合体の目付は15.00g/mであった。
【0081】
(実施例4)
以下のように紡糸条件を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ステンレスメッシュの捕集面上に繊維集合体を製造した。
・気体供給口から供給した、温度および湿度を調整した空気の体積:9L/秒
・サクション口からサクションした空気の体積:10L/秒
・気体流出入比率:0.9
・切り欠きからケース外へ排出された空気の体積:0L/秒

なお、繊維集合体の製造中に、繊維集合体の表面に繊維の若干毛羽立ちが発生したものの、繊維集合体を製造することができた。
次いで、ステンレスメッシュの捕集面に製造された繊維集合体を、ステンレスメッシュから引き剥がして目付を測定した。この時の繊維集合体の目付(乾燥前の目付)は、15.30g/mであった。
その後、引き剥がした繊維集合体を、60℃に調節したドライヤー装置へ30分間供することで、繊維集合体中から溶媒および水分を除去し乾燥させた。なお、乾燥後の繊維集合体の目付は15.00g/mであった。
【0082】
(実施例5)
以下のように紡糸条件を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ステンレスメッシュの捕集面上に繊維集合体を製造した。
・金属製ノズルから放出された紡糸原液の質量(紡糸量):10g/時間

なお、繊維集合体の製造中に、繊維集合体の表面に毛羽立ちは認められず、安定した紡糸状態を保ち繊維集合体を製造することができた。
次いで、ステンレスメッシュの捕集面に製造された繊維集合体を、ステンレスメッシュから引き剥がして目付を測定した。この時の繊維集合体の目付(乾燥前の目付)は、15.15g/mであった。
その後、引き剥がした繊維集合体を、60℃に調節したドライヤー装置へ30分間供することで、繊維集合体中から溶媒および水分を除去し乾燥させた。なお、乾燥後の繊維集合体の目付は15.00g/mであった。
【0083】
(比較例1)
気体供給口から温度および湿度を調整していない空気を供給したこと以外は、実施例1と同様にして、ステンレスメッシュの捕集面上に繊維集合体を製造した。
なお、繊維集合体の製造中に、繊維集合体の表面に毛羽立ちが多数存在しており、安定した紡糸状態を保ち繊維集合体を製造することができなかった。
次いで、ステンレスメッシュの捕集面に製造された繊維集合体を、ステンレスメッシュから引き剥がそうとしたものの、前記繊維集合体は取り扱い性が悪かったため、ステンレスメッシュから引き剥がすことができず目付の測定、および、後述する各種測定方法へ供することができなかった。
【0084】
(比較例2)
以下のように紡糸条件を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ステンレスメッシュの捕集面上に繊維集合体を製造した。
・気体供給口から供給した、温度および湿度を調整した空気の体積:10L/秒
・サクション口からサクションした空気の体積:0L/秒
・切り欠きからケース外へ排出された空気の体積:10L/秒

なお、繊維集合体の製造中に、繊維集合体の表面に毛羽立ちが多数存在しており、安定した紡糸状態を保ち繊維集合体を製造することができなかった。

次いで、ステンレスメッシュの捕集面に製造された繊維集合体を、ステンレスメッシュから引き剥がそうとしたものの、前記繊維集合体は取り扱い性が悪かったため、ステンレスメッシュから引き剥がすことができず目付の測定、および、後述する各種測定方法へ供することができなかった。

続いて、紡糸原液Bを用いて、以下の実施例6−11および比較例3−4の条件で繊維集合体を製造した。
【0085】
(実施例6)
以下の条件において、ステンレスメッシュの捕集面上に繊維集合体を製造した。
・金属製ノズルの先端とステンレスメッシュとの距離:15cm
・紡糸原液に印加した電圧:12kV
・気体供給口から供給した空気の、温度および湿度:温度25℃、湿度40%RH
・気体供給口から供給した、温度および湿度を調整した空気の体積:10L/秒
・サクション口からサクションした空気の体積:10L/秒
・気体流出入比率:1
・切り欠きからケース外へ排出された空気の体積:0L/秒
・紡糸原液の種類:紡糸原液B
・金属製ノズルから放出された紡糸原液の質量(紡糸量):2g/時間

なお、繊維集合体の製造中に、繊維集合体の表面に毛羽立ちは認められず、安定した紡糸状態を保ち繊維集合体を製造することができた。
次いで、ステンレスメッシュの捕集面に製造された繊維集合体を、ステンレスメッシュから引き剥がして目付を測定した。この時の繊維集合体の目付(乾燥前の目付)は、11.22g/mであった。
その後、引き剥がした繊維集合体を、60℃に調節したドライヤー装置へ30分間供することで、繊維集合体中から溶媒および水分を除去し乾燥させた。なお、乾燥後の繊維集合体の目付は11.00g/mであった。
【0086】
(実施例7)
以下のように紡糸条件を変更したこと以外は、実施例6と同様にして、ステンレスメッシュの捕集面上に繊維集合体を製造した。
・金属製ノズルの先端とステンレスメッシュとの距離:20cm
・紡糸原液に印加した電圧:15kV
・金属製ノズルから放出された紡糸原液の質量(紡糸量):10g/時間

なお、繊維集合体の製造中に、繊維集合体の表面に毛羽立ちは認められず、安定した紡糸状態を保ち繊維集合体を製造することができた。
次いで、ステンレスメッシュの捕集面に製造された繊維集合体を、ステンレスメッシュから引き剥がして目付を測定した。この時の繊維集合体の目付(乾燥前の目付)は、15.30g/mであった。
その後、引き剥がした繊維集合体を、60℃に調節したドライヤー装置へ30分間供することで、繊維集合体中から溶媒および水分を除去し乾燥させた。なお、乾燥後の繊維集合体の目付は15.00g/mであった。
【0087】
(実施例8)
以下のように紡糸条件を変更したこと以外は、実施例6と同様にして、ステンレスメッシュの捕集面上に繊維集合体を製造した。
・金属製ノズルから放出された紡糸原液の質量:30g/時間

なお、繊維集合体の製造中に、繊維集合体の表面に毛羽立ちは認められず、安定した紡糸状態を保ち繊維集合体を製造することができた。
次いで、ステンレスメッシュの捕集面に製造された繊維集合体を、ステンレスメッシュから引き剥がして目付を測定した。この時の繊維集合体の目付(乾燥前の目付)は、15.15g/mであった。
その後、引き剥がした繊維集合体を、60℃に調節したドライヤー装置へ30分間供することで、繊維集合体中から溶媒および水分を除去し乾燥させた。なお、乾燥後の繊維集合体の目付は15.00g/mであった。
【0088】
(実施例9)
以下のように紡糸条件を変更したこと以外は、実施例8と同様にして、ステンレスメッシュの捕集面上に繊維集合体を製造した。
・気体供給口から供給した、温度および湿度を調整した空気の体積:11L/秒
・サクション口からサクションした空気の体積:10L/秒
・気体流出入比率:1.1
・切り欠きからケース外へ排出された空気の体積:1L/秒

なお、繊維集合体の製造中に、繊維集合体の表面に毛羽立ちは認められず、安定した紡糸状態を保ち繊維集合体を製造することができた。
次いで、ステンレスメッシュの捕集面に製造された繊維集合体を、ステンレスメッシュから引き剥がして目付を測定した。この時の繊維集合体の目付(乾燥前の目付)は、15.30g/mであった。
その後、引き剥がした繊維集合体を、60℃に調節したドライヤー装置へ30分間供することで、繊維集合体中から溶媒および水分を除去し乾燥させた。なお、乾燥後の繊維集合体の目付は15.00g/mであった。
【0089】
(実施例10)
以下のように紡糸条件を変更したこと以外は、実施例8と同様にして、ステンレスメッシュの捕集面上に繊維集合体を製造した。
・気体供給口から供給した、温度および湿度を調整した空気の体積:15L/秒
・サクション口からサクションした空気の体積:10L/秒
・気体流出入比率:1.5
・切り欠きからケース外へ排出された空気の体積:5L/秒

なお、繊維集合体の製造中に、繊維集合体の表面に毛羽立ちは認められず、安定した紡糸状態を保ち繊維集合体を製造することができた。
次いで、ステンレスメッシュの捕集面に製造された繊維集合体を、ステンレスメッシュから引き剥がして目付を測定した。この時の繊維集合体の目付(乾燥前の目付)は、15.30g/mであった。
その後、引き剥がした繊維集合体を、60℃に調節したドライヤー装置へ30分間供することで、繊維集合体中から溶媒および水分を除去し乾燥させた。なお、乾燥後の繊維集合体の目付は15.00g/mであった。
【0090】
(実施例11)
以下のように紡糸条件を変更したこと以外は、実施例8と同様にして、ステンレスメッシュの捕集面上に繊維集合体を製造した。
・気体供給口から供給した、温度および湿度を調整した空気の体積:9L/秒
・サクション口からサクションした空気の体積:10L/秒
・気体流出入比率:0.9
・切り欠きからケース外へ排出された空気の体積:0L/秒

なお、繊維集合体の製造中に、繊維集合体の表面に繊維の若干毛羽立ちが発生したものの、繊維集合体を製造することができた。
次いで、ステンレスメッシュの捕集面に製造された繊維集合体を、ステンレスメッシュから引き剥がして目付を測定した。この時の繊維集合体の目付(乾燥前の目付)は、19.50g/mであった。
その後、引き剥がした繊維集合体を、60℃に調節したドライヤー装置へ30分間供することで、繊維集合体中から溶媒および水分を除去し乾燥させた。なお、乾燥後の繊維集合体の目付は15.00g/mであった。
【0091】
(比較例3)
気体供給口から温度および湿度を調整していない空気を供給したこと以外は、実施例6と同様にして、ステンレスメッシュの捕集面上に繊維集合体を製造した。
なお、繊維集合体の製造中に、繊維集合体の表面に立ち上がった繊維が多数存在しており、安定した紡糸状態を保ち繊維集合体を製造することができなかった。

次いで、ステンレスメッシュの捕集面に製造された繊維集合体を、ステンレスメッシュから引き剥がして目付を測定した。この時の繊維集合体の目付(乾燥前の目付)は、24.00g/mであった。
その後、引き剥がした繊維集合体を、60℃に調節したドライヤー装置へ30分間供することで、繊維集合体中から溶媒および水分を除去し乾燥させた。なお、乾燥後の繊維集合体の目付は15.00g/mであった。
【0092】
(比較例4)
以下のように紡糸条件を変更したこと以外は、実施例6と同様にして、ステンレスメッシュの捕集面上に繊維集合体を製造した。
・気体供給口から供給した、温度および湿度を調整した空気の体積:10L/秒
・サクション口からサクションした空気の体積:0L/秒
・切り欠きからケース外へ排出された空気の体積:10L/秒

なお、繊維集合体の製造中に、繊維集合体の表面に立ち上がった繊維が多数存在しており、安定した紡糸状態を保ち繊維集合体を製造することができなかった。

次いで、ステンレスメッシュの捕集面に製造された繊維集合体を、ステンレスメッシュから引き剥がして目付を測定した。この時の繊維集合体の目付(乾燥前の目付)は、29.70g/mであった。
その後、引き剥がした繊維集合体を、60℃に調節したドライヤー装置へ30分間供することで、繊維集合体中から溶媒および水分を除去し乾燥させた。なお、乾燥後の繊維集合体の目付は18.00g/mであった。
【0093】
実施例および比較例で製造した乾燥後の繊維集合体を、以下に記載する各種方法へ供することで繊維集合体の各種物性の評価を行い、表1および表2にまとめた。
【0094】
(厚さの計測方法)
繊維集合体を厚さ測定器(ミツトヨ社製、コードNo.547−401、測定力:3.5N以下)へ供し、計測した10点の厚さの算術平均値を厚さとした。
【0095】
(空隙率の計測方法)
本発明における空隙率(単位:%)は次の式から算出した。
P=100−(Fr1+Fr2+・・+Frn)
ここで、Frnは繊維集合体を構成する成分n(例えば、ポリマー、導電性粒子等)の充填率(単位:%)を示し、次の式から得られる値をいう。
Frn=[(M/T)×Prn/SGn]×100
ここで、Mは繊維集合体の目付(単位:g/m)、Tは繊維集合体の厚さ(単位:cm)、Prnは繊維集合体を構成する成分nの存在質量比率(単位:質量%)、SGnは成分nの密度(単位:g/cm)をそれぞれ意味する。
【0096】
(平均繊維径の計測方法)
繊維集合体の電子顕微鏡写真を測定し、無作為に選んだ40点における繊維直径の算術平均値を算出することで、平均繊維径を求めた。
なお、「繊維直径」とは、前記選択した繊維が、例えば導電性粒子などの粒子が露出した繊維のみである場合には、露出した粒子を含めた繊維横断面における直径を意味する。また、前記選択した繊維が、粒子が露出した繊維を含んでいない場合、あるいは、粒子が露出した繊維を含有していても粒子が露出していない部分を有する繊維を含んでいる場合には、繊維における粒子が露出していない部分の繊維横断面における直径を意味する。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
なお、表1および表2では、「金属製ノズルから放出された紡糸原液の質量」を「紡糸量」、そして、「繊維集合体に含まれる溶媒や水分の百分率」を「百分率」と記載している。
【0100】
実施例1と比較例1−2を比較した結果、ならびに、実施例6と比較例3−4を比較した結果から、本発明に係る繊維集合体の製造方法は、温度および湿度を調整した気体を紡糸空間へ供給すると共に、紡糸空間に存在する気体を、捕集体を通過させて、捕集面に対向する裏面と対面し近接して存在している気体排出口へ移動させることによって、繊維集合体の表面に毛羽立ちが発生するのを防いで、溶媒や水分を含む量の少ない繊維集合体を製造できることが判明した。
【0101】
更に、各実施例の結果から、次のことが判明した。
・実施例1と実施例5、ならびに、実施例6−8から、本発明の繊維集合体の製造方法は、紡糸量を多くした場合であっても、繊維集合体の表面に毛羽立ちが発生するのを防いで、溶媒や水分を含む量の少ない繊維集合体を製造できることが判明した。
・実施例1−3と参考例1とを比較した結果、ならびに、実施例8−10と参考例2とを比較した結果から、気体流出入比率を1以上に調整することで、毛羽立ちが発生するのを防ぐ、及び/又は、溶媒や水分を含む量が多い繊維集合体が製造されるのを防止できることが判明した。
【0102】
以上から、本発明の繊維集合体の製造方法及び製造装置は、紡糸量を問わず紡糸条件が意図せず変化するのを防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の繊維集合体の製造方法及び製造装置は、例えば、アルカリ電池用セパレータ、リチウム電池用セパレータ、キャパシター用セパレータあるいはレドックスフロー電池用セパレータ等の電気化学素子用セパレータ、前記電気化学素子用電極材料、ガス拡散層基材などの燃料電池や空気電池の構成部材、気体や液体の濾過材料、貼付剤用基材やプラスター剤用基材などの医療用材料、芯地などの衣料材料、化粧水等を保持したスキンケアシートやタオルあるいはオムツなどの衛生用品、ワイピング材や吸液シートなどの清掃用品、バイオリアクターや細胞培養基材などのバイオサイエンス材料など、様々な産業資材用途に有用な繊維集合体を製造することができる。
【符号の説明】
【0104】
100・・・繊維集合体の製造装置
1・・・給気装置
2・・・気体供給口
3・・・ケース
4・・・紡糸開始部
5・・・パワーサプライのアース
6・・・対向電極のアース
7・・・パワーサプライ
8・・・捕集体
9a・・・捕集面
9b・・・裏面
10・・・気体排出口
11・・・紡糸空間
12・・・排気装置
13・・・繊維集合体
200・・・別の繊維集合体の製造装置
21・・・別の気体排出口
図1
図2