特許第6120601号(P6120601)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6120601
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】孔版印刷機の排版装置
(51)【国際特許分類】
   B41L 13/14 20060101AFI20170417BHJP
   B41L 13/00 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   B41L13/14 V
   B41L13/00
【請求項の数】1
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-26247(P2013-26247)
(22)【出願日】2013年2月14日
(65)【公開番号】特開2014-151637(P2014-151637A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2016年1月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】樋口 武士
【審査官】 亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−142485(JP,A)
【文献】 特開2002−079735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41L 13/14
B41L 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
版胴から取り外された使用済みの孔版原紙を排版搬送方向に搬送する排版搬送手段と、
前記排版搬送手段により搬送された前記使用済みの孔版原紙を開口部から搬入して内部に収納する排版ボックスと、
前記使用済みの孔版原紙の幅方向に沿って設けた回動軸に回動可能に複数支持され、且つ、前記排版ボックス内に収納された前記使用済みの孔版原紙を排版搬送方向と同じ方向である圧縮方向に向かって圧縮する圧縮爪と、
前記圧縮爪を前記回動軸と一体に回動させる駆動手段と、を備え、
圧縮爪のうち、使用済みの孔版原紙のインク面の幅方向の左右の端部近傍に設けられた圧縮爪には、圧縮方向に向かって突出させた突出部が設けられており、
当該突出部は、圧縮爪の先端部から基部に向かって形成され、かつ、排版ボックス内に設けた複数の底板リブよりも高く、前記先端部と前記基部との間の中間位置まで形成されていることを特徴とする孔版印刷機の排版装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔版印刷機に係り、版胴の外周面から取り外された使用済みの孔版原紙を排版ボックス内で回動可能な圧縮爪により圧縮して多数版収納するように構成した孔版印刷機の排版装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、孔版印刷機の排版装置は、記録媒体上にインク画像を印刷する孔版印刷機に適用されている。
【0003】
上記した孔版印刷機では、製版された1版分の孔版原紙(マスタ)を回転自在な円筒状の版胴の外周面に巻回させ、且つ、版胴内に供給したインクを孔版原紙に形成した穿孔画像部分を通過させて記録媒体(用紙)上にインク画像を印刷するものであり、1版分の孔版原紙により同一のインク画像を多数印刷することができるので多用されている。
【0004】
そして、孔版印刷機内で印刷が終了した後に、使用済みの孔版原紙を版胴から取り外してこの版胴の近傍に設置した排版装置に向けて搬送し、この排版装置に設けた排版ボックス内で使用済みの孔版原紙を回動可能な圧縮爪により1版ごとに圧縮することで、排版ボックス内に圧縮済みの孔版原紙を多数版収納している。
【0005】
その後、排版ボックス内で圧縮済みの孔版原紙が満タン(満杯)になったら、排版ボックスを孔版印刷機から取り外して多数の圧縮済みの孔版原紙をゴミ箱などに廃棄している。
【0006】
この種の孔版印刷機の排版装置に係り、本出願人は先に、使用済みの孔版原紙を圧縮手段(圧縮爪)により圧縮して多数版収納するための排版ボックスを提案している(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
図6は従来の排版ボックスを示した縦断面図である。
【0008】
図6に示した従来の排版ボックス101は、特許文献1に開示されたものであり、ここでは特許文献1を参照して簡略に説明する。
【0009】
図6に示す如く、上記した従来の排版ボックス101は、反時計方向(矢印方向)に回転可能な版胴Hの近傍に着脱自在に設置されており、この版胴Hの外周面に開閉自在に固着したクランパCから取り外された使用済みの孔版原紙(以下、孔版原紙と簡略化して記す場合もある)Gを後述する複数の圧縮爪103により圧縮して多数版収納するものである。
【0010】
また、排版ボックス101は、この上部に上部開口部101aが開口されており、この上部開口部101a側に版胴Hからの使用済みの孔版原紙Gを排版ボックス101内に送り込むための排版ローラ102aなどを有する排版搬送手段102が設置されているので、排版搬送手段102を介して上部開口部101aから使用済みの孔版原紙Gが内部に搬入可能になっている。
【0011】
また、排版ボックス101の上部開口部101aの外側上方には、圧縮爪103が回動軸104に沿って孔版原紙Gの排版搬送方向と直交する幅方向に対応して間隔を隔てて複数固着されている。
【0012】
そして、複数の圧縮爪103は、排版ボックス101の上部開口部101aから圧縮空間部101b内に進退可能になっており、言い換えると、複数の圧縮爪103は回動軸104と一体となって二点鎖線で示した待機位置と、実線で示した圧縮状態よりも少し後方側に設定された空の時のエンド位置(図示せず)との間を回動可能に設けられている。
【0013】
ここで、排版ボックス101について更に詳述すると、排版ボックス101の底板101cは、上部開口部101aの下方の前方側から後方に向かう中間部位にかけて複数の圧縮爪103の回動軌跡に沿って曲線形状に形成され、且つ、中間部位から後板101d側に向かって平坦に形成されている。
【0014】
また、排版ボックス101の底板101cの内面には、インク(図示せず)が付着した孔版原紙Gの貼り付きを防止するための底板リブ101eが圧縮方向と同方向に延在され且つ圧縮方向と直交する方向に間隔を隔てて底板101cと一体に複数設けられており、圧縮方向と直交する方向の隣り合う底板リブ101e間に少なくとも一つの圧縮爪103が進退可能になっている。
【0015】
また、排版ボックス101の底板101cの内面で平坦部位には、補強用リブ101fが底板リブ101eと直交して底板101cと一体に複数設けられている。
【0016】
また、排版ボックス101の後板101dの内面にも、インクが付着した孔版原紙Gの貼り付きを防止するための圧縮部リブ101gが底板リブ101eと略直角に連接して後板101dと一体に複数垂設されている。
【0017】
そして、使用済みの孔版原紙Gが版胴Hから送られてくる度に、複数の圧縮爪103を回動軸104と一体に二点鎖線で示した待機位置(初期位置)から時計方向に回動させて、複数の圧縮爪103で排版ボックス101内に収納された使用済みの孔版原紙Gを圧縮している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2009−23253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ところで、特許文献1に開示された排版ボックス101では、版胴H側から搬送された使用済みの孔版原紙Gを排版ボックス101内で回動可能な複数の圧縮爪103により圧縮して多数版収納する際に、排版ボックス101の底板101cの内面に設けた複数の底板リブ101eと、排版ボックス101の後板101dの内面に設けた複数の圧縮部リブ101gとにより、粘性のあるインクが付着した孔版原紙Gに対して接触面積を減らして、この孔版原紙Gが底板101cの内面や後板101dの内面に貼り付くのを防止することで、排版ボックス101内で孔版原紙Gが移動し易く、且つ、多数の圧縮済みの孔版原紙Gを外部に破棄するときに容易に取り出すことができるが、圧縮時に孔版原紙Gのうちで排版搬送方向と直交する幅方向の左右の端部近傍で下記する第1,第2の問題点が生じることがある。
【0020】
まず、第1の問題点について、図7及び図8を用いて具体的に説明する。
【0021】
図7は使用済みの孔版原紙を示した平面図である。また、図8は従来の排版ボックス内で圧縮した多数の圧縮済みの孔版原紙の幅方向の左右の端部が圧縮方向とは反対方向に向かって膨らんだ状態を示した平面図である。
【0022】
上記した第1の問題点は、排版ボックス101内で使用済みの孔版原紙Gを複数の圧縮爪103により圧縮したときに、多数の圧縮済みの孔版原紙Gの幅方向の左右の端部が圧縮方向とは反対方向に向かって膨らんでしまい、次に送られてきた孔版原紙Gが多数の圧縮済みの孔版原紙Gの幅方向の左右の端部に発生した上記膨らみに衝突し、これにより次に送られてきた孔版原紙Gの幅方向の左右の端部が変形してこの左右の端部の後端部側が排版搬送手段102の排版ローラ102aに接近してしまうので、排版ジャムが発生する危険性がある。
【0023】
即ち、図7に示す如く、未使用の孔版原紙(図示せず)は、インク通過性多孔性支持体(和紙)に接着剤を介して熱可塑性樹脂フィルムが貼り合わされてロール状に巻回されており、製版時に例えばA3サイズ(420mm×297mm)の用紙に応じてこのA3サイズよりも外形寸法が1回り大きな長方形状に1版分切断されている。
【0024】
また、使用済みの孔版原紙Gは、排版時に外形寸法の長手方向が排版搬送方向となり、この長手方向と直交する短手方向が左右の幅方向となっている。
【0025】
また、使用済みの孔版原紙Gは、内部に形成した長方形状のインク面Giに粘性のあるインク(図示せず)が付着し、且つ、インク面Giの外周に沿ってインクが付着していない前後左右の各端部Ga〜Gdが枠状の余白(非インク面)として残されており、Ga,Gbは孔版原紙Gの排版搬送方向(圧縮方向)の前後の端部であり、一方、Gc,Gdは孔版原紙Gの幅方向の左右の端部である。
【0026】
尚、以下の説明において、「孔版原紙Gの幅方向の左右の端部Gc,Gd」を「孔版原紙Gの左右の端部Gc,Gd」と簡略化して記載する場合もある。
【0027】
この際、孔版原紙Gのうちでインクが付着しているインク面Giは、多孔性があって剛性が弱く、しかもインク面Gi同士が接着して圧縮される。一方、インクが付着していない左右の端部Gc,Gdは、インク面Giよりも剛性が強いので一度圧縮しても復元されるので、図8に示す如く、圧縮した多数の孔版原紙Gの幅方向の左右の端部Gc,Gdに排版搬送方向(圧縮方向)とは反対方向に向かって膨らみが生じてしまう。
【0028】
更に、圧縮した多数の孔版原紙Gの幅方向の左右の端部Gc,Gdに上記膨らみが生じると、この膨らみ部分に次に送られてきた孔版原紙Gの幅方向の左右の端部Gc,Gdが衝突して変形すると共に、上記した次に送られてきた孔版原紙Gの幅方向の左右の端部Gc,Gdの後端部Gb側が排版搬送方向とは逆方向に後退して、左右の端部Gc,Gdの後端部Gb側が排版搬送手段102の排版ローラ102aに接近してしまうので、この排版ローラ102aに衝突する可能性があり、排版ジャムが発生する危険性があるので問題となっている。
【0029】
次に、第2の問題点について、図9及び図10を用いて具体的に説明する。
【0030】
図9は排版ボックス内における使用済みの孔版原紙の幅方向の端部の状態を説明するための斜視図であり、(a)は正常状態を示し、(b)は孔版原紙の幅方向の端部が幅方向と直交する方向の隣り合う底板リブ間に垂れ落ちた異常状態を示した図である。また、図10(a),(b)は従来の排版ボックス内において、複数の圧縮爪が待機位置方向に戻るときに、孔版原紙の幅方向の端部側に位置する圧縮爪の下端部が孔版原紙の幅方向の端部の後端部側に引っ掛かる状態を示した縦断面図である。
【0031】
上記した第2の問題点は、排版ボックス101内で使用済みの孔版原紙Gを複数の圧縮爪103により圧縮したときに、上記した第1の問題が発生して、孔版原紙Gのうちで幅方向の左右の端部Gc,Gdに圧縮方向とは反対方向に向かう膨らみが生じた状態で、この端部Gc(又はGd)が排版ボックス101内に設けた複数の底板リブ101eのうちで幅方向の端部側で幅方向と直交する方向の隣り合う底板リブ101e間に垂れ落ち、この底板リブ101e間に位置する圧縮爪103が待機位置に戻るときに、この圧縮爪103で孔版原紙Gの幅方向の端部Gc(又はGd)の後端部Gb側を引っ掛けてしまい、排紙ジャムが発生し易い。
【0032】
即ち、図9(a)に示した正常状態では、排版ボックス101内で使用済みの孔版原紙Gを複数の圧縮爪103により圧縮するときに、孔版原紙Gは排版ボックス101の底板101cの内面に設けた複数の底板リブ101e上を貼り付くことなく圧縮方向に移動し、且つ、孔版原紙Gの幅方向の端部Gc(又はGd)は底板リブ101e上に乗っているので正常である。
【0033】
一方、図9(b)に示した異常状態では、排版ボックス101内に収納された孔版原紙自体は全体的に剛性が低いので、孔版原紙Gのうちで幅方向の端部Gc(又はGd)が排版ボックス101の底板101cの内面に設けた複数の底板リブ101eうちで幅方向の端部側で幅方向と直交する方向の隣り合う底板リブ101e間に垂れ落ちることがある。
【0034】
この状態で複数の圧縮爪103により使用済みの孔版原紙Gを圧縮すると、上記した第1の問題点で述べたような、孔版原紙Gの幅方向の左右の端部Gc,Gdに圧縮方向とは反対方向に向かう膨らみが生じているので、孔版原紙Gの幅方向の端部Gc(又はGd)側で幅方向と直交する方向の隣り合う底板リブ101e間に垂れ落ちた端部Gc(又はGd)の後端部Gb側は圧縮方向とは反対方向に突出するために、上記した隣り合う底板リブ101e間に位置する圧縮爪103の下端部103aが隣り合う底板リブ101e間に垂れ落ちた端部Gc(又はGd)の上方に入り込む。
【0035】
そして、図9(b)に示した異常状態時において、図10(a)に示す如く、複数の圧縮爪103を圧縮状態から反時計方向に回動させて二点鎖線で示した待機位置方向に戻すときに、上記した隣り合う底板リブ101e間に位置する圧縮爪103の下端部103aはこの隣り合う底板リブ101e間に垂れ落ちた孔版原紙Gの幅方向の端部Gc(又はGd)の上方に入り込んでいるので、この圧縮爪103の下端部103aのうちで圧縮方向とは反対側のコーナ部位で孔版原紙Gの幅方向の端部Gc(又はGd)の後端部Gb側を引っ掛けてしまう。
【0036】
この後、図10(b)に示す如く、複数の圧縮爪103を更に反時計方向に回動させて待機位置に戻す過程において、上記した隣り合う底板リブ101e間に位置する圧縮爪103の下端部103aのうちで圧縮方向とは反対側のコーナ部位に引っ掛かった孔版原紙Gの幅方向の端部Gc(又はGd)の後端部Gb側が上方に持ち上げられるので、次に排版される孔版原紙Gの排版経路を塞ぐことになり、これにより排版ジャムが発生するので問題となっている。
【0037】
そこで、排版ボックス内で使用済みの孔版原紙を複数の圧縮爪により圧縮したときに、多数の圧縮済みの孔版原紙の幅方向の左右の端部が排版搬送方向(圧縮方向)とは反対方向に向かって膨らまず、且つ、排版ボックス内の幅方向の端部側で幅方向と直交する方向の隣り合う底板リブ間に垂れ落ちた孔版原紙の幅方向の端部の後端部側がこの隣り合う底板リブ間に位置する圧縮爪の下端部で引っ掛かるのを防止でき、排版ジャムが発生しないように構成した孔版印刷機の排版装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0038】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、請求項1に記載の発明は、版胴から取り外された使用済みの孔版原紙を排版搬送方向に搬送する排版搬送手段と、前記排版搬送手段により搬送された前記使用済みの孔版原紙を開口部から搬入して内部に収納する排版ボックスと、前記使用済みの孔版原紙の幅方向に沿って設けた回動軸に回動可能に複数支持され、且つ、前記排版ボックス内に収納された前記使用済みの孔版原紙を排版搬送方向と同じ方向である圧縮方向に向かって圧縮する圧縮爪と、前記圧縮爪を前記回動軸と一体に回動させる駆動手段と、を備え、圧縮爪のうち、使用済みの孔版原紙のインク面の幅方向の左右の端部近傍に設けられた圧縮爪には、圧縮方向に向かって突出させた突出部が設けられており、当該突出部は、圧縮爪の先端部から基部に向かって形成され、かつ、排版ボックス内に設けた複数の底板リブよりも高く、前記先端部と前記基部との間の中間位置まで形成されていることを特徴とする孔版印刷機の排版装置を提供する。
【発明の効果】
【0039】
請求項1記載の孔版印刷機の排版装置によると、使用済みの孔版原紙を排版ボックス内で回動可能な圧縮爪によりこの孔版原紙の排版搬送方向と同じ方向である圧縮方向に向かって圧縮する際、とくに、圧縮爪は、使用済みの孔版原紙のインク面の幅方向の左右の端部近傍に圧縮方向に向かって突出させた突出部を設けたことにより、この突出部で使用済みの孔版原紙の幅方向の左右の端部側を圧縮方向に向かって過剰に圧縮できるので、圧縮済みの孔版原紙の幅方向の左右の端部側に圧縮方向とは反対方向に向かう膨らみが生じることもなく、また、孔版原紙のインク面の幅方向の左右の端部近傍と対応する部位の圧縮爪が待機位置に戻るときに、この圧縮爪の突出部で孔版原紙の幅方向の端部の後端部側を引っ掛ける現象も生じないので、排版ジャムを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明に係る孔版印刷機の排版装置を示した斜視図である。
図2図1に示した孔版印刷機の排版装置を矢印X−X方向に断面した縦断面図であり、且つ、装置の初期状態を示した図である。
図3】使用済みの孔版原紙を複数の圧縮爪に形成した複数の第1圧縮爪部と、幅方向の左右の端部側に形成した左右一対の第2圧縮爪部とで圧縮する状態を模式的に示した斜視図である。
図4】排版ボックス内で圧縮した多数の圧縮済みの孔版原紙の幅方向の左右の端部側が第2圧縮爪部での圧縮により凹んだ状態を示した平面図である。
図5】(a),(b)は排版ボックス内において、複数の圧縮爪が待機位置方向に戻るときに、孔版原紙の幅方向の端部側に位置する第2圧縮爪部の下端部が孔版原紙の幅方向の端部の後端部側に引っ掛からない状態を示した縦断面図である。
図6】従来の排版ボックスを示した縦断面図である。
図7】使用済みの孔版原紙を示した平面図である。
図8】従来の排版ボックス内で圧縮した多数の圧縮済みの孔版原紙の幅方向の左右の端部が圧縮方向とは反対方向に向かって膨らんだ状態を示した平面図である。
図9】(a),(b)は従来の排版ボックス内における使用済みの孔版原紙の幅方向の端部の状態を説明するための斜視図である。
図10】(a),(b)は従来の排版ボックス内において、複数の圧縮爪が待機位置方向に戻るときに、孔版原紙の幅方向の端部側に位置する圧縮爪の下端部が孔版原紙の幅方向の端部の後端部側に引っ掛かる状態を示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下に本発明に係る孔版印刷機の排版装置の一実施例について、図1図5を参照して詳細に説明する。
【0042】
本発明に係る孔版印刷機の排版装置は、例えばA3サイズ(420mm×297mm)の用紙を印刷可能とする孔版印刷機に採用されており、孔版印刷機内に設けた版胴から取り外された使用済みの孔版原紙を排版ボックス内で回動可能な複数の圧縮爪により圧縮した際に、多数の圧縮済みの孔版原紙の幅方向の左右の端部側で圧縮方向とは反対方向に向かって生じる膨らみや、この膨らみ部位に位置する圧縮爪が待機位置に戻るときに圧縮爪の下端部で孔版原紙を引っ掛ける現象を防止することで、排版ジャムが発生することなく排版できるように構成されている。
【0043】
この際、以下の実施例において、排版ボックス内に収納される多数の使用済みの孔版原紙は、全て同一サイズであり、例えばA3サイズの用紙と対応した外形サイズに設定されているものとする。
【実施例】
【0044】
図1は本発明に係る孔版印刷機の排版装置を斜視的に示している。また、図2図1に示した孔版印刷機の排版装置を矢印X−X方向に断面した縦断面図であり、且つ、装置の初期状態を示している。
【0045】
図1及び図2に示す如く、本発明に係る孔版印刷機の排版装置10は、反時計方向(矢印方向…図2)に回転可能な版胴Hの外周面に開閉自在に固着したクランパC(図2)から取り外された使用済みの孔版原紙(以下、孔版原紙と簡略化して記す場合もある)Gを圧縮して多数版収納する排版ボックス11と、版胴Hから取り外された使用済みの孔版原紙Gを排版搬送方向に搬送する排版搬送手段20(図2)と、排版ボックス11の上部外側で駆動手段(41,42…図2)を介して回動軸43を中心にして回動可能に複数支持された複数の圧縮爪44を有する孔版原紙圧縮手段40と、装置全体を制御する制御手段50(図2)と、を備えている。
【0046】
ここで、本発明に係る孔版印刷機の排版装置10内の各部材について順を追って説明する。
【0047】
まず、図1及び図2に示す如く、上記した排版ボックス11は、不図示の孔版印刷機内に設けた回転自在な版胴Hの近傍に着脱自在に設置されている。
【0048】
この排版ボックス11は、樹脂材を用いて、底板11aと、左右の側板11b,11c(図1)と、後板11dと、天板11e(図2)とに囲まれて箱状に形成されており、この内部に版胴Hから取り外された使用済みの孔版原紙Gを多数版(例えば100版程度)収納可能になっている。
【0049】
尚、図1中では左側板11bの一部を示し、且つ、天板11eを取り外してわかり易く図示している。
【0050】
そして、使用済みの孔版原紙Gが長手方向(搬送方向)と対応して搬送され、且つ、排版搬送方向と同じ方向となる圧縮方向に向かって圧縮されるために、箱状に形成された排版ボックス11の圧縮方向の奥行き寸法は短く設定されている一方、この孔版原紙Gの短手方向(幅方向)と対応した幅寸法は孔版原紙Gの幅寸法よりも一回り大きく長尺に設定されている。
【0051】
また、排版ボックス11は、天板11eの前方部位を切り欠いて、上部に上部開口部11f(図2)が開口されており、且つ、内部空間が使用済みの孔版原紙Gを圧縮するための圧縮空間部11gとなっている。
【0052】
また、排版ボックス11の底板11aは、上部開口部11f(図2)の下方の前方側から後方に向かう中間部位にかけて複数の圧縮爪44の回動軌跡に沿って曲線形状に形成され、且つ、中間部位から後板11d側に向かって平坦に形成されている。
【0053】
また、排版ボックス11の底板11aの内面には、インク(図示せず)が付着した孔版原紙Gの貼り付きを防止するための底板リブ11hが圧縮方向と同方向に延在され且つ圧縮方向と直交する方向に間隔を隔てて底板11aと一体に複数設けられている。
【0054】
この際、複数の底板リブ11hは、底板11aの内面からの高さが7〜8mm程度に形成され、且つ、圧縮方向と直交する方向の厚みが1.5mm程度でインクが付着しないように薄く形成されていると共に、圧縮方向と直交する方向の隣り合う底板リブ11h間の間隔が10数mm程度に形成されており、この隣り合う底板リブ11h間には後述するように複数の圧縮爪44に形成した厚みが1〜2mm程度の第1圧縮爪部44b又は第2圧縮爪部44cが進退可能になっている。
【0055】
また、排版ボックス11の底板11aの内面で平坦部位には、補強用リブ11iが底板リブ11hと直交して底板11aと一体に複数設けられている。
【0056】
また、排版ボックス11の後板11dの内面にも、インクが付着した孔版原紙Gの貼り付きを防止するための圧縮部リブ11jが底板リブ11hと略直角に連接して後板11dと一体に複数垂設されている。
【0057】
更に、排版ボックス11の後板11dの外面には、この排版ボックス11を不図示の筐体内に着脱するための着脱機構部12(図1のみ図示)が取り付けられている。
【0058】
次に、上記した排版搬送手段20は、図2に示す如く、排版ボックス11の上部開口部11fの前方側に設置されて、不図示の筐体に支持されており、版胴Hから取り外された使用済みの孔版原紙Gを上部開口部11fから排版ボックス11内に搬入する機能を有している。
【0059】
この排版搬送手段20では、制御手段50からの指令を介して第1モータ21と第1減速ギア列22とによって回転駆動され且つ紙面に垂直に支持された長尺な回転軸23に複数の駆動プーリ24が孔版原紙Gの幅寸法に対応して適宜な間隔を隔てて固着されている。
【0060】
また、複数の駆動プーリ24に対応して軸25に揺動自在に支持された複数の揺動アーム26の先端に従動プーリ27がそれぞれ回転自在に設けられていると共に、複数の駆動プーリ24と複数の従動プーリ27との間に複数の中間プーリ28が軸29を介して回転自在に設けられている。
【0061】
更に、複数の駆動プーリ24と複数の従動プーリ27と複数の中間プーリ28との間に複数の搬送ベルト30がエンドレスに掛け渡されている。
【0062】
また、複数の搬送ベルト30の下方位置には、各搬送ベルト30に接触して従動回転される各排版ローラ31が軸32を介して回転自在に設けられている。
【0063】
上記のように排版搬送手段20を構成したときに、版胴Hから取り外された使用済みの孔版原紙Gは、複数の搬送ベルト30と複数の排版ローラ31とにより挟持搬送されながら排版ボックス11内に1版ごとに搬送されるようになっている。
【0064】
次に、この実施例の要部を構成する孔版原紙圧縮手段40について、図1及び図2と、新たな図3図5とを用いて説明する。
【0065】
図3は使用済みの孔版原紙を複数の圧縮爪に形成した複数の第1圧縮爪部と、幅方向の左右の端部側に形成した左右一対の第2圧縮爪部とで圧縮する状態を模式的に示している。また、図4は排版ボックス内で圧縮した多数の圧縮済みの孔版原紙の幅方向の左右の端部側が第2圧縮爪部での圧縮により凹んだ状態を平面的に示している。更に、図5(a),(b)は複数の圧縮爪が待機位置方向に戻るときに、孔版原紙の幅方向の端部側に位置する第2圧縮爪部の下端部が孔版原紙の幅方向の端部の後端部側に引っ掛からない状態を断面して示している。
【0066】
上記した孔版原紙圧縮手段40は、図1及び図2を併用して説明すると、排版ボックス11の上部開口部11fの外側上方に設置されて、不図示の筐体に支持されており、版胴Hから取り外された使用済みの孔版原紙Gを後述する回動可能な複数の圧縮爪44により排版ボックス11内で圧縮する機能を有している。
【0067】
この孔版原紙圧縮手段40では、第2モータ41及び第2減速ギア列42に連結された長尺な回動軸43(図2では紙面に垂直に支持されている)が排版ボックス11の上部開口部11fの外側上方で使用済みの孔版原紙Gの幅方向に沿って回動可能に設けられている。
【0068】
上記した回動軸43には、使用済みの孔版原紙Gの幅方向に沿って複数の圧縮爪44がブロック化して固着されており、且つ、複数の圧縮爪44を挟んで回動軸43の左右端側に左右一対の扇型検出板45が固着されている。
【0069】
また、回動軸43の左右端側に固着させた一対の扇型検出板45の少なくとも一方には、複数の圧縮爪44が上方の待機位置(初期位置)に至っていることを検出する待機位置検出用光センサ46と、複数の圧縮爪44が排版ボックス11内に進入して空の時のエンド位置に至っていることを検出する空の時のエンド位置検出用光センサ47とが設置されている。
【0070】
尚、ここでの図示を省略するが、第2モータ41の回転を減速する第2減速ギア列42にエンコーダを取り付けて、複数の圧縮爪44の待機位置を基準としてエンコーダからのパルス数を制御手段50を介して計数することで、上記した空の時のエンド位置を検出するように構成すれば上記した光センサを省略できると共に、エンコーダからのパルスの間隔を制御手段50を介して計測することで、このパルスの間隔が長くなったときに第2モータ41に負荷がかかっているので孔版原紙Gが満タン(満杯)であることを検出できる。
【0071】
そして、複数の圧縮爪44は、制御手段50からの指令を介して第2モータ41及び第2減速ギア列42の駆動力により回動軸43と一体に待機位置(初期位置)と空の時のエンド位置との間で回動可能になっており、且つ、排版ボックス11内に進退可能になっている。
【0072】
この際、複数の圧縮爪44は、孔版原紙Gの幅寸法に対応してこの孔版原紙Gの幅方向に沿っており、図1に示すように、例えば4個の第1〜第4ブロック44B1〜44B4にブロック化されて、第1〜第4ブロック44B1〜44B4の各基部44aが回動軸43に固着されている。
【0073】
そして、複数の圧縮爪44のうちで、孔版原紙Gの幅方向の左右の端部Gc,Gd(図3図7)側に位置する左右の第1,第4ブロック44B1,44B4は左右対称に形成されている。
【0074】
上記した左右の第1,第4ブロック44B1,44B4は、各基部44aから版胴H側(前方)に向かって左右一対の第1圧縮爪部44bが孔版原紙Gの幅方向の左右の端部Gc,Gd(図3図7)と対応する位置に左右対称に突出され、且つ、上記した左右一対の第1圧縮爪部44bの各内側に僅かな間隔を隔てて左右一対の第2圧縮爪部44cが孔版原紙Gのインク面Gi(図3図7)の幅方向の左右の端部Gic,Gid(図3のみ図示)近傍と対応する位置に左右対称に突出され、更に、上記した左右一対の第2圧縮爪部44cの各内側に間隔を隔てて第1圧縮爪部44bが孔版原紙Gのインク面Giと対応する位置に左右対称に突出されている。
【0075】
また、左右の第1,第4ブロック44B1,44B4の各内側で孔版原紙Gのインク面Giと対応して位置する第2,第3ブロック44B2,44B3も中央を中心にして左右対称に形成されており、各基部44aから版胴H側(前方)に向かって複数の第1圧縮爪部44bのみがそれぞれ間隔を隔てて突出形成されている。
【0076】
ここで、上記した第1圧縮爪部44b及び第2圧縮爪部44cは、孔版原紙Gのインク面Giのインクが貼り付かないように孔版原紙Gの幅方向の厚みが1〜2mm程度に薄く形成されており、且つ、基部44aから第1,第2圧縮爪部44b,44cの各下端部(各先端部)までの長さは略同じであるが、第1圧縮爪部44bと第2圧縮爪部44cとでは圧縮方向の寸法形状が異なっている。
【0077】
即ち、上記した第1圧縮爪部44bは、従来例で示した圧縮爪103(図6)と同じように圧縮方向の寸法が狭く形成されている。
【0078】
一方、上記した第2圧縮爪部44cは、圧縮方向の寸法が第1圧縮爪部44bよりも広く、圧縮方向に向かって凸状に突出した突出部44c1が形成されており、且つ、この突出部44c1が下端部(先端部)から基部44aに向かって排版ボックス11内に設けた複数の底板リブ11hよりも高く、基部44aと下端部(先端部)との間の中間位置まで形成されているので、第2圧縮爪部44cの突出部44c1によって孔版原紙Gを第1圧縮爪部44bよりも強制的に圧縮方向に向かって圧縮できるようになっている。
【0079】
そして、使用済みの孔版原紙Gが版胴Hから送られてくる度に、複数の圧縮爪44を回動軸43と一体に図2中の実線で示した待機位置(初期位置)から時計方向に回動させて、複数の圧縮爪44に形成した複数の第1圧縮爪部44b及び左右一対の第2圧縮爪部44cにより圧縮空間部11g内に収納した使用済みの孔版原紙Gを圧縮している。
【0080】
この際、図3に示したように、複数の圧縮爪44に形成した複数の第1圧縮爪部44bと、左右一対の第2圧縮爪部44cとで孔版原紙Gを圧縮方向に向かって押圧しながら圧縮すると、複数の第1圧縮爪部44bの殆どが孔版原紙Gのインク面Giを従来と同様に圧縮するが、孔版原紙Gのインク面Giの幅方向の左右の端部Gic,Gid近傍を押圧する左右一対の第2圧縮爪部44cはここに形成した突出部44c1(図1図2)で孔版原紙Gのインク面Giの幅方向の左右の端部Gic,Gid近傍を過剰に圧縮(潰す)することができる。
【0081】
尚、孔版原紙Gの幅方向の左右の端部Gc,Gdと対応する位置に設けた左右一対の第1圧縮爪部44bは、孔版原紙自体に剛性がないために孔版原紙Gの左右の端部Gc,Gdを押圧することができずに空振りすることがあり、このために左右一対の第2圧縮爪部44cは確実に孔版原紙Gの幅方向の左右の端部Gc,Gd側を押圧できるように孔版原紙Gのインク面Giの幅方向の左右の端部Gic,Gid近傍に対応して設けられている。
【0082】
これにより、図4に示したように、多数の圧縮済みの孔版原紙Gの幅方向の左右の端部Gc,Gd側では、左右一対の第2圧縮爪部44cにより過剰に圧縮される部位が圧縮方向に向かって凹状にへこむので、圧縮後の孔版原紙Gの幅方向の左右の端部Gc,Gdには背景技術で説明したような圧縮方向とは反対方向に向かう膨らみが生じることがなく、更に、左右一対の第2圧縮爪部44cが孔版原紙Gから退いて孔版原紙Gの左右の端部Gc,Gdが復元力で多少復元しても膨らまない。
【0083】
従って、次に送られてきた孔版原紙Gは、この幅方向の左右の端部Gc,Gdが変形しないので、上記した次に送られてきた孔版原紙Gの左右の端部Gc,Gdの後端部Gb側は排版搬送手段20の排版ローラ31に接近することがないので、排版ボックス11内で正常に移動できる。
【0084】
また、先に図9(b)を用いて背景技術で説明したと同様に、この実施例においても、図5(a)に示すように、排版ボックス11内に収納された使用済みの孔版原紙自体は全体的に剛性が低いので、孔版原紙Gのうちで幅方向の端部Gc(又はGd)が排版ボックス11の底板11aの内面に設けた複数の底板リブ11hのうちで幅方向の端部側で幅方向と直交する方向の隣り合う底板リブ11h間に垂れ落ちることがある。
【0085】
この状態で、複数の圧縮爪44を圧縮状態から反時計方向に回動させて二点鎖線で示した待機位置方向に戻すときに、上記したように、孔版原紙Gの幅方向の左右の端部Gc,Gdに圧縮方向とは反対方向に向かう膨らみが生じてないので、上記した隣り合う底板リブ11h間に垂れ落ちた端部Gc(又はGd)の後端部Gbが圧縮方向とは反対方向に突出することはない。
【0086】
従って、孔版原紙Gの幅方向の端部Gc(又はGd)側で幅方向と直交する方向の隣り合う底板リブ11h間に位置する第2圧縮爪部44cの突出部44c1の下端部が上記した隣り合う底板リブ11h間に垂れ落ちた端部Gc(又はGd)の上方に入り込んでも、第2圧縮爪部44cの突出部44c1で孔版原紙Gの幅方向の端部Gc(又はGd)側を過剰に圧縮しているために、孔版原紙Gの幅方向の端部Gc(又はGd)側の後端部Gbと第2圧縮爪部44cの突出部44c1の下端部のうちで圧縮方向とは反対側のコーナ部位との間に非接触区間Kが生じるので、第2圧縮爪部44cの突出部44c1の下端部に孔版原紙Gの幅方向の端部Gc(又はGd)の後端部Gb側が引っ掛かるのを防止できる。
【0087】
この後、図5(b)に示す如く、複数の圧縮爪44を更に反時計方向に回動させて待機位置に戻す過程において、孔版原紙Gの幅方向の端部Gc(又はGd)側で幅方向と直交する方向の隣り合う底板リブ11h間に垂れ落ちた端部Gc(又はGd)は図5(a)で示した状態をそのまま維持しているので、上記した隣り合う底板リブ11h間に位置する第2圧縮爪部44cの突出部44c1の下端部は孔版原紙Gの幅方向の端部Gc(又はGd)の後端部Gbを引っ掛けることなく待機位置方向に回動できるために、先に図10(b)を用いて背景技術で説明したような次に排版される孔版原紙Gの排版経路を塞ぐことが発生せず、これにより排版ジャムが発生するのを防止できる。
【0088】
以上詳述した実施例では、複数の圧縮爪44を第1〜第4ブロック44B1〜44B4にブロック化して構成した例について説明したが、これに限ることなく、孔版原紙Gの幅方向に沿って長尺な一つのブロックからなる圧縮爪(44)とし、この一つのブロックの基部から厚みが薄い複数の第1圧縮爪部(44b)と、厚みが薄い左右一対の第2圧縮爪部(44c)とを実施例と同様な位置関係に配置すれば、実施例と同様な効果が得られる。
【0089】
更に、圧縮爪44をブロック化しない構成も可能であり、この場合に、前記した第1圧縮爪部(44b)に相当した形状を有する複数の第1圧縮爪(44)と、前記した第2圧縮爪部(44c)に相当した形状を有する左右一対の第2圧縮爪(44)とを実施例と同様な位置関係を持って回動軸43に固着させれば、実施例と同様な効果が得られる。
【0090】
従って、上記から、圧縮爪44は、排版ボックス11内に収納した使用済みの孔版原紙Gを排版搬送方向と同じ方向である圧縮方向に向かって圧縮するために使用済みの孔版原紙Gの幅方向の厚みが薄く形成された圧縮爪部(44b,44c)を一つ以上有することになる。
【0091】
上記した本発明に係る孔版印刷機の排版装置10によれば、使用済みの孔版原紙Gを排版ボックス11内で回動可能な圧縮爪44により圧縮する際、とくに、圧縮爪44は、使用済みの孔版原紙Gの幅方向に沿って設けた回動軸43に回動可能に複数支持され、且つ、排版ボックス11内に収納された使用済みの孔版原紙Gを排版搬送方向と同じ方向である圧縮方向に向かって圧縮するために使用済みの孔版原紙Gの幅方向の厚みが薄く形成された圧縮爪部(44b,44c)を一つ以上有し、更に、使用済みの孔版原紙Gのインク面Giの幅方向の左右の端部Gic,Gid近傍と対応する部位の圧縮爪部44cに形成した突出部44c1を圧縮方向に向かって突出させたことにより、この突出部44c1で使用済みの孔版原紙Gの幅方向の左右の端部Gc,Gd側を圧縮方向に向かって過剰に圧縮できるので、圧縮済みの孔版原紙Gの幅方向の左右の端部Gc,Gd側に圧縮方向とは反対方向に向かう膨らみが生じることもなく、また、孔版原紙Gのインク面Giの幅方向の左右の端部Gic,Gid近傍と対応する部位の圧縮爪部44cが待機位置に戻るときに、この圧縮爪部44cの突出部44c1で孔版原紙Gの幅方向の端部Gc(又はGd)の後端部Gb側を引っ掛ける現象も生じないので、排版ジャムを確実に防止できる。
【符号の説明】
【0092】
10…孔版印刷機の排版装置、
11…排版ボックス、11a…底板、11b,11c…左右の側板、11d…後板、
11e…天板、11f…上部開口部、11g…圧縮空間部、11h…底板リブ、
11i…補強用リブ、11j…圧縮部リブ、
20…排版搬送手段、21…第1モータ、31…排版ローラ、
40…孔版原紙圧縮手段、41…第2モータ、43…回動軸、
44…複数の圧縮爪、44B1〜44B4…第1〜第4ブロック、
44a…基部、44b…第1圧縮爪部、44c…第2圧縮爪部、44c1…突出部、
50…制御手段、
G…孔版原紙、Ga,Gb…孔版原紙の搬送方向の前後の端部、
Gc,Gd…孔版原紙の幅方向の左右の端部、
Gi…インク面、Gic,Gid…インク面の幅方向の左右の端部、
H…版胴。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10