(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施例1]
図1に、実施例1によるショベルの状態表示装置20、及びショベルの管理センタ30のブロック図、及び管理対象であるショベル37の概略図を示す。管理センタ30は、通
信装置31、処理装置32、記憶装置33、出力装置34、及び入力装置35を含む。通信装置31は、通信網36を介して、管理対象であるショベル37から送信されたデータを受信すると共に、ショベルの状態表示装置20に対して種々のデータを送信する。
【0011】
ショベル37の各油圧シリンダ内の油圧、アタッチメントの姿勢を示すブーム角、アーム角、バケット角、及び上部旋回体の方位を示す旋回角の測定結果が、通信装置31を介して処理装置32に入力される。これらの情報から、アタッチメントに加わる荷重が特定される。出力装置34は、処理装置32の処理結果を表示する。さらに、処理結果は、通信装置31から通信網36を経由して、ショベルの状態表示装置20に送信される。管理センタ30のオペレータが、入力装置35を操作して処理装置32にコマンドを入力する。記憶装置33は、処理装置32が実行するコンピュータプログラム、及び処理に用いられる種々のデータを記憶する。
【0012】
ショベルの状態表示装置20は、送受信回路21、処理装置22、入力装置23、及び表示画面24を含む。送受信回路21は、通信回線36を介して管理センタ30と通信する機能を有する。処理装置22は、管理センタ30から通信網36を経由し、送受信回路21を通して受信したデータに基づいて、データ処理を行い、処理結果を表示画面24に表示する。ショベルの状態表示装置20の利用者(以下、単に「利用者」という。)が、入力装置23から処理装置22にコマンドを入力する。ショベルの状態表示装置20には、例えばタブレット端末、携帯電話端末等が用いられる。表示画面24及び入力装置23には、例えばタッチパネルが用いられる。この場合、表示画面24が入力装置23としても使用される。
【0013】
図2に、ショベルの状態表示装置20の表示画面24に表示される画像の一例を示す。ショベルの状態表示装置20のプログラムが起動されると、選択可能な運転状況の一覧、及び決定ボタンが、表示画面24に表示される。ここで、「運転状況」とは、ショベルが運転されるときに、ショベルの部品の損傷度に影響を及ぼし得る外部的要因を意味する。種々の運転状況は、例えば作業種別、作業現場、オペレータ、オペレータの熟練度等のクラスに分類される。
【0014】
「作業種別」のクラスに分類される運転状況として、単純掘削、溝掘削、地ならし、土砂積込み、土羽打ち等が挙げられる。「作業現場」のクラスに分類される運転状況として都市土木、鉱山等が挙げられる。「オペレータ」のクラスに分類される運転状況は、ショベルを操作するオペレータ個人に対応する。「オペレータの熟練度」のクラスに分類される運転状況は、一人のオペレータがショベルの操作に熟達しているレベル、例えば操作時期に対応する。
【0015】
利用者が、表示画面24に表示された運転状況ボタンをタップすることにより、複数、例えば2つの運転状況を選択する。選択された運転状況に対応するボタンが強調表示される。
図2では、運転状況A及び運転状況Cが選択された例を示している。複数の運転状況を選択した後、利用者が決定ボタンをタップする。
【0016】
図3に、決定ボタン(
図2)がタップされた後に、表示画面24に表示される画像の一例を示す。
図2に示した選択画面で選択された運転状況A及び運転状況Cの下で、ショベルの部品に蓄積された累積損傷度の分布が、対比可能な状態で、表示画面24に画像として表示される。
図3では、ショベルの部品として、ブームが表示されている例を示しているが、他の部品、例えばアーム、バケット等を表示してもよいし、表示すべき部品を選択可能としてもよい。「対比可能な状態」の例として、2つの画像が、表示画面24内に並んで表示される。表示画面24をピンチイン、またはピンチアウトすることにより、表示画面24に表示されているショベルの部品の画像を拡大または縮小することができる。こ
のとき、表示画面24に表示されている複数の画像のうち1つの画像を拡大または縮小すると、他の画像も連動して、同一の倍率で拡大または縮小される。また、表示画面24をスワイプすることにより、表示されている部品のうち所望の箇所の拡大された画像を表示することができる。この場合にも、表示画面24に表示されている複数の画像のうち1つの画像をスワイプすると、他の画像も連動して、スワイプされた画像と同一の箇所を表示する。これにより、複数の画像を、容易に対比することが可能になる。
【0017】
画像の表示に必要なデータは、管理センタ30(
図1)からショベルの状態表示装置20に送信される。具体的には、ショベルの状態表示装置20が、表示すべき運転状況を指定して、累積損傷度の分布を表すデータの送信を依頼するコマンドを管理センタ30に送信する。管理センタ30は、このコマンドを受信すると、送信依頼を受けた累積損傷度の分布を表すデータを、ショベルの状態表示装置20に送信する。
【0018】
「累積損傷度」は、類似の動作が周期的に繰り返される作業を行っているときに、ショベルの部品に加わる損傷度を、1周期に亘って累積したものである。例えば、単純掘削作業を行っている場合には、掘削開始から、持上げ旋回動作、排土動作、及び戻り旋回動作を経て、次の掘削開始に至るまでの動作が、1つの周期に相当する。なお、ショベルの状態表示装置20に表示する累積損傷度の分布として、1周期ごとの累積損傷度を複数周期に亘って平均した値を用いてもよい。
【0019】
図3において、累積損傷度が大きな領域が、累積損傷度が小さな領域より濃く表わされている。異なる2つの運転状況に対応する累積損傷度の分布が並んで表示されているため、両者を容易に比較することができる。
図3に示した例では、運転状況Aに相当する作業を行うと、運転状況Cに相当する作業を行う場合に比べて、特にブームの中央から先端までの領域において、累積損傷度が大きくなっている。
【0020】
表示画面24には、累積損傷度の分布を示す画像と共に、「差分表示ボタン」が表示される。
【0021】
図4に、差分表示ボタン(
図3)がタップされたときに表示画面24に表示される画像を示す。利用者が差分表示ボタン(
図3)をタップすると、処理装置22(
図1)に差分表示の指令が入力される。処理装置22は、差分表示の指令が入力されたことを検知すると、表示画面24に、累積損傷度の分布の差分を、画像として表示する。具体的には、
図3に示されている2つの運転状況(すなわち、運転状況A及び運転状況C)に対応する累積損傷度の分布の差分が表示される。
図4では、運転状況Aに対応する累積損傷度が、運転状況Cに対応する累積損傷度よりも相対的に大きい領域が、相対的に濃く表されている。
【0022】
2つの運転状況に対応する累積損傷度の分布の差分が表示されることにより、両者の相違を直感的に認識することができる。
【0023】
実施例1では、表示画面24に累積損傷度の分布を表示したが、損傷の程度に関わるその他の統計量の分布を表示してもよい。例えば、累積損傷度の平均値、ある一定期間内に蓄積された損傷度の積算値、部品の破壊に至るまでの余寿命等の分布を表示してもよい。
【0024】
[実施例2]
次に、上記実施例1をより具体化した実施例2について説明する。実施例2では、運転状況の内容が具体的に示される。以下、実施例1との相違点について説明し、同一の構成については説明を省略する。
【0025】
図5Aに、実施例2によるショベルの状態表示装置20の表示画面24に表示された起動時の画像を示す。表示画面24に、比較すべき運転状況のクラスの一覧、及び決定ボタンが表示される。運転状況のクラスには、「作業種別」、「作業現場」、「オペレータ」、「成長記録」、及び「機体」が含まれる。利用者は、比較すべき運転状況のクラスのボタンをタップすることにより、運転状況のクラスを選択する。選択された運転状況のクラスのボタンが強調表示される。
図5Aでは、選択された運転状況のクラスが「作業種別」である場合を示している。運転状況のクラスを選択した後、決定ボタンをタップする。
【0026】
図5Bに、運転状況のクラスとして「作業種別」が選択された場合に、表示画面24に表示される画像を示す。作業種別の一覧、及び決定ボタンが表示される。利用者は、比較すべき複数、例えば2つの作業種別のボタンを選択した後、決定ボタンをタップする。
図5Bでは、「単純掘削」及び「地ならし」が選択された例を示している。選択された2つの作業種別が強調表示されている。
【0027】
図6に、「単純掘削」及び「地ならし」が選択された場合に、表示画面24に表示される画像を示す。単純掘削作業を行った時の累積損傷度の分布、及び地ならし作業を行った時の累積損傷度の分布が、並んで画像として表示されている。
【0028】
図7に、
図5Aの状態において、運転状況のクラスとして「作業現場」が選択された場合に、表示画面24に表示される画像を示す。作業現場の一覧、及び決定ボタンが表示される。利用者は、比較すべき複数、例えば2つの作業現場のボタンを選択した後、決定ボタンをタップする。
図5Bでは、「都市土木」及び「鉱山」が選択された例を示している。選択された2つの作業種別が強調表示されている。
【0029】
図8に、「都市土木」及び「鉱山」が選択された場合に、表示画面24に表示される画像を示す。都市土木の現場で作業を行った時の累積損傷度の分布、及び鉱山で作業を行った時の累積損傷度の分布が、並んで画像として表示されている。
【0030】
図6及び
図8に示したように、作業種別や作業現場ごとの累積損傷度の分布を比較して表示することにより、特定の作業に特有の、または特定の作業現場に特有の累積損傷度の分布を、容易に把握することが可能になる。この累積損傷度の分布に基づいて、ある特定の作業を行うショベル、またはある特定の作業現場で使用されるショベルを、疲労破壊が発生し難いようにカスタマイズすることができる。
【0031】
例えば、ある作業を行ったときに、特定の部品の特定の部分の累積損傷度が大きくなる傾向が現れることが判明した場合、専らその作業に使用されるショベルの、損傷しやすい部分の強度を、標準品の強度より予め高めておくことが有効である。具体的には、部品の材料、形状、寸法等をカスタマイズすることが有効である。
【0032】
また、作業現場ごとに、損傷しやすい部分が予め判明している場合、損傷し易い部分を重点的に点検することにより、破壊箇所が発見し易くなるという効果が期待される。さらに、破壊が生じやすい部品を予め準備しておくことにより、故障修理に要する時間を短縮することができる。
【0033】
図9に、
図5Aの状態において、運転状況のクラスとして「オペレータ」が選択された場合に、表示画面24に表示される画像を示す。オペレータの一覧、及び決定ボタンが表示される。利用者は、比較すべき複数、例えば2人のオペレータのボタンを選択した後、決定ボタンをタップする。
図9では、オペレータA及びBが選択された例を示している。選択された2人のオペレータA及びBのボタンが強調表示されている。
【0034】
図10に、オペレータA及びオペレータBが選択された場合に、表示画面24に表示される画像を示す。相互に異なるオペレータA及びBが同一種別の作業を行った時の累積損傷度の分布が、並んで画像として表示されている。さらに、1周期の間のショベルの姿勢の変化が、時系列で表示されている。
図10に示された例では、左端から右に向かって、掘削開始時、掘削中、持上げ旋回中、及び排土動作中のショベルの姿勢が表示されている。これらの姿勢のうち、部品に最も大きな負荷が印加される姿勢に対応する画像が、強調表示される。
【0035】
例えば、熟練度の高いオペレータが作業したときの累積損傷度の分布と、熟練度の低いオペレータが作業したときの累積損傷度の分布とを、容易に比較することができる。
図10に示した例では、オペレータBの熟練度が、オペレータAの熟練度より高い。熟練度の高いオペレータが作業を行った場合には、熟練度の低いオペレータが作業を行った場合に比べて、ブームに蓄積される累積損傷度が小さいことがわかる。熟練度の高いオペレータが作業を行う場合には、操作が滑らかで、掘削進入角度も適切であると考えられる。これに対し、熟練度の低いオペレータが作業を行う場合には、衝撃的な動作が多くなり、部品に加わる負荷が大きいと考えられる。
図4に示したように、累積損傷度の差分表示を行うことにより、熟練度の高いオペレータと、熟練度の低いオペレータとの違いを、より容易に把握することができる。
【0036】
表示結果に基づいて、未熟なオペレータの運転技術を向上させるための支援を行うことができる。オペレータの熟練度が高まることにより、想定される負荷を超えた負荷が部品に加わるような操作の頻度を低減することが可能になる。
【0037】
図11に、
図5Aの状態において、運転状況のクラスとして「成長記録」が選択された場合に、表示画面24に表示される画像を示す。オペレータの一覧、及び決定ボタンが表示される。利用者は、成長記録を表示すべき1人のオペレータのボタンを選択した後、決定ボタンをタップする。
図11では、オペレータBが選択された例を示している。選択された1人のオペレータBのボタンが強調表示されている。
【0038】
図12に、オペレータBが選択された場合に、表示画面24に表示される画像を示す。1人のオペレータBが同一種別の作業を異なる時期に行った時の累積損傷度の複数の分布が、並んで画像として表示されている。
図10に示された例では、左上、右上、左下、右下の画像は、それぞれ2012年5月、2012年9月、2013年1月、及び2013年3月の作業時に収集されたデータに基づいて算出された累積損傷度を示している。
【0039】
図12に示された画像から、オペレータBの操作による累積損傷度が、経験を積むごとに低下していることがわかる。このように、オペレータの運転技術の向上を、定量的に、かつ視覚的に把握することができる。
【0040】
図13に、
図5Aの状態において、運転状況のクラスとして「機体」が選択された場合に、表示画面24に表示される画像を示す。機体の一覧、及び決定ボタンが表示される。利用者は、表示すべき複数の機体のボタンを選択した後、決定ボタンをタップする。
図13では、機体A、機体B、及び機体Cが選択された例を示している。選択された3台の機体のボタンが強調表示されている。
【0041】
図14に、機体A、機体B、及び機体Cが選択された場合に、表示画面24に表示される画像を示す。機体A、機体B、及び機体Cの部品、例えばブームの余寿命の分布が、並んで画像として表示されている。ここで、「余寿命」とは、現時点から破壊に至るまでの予想稼働時間を意味する。
図14において、余寿命が相対的に短い部分が、相対的に長い部分よりも濃く表されている。
【0042】
表示画面24に表示された機体A、機体B、及び機体Cが同一の作業現場で、かつ相互に異なる作業を行っている場合、余寿命の長短に応じて、各機体の、最適な作業割り当てを行うことが可能になる。例えば、部品内の最短の余寿命が相対的に短い機体を、相対的に負荷の小さな作業に割り当てることにより、損傷が蓄積されることにより破壊に至るまでの期間を長くすることが期待できる。
【0043】
[実施例3]
次に、
図15〜
図20を参照して、累積損傷度及び余寿命を算出する実施例3による方法について説明する。累積損傷度及び余寿命の算出処理は、管理センタ30(
図1)で行われる。なお、管理センタ30ではなく、ショベルの状態表示装置20で累積損傷度及び余寿命の算出処理を行ってもよい。
【0044】
図15に、ショベルの管理センタ30(
図1)で実行される処理のフローチャートを示す。まず、ステップS1において、処理装置32が、ショベル37(
図1)による作業中に繰り返される一連の動作の少なくとも1周期分の測定値を、アタッチメントの姿勢センサ、アタッチメントの荷重センサ、及び旋回角センサから取得する。これらの測定値と共に、作業現場、作業種別、操作していたオペレータ、作業年月日、機体識別番号等の情報が取得される。
【0045】
旋回角センサから、上部旋回体の旋回角が取得される。アタッチメントの姿勢センサ及び旋回角センサの検出値によって、ショベル37の姿勢が特定される。一連の動作のうち、アタッチメントの姿勢センサ、アタッチメントの荷重センサ、及び旋回角センサで測定値を取得する範囲は、管理センタ30の管理オペレータが設定してもよい。
【0046】
図16A〜
図16Dに、ショベル37で繰り返される一連の動作の一例を示す。
図16A〜
図16Dは、それぞれ一連の動作の1周期内の各工程、具体的には掘削開始、持ち上げ旋回、排土、戻り旋回の各工程中の任意の時点におけるショベル37の姿勢を概略的に示す。ショベル37の運転時には、例えば、一連の動作が繰り返されることにより、
図16A〜
図16Dに示した姿勢が順番に出現する。
【0047】
図17A〜
図17Cに、それぞれショベル37の動作中におけるブームシリンダ内の油圧、アームの先端の高さ、及び旋回角度の時間波形(時間変化)の一例を示す。
図17Aに示した実線L1及びL2は、それぞれブームシリンダ内のロッド側油圧及びボトム側油圧を示す。
図17A〜
図17Cにおいて、時刻t1は、
図16Aに示した掘削開始に対応する。時刻t1からt2までの期間に、掘削が行われる。時刻t2からt3までの期間に、
図16Bに示したブームの持ち上げ及び旋回の動作が行われる。時刻t3からt4までの期間に、
図16Cに示した排土及び戻り旋回の動作が行われる。一連の動作の繰返しに対応して、時刻t1からt4までの波形と近似する波形が周期的に現れる。
【0048】
ステップS2(
図15)において、一連の動作の1周期内で、解析すべき複数の時刻(以下、「解析時刻」という。)を抽出する。一例として、
図17Aに示したように、1周期内から、時刻t1〜t4の4個の解析時刻が抽出される。例えば、シリンダ内の油圧、旋回角度の時間波形のピーク、変曲点等の特徴的な時刻を、解析時刻として抽出する。抽出する解析時刻の個数を多くすると、解析精度が向上するが、解析に要する計算時間は長くなる。処理装置32(
図1)が、
図17A〜
図17Cに示した時間波形に基づいて解析時刻を自動的に抽出するようにしてもよいし、オペレータが時間波形を観察して解析時刻を決定し、入力装置35(
図1)から解析時刻を入力するようにしてもよい。
【0049】
ステップS3(
図15)において、解析時刻の各々において、解析モデルを用い、ブー
ム、アーム等の部品の各々に加わっている応力の分布を算出する。応力の分布は、解析時刻ごとに決定されているショベルの特定の姿勢に基づいて計算される。すなわち、繰り返される一連の動作の1周期内に現れる種々のショベルの姿勢ごとに、ショベルの部品に加わっている荷重に基づいて、応力の分布を算出する。応力の分布の算出には、例えば有限要素法等の数値解析手法を適用することができる。このとき、ショベルの姿勢及びショベルの部品に加わる荷重が境界条件として用いられる。ここで、荷重はベクトルで表される。荷重の大きさ及び向きは、油圧シリンダ内の油圧、油圧シリンダの軸方向(アタッチメントの姿勢)、及び旋回角加速度により求まる。旋回角加速度は、旋回角を2回微分することにより算出される。
【0050】
図18に、ある解析時刻においてブームに加わる応力の分布の算出結果を示す。応力は、解析モデルの各要素を構成する節点ごとに算出される。
図18において、応力が相対的に大きな箇所が、相対的に濃い色で示されている。
図18に示したような応力分布の解析結果が、解析時刻ごとに、かつ部品ごとに算出される。
【0051】
図19に、ショベルの部品の1つの評価点Ep(
図18)に加わる応力の時間波形の一例を示す。解析時刻t1〜t4の各々において応力が算出されている。
図19に示した応力の時間波形は、ブーム、アーム、バケット等の部品ごとに、複数の評価点(有限要素法を用いた場合には、複数の節点)について求められる。
【0052】
ステップS4(
図15)において、各部品の評価点ごとに、累積損傷度を算出する。これにより、部品内における累積損傷度の分布が得られる。累積損傷度は、応力の時間変化から抽出される応力の極値に基づいて算出される。以下、累積損傷度を算出する方法の一例について説明する。まず、
図19に示した応力の時間波形の極大値と極小値とを検出する。極大値と極小値とに基づいて、応力が変動する範囲である応力範囲Δσを求めるとともに、応力範囲Δσごとの出現頻度を求める。応力範囲Δσiの出現頻度をniで表す。
【0053】
図20に、S−N線図の一例を示す。例えば、
図20に示したS−N線図では、応力範囲Δσiの疲労寿命(破断繰返し回数)がNi回である。累積疲労損傷則(別名、線形被害則)により、累積損傷度Dは、以下の式で表される。
【数1】
【0054】
ステップS5(
図15)において、ステップS4で算出された累積損傷度の算出値の、想定値に対する相対値(以下、単に「相対値」という。)を求める。累積損傷度の算出値が、累積損傷度の想定値と等しいとき、その相対値は「1」である。「累積損傷度の想定値」とは、部品の保証寿命(予め決められている目標とする寿命)から逆算した1周期あたりの累積損傷度を意味する。すなわち、1周期あたりの累積損傷度の算出値が、累積損傷度の想定値と等しい場合には、累積損傷度を算出したときと同一の動作を継続すると、保証寿命まで疲労破壊が生じることなく、部品を使用することができる。累積損傷度の算出値が想定値を超えている場合、想定値を超えた累積損傷度が蓄積された部品は、保証寿命に到達する前に疲労破壊に至る危険性が高いと判断される。
【0055】
例えば、部品の保証寿命をTg(時間)とし、一連の動作の1周期あたりの平均時間をTp(時間)とすると、保証される繰り返し回数は、Tg/Tpで表される。累積損傷度の想定値は、この逆数、すなわちTp/Tgで表される。
【0056】
ステップS6(
図15)において、部品の余寿命の分布を算出する。以下、余寿命の算出方法について説明する。管理センタ30(
図1)は、管理対象のショベル37の機体ごと、及び部品ごとに、機体の稼働開始時点から現時点までの累積損傷度の算出値の総和を算出する。今回のデータ収集の対象となる動作を開始するまでの過去の累積損傷度の総和は、記憶装置33(
図1)に記憶されている。ショベルの部品の、ある箇所の累積損傷度の算出値の総和が1になると、その箇所で破断が生じる。1から累積損傷度の算出値の総和を減算することにより、余寿命が求まる。
【0057】
ステップS7(
図15)において、累積損傷度の算出値、及び累積損傷度の相対値が、作業現場、作業種別、操作していたオペレータ、作業年月日、機体識別番号等の情報と関連付けられて、記憶装置33(
図1)に記憶される。さらに、余寿命が、機体識別番号と関連付けられて、記憶装置33(
図1)に記憶される。
【0058】
管理センタ30は、ショベルの状態表示装置20(
図1)からのコマンドに応じて、要求されたデータを記憶装置33から読み出し、ショベルの状態表示装置20に送信する。
【0059】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。