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前記光電変換部は、一導電型結晶シリコン基板の一主面上に、シリコン系薄膜および透明電極層をこの順に有し、前記透明電極層上に前記集電極を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池。
前記絶縁層形成工程において、硬化性透明樹脂を含む塗布液を、前記光電変換部の一主面上の略全面に塗布した後、前記塗布液を硬化させることにより前記絶縁層を形成させる、請求項7または8に記載の太陽電池の製造方法。
前記光電変換部は、一導電型結晶シリコン基板の一主面上に、シリコン系薄膜および透明電極層をこの順に有し、前記透明電極層上に前記集電極が形成される、請求項8〜11のいずれか1項に記載の太陽電池の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1に模式的に示すように、本発明の太陽電池100は、光電変換部50の一主面側の表面上に凹凸構造を有し、該光電変換部の一主面上に集電極70を備える。集電極70は、光電変換部50側から順に、第一導電層71と第二導電層72とを含む。第一導電層71と第二導電層72との間には、開口部を有する絶縁層9が形成されている。第二導電層72の一部は、絶縁層9の開口部9hを介して、第一導電層71に導通されている。また前記絶縁層は、前記光電変換部の第一導電層非形成領域の略全面に形成されている。
【0030】
前記第一導電層は、前記第二導電層側の表面に凹凸形状を有し、前記凹凸形状の高低差H1は、前記光電変換部の一主面側表面の凹凸構造の高低差H0より大きい。第一導電層71は、光電変換部50の耐熱温度よりも低温の熱流動開始温度T
1を有する、低融点材料を含むことが好ましい。熱流動開始温度T
1は、例えば250℃以下である。
【0031】
以下、本発明の一実施形態であるヘテロ接合結晶シリコン太陽電池(以下、「ヘテロ接合太陽電池」と記載する場合がある)を例として、本発明をより詳細に説明する。ヘテロ接合太陽電池は、一導電型の単結晶シリコン基板の表面に、単結晶シリコンとはバンドギャップの異なるシリコン系薄膜を有することで、拡散電位が形成された結晶シリコン系太陽電池である。シリコン系薄膜としては非晶質のものが好ましい。中でも、拡散電位を形成するための導電型非晶質シリコン系薄膜と結晶シリコン基板の間に、薄い真性の非晶質シリコン層を介在させたものは、変換効率の最も高い結晶シリコン太陽電池の形態の一つとして知られている。
【0032】
図2は、本発明の一実施形態に係る結晶シリコン系太陽電池の模式的断面図である。結晶シリコン系太陽電池101は、光電変換部50として、一導電型単結晶シリコン基板1の一方の面(光入射側の面)に、導電型シリコン系薄膜3aおよび光入射側透明電極層6aをこの順に有する。一導電型単結晶シリコン基板1の他方の面(光入射側の面)には、導電型シリコン系薄膜3bおよび裏面側透明電極層6bをこの順に有することが好ましい。光電変換部50表面の光入射側透明電極層6a上には、第一導電層71および第二導電層72を含む集電極70が形成されている。第一導電層71と第二導電層72との間には開口部を有する絶縁層9が形成されている。
【0033】
一導電型単結晶シリコン基板1と導電型シリコン系薄膜3a,3bとの間には、真性シリコン系薄膜2a,2bを有することが好ましい。裏面側透明電極層6b上には裏面金属電極8を有することが好ましい。
【0034】
まず、本発明の結晶シリコン系太陽電池における、一導電型単結晶シリコン基板1について説明する。一般的に単結晶シリコン基板は、導電性を持たせるために、シリコンに対して電荷を供給する不純物を含有している。単結晶シリコン基板は、シリコン原子に電子を導入するための原子(例えばリン)を含有させたn型と、シリコン原子に正孔を導入する原子(例えばボロン)を含有させたp型がある。すなわち、本発明における「一導電型」とは、n型またはp型のどちらか一方であることを意味する。
【0035】
ヘテロ接合太陽電池では、単結晶シリコン基板へ入射した光が最も多く吸収される入射側のへテロ接合を逆接合として強い電場を設けることで、電子・正孔対を効率的に分離回収することができる。そのため、光入射側のヘテロ接合は逆接合であることが好ましい。一方で、正孔と電子とを比較した場合、有効質量および散乱断面積の小さい電子の方が、一般的に移動度が大きい。以上の観点から、ヘテロ接合太陽電池に用いられる単結晶シリコン基板1は、n型単結晶シリコン基板であることが好ましい。単結晶シリコン基板1は、光閉じ込めの観点から、表面にテクスチャ構造を有することが好ましい。
【0036】
テクスチャが形成された一導電型単結晶シリコン基板1の表面に、シリコン系薄膜が製膜される。シリコン系薄膜の製膜方法としては、プラズマCVD法が好ましい。プラズマCVD法によるシリコン系薄膜の形成条件としては、基板温度100〜300℃、圧力20〜2600Pa、高周波パワー密度0.004〜0.8W/cm
2が好ましく用いられる。シリコン系薄膜の形成に使用される原料ガスとしては、SiH
4、Si
2H
6等のシリコン含有ガス、またはシリコン系ガスとH
2との混合ガスが好ましく用いられる。
【0037】
導電型シリコン系薄膜3は、一導電型または逆導電型のシリコン系薄膜である。例えば、一導電型単結晶シリコン基板1としてn型が用いられる場合、一導電型シリコン系薄膜、および逆導電型シリコン系薄膜は、各々n型、およびp型となる。p型またはn型シリコン系薄膜を形成するためのドーパントガスとしては、B
2H
6またはPH
3等が好ましく用いられる。また、PやBといった不純物の添加量は微量でよいため、予めSiH
4やH
2で希釈された混合ガスを用いることが好ましい。導電型シリコン系薄膜の製膜時に、CH
4、CO
2、NH
3、GeH
4等の異種元素を含むガスを添加して、シリコン系薄膜を合金化することにより、シリコン系薄膜のエネルギーギャップを変更することもできる。
【0038】
シリコン系薄膜としては、非晶質シリコン薄膜、微結晶シリコン(非晶質シリコンと結晶質シリコンとを含む薄膜)等が挙げられる。中でも非晶質シリコン系薄膜を用いることが好ましい。例えば、一導電型単結晶シリコン基板1としてn型単結晶シリコン基板を用いた場合の光電変換部50の好適な構成としては、透明電極層6a/p型非晶質シリコン系薄膜3a/i型非晶質シリコン系薄膜2a/n型単結晶シリコン基板1/i型非晶質シリコン系薄膜2b/n型非晶質シリコン系薄膜3b/透明電極層6bの順の積層構成が挙げられる。この場合、前述の理由から、p層側を光入射面とすることが好ましい。
【0039】
真性シリコン系薄膜2a,2bとしては、シリコンと水素で構成されるi型水素化非晶質シリコンが好ましい。単結晶シリコン基板上に、CVD法によってi型水素化非晶質シリコンが製膜されると、単結晶シリコン基板への不純物拡散を抑えつつ表面パッシベーションを有効に行うことができる。また、膜中の水素量を変化させることで、エネルギーギャップにキャリア回収を行う上で有効なプロファイルを持たせることができる。
【0040】
p型シリコン系薄膜は、p型水素化非晶質シリコン層、p型非晶質シリコンカーバイド層、またはp型非晶質シリコンオキサイド層であることが好ましい。不純物拡散の抑制や直列抵抗低下の観点ではp型水素化非晶質シリコン層が好ましい。一方、p型非晶質シリコンカーバイド層およびp型非晶質シリコンオキサイド層は、ワイドギャップの低屈折率層であるため、光学的なロスを低減できる点において好ましい。
【0041】
ヘテロ接合太陽電池101の光電変換部50は、導電型シリコン系薄膜3a,3b上に、透明電極層6a,6bを備えることが好ましい。透明電極層は、透明電極層形成工程により形成される。透明電極層6a,6bは、導電性酸化物を主成分とする。導電性酸化物としては、例えば、酸化亜鉛や酸化インジウム、酸化錫を単独または混合して用いることができる。導電性、光学特性、および長期信頼性の観点から、酸化インジウムを含んだインジウム系酸化物が好ましく、中でも酸化インジウム錫(ITO)を主成分とするものがより好ましく用いられる。ここで「主成分とする」とは、含有量が50重量%より多いことを意味し、70重量%以上が好ましく、90%重量以上がより好ましい。透明電極層は、単層でもよく、複数の層からなる積層構造でもよい。
【0042】
透明電極層には、ドーピング剤を添加することができる。例えば、透明電極層として酸化亜鉛が用いられる場合、ドーピング剤としては、アルミニウムやガリウム、ホウ素、ケイ素、炭素等が挙げられる。透明電極層として酸化インジウムが用いられる場合、ドーピング剤としては、亜鉛や錫、チタン、タングステン、モリブデン、ケイ素等が挙げられる。透明電極層として酸化錫が用いられる場合、ドーピング剤としては、フッ素等が挙げられる。
【0043】
ドーピング剤は、光入射側透明電極層6aおよび裏面側透明電極層6bの一方もしくは両方に添加することができる。特に、光入射側透明電極層6aにドーピング剤を添加することが好ましい。光入射側透明電極層6aにドーピング剤を添加することで、透明電極層自体が低抵抗化されるとともに、透明電極層6aと集電極70との間での抵抗損を抑制することができる。
【0044】
光入射側透明電極層6aの膜厚は、透明性、導電性、および光反射低減の観点から、10nm以上140nm以下であることが好ましい。透明電極層6aの役割は、集電極70へのキャリアの輸送であり、そのために必要な導電性があればよく、膜厚は10nm以上であることが好ましい。膜厚を140nm以下にすることにより、透明電極層6aでの吸収ロスが小さく、透過率の低下に伴う光電変換効率の低下を抑制することができる。また、透明電極層6aの膜厚が上記範囲内であれば、透明電極層内のキャリア濃度上昇も防ぐことができるため、赤外域の透過率低下に伴う光電変換効率の低下も抑制される。
【0045】
透明電極層の製膜方法は、特に限定されないが、スパッタ法等の物理気相堆積法や、有機金属化合物と酸素または水との反応を利用した化学気相堆積(MOCVD)法等が好ましい。いずれの製膜方法においても、熱やプラズマ放電によるエネルギーを利用することもできる。
【0046】
透明電極層作製時の基板温度は、適宜設定される。例えば、シリコン系薄膜として非晶質シリコン系薄膜が用いられる場合、200℃以下が好ましい。基板温度を200℃以下とすることにより、非晶質シリコン層からの水素の脱離や、それに伴うシリコン原子へのダングリングボンドの発生を抑制でき、結果として変換効率を向上させることができる。
【0047】
裏面側透明電極層6b上には、裏面金属電極8が形成されることが好ましい。裏面金属電極8としては、近赤外から赤外域の反射率が高く、かつ導電性や化学的安定性が高い材料を用いることが望ましい。このような特性を満たす材料としては、銀やアルミニウム等が挙げられる。裏面金属電極層の製膜方法は、特に限定されないが、スパッタ法や真空蒸着法等の物理気相堆積法や、スクリーン印刷等の印刷法等が適用可能である。
【0048】
上記のようにして、本発明の光電変換部が形成される。前記光電変換部は、一主面側の表面に凹凸構造を有する。ここで、本発明においては、光電変換部の一主面側表面の「凹凸構造」とは、0.01μm以上の高低差を有するものを意味する。この際、該凹凸構造は、0.01〜20μmが好ましく0.5〜10μmがより好ましい。
【0049】
例えば、
図2に示すようにヘテロ接合太陽電池を用いる場合、一導電型単結晶シリコン基板の一主面側表面上にテクスチャを形成することにより、光電変換部の一主面側表面に凹凸構造を形成することが好ましい。この場合、1μm〜10μm程度が好ましい。また例えば、薄膜シリコン系太陽電池などを用いる場合、後述のように、pin接合上に透明電極層が形成されたものなどが用いられており、前記透明電極層の表面に凹凸を形成することにより、光電変換部の一主面側表面上に凹凸構造を形成することが好ましい。この場合、透明電極層の凹凸構造としては、0.04μm〜0.5μm程度が好ましい。
【0050】
なお、本発明においては、光電変換部の一主面側表面上だけでなく、一主面側とは反対面側の表面上にも凹凸構造を有していてもよい。例えば、ヘテロ接合太陽電池の場合、光電変換部の一主面側と裏面側に凹凸構造を有することにより、より光閉じ込め効果が期待できるため好ましい。
【0051】
透明電極層6a上に、集電極70が形成される。集電極70は、第一導電層71と、第二導電層72とを含む。前記第一導電層は、前記第二導電層側の表面に凹凸形状を有する。前記凹凸形状の高低差H1は、前記光電変換部の一主面側表面の凹凸の高低差H0より大きい。第一導電層71は、光電変換部の耐熱温度よりも低温の熱流動開始温度T
1を有する、低融点材料を含むことが好ましい。
【0052】
本実施形態においては、第一導電層71と第二導電層72との間に開口部を有する絶縁層9が形成される。本発明の集電極70において、第二導電層72の一部は、第一導電層71に導通されている。ここで「一部が導通されている」とは、典型的には絶縁層に開口部が形成され、その開口部に第二導電層の材料が充填されていることによって、導通されている状態であり、また絶縁層の一部の膜厚が、数nm程度と非常に薄くなる(すなわち局所的に薄い膜厚の領域が形成される)ことによって、第二導電層72が第一導電層71に導通しているものも含む。例えば、第一導電層71の低融点材料がアルミニウム等の金属材料である場合、その表面に形成された酸化被膜(絶縁層に相当)を介して第一導電層71と第二導電層との間が導通されている状態が挙げられる。
【0053】
絶縁層9に、第一導電層と第二導電層とを導通させるための開口部を形成する方法としては、上述のように、第一導電層の表面凹凸高低差H1を光電変換部の表面凹凸高低差H0も大きくして絶縁層製膜時に開口部を形成する方法が好ましく用いられる。一実施形態では、第一導電層中の導電性材料として低融点材料を用い、該低融点材料を熱流動させることによって、その上に形成された絶縁層に開口部を形成する方法が挙げられる。
【0054】
第一導電層中の低融点材料の熱流動により開口を形成する方法としては、低融点材料を含有する第一導電層71上に絶縁層9を形成後、低融点材料の熱流動開始温度T
1以上に加熱(アニール)して第一導電層の表面形状に変化を生じさせ、その上に形成されている絶縁層9に開口(き裂)を形成する方法;あるいは、低融点材料を含有する第一導電層71上に絶縁層9を形成する際にT
1以上に加熱することにより、低融点材料を熱流動させ、絶縁層の形成と同時に開口を形成する方法が挙げられる。
【0055】
以下、第一導電層中の低融点材料の熱流動を利用して、絶縁層に開口を形成する方法を図面に基づいて説明する。なお、本発明においては、絶縁層に開口部を形成する方法は以下に限定されない。
【0056】
図3は、太陽電池の光電変換部50上への集電極70の形成方法の一実施形態を示す工程概念図である。この実施形態では、まず、光電変換部50が準備される(光電変換部準備工程、
図3(A))。光電変換部は、一主面側の表面に凹凸構造を有する。例えば、ヘテロ接合太陽電池の場合は、前述のように、一導電型シリコン基板上に、シリコン系薄膜および透明電極層を備える光電変換部が準備される。上述のように、ヘテロ接合太陽電池を用いた場合、一導電型シリコン基板の表面に凹凸構造を形成することにより、光電変換部の一主面側表面に凹凸構造を形成することが好ましい。
【0057】
光電変換部の一主面上に、低融点材料711を含む、第一導電層71が形成される(第一導電層形成工程、
図3(B))。本発明の第一導電層71は、第二導電層側の表面に、凹凸高低差H1の凹凸形状を有し、前記光電変換部の一主面側表面の凹凸高低差をH0としたとき、H0<H1を満たす。
【0058】
ここで、「凹凸高低差」とは、例えば、本発明のように凹凸構造を有する光電変換部上に形成された凹凸形状を有する第一導電層等の場合、第一導電層71の表面上を、触針段差計にて4mmの範囲で測定した際の隣接する凹凸構造のそれぞれの凸部の頂点T
xとT
yとを結んだ線と、両頂点間の凹部の谷V
1との距離で定義される値の平均値を指す。平均とは距離4mmの測定範囲において観察した各凹凸の平均値を意味する。
図5は凹凸の高低差の概念図を記したものである。
【0059】
なお、光電変換部の表面の凹凸高低差も上記の第一導電層と同様に求めることができる。また、前記光電変換部の表面の凹凸高低差は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて基板の断面形状を観察する方法、あるいは原子力顕微鏡やレーザー顕微鏡を用いて基板の表面形状を測定することなどによって特定することもできる。
【0060】
光電変換部の一主面側には、絶縁層9が形成される(絶縁層形成工程、
図3(C))。絶縁層9は、第一導電層71上と、光電変換部50の第一導電層71が形成されていない領域(第一導電層非形成領域)上の略全面に形成される。特に、ヘテロ接合太陽電池のように、光電変換部50の表面に透明電極層が形成されている場合は、第一導電層非形成領域上の略全面にも絶縁層9が形成されることが好ましく、全面に形成されることがより好ましい。
【0061】
絶縁層が形成された後、加熱によるアニール処理が行われる(アニール工程、
図3(D))。アニール処理により、第一導電層71がアニール温度T
aに加熱され、低融点材料が熱流動することによって表面形状が変化し、それに伴って第一導電層71上に形成された絶縁層9に変形が生じる。絶縁層9の変形は、典型的には、絶縁層への開口部9hの形成である。開口部9hは、例えばき裂状に形成される。
【0062】
絶縁層に開口部を形成した後に、めっき法により第二導電層72が形成される(めっき工程、
図3(E))。第一導電層71は絶縁層9により被覆されているが、絶縁層9に開口部9hが形成された部分では、第一導電層71が露出した状態である。そのため、第一導電層がめっき液に曝されることとなり、この開口部9hを起点として金属の析出が可能となる。このような方法によれば、集電極の形状に対応する開口部を有するレジスト材料層等を設けずとも、集電極の形状に対応する第二導電層をめっき法により、容易に形成することができる。
【0063】
第一導電層中の低融点材料の熱流動により開口部を形成する方法としては、低融点材料を含有する第一導電層71上に絶縁層9を形成後、低融点材料の熱流動開始温度T
1以上に加熱(アニール)して第一導電層の表面形状に変化が生じさせ、その上に形成されている絶縁層9に開口部(き裂)を形成する方法;あるいは、低融点材料を含有する第一導電層71上に絶縁層9を形成する際にT
1以上に加熱することにより、低融点材料を熱流動させ、絶縁層の形成と同時に開口部を形成する方法が挙げられる。
【0064】
(第一導電層)
第一導電層71は、めっき法により第二導電層が形成される際の導電性下地層として機能する層である。そのため、第一導電層は電解めっきの下地層として機能し得る程度の導電性を有していればよい。なお、本明細書においては、体積抵抗率が10
−2Ω・cm以下であれば導電性であると定義する。また、体積抵抗率が、10
2Ω・cm以上であれば、絶縁性であると定義する。
【0065】
前記第一導電層は、前記第二導電層側の表面に凹凸形状を有し、前記凹凸形状の高低差H1は、前記光電変換部の一主面側表面の凹凸の高低差H0より大きい。これにより、後述のように、第一導電層上の絶縁層に容易に開口部を形成することが可能となる。
【0066】
ここで、特許文献5のように、フラットな基板上に凹凸構造を有する導電性シードを形成することは従来から行われていたが、本発明者らの検討によれば、凹凸構造を有する基板(光電変換部)上に、第一導電層を形成し、この上にめっきにより第二導電層を形成する場合、該光電変換部の凹凸構造の高低差よりも第一導電層の高低差を大きくすることが重要であることが明らかとなった。
【0067】
前記第一導電層の凹凸高低差H1は15μm以上が好ましく、18μm以上がさらに好ましい。一方、第一導電層の凹凸高低差H1はコスト的な観点から30μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましい。かかる観点から、第一導電層の凹凸高低差H1は15μm〜30μmが好ましく、18μm〜25μmがより好ましい。また、ある凸部と、隣り合う凸部の距離(凸部のピーク間距離)は、40〜120μmが好ましく、40〜80μmがより好ましく、40〜60μmがさらに好ましい。
【0068】
本発明においては、後述のように第一導電層の凸部部分から、絶縁層に開口部が形成されやすく、まためっきにより第二導電層を形成する場合、該開口部を中心に等方的にめっきが広がるため、凸部のピーク間距離を上記範囲にすることにより、第二導電層の形成領域を調整することができ、射光損をより抑制できると考えられる。凸部のピーク間距離は、第一導電層を形成する際、スクリーン版のメッシュ開口幅などを調整することにより適宜調整することができる。
【0069】
第一導電層71の膜厚は、コスト的な観点から20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。一方、第一導電層71のライン抵抗を所望の範囲とする観点から、膜厚は0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。
【0070】
第一導電層71は、導電性材料を含む。導電性材料は、熱流動開始温度T
1の低融点材料を含むことが好ましい。これにより、第一導電層のほぼ全面が絶縁層で覆われた場合であっても、第一導電層上の絶縁層に容易に開口部を形成することができる。熱流動開始温度とは、加熱により材料が熱流動を生じ、低融点材料を含む層の表面形状が変化する温度であり、典型的には融点である。高分子材料やガラスでは、融点よりも低温で材料が軟化して熱流動を生じる場合がある。このような材料では、熱流動開始温度=軟化点と定義できる。軟化点とは、粘度が4.5×10
6Pa・sとなる温度である(ガラスの軟化点の定義に同じ)。
【0071】
低融点材料は、アニール処理において熱流動を生じ、第一導電層71の表面形状に変化を生じさせるものであることが好ましい。そのため、低融点材料の熱流動開始温度T
1は、アニール温度T
aよりも低温であることが好ましい。また、本発明においては、光電変換部50の耐熱温度よりも低温のアニール温度T
aでアニール処理が行われることが好ましい。したがって、低融点材料の熱流動開始温度T
1は、光電変換部の耐熱温度よりも低温であることが好ましい。
【0072】
光電変換部の耐熱温度とは、当該光電変換部を備える太陽電池(「太陽電池セル」または「セル」ともいう)あるいは太陽電池セルを用いて作製した太陽電池モジュールの特性が不可逆的に低下する温度である。例えば、
図2に示すヘテロ接合太陽電池101では、光電変換部50を構成する単結晶シリコン基板1は、500℃以上の高温に加熱された場合でも特性変化を生じ難いが、透明電極層6や非晶質シリコン系薄膜2,3は250℃程度に加熱されると、熱劣化を生じたり、ドープ不純物の拡散を生じ、太陽電池特性の不可逆的な低下を生じたりする場合がある。そのため、ヘテロ接合太陽電池においては、第一導電層71は、熱流動開始温度T
1が250℃以下の低融点材料を含むことが好ましい。
【0073】
低融点材料の熱流動開始温度T
1の下限は特に限定されない。アニール処理時における第一導電層の表面形状の変化量を大きくして、絶縁層9に開口部9hを容易に形成する観点からは、第一導電層の形成工程において、低融点材料は熱流動を生じないことが好ましい。例えば、塗布や印刷により第一導電層が形成される場合は、乾燥のために加熱が行われることがある。この場合は、低融点材料の熱流動開始温度T
1は、第一導電層の乾燥のための加熱温度よりも高温であることが好ましい。かかる観点から、低融点材料の熱流動開始温度T
1は、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。
【0074】
低融点材料は、熱流動開始温度T
1が上記範囲であれば、有機物であっても、無機物であってもよい。低融点材料は、電気的には導電性であっても、絶縁性でも良いが、導電性を有する金属材料であることが望ましい。低融点材料が金属材料であれば、第一導電層の抵抗値を小さくできるため、電気めっきにより第二導電層が形成される場合に、第二導電層の膜厚の均一性を高めることができる。また、低融点材料が金属材料であれば、光電変換部50と集電極70との間の接触抵抗を低下させることも可能となる。
【0075】
低融点材料としては、低融点金属材料の単体もしくは合金、複数の低融点金属材料の混合物を好適に用いることができる。低融点金属材料としては、例えば、インジウムやビスマス、ガリウム等が挙げられる。
【0076】
第一導電層71は、導電性材料として、上記の低融点材料に加えて、低融点材料よりも相対的に高温の熱流動開始温度T
2を有する高融点材料を含有することが好ましい。第一導電層71が高融点材料を有することで、第一導電層と第二導電層とを効率よく導通させることができ、太陽電池の変換効率を向上させることができる。例えば、低融点材料として表面エネルギーの大きい材料が用いられる場合、アニール処理により第一導電層71が高温に曝されて、低融点材料が液相状態になると、
図6に概念的に示すように、低融点材料の粒子が集合して粗大な粒状となり、第一導電層71に断線を生じる場合がある。これに対して、高融点材料はアニール処理時の加熱によっても液相状態とならないため、第一導電層形成材料中に高融点材料を含有することによって、
図6に示すような低融点材料の粗大化による第一導電層の断線が抑制され得る。
【0077】
高融点材料の熱流動開始温度T
2は、アニール温度T
aよりも高いことが好ましい。すなわち、第一導電層71が低融点材料および高融点材料を含有する場合、低融点材料の熱流動開始温度T
1、高融点材料の熱流動開始温度T
2、およびアニール処理におけるアニール温度T
aは、T
1<T
a<T
2を満たすことが好ましい。高融点材料は、絶縁性材料であっても導電性材料であってもよいが、第一導電層の抵抗をより小さくする観点から導電性材料が好ましい。また、低融点材料の導電性が低い場合は、高融点材料として導電性の高い材料を用いることにより、第一導電層全体としての抵抗を小さくすることができる。導電性の高融点材料としては、例えば、銀、アルミニウム、銅などの金属材料の単体もしくは、複数の金属材料を好ましく用いることができる。
【0078】
第一導電層71が低融点材料と高融点材料とを含有する場合、その含有比は、上記のような低融点材料粗大化による断線の抑止や、第一導電層の導電性、絶縁層への開口部の形成容易性(第二導電層の金属析出の起点数の増大)等の観点から、適宜に調整される。その最適値は、用いられる材料や粒径の組合せに応じて異なるが、例えば、低融点材料と高融点材料の重量比(低融点材料:高融点材料)は、5:95〜67:33の範囲である。低融点材料:高融点材料の重量比は、10:90〜50:50がより好ましく、15:85〜35:65がさらに好ましい。
【0079】
第一導電層71の材料として、金属粒子等の粒子状低融点材料が用いられる場合、アニール処理による絶縁層への開口部の形成を容易とする観点から、低融点材料の粒径D
Lは、第一導電層の膜厚dの1/20以上であることが好ましく、1/10以上であることがより好ましい。低融点材料の粒径D
Lは、0.25μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましい。また、第一導電層71が、スクリーン印刷等の印刷法により形成される場合、粒子の粒径は、スクリーン版のメッシュサイズ等に応じて適宜に設定され得る。例えば、粒径は、メッシュサイズより小さいことが好ましく、メッシュサイズの1/2以下がより好ましい。なお、粒子が非球形の場合、粒径は、粒子の投影面積と等面積の円の直径(投影面積円相当径、Heywood径)により定義される。
【0080】
低融点材料の粒子の形状は特に限定されないが、扁平状等の非球形が好ましい。また、球形の粒子を焼結等の手法により結合させて非球形としたものも好ましく用いられる。一般に、金属粒子が液相状態となると、表面エネルギーを小さくするために、表面形状が球形となりやすい。アニール処理前の第一導電層の低融点材料が非球形であれば、アニール処理により熱流動開始温度T
1以上に加熱されると、粒子が球形に近付くため、第一導電層の表面形状の変化量がより大きくなる。そのため、第一導電層71上の絶縁層9への開口部の形成が容易となる。
【0081】
前述のごとく、第一導電層71は導電性であり、体積抵抗率が10
−2Ω・cm以下であればよい。第一導電層71の体積抵抗率は、10
−4Ω・cm以下であることが好ましい。第一導電層が低融点材料のみを有する場合は、低融点材料が導電性を有していればよい。第一導電層が、低融点材料および高融点材料を含有する場合は、低融点材料および高融点材料のうち、少なくともいずれか一方が導電性を有していればよい。例えば、低融点材料/高融点材料の組合せとしては、絶縁性/導電性、導電性/絶縁性、導電性/導電性が挙げられるが、第一導電層をより低抵抗とするためには、低融点材料および高融点材料の双方が導電性を有する材料であることが好ましい。
【0082】
第一導電層71の材料として上記のような低融点材料と高融点材料との組合せ以外に、材料の大きさ(例えば、粒径)等を調整することにより、アニール処理時の加熱による第一導電層の断線を抑制し、変換効率を向上させることも可能である。例えば、銀、銅、金等の高い融点を有する材料も、粒径が1μm以下の微粒子であれば、融点よりも低温の200℃程度あるいはそれ以下の温度T
1’で焼結ネッキング(微粒子の融着)を生じるため、本発明の「低融点材料」として用いることができる。このような焼結ネッキングを生じる材料は、焼結ネッキング開始温度T
1’以上に加熱されると、微粒子の外周部付近に変形が生じるため、第一導電層の表面形状を変化させ、絶縁層9に開口部を形成することができる。また、微粒子が焼結ネッキング開始温度以上に加熱された場合であっても、融点T
2’未満の温度であれば微粒子は固相状態を維持するため、
図6に示すような材料の粗大化による断線が生じ難い。すなわち、金属微粒子等の焼結ネッキングを生じる材料は、本発明における「低融点材料」でありながら、「高融点材料」としての側面も有しているといえる。
【0083】
このような焼結ネッキングを生じる材料では、焼結ネッキング開始温度T
1’=熱流動開始温度T
1と定義できる。
図7は、焼結ネッキング開始温度について説明するための図である。
図7(A)は、焼結前の粒子を模式的に示す平面図である。焼結前であることから、粒子は互いに点で接触している。
図7(B)および
図7(C)は、焼結が開始した後の粒子を、各粒子の中心を通る断面で切ったときの様子を模式的に示す断面図である。
図7(B)は焼結開始後(焼結初期段階)、
図7(C)は、(B)から焼結が進行した状態を示している。
図7(B)において、粒子A(半径r
A)と粒子B(半径r
B)との粒界は長さa
ABの点線で示されている。
【0084】
焼結ネッキング開始温度T
1’は、r
Aとr
Bの大きい方の値max(r
A,r
B)と、粒界の長さa
ABとの比、a
AB/max(r
A,r
B)が、0.1以上となるときの温度で定義される。すなわち、少なくとも一対の粒子のa
AB/max(r
A,r
B)が0.1以上となる温度を焼結ネッキング開始温度という。なお、
図7では単純化のために、粒子を球形として示しているが、粒子が球形でない場合は、粒界近傍における粒子の曲率半径を粒子の半径とみなす。また、粒界近傍における粒子の曲率半径が場所によって異なる場合は、測定点の中で最も大きな曲率半径を、その粒子の半径とみなす。例えば、
図8(A)に示すように、焼結を生じた一対の微粒子A,B間には、長さa
ABの粒界が形成されている。この場合、粒子Aの粒界近傍の形状は、点線で示された仮想円Aの弧で近似される。一方、粒子Bの粒界近傍は、一方が破線で示された仮想円B
1の弧で近似され、他方が実線で示された仮想円B
2の弧で近似される。
図8(B)に示されるように、r
B2>r
B1であるため、r
B2を粒子Bの半径r
Bとみなす。なお、上記の仮想円は、断面もしくは表面の観察像の白黒2値化処理により境界を定め、粒界近傍の境界の座標に基づいて最小二乗法により中心座標および半径を算出する方法により、決定できる。なお、上記の定義により焼結ネッキング開始温度を厳密に測定することが困難な場合は、微粒子を含有する第一導電層を形成し、加熱により絶縁層に開口部(き裂)が生じる温度を焼結ネッキング開始温度とみなすことができる。後述するように、絶縁層形成時に加熱が行われる場合は、絶縁層形成時の基板の加熱により開口部(き裂)が生じる温度を焼成ネッキング開始温度とみなすことができる。
【0085】
また、上記のように、第一導電層の導電性材料として、低融点材料を有するもの以外に、例えば、低融点材料を有さないもの(例えば上記高融点材料のみ、など)を用いることもできる。低融点材料を有さない場合であっても、上述のように、本発明においては、光電変換部の一主面側表面の凹凸高低差H0と、第一導電層の凹凸高低差H1がH0<H1を満たすものを使用するため、光電変換部の一主面上において第一導電層非形成領域の略全面を覆い、また第一導電層の少なくとも一部が露出するように絶縁層を形成することにより、第一導電層上の絶縁層に容易に開口部を形成することができる。
【0086】
第一導電層の形成材料には、導電性材料(例えば、低融点材料および/または高融点材料)に加えて、絶縁性材料712を含むことが好ましい。絶縁性材料としては、上記の低融点材料(および高融点材料)に加えて、バインダー樹脂等を含有するペースト等を好ましく用いることができる。また、スクリーン印刷法により形成された第一導電層の導電性を十分向上させるためには、熱処理により第一導電層を硬化させることが望ましい。したがって、ペーストに含まれるバインダー樹脂としては、上記乾燥温度にて硬化させることができる材料を用いることが好ましく、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂等が適用可能である。導電性材料として低融点材料を含むものを用いる場合、バインダー樹脂の硬化とともに低融点材料の形状が変化し、
図3(D)に示すように、アニール処理時に、低融点材料近傍の絶縁層に開口(き裂)が生じやすくなる。なお、バインダー樹脂と導電性の低融点材料の比率は、いわゆるパーコレーションの閾値(導電性が発現する導電性材料含有量に相当する比率の臨界値)以上になるように設定すればよい。
【0087】
ここで、本発明においては、
図4に示すように、光電変換部の一主面側における第一導電層非形成領域における絶縁層として、第一導電層に接する第一絶縁層と、該第一絶縁層の少なくとも一部を覆う第二絶縁層をこの順に有することが好ましい。この際、第一導電層71に含まれる絶縁性材料712の一部が第一導電層近傍に染み出し、該染み出し部分により、第一絶縁層を形成することが好ましい。これにより、第一導電層71と絶縁層の間に空隙が形成されにくく、めっき液から光電変換部をより保護することができる。またこの場合、第一導電層形成工程と同時に第一絶縁層を形成することができるため、生産性の観点から好ましい。
【0088】
この場合、所望の第一絶縁層の幅に応じて、第一導電層に含まれる導電性微粒子710と絶縁性材料712の材料や含有量を適宜調整することにより、第一絶縁層の線幅を容易に所望の範囲にすることが可能となる。例えば、導電性微粒子として粒径が2〜3μm、粘度200〜350Pa・s、絶縁性材料を形成するための材料の含有量が5〜20wt%の塗布材料等を用いることが好ましい。また、前記染み出し部分への導電性微粒子の染み出しを抑制できる観点から導電性微粒子の粒径の下限値は0.25μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましい。
【0089】
なお、本発明における第一導電層とは、光電変換部の表面に平行な方向において、導電性微粒子同士が最も離れて存在し、かつ電気的に導電性を有する領域を意味する。すなわち、導電性微粒子の一部が、前記絶縁性材料とともに、一部染み出した場合であっても、該染み出し部分における導電性微粒子が孤立して電気的に導電性を示さない場合は、第一絶縁層とみなすことができる。
【0090】
「電気的に導電性を示さない」とは、典型的には、該染み出し部分における導電性微粒子が、第一絶縁層に含まれる絶縁性材料により覆われている状態を意味する。遮光損抑制の観点から、第一絶縁層に含まれる導電性微粒子は少ないことが好ましく、第一絶縁層に導電性微粒子が含まれないことがより好ましい。
【0091】
第一導電層71は、インクジェット法、スクリーン印刷法、導線接着法、スプレー法、真空蒸着法、スパッタ法等の公知技術によって作製できる。第一導電層71は、櫛形等の所定形状にパターン化されていることが好ましい。パターン化された第一導電層の形成には、生産性の観点からスクリーン印刷法が適している。スクリーン印刷法では、金属粒子からなる低融点材料を含む印刷ペースト、および集電極のパターン形状に対応した開口パターンを有するスクリーン版を用いて、集電極パターンを印刷する方法が好ましく用いられる。
【0092】
一方、印刷ペーストとして、溶剤を含む材料が用いられる場合には、溶剤を除去するための乾燥工程が必要となる。前述のごとく、この場合の乾燥温度は、低融点材料の熱流動開始温度T
1よりも低温であることが好ましい。乾燥時間は、例えば5分間〜1時間程度で適宜に設定され得る。
【0093】
第一導電層は、複数の層から構成されてもよい。例えば、光電変換部表面の透明電極層との接触抵抗が低い下層と、低融点材料を含む上層からなる積層構造であっても良い。このような構造によれば、透明電極層との接触抵抗の低下に伴う太陽電池の曲線因子向上が期待できる。また、低融点材料含有層と、高融点材料含有層との積層構造とすることにより、第一導電層のさらなる低抵抗化が期待できる。
【0094】
以上、第一導電層が印刷法により形成される場合を中心に説明したが、第一導電層の形成方法は印刷法に限定されるものではない。例えば、第一導電層は、パターン形状に対応したマスクを用いて、蒸着法やスパッタ法により形成されてもよい。
【0095】
(絶縁層)
光電変換部50の一主面側に、絶縁層9が形成される。ここで、第一導電層71が所定のパターン(例えば櫛形)に形成された場合、光電変換部50の表面上には、第一導電層が形成されている第一導電層形成領域と、第一導電層が形成されていない第一導電層非形成領域とが存在する。
【0096】
本発明において、絶縁層9は、光電変換部の一主面側における第一導電層非形成領域の略全面と、第一導電層を覆うように前記第一導電層上にも形成されていることが好ましい。ここで「略全面」とは、第一導電層非形成領域の90%以上が覆われていることを意味する。中でも95%以上がより好ましく、100%すなわち第一導電層非形成領域の全面に形成されていることが特に好ましい。
【0097】
本発明のように、絶縁層が第一導電層非形成領域にも形成されている場合、めっき法により第二導電層が形成される際に、光電変換部をめっき液から化学的および電気的に保護することが可能となる。例えば、ヘテロ接合太陽電池のように光電変換部50の表面に透明電極層が形成されている場合は、透明電極層の表面に絶縁層が形成されることで、透明電極層とめっき液との接触が抑止され、透明電極層上への金属層(第二導電層)の析出を防ぐことができる。また、生産性の観点からも、第一導電層形成領域と第一導電層非形成領域との全体に絶縁層が形成されることがより好ましい。
【0098】
絶縁層9の材料としては、電気的に絶縁性を示す材料が用いられる。また、絶縁層9は、めっき液に対する化学的安定性を有する材料であることが望ましい。めっき液に対する化学的安定性が高い材料を用いることにより、第二導電層形成時のめっき工程中に、絶縁層が溶解しにくく、光電変換部表面へのダメージが生じにくくなる。また、第一導電層非形成領域上にも絶縁層9が形成されるため、絶縁層は、光電変換部50との付着強度が大きいことが好ましい。例えば、ヘテロ接合太陽電池では、絶縁層9は、光電変換部50表面の透明電極層6aとの付着強度が大きいことが好ましい。透明電極層と絶縁層との付着強度を大きくすることにより、めっき工程中に、絶縁層が剥離しにくくなり、透明電極層上への金属の析出を防ぐことができる。
【0099】
絶縁層9には、光吸収が少ない材料を用いることが好ましい。絶縁層9は、光電変換部50の光入射面側に形成されるため、絶縁層による光吸収が小さければ、より多くの光を光電変換部へ取り込むことが可能となる。例えば、絶縁層9が透過率90%以上の十分な透明性を有する場合、絶縁層での光吸収による光学的な損失が小さく、第二導電層形成後に絶縁層を除去することなく、そのまま太陽電池として使用することができる。そのため、太陽電池の製造工程を単純化でき、生産性をより向上させることが可能となる。絶縁層9が除去されることなくそのまま太陽電池として使用される場合、絶縁層9は、透明性に加えて、十分な耐候性、および熱・湿度に対する安定性を有する材料を用いることがより望ましい。
【0100】
絶縁層の材料は、湿式法にて利用可能な塗布材料を好ましく用いることができる。中でもめっき液耐性や透明性の観点からは、ポリシラザン系樹脂やシロキサン系アクリル樹脂等が好ましい。一般的に真空下で製膜される乾式法で製膜する場合に比べて、上記のように湿式法により絶縁層を製膜する場合、大気中で絶縁層を形成することができるため、生産性の観点から好ましい。
【0101】
ここで、本発明における絶縁層の膜厚d1とは、光電変換部の一主面側表面(もしくは第一導電層表面)の凹部の最下点から、絶縁層の最表面の最も離れた距離を意味する。絶縁層9の膜厚d1は、光電変換部の一主面側の第一導電層非形成領域において、光電変換部の表面凹凸の略全面を覆う程度に厚いことが好ましく、前記凹凸を完全に覆う程度に厚いことが好ましい。すなわち、光電変換部の一主面側表面の凹凸高低差H0の最大値H0maxをよりも厚い(H0max<d1を満たす)ことが好ましい。中でも、H0max<d1<H0max+1μmがより好ましい。
【0102】
これにより、後述のように、光電変換部の表面をめっき液からより保護することができる。特に、ヘテロ接合太陽電池など、光電変換部の最表面に透明電極層を有するものを用いる場合、透明電極層をめっき液から保護する観点からより好ましい。また第一導電層の第二導電層側表面の凹凸高低差H1の最小値H1minよりも小さい、すなわちd1<H1minを満たすことが好ましい。上記範囲にすることにより、第一導電層上の絶縁層に容易に開口部を形成することが可能となる。
【0103】
なお、本発明においては、第一導電層上の全面を覆うように絶縁層を形成した場合であっても、上述のように低融点材料を有する場合、該低融点材料のアニール処理などにより、第一導電層上の絶縁層に容易に開口部を形成することができる。従って、本発明においては、高価なレジスト等を用いることなく、開口部を有する絶縁層を容易に作製することができるため、生産性の観点から好ましい。
【0104】
この際、湿式法により絶縁層を製膜することがより好ましい。この場合、真空下での製膜が必要な乾式法に対し、湿式法による製膜は、大気中で絶縁層を形成することができるため、さらなる低コスト化が期待できる。特許文献5では、めっき層(第二導電層)が導電性シード(第一導電層)に埋め込まれており、めっき液が、導電性シードまで浸透していると考えられる。このようなめっき液が光電変換部に浸透すると、特に、ヘテロ接合太陽電池など、光電変換部の最表面層として透明電極層を有するものを用いた場合、透明電極層を溶解するおそれがある。このような場合に、導電性シードの剥れが生じやすいと考えられる。
【0105】
一方、本発明のように、第一導電層の略全面を覆うように絶縁層を形成する場合、中でも特に絶縁性材料を含有する第一導電層を用いる場合、めっき層が埋め込まれにくくなり、めっき液による剥れなどが生じにくくなると考えられる。
【0106】
本発明における絶縁層の開口部は、断面観察した際の第一導電層の露出領域が、20%以上が好ましく、30%以上がより好ましい。また60%以下が好ましく、50%以下がより好ましい。上記範囲とすることにより、めっき液の浸透を抑制しつつ効率よく第二導電層の形成が期待できる。なお、絶縁層の断面観察は、例えば、SEMにより、光電変換部の表面に垂直な断面を、同一サンプルで複数ヶ所測定した際の平均値を求めることにより算出することが出来る。
【0107】
また、第一導電層非形成領域における絶縁層9の光学特性や膜厚を適宜設定することで、光反射特性を改善し、太陽電池セル内部へ導入される光量を増加させ、変換効率をより向上させることが可能となる。このような効果を得るためには、絶縁層9の屈折率が、光電変換部50表面の屈折率よりも低いことが好ましい。なお、第一導電層形成領域上の絶縁層の膜厚と第一導電層非形成領域上の絶縁層の膜厚は異なっていてもよい。例えば、第一導電層形成領域では、開口部の形成を容易とする観点で絶縁層の膜厚が設定され、第一導電層非形成領域では、適宜の反射防止特性を有する光学膜厚となるように絶縁層の膜厚が設定されてもよい。
【0108】
ヘテロ接合太陽電池のように、光電変換部50の表面に透明電極層(一般には屈折率:1.9〜2.1程度)を有する場合、界面での光反射防止効果を高めて太陽電池セル内部へ導入される光量を増加させるために、絶縁層の屈折率は、空気(屈折率=1.0)と透明電極層との中間的な値であることが好ましい。また、太陽電池セルが封止されてモジュール化される場合、絶縁層の屈折率は、封止剤と透明電極層の中間的な値であることが好ましい。かかる観点から、絶縁層9の屈折率は、例えば1.4〜1.9が好ましく、1.5〜1.8がより好ましく、1.55〜1.75がさらに好ましい。絶縁層の屈折率は、絶縁層の材料、組成等により所望の範囲に調整され得る。例えば、酸化シリコンの場合は、酸素含有量を小さくすることにより、屈折率が高くなる。なお、本明細書における屈折率は、特に断りがない限り、波長550nmの光に対する屈折率であり、分光エリプソメトリーにより測定される値である。また、絶縁層の屈折率に応じて、反射防止特性が向上するように絶縁層の光学膜厚(屈折率×膜厚)が設定されることが好ましい。
【0109】
絶縁層は、樹脂により形成することが好ましい。この際、所定の粘度を有する塗布液をスクリーン印刷やスピンコート、スプレー噴霧などの湿式法により塗布した後、UV光や加熱にて硬化させることで絶縁層を形成することが好ましい。これらの方法によれば、ピンホール等の欠陥が少なく、緻密な構造の膜を形成することが可能となる。また上述のように、真空下で製膜する必要がある乾式法に比べて、大気中で製膜できるため、生産コストをより低減できる観点から特に好ましい。また熱硬化する材料を用いることにより、絶縁層への開口部形成と熱硬化を同時にできる場合がある。
【0110】
中でも、生産性の観点から、絶縁層9はスクリーン印刷法などで形成されることが好ましい。上述のように、第一導電層として例えば低融点材料を有する場合、第一導電層71上に絶縁層が形成された後、第二導電層72が形成される前にアニール処理が行われてもよい。アニール処理時に、第一導電層71が低融点材料の熱流動開始温度T
1よりも高温に加熱され、低融点材料が流動状態となるために、第一導電層の表面形状が変化する。この変化に伴って、その上に形成される絶縁層9に開口部9hが形成される。したがって、その後のめっき工程において、第一導電層71の表面の一部が、めっき液に曝されて導通するため、
図3(E)に示すように、この導通部を起点として金属を析出させることが可能となる。
【0111】
なお、この場合、開口部は主に第一導電層71の低融点材料711上に形成される。低融点材料が絶縁性材料の場合、開口部の直下は絶縁性であるが、低融点材料の周辺に存在する導電性の高融点材料にもめっき液が浸透するために、第一導電層とめっき液とを導通させることが可能である。
【0112】
アニール処理時におけるアニール温度(加熱温度)T
aは、低融点材料の熱流動開始温度T
1よりも高温、すなわちT
1<T
aであることが好ましい。アニール温度T
aは、T
1+1℃≦T
a≦T
1+100℃を満たすことがより好ましく、T
1+5℃≦T
a≦T
1+60℃を満たすことがさらに好ましい。アニール温度は、第一導電層の材料の組成や含有量等に応じて適宜設定され得る。
【0113】
また、前述のごとく、アニール温度T
aは、光電変換部50の耐熱温度よりも低温であることが好ましい。光電変換部の耐熱温度は、光電変換部の構成により異なる。例えば、ヘテロ接合太陽電池や、シリコン系薄膜太陽電池のように透明電極層や非結晶質シリコン系薄膜を有する場合の耐熱温度は250℃程度である。そのため、光電変換部が非晶質シリコン系薄膜を備えるヘテロ接合太陽電池や、シリコン系薄膜太陽電池の場合、非晶質シリコン系薄膜およびその界面での熱ダメージ抑制の観点から、アニール温度は250℃以下に設定されることが好ましい。より高性能の太陽電池を実現するためにはアニール温度は200℃以下にすることがより好ましく、180℃以下にすることがさらに好ましい。これに伴って、第一導電層71の低融点材料の熱流動開始温度T
1は、250℃未満であることが好ましく、200℃未満がより好ましく、180℃未満がさらに好ましい。
【0114】
(第二導電層)
上記のように、開口部9hを有する絶縁層9が形成された後、第一導電層形成領域の絶縁層9上に第二導電層72がめっき法により形成される。この際、第二導電層として析出させる金属は、めっき法で形成できる材料であれば特に限定されず、例えば、銅、ニッケル、錫、アルミニウム、クロム、銀、金、亜鉛、鉛、パラジウム等、あるいはこれらの混合物を用いることができる。
【0115】
太陽電池の動作時(発電時)には、電流は主として第二導電層を流れる。そのため、第二導電層での抵抗損を抑制する観点から、第二導電層のライン抵抗は、できる限り小さいことが好ましい。具体的には、第二導電層のライン抵抗は、1Ω/cm以下であることが好ましく、0.5Ω/cm以下であることがより好ましい。一方、第一導電層のライン抵抗は、電気めっきの際の下地層として機能し得る程度に小さければよく、例えば、5Ω/cm以下にすればよい。
【0116】
第二導電層は、無電解めっき法、電解めっき法のいずれでも形成され得るが、生産性の観点から、電解めっき法を用いることが好適である。電解めっき法では、金属の析出速度を大きくすることができるため、第二導電層を短時間で形成することができる。
【0117】
酸性銅めっきを例として、電解めっき法による第二導電層の形成方法を説明する。
図9は、第二導電層の形成に用いられるめっき装置10の概念図である。光電変換部上に第一導電層および開口部を有する絶縁層が形成された基板12と、陽極13とが、めっき槽11中のめっき液16に浸されている。基板12上の第一導電層71は、基板ホルダ14を介して電源15と接続されている。陽極13と基板12との間に電圧を印加することにより、絶縁層9で覆われていない第一導電層の上、すなわち絶縁層に生じた開口部を起点として、選択的に銅を析出させることができる。
【0118】
酸性銅めっきに用いられるめっき液16は銅イオンを含む。例えば硫酸銅、硫酸、水を主成分とする公知の組成のものが使用可能であり、これに0.1〜10A/dm
2の電流を流すことにより、第二導電層である金属を析出させることができる。適切なめっき時間は、集電極の面積、電流密度、陰極電流効率、設定膜厚等に応じて適宜設定される。
【0119】
第二導電層は、複数の層から構成させても良い。例えば、Cu等の導電率の高い材料からなる第一のめっき層を、絶縁層の開口部を介して第一導電層上に形成した後、化学的安定性に優れる第二のめっき層を第一のめっき層の表面に形成することにより、低抵抗で化学的安定性に優れた集電極を形成することができる。
【0120】
めっき工程の後には、めっき液除去工程を設けて、基板12の表面に残留しためっき液を除去することが好ましい。めっき液除去工程を設けることによって、絶縁層9の開口部9h以外を起点として析出し得る金属を除去することができる。開口部9h以外を起点として析出する金属としては、例えば絶縁層9のピンホール等を起点とするものが挙げられる。めっき液除去工程によってこのような金属が除去されることによって、遮光損が低減され、太陽電池特性をより向上させることが可能となる。
【0121】
めっき液の除去は、例えば、めっき槽から取り出された基板12の表面に残留しためっき液をエアーブロー式のエアー洗浄により除去した後、水洗を行い、さらにエアーブローにより洗浄液を吹き飛ばす方法により行うことができる。水洗の前にエアー洗浄を行い基板12表面に残留するめっき液量を低減することによって、水洗の際に持ち込まれるめっき液の量を減少させることができる。そのため、水洗に要する洗浄液の量を減少させることができるとともに、水洗に伴って発生する廃液処理の手間も低減できることから、洗浄による環境負荷や費用が低減されるとともに、太陽電池の生産性を向上させることができる。
【0122】
ここで、一般に、ITO等の透明電極層や、酸化シリコン等の絶縁層は親水性であり、基板12の表面や絶縁層9の表面の水との接触角は、10°程度あるいはそれ以下である場合が多い。一方、エアーブロー等によるめっき液の除去を容易にする観点からは、基板12の表面の水との接触角を20°以上とすることが好ましい。基板表面の接触角を大きくするために、基板12表面に撥水処理が行われてもよい。撥水処理は、例えば表面への撥水層の形成することにより行われる。撥水処理により、基板表面のめっき液に対する濡れ性を低下させることができる。
なお、絶縁層9の表面への撥水処理に代えて、撥水性を有する絶縁層9が形成されてもよい。すなわち水との接触角θ大きい(例えば20°以上)の絶縁層9が形成されることにより、別途の撥水処理工程を省略できるため、太陽電池の生産性をより向上させることができる。
【0123】
本発明においては、集電極形成後(めっき工程後)に絶縁層除去工程が行われてもよい。
【0124】
以上、ヘテロ接合太陽電池の光入射側に集電極70が設けられる場合を中心に説明したが、裏面側にも同様の集電極が形成されてもよい。ヘテロ接合太陽電池のように結晶シリコン基板を用いた太陽電池は、電流量が大きいため、一般に、透明電極層/集電極間の接触抵抗の損失による発電ロスが顕著となる傾向がある。これに対して、本発明では、第一導電層と第二導電層を有する集電極は、透明電極層との接触抵抗が低いため、接触抵抗に起因する発電ロスを低減することが可能となる。
【0125】
また、本発明は、ヘテロ接合太陽電池以外の結晶シリコン太陽電池や、GaAs等のシリコン以外の半導体基板が用いられる太陽電池、非晶質シリコン系薄膜や結晶質シリコン系薄膜のpin接合あるいはpn接合上に透明電極層が形成されたシリコン系薄膜太陽電池や、CIS,CIGS等の化合物半導体太陽電池、色素増感太陽電池や有機薄膜(導電性ポリマー)等の有機薄膜太陽電池のような各種の太陽電池に適用可能である。
【0126】
結晶シリコン太陽電池としては、一導電型(例えばp型)結晶シリコン基板の一主面上に逆導電型(例えばn型)の拡散層を有し、拡散層上に前記集電極を有する構成が挙げられる。このような結晶シリコン太陽電池は、一導電型層の裏面側にp
+層等の導電型層を備えるのが一般的である。このように、光電変換部が非晶質シリコン層や透明電極層を含まない場合は、低融点材料の熱流動開始温度T
1およびアニール温度T
aは、250℃より高くてもよい。
【0127】
シリコン系薄膜太陽電池としては、例えば、p型薄膜とn型薄膜との間に非晶質の真性(i型)シリコン薄膜を有する非晶質シリコン系薄膜太陽電池や、p型薄膜とn型薄膜との間に結晶質の真性シリコン薄膜を有する結晶質シリコン系半導体太陽電池が挙げられる。また、複数のpin接合が積層されたタンデム型の薄膜太陽電池も好適である。このようなシリコン系薄膜太陽電池では、透明電極層や非晶質シリコン系薄膜の耐熱性を勘案して、低融点材料の熱流動開始温度T
1およびアニール温度T
aは250℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、180℃以下であることがさらに好ましい。
【0128】
本発明の太陽電池は、実用に供するに際して、モジュール化されることが好ましい。太陽電池のモジュール化は、適宜の方法により行われる。例えば、集電極にタブ等のインターコネクタを介してバスバーが接続されることによって、複数の太陽電池セルが直列または並列に接続され、封止剤およびガラス板により封止されることによりモジュール化が行われる。
【実施例】
【0129】
以下、
図2に示すヘテロ接合太陽電池に関する実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0130】
(実施例1)
実施例1のヘテロ接合太陽電池を、以下のようにして製造した。
【0131】
一導電型単結晶シリコン基板として、入射面の面方位が(100)で、厚みが200μmのn型単結晶シリコンウェハを用い、このシリコンウェハを2重量%のHF水溶液に3分間浸漬し、表面の酸化シリコン膜が除去された後、超純水によるリンスが2回行われた。このシリコン基板を、70℃に保持された5/15重量%のKOH/イソプロピルアルコール水溶液に15分間浸漬し、ウェハの表面をエッチングすることでテクスチャが形成された。その後に超純水によるリンスが2回行われた。原子間力顕微鏡(AFM パシフィックナノテクノロジー社製)により、ウェハの表面観察を行ったところ、ウェハの表面はエッチングが最も進行しており、(111)面が露出したピラミッド型のテクスチャが形成されていた。
【0132】
エッチング後のウェハがCVD装置へ導入され、その光入射側に、真性シリコン系薄膜2aとしてi型非晶質シリコンが5nmの膜厚で製膜された。i型非晶質シリコンの製膜条件は、基板温度:150℃、圧力:120Pa、SiH
4/H
2流量比:3/10、投入パワー密度:0.011W/cm
2であった。なお、本実施例における薄膜の膜厚は、ガラス基板上に同条件にて製膜された薄膜の膜厚を、分光エリプソメトリー(商品名M2000、ジェー・エー・ウーラム社製)にて測定することにより求められた製膜速度から算出された値である。
【0133】
i型非晶質シリコン層2a上に、逆導電型シリコン系薄膜3aとしてp型非晶質シリコンが7nmの膜厚で製膜された。p型非晶質シリコン層3aの製膜条件は、基板温度が150℃、圧力60Pa、SiH
4/B
2H
6流量比が1/3、投入パワー密度が0.01W/cm
2であった。なお、上記でいうB
2H
6ガス流量は、H
2によりB
2H
6濃度が5000ppmまで希釈された希釈ガスの流量である。
【0134】
次にウェハの裏面側に、真性シリコン系薄膜2bとしてi型非晶質シリコン層が6nmの膜厚で製膜された。i型非晶質シリコン層2bの製膜条件は、上記のi型非晶質シリコン層2aの製膜条件と同様であった。i型非晶質シリコン層2b上に、一導電型シリコン系薄膜3bとしてn型非晶質シリコン層が4nmの膜厚で製膜された。n型非晶質シリコン層3bの製膜条件は、基板温度:150℃、圧力:60Pa、SiH
4/PH
3流量比:1/2、投入パワー密度:0.01W/cm
2であった。なお、上記でいうPH
3ガス流量は、H
2によりPH
3濃度が5000ppmまで希釈された希釈ガスの流量である。
【0135】
この上に透明電極層6aおよび6bとして、各々酸化インジウム錫(ITO、屈折率:1.9)が100nmの膜厚で製膜された。ターゲットとして酸化インジウムを用い、基板温度:室温、圧力:0.2Paのアルゴン雰囲気中で、0.5W/cm
2のパワー密度を印加して透明電極層の製膜が行われた。裏面側透明電極層6b上には、裏面金属電極8として、スパッタ法により銀が500nmの膜厚で形成された。光入射側透明電極層6a上には、第一導電層71および第二導電層72を有する集電極70が以下のように形成された。
【0136】
第一導電層71の形成には、導電性材料として、低融点材料としてのSnBi金属粉末(粒径D
L=25〜35μm、融点T
1=141℃)と、高融点材料としての銀粉末(粒径D
H=2〜3μm、融点T
2=971℃)とを、20:80の重量比で含み、さらにバインダー樹脂としてエポキシ系樹脂を5重量%含む印刷ペーストが用いられた。この印刷ペーストを、集電極パターンに対応する開口幅(L=80μm)を有する#230メッシュ(開口幅:l=85μm)のスクリーン版を用いて、スクリーン印刷し、130℃で乾燥が行われた。
【0137】
絶縁層9は、シロキサン系アクリル樹脂材料を含むUV硬化性樹脂(粘度500〜1000mPa・s、カネカ製ゼムラック)を用い、スクリーン印刷(スクリーン版(#120メッシュ))により、光電変換部の一主面側の全面に樹脂を塗布した。その後、露光機を用いて400mJの条件にてUV照射することで、絶縁層を硬化したのち、大気雰囲気下にて180℃で加熱を実施した。この際、第一導電層の凹凸高低差H1=20.0μm、光電変換部の凹凸高低差H0=5.0μmであった。
【0138】
なお、本実施例においては、凹凸高低差は、触針段差計(株式会社小坂研究所製Surfcorder ET200)を用いて、4mmの範囲を測定した。H0<H1だったため、光電変換部の一主面側の第一導電層非形成領域の全面に絶縁層が形成されており、第一導電層上には凹部に絶縁層が集中しており凸部は絶縁層にて被覆されていないエリア(開口部)が観測された。
【0139】
その後、上記のように作製した太陽電池仕掛品を、レーザー加工機により、集電極と垂直方向に切断し、SEM観察を実施した。
【0140】
以上のように作製した基板12(太陽電池仕掛品)が、
図8に示すように、めっき槽11に投入された。めっき液16には、硫酸銅五水和物、硫酸、および塩化ナトリウムが、それぞれ120g/l、150g/l、および70mg/lの濃度となるように調製された溶液に、添加剤(上村工業製:品番ESY−2B、ESY−H、ESY−1A)が添加されたものが用いられた。このめっき液を用いて、温度40℃、電流3A/dm
2の条件で30sec及び300secの条件にてめっきが行われ、第一導電層71上の絶縁層上に、10μm程度の厚みで第二導電層72として銅が析出した。第一導電層が形成されていない領域への銅の析出はほとんど見られなかった。その後、レーザー加工機により、集電極と垂直方向に切断しSEM観察を実施した。
【0141】
(実施例2)
UV硬化性樹脂を酢酸ブチルにて2倍希釈した点(粘度100〜300mPa・s程度)を除いて、実施例1と同様に太陽電池仕掛品を作製し、断面のSEM観察を実施した。
【0142】
(実施例3、4)
実施例3および4においては、Agペーストの粘度を45〜75Pa・sに変更した点を除いて、各々実施例1、2と同様に太陽電池仕掛品を作製し、断面のSEM観察を実施した。
【0143】
(比較例1)
導電性材料として、低融点材料を含まず、高融点材料である銀粉末(粒径D
H=2〜3μm、融点T
2=971℃)を有する低粘度Agペースト(45〜75Pa・s)を用いた点を除いて各々実施例1、2と同様に太陽電池仕掛品を作製し、断面のSEM観察を実施した。その後、実施例1と同様に太陽電池仕掛品を用いてめっきを行ったが、Cuの析出は見られなかった。
【0144】
(参考例1)
導電性材料として、低融点材料を含まず、高融点材料である銀粉末(粒径D
H=2〜3μm、融点T
2=971℃)を有する低粘度Agペースト(45〜75Pa・s)を用いた点を除いて各々実施例2と同様に太陽電池仕掛品を作製し、断面のSEM観察を実施した。その後、実施例1と同様に太陽電池仕掛品を用いてめっきを行ったところ、第一導電層の一部分にCuが析出した。
【0145】
(実施例5、6)
低融点材料を含まない高粘度Agペースト(粘度300〜350Pa・s)を用いた点を除いて、実施例1、2と同様に太陽電池仕掛品を作製し、断面のSEM観察を実施した。
【0146】
上記実施例の結果を表1に、実施例2及び比較例1の第一導電層のSEM画像を
図11(a)、(b)さらに、実施例2の銅めっき後の導電層のSEM画像を
図12にそれぞれ示す。開口部形成の評価に関しては、第一導電層の露出領域の比率を同一サンプル内で5箇所観察しした際の平均値で評価を実施した。
露出領域40〜60%・・・5
露出領域30〜40%・・・4
露出領域20〜30%・・・3
露出領域10〜20%・・・2
露出領域0〜10%・・・・1
【0147】
【表1】
【0148】
実施例1、実施例3、実施例5および比較例1を各々比較すると、比較例1を除いて開口部が形成された。したがって、実施例1、3、5と比較例1の比較から第一導電層の凹凸の高低差H1が15μm以上であれば第一導電層の露出領域が20%以上となることがわかる。また実施例2、4、6と参考例1の比較から、第一導電層の凹凸高低差H1が9.8μm(参考例1)→15.6μm(実施例4)→17.2μm(実施例6)→20.0μm(実施例2)と大きくなるにつれて、開口部の形成領域が大きくなることがわかる。
【0149】
また、実施例1と2、実施例3と4、実施例5と6、また比較例1と参考例1を各々比較すると、絶縁層形成に用いる塗布液の粘度を調整することで露出領域を増加させることが可能であると考えられる。特に比較例1ではH0<H1であったが、開口部が形成されなかった。一方、比較例1に比べて絶縁層の塗布液を2倍に希釈した参考例1では、第一導電層上の絶縁層に開口部が形成された。従って、H0とH1の差が小さい場合であっても、絶縁層の製膜条件等を適宜調整することにより、容易に開口部を形成することができると考えられる。
【0150】
また第一導電層の粘度が各々同じである実施例1と5(300〜350Pa・s)、実施例2と6(300〜350Pa・s)、実施例3と比較例1(45〜75Pa・s)、実施例4と参考例1(45〜75Pa・s)を各々比較すると、低融点材料を有する実施例1,2,3,4では、各々実施例5、6、比較例1、参考例1に比べて開口部形成領域がより増加した。これは、低融点材料は、粒子径が大きく、凹凸高低差H1に影響を及ぼしたためと考えられる。またアニール処理により、低融点材料を起点として該低融点材料上の絶縁層に開口部が形成されたためと考えられる。以上より、第一導電層として低融点材料を有するものを用いることがより好ましいと考えられる。
【0151】
以上より、第一導電層の凸部に開口部が形成されやすいことがわかる。めっきは該開口部から等方的に形成されるため、凸部のピーク間隔を適宜調整することにより、めっきによる第二導電層の形成領域を適宜設計することができると考えられる。
【0152】
以上、実施例を用いて説明したように、本発明によれば、パターニングを行うことなく、湿式法にて絶縁層の形成することが可能であり、高出力の太陽電池を低コストで提供することが可能となる。