(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガラスマットと前記袋状セパレータとは、5mm以上、15mm未満の間隔を空けてストライプ状に接着されることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか一項に記載のセパレータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ガラスマット付き袋状セパレータを使用する液式鉛蓄電池では、寿命試験などを実施した場合に、試験初期に内部抵抗が急激に増加してしまうことがあった。一方、電池の寿命末期にも内部抵抗の急上昇があることが知られている。この内部抵抗の急上昇により電池の寿命判定を行った場合、試験初期に内部抵抗が上昇してしまうと誤判定が生じてしまうため、この内部抵抗の上昇を抑えることが必要である。
発明者等が検討したところ、内部抵抗の上昇は、充電時に正極板とガラスマットとの間にガス溜まりが発生することが一因であることに気付いた。
この場合、特許文献1の技術を利用してガラスマットの通気度を上げる方法が考えられる。しかし、特許文献1は、直径0.2〜2.0mmの小径孔を縦横に多数形成するため、ガラスマットと袋状セパレータとの接合強度が確保し難く、ガラスマット付き袋状セパレータへの適用が困難である。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、ガラスマットと袋状セパレータとを一体化した構成で、正極板とガラスマットとの間のガス溜まりの発生を抑えることができるセパレータおよび鉛蓄電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、負極板または正極板を囲う袋状セパレータと、正極板に密着するガラスマットとを一体にしたセパレータにおいて、前記袋状セパレータの前記正極板に対向する面に、
一枚の前記ガラスマットを
間欠的に接着し、前記ガラスマット
における前記接着された部分を除く領域に、前記正極板から発生したガスを抜く
隙間部を設け
、前記隙間部の上端は前記ガラスマットの上端より低く、前記隙間部の下端は前記ガラスマットの下端より高い位置に形成されて、前記ガラスマットの上端および下端が前記ガラスマットの幅一杯に連続した状態に保持されていることを特徴とする
。
この構成によれば、ガラスマットと袋状セパレータとを一体化した構成で、正極板とガラスマットとの間のガス溜まりの発生を抑えることが可能になる。
【0007】
また、本発明は、上記構成において、
前記隙間部は、前記ガラスマットの上下方向に延在するとともに左右に間隔を空けて複数設けられ、前記ガラスマットの上端と下端とは、左右の前記隙間部の間にて上下方向につながることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記構成において、前記袋状セパレータは、前記ガラスマットが接着される複数の凸条リブを有し、前記隙間部は、前記正極板から発生したガスを、前記凸条リブによって前記袋状セパレータと前記ガラスマットとの間にできる空間部に導くことを特徴とする。この構成によれば、袋状セパレータとガラスマットとの間にできる空間部を利用して、正極板から発生するガスを効率良く抜くことができる。
【0009】
また、本発明は、上記構成において、
一枚の前記ガラスマットと前記袋状セパレータとは
、ストライプ状に
間欠的に接着され、
前記ストライプ状の接着部分を構成する複数の線状接着部は互いに平行であり、前記隙間部は、前
記複数の線状接着部の間に、前記線状接着部に沿って設けられることを特徴とする。この構成によれば、接着部位近傍などから発生する正極板からのガスを排出させ易くでき、また、隙間部の面積も確保し易くなる。
また、本発明は、上記構成において、前記線状接着部は連続して接着されることを特徴とする。この構成によれば、線状接着部間のガスが、後から発生するガスで押し出される効果を利用して効率良くガスを排出させることができる。
【0010】
また、本発明は、上記構成において、前記線状接着部は間隔を空けて接着され、前
記隙間部は、隣り合う前記線状接着部の非接着部の間に配置されるように間隔を空けて設けられることを特徴とする。この構成によれば、線状接着部の非接着部を通過するガスを隙間部に流し、効率良く排出することができる。
【0011】
また、本発明は、上記構成において、前記ガラスマットと前記袋状セパレータとは、5mm以上、15mm未満の間隔を空けてストライプ状に接着されることを特徴とする。この構成によれば、ガラスマットと袋状セパレータとを一体化した構成で、ガラスマットと袋状セパレータとの接着間隔の調整によって、正極板とガラスマットとの間のガス溜まりの発生を抑えることができる。
【0012】
また、本発明は、上記構成において、前記隙間部は、前記正極板同士を接続するストラップと前記正極板と
を接続する耳部を避けた領域に形成されることを特徴とする。この構成によれば、正極板のうち最も活物質が使われる領域をガラスマットで適切に押さえつつ、隙間部を設けることができる。
【0013】
また、本発明は、上記構成において
、前記ガラスマットと前記袋状セパレータと
は、5mm以上、15mm未満の間隔を空けてストライプ状に接着されることを特徴とする。この構成によれば、ガラスマットと袋状セパレータとを一体化した構成で、ガラスマットと袋状セパレータとの接着間隔の調整によって、正極板とガラスマットとの間のガス溜まりの発生を抑えることができる。
【0014】
また、本発明は、上記構成において、前記
凸条リブは、5mm以上、15mm未満の間隔を空け
て形成
されていることを特徴とする。この構成によれば、袋状セパレータとガラスマットとの間にできる空間部を利用して、正極板から発生するガスを効率良く抜くことができる。
【0015】
また、本発明は、上記セパレータを用いて鉛蓄電池を構成することにより、内部抵抗の上昇を抑制した鉛蓄電池を提供することができる。特に、寿命末期に至る前に内部抵抗が急上昇することを抑制した充電制御車に好適な鉛蓄電池を提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ガラスマットと袋状セパレータとを一体化した構成で、正極板とガラスマットとの間のガス溜まりの発生を抑えることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
図1は同極性の極板の耳群を接続してストラップ20、またはストラップ20および極柱22を形成した鉛蓄電池の極板群10を示す斜視図である。また、
図2は極板群10の各極板(正極板、負極板)の断面を周辺構成と共に示した側断面図である。
この鉛蓄電池は、正極板11と負極板12とを隔離するセパレータに、ガラスマット13と袋状セパレータ14とを、その両側縁部をギアシールなどで一体化したガラスマット付き袋状セパレータ15を使用し、ガラスマット側を正極板11に当接することにより、正極活物質の脱落などを防止してサイクル寿命の向上を図った充電制御車用の液式鉛蓄電池である。
なお、ガラスマット13と袋状セパレータ14の両側縁部は、前記ギアシール以外に、ヒートシール、超音波シールなどによる溶着、接着剤による接着等で接合されていても良い。
【0019】
この鉛蓄電池は、隔壁により内部を多数のセル室に区分けされたモノブロック電槽を備えており、各セル室に極板群10を収納し、交互に配置された正極板11と負極板12の同極性の耳部11A、12A同士をストラップ20で接続している。
図1中、符号21は、ストラップ20に一体に設けられたセル間接続体(中間極柱とも言う)を示し、符号22は、他のストラップ20に一体に設けられ、液式鉛蓄電池のケース外に露出する外部端子(極柱とも言う)を示している。
【0020】
袋状セパレータ14は、ポリエチレンなどの合成樹脂製のセパレータを袋状に加工して形成され、ガラスマット13は、ガラス繊維を抄造して形成され、正極板11に密着するように配置される。
図2は、ガラスマット付き袋状セパレータ15内に負極板12を収納した構成を示している。より具体的には、袋状セパレータ14内に負極板12を収納し、袋状セパレータ14の外側の面にガラスマット13の一方の側面を接着により固定し、このガラスマット13の他方の側面が正極板11に接触するようにしている。なお、
図2では、ガラスマット13をU字状にして袋状セパレータ14の両面に接着した場合を示しているが、この構成に限らない。すなわち、袋状セパレータ14の外側の両面にリーフ状のガラスマット13を接着しても良い。
また、ガラスマット付き袋状セパレータ15内に正極板11を収納する場合もある。この場合、袋状セパレータ14に内側の両面にガラスマット13を接着してなるガラスマット付き袋状セパレータに形成し、ガラスマット13を正極板11に密着させる。この構成に本発明を適用しても良い。
【0021】
発明者等は、ガラスマット付き袋状セパレータ15におけるガラスマット13と正極板11との接触状態に着目したところ、ガラスマット13は正極活物質の軟化・脱落防止のために正極板11と密着し、ガラスマット13自体が内部抵抗を上昇させることはないが、充電時に正極板11とガラスマット13との間にガス溜まりが発生し、このガス溜まりが内部抵抗を上昇させる一因であることに気付いた。
一方、ガラスマット13が存在しない場合には、充電時のガスは極板表面に溜まらず、上方に抜けていく。つまり、ガラスマット13が存在する場合、充電時に正極板11から発生したガスはガラスマット13から抜けず、正極板11とガラスマット13との間に溜まって内部抵抗の増加を招いてしまう。
そこで、本実施形態では、ガラスマット13と袋状セパレータ14とを一体化した構成で、正極板11とガラスマット13との間のガス溜まりの発生を抑える構成を検討した。
【0022】
次に具体的な実施の形態について説明する。
<第1実施形態>
第1実施形態では、袋状セパレータ14の正極板11に対向する面に、ガラスマット13を左右に間隔を空けて接着し、ガラスマット13の接着された部分を除く領域に、正極板11から発生したガスを抜く隙間部13Sを設けるようにした。
図3は、第1実施形態のガラスマット付き袋状セパレータ15を正面から見た図であり、
図4は、
図3のIV−IV断面を極板11、12と共に上面から示した図である。
図3および
図4に示すように、袋状セパレータ14は、上下方向に直線状に接着剤(
図3中、黒丸で示す)が塗布され(以下、「線状接着部30」という)、ガラスマット13が線状接着部30を介してガラスマット13と接着されている。なお、線状接着部30の幅WSなどは、ガラスマット13と袋状セパレータ14との接合強度を確保できる範囲で適宜に設定すれば良い。また、
図3中、符号Sは、ガラスマット付き袋状セパレータ15の両側縁部のシール代を示している。
【0023】
ガラスマット13には、左右の線状接着部30の間に、正極板11から発生したガスを抜くためのガス抜き部となる隙間部13Sが設けられる。
この隙間部13Sは、ガラスマット13の上下方向に延在するとともに左右に間隔を空けて配置される複数(本実施形態では3つ)の縦長の隙間部とされる。これら縦長の隙間部13Sの上端はガラスマット13の上端より低く、下端はガラスマット13の下端より高い位置に形成される。これによって、ガラスマット13の上端および下端が、ガラスマット13の幅一杯に連続した状態に保持される。
また、左右の縦長の隙間部13Sの間に、ガラスマット13の上端と下端とをつなぐ架橋部13K(
図3)を残している。このため、縦長の隙間部13Sを形成しても、ガラスマット13の強度などを十分に確保することができる。
【0024】
この構成によれば、ガラスマット13と袋状セパレータ14との接合強度を確保しつつ、充電時に正極板11から発生したガスを、ガラスマット13に設けられた縦長の隙間部13Sを通して抜くことができるので、正極板11と袋状セパレータ14との間にガスが溜まる事態を避けることができる。
また、本構成は、同
図3に示すように、隙間部13Sが、線状接着部30に沿って上下方向に接着部位に近接させつつ、正極板11に対向して延在する隙間(開口部)を設けることで、接着部位近傍などから発生する正極板11からのガスをより排出させ易くできる。
また、本構成では、ガラスマット13と袋状セパレータ14とが左右一対の線状接着部30で接着されるため、接着剤の量が少なくて済み、接着剤による内部抵抗の増大を抑制することが可能である。
【0025】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態のガラスマット付き袋状セパレータ15を上面から示した図である。このガラスマット付き袋状セパレータ15を正面から見た図は、
図3と同様であり、
図5は、
図3のIV−IV断面を極板と共に上面から見た図に相当する図である。
図3および
図5に示すように、袋状セパレータ14には、ガラスマット13側に突出する左右一対の凸条リブ14Rが設けられ、これら凸条リブ14Rがガラスマット13との接着部分を構成している。つまり、凸条リブ14Rの略全面に接着剤が塗布され、ガラスマット13が凸条リブ14Rを介して袋状セパレータ14に接着されるようになっている。
【0026】
これら凸条リブ14Rは、袋状セパレータ14の下端14L(
図3)から上端14U(
図3)に渡って直線的に連続するとともに、互いに平行になるように形成されている。そして、これら凸条リブ14Rによって袋状セパレータ14とガラスマット13との間に、上下方向に連続する小さな空間部KA(
図5参照)が形成される。
これにより、ガラスマット13が袋状セパレータ14の上下に渡って連続するとともに左右に間隔を空けてストライプ状に接着され、ガラスマット13と袋状セパレータ14との接合強度を十分に確保することができる。なお、凸条リブ14Rの突出量、幅などは、ガラスマット13と袋状セパレータ14との接合強度を確保できる範囲で適宜に設定すれば良い。
【0027】
正極板11から発生したガスは、ガラスマット13に形成された縦長の隙間部13Sによって、袋状セパレータ14とガラスマット13との間の空間部KA(
図4)に導かれるので、この空間部KAを経由してガスを上方に抜け易くすることができ、効率良くガスを抜くことができる。
これらにより、本実施形態では、ガラスマット13と袋状セパレータ14とを十分に一体化した構成で、正極板11とガラスマット13との間のガス溜まりの発生を抑えることができる。また、ガスが抜けやすくなるので、電解液の拡散が促され、電解液の成層化も抑制することもできる。
【0028】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態のガラスマット付き袋状セパレータ15を正面から見た図であり、
図7は、
図6のVII−VII断面を極板11、12と共に上面から示した図である。
図6および
図7に示すように、第3実施形態では、袋状セパレータ14に対し、凸条リブ14Rを第2実施形態よりも多く設け(本実施形態では4つ)、ガラスマット13に対し、各凸条リブ14Rの間に相当する位置に、縦長の隙間部13Sを各々設けるようにしている。
すなわち、第3実施形態では、凸条リブ14R同士の間隔を第2実施形態よりも狭くしている。発明者等が試験したところ、凸条リブ14R同士の間隔、言い換えれば、ガラスマット13と袋状セパレータ14とを接着する線状接着部30の間隔(=
図6中、符号WSで示すストライプ幅)がある程度狭い方が、正極板11から発生したガスの溜まりが少なかった。これは、正極板11から発生したガスが、左右に流れるのを規制することができるので、電池上方へのガスの流れをより促進することができたためと考えられる。
【0029】
また、第3実施形態においても、
図6に示すように、ガラスマット13と袋状セパレータ14とが複数の線状接着部30で接着され、全体としてストライプ状に接合されるので、接合強度を確保し易く、第1実施形態や第2実施形態よりも線状接着部30が多いため、より接合強度を確保できる。
従って、ガラスマット13と袋状セパレータ14とを十分に一体化した構成で、正極板11とガラスマット13との間のガス溜まりの発生を抑えることが可能である。
但し、第3実施形態では、第1実施形態や第2実施形態に比して接着剤の量が多くなるので、接着剤による内部抵抗の増大を抑える観点からは、第1実施形態や第2実施形態よりも若干不利である。
【0030】
<隙間部について>
次に、ガラスマットに設ける隙間部13Sの面積などについて説明する。
なお、隙間部13Sは、あらかじめ準備したガラスマット13の所定位置を、打ち抜き刃を備えた打ち抜き装置で線状、または所定の形状に打ち抜く等して形成することができるが、その形成方法は特に限定されない。また、その形状は以下に説明する実施例中では横1cm×縦8cmの縦長の長方形にしているが、要はガスが抜けるための孔部がガラスマット13に形成されていれば良く、その形状は特に限定されない。
【0031】
<第4実施形態>
図8は、第3実施形態の変形例であり、ガラスマット付き袋状セパレータ15を下部を省略して、正面から見た要部を示す図である。
図8に示すように、第4実施形態では、線状接着部30を、間隔30Sを空けて接着し、隙間部13Sを、線状接着部30の非接着部(間隔30Sの位置に相当)の近傍に配置するように、間隔を空けて設けたものである。この構成によれば、線状接着部30の非接着部を通過するガスを隙間部13Sに流し、効率良く排出することができる。これによって、正極板11とガラスマット13との間のガス溜まりの発生を抑えることができる。
なお、第4実施形態では、第3実施形態に比して、線状接着部30に非接着部を設けたことにより、接着剤の量が少なくなるため、内部抵抗の増大を抑えることができ、有利である。
【0032】
<従来例A>
従来のガラスマット付き袋状セパレータを使用して、正極板1枚、負極板1枚で正極板とガラスマットとが接触するようにDサイズ用の極板群を群圧が5kPaになるように構成して2Vセルを作製した。この従来例Aは、隙間部13Sを有しておらず、また、ストライプ幅WSは130mmであった。
この極板群を使用し、充電前と充電中の電解液の液面の高さの差からガス溜まり体積の測定を行った。測定の結果、ガス溜まり体積は9.7ccであった。
以下に説明する各実施例は、ガラスマット13の隙間部13Sおよびストライプ幅WSを除いて、従来例Aと同構成であり、同条件でガス溜まり体積の測定を行っている。
【0033】
<実施例A>
隙間部として切り込みを設けたガラスマット付き袋状セパレータ15を使用して、正極板1枚、負極板1枚で正極板11とガラスマット13が接触するように極板群10を群圧が5kPaになるように構成して2Vセルを作製した。このガラスマット13には、ガラスマット13の上下方向に延びる切り込み(幅をほぼ零にした隙間部13Sに相当)を3つ設け、この極板群10を使用してガス溜まり体積の測定を行った。測定の結果、ガス溜まり体積は8.4ccであった。
この場合、従来例Aよりもガス溜まり体積が減っており、この程度の減少であっても、実際の液式鉛蓄電池で換算すると、1セルあたり正極板7枚、負極板7枚で、計6セルあったとすれば、ガス溜まり体積は数十ccも減少することになる。つまり、ガラスマット13に設ける隙間部13Sの幅が狭くても、ガス抜き部として機能し、ガス溜まりの抑制効果が得られることが判った。
【0034】
<実施例B>
隙間部13Sの本数を1本から6本にしたガラスマット付き袋状セパレータ15を使用して、正極板1枚、負極板1枚で正極板11とガラスマット13が接触するように極板群10を群圧が5kPaになるように構成して2Vセルを作製した。このガラスマット13の全面積は、10cm×10cmの100cm
2であり、このガラスマット13に、横1cm×縦8cmで面積8cm
2の隙間(隙間部13Sに相当)を設けた。この隙間の本数を増やしていき、ガス溜まり体積の変化を測定した。その結果を表1に示す。
【0036】
表1に示すように、隙間本数を増やすほどガス抜けが良くなり、ガス溜まりがなくなる傾向が見られた。
【0037】
<実施例C>
袋状セパレータ14に凸条リブ14Rを備え、これを介してガラスマット13が接着されたガラスマット付き袋状セパレータ15を使用して、正極板1枚、負極板1枚で正極板11とガラスマット13が接触するように極板群10を群圧が5kPaになるように構成して2Vセルを作製した。このガラスマット13の全面積は、10cm×10cmの100cm
2であり、このガラスマット13に、横1cm×縦8cmで面積8cm
2の隙間(隙間部13Sに相当)を設けた。このときのガス溜まり体積の測定を行った。測定の結果、ガス溜まり体積は7.8ccであり、同じ隙間面積のものより、ガス溜まり体積が少なかった。
【0038】
<実施例D>
袋状セパレータ14に凸条リブ14Rをストライプ幅10mmで備え、これを介してガラスマット13が接着されたガラスマット付き袋状セパレータ15を使用して、正極板1枚、負極板1枚で正極板11とガラスマット13が接触するように極板群10を群圧が5kPaになるように構成して2Vセルを作製した。このガラスマット13の全面積は、10cm×10cmの100cm
2であり、このガラスマット13のほぼ中央部に、横0.5cm×縦8cmで面積4cm
2の隙間(隙間部13Sに相当)を2本設けた。このときのガス溜まり体積の測定を行った。測定の結果、ガス溜まり体積は7.2ccであり、後述する実施例E(同じストライプ幅を有するが、隙間部13Sなし)のものより、ガス溜まり体積が少なかった。
また、ストライプ幅を3mm、5mm、15mmとした以外は上記実施例Dと同様にして、2Vセルを作製し、ガス溜まり体積の測定を行った結果、ガス溜まり体積はそれぞれ、8.9cc、7.5cc、8.7ccであった。この結果、凸条リブ14Rを形成する幅は、5mm以上、15mm未満の間隔がより好ましかった。
【0039】
実施例Bの2Vセルの内部抵抗を測定し、さらに、サイクル寿命試験(SBA S 0101:2006に記載のアイドリングストップ寿命試験)により電池性能を評価した。その結果を表1に示す。
正極活物質の軟化の状態を調べるため、800サイクル経過後に正極板の表面状態を観察し、正極活物質の軟化が生じたものは「有」、正極活物質の軟化が生じなかったものは「無」とした。
【0040】
表1に示すように、内部抵抗は隙間面積を大きくすることで下がっていった。しかし、隙間面積が全ガラスマット面積の40%を超えると表面軟化が生じ始めることが確認された。よって、隙間面積は全面積の40%以下が好ましいと考えられる。
【0041】
図9は、隙間部13Sを形成する領域AR1(
図9中、ハッチングで示す領域)を示した図である。
発明者等が検討したところ、隙間部13Sを形成する領域AR1は、正極板11のうち最も活物質が使われる領域AR2、つまり、正極板11同士を接続するストラップ20と正極板11との連結部位(耳部11Aを含む)を避けた位置に設定することが好ましいということが分かった。具体的には、領域AR1の高さH1は、ガラスマット13の高さの80%以下が好ましい高さである。
また、領域AR1の幅(左右長)W1は、接着領域を確保する観点などから、ガラスマットの幅の90%以内(左右に5%相当の間隔を空ける)が好ましい。すなわち、この領域AR1内で、接着された部分を除く領域に、正極板11から発生したガスを抜く隙間部13Sを適宜に設けるようにすれば良い。
【0042】
<第5実施形態>
図10は、第5実施形態のガラスマット付き袋状セパレータ15を正面から見た図である。
第5実施形態では、ガラスマット13と袋状セパレータ14とをストライプ状に接着する際のストライプ幅WSの調整によって、正極板11から発生したガスを効率良く抜くようにしているものであり、隙間部13Sは形成していない。このストライプ幅WSは、後述の試験によって、5mm以上、15mm未満の間隔が好ましいことが判った。
なお、上述した第3実施形態では、隙間部13Sを形成しているが、隙間部13Sを上述のように形成しない場合でも、ストライプ幅WSは、5mm以上、15mm未満の間隔が好ましかった。
【0043】
このストライプ幅WSに調整することによって、正極板11から発生するガスを簡易に正極板11と袋状セパレータ14との間から抜くことができる。また、本実施形態においても、ガラスマット13と袋状セパレータ14とが複数の線状接着部30で接着し、全体としてストライプ状に接合するので、接合強度を確保し易い。
従って、ガラスマット13と袋状セパレータ14とを十分に一体化した構成で、正極板11とガラスマット13との間のガス溜まりの発生を簡易に抑えることが可能である。以下、ストライプ幅WSについて説明する。
【0044】
<ストライプ幅について>
ストライプ幅WSについて説明する。なお、この検討では、ガラスマット13と袋状セパレータ14との接着部分(線状接着部30)を隙間無く接着した状態とし、正極板11から発生したガスが、ガラスマット13と袋状セパレータ14とが接着されている部分を通り抜けないものとした。
上述した従来例Aに記載したように、ストライプ幅WSが130mmの場合、ガス溜まり体積は9.7ccであった。
【0045】
<実施例E>
ストライプ幅WSを3mm〜15mmにしたガラスマット付き袋状セパレータ15を使用して、正極板1枚、負極板1枚で正極板11とガラスマット13が接触するように極板群10を群圧が5kPaになるように構成して2Vセルを作製し構成した。なお、ストライプ幅WSを3mm〜15mmの間で様々に変更してガス溜まり体積を測定した。その結果を表2に示す。
【0047】
表2に示すように、ストライプ幅WSが3mmではガス溜まり体積は僅かしか減少しなかった。ストライプ幅WSが過度に小さいと、ガラスマット13を全体的に押し付ける状態になり、従来のガラスマット付き袋状セパレータと殆ど変わらない状態となっていると推測する。
一方、ストライプ幅WSが15mm以上では、ガス溜まり体積が大きく、改善の効果が得られなかった。これは、正極板11から発生したガスが溜まることのできる空間が大きく、後から発生するガスで押し出される効果を十分に得られなかったものと考えられる。
測定の結果、ストライプ幅WSは、5mm以上、15mm未満が効果的であり、より好ましくは、5mm以上、10mm以下であった。
【0048】
表2に示すように、ストライプ幅WSは5mm以上、15mm未満で内部抵抗の上昇を抑えることができ、より好ましくは、5mm以上、10mm以下であった。
【0049】
<実施例F>
また、袋状セパレータ15に、ガラスマット13側に突出する左右一対の凸条リブ14Rが設けられ、これら凸条リブ14Rがガラスマット13との接着部分を構成している以外は、実施例Eと同様にして、ストライプ幅が3mm、5mm、10mm、15mmにした2Vセルを作製した。ガス溜まり体積の測定を行った結果、いずれの水準も実施例Eの場合と比較して少なく良好であり、上記実施例Eの場合と同様に、ストライプ幅WSは、5mm以上、15mm未満がより好ましかった。
また、従来例A、実施例A〜Fでは極板群の群圧を5kPaで構成したが、さらに群圧を上げて10kPaで構成したものについては、ガス溜まり体積は5kPaのときよりも若干上昇したが、5kPaの場合と近い値を示し、ほぼ同様の効果が得られた。
【0050】
以上説明したように、
図3〜
図7に示すように、袋状セパレータ14の正極板11に対向する面に、ガラスマット13に間隔を空けて接着し、ガラスマット13の接着された部分を除く領域に、正極板11から発生したガスを抜くガス抜き部となる隙間部13Sを設けることにより、ガラスマット13と袋状セパレータ14とを一体化した構成で、正極板11とガラスマット13との間のガス溜まりの発生を抑えることができる。
また、
図5および
図7に示すように、袋状セパレータ14は、ガラスマット13が接着される複数の凸条リブ14Rを有し、隙間部13Sは、正極板11から発生したガスを、各々の凸条リブ14Rによって袋状セパレータ14とガラスマット13との間にできる空間部KAに導くので、効率良くガスを抜くことができる。
【0051】
また、
図3および
図6に示すように、ガラスマット13と袋状セパレータ14とは、略平行に間隔を空けてストライプ状に接着され、隙間部13Sは、ストライプ状の接着部分を構成する複数の線状接着部30の間に、線状接着部30に沿って設けられるので、接着部位近傍などから発生する正極板11からのガスを排出させ易くでき、また、隙間部13Sの面積も確保し易くなる。
しかも、線状接着部30は連続して接着されるので、線状接着部30間のガスが、後から発生するガスで押し出される効果を利用して効率良くガスを排出させることができる。
【0052】
また、本構成では、ガラスマット13と袋状セパレータ14とは、正極板11から発生したガスを抜く隙間として、5mm以上、15mm未満の間隔を空けてストライプ状に接着される構成にしたことにより、
図9に示すように、上述した隙間部13Sを設けない構成でも、ガラスマット13と袋状セパレータ14とを一体化した構成で、正極板11とガラスマット13との間のガス溜まりの発生を抑えることができる。
また、発明者等は、
図3〜
図7などに記載した隙間部13Sを設けた構成においても、ガラスマット13と袋状セパレータ14とは、正極板11から発生したガスを抜く隙間として、5mm以上、15mm未満の間隔を空けてストライプ状に接着される構成にすることにより、正極板11とガラスマット13との間のガス溜まりの発生を抑えることができることを確認している。
【0053】
しかも、本構成では、袋状セパレータ14は、5mm以上、15mm未満の間隔を空けて凸条リブ14Rを有し、凸条リブ14Rとガラスマット13とを接着して凸条リブ14R間とガラスマット13との間に空間部KAを形成しているので、この空間部KAを利用して効率良くガスを抜くことができる。
また、本構成では、
図8に記載するように、隙間部13Sを、正極板11同士を接続するストラップ20と正極板11との連結部近傍を避けた領域AR1に形成することにより、正極板11のうち最も活物質が使われる領域をガラスマット13で適切に押さえつつ、隙間部13Sを設けることができる。
【0054】
また、本構成では、極板群10に加えられる群圧を25kPa以下とすることが好ましく、より好ましくは10kPa以下である。群圧が25kPaより大きくなると、袋状セパレータ14とガラスマット13との間にできる隙間部13Sまたは空間部KAが少なくなって、正極板11から発生するガスを効率良く抜くことができなくなるからである。なお、群圧はなくても構わないが、正極板11の軟化の抑制効果を考慮した場合、適度に群圧があった方が好ましく、より好ましくは3kPa以上である。
よって、極板群10に加えられる群圧を3kPa以上、10kPa以下とすることにより、袋状セパレータ14とガラスマット13との間にできる隙間部13Sまたは空間部KAをつぶすことなく、正極板11から発生するガスを効率よく抜くことができると共に、寿命を向上させることができる。
【0055】
このようにして、本実施形態では、上記のガラスマット付き袋状セパレータ15を用いて液式鉛蓄電池を構成することによりガス溜まりを抑制することができるため、寿命末期に至る前に内部抵抗が急上昇することを抑制した充電制御車に好適な液式鉛蓄電池を提供することが可能になる。
【0056】
上述した各実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。例えば、上述の実施形態では、ガラスマット13と袋状セパレータ14との接着部位である線状接着部30が連続して接着される場合を説明したが、これに限らず、間隔を空けて非連続に接着したものについても、本実施形態と同様の効果が得られた。