【文献】
Biosensors and Bioelectronics,2006年,Vol.21, No.12,p.2255-2262
【文献】
PDA Journal of GMP and validation in Japan,2012年,Vol.14, No.2,p.43-47
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態に係るクリーンルームの模式図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る微生物検出装置の検出部の模式的な上面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る微生物検出装置の検出部の
図2のIII−III方向から見た模式的な断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る微生物の種類毎の蛍光強度を示すグラフである。
【
図5】本発明の実施の形態に係る微生物の粒径と、蛍光強度と、の関係を模式的に示すグラフである。
【
図6】本発明の実施例に係る固定化された大腸菌の明視野観察画像である。
【
図7】本発明の実施例に係る固定化された大腸菌の蛍光観察画像である。
【
図8】本発明の実施例に係る固定化された大腸菌の蛍光観察画像である。
【
図9】本発明の実施例に係る固定化された大腸菌の蛍光観察画像である。
【
図10】本発明の実施例に係る固定化されなかった大腸菌の明視野観察画像である。
【
図11】本発明の実施例に係る固定化されなかった大腸菌の蛍光観察画像である。
【
図12】本発明の実施例に係る固定化されなかった大腸菌の蛍光観察画像である。
【
図13】本発明の実施例に係る固定化されなかった大腸菌の蛍光観察画像である。
【
図14】本発明の実施例に係る固定化された表皮ブドウ球菌の明視野観察画像である。
【
図15】本発明の実施例に係る固定化された表皮ブドウ球菌の蛍光観察画像である。
【
図16】本発明の実施例に係る固定化された表皮ブドウ球菌の蛍光観察画像である。
【
図17】本発明の実施例に係る固定化された表皮ブドウ球菌の蛍光観察画像である。
【
図18】本発明の実施例に係る固定化されなかった表皮ブドウ球菌の明視野観察画像である。
【
図19】本発明の実施例に係る固定化されなかった表皮ブドウ球菌の蛍光観察画像である。
【
図20】本発明の実施例に係る固定化されなかった表皮ブドウ球菌の蛍光観察画像である。
【
図21】本発明の実施例に係る固定化されなかった表皮ブドウ球菌の蛍光観察画像である。
【
図22】本発明の実施例に係る固定化された枯草菌芽胞の明視野観察画像である。
【
図23】本発明の実施例に係る固定化された枯草菌芽胞の蛍光観察画像である。
【
図24】本発明の実施例に係る固定化されなかった枯草菌芽胞の明視野観察画像である。
【
図25】本発明の実施例に係る固定化されなかった枯草菌芽胞の蛍光観察画像である。
【
図26】本発明の実施例に係る固定化された黒カビの明視野観察画像である。
【
図27】本発明の実施例に係る固定化された黒カビの蛍光観察画像である。
【
図28】本発明の実施例に係る固定化された黒カビの蛍光観察画像である。
【
図29】本発明の実施例に係る固定化された黒カビの蛍光観察画像である。
【
図30】本発明の実施例に係る固定化されなかった黒カビの明視野観察画像である。
【
図31】本発明の実施例に係る固定化されなかった黒カビの蛍光観察画像である。
【
図32】本発明の実施例に係る固定化されなかった黒カビの蛍光観察画像である。
【
図33】本発明の実施例に係る固定化されなかった黒カビの蛍光観察画像である。
【
図34】本発明の実施例に係る固定化されたシュードモナス属の明視野観察画像である。
【
図35】本発明の実施例に係る固定化されたシュードモナス属の蛍光観察画像である。
【
図36】本発明の実施例に係る固定化されたシュードモナス属の蛍光観察画像である。
【
図37】本発明の実施例に係る固定化されたシュードモナス属の蛍光観察画像である。
【
図38】本発明の実施例に係る固定化されなかったシュードモナス属の明視野観察画像である。
【
図39】本発明の実施例に係る固定化されなかったシュードモナス属の蛍光観察画像である。
【
図40】本発明の実施例に係る固定化されなかったシュードモナス属の蛍光観察画像である。
【
図41】本発明の実施例に係る固定化されなかったシュードモナス属の蛍光観察画像である。
【
図42】本発明の実施例に係る微生物の粒径と、標準化平均蛍光強度と、の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0010】
実施の形態に係る微生物検出装置の評価キットは、固定化微生物を含む。ここで、固定化微生物とは、例えば固定化試薬によってタンパク質が架橋されて、固定された微生物をいう。固定化試薬としては、例えばホルムアルデヒド、及びグルタルアルデヒド等のアルデヒドが使用可能である。
【0011】
固定化される微生物の例としては細菌及び真菌が含まれる。細菌の例としては、グラム陰性菌及びグラム陽性菌が挙げられる。グラム陰性菌の例としては、大腸菌が挙げられる。グラム陽性菌の例としては、表皮ブドウ球菌、枯草菌、マイクロコッカス、及びコリネバクテリウムが挙げられる。真菌の例としては、黒カビ等のアスペルギルスが挙げられる。ただし、固定化される微生物はこれらに限定されない。
【0012】
固定化微生物は実質的に不活性であり、死滅しており、分裂及び増殖能を有しない。
【0013】
固定化微生物は、例えば水等の溶媒中に分散している。本発明者は、微生物は固定化しても凝集せずに分散することを見出した。また、本発明者は、固定化微生物が、固定化される前と実質的に同様に蛍光を発することを見出した。例えば、微生物検出装置は、粒子の粒径等の大きさに依存する散乱光の特性、粒子が発する蛍光の強度、及び粒子が発する蛍光の波長等を用いて、粒子が微生物であるか否か、また粒子が微生物である場合は、微生物の種類が何であるかを判定する。固定化微生物は、凝集しないため、固定化される前と大きさが実質的に同じであり、固定化される前と実質的に同様に蛍光を発するから、固定化微生物を用いて、微生物検出装置を汚染することなく評価することが可能となる。また、固定化微生物は、固定化されているため、耐久性を有しており、取り扱いが用意である。
【0014】
次に、実施の形態に係る微生物検出装置の評価キットで評価される、微生物検出装置の例について説明する。
図1に示すように、微生物検出装置1は、例えば、クリーンルーム70内に配置されている。クリーンルーム70には、ダクト71、並びにHEPA(High Efficiency Particulate Air Filter)及びULPA(Ultra Low Penetration Air Filter)等の超高性能エアフィルタを有する噴き出し口72を介して、清浄な空気等の気体が送り込まれる。
【0015】
クリーンルーム70内には、生産ライン81、82が配置されている。生産ライン81、82は、例えば精密機器、電子部品、又は半導体装置の生産ラインである。あるいは生産ライン81、82は、食品、飲料、又は医薬品の生産ラインである。例えば、生産ライン81、82において、輸液が点滴や注射器に充填される。あるいは、生産ライン81、82において、経口剤や漢方薬が製造される。またあるいは、生産ライン81、82において、栄養ドリンクやビールが容器に充填される。
【0016】
生産ライン81、82は、通常、微生物及び非微生物粒子等をクリーンルーム70内の気体に飛散させないよう管理されている。しかし、生産ライン81、82は、何らかの事情で、クリーンルーム70内の気体に飛散する微生物及び非微生物粒子の発生源になる。また、生産ライン81、82以外の要因で、クリーンルーム70内の気体に微生物及び非微生物粒子が飛散することもある。
【0017】
微生物検出装置1は、例えば、
図2及び
図3に示す検出部20を備える。検出部20は、光源10、光源10で発せられた光を集光する集光レンズ11、集光レンズ11の焦点に向けて、クリーンルーム70から吸引した気体を噴射するノズルを含む試料流路12a、及び試料流路12aから噴射された気体が導入される試料流路12cを備える。排風機や調圧器等によって、気体は、一定の流量で、
図2に示す試料流路12aから試料流路12cに流される。
【0018】
光源10としては、固体レーザ、ガスレーザ、半導体レーザ、及び発光ダイオード等が使用可能である。試料流路12aから噴射された気体に粒子が含まれていると、粒子は光を照射されて散乱光を発生させる。散乱光は、集光レンズ13で集光され、散乱光検出器14で検出される。散乱光検出器14としては、フォトダイオード等が使用可能である。散乱光検出器14は、散乱光を受光すると、電気的な散乱光検出信号を生成し、コンピュータシステム等の処理部に伝送する。
【0019】
処理部は、散乱光検出信号の有無によって、粒子の有無を判断する。また、処理部は、散乱光検出信号の受信回数に基づき、粒子の数を計測する。さらに、散乱光の強度と、粒子の大きさと、は相関するため、処理部は、散乱光の強度に基づき、検出した粒子の粒径等の大きさを算出する。またさらに、粒子が微生物である場合、微生物の大きさは、微生物の種類によって異なる。そのため、処理部は、算出した大きさから、微生物の種類を特定してもよい。
【0020】
また、試料流路12aから噴射された気体に、微生物等の蛍光性粒子が含まれていると、粒子は光を照射されて蛍光を発する。例えば、微生物に含まれるリボフラビン(riboflavin)、フラビンヌクレオチド(FMN)、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NAD(P)H)、ピリドキサミン(pyridoxamine)、ピリドキサールリン酸(pyridoxal−5’−phosphate)、ピリドキシン(pyridoxine)、トリプトファン(tryptophan)、チロシン(tyrosine)、及びフェニルアラニン(phenylalanine)等が、蛍光を発する。蛍光は集光ミラー15で集光され、
図3に示す蛍光検出器17で検出される。蛍光検出器17の前には、蛍光以外の波長の光から蛍光検出器17を遮蔽するフィルタ16が配置されていてもよい。蛍光検出器17としては、フォトダイオード等が使用可能である。蛍光検出器17は、蛍光を受光すると、電気的な蛍光検出信号を生成し、処理部に伝送する。
【0021】
処理部は、蛍光検出信号の有無によって、蛍光性粒子の有無を判断する。また、処理部は、蛍光検出信号の受信回数に基づき、蛍光性粒子の数を計測する。さらに、
図4に示すように、微生物が発する蛍光の強度は、微生物の種類によって異なる。そのため、処理部は、検出した蛍光の強度から、微生物の種類を特定してもよい。
【0022】
さらに、例えば、処理部は、散乱光及び蛍光を検出した場合は、検出した粒子が微生物粒子であると判定してもよい。また、処理部は、散乱光を検出したが蛍光を検出しなかった場合は、検出した粒子は非微生物粒子であると判定してもよい。さらにまた、処理部は、これらに限定されないが、米国特許6885440号公報及び米国特許7106442号公報に開示されている方法に従って、蛍光強度及び散乱光強度の両方に基づいて微生物の種類を特定してもよい。例えば
図5に示すように、微生物の種類によって、粒径と、蛍光強度と、は相関がみられる。したがって、
図5に示すようなグラフを予め取得することによって、蛍光強度及び粒径から微生物の種類を特定することが可能である。
【0023】
微生物検出装置1は、蛍光を検出せず、散乱光のみによって微生物を検出し、微生物の種類を特定してもよい。同心円状の散乱光検出器を用いて、角度毎の散乱光強度を検出し、サポートベクターマシン(SVM: Support Vector Machine)等の統計手法により、微生物種類を特定することが可能である(例えば、Murugesan Venkatapathiら著、「High speed classification of individual bacterial cells using a model−based light scatter system and multivariate statistics」、APPLIED OPTICS、米国、Optical Society of America、2008年2月10日、Vol.47、No.5、678ないし686頁参照。)。
【0024】
あるいは、微生物検出装置1は、複数の波長の励起光を気体に照射して蛍光スペクトルを検出し、気体に含まれる微生物を特定してもよい。例えば、波長が266nm及び355nmの励起光を微生物に照射し、波長が350nm、450nm、及び550nmの蛍光スペクトルを検出することによって、微生物を特定することが可能である(例えば、Vasanthi Sivaprakasamら著、「Multiple UV wavelength excitation and fluorescence of bioarerosols」、OPTICS EXPRESS、米国、Optical Society of America、2004年9月20日、Vol.12、No.19、4457ないし4466頁参照。)。
【0025】
図1に示す微生物検出装置1が微生物を検出した場合は、クリーンルーム70において除染作業等が行われる。
【0026】
微生物検出装置1の微生物検出能力を正確に評価するためには、既知の種類、既知の数の微生物を微生物検出装置1に導入し、微生物検出装置1が検出した微生物の種類、数が、導入されたものと等しいか否かを検査することが好ましい。しかし、生きている微生物は、環境の変化に敏感であり、微生物検出装置1に導入する前後で特性が変化する場合がある。また、生きており増殖可能な微生物を、評価目的で微生物検出装置1に導入することは、微生物検出装置1及びクリーンルーム70の汚染の原因になりうる。特に、カビ等は、飛散性が高い上に、汚染力が強い傾向にある。
【0027】
そこで、従来、非微生物粒子を微生物検出装置1に導入して、微生物検出装置1を評価することが提案されている。しかし、非微生物粒子と、実際の微生物と、の間には、屈折率や大きさの違いがある場合があり、その場合、発生する散乱光の特性に違いが生じる。また、蛍光性の非微生物粒子と、実際の微生物と、の間には、蛍光の強度及び波長に違いがある場合もある。そのため、蛍光性の非微生物粒子によっては、微生物検出装置1の微生物検出能力を正確に評価できない場合が生じうる。また、大きさ及び蛍光特性に関して、特定の微生物に類似する非微生物粒子もあるが、複数種類の微生物毎に特性の類似する非微生物粒子を用意することは困難な場合もある。
【0028】
これに対し、実施の形態に係る微生物検出装置の評価キットに含まれる固定化微生物は、上述したように、実質的に不活性であり、死滅しており、分裂及び増殖能を有していない。そのため、固定化微生物が、微生物検出装置1及びクリーンルーム70に与える汚染の程度は限定的である。また、固定化微生物は、固定化される前と大きさが実質的に同じであり、固定化される前と実質的に同様に蛍光を発するから、所定の種類、所定の数の固定化微生物を微生物検出装置1に導入することにより、微生物検出装置1を安全かつ正確に評価することが可能である。さらに、固定化微生物は、固定化される前と、蛍光の減衰特性が同様であるから、蛍光の減衰特性に基づき、微生物を検出する微生物検出装置の評価にも使用可能である。
【0029】
固定化微生物を微生物検出装置1に導入する際には、固定化微生物を気体中に散布し、散布された固定化微生物を含有する気体を微生物検出装置1に導入してもよい。あるいは、水等の溶媒に固定化微生物を分散させて溶液を調製し、ネブライザ等を用いて溶液から固定化微生物を含有するエアロゾルを生成し、微生物検出装置1に導入してもよい。固定化微生物は、架橋されているため、環境の変化が生じても、構造が破壊されにくい傾向にある。微生物検出装置が液中の微生物を検出可能である場合は、固定化微生物を含有する溶液を微生物検出装置に導入してもよい。
【0030】
(実施例)
以下に本発明の実施の形態を説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されないことはもちろんである。
【0031】
(固定化試薬の調製)
濃度が37%のホルムアルデヒド(HCHO)溶液(シグマアルドリッチジャパン株式会社、252549−25ML)を滅菌水で希釈し、濃度が8%又は16%のホルムアルデヒド溶液を調製した。
【0032】
(微生物の入手)
入手した微生物は、大腸菌(Escherichia coli、略称E.coli、ATCC 13706)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis、ATCC 12228)、枯草菌芽胞(Bacillus atrophaeus、ATCC 9372)、黒カビ(Aspergillus niger、ATCC 9142)、及びシュードモナス属(P.putida、 ATCC 12633)であった。なお、ATCCは、アメリカ培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)の略である。大腸菌及びシュードモナス属は、グラム陰性菌である。表皮ブドウ球菌、及び枯草菌芽胞は、グラム陽性菌である。黒カビは真菌である。なお、枯草菌芽胞は、予め懸濁液として販売されているものを購入した。
【0033】
(微生物の調製)
入手した枯草菌芽胞及び黒カビ以外の細菌微生物はトリプチケースソイブロス(TSB)培地に植菌し、約32℃の恒温層で一晩振とう培養した。次に、菌液をポアメディアRトリプトソイ寒天(TSA)培地に画線し、約32℃の恒温層で約24時間培養した。その後、培地から菌体をかき取り、滅菌水に懸濁した。さらに、懸濁液を2100gで3分間遠心した後、上澄みを除去し、沈殿したペレットを滅菌水で懸濁し、微生物懸濁液を得た。
【0034】
真菌である黒カビは、寒天プレートで胞子を形成させ、そこにスルホコハク酸ジオクチルナトリウム液を注いで、胞子を液中に分散させた。次に、胞子を含む溶液を回収した後、滅菌ガーゼでろ過して菌糸を取り除き、さらに1500gないし1600gで10分間遠心することと、沈殿したペレットを滅菌水で懸濁することと、を3回繰り返し、微生物懸濁液を得た。
【0035】
(固定化微生物の調製)
表皮ブドウ球菌及びシュードモナス属の場合は、濃度が8%のホルムアルデヒド溶液と、微生物懸濁液と、を、1:1の体積比で混合した。具体的には、体積が400μL、濃度が8%のホルムアルデヒド溶液と、体積が400μLの微生物懸濁液と、を、混合した。
大腸菌、枯草菌芽胞、及び黒カビの場合は、濃度が16%のホルムアルデヒド溶液と、微生物懸濁液と、を、1:1の体積比で混合した。具体的には、体積が400μL、濃度が16%のホルムアルデヒド溶液と、体積が400μLの微生物懸濁液と、を、混合した。
混合後、軽くピペッティングし、大腸菌の場合は、常温で10分間放置した。表皮ブドウ球菌及びシュードモナス属の場合は、常温で5分間放置した。枯草菌芽胞の場合は、常温で24時間放置した。黒カビの場合は、常温で10分間放置した。その後、混合液を4700rpmで3分間遠心すること、沈殿したペレットを滅菌水で懸濁することと、を2回繰り返し、溶媒としての滅菌水中に固定化微生物が分散しているサンプル溶液を得た。
【0036】
(コントロールの調製)
滅菌水と、微生物懸濁液と、を、1:1の体積比で混合した。具体的には、体積が400μLの滅菌水と、体積が400μLの微生物懸濁液と、を、混合した。混合後、軽くピペッティングし、大腸菌の場合は、常温で10分間放置した。表皮ブドウ球菌及びシュードモナス属の場合は、常温で5分間放置した。枯草菌芽胞の場合は、常温で24時間放置した。黒カビの場合は、常温で10分間放置した。その後、混合液を4700rpmで3分間遠心すること、沈殿したペレットを滅菌水で懸濁することと、を2回繰り返し、溶媒としての滅菌水中に固定化されていない微生物が分散しているコントロール溶液を得た。
【0037】
(顕微鏡観察)
サンプル溶液及びコントロール溶液をそれぞれスライドガラスに1.5μL滴下し、乾燥させた。その後、励起光フィルター(オリンパス、NV BA455)を備える顕微鏡(オリンパス、BX51)を用いて、固定化微生物及び固定化されなかった微生物を明視野観察及び蛍光観察した。
【0038】
(固定化された大腸菌の観察結果)
サンプル溶液を調製後、直ちに観察された固定化された大腸菌の明視野観察画像を
図6に示す。また、サンプル溶液を調製後、直ちに観察された固定化された大腸菌の蛍光観察画像を
図7に示す。さらに、サンプル溶液を調製してから冷暗所で約1日保存した後に観察された固定化された大腸菌の蛍光観察画像を
図8に、サンプル溶液を調製してから冷暗所で約5日保存した後に観察された固定化された大腸菌の蛍光観察画像を
図9に示す。なお、
図7、
図8、及び
図9の画像は、露出時間1.0秒で撮影された画像である。
【0039】
(固定化されなかった大腸菌の観察結果)
コントロール溶液を調製後、直ちに観察された固定化されなかった大腸菌の明視野観察画像を
図10に示す。また、コントロール溶液を調製後、直ちに観察された固定化されなかった大腸菌の蛍光観察画像を
図11に示す。さらに、コントロール溶液を調製してから冷暗所で約1日保存した後に観察された固定化されなかった大腸菌の蛍光観察画像を
図12に、コントロール溶液を調製してから冷暗所で約5日保存した後に観察された固定化されなかった大腸菌の蛍光観察画像を
図13に示す。なお、
図11、
図12、及び
図13の画像は、露出時間1.0秒で撮影された画像である。
【0040】
(固定化の有無と大腸菌の分散性)
図6及び
図7に示した固定化された大腸菌の顕微鏡観察画像と、
図10及び
図11に示した固定化されなかった大腸菌の顕微鏡観察画像と、の比較から、大腸菌は、固定化の有無による分散性の有意な違いがなく、固定化による凝集も実質的に生じていないことが明らかになった。
【0041】
(固定化の有無と大腸菌の粒径)
図6に示した明視野観察画像において、固定化された大腸菌の粒径を測定したところ、平均粒径は1.5μmであった。また、
図10に示した明視野観察画像において、固定化されなかった大腸菌の粒径を測定したところ、平均粒径は1.4μmであった。したがって、固定化された大腸菌の粒径は、固定化されなかった大腸菌の粒径と、ほぼ同じであった。
【0042】
(固定化の有無と大腸菌の蛍光強度)
画像解析ソフトを用いて、サンプル溶液を調製後、直ちに露出時間0.5秒で撮影した固定化された大腸菌の蛍光観察画像において、固定化された大腸菌の蛍光強度として画像における明度を測定したところ、平均蛍光強度は3587.5であった。また、コントロール溶液を調製後、直ちに露出時間0.5秒で撮影した固定化されなかった大腸菌の蛍光観察画像において、固定化されなかった大腸菌の蛍光強度を測定したところ、平均蛍光強度は1649.2であった。固定化された大腸菌の平均蛍光強度の値と、固定化されなかった大腸菌の平均蛍光強度値と、は、微生物検出装置において、大腸菌とみなされる蛍光強度の範囲内であった。
【0043】
(固定化の有無と大腸菌の蛍光の減衰)
図7ないし
図9に示した固定化された大腸菌の顕微鏡観察画像と、
図11ないし
図13に示した固定化されなかった大腸菌の顕微鏡観察画像と、の比較から、固定化された大腸菌の蛍光の減衰の傾向は、固定化されなかった大腸菌の蛍光の減衰の傾向と、ほぼ同じであった。
【0044】
(固定化された表皮ブドウ球菌の観察結果)
サンプル溶液を調製後、直ちに観察された固定化された表皮ブドウ球菌の明視野観察画像を
図14に示す。また、サンプル溶液を調製後、直ちに観察された固定化された表皮ブドウ球菌の蛍光観察画像を
図15に示す。さらに、サンプル溶液を調製してから冷暗所で約1日保存した後に観察された固定化された表皮ブドウ球菌の蛍光観察画像を
図16に、サンプル溶液を調製してから冷暗所で約5日保存した後に観察された固定化された表皮ブドウ球菌の蛍光観察画像を
図17に示す。なお、
図15、
図16、及び
図17の画像は、露出時間1.0秒で撮影された画像である。
【0045】
(固定化されなかった表皮ブドウ球菌の観察結果)
コントロール溶液を調製後、直ちに観察された固定化されなかった表皮ブドウ球菌の明視野観察画像を
図18に示す。また、コントロール溶液を調製後、直ちに観察された固定化されなかった表皮ブドウ球菌の蛍光観察画像を
図19に示す。さらに、コントロール溶液を調製してから冷暗所で約1日保存した後に観察された固定化されなかった表皮ブドウ球菌の蛍光観察画像を
図20に、コントロール溶液を調製してから冷暗所で約5日保存した後に観察された固定化されなかった表皮ブドウ球菌の蛍光観察画像を
図21に示す。なお、
図19、
図20、及び
図21の画像は、露出時間1.0秒で撮影された画像である。
【0046】
(固定化の有無と表皮ブドウ球菌の分散性)
図14及び
図15に示した固定化された表皮ブドウ球菌の顕微鏡観察画像と、
図18及び
図19に示した固定化されなかった表皮ブドウ球菌の顕微鏡観察画像と、の比較から、表皮ブドウ球菌は、固定化の有無による分散性の有意な違いがなく、固定化による凝集も実質的に生じていないことが明らかになった。
【0047】
(固定化の有無と表皮ブドウ球菌の粒径)
図14に示した明視野観察画像において、固定化された表皮ブドウ球菌の粒径を測定したところ、平均粒径は1.5μmであった。また、
図18に示した明視野観察画像において、固定化されなかった表皮ブドウ球菌の粒径を測定したところ、平均粒径は1.6μmであった。したがって、固定化された表皮ブドウ球菌の粒径は、固定化されなかった表皮ブドウ球菌の粒径と、ほぼ同じであった。
【0048】
(固定化の有無と表皮ブドウ球菌の蛍光強度)
サンプル溶液を調製後、直ちに露出時間0.5秒で撮影した固定化された表皮ブドウ球菌の蛍光観察画像において、固定化された表皮ブドウ球菌の蛍光強度を測定したところ、平均蛍光強度は5719.0であった。また、コントロール溶液を調製後、直ちに露出時間0.5秒で撮影した固定化されなかった表皮ブドウ球菌の蛍光観察画像において、固定化されなかった表皮ブドウ球菌の蛍光強度を測定したところ、平均蛍光強度は6787.8であった。固定化された表皮ブドウ球菌の平均蛍光強度の値と、固定化されなかった表皮ブドウ球菌の平均蛍光強度の値と、は、微生物検出装置において、表皮ブドウ球菌とみなされる蛍光強度の範囲内であった。
【0049】
(固定化の有無と表皮ブドウ球菌の蛍光の減衰)
図15ないし
図16に示した固定化された表皮ブドウ球菌の顕微鏡観察画像と、
図19ないし
図21に示した固定化されなかった表皮ブドウ球菌の顕微鏡観察画像と、の比較から、固定化された表皮ブドウ球菌の蛍光の減衰の傾向は、固定化されなかった表皮ブドウ球菌の蛍光の減衰の傾向と、ほぼ同じであった。
【0050】
(固定化された枯草菌芽胞の観察結果)
サンプル溶液を調製後、直ちに観察された固定化された枯草菌芽胞の明視野観察画像を
図22に示す。また、サンプル溶液を調製後、直ちに観察された固定化された枯草菌芽胞の蛍光観察画像を
図23に示す。なお、
図23の画像は、露出時間1.0秒で撮影された画像である。
【0051】
(固定化されなかった枯草菌芽胞の観察結果)
コントロール溶液を調製後、直ちに観察された固定化されなかった枯草菌芽胞の明視野観察画像を
図24に示す。また、コントロール溶液を調製後、直ちに観察された固定化されなかった枯草菌芽胞の蛍光観察画像を
図25に示す。なお、
図25の画像は、露出時間1.0秒で撮影された画像である。
【0052】
(固定化の有無と枯草菌芽胞の分散性)
図22及び
図23に示した固定化された枯草菌芽胞の顕微鏡観察画像と、
図24及び
図25に示した固定化されなかった枯草菌芽胞の顕微鏡観察画像と、の比較から、枯草菌芽胞は、固定化の有無による分散性の有意な違いがなく、固定化による凝集も実質的に生じていないことが明らかになった。
【0053】
(固定化の有無と枯草菌芽胞の粒径)
図22に示した明視野観察画像において、固定化された枯草菌芽胞の粒径を測定したところ、平均粒径は2.0μmであった。また、
図24に示した明視野観察画像において、固定化されなかった枯草菌芽胞の粒径を測定したところ、平均粒径は2.0μmであった。したがって、固定化された枯草菌芽胞の粒径は、固定化されなかった枯草菌芽胞の粒径と、同じであった。
【0054】
(固定化の有無と枯草菌芽胞の蛍光強度)
サンプル溶液を調製後、直ちに露出時間0.5秒で撮影した固定化された枯草菌芽胞の蛍光観察画像において、固定化された枯草菌芽胞の蛍光強度を測定したところ、平均蛍光強度は9182.0であった。また、コントロール溶液を調製後、直ちに露出時間0.5秒で撮影した固定化されなかった枯草菌芽胞の蛍光観察画像において、固定化されなかった枯草菌芽胞の蛍光強度を測定したところ、平均蛍光強度は7264.0であった。固定化された枯草菌芽胞の平均蛍光強度の値と、固定化されなかった枯草菌芽胞の平均蛍光強度の値と、は、微生物検出装置において、枯草菌芽胞とみなされる蛍光強度の範囲内であった。
【0055】
(固定化された黒カビの観察結果)
固定化された黒カビの明視野観察画像を
図26に示す。また、サンプル溶液を調製後、直ちに観察された固定化された黒カビの蛍光観察画像を
図27に示す。さらに、サンプル溶液を調製してから冷暗所で約1日保存した後に観察された固定化された黒カビの蛍光観察画像を
図28に、サンプル溶液を調製してから冷暗所で約5日保存した後に観察された固定化された黒カビの蛍光観察画像を
図29に示す。なお、
図27、
図28、及び
図29の画像は、露出時間1.0秒で撮影された画像である。
【0056】
(固定化されなかった黒カビの観察結果)
コントロール溶液を調製後、直ちに観察された固定化されなかった黒カビの明視野観察画像を
図30に示す。また、コントロール溶液を調製後、直ちに観察された固定化されなかった黒カビの蛍光観察画像を
図31に示す。さらに、コントロール溶液を調製してから冷暗所で約1日保存した後に観察された固定化されなかった黒カビの蛍光観察画像を
図32に、コントロール溶液を調製してから冷暗所で約5日保存した後に観察された固定化されなかった黒カビの蛍光観察画像を
図33に示す。なお、
図31、
図32、及び
図33の画像は、露出時間1.0秒で撮影された画像である。
【0057】
(固定化の有無と黒カビの分散性)
図26及び
図27に示した固定化された黒カビの顕微鏡観察画像と、
図30及び
図31に示した固定化されなかった黒カビの顕微鏡観察画像と、の比較から、黒カビは、固定化の有無による分散性の有意な違いがなく、固定化による凝集も実質的に生じていないことが明らかになった。
【0058】
(固定化の有無と黒カビの粒径)
図26に示した明視野観察画像において、固定化された黒カビの粒径を測定したところ、平均粒径は3.2μmであった。また、
図30に示した明視野観察画像において、固定化されなかった黒カビの粒径を測定したところ、平均粒径は3.5μmであった。したがって、固定化された黒カビの粒径は、固定化されなかった黒カビの粒径と、ほぼ同じであった。
【0059】
(固定化の有無と黒カビの蛍光強度)
サンプル溶液を調製後、直ちに露出時間0.5秒で撮影した固定化された黒カビの蛍光観察画像において、固定化された黒カビの蛍光強度を測定したところ、平均蛍光強度は18900.3であった。また、コントロール溶液を調製後、直ちに露出時間0.5秒で撮影した固定化されなかった黒カビの蛍光観察画像において、固定化されなかった黒カビの蛍光強度を測定したところ、平均蛍光強度は17342.1であった。固定化された黒カビの平均蛍光強度の値と、固定化されなかった黒カビの平均蛍光強度の値と、は、微生物検出装置において、黒カビとみなされる蛍光強度の範囲内であった。
【0060】
(固定化の有無と黒カビの蛍光の減衰)
図27ないし
図29に示した固定化された黒カビの顕微鏡観察画像と、
図31ないし
図33に示した固定化されなかった黒カビの顕微鏡観察画像と、の比較から、固定化された黒カビの蛍光の減衰の傾向は、固定化されなかった黒カビの蛍光の減衰の傾向と、ほぼ同じであった。
【0061】
(固定化されたシュードモナス属の観察結果)
サンプル溶液を調製後、直ちに観察された固定化されたシュードモナス属の明視野観察画像を
図34に示す。また、サンプル溶液を調製後、直ちに観察された固定化されたシュードモナス属の蛍光観察画像を
図35に示す。さらに、サンプル溶液を調製してから冷暗所で約1日保存した後に観察された固定化されたシュードモナス属の蛍光観察画像を
図36に、サンプル溶液を調製してから冷暗所で約5日保存した後に観察された固定化されたシュードモナス属の蛍光観察画像を
図37に示す。なお、
図35、
図36、及び
図37の画像は、露出時間1.0秒で撮影された画像である。
【0062】
(固定化されなかったシュードモナス属の観察結果)
コントロール溶液を調製後、直ちに観察された固定化されなかったシュードモナス属の明視野観察画像を
図38に示す。また、コントロール溶液を調製後、直ちに観察された固定化されなかったシュードモナス属の蛍光観察画像を
図39に示す。さらに、コントロール溶液を調製してから冷暗所で約1日保存した後に観察された固定化されなかったシュードモナス属の蛍光観察画像を
図40に、コントロール溶液を調製してから冷暗所で約5日保存した後に観察された固定化されなかったシュードモナス属の蛍光観察画像を
図41に示す。なお、
図39、
図40、及び
図41の画像は、露出時間1.0秒で撮影された画像である。
【0063】
(固定化の有無とシュードモナス属の分散性)
図34及び
図35に示した固定化されたシュードモナス属の顕微鏡観察画像と、
図38及び
図39に示した固定化されなかったシュードモナス属の顕微鏡観察画像と、の比較から、シュードモナス属は、固定化の有無による分散性の有意な違いがなく、固定化による凝集も実質的に生じていないことが明らかになった。
【0064】
(固定化の有無とシュードモナス属の粒径)
図34に示した明視野観察画像において、固定化されたシュードモナス属の粒径を測定したところ、平均粒径は0.7μmであった。また、
図38に示した明視野観察画像において、固定化されなかったシュードモナス属の粒径を測定したところ、平均粒径は0.6μmであった。したがって、固定化されたシュードモナス属の粒径は、固定化されなかったシュードモナス属の粒径と、ほぼ同じであった。なお、シュードモナス属は桿状であるため、同じ面積の円に換算した場合の径を、粒径として求めた。
【0065】
(固定化の有無とシュードモナス属の蛍光強度)
画像解析ソフトを用いて、サンプル溶液を調製後、直ちに露出時間0.5秒で撮影した固定化されたシュードモナス属の蛍光観察画像において、固定化されたシュードモナス属の蛍光強度として画像における明度を測定したところ、平均蛍光強度は694.9であった。また、コントロール溶液を調製後、直ちに露出時間0.5秒で撮影した固定化されなかったシュードモナス属の蛍光観察画像において、固定化されなかったシュードモナス属の蛍光強度を測定したところ、平均蛍光強度は265.9であった。固定化されたシュードモナス属の平均蛍光強度の値と、固定化されなかったシュードモナス属の平均蛍光強度値と、は、微生物検出装置において、シュードモナス属とみなされる蛍光強度の範囲内であった。
【0066】
(固定化の有無とシュードモナス属の蛍光の減衰)
図35ないし
図37に示した固定化されたシュードモナス属の顕微鏡観察画像と、
図39ないし
図41に示した固定化されなかったシュードモナス属の顕微鏡観察画像と、の比較から、固定化されたシュードモナス属の蛍光の減衰の傾向は、固定化されなかったシュードモナス属の蛍光の減衰の傾向と、ほぼ同じであった。
【0067】
(固定化の有無と微生物の特性)
蛍光強度を測定した大腸菌と同時に観察した標準蛍光粒子の平均蛍光強度は128324.1であった。固定化された大腸菌の平均蛍光強度を、標準蛍光粒子の平均蛍光強度で割って得られた、固定化された大腸菌の標準化平均蛍光強度は、0.027956であった。固定化されなかった大腸菌の平均蛍光強度を、標準蛍光粒子の平均蛍光強度で割って得られた、固定化されなかった大腸菌の標準化平均蛍光強度は、0.012852であった。
【0068】
蛍光強度を測定した表皮ブドウ球菌と同時に観察した標準蛍光粒子の平均蛍光強度は125189.1であった。固定化された表皮ブドウ球菌の平均蛍光強度を、標準蛍光粒子の平均蛍光強度で割って得られた、固定化された表皮ブドウ球菌の標準化平均蛍光強度は、0.045683であった。固定化されなかった表皮ブドウ球菌の平均蛍光強度を、標準蛍光粒子の平均蛍光強度で割って得られた、固定化されなかった表皮ブドウ球菌の標準化平均蛍光強度は、0.05422であった。
【0069】
蛍光強度を測定した枯草菌芽胞と同時に観察した標準蛍光粒子の平均蛍光強度は126602.2であった。固定化された枯草菌芽胞の平均蛍光強度を、標準蛍光粒子の平均蛍光強度で割って得られた、固定化された枯草菌芽胞の標準化平均蛍光強度は、0.072527であった。固定化されなかった枯草菌芽胞の平均蛍光強度を、標準蛍光粒子の平均蛍光強度で割って得られた、固定化されなかった枯草菌芽胞の標準化平均蛍光強度は、0.057377であった。
【0070】
蛍光強度を測定した黒カビと同時に観察した標準蛍光粒子の平均蛍光強度は141894.6であった。固定化された黒カビの平均蛍光強度を、標準蛍光粒子の平均蛍光強度で割って得られた、固定化された黒カビの標準化平均蛍光強度は、0.133199であった。固定化されなかった黒カビの平均蛍光強度を、標準蛍光粒子の平均蛍光強度で割って得られた、固定化されなかった黒カビの標準化平均蛍光強度は、0.122218であった。
【0071】
蛍光強度を測定したシュードモナス属と同時に観察した標準蛍光粒子の平均蛍光強度は124202.9であった。固定化されたシュードモナス属の平均蛍光強度を、標準蛍光粒子の平均蛍光強度で割って得られた、固定化されたシュードモナス属の標準化平均蛍光強度は、0.005595であった。固定化されなかったシュードモナス属の平均蛍光強度を、標準蛍光粒子の平均蛍光強度で割って得られた、固定化されなかったシュードモナス属の標準化平均蛍光強度は、0.002141であった。
【0072】
蛍光物質が発する蛍光の強度の測定結果は、顕微鏡装置の状態によって変動するため、観察される日時によって変動する場合がある。そのため、上述したように、同じ種類の標準蛍光粒子の蛍光強度をそれぞれの微生物と同時に測定し、微生物の蛍光強度を標準蛍光粒子の蛍光強度で割ることにより、異なる日時に微生物を蛍光観察したことによる蛍光強度の変動が除去される。
【0073】
固定化された微生物と固定化されなかった微生物のそれぞれについて、粒径と、標準化平均蛍光強度と、をプロットすると、
図42に示すように、微生物の特性は、固定化の有無に関わらず、同様の傾向を示した。また、固定化の有無による微生物の特性の変動は、微生物の種類の違いによる特性の違いと比較して、わずかであった。
【0074】
(その他の実施の形態)
上記のように本発明を実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。例えば、実施の形態に係る固定化微生物で評価される微生物検出装置の微生物を検出する原理は、上記のものに限定されない。実施の形態に係る固定化微生物は、誘導泳動等の泳動の原理により微生物を検出する微生物検出装置、あるいはフローサイトメトリーの原理により微生物を検出する微生物検出装置の評価にも使用可能である。このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。