(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図において、同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。
【0017】
図1は、スイッチング電源装置100の構成図である。スイッチング電源装置100は、電気自動車(またはハイブリッドカー)用のDC−DCコンバータであり、高電圧の直流をスイッチングして交流に変換した後、低電圧の直流に変換する。以下で詳述する。
【0018】
スイッチング電源装置100の入力端子T1、T2には、高電圧バッテリ50が接続されている。高電圧バッテリ50の電圧は、たとえばDC220V〜DC400Vである。入力端子T1、T2へ入力される高電圧バッテリ50の直流電圧Viは、フィルタ回路51でノイズが除去された後、スイッチング回路52へ与えられる。
【0019】
スイッチング回路52は、たとえばFET(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)を有する公知の回路からなる。スイッチング回路52では、PWM駆動部58からのPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)信号に基づいて、FETをオンオフさせて、直流電圧に対してスイッチング動作を行う。これにより、直流電圧が高周波のパルス電圧に変換される。
【0020】
そのパルス電圧は、トランス53を介して、整流回路54へ与えられる。整流回路54は、一対のダイオードD1、D2によりパルス電圧を整流する。整流回路54で整流された電圧は、平滑回路55へ入力される。平滑回路55は、チョークコイルLおよびコンデンサCのフィルタ作用により整流電圧を平滑し、低電圧の直流電圧として出力端子T3、T4へ出力する。この直流電圧により、出力端子T3、T4に接続された低圧バッテリ60が、たとえばDC12Vに充電される。低圧バッテリ60の直流電圧は、図示しない各種の車載電装品へ供給される。
【0021】
また、平滑回路55の出力電圧Voは、出力電圧検出回路59により検出された後、PWM駆動部58へ出力される。PWM駆動部58は、出力電圧Voに基づいてPWM信号のデューティ比を演算し、該デューティ比に応じたPWM信号を生成して、スイッチング回路52のFETのゲートへ出力する。これにより、出力電圧を一定に保つためのフィードバック制御が行なわれる。
【0022】
制御部57は、PWM駆動部58の動作を制御する。フィルタ回路51の出力側には、電源56が接続されている。電源56は、高電圧バッテリ50の電圧を降圧し、制御部57に電源電圧(たとえばDC12V)を供給する。
【0023】
上記のスイッチング電源装置100において、平滑回路55のチョークコイルLとして、後述する磁気デバイス1、1’が用いられる。チョークコイルLには、たとえばDC150Aの大電流が流れる。チョークコイルLの両端には、電力を入出力するための一対の端子6i、6oが設けられている。
【0024】
次に、第1実施形態の磁気デバイス1の構造を、
図2〜
図5を参照しながら説明する。
【0025】
図2は、磁気デバイス1の分解斜視図である(後述する磁気デバイス1’も同様)。
図3は、磁気デバイス1の基板3の各層の平面図である。
図4および
図5は、磁気デバイス1の断面図であって、
図4は、
図3のY−Y断面を示し、
図5は、
図3のV−V断面を示している。
【0026】
図2に示すように、コア2a、2bは、E字形の上コア2aとI字形の下コア2bの、2個1対で構成されている。コア2a、2bは、フェライトまたはアモルファス金属などの磁性体から成る。
【0027】
上コア2aは、下方へ突出するように、3つの凸部2m、2L、2rを有している。凸部2m、2L、2rは、
図3に示すように、一列に並んでいる。
図2に示すように、中央の凸部2mに対して、左右の凸部2L、2rの方が、突出量が多くなっている。
【0028】
図4に示すように、上コア2aの左右の凸部2L、2rの下端を、下コア2bの上面に密着させて、該コア2a、2bは組み合わされる。この状態では、直流重畳特性を高めるため、上コア2aの凸部2mと下コア2bの上面には所定の大きさの隙間が設けられている。これにより、磁気デバイス1(チョークコイルL)に大電流を流したときでも、所定のインダクタンスを実現することができる。コア2a、2b同士は、図示しないねじや金具などの固定手段により固定される。
【0029】
下コア2bは、ヒートシンク10の上側に設けられた凹部10k(
図2)に嵌め込まれる。ヒートシンク10の下側には、フィン10fが設けられている。
【0030】
基板3は、絶縁体から成る薄板状の基材の各層に、厚みの厚い銅箔(導体)でパターンが形成された厚銅箔基板から構成されている。本実施形態では、基板3に他の電子部品や回路が設けられていないが、実際に磁気デバイス1を
図1のスイッチング電源装置100で使用する場合、同一基板上に磁気デバイス1とスイッチング電源装置100の他の電子部品や回路が設けられる(後述の磁気デバイス1’も同様)。
【0031】
基板3の表面(
図2および
図4で上面)3xには、
図3(a)に示すような第1層L1が設けられている。基板3の裏面(
図2および
図4で下面)3zには、
図3(c)に示すような第3層L3が設けられている。
図4および
図5に示すように、第1層L1と第3層L3の間には、
図3(b)に示すような第2層L2が設けられている。
【0032】
つまり、基板3は、2つの表層L1、L3と、1つの内層L2の、計3つ(奇数個)の層L1、L2、L3を有している。また、第1層L1は、基板3の表面3x側から1番目(奇数番目)の層であり、第2層L2は、基板3の表面3x側から2番目(偶数番目)の層であり、第3層L3は、最も裏面3z側にある最終層である。
【0033】
基板3には、大径の円形の貫通孔から成る開口部3mと、切欠き3L、3rが設けられている。
図2〜
図4に示すように、開口部3mには、コア2aの中央の凸部2mが挿入され、左右にある切欠き3L、3rには、コア2aの左右の凸部2L、2rがそれぞれ挿入される。
【0034】
また、基板3には、小径で円形の貫通孔3aが2つ設けられている。各貫通孔3aには、
図2に示すように、各ねじ11が挿入される。基板3の裏面3zをヒートシンク10の上面(フィン10fと反対の面)と対向させる。そして、各ねじ11を基板3の表面3x側から各貫通孔3aに貫通させて、ヒートシンク10の各ねじ孔10aに螺合する。これにより、
図4および
図5に示すように、基板3の裏面3z側にヒートシンク10が近接状態で固定される。ねじ11の軸部11bより大径の頭部11aは、基板3の表面3x側に配置される(
図3(a)参照)。
【0035】
基板3とヒートシンク10の間には、伝熱性を有する絶縁シート12が挟み込まれる。絶縁シート12は可撓性を有しているため、基板3やヒートシンク10と隙間なく密着する。
【0036】
また、基板3には、
図3に示すように、スルーホール8a、8d、9a、9b、パッド8b、8c、端子6i、6o、パターン4a〜4d、4t
0〜4t
6、5s
0〜5s
9、およびピン7a〜7dといった導体が設けられている。スルーホール8a、8d、9a、9b、端子6i、6o、およびピン7a〜7dは、基板3を貫通するように設けられている。
【0037】
一対のスルーホール8aのうち、一方のスルーホール8aには、端子6iが埋設され、他方のスルーホール8aには、端子6oが埋設されている。これら一対の端子6i、6oは、銅ピンから成る。第1層L1と第3層L3の端子6i、6oの周囲には、スルーホール8aのパッド8bが設けられている。パッド8bは、銅箔から成る。端子6i、6oやパッド8bの表面には、銅めっきが施されている。端子6i、6oは、本発明の「端子部」の一例である。
【0038】
複数の大径のスルーホール8dには、放熱ピン7a〜7dがそれぞれ埋め込まれている。放熱ピン7a〜7dは、銅ピンから成る。第1層L1と第3層L3の放熱ピン7a〜7fの周囲には、銅箔から成るパッド8cが設けられている。放熱ピン7a〜7dやパッド8cの表面には、銅めっきが施されている。
【0039】
基板3の各層L1〜L3には、コイルパターン4a〜4cと放熱パターン4t
0〜4t
6、5s
0〜5s
9が設けられている。各パターン4a〜4d、4t
0〜4t
6、5s
0〜5s
9は、銅箔から成る。第1層L1の各パターン4a、4t
0〜4t
2、5s
0〜5s
2の表面には、絶縁加工が施されている。
【0040】
コイルパターン4a〜4cは、基板3の板面方向と平行な帯状に形成されている。コイルパターン4a〜4cの幅や厚みや断面積は、コイルの所定の性能を達成しつつ、所定の大電流(たとえばDC150A)を流しても、コイルパターン4a〜4cでの発熱量をある程度に抑制して、しかもコイルパターン4a〜4cの表面から放熱できるように設定されている。
【0041】
図3に示すように、各コイルパターン4a〜4cは、各層L1〜L3でコア2aの中央の凸部2mが挿入される開口部3mの周囲に同じ方向に複数回巻回されている。コイルパターン4a〜4cに対して電力を入出力する一対の端子6i、6oは、コイルパターン4a〜4cの外周より外側に設けられている。
【0042】
図3(a)に示すように、第1層L1において、コイルパターン4aの外端部4a
1は、パッド8bおよびスルーホール8aを介して端子6oと接続されている。コイルパターン4aは、外端部4a
1から開口部3mの周囲に、時計回りで内に向かって2回巻回されている(内巻き)。コイルパターン4aの内端部4a
2は、
図5に示すように、基板3の裏面3z側に隣り合う第2層L2のコイルパターン4bの内端部4b
2と、スルーホール9aにより接続されている。
【0043】
図3(b)に示すように、第2層L2において、コイルパターン4bは、内端部4b
2から、開口部3mの周囲に時計回りで外に向かって2回巻回されている(外巻き)。コイルパターン4bの外端部4b
1は、
図5に示すように、基板3の裏面3z側に隣り合う第3層L3のコイルパターン4cの内端部4c
2と、スルーホール9bにより接続されている。
【0044】
つまり、異なる隣り合った2つの層のコイルパターン同士は、別個のスルーホール9a、9bによりそれぞれ接続されている。各スルーホール9a、9bは、所定の直流抵抗の性能を達成するため、
図3に示すように小径で複数設けられている。各スルーホール9a、9bの表面には、銅めっきが施されている。各スルーホール9a、9bの内側は、銅などで埋められていてもよい。
【0045】
図3に示すように、基板3の板面方向における、スルーホール9a、9bの設置箇所数は、コイルパターン4a、4bの内端部4a
2、4b
2がある位置と、コイルパターン4bの外端部4b
1とコイルパターン4cの内端部4c
2がある位置の2箇所である。これは、コイルパターン4a〜4cが設けられた基板3の層数(3個)より1つ少なくなっている。スルーホール9bの設置箇所より、スルーホール9aの設置箇所の方が、開口部3mに近くて、コイルパターン4a〜4cの巻回周の内側にある。
【0046】
スルーホール9a、9bは、本発明の「層間接続部」の一例である。また、スルーホール9aは、本発明の「第1層間接続部」の一例であり、スルーホール9bは、本発明の「第2層間接続部」の一例である。
【0047】
他の例として、各スルーホール9a、9bの設置箇所に、該スルーホール9a、9bより大径のスルーホールをそれぞれ1つずつ設けて、該スルーホールにより異なる層L1〜L3にあるコイルパターン4a〜4c同士を接続してもよい。
【0048】
スルーホール9a、9bを形成し易くするため、第1層L1のスルーホール9bの周辺と、第3層L3のスルーホール9aの周辺には、銅箔から成る小パターン4dがそれぞれ設けられている。それぞれのスルーホール9a、9bと小パターン4dは接続されている。第1層L1の小パターン4dの表面には、絶縁加工が施されている。
【0049】
図3(c)に示すように、第3層L3において、コイルパターン4cは、内端部4c
2から、開口部3mの周囲に時計回りで外に向かって2回巻回されている(外巻き)。コイルパターン4cの外端部4c
1は、パッド8bおよびスルーホール8aを介して端子6iと接続されている。
【0050】
上記により、基板3のコイルパターン4a〜4cは、第3層L3で、起点である端子6iから、開口部3m(およびコア2aの凸部2m)の周囲に1回目と2回目が巻かれた後、スルーホール9bを経由して、第2層L2に接続される。次に、コイルパターン4a〜4cは、第2層L2で、開口部3mの周囲に3回目と4回目が巻かれた後、スルーホール9aを経由して、第1層L1に接続される。そして、コイルパターン4a〜4cは、第1層L1で、開口部3mの周囲に5回目と6回目が巻かれた後、終点である端子6oに接続される。つまり、3層基板3に6巻のコイルパターン4a〜4cが形成されている。
【0051】
磁気デバイス1に流れる電流も、上記のように、端子6iから入力されて、コイルパターン4c、スルーホール9b、コイルパターン4b、スルーホール9a、およびコイルパターン4aの順に流れた後、端子6oから出力される。
【0052】
図3に示すように、基板3の各層L1〜L3の空き領域には、放熱パターン4t
0〜4t
6、5s
0〜5s
9が設けられている。そのうち、放熱パターン4t
0〜4t
6は、コイルパターン4a〜4cの一部を基板3の板面方向に広げることにより、コイルパターン4a〜4cと一体で設けられている。放熱パターン5s
0〜5s
9は、基板3の板面方向に広がるように、コイルパターン4a〜4cと別体で設けられている。また、放熱パターン5s
0〜5s
9同士も別体になっている。
【0053】
各層L1〜L3において、パターン4a〜4d、4t
0〜4t
6、5s
0〜5s
9は、ねじ11に対して絶縁されている。
図3(a)に示すように、第1層L1において、端子6iとこの周囲のスルーホール8aおよびパッド8bは、近傍にある放熱パターン4t
0に対して絶縁されている。端子6oとこの周囲のスルーホール8aおよびパッド8bは、放熱パターン4t
2と接続され、放熱パターン5s
0に対して絶縁されている。
【0054】
図3(b)に示すように、第2層L2において、端子6i、6oとこれらの周囲のスルーホール8aは、近傍にある放熱パターン5s
3、4t
3に対して絶縁されている。
図3(c)に示すように、第3層L3において、端子6iとこの周囲のスルーホール8aは、近傍にある放熱パターン4t
5と接続されている。端子6oとこの周囲のスルーホール8aは、近傍にある放熱パターン5s
9と接続され、放熱パターン4t
6に対して絶縁されている。
【0055】
図3に示すように、放熱ピン7aとこの周囲のスルーホール8dおよびパッド8cにより、第1層L1の放熱パターン4t
0、第2層L2の放熱パターン5s
3、および第3層L3の放熱パターン5s
5が接続されている。放熱ピン7bとこの周囲のスルーホール8dおよびパッド8cにより、第1層L1の放熱パターン5s
1、第2層L2の放熱パターン4t
3、および第3層L3の放熱パターン5s
7が接続されている。
【0056】
放熱ピン7cとこの周囲のスルーホール8dおよびパッド8cにより、第1層L1の放熱パターン4t
1、第2層L2の放熱パターン5s
4、および第3層L3の放熱パターン5s
6が接続されている。放熱ピン7dとこの周囲のスルーホール8dおよびパッド8cにより、第1層L1の放熱パターン5s
2、第2層L2の放熱パターン4t
4、および第3層L3の放熱パターン5s
8が接続されている。
【0057】
コイルパターン4a〜4cには大電流が流れるため、コイルパターン4a〜4cが発熱源となって、基板3の温度が上昇する。第1層L1のコイルパターン4aで発生した熱は、たとえば、コイルパターン4aの表面や放熱パターン4t
0〜4t
2、5s
0〜5s
2の表面で放熱される。また、コイルパターン4aで発生した熱は、たとえば、放熱ピン7a、7bや端子6oなどから第3層L3の放熱パターン5s
5、5s
6、5s
9などに伝わって、絶縁シート12を介してヒートシンク10で放熱される。
【0058】
第2層L2のコイルパターン4bで発生した熱は、たとえば、放熱パターン4t
3、4t
4などに拡散され、放熱ピン7b、7dなどから他の層L1、L3の放熱パターン5s
1、5s
2、5s
7、5s
8などに伝わる。そして、その熱は、第1層L1の放熱パターン5s
1、5s
2の表面などから放熱されたり、第3層L3の放熱パターン5s
7、5s
8からヒートシンク10に伝わって、放熱されたりする。第3層L3のコイルパターン4cで発生した熱は、たとえば、コイルパターン4cや放熱パターン4t
5、4t
6からヒートシンク10に伝わって、放熱される。
【0059】
上記第1実施形態によると、基板3の3個の各層L1〜L3に、コイルパターン4a〜4cが複数回巻回されているので、全体としてコイルパターン4a〜4cの巻き数が、層数の2倍以上になる。このため、少ない層数の基板3において、コイルパターン4a〜4cの巻き数を多くすることができる。本例では、各層L1〜L3に、コイルパターン4a〜4cが2回ずつ巻回されているので、3層基板3に6巻きのコイルパターン4a〜4cを実現することができる。
【0060】
また、各層L1〜L3でコイルパターン4a〜4cが内巻きまたは外巻きで渦巻き状に引き回されている。そして、隣り合う層L1〜L3のコイルパターン4a〜4c同士が内端部4a
2、4b
2、4c
2または外端部4b
1で、基板3に設けられたスルーホール9a、9bにより接続されている。また、第1層L1や第3層L3のコイルパターン4a、4cの外端部4a
1、4c
1が、端子6o、6iと接続されている。このため、たとえば、別途リード線などを用いた基板外配線(空中配線ともいう。)で端子6o、6iとコイルパターン4a、4cを接続する必要がなく、コイルパターン4a〜4cの配線を容易にすることができる。さらに、コイルパターン4a〜4cやスルーホール9a、9bを基板3の開口部3mの近傍に寄せて配置することで、基板3の板面方向への小型化を実現することができる。
【0061】
また、スルーホール9a、9bの設置箇所数を、コイルパターン4a〜4cが設けられた基板3の層数より1つ少なくしているので、隣り合う層L1〜L3のコイルパターン4a〜4c同士をスルーホール9a、9bにより確実に接続しつつ、基板3の板面方向へのより小型化を実現することができる。また、基板3の各層L1〜L3を貫通する2箇所のスルーホール9a、9bによりコイルパターン4a〜4c同士を接続しているので、これらの配線を形成する基板3の製造を容易にすることができる。
【0062】
また、電力入出力用の端子6i、6oを、コイルパターン4a〜4cの外周より外側に設けているので、端子6i、6oとスルーホール9a、9bの配置やコイルパターン4a〜4cの配線を容易にすることができる。また、コイルパターン4a〜4cの外周の大きさを小さく抑えて、基板3の板面方向へのより小型化を実現することができる。
【0063】
上記第1実施形態では、3層基板3の各層L1〜L3にコイルパターン4a〜4cを設けた例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。下記の第2実施形態のように、基板の5以上の奇数個の各層にコイルパターンを設けてもよい。
【0064】
図6は、第2実施形態による磁気デバイス1’の基板3’の各層の要部の平面図である。
図7は、磁気デバイス1’の断面図であって、
図6のV’−V’断面を示している。
【0065】
磁気デバイス1’の基板3’の表面(
図7で左端の面)3xには、
図6(a)に示すような第1層L1’が設けられている。基板3’の裏面(
図7で右端の面)3zには、
図6(e)に示すような第5層L5が設けられている。
図7に示すように、第1層L1’と第5層L5の間には、
図6(b)、(c)、(d)に示すような、第2層L2’、第3層L3’、および第4層L4が設けられている。
【0066】
つまり、基板3’は、2つの表層L1’、L5と、3つの内層L2’、L3’、L4の、計5つ(奇数個)の層L1’〜L5を有している。また、基板3’の表面3x側から1番目には第1層L1’、2番目には第2層L2’、3番目には第3層L3’、4番目には第4層L4、5番目には第5層L5がそれぞれ設けられている。第5層L5は、基板3’の最も裏面3z側にある最終層である。
【0067】
基板3’に設けられた各スルーホール8aには、端子6i、6oがそれぞれ埋設されている。基板3’の各層L1’〜L5には、銅箔から成るコイルパターン4e〜4iが設けられている。コイルパターン4e〜4iの幅や厚みや断面積は、コイルの所定の性能を達成しつつ、所定の大電流を流しても、コイルパターン4e〜4iでの発熱量をある程度に抑制して、しかもコイルパターン4e〜4iの表面から放熱できるように設定されている。
【0068】
各コイルパターン4e〜4iは、各層L1’〜L5で開口部3mの周囲に同じ方向に複数回巻回されている。端子6i、6oは、コイルパターン4e〜4iの外周より外側に設けられている。
【0069】
図6(a)に示すように、第1層L1’において、コイルパターン4eの外端部4e
1は、パッド8bおよびスルーホール8aを介して端子6oと接続されている。コイルパターン4eは、外端部4e
1から開口部3mの周囲に、時計回りで内に向かって2回巻回されている(内巻き)。コイルパターン4eの内端部4e
2は、
図7に示すように、基板3’の裏面3z側に隣り合う第2層L2’のコイルパターン4fの内端部4f
2と、ビア9cにより接続されている。
【0070】
図6(b)に示すように、第2層L2’において、コイルパターン4fは、内端部4f
2から、開口部3mの周囲に時計回りで外に向かって2回巻回されている(外巻き)。コイルパターン4fの外端部4f
1は、
図7に示すように、基板3’の裏面3z側に隣り合う第3層L3’のコイルパターン4gの外端部4g
1と、ビア9dにより接続されている。
【0071】
図6(c)に示すように、第3層L3’において、コイルパターン4gは、外端部4g
1から、開口部3mの周囲に時計回りで内に向かって2回巻回されている(内巻き)。コイルパターン4gの内端部4g
2は、
図7に示すように、基板3’の裏面3z側に隣り合う第4層L4のコイルパターン4hの内端部4h
2と、ビア9eにより接続されている。
【0072】
図6(d)に示すように、第4層L4において、コイルパターン4hは、内端部4h
2から、開口部3mの周囲に時計回りで外に向かって2回巻回されている(外巻き)。コイルパターン4hの外端部4h
1は、
図7に示すように、基板3’の裏面3z側に隣り合う第5層L5のコイルパターン4iの内端部4i
2と、ビア9fにより接続されている。
【0073】
つまり、異なる隣り合った2つの層のコイルパターン同士は、別個のビア9c〜9fによりそれぞれ接続されている。ビア9c〜9fは、
図7に示すように、基板3’を貫通しないIVH(Interstitial Via Hole)から成る。また、各ビア9c〜9fは、所定の直流抵抗の性能を達成するため、
図6に示すように小径で複数設けられている。各ビア9c〜9fの内側は、銅などで埋められていてもよい。
【0074】
図6に示すように、ビア9c〜9fの設置箇所数は、コイルパターン4e、4fの内端部4e
2、4f
2間、コイルパターン4f、4gの外端部4f
1、4g
1間、コイルパターン4g、4hの内端部4g
2、4h
2間、およびコイルパターン4hの外端部4h
1とコイルパターン4iの内端部4i
2の間の、4箇所である。これは、コイルパターン4e〜4iが設けられた基板3’の層数(5個)より1つ少なくなっている。
【0075】
また、基板3’の板面方向における、ビア9c〜9fの設置箇所数は、コイルパターン4e〜4hの内端部4e
2〜4h
2がある位置と、コイルパターン4b〜4hの外端部4b
1〜4h
1とコイルパターン4iの内端部4i
2がある位置の、2箇所である。この基板3’の板面方向における、ビア9d、9fの設置箇所より、ビア9c、9eの設置箇所の方が、開口部3mに近くて、コイルパターン4e〜4iの巻回周の内側にある。ビア9c〜9fは、本発明の「層間接続部」の一例である。
【0076】
他の例として、各ビア9c〜9fの設置箇所に、該ビア9c〜9fより大径のビアをそれぞれ1つずつ設けて、該ビアにより異なる層L1’〜L5にあるコイルパターン4e〜4i同士を接続してもよい。
【0077】
図6(e)に示すように、第5層L5において、コイルパターン4iは、内端部4i
2から、開口部3mの周囲に時計回りで外に向かって2回巻回されている(外巻き)。コイルパターン4iの外端部4i
1は、パッド8bおよびスルーホール8aを介して端子6iと接続されている。
【0078】
上記により、基板3’のコイルパターン4e〜4iは、第5層L5で、起点である端子6iから、開口部3mの周囲に1回目と2回目が巻かれた後、ビア9fを経由して、第4層L4に接続される。次に、コイルパターン4e〜4iは、第4層L4で、開口部3mの周囲に3回目と4回目が巻かれた後、ビア9eを経由して、第3層L3’に接続される。次に、コイルパターン4e〜4iは、第3層L3’で、開口部3mの周囲に5回目と6回目が巻かれた後、ビア9dを経由して、第2層L2’に接続される。次に、コイルパターン4e〜4iは、第2層L2’で、開口部3mの周囲に7回目と8回目が巻かれた後、ビア9cを経由して、第1層L1’に接続される。そして、コイルパターン4e〜4iは、第1層L1’で、開口部3mの周囲に9回目と10回目が巻かれた後、終点である端子6oに接続される。つまり、5層基板3’に10巻のコイルパターン4e〜4iが形成されている。
【0079】
磁気デバイス1’に流れる電流も、上記のように、端子6iから入力されて、コイルパターン4i、ビア9f、コイルパターン4h、ビア9e、コイルパターン4g、ビア9d、コイルパターン4f、ビア9c、およびコイルパターン4eの順に流れた後、端子6oから出力される。
【0080】
上記第2実施形態によると、基板3’の5個の各層L1’〜L5に、コイルパターン4e〜4iが複数回巻回されているので、全体としてコイルパターン4e〜4iの巻き数が、層数の2倍以上になる。このため、少ない層数の基板3’において、コイルパターン4e〜4iの巻き数を多くすることができる。本例では、5層基板3’に10巻きのコイルパターン4e〜4iを実現することができる。
【0081】
また、各層L1’〜L5でコイルパターン4e〜4iが内巻きまたは外巻きで渦巻き状に引き回されている。そして、隣り合う層L1’〜L5のコイルパターン4e〜4i同士が内端部4e
2〜4i
2または外端部4f
1〜4h
2で、基板3’に設けられたビア9c〜9fにより接続されている。また、第1層L1’や第5層L5のコイルパターン4e、4iの外端部4e
1、4i
1が、端子6o、6iと接続されている。このため、たとえば、別途リード線などを用いた基板外配線で端子6o、6iとコイルパターン4e、4iを接続する必要がなく、コイルパターン4e〜4iの配線を容易にすることができる。さらに、コイルパターン4e〜4iやビア9c〜9fを基板3’の開口部3mの近傍に寄せて配置することで、基板3’の板面方向への小型化を実現することができる。
【0082】
また、基板3’の板面方向におけるコイルパターン4e〜4iの内端部4e
2〜4i
2と外端部4f
1〜4h
1が来る2箇所に、ビア9c〜9fを設けているので、コイルパターン4e〜4iの電流経路を確保しつつ、基板3’の板面方向へのより小型化を実現することができる。
【0083】
本発明では、以上述べた以外にも種々の実施形態を採用することができる。たとえば、以上の実施形態では、3層基板3または5層基板3’の全ての層L1〜L3、L1’〜L5にコイルパターン4a〜4c、4e〜4iを設けた例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。3層以上を有する基板において、3以上の奇数個の各層にコイルパターンを設ければよい。また、7以上の奇数個の各層にコイルパターンを設ける場合は、たとえば、基板の表面側から、1番目の層を
図6(a)に示すように形成し、最終層を
図6(e)に示すように形成し、偶数番目の層を
図6(b)、(d)に示すように形成し、その他の奇数番目の層を
図6(c)に示すように形成すればよい。
【0084】
また、以上の実施形態では、コア2aの中央の凸部2mが挿入される開口部3mの周囲に、コイルパターン4a〜4c、4e〜4iを2回ずつ巻回した例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえば、コア2aの他の凸部2L、2rが挿入される切欠き3L、3r(
図2など)に代えて、貫通孔から成る開口部を基板に設け、凸部2m、2L、2rが挿入される開口部の2つ以上の周囲に、コイルパターンを3回以上巻回してもよい。但し、基板のサイズを考慮して、各層のコイルパターンの巻き数を設定するのが好ましい。また、コイルパターンでの発熱量の抑制や、コイルパターンの表面からの放熱をし易くするため、コイルパターンの幅を広くするのが好ましい。
【0085】
また、以上の実施形態では、層間接続部としてスルーホール9a、9bやビア9c〜9fを基板3、3’に設けた例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、端子やピンやはんだなどの他の導体から成る層間接続部を基板に設けて、異なる層のコイルパターン同士を接続するようにしてもよい。
【0086】
また、以上の実施形態では、端子部として銅ピンから成る端子6i、6oを基板3、3’に設けた例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえば端子6i、6oを省略して、スルーホール8aやパッド8bを端子部として設けてもよい。そして、これらの端子部に、コイルパターンを接続するとともに、他の電子部品や回路を直接接続してもよい。たとえば、
図1に示したスイッチング電源装置100の場合、コイルパターン4aの端子部8a、8b(入力側)に、整流回路54のダイオードD1、D2のカソードを半田付けで接続し、コイルパターン4bの端子部8a、8b(出力側)に、平滑回路55のコンデンサCの一端や、出力電圧検出回路59および出力端子T3につながるラインの一端を半田付けで接続すればよい。
【0087】
また、以上の実施形態では、厚銅箔基板を用いた例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではなく、一般的な樹脂製のプリント基板や金属製の基板などのような、他の基板を用いてもよい。金属製の基板の場合は、基材とコイルパターンとの間に絶縁体を設ければよい。
【0088】
また、以上の実施形態では、E字形の上コア2aにI字形の下コア2bを組み合わせた例を示したが、本発明は、2つのE字形コアを組み合わせた磁気デバイスにも適用することができる。
【0089】
さらに、以上の実施形態では、車両用のスイッチング電源装置100における、平滑回路55のチョークコイルLとして使用される磁気デバイス1に本発明を適用した例を挙げたが、トランス53(
図1)として使用される磁気デバイスに対しても、本発明を適用することは可能である。また、車両以外の、たとえば電子機器用のスイッチング電源装置で使用される磁気デバイスにも本発明を適用することは可能である。