(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
火災報知設備用機器の一例としての火災受信機は一般的に、有底枠体からなる筐体本体と筐体本体の開口部を覆う蓋体とで構成される筐体とを有し、該筐体内に電子部品を搭載した基板を収容している。
基板には、火災受信機を操作するためのスイッチや、外部からの配線を接続するための接続部が設けられている。
そして、基板の表面側にはスイッチ等を操作するための操作パネルが設置される。
【0003】
このような火災受信機の筺体には、大きく分けて樹脂製のものと金属製のものが存在する。金属製のものは、衝撃や熱に強いという特徴を有し、樹脂製のものはこれらの点においては金属製のものに劣る。
他方、樹脂製のものは、軽量で加工が容易であるという特徴を有し、金属製のものはこれらの点において樹脂製のものに劣る。
このように、金属製の筺体と樹脂製の筺体にはそれぞれ一長一短があり、設置場所の規制等で金属製のものと樹脂製のものが併存しているのが現状である。
【0004】
前述したように筐体本体には基板が設置されるが、筺体本体内には、基板の他に変圧器などの高さのある部品を収容するため、筐体本体はある程度の深さを有しているのが一般的である。
そのため、基板を筐体本体の底面近くに設置すると、基板に設けた操作パネルが蓋体の表面から奥に離れてしまうため操作しづらくなる。
そこで、基板を筺体本体の底面から上方に持ち上げた状態で保持する必要があり、従来の火災受信機においても種々の工夫がなされている。
【0005】
例えば、金属製の筺体については、例えば特許文献1に開示されたように、基板よりも一回り大きくある程度の高さのある金属製の取付架台を筺体の底面に設置し、取付架台の上面に複数の受け部材を介して基板を取付架台に取り付けている。
【0006】
他方、樹脂製の筺体については、例えば特許文献2に開示されたように、筺体本体における基板を設置する部位が高台になるように成形し、高台の上に基板を支持する支持柱を設け、該支持柱によって基板を支持するようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したように、樹脂製の筺体と金属製の筺体には一長一短があり、樹脂製の筺体ではあまり問題とならない点が金属製の筺体では問題となる点がある。
その点の一つが、上述した基板を筺体本体から上方に持ち上げた状態で支持する基板支持構造に関する点である。
【0009】
基板を筺体本体の底面から持ち上げるのに、樹脂製の筺体の場合には筺体本体の底面の一部を高台になるように成形すると共に高台の上面に支持柱を成形すればよく、比較的容易である。
他方、金属製の筺体については、取付架台も金属製のものからなり、取付架台を板金加工によって形成するため、加工コストがかかる。
また、取付架台は基板よりも一回り大きくする必要があり、筺体本体が大型化するという問題もある。
さらに、取付架台を筐体本体の底面に溶接等で固定するための作業コストがかかるという問題もある。
【0010】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、筺体が金属製のものでありながら、加工コストおよび作業コストを低減できる基板支持構造を備えた火災報知設備用機器を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従来の筺体における基板支持の考え方は、樹脂製でも金属製でも共に筺体本体における基板設置部を底上げして、底上げによって形成された高台に支持柱等を設けて基板を支持するというものである。
このような基板設置部を底上げするという構造の場合、樹脂製の筺体では成形の自由度が高いため、比較的容易に製造することができるが、金属製の筺体の場合には、上述した問題がある。
そこで、発明者は、筺体本体における基板設置部を底上げするという従来の考え方から、基板設置部を底上げするのではなく、筺体本体の底部から直接金属製の支持柱を立設して、該金属製の柱によって基板を支持するという従来にはない発想をし、かかる発想に基づいて種々の工夫をすることで本発明を完成したものであり、具体的には以下の構成からなるものである。
【0012】
(1)本発明に係る火災報知設備用機器は、有底枠体からなる金属製の筐体本体と筐体本体の開口を覆う金属製の蓋体とで構成される筐体と、該筐体内に格納された基板と
、該基板に取り付けられた操作パネルとを有する火災報知設備用機器であって、
前記筐体本体の底面は、前記基板が設置される部位と、変圧器が設置される部位とが同一高さになっており、
前記筐体本体の底面から立設されて前記基板を支持すると共に
ねじ留めによって固定する金属製の複数の基板支持固定柱と、
前記筐体本体の底面に
着脱可能に取り付けられて前記基板を支持する樹脂製の複数の基板支持部材と、
前記筐体本体の底面から立設されて前記基板を支持する金属製の基板支持板とを備え、
該基板支持板の上面には該上面と前記基板が接触するのを防止する樹脂製のカバー体を設けたことを特徴とするものである。
【0013】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記筐体本体には、筐体内に配線を引き込むための配線引込口が設けられており、
前記基板支持板は、前記基板における前記配線引込口が設けられている側に配置されていることを特徴とするものである。
【0014】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記基板支持板は、前記基板の上辺側と前記基板の側辺側とに亘るL形状になっていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、金属製の基板支持固定柱、樹脂製の基板支持部材、および金属製の基板支持板によって、基板を筐体本体の底面から直接支持するようにしたので、筐体本体が金属製のものでありながら、基板より一回り大きい取付架台を設けなくてもよい。従って、取付架台を設けるものと比較して、加工コストおよび作業コストを低減できると共に、筐体本体内部のスペースが増えるので、施工性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の実施の形態においては、火災報知設備用機器の一例として火災受信機1を例に挙げて説明する。
本発明にかかる火災受信機1は壁面に取り付けられて、火災発信機や火災感知器等などの複数の端末機器が接続されて、これらの端末機器から発信される火災信号等を受信するためのものである。
火災受信機1は、
図1に示すように、有底枠体からなる金属製の筐体本体3と筐体本体3の開口を覆う金属製の蓋体5とで構成される筐体7と、該筐体7内に格納された基板9とを有している。
以下、火災受信機1の各構成を
図1〜
図6に基づいて詳細に説明する。
【0018】
<蓋体>
蓋体5は、
図3に示すように、筐体本体3の開口部を覆うためのものである。蓋体5は、蝶番によって筐体本体3の開口部を開閉可能に取り付けられている(
図1参照)。
蓋体5には、基板9に取り付けられる操作パネル35を操作するための窓部6が設けられている。
【0019】
<筐体本体>
筐体本体3は有底枠体からなり、筐体本体3の深さは、変圧器等(図示なし)の高さのある部品を収容できる深さに設定されている。もっとも、筐体本体3の底面は、
図6に示すように、筐体本体3の枠部の最下端よりも上方に位置しており、そのため、筐体本体3が設置面に設置されると、設置面と筐体本体3の底面との間にスペースができるようになっている。前記スペースは筐体本体3に引き込む配線を取回すための配線スペース10になっている。この点、従来例では、筐体本体の底面は筐体本体の枠部の最下端に位置しており、上記のような配線スペースは設けられていない。
【0020】
なお、筐体本体3において、底面を筐体本体3の枠部の最下端よりも上方に位置させているのは、上述したとおり配線スペース10を設けるためであって、従来例のように基板を蓋体に近接配置させるために基板設置部を底上げすることとは相違している。つまり、本実施の形態の筺体本体3の底面は、基板が設置される部位も、変圧器等の他の電気部品が設置される部位も同一の高さ(同一平面)となっている。
【0021】
筐体本体3の底面には、筐体7内に外部からの配線を引き込むための縦長の穴からなる第1配線引込口11および、横長の穴からなる第2配線引込口13が設けられている。
第1配線引込口11は、筐体本体3の底面における基板取り付け位置の左側方に設けられており、第2配線引込口13は、基板取り付け位置の上方に設けられている。なお、配線引込口は第1配線引込口11、第2配線引込口13の他に筐体本体3の枠部に別途設けてもよい。なお、図示していないが、筐体本体3の底面にはAC線を引き込むためのAC線引込口が設けられている。
【0022】
筐体本体3は、基板9の支持構造として、筐体本体3の底面から立設されて基板9を支持すると共に固定する金属製の複数の基板支持固定柱15と、筐体本体3の底面に取り付けられて基板9を支持する樹脂製の複数の基板支持部材17と、筐体本体3の底面から立設されて基板9を支持する金属製の基板支持板19とを有している。
以下に、基板支持固定柱15、基板支持部材17、基板支持板19について以下に詳細に説明する。
【0023】
≪基板支持固定柱≫
基板支持固定柱15は、
図2に示す通り、雌ねじスタッドからなり、点在するように複数配置されて筐体本体3の底面に溶接又は圧入等によって固定され、立設されている。
基板支持固定柱15は、所定の高さに設定されており、基板9は基板支持固定柱15にねじ留めされることで筐体本体3の底面から所定の高さで支持されるとともに、筐体本体3側に固定される(
図1参照)。
【0024】
基板支持固定柱15は上述したとおり筐体本体3と同様に金属製であるため、仮に筐体本体3が火災で加熱されるようなことがあっても、基板支持固定柱15は変形せずに安定的に基板9を支持し続けることができる。また、基板支持固定柱15は金属製であるが故に、衝撃に対しても強いため、基板支持固定柱15は、ボタン37が押される部分等、基板9に圧力がかかるところに設けられている。このように、基板支持固定柱15は、重要部品である基板9を安定的に支持固定することで、火災受信機1の製品としての信頼性を向上させている。
【0025】
≪基板支持部材≫
基板支持部材17は、樹脂製の棒状からなり、一端に図示しない取付部を有し、他端で基板を支持するようになっている。
基板支持部材17は、筐体本体3の底面に設けた穴に取付部を差し込むことで底面に着脱可能に取り付けられる。このように基板支持部材17は、設置が容易で設置の自由度も高い。それ故、基板支持部材17は、
図2に示すように、基板9において火災受信機1の設置時や操作時に負荷がかかる部分を支持するように適宜配置されている。
基板支持部材17の高さは基板支持固定柱15の高さとほぼ同一に設定されている。
なお、基板支持部材は樹脂製のため、基板9のパターンに接しても絶縁されて、問題が起きることはない。
【0026】
≪基板支持板≫
基板支持板19は、
図2および
図4に示すように、帯状の金属板をL形状に屈曲してなる。
基板支持板19の短辺部19aおよび長辺部19bには、基板支持板19を筺体本体3に取り付けるための取付部21が設けられている。基板支持板19は、取付部21と筐体本体3の底面とを溶接することによって底面に立設されている。
【0027】
立設された基板支持固定柱15に基板9が設置されると、
図1に示すように基板支持板19は基板9の上辺側と側辺側とに亘ってこれらを支持するようになっている。より具体的には基板支持板19のL形の短辺部19aで基板9の上辺部を支持し、長辺部19bで基板9の側辺部を支持するようになっている。
また、基板支持板19は基板9の大きさに合わせた大きさに設定されており、
図1に示すように、短辺部19aは基板9の上辺縁部に沿い、基板9の上辺縁部と同じ長さか、それよりわずかに短くなっており、長辺部19bは基板9の側辺縁部に沿い、基板9の側辺縁部と同じ長さか、それより短く形成されている。このように、基板支持板19は、従来例で示した取付架台のように基板9よりも一回り大きくする必要がなく、反対に基板9よりも一回り小さくすることも可能なので、取付架台を用いる場合よりも筺体本体3をコンパクトにすることが可能である。
【0028】
基板支持板19の上面(天面)には、断面がコ字状からなる弾性を有する樹脂製のカバー体25が取り付けられており、基板支持板19の上面と基板9とが直接接触しないようになっている(
図1、
図2、
図4および
図6参照)。
このようにカバー体25は基板支持板19の上面を覆うことで、基板9と基板支持板19とを絶縁して、例えば何らかの原因で基板9に過大な電流が流れたような場合にも基板9側から筺体本体3への電流が流れるのを確実に防止している。
また、カバー体25により基板9と基板支持板19とが絶縁しているため、後述する基板9のパターンを基板9の周縁まで広く設けることができる。
【0029】
また、カバー体25は上述したとおり弾性を有しており、基板9の取り付け時においてカバー体25が基板9と基板支持板19とで挟まれれば多少つぶれることが可能である。そのため、仮に基板支持板19の高さが製造誤差によりわずかに高くなっているような場合でも、基板9を問題なく取り付け可能になっている。
【0030】
基板9が筐体本体3に取り付けられた状態においては、筐体本体3の底面と基板9との間の間隙Sが存在している(
図1および
図6参照)。そのため、この間隙Sに、例えばほこりや配線等が侵入して、基板の配線側に付着や接触するのを防止する必要がある。
この点、火災受信機1は間隙Sを、基板支持板19の短辺部19a及び長辺部19bによって図中上方及び左方から覆うようにしている(
図6も参照)。こうすることで、間隙Sにほこりや配線等の異物が侵入するのを防止している(異物侵入防止機能)。
【0031】
<基板>
次に、上記の筐体本体3に取り付けられる基板9について
図1、
図5および
図7に基づいて以下に説明する。
基板9は
図1および
図4に示す通り、長方形の板状からなる。基板9には、筐体本体3の基板支持固定柱15に対応するねじ孔33が複数設けられている。
基板9の上面には、略直方体状からなり、該直方体状の上面に筐体本体3の配線引込口(第1配線引込口11や第2配線引込口13)から引き込まれた配線が接続される接続部31が、基板支持板19の長辺部19bに対応するように、基板9の左側辺に沿って複数設けられている。
【0032】
また、基板9の上面には火災受信機1の操作を行うボタン37等を備える操作パネル35が取り付けられている(
図7参照)。
基板9の下面には、配線パターンが形成されている(図示略)。
【0033】
以上のように構成された火災受信機1における基板9の支持構造(基板支持固定柱15、基板支持部材17、基板支持板19)の作用効果について、火災受信機1の設置時および使用時に分けて説明する。
【0034】
まず、火災受信機1の設置時における作用効果について、火災受信機1の設置の流れに沿って以下に説明する。
火災受信機1の設置は、まず、基板9および操作パネル35が取り付けられた状態の筐体本体3を壁面に設置するとともに、配線引込口(第1配線引込口11、第2配線引込口13)から配線を筐体本体3内に引き込む。
このとき、間隙Sの第1配線引込口11側は基板支持板19の短辺部19aで覆われており、間隙Sの第2配線引込口13側は基板支持板19の長辺部19bで覆われているため、後述する結線作業を行わずにいったん放置しても、間隙Sに配線が侵入して基板9のパターン等を傷つけることがない。また、筐体本体3の上側の枠部に別途配線引込口をノックアウトや切削等によって設ける場合、基板支持板19は切り屑等が間隙Sの上方から間隙Sに侵入することを防止する。
このように、配線引込口が設けられている側に備えられた基板支持板19によって間隙Sを覆うようにしたことで、配線や切り屑の侵入を気にすることなく設置作業ができ、作業効率を向上させることができる。
【0035】
次に、引き込んだ配線と、基板9の接続部31とを接続する結線作業を行う。上述したとおり、基板9における接続部31が設置されている部分の下面側には、基板支持板19の長辺部19bが位置しているため、接続作業時に基板9に負荷がかかっても、基板9が変形することがないので、基板9の変形を気にすることなく結線作業を効率よく行うことができる。
次いで、筐体本体3を蓋体5で閉じる。このとき基板9は基板支持固定柱15によって蓋体5に近接配置されており、蓋体5の窓部を介して操作パネル35が操作可能になっている。
【0036】
次に、各部材(基板支持固定柱15、基板支持部材17、基板支持板19)の火災受信機1の使用時における作用効果について説明する。
オペレータによって操作パネル35上のボタン37が押下されると、操作パネル35を介して基板9に負荷がかかる。このとき、基板9は、基板支持固定柱15や、基板支持部材17および基板支持板19によって支持されているので、基板9が変形することを防止できる。
また、配線引込口(第1配線引込口11、第2配線引込口13)等から筐体7内にほこり等の異物が入り込んでも、上述したとおり、間隙Sの第1配線引込口11側および第2配線引込口13側が基板支持板19によっておおわれているため、間隙Sに異物が侵入するのを防止できる。
【0037】
以上のように、本実施の形態においては、基板9の支持構造を、取付架台を用いずに、筐体本体3の底面に金属製の基板支持固定柱15、樹脂製の基板支持部材17、および金属製の基板支持板19を設けて、これらによって基板9を支持するようにしたので、取付架台を設けるものと比較して、加工コストおよび作業コストを低減できる。
【0038】
また、基板支持固定柱15は金属製であるため、火災受信機1は製品として、取付架台を設ける場合と同等の信頼性を有している。
また、基板支持部材17は基板9を支持したい箇所にある程度自由にかつ容易に配置することができるので、適切に基板9を効果的に支持することができる。
【0039】
また、基板支持板19は基板を線接触によって支持することができるため、点接触で基板を支持する基板支持部材17よりも広範囲を支持可能である。それ故、その分基板支持部材17の数を減らすことができ、部品点数の削減につながる。
また、基板支持板19が間隙Sへの異物侵入防止機能を有するため、異物侵入防止のための部材を別途設ける必要もなく、その分部品コストを低減させることができる。
【0040】
また、基板支持板19の上面部にはカバー体25が取り付けられているため、基板が基板支持板19によって傷づくことを防止するとともに、基板と基板支持板19とを絶縁してショートしないようになっている。
【0041】
なお、上記の説明では、基板支持板19はL形状である例を示したが、基板支持板19の形状はこれに限られない。例えば、単に平板からなるものであってもよい。より具体的には、基板支持板19の短辺部19aに相当する平板と、長辺部19bに相当する平板とを2枚設けるようにしてもよいし、あるいは、短辺部19aに相当する平板や、長辺部19bに相当する平板のどちらか1枚だけ設けるようにしてもよい。
【0042】
また、基板支持板19は基板の上辺側および正面視における左側辺側に設けた例を示したが、基板支持板19を設ける位置は、配線引込口の場所などに応じて適宜増減あるいは変更してもよい。例えば、基板の上辺側および左側辺側の2箇所に加えて右側辺側に設けてもよいし、基板の上辺側のみに設けてもよい。この場合、基板支持板19の形状や枚数は適宜変更する。