(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記左右の苗のせ台部分における前記苗のせ面の裏面側に設けられている前記各クラッチモータは、前記折り畳み姿勢で互いに前後に位置ずれするように構成されている請求項1記載の田植機。
前記苗のせ台は、前記折り畳み姿勢で左右が非対称であるように左右方向長さを異ならせて設定した複数の前記苗のせ台部分を備えて、左右方向で折り畳み可能に構成され、
短い方の苗のせ台部分に設けたクラッチモータが長い方の苗のせ台部分に設けたクラッチモータよりも、前記苗のせ台の伸展姿勢で外側に、かつ折り畳み姿勢で前側に位置するように構成されている請求項1又は2記載の田植機。
前記左右の苗のせ台部分のそれぞれに対応して設けられる前記クラッチモータと前記少数条クラッチとは、それぞれの苗のせ台部分に設けられた前記クラッチモータによって回転駆動される回転カムと、その回転カムの回転に伴うカムフォロワの動きによって各少数条クラッチを入り切り操作する連係機構とを介して連係作動するように構成されている請求項1〜3のいずれか一項記載の田植機。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明における田植機の一例である10条植え用の乗用型田植機の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔田植機の全体構成〕
図1に示すように、前輪11及び後輪12で支持された自走車体1(走行機体に相当する)の前部に、エンジンEを内装した原動部13を備え、原動部13の左右両外側、及び後方側にわたって運転部ステップ14が車体フレーム10上に設けてあり、運転部ステップ14上に運転座席15が設置されている。自走車体1の後部に四連リンク式のリンク機構16(昇降機構に相当する)を介して苗植付装置2が昇降作動可能に支持されて、乗用型田植機が構成されている。
【0020】
自走車体1の前部には、前記運転部ステップ14の両外側に張り出す状態で予備苗のせ台17を立設してある。その予備苗のせ台17の下側に大部分が隠れる状態で、液体肥料を収容する施肥装置7の肥料タンク70が設けられている。この肥料タンク70は、前記予備苗のせ台17を車体フレーム10に固定する支持部材10aによって固定支持されている。
【0021】
〔施肥装置〕
施肥装置7は、自走車体1の前部に搭載された前記肥料タンク70と、多数の液肥供給用のポンプ71aの集合体で構成される液肥供給用ポンプ装置71とを備えるとともに、この液肥供給用ポンプ装置71の各ポンプ71aの吐出口に可撓性を有した供給用ホース72が接続されている。供給用ホース72の末端側が苗植付装置2側に備えた側条施肥用の液肥供給ノズル73に接続されて、苗植付装置2で植え付けられた苗列に沿って、その苗列の横側部箇所の土中に液肥を供給するところの側条施肥を行うように構成されている。
【0022】
前記液肥供給用ポンプ装置71は、肥料供給タンク70の下面側で車体フレーム10の横外側に配設してあり、自走車体1の左右方向での片側に5個づつ設けられたポンプ71aが、左右両側で合計10個備えられ、その10個のポンプ71aに、それぞれ供給用ホース72が接続されている。苗植付装置2側に備えられる液肥供給ノズル73も、苗植付箇所の横側方位置に合計10個が設けられていて、この液肥供給ノズル73のぞれぞれが、各ポンプ71aに対して供給用ホース72を介して個別に接続されている。
各供給用ホース72は、リンク機構16の上部を通って苗植付装置2側へ延長され、苗植付装置2の苗のせ台20の裏面側(車体前方側)に支持されているが、この支持構造については後述する。
【0023】
〔苗植付装置〕
図2及び
図3に示すように、苗植付装置2は、5個の接地フロート2Fを備えて10条植型式に構成されており、左右往復移動自在な苗のせ台20が、苗のせ面21側に6条分の苗を載置可能な苗載置部21aを備える右苗のせ台部分20Rと、4条分の苗を載置可能な苗載置部21aを備える左苗のせ台部分20Lとを備えている。
各苗載置部21aに載置された苗は、各苗載置部21a毎に供えたベルト式の縦送り機構21cを介して、苗のせ台20が往復横送り駆動の右及び左端部に達すると、下方の苗取り出し口20aに向けて縦送りされる。
【0024】
苗のせ面21上の苗は、苗取り出し口20aを通過する植付爪22aで分割され、植付爪22aを駆動する回転ケース22bを備えた植付機構22により、圃場の泥面に植え付けられる。
植付機構22には、
図3,5、及び
図10に示すように、自走車体1側のエンジン動力が伝動軸18を介して伝動されるように構成されている。伝動軸18の後端部は、右側のフィードケース23の入力軸23aに対して係脱可能に構成され、係合状態で駆動力が伝達されるように構成されている。
【0025】
右側のフィードケース23に導入された動力は、後述する縦送りカム軸93を介して左側のフィードケース24に分岐伝動され、左右の各フィードケース23,24から植付駆動軸95,95を介して右側の3つの伝動ケース25、及び左側の2つの伝動ケース25に駆動力が伝達され、各伝動ケース25の後端部に備えた少数条クラッチ25aを介して、左右一対の各回転ケース22bに駆動力が伝達される。
右側のフィードケース23と左側のフィードケース24とは、縦送りカム軸93を介して連動連結されているが、その縦送りカム軸93の途中に介装した継ぎ手部材23cを介して、係脱可能に構成されている。
この継ぎ手部材23cの係脱は、後述する右苗のせ台部分20Rと左苗のせ台部分20Lとの姿勢変更にともなって行われるように構成されている。つまり、右苗のせ台部分20Rと左苗のせ台部分20Lとの伸展姿勢では接続状態に係合され、折り畳み姿勢では分離するように設けられている。
【0026】
苗植付装置2は、右の植付機枠部分2Rと左の植付機枠部分2Lとの左右2分割可能な構造に構成されている。この右及び左の植付機枠部分2R,2Lの構造について説明する。
図3,5、及び
図14に示すように、リンク機構16の後端の縦リンク部材16aの下部にボス部16bが固定され、ボス部16bの前後軸芯P1周りでローリング自在に基部支持ケース26が連結されている。基部支持ケース26の上部及び下部に中央側の固定支持フレーム27,27が横向きに固定支持されている。この中央側の固定支持フレーム27,27の左右方向での両端側に設けた縦軸芯P2周りで揺動自在に、右及び左の中継支持フレーム28,28が連結されている。
そして、右及び左の中継支持フレーム28の、前記縦軸芯P2周りで固定支持フレーム27に連結された側とは反対側の端部に、角パイプ状の右及び左の可動支持フレーム29が、中継支持フレーム28の前記反対側の端部の縦軸芯P3周りにブラケット29aを介して揺動自在に連結されている。
【0027】
図3及び
図5に示すように、右の可動支持フレーム29に右の3個の伝動ケース25が後向きに片持ち状に連結されて、左の可動支持フレーム29に左の2個の伝動ケース25が後向きに片持ち状に連結されている。
上記のように構成されていることにより、右の植付機枠部分2Rと左の植付機枠部分2Lとは、
図5に示すように左右方向に並ぶ伸展姿勢と、
図6に示す折り畳み姿勢との二状態に姿勢変更自在に構成されている。
【0028】
苗のせ台20を構成する右苗のせ台部分20Rと左苗のせ台部分20Lとのうち、右苗のせ台部分20Rが右の植付機枠部分2Rで支持され、左苗のせ台部分20Lが左の植付機枠部分2Lで支持されている。
図2に示すように、右苗のせ台部分20Rは、苗のせ面21に形成された7個の仕切部21bによって仕切られた6条分の苗載置部21aを備え、左苗のせ台部分20Lは、苗のせ面21に形成された5個の仕切部21bによって仕切られた4条分の苗載置部21aを備えており、各苗載置部21aのそれぞれに縦送り機構21cが備えられている。
また、
図2及び
図5に示すように、右の3個の植付伝動ケース25に亘って右の摺動レール20bが支持されて、左の2個の植付伝動ケース25に亘って左の摺動レール20bが支持されており、苗のせ台20の下部が右及び左の摺動レール20bに沿ってスライド自在に支持されている。
【0029】
苗のせ台20は、
図12に示すように、苗のせ面21の裏面側(車体前方側)で苗のせ台支持機構5によって支持され、左右方向で往復横移動自在に設けられている。
苗のせ台支持機構5は、右及び左の可動支持フレーム29のそれぞれに装備された門形支持枠50と、苗のせ台20の裏面側に対して左右方向に沿って配設されたスライドガイド53とを備えて構成されている。
門形支持枠50は、各可動支持フレーム29の左右両端側に立設された一対の縦支柱51,51と、その一対の縦支柱51,51の上端部同士を連結する横架部材52とを備えて、正面視で門形に形成されている。
スライドガイド53は、右苗のせ台部分20Rと左苗のせ台部分20Lとのそれぞれの裏面側で左右方向に沿って配設された一対のスライドガイド部材53R,53Lが、苗のせ台20の伸展姿勢で直線状に連なるように配設されている。
スライドガイド53はチャンネル状に形成されたガイドレール部分を備えていて、そのガイドレール部分に門形支持枠50の上部に設けたガイドローラ50aが入り込んで支持し、スライドガイド53の横移動を案内するように構成されている。
【0030】
以上の構造により、
図2,5,6、及び
図12に示すように、右の3個の伝動ケース25、右の可動支持フレーム29、右の門形支持枠50、右のスライドガイド部材53R、右の摺動レール20b、右の苗のせ台部分20R等により、右の植付機枠部分2Rが構成されている。
また、左の2個の伝動ケース25、左の可動支持フレーム29、左の門形支持枠50、左のスライドガイド部材53L、左の摺動レール20b、左の苗のせ台部分20L等により、左の植付機枠部分2Lが構成されている。
【0031】
〔伸展・折り畳み姿勢変更〕
次に苗植付装置2を伸展姿勢にした作業状態から折り畳み姿勢にした非作業状態に設定する場合について説明する。
図2及び
図5に示す状態は、右及び左の植付機枠部分2R,2L、右及び左の苗のせ台部分20R,20Lが、車体左右方向に横並びで伸展姿勢に連結された作業状態である。苗植付装置2を作業状態から折り畳み状態に設定する場合、苗のせ台20を右及び左の苗のせ台部分20R,20Lに分離し、右の苗のせ台部分20Rを往復横送り駆動の右端部に移動させ、左の苗のせ台部分20Lを往復横送り駆動の左端部に移動させる。
【0032】
図5から
図6に示すように、右の中継支持フレーム28を縦軸芯P2周りに後方に(
図5中で右回り)揺動させながら、右の可動支持フレーム29を縦軸芯P3周りに横外向き(
図5中で左回り)に揺動させる。これによって、苗植付装置2が右及び左の植付機枠部分2R,2Lに分離する。
図5から
図6に示すように、右の中継支持フレーム28を縦軸芯P2周りにさらに後方に揺動させ、右の可動支持フレーム29を縦軸芯P3周りにさらに横外向きに揺動させて、右の植付機枠部分2R及び右の苗のせ台部分20Rが車両右方に向くように設定する。
【0033】
次に
図5から
図6に示すように、左の中継支持フレーム28を縦軸芯P2周りに後方に(
図5中で左回り)揺動させながら、左の可動支持フレーム29を縦軸芯P3周りに横外向き(
図5中で右回り)に揺動させて、左の植付機枠部分2L及び左の苗のせ台部分20Lが車両左方に向くように設定する。
【0034】
このように、右の植付機枠部分2R及び右の苗のせ台部分20Rを車両右方に向くように設定し、左の植付機枠部分2L及び左の苗のせ台部分20Lを車両左方に向くように設定することにより、
図6及び
図8に示すような車体左右方向に右及び左の苗のせ台部分20R,20Lの裏面が互いに向かい合って並ぶ折り畳み状態に切り換えられる。これによって、
図2及び
図5に示す作業状態で伸展姿勢の苗植付装置2の横幅よりも、折り畳み状態の苗植付装置2の横幅が狭くなる。
【0035】
上記のように構成された苗植付装置2の苗のせ台20の苗のせ面21側には、苗のせ面21上のマット状苗に対して薬剤(殺虫剤や殺菌剤等)を散布する薬剤散布装置3が装備されて、苗のせ台20上の苗に対して薬剤散布可能に構成されている。
【0036】
〔薬剤散布装置〕
苗のせ面21上のマット状苗に対して殺虫剤や殺菌剤等の防除用の薬剤を散布する薬剤散布装置3について説明する。
この薬剤散布装置3は、苗のせ台20の苗のせ面21側で、苗のせ面21の左右方向に沿って設けられた長尺のガイドレール31と、そのガイドレール31に案内されて苗のせ面21に沿って左右往復横移動する移動散布器30とを備えて構成されている。これらのガイドレール31及び移動散布器30は、右及び左の苗のせ台部分20R,20Lに対応して、左右各別に設けられている。
【0037】
移動散布器30は、右の苗のせ台部分20Rの苗のせ面21に対して散布するための右用移動散布器30Rと、左の苗のせ台部分20Lの苗のせ面21に対して散布するための左用移動散布器30Lとを備えて構成されたものである。
右用及び左用の移動散布器30R,30Lは、それぞれがガイドレール31に案内されながら横移動するように、ガイドレール31に対して搭載された状態で相対移動する移動台枠35を備えている。この移動台枠35に対して繰り出し装置36が取り付けられている。繰り出し装置36には、その上方に薬剤貯留用のホッパー37が装備され、繰り出し装置36の下部に、薬剤を流下させるための供給ホース38が接続されている。
【0038】
前記ガイドレール31は、右の苗のせ台部分20Rの苗のせ面21に対向して設けられる長い分割ガイドレール31Rと、左の苗のせ台部分20Lの苗のせ面21に対向して設けられる短い分割ガイドレール31Lとの組み合わせで構成されている。
右側の長い分割ガイドレール31Rは、右の苗のせ台部分20Rの苗のせ面21の左右方向長さよりも少し長く形成されていて、右用移動散布器30Rの左右往復移動領域が、右の苗のせ台部分20Rの苗のせ面21の左右方向長さの全体を移動して薬剤を散布可能な領域であるように長さ設定されている。同様に、左側の短い分割ガイドレール31Lは、左の苗のせ台部分20Lの苗のせ面21の左右方向長さよりも少し長く形成されていて、左用移動散布器30Lの左右往復移動領域が、左の苗のせ台部分20Lの苗のせ面21の左右方向長さの全体を移動して薬剤を散布可能な領域であるように長さ設定されている。
このように左側の分割ガイドレール31Lよりも長く形成された右側の分割ガイドレール31Rは、左側の短い分割ガイドレール31Lよりも重い重量を有している。
【0039】
右側の長い分割ガイドレール31Rと左側の短い分割ガイドレール31Lとは、
図2に示すように、苗のせ台20の後面視で、右側の長い分割ガイドレール31Rが左側の短い分割ガイドレール31Lよりも下方に位置するように配設されている。また、前後方向では、右側の長い分割ガイドレール31Rが左側の短い分割ガイドレール31Lよりも前方側に位置するように、前後方向位置を異ならせて配設されている。
このため、右側の長い分割ガイドレール31Rの重心位置は、左側の短い分割ガイドレール31Lよりも前方側で下方に位置するように配設されている。
そして、この右側の長い分割ガイドレール31Rに搭載されて左右往復移動を案内される右用移動散布器30Rの重心位置も、左側の短い分割ガイドレール31Lに搭載されて左右往復移動を案内される左用移動散布器30Lの重心位置よりも、当然のことながら前方側に位置することになる。
【0040】
右用移動散布器30Rは、右の苗のせ台部分20Rの6条分のマット状苗に対する薬剤の散布の供給を支障なく行えるように、左用移動散布器30Lよりも少し大きく構成されている。つまり、左用移動散布器30Lは、左の苗のせ台部分20Lの4条分のマット状苗に対する薬剤の供給量として適切な量を収容するように容量を設定されているのに対し、右用移動散布器30Rは、右の苗のせ台部分20Rの6条分のマット状苗に対する薬剤の供給量として適切な量を収容するように構成されているので、左用移動散布器30Lよりも少し容量を大きく構成され、その重量も少し大きくなっている。
【0041】
〔薬剤散布装置の支持〕
上記の右側の長い分割ガイドレール31R及び左側の短い分割ガイドレール31Lを、苗のせ台20の苗のせ面21側に連結支持する構造について説明する。
図3,4,5,6に示すように、側面視でベルクランク状に屈曲形成された金属製板状体によって構成される支持ブラケット32を備えている。
この支持ブラケット32は、屈曲箇所よりも上方側で苗のせ台20の苗のせ面21から離れるように立ち上がる上部に、案内ロッド34の取付位置を変更可能な多数の取付孔32aが穿設されている。
【0042】
支持ブラケット32は7個用意されており、
図2に示すように、右の苗のせ台部分20Rにおいて右端部、右端部から2つ目、3つ目及び5つ目の仕切部21bの下部に、支持ブラケット32が固定されている。
図2に示すように、左の苗のせ台部分20Lにおいて左端部、左端部から2つ目及び3つ目の仕切部21bの下部に、支持ブラケット32が固定されている。
【0043】
図2,3に示すように、右の苗のせ台部分20Rにおいて、右の苗のせ台部分20Rの右端部、右端部から3つ目、及び右端部から4つ目の支持ブラケット32に、パイプ状の支持ステー33が固定され、このパイプ状の支持ステー33の上端部が右側の長い分割ガイドレール31Rに連結されている。
図2,3に示すように、左の苗のせ台部分20Lにおいて、左の苗のせ台部分20Lの左端部の支持ブラケット32、及び左の苗のせ台部分20Lの左端部から2つ目及び3つ目の支持ブラケット32にパイプ状の支持ステー33が固定され、その支持ステー33の上部が左側の短い分割ガイドレール31Lに連結されている。
【0044】
図2,3に示すように、右の苗のせ台部分20Rにおいて、4個の支持ブラケット32の取付孔32aに亘り、右の案内ロッド34が取り付けられており、
図2,3に示すように、左の苗のせ台部分20Lにおいて、3個の支持ブラケット32の取付孔32aに亘り、左の案内ロッド34が取り付けられている。この場合、支持ブラケット32の取付孔32aに対する案内ロッド34の取付位置を変更することにより、右及び左の案内ロッド34の位置を上下に変更することができる。
【0045】
〔薬剤散布装置の駆動〕
薬剤散布装置3における移動散布器30の駆動機構6について説明する。
左右の移動散布器30は、それぞれが右及び左の分割ガイドレール31R,31L毎に、左右各別に設けた駆動機構6,6によって駆動されるように構成してある。
各駆動機構6は、
図4に示すように、右及び左の分割ガイドレール31R,31Lの端部に、右及び左の電動モータ60R,60L(駆動用モータに相当する)、及びこの電動モータ60R,60Lの駆動力を右及び左の移動散布器30R,30Lに伝達するチェーン伝動機構61とを備えて構成されている。チェーン伝動機構61は、右及び左の分割ガイドレール31R,31Lの左右方向での外側端部に設けられた駆動スプロケット61a,61aと、右及び左の分割ガイドレール31R,31Lの左右方向での内側端部に設けられた従動スプロケット61bと、これらの駆動スプロケット61aと従動スプロケット61bとにわたって卷回された伝動チェーン62とを備えて構成される。
図4は右側の分割ガイドレール31Rに設けた駆動機構6を示しているが、左の分割ガイドレール31Lに設けられる駆動機構6も、長さは異なるが構造的には左右対称で同じ構造のものであるので、左側の駆動機構6については詳細な説明及び図示を省略する。
【0046】
伝動チェーン62の各端部は、右及び左の分割ガイドレール31R,31Lの内部で、左右の移動散布器30の移動台枠35に連結されている。この移動台枠35には、前記伝動チェーン62に噛合する入力用スプロケット63が軸支されている。入力用スプロケット63は、右及び左の分割ガイドレール31R,31Lの内部に配置された伝動チェーン62に噛合し、右及び左の電動モータ60R,60Lによって正逆に回転駆動される駆動スプロケット61aの回転に連動して回転駆動される。
したがって、右及び左の電動モータ60R,60Lの駆動力で前記伝動チェーン62が正逆に回転駆動されるに伴って、移動台枠35が左右方向に横移動するとともに、入力用スプロケット63が回転駆動され、この入力用スプロケット63の回転が右及び左の移動散布器30R,30Lに備えた繰り出し部36における繰り出しロール(図外)を回転操作して、ホッパー37内の薬剤を繰り出しながら左右方向に移動するように構成されている。
【0047】
図2乃至
図4に示すように、右及び左の移動散布器30において、金属製で細長い平板状の芯金部材(図示せず)が供給ホース38の内部に備えられて、芯金部材により供給ホース38の姿勢が設定されている。
図2乃至
図4に示すように、右用移動散布器30Rにおいて、供給ホース38の下部側が正面視で右側に少し折り曲げられており、側面視で後側に折り曲げられている。同様に左用移動散布器30Lにおいても、供給ホース38の下部側が正面視で左側に少し折り曲げられており、側面視で少し前側に折り曲げられている。これにより、
図3に示すように、右及び左用移動散布器30R,30Lにおいて、供給ホース38の下端部が側面視で同じ位置となっており、供給ホース38の下端の供給口が右及び左の案内ロッド34の後側に位置している。
供給ホース38の上端部は、繰り出し部36の下部に挿入して嵌合させてあり、繰り出し部36に対して着脱可能に固定してある。
【0048】
以上の構造により、
図2及び
図4に示すように、電動モータ60R,60Lにより駆動スプロケット61a及び伝動チェーン62が正逆に回転駆動されて、右用移動散布器30Rが右側の分割ガイドレール31Rの右及び左端部に亘って往復駆動されるのであり、左用移動散布器30Lが左側の分割ガイドレール31Lの右及び左端部に亘って往復駆動される。この場合、右用移動散布器30Rが右側の分割ガイドレール31Rの右端部に位置していると、左用移動散布器30Lが左側の分割ガイドレール31Lの右端部に位置し、右用移動散布器30Rが右側の分割ガイドレール31Rの左端部に位置していると、左用移動散布器30Lが左側の分割ガイドレール31Lの左端部に位置するように、右及び左用移動散布器30R,30Lが同時的に同じ方向に往復駆動される。
【0049】
前記右用移動散布器30R及び左用移動散布器30Lのそれぞれは、
図2に示すように、右側の分割ガイドレール31Rの右端部で、右駆動ケース60Rの右側面に制御用のコントローラ65を設けてあり、このコントローラ65を操作することにより、左右の電動モータ60R,60Lの駆動速度を適宜に変更して、右用移動散布器30R及び左用移動散布器30Lの散布速度の変更を左右同時的に行うことができる。
また、左右の電動モータ60R,60Lに対する給電用ケーブルやコントローラ65に対する配線等をまとめた導電用ハーネス66は、左右の苗のせ台部分20R,20Lのそれぞれに設けてある。
つまり、苗のせ台20の苗のせ面21とは反対側の面に沿わせて配設される導電用ハーネス66は、苗のせ台20の一端部から他端部への全長にわたって長く配設されているのではなく、一端側が右駆動ケース60Rと左駆動ケース60Lとのそれぞれに対して連結され、他端側が苗のせ台20の左右方向での中央部側に向けて配設されている。これによって、苗のせ台20を使用状態の伸展姿勢から非使用状態の折り畳み姿勢に姿勢変更したときにおける、各導電用ハーネス66の伸縮変化をできるだけ少なく維持できるようにして、姿勢変更に伴って各導電用ハーネス66が、極端に引き延ばされたり、大きく折り曲げられたりする可能性を少なくし得るように構成してある。
【0050】
前述のように右及び左用移動散布器30R,30Lが往復駆動されると、
図4に示すように伝動チェーン62によりスプロケット60が回転駆動され、繰り出しロール36aが回転駆動される。これに伴って、ホッパー37に貯留されている薬剤(殺虫剤や殺菌剤等)が、繰り出しロール36aにより所定量ずつ繰り出されて供給ホース38の供給口38bから下方に落下する。これにより、
図2に示すように、右の苗のせ台部分20Rの苗のせ面21に載置された6条分の苗に、右用移動散布器30Rから薬剤(殺虫剤や殺菌剤等)が供給される。同様に、左の苗のせ台部分20Lの苗のせ面21に載置された4条分の苗に、左用移動散布器30Lから薬剤(殺虫剤や殺菌剤等)が供給される。
【0051】
〔田植機の伝動構造〕
上記のように構成されている乗用型田植機の伝動構造について説明する。
図1及び
図9に示すように、自走車体1の前部にミッションケースMが備えられ、ミッションケースMの前部に連結された前部フレーム10FにエンジンEが支持されている。ミッションケースMの右及び左の横側部に右及び左の前車軸ケース19Fが連結されており、右及び左の前輪11が右及び左の前車軸ケース19Fの上下方向に沿う軸芯周りに操向自在に支持されている。
【0052】
図9に示すように、ミッションケースMには、前方側の上部における横側方箇所に位置する状態で静油圧式無段変速装置40が連結されている。この静油圧式無段変速装置40には、エンジンEの動力が静油圧式無段変速装置40の入力軸40aにベルト伝動されている。静油圧式無段変速装置40は中立停止位置を備え、前進側及び後進側に無段階に変速自在に構成されている。
図9に示すように、静油圧式無段変速装置40の出力軸40b、ならびに入力軸40aのうちの前記ベルト伝動される側とは反対側から突出する部分がミッションケースMの内部に入り込んでいる。前記出力軸40bは、ミッションケース17に回転自在に支持されている伝動軸41に動力伝達するように、スプライン構造により連結されている。
【0053】
また、ミッションケースMの右横側部に油圧ポンプ42が連結されており、油圧ポンプ42の入力軸42aがミッションケースMの内部に入り込んでいる。この入力軸42aは、静油圧式無段変速装置40の入力軸40aと同芯状に配置されており、静油圧式無段変速装置40の入力軸40aと油圧ポンプ42の入力軸42aとが、入力軸40aと一体回動する延長入力軸40cによって連結されている。これにより、エンジンEの動力が静油圧式無段変速装置40の入力軸40aから油圧ポンプ42に伝達されて、油圧ポンプ42が駆動される。
【0054】
伝動軸41には低速ギヤ41a及び高速ギヤ41bが固定されており、伝動軸41と平行に配置された伝動軸43に、シフトギヤ43aがスプライン構造にて伝動軸43と一体回転及びスライド自在に外嵌されている。これにより、シフトギヤ43aをスライド操作して低速ギヤ41a及び高速ギヤ41bに咬合させることによって、静油圧式無段変速装置40の出力軸40b及び伝動軸41の動力が、高低2段に変速されて伝動軸43に伝達される。
【0055】
図9に示すように、ミッションケースM、右及び左の前車軸ケース19Fに亘って一対の伝動軸44が突き合わせて配置され、一対の伝動軸44の間にデフ機構45が備えられており、デフ機構45のデフケース45aが回転自在にミッションケースMに支持されている。伝動軸43に伝動ギヤ43bが固定されており、デフ機構45のデフケース45aに固定された伝動ギヤ45bが伝動ギヤ43bに咬合している。
一方の伝動軸44にロック用円筒部材45cがキー構造により一体回転及びスライド自在に外嵌されている。このロック用円筒部材45cがデフロックペダル(図示せず)に連係されていて、デフケース45aの端部に係脱することにより、デフ機構45をデフロック状態とデフロック解除状態とに切り換え可能に構成されている。
【0056】
図9に示すように、ミッションケースMの後部に走行出力軸46が備えられて後向きに突出しており、デフ機構45のデフケース45aに固定されたベベルギヤ45dが、走行出力軸46に備えられたベベルギヤ46aに咬合している。
図1及び
図9に示すように、右及び左の後輪12を支持する後車軸ケース19Rが備えられて、走行出力軸46と後車軸ケース19Rの入力軸(図示せず)とに亘って伝動軸47が接続されている。
これにより、
図1及び
図9に示すように、静油圧式無段変速装置40の出力軸40bの動力が、伝動軸41,43、デフ機構45、伝動軸44を介して右及び左の前輪11に伝達され、デフ機構45のデフケース45a、走行出力軸46及び伝動軸47を介して右及び左の後輪12に伝達される。
【0057】
ミッションケースMの外面に対して支持ケース48を固定してあり、この支持ケース48貫通する状態で前記走行出力軸46が設けられている。また支持ケース48には、施肥装置7に対する伝動軸74へ動力を分岐させるための分岐用中継軸49も支持されている。支持ケース48内では、走行出力軸46の途中位置に分岐ギヤ46bと、分岐用中継軸49に備えた伝動ギヤ49aとが備えられ、さらに、施肥用クラッチ49bも内装されている。
これによって、走行出力軸46の分岐ギヤ46bから、これに噛合する分岐用中継軸49の伝動ギヤ49aを介して、施肥装置7の液肥供給用ポンプ装置71に対する駆動力が分岐伝達され、かつその駆動力を施肥用クラッチ49bで断続可能であるように構成してある。
【0058】
〔植付駆動系への分岐伝動〕
前記ミッションケースM内の動力は、苗植付装置2に駆動力を伝える植付駆動系にも分岐伝動される。
図9、及び
図10は、ミッションケース40内に配設されている植付用変速機構75と、その植付用変速機構75から苗植付装置2への動力伝達系統を示している。
【0059】
植付用変速機構75は、
図9にも示されている伝動軸43に外嵌させた6枚の伝動ギヤ43dと、
図9には図示されていない伝動軸76上で、前記6枚の伝動ギヤ43dと噛合するように設けられた6枚の変速ギヤ76aとを備えている。伝動軸76上の6枚の変速ギヤ76aの内の何れかを、伝動軸76と一体回動させるように選択可能なシフト部材76bを備え、シフト部材76bで択一選択された変速ギヤ76aと、これに噛合する6枚の伝動ギヤ43dのうちの何れかの伝動ギヤ43dとのギヤ比で、伝動軸43側の回転動力が伝動軸76に変速されて伝達される。
【0060】
伝動軸43に外嵌させた6枚の伝動ギヤ43dには、伝動軸41の一方向の回転動力が伝達されるように構成されている。つまり、
図9に示すように、筒状部材41cがワンウェイクラッチ41dを介して伝動軸41に外嵌されており、この筒状部材41cに設けてある伝動ギヤ41eが前記6枚の伝動ギヤ43dと一体回動する伝動ギヤ43cに咬合して連結されている。
したがって、ワンウェイクラッチ41dにより静油圧式無段変速装置40の出力軸40bの前進の動力が、筒状部材41cと伝動ギヤ41e及び伝動ギヤ43cに伝達され、ワンウェイクラッチ41dにより静油圧式無段変速装置40の出力軸40bの後進の動力が、筒状部材41cと伝動ギヤ41e及び伝動ギヤ43cには伝達されないように構成してある。
【0061】
伝動軸76に伝達された動力は、伝動軸76の端部に設けたベベルギヤ76c、植付出力軸77の端部に相対回転自在に設けたベベルギヤ77a、及び植付クラッチ78を介して植付出力軸77に伝えられ、この駆動力が伝動軸18を介して苗植付装置2側に伝達される。
植付クラッチ78は、植付出力軸77の端部に相対回転自在に設けたベベルギヤ77aと、植付出力軸77に一体回動するように装着された回転部材78aとの各対向面に噛み合い歯77b,78bを備えて構成されている。
植付出力軸77に一体回動するように装着された回転部材78aは、ベベルギヤ77aに対して遠近移動可能に構成され、前記ベベルギヤ77aの噛み合い面77bに対して、噛み合い面78bを押しつけて噛合させたクラッチ入り状態と、ベベルギヤ77aから離れる側へ移行したクラッチ切り状態とに切り換え可能に構成されている。回転部材78aは、付勢スプリング78cでベベルギヤ77a側へ押しつけ付勢されており、図示しないが操作具によって切り側に操作可能に構成されている。
【0062】
これにより、
図9,10に示すように、伝動軸43の動力が植付用変速機構75、ベベルギヤ76c,77a、植付クラッチ78、出力軸77、粗密植え切換装置8、及び伝動軸18を介して苗植付装置2に伝達される。
植付用変速機構75では、苗植付装置2に伝達される動力を変速することにより、苗植付装置2による苗の植付間隔(自走車体1の作業走行速度に対する植付機構22の植付速度の比)を変更することができる。
粗密植え切換装置8では、植付機構22の植付回転軌跡中における角速度を、標準の植付状態に適した等速運動と、密植に適した不等速運動と、粗植に適した不等速運動とに切り換え可能に構成してある。この粗密植え切換装置8の具体構成については後述する。
【0063】
伝動軸18から苗植付装置2への駆動力は、右側のフィードケース23の入力軸23aに対して伝達され、入力軸23aは伝動軸18の後端部に対して係脱可能に構成してある。
この入力軸23aから入力された動力は、右側のフィードケース23に内蔵されている分配軸23bに伝えられ、分配軸23bから横送り変速機構90を介して、苗のせ台20を往復横移動させる横送り軸91に伝えられる。
また、分配軸23bからの動力は、縦送りチェーン伝動機構92を介して、縦送りカム軸93に伝えられる。
【0064】
この縦送りカム軸93は、右側のフィードケース23の左右両側に突出し、右方向に突出した軸部分が右苗のせ台部分20Rに備えた縦送り機構21cの縦送りカム軸93を構成している。
縦送りカム軸93の左方向に突出した軸部分は、左側のフィードケース24内に挿入され、左側のフィードケース24内に駆動力を伝達するものであるが、左右のフィードケース23,24同士の間に位置する軸部分に継ぎ手部材23cを有して分離可能に構成されている。つまり継ぎ手部材23cは、右苗のせ台部分20Rと左苗のせ台部分20Lとの伸展姿勢から折り畳み姿勢への姿勢変更に伴って縦送りカム軸93を左右に分離し、伸展姿勢への復元に伴って接続するように構成されている。
縦送りカム軸93は、左側のフィードケース24の左方向にも突出して、左苗のせ台部分20Lに備えた縦送り機構21cの縦送りカム軸93を構成している。
【0065】
分配軸23bからの動力は、右側植付伝動チェーン94R、及び前記縦送りチェーン伝動機構92と左側植付伝動チェーン94Lとを介して左右の植付駆動軸95,95にも伝達されている。
このとき、右側植付伝動チェーン94Rと左側植付伝動チェーン94Lとは、分配軸23bの回転速度に対して植付駆動軸95,95が2倍速で駆動されるようにスプロケット比を2:1に設定して連動させてあり、記縦送りチェーン伝動機構92では、分配軸23bの回転速度に対して縦送りカム軸93が等速で回転駆動されるように、スプロケット比を1:1に設定して連動させてある。
各植付機構22の駆動を断続する少数条クラッチ25aは、左右の植付駆動軸95,95に設けられていて、一つの伝動ケース25に設けられている一つの少数条クラッチ25aが、各伝動ケース25の左右両側の植付機構22の駆動を断続できるように構成されている。
【0066】
〔粗密植え切換装置〕
植付機構22の植付回転軌跡中における角速度を、標準の植付状態に適した等速運動と、密植に適した不等速運動と、粗植に適した不等速運動とに切り換え可能な粗密植え切換機構8について説明する。
図10及び
図11に示すように、粗密植え切換機構8は、粗密植え切換ケース80に、植付出力軸77の出力側端部に接続される入力軸81と、苗植付装置2への動力伝達を行う伝動軸18の入力側端部に接続される出力軸82とが、前記接続側とは反対側の端部を挿入した状態で支持されている。
【0067】
入力軸81には、半径が一定な円形ギヤによって構成される標準植え用の標準ギヤ81aと、密植用の偏心ギヤ81bと、粗植用の偏心ギヤ81cとを一体回動するようにキー連結してある。出力軸82には、減速用の大径伝動ギヤ82aを一体回動するように装着してある。入力軸81と出力軸82とを、互いの対向端部で相対回動自在に嵌合させることにより、粗密植え切換ケース80に対して同一軸心上に支持させてある。
粗密植え切換ケース80には、切り換え変速用の操作軸83が回動自在に枢支されているとともに、この操作軸83に、前記入力軸81上の各ギヤ81a,81b,81cに対して各別に噛合する標準ギヤ83aと、密植用の偏心ギヤ83bと、粗植用の偏心ギヤ83cとが相対回動自在に外嵌されている。また、操作軸83には、出力軸82に設けてある減速用の大径伝動ギヤ82aに対して常時噛合する減速用の小径伝動ギヤ83dが一体回動するように設けてある。この小径伝動ギヤ83dと大径伝動ギヤ82aとのギヤ比は1:2であり、1/2に減速された動力が出力軸82から出力される。
【0068】
操作軸83は、内部にシフト軸84が軸線方向で移動することを許す軸孔83eが形成されていて、シフト軸84の先端部に備えたシフト部材84aが、軸孔83eの軸線方向に移動することが可能であるように構成されている。そして、シフト部材84aが標準ギヤ83a、密植用の偏心ギヤ83b、粗植用の偏心ギヤ83cのうちの何れか一つと選択的に係合することによって、その選択されたギヤを操作軸83と一体回動させるように構成してある。
したがって、シフト部材84aが標準ギヤ83aを選択すると、その標準ギヤ83aが入力軸81上の標準ギヤ81aとの噛合状態で動力を伝達され、標準植えに適した角速度で植付機構22が駆動されるように操作軸83が駆動され、その駆動力が出力軸82から出力される。
シフト部材84aが密植用の偏心ギヤ83bを選択すると、その偏心ギヤ83bが入力軸81上の密植用の偏心ギヤ81bとの噛合状態で動力を伝達され、密植に適した角速度で植付機構22が駆動されるように操作軸83が駆動され、その駆動力が出力軸82から出力される。
シフト部材84aが粗植用の偏心ギヤ83cを選択すると、その偏心ギヤ83cが入力軸81上の粗植用の偏心ギヤ81cとの噛合状態で動力を伝達され、密植に適した角速度で植付機構22が駆動されるように操作軸83が駆動され、その駆動力が出力軸82から出力される。
【0069】
〔少数条クラッチの操作構造〕
苗植付装置2に備えた少数条クラッチ25aの操作構造について説明する。
図12に示すように、苗植付装置2の苗のせ台20における苗のせ面21の裏面側には、右苗のせ台部分20R(
図12中では左側に図示されている)と左苗のせ台部分20L(
図12中では右側に図示されている)とのそれぞれに、電動モータで構成されたクラッチ駆動用のクラッチモータ54が備えられている。
各クラッチモータ54は、右苗のせ台部分20Rと左苗のせ台部分20Lとのそれぞれに設けてある左右のスライドガイド53,53の上部に、取付ブラケット53aを介して固定してある。
【0070】
右側のクラッチモータ54(
図12中では左側に図示されている)には、
図12及び
図13に示すように、3個の回転カム55が一本の支軸55a上に支持されていて、クラッチモータ54の回転にともなって、回転カム55の外周カム面に摺接するカムフォロワ56が揺動操作される。そのカムフォロワ56には、カムフォロワ56の揺動によって押し引き操作される操作ワイヤ57の一端側が連結され、苗植付装置2の伝動ケース25に内装されている少数条クラッチ25aに他端側が連係されていて、回転カム55の回転にともなって少数条クラッチ25aが入り切り操作されるように構成されている。
また、前記カムフォロワ56には、縦送り機構21cを入り切り作動させるための縦送りクラッチ21dを操作するための別の操作ワイヤ58も連係されている。そして、カムフォロワ56が揺動して入り切り操作される縦送りクラッチ21dは、少数条クラッチ25aと同機して、苗植付作業の断続を行うように構成されている。つまり、カムフォロワ56が揺動して入り切り操作される縦送りクラッチ21dは、そのカムフォロワ56の揺動に伴って入り切り操作される少数条クラッチ25aが駆動を断続する苗植付機構22が作用する箇所の苗載置部21aに対して、その苗載置部21aに備えた縦送り機構21cの作動を断続するように構成されている。
【0071】
左側のクラッチモータ54(
図12中では右側に図示されている)には、
図12及び
図13に示すように、2個の回転カム55が一本の支軸55a上に支持されていて、クラッチモータ54の回転にともなって、回転カム55の外周カム面に摺接するカムフォロワ56が揺動操作される。そのカムフォロワ56には、カムフォロワ56の揺動によって押し引き操作される操作ワイヤ57の一端側が連結され、苗植付装置2の伝動ケース25に内装されている少数条クラッチ25aに他端側が連係されていて、回転カム55の回転にともなって少数条クラッチ25aが入り切り操作されるように構成されている。
また、前記カムフォロワ56には、縦送り機構21cを入り切り作動させるための縦送りクラッチ21dを操作するための別の操作ワイヤ58も、上記右側のカムフォロワ56に連結された操作ワイヤ58と同様に、少数条クラッチ25aが駆動を断続する苗植付機構22が作用する箇所の苗載置部21aに対して、その苗載置部21aに備えた縦送り機構21cの作動を断続するように構成されている。
【0072】
左右のクラッチモータ54,54のうち、右側のクラッチモータ54は、右苗のせ台部分20Rの右端部(
図12中では左側に図示されている)から3つ目と4つ目の苗載置部21a同士の間の付近に存在し、左側のクラッチモータ54は、左苗のせ台部分20Lの左端部(
図12中では右側に図示されている)から1つ目と2つ目の苗載置部21a同士の間の付近に存在している。
その結果、苗のせ台20を
図12に示す伸展姿勢から、
図6及び
図7に示すように折り畳み姿勢に姿勢変更した場合、右苗のせ台部分20Rと左苗のせ台部分20Lとの左右方向の端部が、
図6及び
図7に示すように自走車体1の前方側に向く状態で、その端部同士の前後方向位置はほぼ同じ位置となる。
このため、伸展姿勢で苗のせ台20の左右方向の端部からの距離が互いに異なる位置に配設された右側のクラッチモータ54と左側のクラッチモータ54とは、折り畳み姿勢では、
図7に示すように、前後方向で異なる箇所に位置し、右側のクラッチモータ54よりも左側のクラッチモータ54が前方側に位置するように構成されている。
したがって、例えば
図8に示すように折り畳み姿勢とした苗のせ台20を、左右に位置するクラッチモータ54同士が、後面視で部分的に重複する状態にまで近接させて配設しても支障なく折り畳み姿勢に姿勢変更することも可能となる。
【0073】
左右のクラッチモータ54,54は、それぞれ別個のモータカバー54aで覆われており、各回転カム55も、カムカバー55bによって覆われている。
【0074】
〔苗のせ台の裏面側の構造〕
図14に示すように、伸展姿勢の苗のせ台20は、リンク機構16の後端部に備える縦リンク部材16aの上部と、左右の植付機枠部分2R,2Lとの間に操作索101が緊張状態で配設されている。その左右の操作索101のうち、縦リンク部材16aの上部に連結される側は、前後方向軸心回りで回動するローリングモータ100に連結されていて、ローリングモータ100の回転駆動によって自走車体1に対する苗のせ台2のローリング作動を調整して、水平姿勢が保たれるように構成されている。
操作索101のうち、左右の植付機枠部分2R,2Lに連結される側の端部では、操作索101の一部が強いスプリングで構成されており、通常の苗のせ台20の緩やかなローリング作動ではほとんど伸縮しないが、苗植付装置2に対して衝撃的な荷重が作用した際には、その緩衝を行えるように構成されている。
【0075】
縦リンク部材16aのさらに上部と、その縦リンク部材16aの左右両側で、苗のせ台20の裏面側に固定したスライドガイド53との間にバランススプリング102が張設されている。このバランススプリング102は、自走車体1の水平姿勢が保たれているにもかかわらず、苗のせ台20の左右横移動に伴って苗植付装置2の左右バランスが崩れることにより、苗のせ台20が大きくローリング作動することを抑制するためのものである。
左右のバランススプリング102,102のうち、縦リンク部材16aと左苗のせ台部分20Lとの間に張設されたバランススプリング102は、スライドガイド53に対して前後軸心を有した支点P4の回りで揺動可能に構成された解除操作レバー103の長さ方向の中途部に接続してあり、その解除操作レバー103の揺動操作によって、バランススプリング102を緊張させた使用姿勢と、弛緩させた非使用姿勢とに切り換え可能に構成されている。
解除操作レバー103は、緊張姿勢では握り部103aが支点P4よりも苗のせ台20の右端部に位置する傾倒姿勢でスライドガイド53の一部に係合してバランススプリング102を緊張させ、弛緩姿勢では、前記係合を解除して握り部103aが支点P4よりも左右方向での左側に移行した弛緩姿勢でスライドガイド53の一部に係合するように構成されている。
【0076】
右苗のせ台部分20Rと左苗のせ台部分20Lとのそれぞれの裏面側には、
図17及び
図18に示すように、液状肥料の複数本の供給用ホース72を係止するための上部フック104と下部フック105とが設けられている。
上部フック104は、苗のせ台20の伸展姿勢で苗のせ台20の端部近くで、門形支持枠50の縦支柱51の上下方向での中間位置に設けてあり、その苗のせ台20の端部近くに装備される液肥供給ノズル73に対する接続箇所よりも上方側で供給用ホース72を係止するように、右苗のせ台部分20Rと左苗のせ台部分20Lとのそれぞれの裏面側に取り付けられている。
下部フック105は、苗のせ台20の伸展姿勢で、上部フック104の配設箇所よりも苗のせ台20の中央側寄り箇所で、植付機枠部分2R,2Lの可動支持フレーム29,29に対して供給用ホース72が保持されるように装備させてある。
【0077】
このように上部フック104と下部フック105とで保持されている供給用ホース72は、苗のせ台20の伸展姿勢では、苗のせ台20の中央側寄り箇所で苗のせ台20部分の裏面側で可動支持フレーム29に支持させる下部フック105での支持箇所と、苗のせ台20の端部近くで液肥供給ノズル73に対する接続箇所とが低く位置し、その中間に位置する部分が門形支持枠50の縦支柱51の上下方向での中間位置に設けてある上部フック104で上方側に持ち上げられた状態で苗のせ台20部分の裏面側に支持されている。
このようにして、苗のせ台20の端部近くで低い位置の液肥供給ノズル73に対する接続箇所と、低い位置の下部フック105との中間に位置する部分の供給用ホース72は、上部フック104により持ち上げられて上向きに凸の湾曲した状態にある。
【0078】
そして、苗のせ台20が折り畳み姿勢に姿勢変更されると、中央側寄りの下部フック105での止着箇所よりもさらに中央側に位置する部分の供給用ホース72が、苗のせ台20の折り畳み姿勢への姿勢変更に伴って苗のせ台20の端部側寄りに近づく方向に向き変更される状態となる。このとき、前記液肥供給ノズル73に対する接続箇所と下部フック105との中間に位置する部分の供給用ホース72と、それに連続するように下部フック105での止着箇所よりもさらに中央側に位置する部分の供給用ホース72とが、
図18に示すようにループ状に湾曲してコンパクトに格納された状態となり易い。
【0079】
前記縦リンク部材16aに支持されている固定フレーム27の上面側には、
図5及び
図6に示すように、平面視でチャンネル状に形成された取付ブラケット27aが立設してある。この取付ブラケット27aに対して、その前面側に苗のせ台20のローリング作動を検出する角速度センサ106が装着され、後面側には苗のせ台20の前後傾斜を検出する傾斜センサ107が装着されている。
【0080】
図15に示すように、縦リンク部材16aの下方側で、かつ後方側に向く面には、側面視でチャンネル状の取付台108を固定してあり、この取付台108に格納ボックス109を取り付けてある。縦リンク部材16aの後方側に向く面と取付台108との間に、角速度センサ106や傾斜センサ107から入力される検出信号、あるいは薬剤散布装置3の駆動機構6に対するコントローラ65から制御指令などに基づいて、前記ローリングモータ100や、薬剤散布装置3の駆動機構6における電動モータ60R,60Lなどに対する制御信号を出力するECU110が配設されている。また、格納ボックス109内には、リレー111等の電子制御機器が内蔵されている。
【0081】
図16(a),(b)に示すように、伸展姿勢時における右苗のせ台部分20Rと左苗のせ台部分20Lとの境界部分に、伸展姿勢で相対向する対向端部に備えたリブ20c,20c同士に上側から嵌合して連結することによりロックするロックレバー112を、苗のせ台20の背面側に設けてある。
そして、対向端部のリブ20c,20c同士の対向面にリミットスイッチ113を設けてあり、右苗のせ台部分20Rと左苗のせ台部分20Lの伸展姿勢で、対向端部に備えたリブ20c,20c同士が接合され、かつ、ロックレバー112がロック姿勢に操作されたとき、そのロック状態を検出するように構成してある。つまり、ロックレバー112とリミットスイッチ113とで苗のせ台20が伸展姿勢にあるか否かを検出する伸展姿勢検出手段を構成している。
【0082】
〔別実施形態の1〕
上記実施の形態では、苗のせ台20の後方から見た背面視で、右側の長い分割ガイドレール31Rが左側の短い分割ガイドレール31Lよりも下方で、かつ側面視で前方側に位置するように配設した構造のものを示したが、この構造に限られるものではない。
例えば、右側の長い分割ガイドレール31Rと左側の短い分割ガイドレール31Lとが、互いに同一、又はほぼ同一の上下方向高さとなるように配設されたものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0083】
〔別実施形態の2〕
実施の形態では、右側の植付機枠部分2R、及び苗のせ台20のうちの右苗のせ台部分20R、ならびに右側の分割ガイドレール31Rを、左側の植付機枠部分2L、及び苗のせ台20のうちの左苗のせ台部分20L、ならびに左側の分割ガイドレール31Lよりも長くした構造のものを例示したが、この構造に限られるものではない。
つまり、右側の植付機枠部分2R、及び右苗のせ台部分20R、ならびに右側の分割ガイドレール31Rよりも、左側の植付機枠部分2L、及び左苗のせ台部分20L、ならびに左側の分割ガイドレール31Lを長くした構造のものであっても差し支えない。また、左右の植付機枠部分2R、及び右苗のせ台部分20Rと左苗のせ台部分20L、ならびに右側の分割ガイドレール31Rと左側の分割ガイドレール31Lとが同じ長さに形成されたものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0084】
〔別実施形態の3〕
実施の形態では、苗のせ台20を左右の2分割構造に構成したものを例示したが、これに限らず、3分割以上の複数の苗のせ台部分に分割できるように構成してもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。
【0085】
〔別実施形態の4〕
実施の形態では、施肥用の肥料として、自走車体1の前部に搭載した肥料タンク70からの供給液肥を用いるようにした構造のものを例示したが、これに限られるものではない。例えば、自走車体1の後部に肥料供給用の施肥タンクを設け、その施肥タンクに貯留される粉粒状肥料を、苗植付装置2側に装備させた作溝器(図示せず)に対して落下供給するように構成したものであってもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様の構成を採用すればよい。