【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1、2の発明には、以下のような問題があった。
すなわち、特許文献1の発明では、摺動部材をフレームの上方位置に直線移動させて、摺動部材の下側に設けた1対の段ロールを使用して片面段ボールシートを製造する場合、摺動部材の下方に空間が空き、摺動部材を下方から支持する部材が存在しない。複数対の段ロールを設けた摺動部材は、例えば、7〜8トン程度の重量物であるため、摺動部材の下方に空間が空き、摺動部材を下側から支持する部材が存在しないと、段ロールのフレームへの位置決め固定が不安定となりやすい。特に、片面段ボールシートの製造時に、段ロールの位置決め固定が不安定であると、中芯紙の成形不良や中芯紙と裏ライナ紙との貼合わせ不良などが生じやすい問題があった。また、段ロールの位置決め固定が不安定であると、機械振動が増大して、段ロールが摩耗損傷しやすい問題もあった。
また、機内の段ロールが摩耗損傷した場合には、機外の段ロールと交換する必要があるが、この交換作業が必ずしも容易ではない。工場の床面よりも高い位置にある段ロールを摺動部材から取り外す場合、重量物を搬送可能な昇降装置を用いる必要があり、交換作業を含めた段ロールの切替作業に長時間を要することになる。
【0006】
また、特許文献2の発明においても、重量物である段ロールを取り付けた軸受けブラケットが軸旋回する構成であるので、その位置決め固定が不安定である。そのため、特許文献1の発明と同様に、中芯紙の成形不良や中芯紙と裏ライナ紙との貼合わせ不良などが生じやすく、また、機械振動が増大して、段ロールが摩耗損傷するおそれがあった。
また、段ロールが使用位置と休止位置のいずれにある場合においても、工場の床面より高い位置にあり、交換作業を含めた段ロールの切替作業に長時間を要する問題もあった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、その第1の目的は、複数対の段ロールを機内に移動可能に備え、各段ロールを切替えて種類の異なるフルート形状の片面段ボールシートを製造するシングルフェーサ及びその段ロール切替方法において、使用位置にある段ロールの位置決め固定に対する安定性を向上させることである。
また、第2の目的は、上記シングルフェーサ及びその段ロール切替方法において、交換作業を含めた段ロールの切替作業を簡素化させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のシングルフェーサ及びその段ロール切替方法は、次のような構成を有している。
(1)装置本体に複数対の段ロールを使用位置と休止位置との間で移動可能に備え、各対の段ロールを切替えて種類の異なるフルート形状の片面段ボールシートを製造するシングルフェーサであって、
前記各対の段ロールを上下方向に並べて軸支した複数個のカートリッジを備え、その内、前記段ロールの使用位置にある使用カートリッジを前記段ロールの休止位置にある休止カートリッジが下方から支持したことを特徴とする。
【0009】
本発明においては、各対の段ロールを上下方向に並べて複数個のカートリッジに軸支した上で、段ロールの使用位置にある使用カートリッジを段ロールの休止位置にある休止カートリッジが下方から支持したことによって、装置本体のフレーム強度を補完して、重量物である段ロールの位置決め固定の安定性を向上させたのである。
【0010】
具体的には、複数対の段ロールを使用位置と休止位置との間で移動可能とすると、装置本体に移動空間が形成され、装置本体のフレーム強度が低下しやすくなる。
しかし、カートリッジは、重量物である段ロールを上下方向に並べて軸支したので、上下方向における強度は高く作られている。
そのため、使用カートリッジを、上下方向における強度が同程度に高い休止カートリッジが下方から支持したことによって、装置本体のフレーム強度を補完して、使用位置にある段ロールを、安定して位置決め固定させることができる。また、下方から支持する休止カートリッジは、工場の床面近くに配置することができるので、交換作業を含めた段ロール切替作業を簡単かつ短時間に行うことができる。
【0011】
よって、本発明によれば、複数対の段ロールを機内に移動可能に備え、各段ロールを切替えて種類の異なるフルート形状の片面段ボールシートを製造するシングルフェーサにおいて、使用位置にある段ロールの位置決め固定に対する安定性を向上させることができる。また、上記シングルフェーサにおいて、交換作業を含めた段ロールの切替作業を簡素化させることができる。
【0012】
なお、使用カートリッジを休止カートリッジが支持する方向は、垂直方向に限らず、傾斜方向でも良い。
また、カートリッジを機内に3個以上備えることもできる。この場合、休止カートリッジは、2個以上となるが、その内のいずれか1個の休止カートリッジで使用カートリッジを支持すれば良い。
【0013】
(2)(1)に記載されたシングルフェーサにおいて、
前記装置本体には、前記使用カートリッジを係止する係止部材と、前記休止カートリッジを上方に押圧する作動部材とを設けたことを特徴とする。
【0014】
本発明においては、装置本体の移動空間内で、係止部材と作動部材とを介して、装置本体と使用カートリッジ及び休止カートリッジとを上下方向で密着させることができる。そのため、使用カートリッジ及び休止カートリッジは、装置本体の移動空間内に上下方向に立設した支柱の役割を果たすことができ、装置本体のフレーム強度を、より一層高めることができる。
また、係止部材と作動部材とによって、使用カートリッジと休止カートリッジとを上下方向で挟圧して位置決め固定させることができる。そのため、使用カートリッジ及び休止カートリッジは、上下方向のみならず、横方向への位置ズレも生じにくくなる。さらに、使用カートリッジは、休止カートリッジと見掛け上合体して、運転時に発生する使用カートリッジの共振振動は、大幅に減少する。
よって、本発明によれば、装置本体のフレーム強度を高めつつ、使用位置にある段ロールの位置決め固定に対する安定性をより一層向上させ、段ロールの摩耗等も減少させることができる。
【0015】
なお、使用カートリッジは、休止カートリッジと係合して支持されたことが好ましい。カートリッジが互いに係合されたことによって、位置ズレをより一層防止できる。
また、係止部材は、クランプ機構が好ましい。クランプ機構によれば、使用カートリッジを装置本体のフレームに強固に係止することができる。
さらに、作動部材は、油圧ジャッキが好ましい。油圧ジャッキによれば、必要な押圧力を安定して維持することができる。
【0016】
(3)(1)又は(2)に記載されたシングルフェーサにおいて、
前記装置本体には、前記使用カートリッジ及び休止カートリッジを、前記使用位置と前記休止位置との間で上下方向に昇降させる昇降装置と、前記休止位置から横方向に退避させる搬送装置とを設けたことを特徴とする。
【0017】
本発明においては、装置本体に昇降装置と搬送装置とを設けたことによって、重量物である使用カートリッジ及び休止カートリッジを、休止位置から横方向に退避させ、必要な段ロールを軸支するカートリッジは、休止位置を経由して使用位置へ簡単に移動させることができる。そのため、機内における使用カートリッジと休止カートリッジとの切替作業や、機内外におけるカートリッジの交換作業を、簡単かつ短時間に行うことができる。
よって、本発明によれば、交換作業を含めた段ロールの切替作業を簡素化させることができる。
【0018】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載されたシングルフェーサの段ロール切替方法であって、
前記使用カートリッジ及び前記休止カートリッジは、機内でそれぞれ別々に退避させた後で、前記使用カートリッジと前記休止カートリッジとを前記休止位置を経由して入れ替えて、段ロールの切替作業を行うことを特徴とする。
【0019】
本発明においては、使用カートリッジ及び休止カートリッジは、一旦、機内に設けたそれぞれ別々の位置(退避位置)に退避させた上で、必要な段ロールを軸支したカートリッジを先に休止位置に戻した後、使用位置に上昇させることにより、使用カートリッジと休止カートリッジとを入れ替える。そのため、使用カートリッジと休止カートリッジとの入れ替え途中に、互いのカートリッジが干渉することはない。また、機内外のカートリッジを交換するときにおいても、交換しないカートリッジを退避位置に退避させことができるので、カートリッジの交換途中に、互いのカートリッジが干渉することはない。
よって、本発明によれば、交換作業を含めた段ロールの切替作業を簡単かつ短時間に行うことができ、簡素化させることができる。
【0020】
具体的には、使用カートリッジと休止カートリッジとの切替作業を行う際には、以下の手順で行うことができる。
はじめに、休止位置にある休止カートリッジを横方向に形成した一方の移動通路に退避させる。次に、使用位置にある使用カートリッジを休止カートリッジがあった休止位置に下降させ、一方の移動通路とは反対方向にある他方の移動通路に退避させる。その後、一方の移動通路に退避させた休止カートリッジを元の休止位置に戻して、使用位置に上昇させる。最後に、他方の移動通路に退避させた使用カートリッジを、休止位置に移動させて、下方から使用位置に上昇させた新たな使用カートリッジを下方から支持する。以上の手順で、機内のカートリッジの切替作業を簡単に行うことができる。
【0021】
また、機内のカートリッジと機外のカートリッジとの交換作業を行う際には、以下の手順で行うことができる。
はじめに、機内において、交換しない何れかのカートリッジを移動通路に退避させて、交換する機内のカートリッジを休止位置に移動する。次に、交換する機内のカートリッジは、休止位置から軸方向に移動させて機外に引き出す。その後、機外のカートリッジを機内の休止位置に軸方向から投入する。最後に、投入したカートリッジを使用位置に移動させてから、退避させたカートリッジを休止位置に移動して、新たな使用カートリッジを下方から支持する。以上の手順で、機内外のカートリッジの交換作業を簡単に行うことができる。