特許第6120654号(P6120654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6120654
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】巻取り機を運転する方法及び巻取り機
(51)【国際特許分類】
   B65H 54/02 20060101AFI20170417BHJP
   B65H 54/70 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   B65H54/02 C
   B65H54/70 B
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-86442(P2013-86442)
(22)【出願日】2013年4月17日
(65)【公開番号】特開2013-220947(P2013-220947A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年12月9日
(31)【優先権主張番号】10 2012 007 683.5
(32)【優先日】2012年4月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513209338
【氏名又は名称】ザウラー ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Saurer Germany GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル イーディング
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート コーレン
(72)【発明者】
【氏名】デトレフ リュッカー
(72)【発明者】
【氏名】アンスガー パッシェン
(72)【発明者】
【氏名】ハンス−ギュンター ヴェーダースホーフェン
【審査官】 笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−242096(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/128596(WO,A1)
【文献】 特開2012−131643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 54/02
B65H 54/70
B65H 59/00
B65H 63/00
D01H 1/00 〜 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の作業部(2)を備える巻取り機(1)を運転する方法であって、
複数の作業部(2)において各1つのセンサ(20,37)が、各作業部(2)の各1つの運転パラメータを検出し、
前記センサ(20,37)は、前記運転パラメータを再現するセンサ信号を準備し、
各作業部(2)の運転に対して影響を及ぼす、アクチュエータ(14,26)用の制御信号を、前記センサ信号に関連して生ぜしめる、巻取り機(1)を運転する方法において、
前記複数の作業部(2)のうちの第1の作業部(2A)に対して、前記複数の作業部(2)のうちの第2の作業部(2B)を選択し、
前記複数の作業部(2)のうちの第1の作業部(2A)の前記センサ(20,37)の故障中に、第1の作業部(2A)の前記アクチュエータ(14,26)用の前記制御信号を、前記複数の作業部(2)のうちの第2の作業部(2B)の前記センサ(20,37)によって準備されるセンサ信号に関連して、生ぜしめ、
第2の作業部(2B)は、前記運転パラメータに関して、第1の作業部(2A)のセンサ(20,37)の故障中に、第1の作業部(2A)と同等な状態にある
ことを特徴とする、巻取り機を運転する方法。
【請求項2】
第2の作業部(2B)を、第1の作業部(2A)の状態に関連して、運転パラメータに関して、選択する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
複数の作業部(2)の状態を、運転パラメータに関して連続的に検出する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記センサ(20,37)の故障発生の時点において、第1の作業部(2A)の状態と第2の作業部(2B)の状態とが、運転パラメータに関して少なくとも部分的に同等であるように、第2の作業部(2B)を選択する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記センサ(20,37)の故障発生の時点において、第1の作業部(2A)の状態と第2の作業部(2B)の状態とが、運転パラメータに関して同等であるように、第2の作業部(2B)を選択する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記センサ(20,37)の故障中に第2の作業部(2B)の状態を、該状態が第1の作業部(2A)の状態と同等であるように、適合させる、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記複数の作業部(2)において各1つの糸を、紡績コップ(9)から巻上げパッケージ(11)に巻き返し、前記センサは、糸張力センサ(20)として形成されていて、第1の作業部(2A)と第2の作業部(2B)との前記紡績コップ(9)における残留糸長さが同等である、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記複数の作業部(2)において各1つの糸を、巻上げパッケージ(11)に巻き取り、該巻上げパッケージ(11)は、回転可能なドラム(26)により摩擦によって駆動され、前記センサ(37)は、巻上げパッケージ(11)の回転数を測定する、請求項6記載の方法。
【請求項9】
第1の作業部(2A)の巻上げパッケージ(11)の直径と第2の作業部(2B)の巻上げパッケージ(11)の直径とが、同等であり、第2の作業部(2B)の巻上げパッケージ(11)を、第1の作業部(2A)の巻上げパッケージ(11)の加速又は制動時に、加速又は制動し、第1の作業部(2A)と第2の作業部(2B)との前記ドラムの回転数を、第2の作業部(2B)の前記センサ(37)によって測定される、前記巻上げパッケージ(11)の回転数に関連して、調節する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載の方法を実施する、多数の作業部(2)を備える巻取り機(1)であって、
複数の作業部(2)がそれぞれ、各作業部(2)の運転パラメータを検出する1つのセンサ(20,37)と、各作業部(2)の運転に対して影響を及ぼす1つのアクチュエータ(14,26)とを有し、
前記センサ(20,37)は、前記運転パラメータを再現するセンサ信号を準備するように、形成されており、
巻取り機(1)は制御手段(40,50)を有し、
該制御手段(40,50)は、各作業部(2)の前記アクチュエータ(14,26)のための制御信号を、各作業部(2)の前記センサ信号に関連して生ぜしめるように、形成されており、
前記センサ信号を前記制御手段(40,50)に伝達するデータ伝達手段と、制御信号を前記アクチュエータ(14,26)に伝達するデータ伝達手段とが設けられている、巻取り機(1)において、
前記制御手段(40,50)は、前記複数の作業部のうちの第1の作業部(2A)に対して、前記複数の作業部のうちの第2の作業部(2B)を選択するように、かつ前記複数の作業部(2)のうちの第1の作業部(2A)の前記センサ(20,37)の故障中に、第1の作業部(2A)の前記アクチュエータ(14,26)のための制御信号を、前記複数の作業部(2)のうちの第2の作業部(2B)の前記センサ(20,37)によって準備されるセンサ信号に関連して、生ぜしめるように、構成されており、
この場合第2の作業部(2B)は、運転パラメータに関して、第1の作業部(2A)の前記センサ(20,37)の故障中に、第1の作業部(2A)と同等な状態にある
ことを特徴とする巻取り機。
【請求項11】
前記制御手段(40,50)は、前記複数の作業部(2)のうちの各1つの作業部に配属された作業部制御装置(40)と、中央の制御ユニット(50)とを有し、前記作業部制御装置(40)と前記中央の制御ユニット(50)とは、別のデータ伝達手段(60)によって互いに接続されている、請求項10記載の巻取り機。
【請求項12】
第1の作業部(2A)の前記作業部制御装置(40)は、第2の作業部(2B)を選択するように構成されている、請求項11記載の巻取り機。
【請求項13】
前記中央の制御ユニット(50)は、第2の作業部(2B)を選択するように構成されている、請求項11記載の巻取り機。
【請求項14】
前記別のデータ伝達手段(60)と第2の作業部(2B)の前記作業部制御装置(40)とは、第2の作業部(2B)の前記センサ(20,37)のセンサ信号を第1の作業部(2A)の前記作業部制御装置(40)に伝達するように、構成されており、第1の作業部(2A)の前記作業部制御装置(40)は、第1の作業部(2A)の前記アクチュエータ(14,26)のための制御信号を、第2の作業部(2B)の前記センサ(20,37)のセンサ信号に関連して生ぜしめるように、構成されている、請求項11から13までのいずれか1項記載の巻取り機。
【請求項15】
第2の作業部(2B)の前記作業部制御装置(40)は、第1の作業部(2A)の前記アクチュエータ(14,26)のための制御信号を、第2の作業部(2B)の前記センサ(20,37)のセンサ信号に関連して生ぜしめるように、構成されており、前記別のデータ伝達手段(60)は、第1の作業部(2A)の前記アクチュエータ(14,26)のための制御信号を、第1の作業部(2A)の前記作業部制御装置(40)に伝達するように、構成されている、請求項11から13までのいずれか1項記載の巻取り機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の作業部を備える巻取り機を運転する方法であって、複数の作業部において各1つのセンサが、各作業部の各1つの運転パラメータを検出し、前記センサは、前記運転パラメータを再現するセンサ信号を準備し、各作業部の運転に対して影響を及ぼす、アクチュエータ用の制御信号を、前記センサ信号に関連して生ぜしめる、巻取り機を運転する方法に関する。本発明はまた、前記方法を実施する巻取り機に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の作業部を備える巻取り機は、従来技術において以前から公知である。このような巻取り機は、糸を、少なくとも1つの紡績コップである繰出しボビンから、少なくとも1つの綾巻きパッケージである巻上げパッケージに、巻き返す。作業部には一連のセンサ及びアクチュエータが配置されており、これらのセンサ及びアクチュエータは、各作業部の独立した運転を可能にする。1つの作業部の1つのセンサが故障した場合、当該作業部のコントロールされた運転は、通常、もはや不可能である。このような場合に作業部は停止され、欠陥が操作員によって排除されるまで、製造は中断される。従来技術においては、作業部の運転を、故障したセンサをそのままで継続するということも、考察された。しかしながらこれには、綾巻きパッケージの品質低下というリスクがある。
【0003】
巻き取られた綾巻きパッケージの品質に関して重要なセンサは、糸張力センサである。糸テンショナに関連して、糸張力は、パッケージ形成過程(Spulenreise)全体にわたって所望の値に保つことができ、このようにして綾巻きパッケージの品質を保証することができる。DE3733591A1の明細書導入部に記載されているように、コップの繰出し時には、巻取り速度が等しいままの場合、糸張力は連続的に上昇する。言い換えれば、糸張力は、他の影響が及ぼされなければ、紡績コップにおける残留糸長さの減少に連れて上昇する。このような糸張力の上昇は、糸張力センサによって制御される糸テンショナを用いて調整することができる。DE3733591A1においてさらに開示されているように、糸張力は巻取り速度によって影響を受ける。この理由から、残留糸量の減少時に上昇する糸張力を、巻取り速度の低下によって調整することも可能である。
【0004】
好ましくは両方の方法が組み合わせられ、つまり糸張力を一定に保つために、最初に、糸テンショナがさらに開放される。糸テンショナが完全に開放されて、糸テンショナを用いて糸張力をさらに低下させることが、もはや不可能であるような場合には、巻取り速度が減じられる。
【0005】
特開2009−242096には、多数の作業部を備える巻取り機が開示されている。これらの作業部にはそれぞれ、1つの糸張力センサと1つの糸テンショナとが配置されている。糸張力センサの信号に関連して、各作業部の糸テンショナ用の制御信号が生ぜしめられる。この公知の構成では、1つの作業部の糸張力センサの測定値を記憶すること、及び糸張力センサの故障時に、故障前に最後に記憶された張力値に基づいて、糸張力を制御することが、提案されている。択一的に、故障の生じた作業部における糸張力を制御するために、他の作業部において故障前に検出された測定値の平均値を、使用することも可能である。つまりこのようにして、1つのセンサの故障時にも、巻取り機の運転を継続することができる。
【0006】
しかしながら糸張力を制御するために使用される張力測定値は、他の作業部の最後の値が使用されるか又は平均値が使用されるかとは無関係に、張力センサが新たな測定値を供給しない限り、一定のままである。すなわち公知の方法は、直ぐに解消され得ない長く続く故障に対しては、適していない。このことが言えるのは、特に、コップの繰出しによって発生する影響が、適正に機能するセンサでは完全に又は部分的に糸張力制御装置によって調整されるからである。一定の値による制御では、このことはもはや不可能である。結局、綾巻きパッケージの品質は、不都合な影響を受けることになる。
【0007】
多くの巻取り機では、作業部のパッケージフレームに、綾巻きパッケージの回転数を検出するためのセンサが配置されている。綾巻きパッケージは、ドラムによって摩擦により従動される。例えば糸切れ又はクリアラ切断後における加速、又は制動時に、綾巻きパッケージの回転数は、段階的に変化させられる。これによって、大きなスリップが、例えばドラムの周速度と綾巻きパッケージの周速度との間における差が、大幅に阻止される。スリップは、パッケージ表面において摩擦を生ぜしめ、この摩擦によって綾巻きパッケージを損傷することがある。上側の糸層は、滑ってずれることがあり、綾巻きパッケージの品質に不都合な影響が及ぼされる。加速のために、駆動されるドラムの回転数は段階的に高められ、綾巻きパッケージの回転数は監視される。綾巻きパッケージの回転数が一定のままである場合には、加速過程は終了し、綾巻きパッケージはスリップなしにドラムと共に回転する。次いでドラムの回転数が一段階高められ、前記過程は、最終回転数が得られるまで、相応に繰り返される。制動も同様に行われる。回転数センサの故障時には、綾巻きパッケージは制御されずに制動されるか又は停止されねばならない。綾巻きパッケージの制御された起動は、もはや不可能である。作業部は、欠陥が操作員によって解決されるまで、停止したままである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】DE3733591A1
【特許文献2】特開2009−242096
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ゆえに本発明の課題は、センサの故障時における作業部の運転を、巻上げパッケージの品質を損なうことなしに、継続できる可能性を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1の特徴部に記載の方法並びに請求項10に記載の巻取り機によって解決される。本発明の好適な変化形は、従属請求項に記載されている。
【0011】
前記課題を解決するために本発明の方法では、冒頭に述べた、巻取り機を運転する方法において、複数の作業部のうちの第1の作業部に対して、複数の作業部のうちの第2の作業部を選択し、複数の作業部のうちの第1の作業部のセンサの故障中に、第1の作業部のアクチュエータ用の制御信号を、複数の作業部のうちの第2の作業部のセンサによって準備されるセンサ信号に関連して、生ぜしめ、この場合第2の作業部は、運転パラメータに関して、第1の作業部のセンサの故障中に、第1の作業部と同等な状態にある。
【発明の効果】
【0012】
つまり本発明の方法では、第1の作業部の故障したセンサの代わりに、第2の作業部のセンサが使用される。この第2の作業部のセンサは、確かに、第1の作業部ではなく、第2の作業部において引き続き測定を行うが、しかしながら第2の作業部は、センサによって測定された運転パラメータに関して、第1の作業部と同等な状態、つまり制御技術上問題にならないレベルで同じ状態にあるので、センサは同等な値を提供する。このようにして、故障したセンサを備える作業部の運転が維持されるのみならず、本発明による方法によって適切な代替値を使用できるので、完成した巻上げパッケージの品質も、保証される。
【0013】
多くの場合、1つの巻取り機のすべての作業部は同じに形成されているので、すべての作業部もまたそれぞれのセンサを有している。この場合、上に述べたその他の条件が満たされている場合には、第1の作業部として又は第2の作業部として、原則的には、どの作業部を使用することもできる。また、巻取り機が種々異なった作業部を備えていて、特定のセンサが作業部の一部にしか設けられていないような構成も、可能である。このような場合、本発明による方法は、このセンサに関しては、作業部の該当する部分に対してしか適用されない。
【0014】
作業部の状態は、例えば単数又は複数の状態変数(Zustandsvariable)によって記載することができ、この場合状態変数は運転パラメータに影響を及ぼす。
【0015】
好ましくは、第2の作業部を、第1の作業部の状態に関連して、運転パラメータに関して、選択する。この決定は、場合によっては既にセンサの故障前に行うことができる。そのために、複数の作業部の状態を、運転パラメータに関して連続的に検出し、各作業部に対して適切な第2の作業部を選択する。しかしながらまた、第2の作業部を、故障の発生した時に初めて選択する場合には、複数の作業部の状態を、運転パラメータに関して連続的に検出すると、好適である。このようにすると、第1の作業部のセンサの故障時において、第2の作業部の迅速な決定が可能となり、第1の作業部の中断のない運転が保証される。連続的に検出された状態は、個々の作業部の制御装置によって検出し、記憶し、かつ例えばバスシステムのような相応なデータ伝達手段を介して、迅速に交換することが可能である。択一的に、連続的に検出された状態は、1つの中央の制御ユニットによって検出し、かつ記憶することも可能である。
【0016】
特に好適な態様では、センサの故障発生の時点において、第1の作業部の状態と第2の作業部の状態とが、運転パラメータに関して少なくとも部分的に同等であるように、第2の作業部を選択する。すなわち、故障発生の前、又は遅くとも故障発生の時点に、第1の作業部の状態と第2の作業部の状態とが、運転パラメータに関して少なくとも部分的に同等であるように、第2の作業部を選択する。特定の場合には、第1の作業部に対して第2の作業部の適宜なセンサ信号を利用するために、このような部分的な合致で既に十分である。状態が複数の状態変数によって記載される場合、状態変数の一部が同等である場合には、部分的な同等性が存在している。
【0017】
好適な態様では、センサの故障発生の時点において、第1の作業部の状態と第2の作業部の状態とが、運転パラメータに関して同等であるように、第2の作業部を選択する。この場合においても、故障発生の前、又は遅くとも故障発生の時点に、第1の作業部の状態と第2の作業部の状態とが、運転パラメータに関して同等であるように、第2の作業部を選択する。センサの故障の時点において完全な同等性が存在する場合には、この同等性は故障の間中、維持され、かつ第2の作業部のセンサは第1の作業部のために適切な値を提供する、ということを仮定することができる。完全な同等性は、状態を運転パラメータに関して記載するすべての状態変数が同等である場合に、得られる。
【0018】
第1の作業部の状態と第2の作業部の状態との十分な同等性が、故障発生時に存在していない場合には、センサの故障中に第2の作業部の状態を、該状態が第1の作業部の状態と同等であるように、適合させる。この方法は、既に状態の部分的な合致が存在している場合に、用いることができる。しかしながらまた、複数の作業部のうちの任意の1つの作業部を、第2の作業部として決定し、次いで状態の相応な適合を行うことも、可能である。
【0019】
本発明による方法は例えば、複数の作業部において各1つの糸を、紡績コップから巻上げパッケージに巻き返し、センサが、糸張力センサとして形成されている場合に、使用することができる。運転パラメータ「糸張力」に関して同等でなくてはならない、第1の作業部の状態と第2の作業部の状態とは、紡績コップにおける残留糸長さが同等である。
【0020】
本発明による方法は同様に、上に述べた第2の例に対しても、つまり、複数の作業部において各1つの糸を、巻上げパッケージに巻き取り、該巻上げパッケージは、回転可能なドラムによって摩擦によって駆動され、センサは、綾巻きパッケージの回転数を測定するようになっている、第2の例に対しても、使用することができる。この場合、第1の作業部の巻上げパッケージの直径と第2の作業部の巻上げパッケージの直径とが同等である場合に、状態の部分的な同等性は、第1の作業部及び第2の作業部の運転パラメータ「綾巻きパッケージの回転数」に関して存在している。第1の作業部のセンサの故障時に、第2の作業部のセンサの信号を使用できるようにするためには、第1の作業部の巻上げパッケージが加速されるか又は制動される。この場合、第1及び第2の作業部のドラムの回転数を、第2の作業部のセンサによって測定された、巻上げパッケージの回転数に関連して、調節することが可能である。
【0021】
前記課題を解決するために、本発明による方法を実施する巻取り機がさらに提案されている。
【0022】
本発明による巻取り機では、巻取り機の複数の作業部がそれぞれ、各作業部の1つの運転パラメータを検出する1つのセンサと、各作業部の運転に対して影響を及ぼす1つのアクチュエータとを有し、前記センサは、前記運転パラメータを再現するセンサ信号を準備するように、形成されており、巻取り機は制御手段を有し、該制御手段は、各作業部の前記アクチュエータのための制御信号を、各作業部の前記センサ信号に関連して生ぜしめるように、形成されており、前記センサ信号を前記制御手段に伝達するデータ伝達手段と、制御信号を前記アクチュエータに伝達するデータ伝達手段とが設けられている、巻取り機において、前記制御手段は、前記複数の作業部のうちの第1の作業部に対して、前記複数の作業部のうちの第2の作業部を選択するように、かつ前記複数の作業部のうちの第1の作業部の前記センサの故障中に、第1の作業部の前記アクチュエータのための制御信号を、前記複数の作業部のうちの第2の作業部の前記センサによって準備されるセンサ信号に関連して、生ぜしめるように、構成されており、この場合第2の作業部は、運転パラメータに関して、第1の作業部の前記センサの故障中に、第1の作業部と同等な状態にある。
【0023】
本発明による巻取り機の態様では、制御手段は、複数の作業部のうちの各1つの作業部に配属された作業部制御装置と、中央の制御ユニットとを有し、作業部制御装置と中央の制御ユニットとは、別のデータ伝達手段、例えばバスシステムによって、互いに接続されている。
【0024】
第1の作業部の作業部制御装置は、第2の作業部を選択するように構成されていてよい。択一的に、中央の制御ユニットが、第2の作業部を選択するように構成されていてもよい。
【0025】
本発明による巻取り機の可能な別の態様では、別のデータ伝達手段と第2の作業部の作業部制御装置とは、第2の作業部のセンサのセンサ信号を第1の作業部の作業部制御装置に伝達するように、構成されており、第1の作業部の作業部制御装置は、第1の作業部のアクチュエータのための制御信号を、第2の作業部のセンサのセンサ信号に関連して生ぜしめるように、構成されている。
【0026】
択一的な態様によれば、第2の作業部の作業部制御装置は、第1の作業部のアクチュエータのための制御信号を、第2の作業部のセンサのセンサ信号に関連して生ぜしめるように、構成されており、別のデータ伝達手段は、第1の作業部のアクチュエータのための制御信号を、第1の作業部の作業部制御装置に伝達するように、構成されている。すなわち、第2の作業部のアクチュエータのための制御信号を、センサ信号の代わりに、第1の作業部に伝達することが可能である。そして第2の作業部の制御信号は、第1の作業部のアクチュエータのために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】多数の作業部を備える本発明による巻取り機を示す図である。
図2】本発明による巻取り機の1つの作業部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0029】
図1には、多数の作業部2を備える巻取り機1が示されており、多数の作業部2は、巻取り機1の端部フレーム55,56の間に配置されている。巻取り機1は中央の制御ユニット50を有し、この制御ユニット50は、バスシステム60を介して作業部制御装置40に接続されている。中央の制御ユニット50は、操作及び表示のために、キーボード52及びディスプレイ51を有する。
【0030】
図2には、巻返しプロセス中における作業部2が略示されている、これらの作業部2においては、公知のように、ゆえに詳しくは説明しないが、貯えボビンが、通常はリング精紡機において製造された紡績コップ9であって、比較的僅かな糸材料しか有していない紡績コップ9が、大容量の綾巻きパッケージ11に巻き返される。完成した綾巻きパッケージ11は、次いで、例えば綾巻きパッケージ交換装置である自動作動式のサービスユニット57を用いて、機械長さの綾巻きパッケージ搬送装置21に引き渡され、機械端部側に配置されたパッケージ積み込みステーション又はこれに類したものに搬送される。
【0031】
このような巻取り機1はさらに、紡績コップを貯えることができる回転マガジンを備えており、又は自動綾巻きワインダは、ボビン及び巻管搬送装置3として形成された補給装置を有する。このようなボビン及び巻管搬送装置3において、皿形搬送台8に鉛直に方向付けられて配置された紡績コップ9もしくは空管34が循環する。図面にはボビン及び巻管搬送装置3のうち、コップ供給区間4、可逆式に駆動可能な貯え区間5、作業部2に通じる横方向搬送区間6及び巻管戻し区間7だけが示されている。図示のように、供給された紡績コップ9はこの場合、初めに、横方向搬送区間6の領域において作業部2に位置する繰出し部10に位置決めされ、次いで巻き返される。
【0032】
個々の作業部2は、そのために、公知のようにゆえに図示はしないが、種々様々な糸監視装置及び糸処理装置を有しており、これらの装置は、紡績コップ9が大容量の綾巻きパッケージ11に巻き返されることを保証するのみならず、糸30が巻返し過程中に糸欠陥に関して監視され、検知された糸欠陥がクリアリングされることをも保証する。各作業部2は作業部制御装置40を有し、この作業部制御装置40は、略示された制御ラインを介して糸監視装置及び糸処理装置に接続され、かつバスシステム60を介して中央の制御ユニット50及びサービスユニット57の制御装置58に接続されている。
【0033】
作業部2は例えばそれぞれ1つの巻取り装置24を有し、この巻取り装置24は、旋回軸19を中心に運動可能に支持されたパッケージフレーム18を有し、かつパッケージ駆動装置26及び糸綾振り装置28を備えている。
【0034】
図示の実施形態では、綾巻きパッケージ11は巻返しプロセス中にその表面が駆動ドラム26に接触していて、この駆動ドラム26により摩擦によって従動させられる。駆動ドラム26はこの場合、回転数調整可能で可逆式の駆動装置(図示せず)を介して駆動される。パッケージフレーム18には、綾巻きパッケージの回転数を検出するセンサ37が配置されている。このセンサ37は、パッケージフレームセンサとも呼ばれる。綾巻きパッケージ11への巻上げ時における糸30の綾振りは、図示の実施形態ではフィンガ糸ガイド29を有する糸綾振り装置28を用いて行われる。
【0035】
作業部2はさらに、糸継ぎ装置、好ましくは空気力作動式のスプライシング装置13を有しており、このスプライシング装置13は、切断装置43、下糸センサ22、糸テンショナ14、糸切断装置17を備える糸クリアラ15、糸張力センサ20及びパラフィン処理装置16を備えている。
【0036】
さらに作業部2は、サクションノズル12及びグリッパ管25を備えており、このサクションノズル12及びグリッパ管25には、規定された負圧を供給することができる。サクションノズル12及びグリッパ管25はこの場合、負圧源33に接続された機械長さの負圧横桁32に接続されている。
【0037】
図示の実施形態ではさらに、パラフィン処理装置16の領域に、糸走路に対して幾分後方にずらされて配置された糸把持ノズル23が位置決めされていて、糸30は巻返しプロセス中に該糸把持ノズル23の開口42の前を走行するようになっている。糸把持ノズル23は空気分岐部27を介して同様に負圧横桁32に接続されている。空気分岐部27はこの場合、糸把持ノズル23のための接続管片35と、比較的大きな放圧管片36とを有し、この放圧管片36の開口は、通常の巻返し運転中は、待機位置Pに位置決めされたサクションノズル12によって気密に閉鎖されている。サクションノズル12の上方旋回による放圧管片36の開放によって、糸把持ノズル23における負圧が消滅するようになっている。
【0038】
通常の欠陥のない巻返し運転において、糸張力は各作業部において調整される。図示の実施形態では、糸張力のための目標値が予め設定される。この目標値は、操作員によって例えば中央の制御ユニット50においてロット毎に予め設定し、バスシステム60を用いて、当該ロットに属する作業部2の作業部制御装置40に伝達することができる。糸張力の実際値は、糸張力センサ20を用いて測定される。目標値と実際値との偏差に基づいて、図示の実施形態では作業部制御装置40の一部である調整器を用いて、糸テンショナ14のための調節信号が生ぜしめられる。糸テンショナ14の調節によって、糸張力の実際値は、予め設定された目標値に保たれる。
【0039】
一定の糸引張り力を維持するためには、最初に、高いテンショナ圧力が必要である。紡績コップにおける残留糸長さが短ければ短いほど、もしくは繰り出された糸長さが長ければ長いほど、一定の糸張力もしくは糸引張り力を得るために、テンショナ圧力は低く調節されねばならない。テンショナ圧力が一定であると、糸引張り力は、繰り出された糸長さが増すに連れて、上昇することになる。
【0040】
巻取り速度もしくは巻返し速度は、コップ繰出し過程(Kopsreise)全体にわたって一定ではない。糸テンショナ14が圧力をもはやそれ以上低下させることができない場合には、巻取り速度が段階的に減じられ、これによって再び、糸テンショナ14を用いた糸張力の調整が可能になる。
【0041】
糸30の品質は、糸クリアラ15を用いて連続的に監視される。糸クリアラ15が、糸30において許容不能な欠陥を検出すると、切断装置17が作動させられ、いわゆるクリアラ切断が実施される。糸における欠陥箇所が除去され、糸端部がスプライシング装置13を用いて再び糸継ぎされる前に、綾巻きパッケージ11は制動されねばならない。意図しない糸切れ時にも綾巻きパッケージ11は相応に制動されねばならない。このことは、図示の実施形態によれば、駆動ドラム26の回転数を段階的に低下させることによって、達成される。この場合綾巻きパッケージ11の回転数は、パッケージフレームセンサ37を用いて連続的に監視される。綾巻きパッケージ11の回転数が一定になる、又は偏差が小さくなるや否や、駆動ドラム26の次の回転数段階が導入される。この手順もしくは方法は、綾巻きパッケージ11が停止するまで、相応に繰り返される。このようにして、制動時に発生するスリップは、最小に保たれる。スプライシング装置13を用いた糸継ぎ部の形成後に、綾巻きパッケージ11は再び加速される。この場合、同様な動作が行われ、駆動ドラム26の回転数は、段階的に高められる。次の段階は、綾巻きパッケージ11の回転数がもはや変化しなくなる、又は十分に小さくなるや否や、導入される。駆動ドラム26の回転数は、所望の回転数が得られるまで、予め設定された段階において高められる。
【0042】
以下において本発明による方法を、異なった2つのセンサが故障した場合を例にとって述べる。この場合、作業部2Aにおける当該センサが故障し、作業部2Bの対応するセンサの信号が、作業部2Aのさらなる運転のために使用されるものと仮定する。作業部2A,2Bは同じ構造を有し、図2に示した作業部2に相応した構成を有している。1つのセンサの故障時に、この故障したセンサの代わりに使用することができるセンサ信号を有する、作業部2Bを迅速に確定できるようにするために、作業部2の状態は連続的に検出され、各作業部制御装置40において記憶される。このようにして作業部2Aの故障時に、バスシステム60を介して迅速に情報を交換すること、及び適合する作業部2Bを決定することができる。
【0043】
まず、作業部2Aの糸張力センサ20が故障するものと仮定する。糸張力センサ20は糸の緊張、つまり糸張力を測定する。糸張力に関する複数の作業部2の状態は、紡績コップの残留糸長さが同等である場合、同等である。紡績コップにおける残留糸長さは、連続的に検出される。残留糸長さの検出は、紡績コップにおける既知の全糸長さと繰り出された糸長さとによって、行うことができ、この場合繰り出された糸長さは、例えば巻取りドラムの回転数から求めることができる。作業部2Bは、作業部2Aと同等な残留糸長さを紡績コップに有していることが望ましい。作業部2Bの糸張力センサ20の信号が、作業部2Aの作業部制御装置40に伝達される。そしてこの作業部制御装置40は、伝達された信号から、作業部2Aの糸テンショナ14のための信号を発生させる。択一的に、作業部2Bの制御信号を、作業部2Aの糸テンショナ14のために使用することも可能である。さらに、作業部2Bの糸張力センサ20の信号と、作業部2Aの糸テンショナ14の位置とに基づいて、作業部2Aの巻取り速度のための指示が生ぜしめられる。このようにして求められた巻取り速度は、駆動ドラム26の回転数を介して調節することができる。
【0044】
他の状況では、作業部2Aのパッケージフレームセンサ37が故障する。このような場合には、綾巻きパッケージ11を確実に制動すること又は加速することは、もはや不可能である。綾巻きパッケージ11が駆動ドラム26の回転数変化に対してどのように反応するかは、主として、綾巻きパッケージ11の直径に関連する。従って綾巻きパッケージ11の直径は、すべての作業部2において連続的に監視され、かつ記憶される。直径は例えば、駆動ドラム26の回転数と綾巻きパッケージ11の回転数との比から求めることができる。作業部2Bの綾巻きパッケージ11は、作業部2Aのパッケージフレームセンサ37の故障の時点において、作業部2Aの綾巻きパッケージ11とほぼ同じ直径を有することが望ましい。作業部2Aにおいて綾巻きパッケージ11が、糸中断に基づいて制動され、次いで再び加速されねばならない場合、作業部2Bにおいても同時に糸中断が惹起される。このことは例えば、作業部2Bにおける切断装置17の作動によって行うことができる。制動、糸継ぎ及び再加速の過程は、作業部2A及び作業部2Bにおいて平行に行うことができる。この場合、作業部2Bのパッケージフレームセンサ37の信号は、作業部2Aの作業部制御装置40に伝達されることができ、作業部2Aの駆動ドラム26の制御のために使用される。
【0045】
さらに、巻取り速度は、紡績コップにおける残留糸長さの減少に連れて低下することが公知である。つまりこの場合、作業部2Bの紡績コップにおける残留糸長さが作業部2Aの紡績コップ9における残留糸長さに比べて著しく僅かである場合には、作業部2Aのパッケージフレームセンサ37の故障時に、作業部2Bのパッケージフレームセンサ37は代替センサとして適していない。このような場合には、両作業部2A,2Bは異なった最終速度を有する。この問題は、両作業部2A,2Bにおいてコップ交換を実施することによって、簡単に解決することができる。このようにすると、両作業部における状態は再び同等となり、両作業部は等しい最終速度を有することになる。
【符号の説明】
【0046】
1 巻取り機、 2,2A,2B 作業部、 3 ボビン及び巻管搬送装置、 4 コップ供給区間、 5 貯え区間、 6 横方向搬送区間、 7 巻管戻し区間、 9 紡績コップ、 11 綾巻きパッケージ、 12 サクションノズル、 13 スプライシング装置、 14 糸テンショナ、 15 糸クリアラ、 16 パラフィン処理装置、 17 糸切断装置、 18 パッケージフレーム、 19 旋回軸、 20 糸張力センサ、 22 下糸センサ、 23 糸把持ノズル、 24 巻取り装置、 25 グリッパ管、 26 パッケージ駆動装置(駆動ドラム)、 27 空気分岐部、 28 糸綾振り装置、 29 フィンガ糸ガイド、 30 糸、 32 負圧横桁、 33 負圧源、 34 空管、 35 接続管片、 36 放圧管路、 37 センサ、 40 作業部制御装置、 42 開口、 43 切断装置、 50 制御ユニット、 51 ディスプレイ、 52 キーボード、 55,56 端部フレーム、 57 サービスユニット、 58 制御装置、 60 バスシステム
図1
図2