特許第6120745号(P6120745)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6120745
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】水性ボールペン用インク組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/18 20060101AFI20170417BHJP
   B43K 7/00 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   C09D11/18
   B43K7/00
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-203135(P2013-203135)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-67721(P2015-67721A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】小林 雄介
(72)【発明者】
【氏名】坂根 範子
(72)【発明者】
【氏名】赤木 智行
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−097187(JP,A)
【文献】 特開昭60−047080(JP,A)
【文献】 特開2005−255952(JP,A)
【文献】 特開平09−302299(JP,A)
【文献】 米国特許第05785746(US,A)
【文献】 国際公開第2006/129476(WO,A1)
【文献】 特開2011−251503(JP,A)
【文献】 特開2003−261804(JP,A)
【文献】 特開2007−162003(JP,A)
【文献】 特開昭54−143340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00−13/00
B43K 7/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記A群から選ばれる変性ポリビニルアルコールの少なくとも1種0.1〜8質量%と、ホウ酸及びその塩の少なくとも1種0.01〜3質量%とを含有することを特徴とする水性ボールペン用インク組成物。
A群:カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、スルホン酸基変性ポリビニルアルコール、エチレンオキサイド基変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体
【請求項2】
ホウ酸及びその塩がホウ酸、ホウ酸のアルカリ金属塩、ホウ酸のアンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項に記載の水性ボールペン用インク組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水性ボールペン用インク組成物を搭載したことを特徴とする水性ボールペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記描線に滲みもなく、また、紙裏面へのインクの裏抜けもなく、しかも、カスレやボテ、線割れもなく、美しい文字が書ける水性ボールペン用インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、低粘度水性ボールペンでは、サラサラした書き味で、低筆圧で筆記できるものの、筆記描線に滲みがあったりするものであった。
そこで、滲み性を解消するために、水性ボールペン用インク組成物に、剪断減粘性(非ニュートン性)付与の粘度調整剤(ゲル化剤)などが含有されている。
【0003】
このような水性ボールペン用インク組成物として、例えば、1)キサンタンガムを0.20〜0.45重量%含有することを特徴とする水性ボールペン用インキ組成物(例えば、特許文献1参照)、2)必須成分として(イ)着色剤、(ロ)グルコース/ガラクトース/ピルビン酸又はその塩/こはく酸又はその塩/酢酸がモル比5〜8/1〜2/0.5〜2/0.5〜2/0.5〜1で構成されている基本単位からなる平均分子量約100万乃至約800万の有機酸修飾ヘテロ多糖体、及び(ハ)水と水溶性有機溶剤を含み、水が50重量%以上を占める水性媒体を含有してなるボールペンに好適な筆記具用水性インキ組成物(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載される水性ボールペン用インキ組成物では、筆記描線の滲み性を改善することが可能であるが、線割れやボテが発生したり、インク追従性が不足したり、サラサラした書き味が出ないなどの課題がある。
【0005】
一方、ポリビニルアルコールを用いたマーキングペン、ボールペンなどの筆記具用インキとしては、例えば、酸化チタンと、体質顔料と、分散剤と、重合度が200〜1000のポリビニルアルコール及び/又はスチレン・アクリル系共重合体のエマルジョンと、水とを少なくとも含むことを特徴とする水性顔料インキ(例えば、特許文献3参照)が知られている。また、変性ポリビニルアルコールを用いた水性顔料インキとしては、例えば、顔料とアニオン基変性ポリビニルアルコールと水とを少なくとも含む水性顔料インキ(例えば、特許文献4参照)が知られている。
他方、ホウ酸アルカリ金属塩を用いた水性インキ組成物等としては、ペン先部分の超硬合金製ボールについての耐腐食性を改良するために、ケイ酸アルカリ金属塩及び/又はホウ酸アルカリ金属塩を含むことを特徴とする水性インキ組成物とそれを備えた水性ボールペン(例えば、特許文献5参照)が知られている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献3の筆記具用インキにおけるポリビニルアルコールは凍結解凍における顔料分散安定性を向上するために使用するものであり、本発明とはその目的、課題が相違するものであり、しかも、ホウ酸塩との併用等についても全く記載や認識もないものである。
また、上記特許文献4の水性顔料インキにおけるアニオン基変性ポリビニルアルコールは、筆跡乾燥後の、紙(半紙)のシワやソリなどの問題が発生しにくい、特に墨汁に好適な水性顔料インキに使用するものであり、本発明とはその目的、課題が相違するものであり、しかも、ホウ酸塩との併用等についても全く記載や認識もないものである。
更に、上記特許文献5の水性インキ組成物におけるホウ酸アルカリ金属塩はボールに当該ホウ酸アルカリ金属塩の薄膜を形成して、ボールやチップホルダーの腐食を妨げるために使用するものであり、本発明とはその目的、課題が相違するものであり、しかも、ポリビニルアルコールとの併用等についても全く記載や認識もないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭59−74175号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開平6−88050号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特開2000−345090号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献4】特開平5−271597号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献5】特開2002−338869号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑み、これを解消しようとするものであり、筆記描線に滲みもなく、また、紙裏面へのインクの裏抜けもなく、しかも、カスレやボテ、線割れもなく、美しい文字が書ける水性ボールペン用インク組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記従来の課題等に鑑み、鋭意研究を行った結果、水性ボールペン用インク組成物に、粘度調整剤として、2種の特定の化合物を少なくとも含有せしめることにより、上記目的の水性ボールペン用インク組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0010】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(5)に存する。
(1) 変性ポリビニルアルコールと、ホウ酸及びその塩から選ばれる少なくとも1種とを含有することを特徴とする水性ボールペン用インク組成物。
(2) 変性ポリビニルアルコールの含有量が水性ボールペン用インク組成物全量に対して、0.1〜8質量%であることを特徴とする上記(1)に記載の水性ボールペン用インク組成物。
(3) ホウ酸及びその塩から選ばれる少なくとも1種の含有量が水性ボールペン用インク組成物全量に対して、0.01〜3質量%であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の水性ボールペン用インク組成物。
(4) ホウ酸及びその塩がホウ酸、ホウ酸のアルカリ金属塩、ホウ酸のアンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の水性ボールペン用インク組成物。
(5) 上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の水性ボールペン用インク組成物を搭載したことを特徴とする水性ボールペン。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、筆記描線に滲みもなく、また、紙裏面へのインクの裏抜けもなく、しかも、カスレやボテ、線割れもなく、美しい文字が書ける水性ボールペン用インク組成物及び水性ボールペンが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明の水性ボールペン用インク組成物は、変性ポリビニルアルコールと、ホウ酸及びその塩から選ばれる少なくとも1種とを含有することを特徴とするものである。
【0013】
本発明に用いる変性ポリビニルアルコール、並びに、ホウ酸塩及びその塩は、粘度調整剤として用いるものであり、水性ボールペン用インク組成中に、当該2種の粘度調整剤を含有することにより、初めて、本発明の効果を発揮せしめるものである。
本発明に用いる変性ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」と略する)『一般式、−〔CH−CH(OH)〕m−〔CH−CH(OCOCH〕n−』の水酸基、酢酸基、末端基の少なくとも一部を水素原子、カルボン酸、アクリル酸などの各種アニオン、アンモニウム、各種カチオン、アルキル基などの疎水基、カルボニル基などで変性した各種変性PVAが挙げられ、例えば、カルボキシル基変性PVA、スルホン酸基変性PVA、エチレンオキサイド基変性PVA、または、PVAの側鎖に上記の変性基を有するものが挙げられる。また、部分けん化PVAにアクリル酸とメタクリル酸メチルを共重合したPVA・アクリル酸・メタクリル酸共重合体も本発明の変性PVAとして使用することができる。
【0014】
本発明に用いる変性PVAは、インクの経時安定性、粘度付与性の点から、そのケン化度{〔m/(m+n)〕×100}は、好ましくは、50mol%以上とすることが望ましく、更に好ましくは、75mol%以上であることが望ましい。
また、上記ケン化度の変性PVAにおいて、筆記感、着色性を損なうことなく、本発明の効果を更に発揮せしめて美文字感を高める点から、その重合度(m+n)は、好ましくは、300以上、更に好ましくは、300〜3000、特に好ましくは、300〜2000が望ましい。
具体的に用いることができる変性PVAとしては、市販の日本合成化学工業社製のゴーセネックスLシリーズ、ゴーセネックスWOシリーズ(日本合成化学工業社製の商品名)、日本酢ビ・ポバール社製のアニオン変性PVA(Aシリーズ)(日本酢ビ・ポバール社製の商品名)、クラレ社製のアニオン変性PVA(Kポリマーシリーズ)(クラレ社製の商品名)等が挙げられる。また、PVA・アクリル酸・メタクリル酸共重合体としては、大同化成工業社製のPOVACOAT(大同化成工業社製の商品名)等が挙げられる。
これらの変性PVAは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
このような変性PVAの含有量は、水性ボールペン用インク組成物全量に対して、好ましくは、0.1〜8質量%、更に好ましくは、0.4〜5質量%、特に好ましくは、1〜4質量%であることが望ましい。
この含有量が0.1質量%未満では、粘度付与性能が充分でなく、描線の滲み耐性が低下するなどの、一方、8質量%を越えると、粘度が高すぎてインクの追従性能が低下し、好ましくない。
【0016】
本発明に用いるホウ酸及びその塩としては、ホウ酸、ホウ酸のアルカリ金属塩(リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム)、ホウ酸のアンモニウム塩などが挙げられ、例えば、ホウ酸(HBO)、三酸化二ホウ酸(B)、メタホウ酸ナトリウム(NaBO)、二ホウ酸ナトリウム(Na)、四ホウ酸ナトリウム(Na)、五ホウ酸ナトリウム(NaB)、六ホウ酸ナトリウム(Na10)、八ホウ酸ナトリウム(NaB13)、ホウ酸アンモニウム〔(NHO・5B〕、並びに、これらの水和物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
好ましくは、インク成分に対する溶解性や汎用性の点から、四ホウ酸ナトリウム、ホウ酸アンモニウム、三酸化二ホウ酸の使用が望ましい。
【0017】
これらのホウ酸及びその塩の合計含有量は、水性ボールペン用インク組成物全量に対して、好ましくは、0.01〜3質量%、更に好ましくは、0.1〜1質量%とすることが望ましい。
このホウ酸及びその塩の含有量が0.01質量%未満であると、粘度付与性が充分でなく、一方、3質量%を超えると、インク粘度の経時安定性が低下するなどの不具合を招くことがある。
【0018】
本発明の水性ボールペン用インク組成物において、上記各成分の他、色材、残部として溶媒である水(水道水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水等)、更に、水性ボールペン用に通常用いられる各成分、例えば、水溶性有機溶剤、上記粘度調整剤となる変性PVA、ホウ酸塩以外の粘度調整剤、分散剤、潤滑剤、防錆剤、防腐剤もしくは防菌剤、pH調整剤などを本発明の効果を損なわない範囲で、適宜含有することができる。
【0019】
本発明に用いる色材としては、水に溶解もしくは分散する染料、酸化チタン等の従来公知の無機系および有機顔料系、顔料を含有した樹脂粒子顔料、樹脂エマルションを染料で着色した疑似顔料、白色系プラスチック顔料、シリカや雲母を基材とし表層に酸化鉄や酸化チタンなどを多層コーティングした顔料等を本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
染料としては、例えば、エオシン、フオキシン、ウォーターイエロー#6−C、アシッドレッド、ウォーターブルー#105、ブリリアントブルーFCF、ニグロシンNB等の酸性染料;ダイレクトブラック154、ダイレクトスカイブルー5B、バイオレットB00B等の直接染料;ローダミン、メチルバイオレット等の塩基性染料などが挙げられる。
【0020】
無機系顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレンおよびペリノン顔料、ニトロソ顔料などが挙げられる。より具体的には、カーボンブラック、チタンブラック、亜鉛華、べんがら、アルミニウム、酸化クロム、鉄黒、コバルトブルー、酸化鉄黄、ビリジアン、硫化亜鉛、リトポン、カドミウムエロー、朱、カドミウムレッド、黄鉛、モリブデードオレンジ、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート、ホワイトカーボン、クレー、タルク、群青、沈降性硫酸バリウム、バライト粉、炭酸カルシウム、鉛白、紺白、紺青、マンガンバイオレット、アルミニウム粉、真鍮粉等の無機顔料、C.I.ピグメントブルー17、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー17、C.I.ピグメントブルー27、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド48、C.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド53、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド104、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド245、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー34、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー167、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントバイオレット1、C.I.ピグメントバイオレット3、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット50、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
これらの色材は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
これらの色材の含有量は、水性ボールペン用インク組成物全量に対して、0.1〜40質量%に範囲で適宜調整することが可能である。
【0021】
用いることができる水溶性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、3−ブチレングリコール、チオジエチレングリコール、グリセリン等のグリコール類や、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、単独或いは混合して使用することができる。
これらの水溶性有機溶剤の含有量は、水性ボールペン用インク組成物全量に対して、好ましくは、3〜30質量%とすることが望ましい。
【0022】
用いることができる粘度調整剤としては、例えば、合成高分子、セルロースおよび多糖類からなる群から選ばれた少なくとも一種が望ましい。具体的には、アラビアガム、トラガカントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、カラギーナン、ゼラチン、キサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカン、ダイユータンガム、デキストラン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプングリコール酸及びその塩、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸及びその塩、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレシオキサイド、酢酸ビニルとポリビニルピロリドンの共重合体、架橋型アクリル酸重合体及びその塩、非架橋型アクリル酸重合体及びその塩、スチレン−アクリル酸共重合体及びその塩などが挙げられる。
【0023】
分散剤としては、スチレン−マレイン酸共重合体及びその塩、スチレン−アクリル酸共重合体及びその塩、α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体及びその塩、ポリアクリル酸ポリメタクリル酸共重合物などの少なくとも1種が挙げられる。
潤滑剤としては、顔料の表面処理剤にも用いられる多価アルコールの脂肪酸エステル、糖の高級脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン高級脂肪酸エステル、アルキル燐酸エステルなどのノニオン系や、リン酸エステル、高級脂肪酸アミドのアルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩などのアニオン系、ポリアルキレングリコールの誘導体やフッ素系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンなどが挙げられる。
また、防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロへキシルアンモニウムナイトライト、サポニン類など、防腐剤もしくは防菌剤としては、フェノール、ナトリウムオマジン、安息香酸ナトリウム、ベンズイミダゾール系化合物などが挙げられる。
pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、モルホリン、トリエチルアミン等のアミン化合物、アンモニア等が挙げられる。
【0024】
この水性ボールペン用インク組成物を製造するには、従来から知られている方法が採用可能であり、例えば、上記変性PVA、ホウ酸及びその塩の少なくとも1種、色材の他、上記水性における各成分を所定量配合し、ホモミキサー、もしくはディスパー等の攪拌機により攪拌混合することによって得られる。更に必要に応じて、ろ過や遠心分離によってインク組成物中の粗大粒子を除去してもよい。
【0025】
本発明の水性ボールペン用インク組成物は、金属チップ、樹脂チップなどのペン先部を備えたボールペンに搭載して使用に供することができる。
用いることができる水性ボールペンは、上記組成となる水性ボールペン用インク組成物を搭載したものであり、好ましくは、金属ボール等を回転自在に抱持したボールペンチップを直接又は中継部材を介して挿着したパイプ又はパイプ形状の成形物等からなるインク収容管内に上記特性のインク組成物を充填し、かつ、該インク組成物後端面にインク追従体を配設してなる構成となるものが望ましい。インク追従体としては、インク収容管内に収容された水性ボールペン用インク組成物とは相溶性がなく、かつ、該水性ボールペン用インク組成物に対して比重が小さい物質、例えば、ポリブテン、シリコーンオイル、鉱油等が挙げられる。
なお、ボールペンの構造は、特に限定されず、例えば、軸筒自体をインク収容体として該軸筒内に上記構成の水性ボールペン用インク組成物を充填したコレクター構造(インキ保持機構)を備えた直液式のボールペンであってもよいものである。
【0026】
このように構成される本発明の水性ボールペン用インク組成物が、何故、筆記描線に滲みもなく、また、紙裏面へのインクの裏抜けもなく、しかも、カスレやボテ、線割れもなく、美しい文字が書ける機能を発現するのか定かではないが、インク組成物中に粘度調整剤として変性PVAと、ホウ酸及びその塩の少なくとも1種を併用することにより、筆記描線等を描画する際の筆記速度や筆記圧が変動する範囲において、好適なインク流動特性を発現するためと推測される。
本発明で用いる上記変性PVA、ホウ酸及びその塩の少なくとも1種の併用による効果は、本発明の効果を発揮せしめる持続効果が極めて優れているために多くの含有量が必要でなく、しかも、その効果の発現期間・持続時間も長く、更に水溶性であるために経時的な安定性にも優れたものとなる。
【実施例】
【0027】
次に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
【0028】
〔実施例1〜5及び比較例1〜5〕
下記表1に示す配合処方にしたがって、常法により各水性ボールペン用インク組成物を調製した。得られた各水性ボールペン用インク組成物(全量100質量%)について、下記方法により水性ボールペンを作製し、下記各評価方法により、滲み・ボテ、カスレ、耐線割れ、裏抜けについて評価した。
これらの結果を下記表1に示す。
【0029】
(水性ボールペンの作製)
ボールペン〔三菱鉛筆株式会社製、商品名:シグノUM−100〕の軸を使用し、内径3.8mm、長さ113mmのポリプロピレン製インク収容管とステンレス製チップ(超硬合金ボール、ボール径0.7mm)及び該収容管と該チップを連結する継手からなるリフィールに上記各インクを充填し、インク後端にポリブテンからなるインク追従体を装填し、水性ボールペンを作製した。
【0030】
(滲み・ボテの評価方法)
上記で作製した各水性ボールペンを用いて筆記試験用紙にフリーハンドで「永」の字を筆記し、1画目の点の滲み、ボテの状態を目視で、下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:滲み、ボテがほとんどなし。
△:滲み、またはボテが若干ある。
×:滲みやボテがひどく、描線が醜い。
【0031】
(カスレの評価方法)
上記で作製した各水性ボールペンを用いて筆記試験用紙にフリーハンドで「永」の字を筆記し、2画目の終筆部のハネの状態を目視で、下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:終筆部の描線が非常に細く、カスレもなく、きれいな描線が表現できている。
△:描線が多少カスレており、描線濃度がうすい。
×:描線が酷くカスレており、描線が醜い。
【0032】
(耐線割れの評価方法)
上記で作製した各水性ボールペンを用いて筆記試験用紙にフリーハンドで「永」の字を筆記し、5画目の品位を目視で、下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:線割れが全くなく、きれいな描線が表現できている。
△:線割れが多少あり、描線濃度がうすい。
×:線割れがあり、描線が醜い。
【0033】
(裏抜けの評価方法)
上記で作製した各水性ボールペンを用いて藁半紙にフリーハンドで「永」の字を筆記し、描線の裏面を目視で、下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:裏抜けがほとんどない。
△:若干の裏抜けがあり。
×:明らかな裏抜けあり。
【0034】
【表1】
【0035】
上記表1の結果から明らかなように、本発明となる実施例1〜5は、本発明の範囲外となる比較例1〜5に較べて、滲み・ボテ、カスレ、耐線割れ、裏抜けもなく、美しい文字が書ける水性ボールペン用インク組成物となることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0036】
水性のボールペンに好適な水性ボールペン用インク組成物が得られる。