(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下型と、前記下型に対して昇降可能な上型と、前記下型にセットされたワークに対して側方から接近離反する方向にスライド可能なプリヘム刃と、前記上型に設けられたカムドライバと、前記カムドライバで下向きに押圧されることにより、プリヘム刃をワークに向けてスライドさせるカム機構とを備えたヘミング加工装置であって、
互いに当接する前記カムドライバの下面及びカム機構の上面に、水平方向の平坦面を設け、
前記上型を停止させた状態で、上下方向で対向する前記カムドライバの下面と前記カム機構の上面との上下方向距離を変更可能としたヘミング加工装置。
下型と、前記下型に対して昇降可能な上型と、前記下型に設けられ、前記下型にセットされたワークに対して側方から接近離反する方向にスライド可能なプリヘム刃と、前記上型に設けられたカムドライバと、プリヘム刃をワークに向けてスライドさせるカム機構とを備え、互いに当接する前記カムドライバの下面及びカム機構の上面に、水平方向の平坦面を設けたヘミング加工装置を用いて行うヘミング加工方法であって、
前記上型を降下させて前記カムドライバで前記カム機構を下向きに押圧することにより、前記プリヘム刃をスライドさせてワークにプリヘム加工を施すステップと、前記上型を上昇させて前記プリヘム刃をワークから離反させるステップと、前記上型を停止させた状態で、上下方向で対向する前記カムドライバの下面と前記カム機構の上面との上下方向距離を広げるステップと、前記上型を、前記プリヘム加工を施した位置よりも下方まで降下させるステップとを順に経て行うヘミング加工方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、カムドライバ307から側方に突出した山型のカム307aでプリヘム加工ユニット303を駆動することで、プリヘム刃304のワーク側へのスライド(プリヘム加工)と、プリヘム刃304のワークからの離反を、上型302の一回の降下により行うことができる。しかし、この場合、カム307aとプリヘム加工ユニット303のローラとが傾斜面(カム307aの傾斜面)を介して当接するため{
図16(a)参照}、タクトタイムの短縮を図るべく上型302を高速で降下させると、カム307aとの衝突によりプリヘム機構303のローラが弾かれてしまい、プリヘム加工が十分に施されない恐れがある。
【0006】
本発明が解決すべき技術的課題は、上型を高速で降下させた場合でも、プリヘム加工を確実に施すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、下型と、前記下型に対して昇降可能な上型と、前記下型にセットされたワークに対して側方から接近離反する方向にスライド可能なプリヘム刃と、前記上型に設けられたカムドライバと、前記カムドライバで下向きに押圧することにより、プリヘム刃をワークに向けてスライドさせるカム機構とを備えたヘミング加工装置であって、互いに当接する前記カムドライバの下面及びカム機構の上面に、水平方向の平坦面を設けたヘミング加工装置を提供する。
【0008】
このように、カムドライバとカム機構とを水平方向の平坦面同士で当接させることにより、上型を高速で降下させた場合でも、カムドライバの押し下げ力を確実にカム機構に伝えることができるため、ワークに対してプリヘム加工を確実に施すことができる。
【0009】
ところで、プリヘム加工が完了したら、プリヘム刃をワークから離反させて、その後の本ヘム加工において本ヘム刃とプリヘム刃との干渉を回避する必要がある。上記のように、カムドライバとプリヘム機構とが水平方向の平坦面同士で当接する場合、プリヘム加工完了後にプリヘム刃をワークから離反させるためには、上型及びカムドライバを一旦上昇させる必要がある。その後の本ヘム加工を行う際に、カムドライバとプリヘム機構が当接すると、プリヘム刃が再びワーク側にスライドして本ヘム刃とプリヘム刃とが干渉する恐れがある。従って、本ヘム加工を行う際には、カムドライバとプリヘム機構が当接しない位置までしか上型を降下させることができないため、本ヘム加工時の金型動作が制限されてしまう。
【0010】
そこで、上型を停止させた状態で、上下方向で対向するカムドライバの下面とカム機構の上面との上下方向距離を変更可能とすれば、以下の手順でヘミング加工を行うことができる。すなわち、上型を降下させて前記カムドライバで前記カム機構を下向きに押圧することにより、前記プリヘム刃をスライドさせてワークにプリヘム加工を施すステップ(
図7参照)と、前記上型を上昇させて前記プリヘム刃をワークから離反させるステップと、前記上型を停止させた状態で、上下方向で対向する前記カムドライバの下面と前記カム機構の上面との上下方向距離を広げるステップ(以上、
図8参照)と、前記上型を、前記プリヘム加工を施した位置よりも下方まで降下させるステップ(
図9参照)とを順に経て行うことができる。
【0011】
このように、プリヘム加工の後、上型を一旦上昇させ、上型を停止させた状態でカムドライバの下面とカム機構の上面との上下方向距離を大きくすることにより、カムドライバとカム機構とを当接させることなく、すなわちプリヘム刃をワークから退避させた状態のまま、プリヘム加工を施した位置よりも下方まで上型を降下させることができる。これにより、本ヘム加工時の金型動作の自由度を高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明のヘミング加工装置によれば、上型を高速で降下させた場合でも、ワークに対してプリヘム加工を確実に施すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
本実施形態では、ワークが自動車車体のドアのインナパネル1及びアウタパネル2であり(
図1参照)、アウタパネル2のフランジ部2aにヘミング加工を施すことによりインナパネル1と一体化するヘミング加工方法を示す。このヘミング加工方法は、ヘミング加工装置200を用いて行われる。
【0016】
ヘミング加工装置200は、互いに接近離反可能な一対の金型(下型200a及び上型200b)と、一対の金型を駆動するプレス機とを備える。本実施形態のヘミング加工装置200は、
図2及び
図3に示すように、ベース201、ラム202、及びラム202を昇降駆動する第1駆動手段205を有するプレス機と、ベース201に設けられた下型200a及びラム202に設けられた上型200bとを備える。下型200a及び上型200bは、ワークの形状によって異なる汎用部であり、それぞれベース201及びラム202に対して着脱可能とされる。
【0017】
ベース201は、床面に載置される第1ベース201aと、第1ベース201aの上方に配された第2ベース201bと、第2ベース201bの上方に配された第3ベース208aとを有する。第1ベース201aは、平面視で略矩形状を成し、第1ベース201aの上面の四隅にガイド部材207が立設される。第2ベース201bは、平面視で略矩形状を成した枠体である。第2ベース201bの上面には、平行に延びる複数のレール201dが配される。第3ベース208aは、略矩形状を成した板材であり、中央に穴を有する。第3ベース208aは、レール201dの上に載置され、図示しない固定手段により第2ベース201bに固定される。
【0018】
下型200aは、可動ベース208bと、下部成形型として機能するワーク受け部203とを備える。可動ベース208bは、第3ベース208aの中央に設けられた穴に配され、ベース201に対して昇降可能とされる。可動ベース208bが第3ベース208aの穴に嵌合することで、一枚のプレート208として一体化される。可動ベース208bは、後述する第2駆動手段により昇降駆動される。可動ベース208bの四隅にはガイド208aが設けられ、第3ベース208aにはガイド受け201eが設けられる。ガイド208aとガイド受け201eとが摺動することにより、可動ベース208bの第3ベース208aに対する昇降がガイドされる。
【0019】
下型200aは、レール201dに沿ってベース201に対してスライド可能とされる。成形型(本実施形態ではワーク受け部203)等を交換する際には、第2ベース201bと第3ベース208aとを固定する固定手段(図示省略)を解除し、下型200a及び第3ベース208aを、レール201d上を
図4の上下方向にスライドさせてベース201から取り外す。そして、可動ベース208b上のワーク受け部203等を交換した後、下型200aを、レール201d上を
図4の上下方向にスライドさせてベース201上の所定位置に配し、第2ベース201bと第3ベース208aとを図示しない固定手段で固定する。
【0020】
ワーク受け部203は、可動ベース208bの上面に固定される。ワーク受け部203は、ワークを下方から支持するものであり、図示例では、環状部203aと、環状部203aの内側に設けられた複数の補助部203bとからなる。環状部203aは、インナパネル1及びアウタパネル2の周縁部(フランジ部1a,2a)を下方から支持する位置に設けられる。環状部203aは、上型200bに設けられた本ヘム刃204と協働してワークにプレス加工を施す成形型として機能する。環状部203a及び補助部203bの上面は、アウタパネル2の形状に倣って形成される。尚、図示例では、簡略化のため、アウタパネル2やこれを押圧するワーク受け部203の上面及び本ヘム刃204の下面を平坦面で示しているが、実際にはこれらの面は曲面である。
【0021】
第2駆動手段206は、下型200aをベース201に対して昇降駆動するものである。第2駆動手段206は、第1駆動手段205よりも出力が大きいものが使用され、本実施形態では油圧シリンダ206a及びこれを駆動するサーボモータ206bで構成される(
図2参照)。第2駆動手段206は、第1ベース201aと可動ベース208bとの間の空間に収容される。油圧シリンダ206aの本体は第1ベース201aに固定される。油圧シリンダ206aのピン206a1の上端は、可動ベース208bの下方に隙間を介して配される。油圧シリンダ206aを駆動してピン206a1を上昇させることで、ピン206a1の上端で可動ベース208bが押し上げられる。第2駆動手段206は例えば複数箇所に設けられ、本実施形態では4箇所に設けられる(
図4参照)。
【0022】
ラム202は、ベース201に対して型締め型開き方向でスライド可能とされ、本実施形態では昇降可能とされる。ラム202は、
図5に示すように平面視で略矩形状をなし、四隅にガイド部材207が挿通されるガイド穴202aが設けられる。ガイド部材207は、鉛直方向に延びる棒状部材であり、ガイド穴202aと摺動することでラム202の昇降をガイドしている。各ガイド部材207の上端は水平方向に延びる連結部材207aで連結される(
図2参照)。尚、ガイド部材207は、必ずしも四隅に設ける必要はなく、例えば対角2箇所のみに設けてもよい。
【0023】
上型200bは、ラム202に固定されるプレート209と、上部成形型として機能する本ヘム刃204とを備える。プレート209は、ラム202の下面中央部に着脱可能に固定される。本ヘム刃204は、本ヘム加工を行うものであり、プレート209の下面に固定される。本ヘム刃204は、アウタパネル2の周縁に沿って環状に設けられ、ワーク受け部203の環状部203aと上下方向で対向している。
【0024】
第1駆動手段205は、ラム202及び上型200bを昇降するものであり、第2駆動手段206よりも駆動速度が速いものが使用される。本実施形態の第1駆動手段205は、チェーン及びこれを駆動するモータとで構成され、具体的には、
図3に示すように一対のチェーン205aと、一対のチェーン205aを駆動するモータ205bと、各チェーン205aを収容する一対の収容箱205cとからなる。各収容箱205cから供給された一対のチェーン205aが、各収容箱205cの間で互いに噛み合って一本の鉛直方向の棒状部分205dが形成され、この棒状部分205dの上端にラム202が取り付けられる。モータ205bを
図3の矢印方向に回転させることにより、各チェーン205aが収容箱205cから棒状部分205dに供給されて棒状部分205dが上方に延び、これにより上型200bが上昇する。一方、モータ205bを上記と反対方向に回転させることにより、各チェーン205aが棒状部分205dから収容箱205cに戻されて棒状部分が縮みながら降下し、これにより上型200bが降下する。
【0025】
ヘミング加工装置200には、プリヘム機構220が設けられる。本実施形態のプリヘム機構220は、
図6に示すように、下型200a側(プレート208上)に設けられたプリヘム刃221及びカム機構222と、上型200bに設けられたカムドライバ223とからなる。プリヘム刃221は、
図4に示すようにワーク受け部203の周囲に設けられ、水平方向でワークに接近離反する方向にスライド自在とされる。図示例では、略矩形のベース201(第3ベース208a)の各辺に沿ってプリヘム刃221が設けられ、各プリヘム刃221が、ベース201の各辺と直交する方向にスライド自在とされる。
【0026】
カム機構222は、上型200bの降下による押し下げ力を、プリヘム刃221をワーク側へスライドさせる力に変換するものである。本実施形態のカム機構222は、プレート208(図示例では第3ベース208a)に固定された下側カム224と、下側カム224に沿ってスライドする上側カム225とからなる。上側カム225の上面225aには、水平方向の平坦面が設けられる。上側カム225の下面及び下側カム224の上面には、下方に向けて内側(ワーク側)へ傾斜した平行且つ平坦な傾斜面225b,224aが設けられる。上側カム225は、下側カム224の傾斜面224aに沿ってスライド可能とされる。上側カム225のワーク側の側面に、プリヘム刃221が固定される。
【0027】
カム機構222には、プリヘム刃221のワークに近接する側の移動を所定位置で規制するストッパ226が設けられる。図示例では、下側カム224の傾斜面224aの下端に、上側カム225の斜め下方向へのスライドを規制するストッパ226が設けられる。カム機構222には、上側カム225及びプリヘム刃221をワークから離反する側(
図6の右側)に付勢する付勢手段227が設けられる。図示例では、付勢手段227がエアシリンダで構成され、上側カム225及びプリヘム刃221がワークから離反する側に常に付勢される。
【0028】
カムドライバ223は、上型200bのプレート209に固定された本体部223aと、本体部223aの下端に設けられた可動部223bとを有する。可動部223bは、カム機構222に当接する位置としない位置との間で移動可能とされる。図示例では、可動部223bが、図示しない駆動部によりピン223cを中心に回転可能とされる。本体部223a及び可動部223bの下面には、水平方向の平坦面が設けられる。
【0029】
互いに摺動するカムドライバ223の可動部223bの下面223dと上側カム225の上面225aの一方には、摺動方向(
図6の左右方向)に延びるガイド溝が設けられ、他方には摺動方向に延びる突起が設けられる。本実施形態では、
図10(a)に示すように、カムドライバ223の可動部223bの下面223dに、摺動方向に延びる突起223d1が設けられ、上側カム225の上面225aに、摺動方向に延びるガイド溝225a1が設けられる。また、互いに摺動する上側カム225の傾斜面225bと下側カム224の傾斜面224aの一方には、摺動方向(
図6の傾斜面225b,224aの延在方向)に延びるガイド溝が設けられ、他方には摺動方向に延びる突起が設けられる。本実施形態では、
図10(b)に示すように、上側カム225の傾斜面225bに、摺動方向に延びる突起225b1が設けられ、下側カム224の傾斜面224aに、摺動方向に延びるガイド溝224a1が設けられる。
【0030】
ヘミング加工装置200は、ベース201とラム202とを連結してラム202の上昇を規制するロック機構230を有する。ロック機構230は、矩形状のベース201及びラム202の各コーナー付近に設けられる。ロック機構230は、
図6及び
図7に示すように、ラム202に設けられた上側ロック部材231と、ベース201に設けられた下側ロック部材232と、両ロック部材231,232を上下方向でロックする係止手段233とを有する。本実施形態では、
図16に示すように、両ロック部材231,232に水平方向の貫通穴231a,232aが形成される。各貫通穴231a,232aは、それぞれ同径の円筒面状の内周面を有する。図示例では、各ロック機構230において、上側ロック部材231の両側に下側ロック部材232が設けられる。上側ロック部材231の上端には水平方向に突出した突出部231bが設けられ、この突出部231bをラム202に上方から当接させることにより、上側ロック部材231がラム202に吊り下げ状態で取り付けられる。下側ロック部材232は、第3ベース208aの上面に固定される。
【0031】
係止手段233は、ロック部材231,232の双方と上下方向で係合することで、これらの相対的な上下方向移動(特に型開き方向の移動)を規制するものである。本実施形態では、係止手段233が、係止ピン233aと、係止ピン233aを水平方向に進退させる駆動部233b(例えば電動シリンダやエアシリンダ)とで構成される。係止ピン233aは、円筒面状の外周面を有し、本実施形態では中実の円柱状を成している。係止ピン233aの外径は、第1及び第2ロック部材231,232の貫通穴231a,232aの内径よりも若干小さい。
図8及び
図9に示すように、各係止ピン233a及び貫通穴231a,232aの軸心方向Pは、当該係止ピン233aとラム202の中心O(ベース201の中心とほぼ一致)とを結ぶ直線L(本実施形態では、ベース201及びラム202の各コーナーにおける対角線)と略直交している。
【0032】
以下、本実施形態のヘミング加工方法の手順を説明する。
【0033】
まず、アウタパネル2のフランジ部2aの内側にシーラSを供給した後、そのシーラSの上にインナパネル1を重ねて配置する。このアウタパネル1及びインナパネル2をヘミング加工装置200に搬入して、ワーク受け部203の上にセットする。この状態で、第1駆動手段205を駆動して上型200bを上端位置から降下させることにより、ワークに対してプリヘム加工を施す。このとき、
図6に示すように、カムドライバ223は、その下面223dとカム機構222の上面(上側カム225の上面225a)との上下方向距離を小さくした状態となっている。具体的には、カムドライバ223の可動部223bを、カム機構222に当接可能な位置(本体部223aの下方)に配した状態となっている。この状態で上型200bを降下させることで、上型200bに設けたカムドライバ223がカム機構222の上側カム225の上方から当接する(
図6の点線参照)。このとき、カムドライバ223の下面223dと上側カム225の上面225aとを水平方向の平坦面同士で当接させることで、上型200bを高速で降下させても、確実に上側カム225を押し下げることができる。
【0034】
そのまま上型200bを降下させ続けることでカムドライバ223が上側カム225を下向きに押圧し、上側カム225及びプリヘム刃221が下側カム224の傾斜面224aに沿って内側(ワーク側)にスライドする(
図7参照)。このとき、下側カム224の傾斜面224aと上側カム225の傾斜面225bとを面接触させていることで、上型200bを高速で降下させてカムドライバ223との衝突により下側カム224に衝撃が加わった場合でも、傾斜面224aに沿って上側カム225を斜め下方向にスライドさせてプリヘム刃221を内側に確実にスライドさせることができる。また、カムドライバ223の下面223dの突起223d1と上側カム225の上面225aのガイド溝225a1、及び、上側カム225の傾斜面225bの突起225b1と下側カム224の傾斜面224aのガイド溝224a1がそれぞれ嵌合することにより(
図10参照)、上側カム225のスライド方向がガイドされる。以上により、プリヘム刃221でアウタパネル2のフランジ部2aが内側に折り曲げられ、プリヘム加工が施される。尚、プリヘム加工を施す間、本ヘム刃204はワーク(特にアウタパネル2のフランジ部2a)に当接しない。
【0035】
プリヘム加工が完了したら、上型200bを第1駆動手段205により一旦上昇させる(
図8参照)。このとき、プリヘム機構222の付勢手段227の付勢力で、上側カム225及びプリヘム刃221がワークから離反する側に移動し、初期位置に戻される。そして、上型200bを停止させた状態で、カムドライバ223の下面223dとカム機構222の上面(上側カム225の上面225a)との上下方向距離を大きくする。具体的には、カムドライバ223の可動部223bをピン223cを中心に回転させて、可動部223bをカム機構222と当接しない位置(本体部223aの側方)に退避させる。これにより、上下方向で対向するカムドライバ223の下面223d(本体部223aの下面)とカム機構222の上側カム225の上面225aとの上下方向距離H2が、可動部223bを回転させる前の上下方向距離H1よりも大きくなる(H2>H1)。尚、可動部223bの回転方向は、図示のようにワークから離反する方向に限らず、例えばプレート部208の辺に沿った方向(
図8の紙面と直交する方向)に退避させてもよい。この状態で再び上型200bを第1駆動手段205により降下させ、アウタパネル2のフランジ部2aの直上に本ヘム刃204が配されたら、上型200bを停止する(
図9参照)。このとき、カムドライバ223と上側カム225は当接せず、プリヘム刃221はワークから退避した位置(詳しくは、本ヘム刃204及びワーク受け部203の上下方向間から退避した位置)に保持される。
【0036】
このように、プリヘム加工を施した後、カムドライバ223とカム機構222との上下方向距離を広げることで、上型200bを、プリヘム加工完了位置(
図7参照)よりも下方まで降下させることができる(
図9参照)。これにより、後述する本ヘム加工におけるワーク受け部203及び可動ベース208の上昇ストロークを小さくすることができる。
【0037】
上記のように上型200bを停止させて本ヘム刃204をアウタパネル2のフランジ部2aの直上に配したとき、
図11に示すように、ロック機構230を構成する上側ロック部材231が下側ロック部材232の間に挿入され、上側ロック部材231の下端が下側ロック部材232に当接することで、両ロック部材231,232の貫通穴231a,232aが同心上に配された状態となる。この状態で、ベース201とラム202とをロック機構230で連結する。本実施形態では、係止手段233の駆動部233bを駆動して係止ピン233aを前進させ、係止ピン233aが両ロック部材231,232の貫通穴231a,232aに挿通される(
図11の点線参照)。こうして係止ピン233aが両ロック部材231,232と上下方向で係合することにより、ベース201とラム202との相対的な上下方向移動(本実施形態ではラム202の上昇)が規制される。
【0038】
こうしてベース201とラム202とがロック機構230で連結された状態で、アウタパネル2のフランジ部2aに本ヘム加工を施す。具体的には、
図12及び
図13に示すように、ロック機構230によりベース201とラム202とを連結した状態で、第2駆動手段206により下型200aを押し上げる。これにより、ベース201、ロック機構230、ラム202、及び本ヘム刃204を固定した状態で、可動ベース208b、ワーク受け部203、及びワーク(インナパネル1及びアウタパネル2)が上昇し、プリヘム加工が施されたアウタパネル2のフランジ部2aが本ヘム刃204に下方から押し付けられて、フランジ部2aがさらに折り曲げられる。このとき、複数(図示例では4個)の油圧シリンダ206aのピン206a1の突出量が等しくなるように、すなわち可動ベース208bが水平状態のまま上昇するように、各油圧シリンダ206aに接続されたサーボモータ206bが制御される。そして、第2駆動手段206の油圧シリンダ206a内の圧力が所定値となったら、サーボモータ206bを停止する。このとき、各油圧シリンダ206aを停止する圧力の所定値は、各部位に応じた値に設定される。以上により、アウタパネル2のフランジ部2aが完全に折り曲げられ、本ヘム加工が完了する。尚、
図12及び
図13では、便宜上、第2ベース201bやレール201dを省略している。
【0039】
本発明は、上記の実施形態に限られない。例えば、ワークは車体のドアのインナパネル1及びアウタパネル2に限られないことはもちろんであり、例えば車体のフードやバックドアのインナパネル及びアウタパネルであってもよい。
【0040】
また、
図14に示す実施形態では、カムドライバ223の可動部223bの上下方向寸法が、上記の実施形態よりも大きい。この可動部223bを本体部223aの側方に退避させることにより、上下方向で対向するカムドライバ223の下面とカム機構222の上側カム225の上面225aとの上下方向距離を大きく広げることができる。その後の本ヘム加工において上型200bを降下させることにより、カムドライバ223とカム機構222とを当接させない状態で、本ヘム刃204でアウタパネル2のフランジ部2aに本ヘム加工を施すことができる(
図14の点線参照)。この場合、ワーク受け部203を上昇させる必要がないため、可動ベース208bを省略し、プレート208を一体化することができる。
【0041】
また、
図15に示す実施形態では、カムドライバ223が可動部を有さない一体品である。この実施形態では、プリヘム加工完了後、プリヘム刃221が本ヘム刃204とワーク受け部203との間から退避するまで上型200bを上昇させる。この状態でベース201とラム202とをロックして、ワーク受け部203及び可動ベース208を上昇させることにより、本ヘム刃204とワーク受け部203とでアウタパネル2のフランジ部2aに本ヘム加工を施す(
図15の点線参照)。この場合、プリヘム加工完了後に上型200bを一旦上昇させた後、上型200bを再び降下させる工程を省略できる一方で、本ヘム加工時におけるワーク受け部203の上昇ストロークが上記の実施形態よりも長くなる。従って、ワーク受け部203の上昇ストロークを短くしたい場合は、上記の実施形態(
図6〜13参照)を採用すればよい。
【0042】
また、上記の実施形態では、カムドライバ223に可動部223bを設けることで、上下方向で対向するカムドライバ223の下面223dとカム機構222の上面225aとの上下方向距離を変更可能としたが、これに限らず、この上下方向距離をカム機構222側で変更可能としてもよい(図示省略)。例えば、カム機構222の上側カム225に、上面の高さを変更するような可動部を設けることで、カムドライバ223の下面との上下方向距離を変更可能としてもよい。
【0043】
また、上記の実施形態では、下側カム224をプレート208に固定し、上側カム225をスライドさせてプリヘム刃221をワーク側へ移動させる場合を示したが、これに限られない。例えば、図示は省略するが、下側カム224及び上側カム225の傾斜面224a,225bを上記の実施形態とは反対向きに傾斜した傾斜面とし(すなわち、ワーク側へ向けて上昇させた傾斜面とし)、上側カム225を鉛直下方に降下させることで、下側カム224をワーク側へスライドさせて、この下側カム224でプリヘム刃221をワーク側へ押し込む構成としてもよい(図示省略)。