(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱と電気とを併せて発生する熱電併給装置と、前記熱電併給装置で発生した熱を、湯水を蓄熱媒体として用いて蓄える貯湯タンクと、前記熱電併給装置の運転制御及び湯水の流動制御とを行う運転制御手段とを備え、前記運転制御手段が、前記熱電併給装置の運転継続中、前記貯湯タンクの内部下方から取り出した湯水を前記熱電併給装置からの熱回収に用い、熱回収を行った後の湯水を前記貯湯タンクの内部上方に流入させることで、前記貯湯タンクの内部で温度成層を形成させながら湯水を貯える熱回収運転を行う排熱回収システムの水質維持方法であって、
前記貯湯タンクの内部で温度成層を形成して貯えられている湯水の現状の合計蓄熱量を導出する蓄熱量導出工程と、
前記蓄熱量導出工程で導出した前記現状の合計蓄熱量が所定蓄熱量範囲内にあるか否かを判定する蓄熱状態判定工程と、
前記蓄熱状態判定工程において湯水の前記現状の合計蓄熱量が前記所定蓄熱量範囲内にあると判定したとき、前記貯湯タンクの内部で湯水の温度分布を均一化して、均一化後温度の湯水を得る温度均一化工程と、
前記温度均一化工程によって前記貯湯タンクの内部での温度分布が均一化された前記均一化後温度の湯水を用いて前記熱回収運転を行うことで、前記均一化後温度の湯水の昇温を前記熱電併給装置からの熱回収により行う昇温工程とを有し、
前記所定蓄熱量範囲は、前記蓄熱量導出工程で導出した前記現状の合計蓄熱量の下で前記貯湯タンクの内部での湯水の温度分布を均一化した場合に予測される前記貯湯タンク内での湯水の予測均一化後温度が、前記熱電併給装置からの熱回収に用いるときの湯水に要求される上限湯水温度以下の所定温度範囲内になるときの、前記現状の合計蓄熱量の範囲である排熱回収システムの水質維持方法。
前記温度均一化工程は、前記貯湯タンクの内部下方から取り出した湯水を、前記貯湯タンクの内部上方に流入させることによって行われる請求項1〜3の何れか一項に記載の排熱回収システムの水質維持方法。
前記温度均一化工程で処理した後の湯水の前記均一化後温度は、前記熱電併給装置からの熱回収に用いるときの湯水に要求されている上限湯水温度以下の前記所定温度範囲内となる温度であり、
前記温度均一化工程で処理した後の前記均一化後温度の湯水を前記昇温工程で処理した後の昇温後温度は、湯水の水質維持のために必要な必要湯水温度以上の温度である請求項1〜4の何れか一項に記載の排熱回収システムの水質維持方法。
熱と電気とを併せて発生する熱電併給装置と、前記熱電併給装置で発生した熱を、湯水を蓄熱媒体として用いて蓄える貯湯タンクと、前記熱電併給装置の運転制御及び湯水の流動制御とを行う運転制御手段とを備え、前記運転制御手段が、前記熱電併給装置の運転継続中、前記貯湯タンクの内部下方から取り出した湯水を前記熱電併給装置からの熱回収に用い、熱回収を行った後の湯水を前記貯湯タンクの内部上方に流入させることで、前記貯湯タンクの内部で温度成層を形成させながら湯水を貯える熱回収運転を行う排熱回収システムであって、
前記運転制御手段は、
前記貯湯タンクの内部で温度成層を形成して貯えられている湯水の現状の合計蓄熱量を導出し、及び、
導出した前記現状の合計蓄熱量が所定蓄熱量範囲内にあるか否かを判定し、及び、
湯水の前記現状の合計蓄熱量が前記所定蓄熱量範囲内にあると判定したとき、前記貯湯タンクの内部で湯水の温度分布を均一化して、均一化後温度の湯水を得て、及び、
前記貯湯タンクの内部での温度分布が均一化された前記均一化後温度の湯水を用いて前記熱回収運転を行うことで、前記均一化後温度の湯水の昇温を前記熱電併給装置からの熱回収により行うように構成され、
前記所定蓄熱量範囲は、前記現状の合計蓄熱量の下で前記貯湯タンクの内部での湯水の温度分布を均一化した場合に予測される前記貯湯タンク内での湯水の予測均一化後温度が、前記熱電併給装置からの熱回収に用いるときの湯水に要求される上限湯水温度以下の所定温度範囲内になるときの、前記現状の合計蓄熱量の範囲である排熱回収システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水質維持運転を行うために上述したような補助熱源機装置を用いる場合、水質維持運転のために燃料を消費することになる点で好ましくない。更に、熱電併給装置を稼働させた場合に得られる省エネ性や経済性が向上するという利点が失われる。また、水質維持運転を実行するシステムの中に補助熱源装置を組み込む必要があるため、機器構成及び水質維持運転の制御が複雑になるという問題がある。
【0006】
特許文献1に記載のシステムのように、熱電併給装置から発生する熱にてその貯湯タンクの湯水を加熱するように構成されていれば、熱電併給装置の運転中に水質維持運転を行うことができるため、補助熱源装置が不要であるという利点がある。
【0007】
しかし、熱電併給装置から発生する熱のみを用いて水質維持運転を行おうとした場合、以下に説明するように、熱電併給装置の運転に支障が生じる可能性や、湯水の水質維持のために必要な必要湯水温度(例えば、菌の不活化が期待される温度)までの充分な昇温が行えない可能性がある。
【0008】
例えば、熱電併給装置で発生した熱を、貯湯タンクに貯えている湯水で回収するということは、貯湯タンクに貯えている湯水は、熱電併給装置を冷却する役割を担っているということである。この場合、貯湯タンクから熱電併給装置へと供給される湯水の温度が低いほどその冷却能力は高いと言える。逆に、貯湯タンクから熱電併給装置へと供給される湯水の温度が高いほどその冷却能力は低くなり、余りにも湯水の温度が高くなると熱電併給装置の冷却を充分に行えなくなる。つまり、貯湯タンクに貯えている湯水を、湯水の水質維持のために昇温できたとしても、熱電併給装置の冷却を充分に行えず、熱電併給装置の運転に支障が生じる可能性がある。
【0009】
また、広く用いられている、内部で温度成層を形成させながら湯水を貯えるタイプの貯湯タンクの場合、貯湯タンクの内部下方から取り出した湯水を熱電併給装置からの熱回収に用い、熱回収を行った後の湯水を貯湯タンクの内部上方に流入させる構成となっている。このような構成において、貯湯タンクの内部下方に貯えられている低温の湯水を、熱電併給装置からの排熱回収によって例えば湯水の水質維持のために必要な必要湯水温度まで昇温しようとすると、排熱回収時の湯水の流速を遅くしなければならない。そのため、湯水が流れる配管経路での放熱による温度降下が大きくなり、且つ、貯湯速度も遅くなるので、貯湯タンク内での放熱による温度低下も大きくなる。そのため、熱電併給装置から帰還して貯湯タンクの内部上方に流入した時点では十分に高温であったとしても、それが貯湯タンクの内部下方に移動する頃には温度が低下し、湯水の水質維持のために必要な必要湯水温度を下回ってしまうことになる。
【0010】
以上のように、熱電併給装置から発生する熱のみを用いて水質維持運転を行おうとしても、熱電併給装置の運転に支障が生じる可能性や、湯水の水質維持のために必要な必要湯水温度(例えば、菌の不活化が期待される温度)までの充分な昇温が行えない可能性がある。そのため、結局は、上述した補助熱源装置による湯水の昇温を併用しなければならないこともある。
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱電併給装置から発生する熱のみを用いて水質維持運転を実行できる排熱回収システムの水質維持方法及び排熱回収システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための本発明に係る排熱回収システムの水質維持方法の特徴構成は、熱と電気とを併せて発生する熱電併給装置と、前記熱電併給装置で発生した熱を、湯水を蓄熱媒体として用いて蓄える貯湯タンクと、前記熱電併給装置の運転制御及び湯水の流動制御とを行う運転制御手段とを備え、前記運転制御手段が、前記熱電併給装置の運転継続中、前記貯湯タンクの内部下方から取り出した湯水を前記熱電併給装置からの熱回収に用い、熱回収を行った後の湯水を前記貯湯タンクの内部上方に流入させることで、前記貯湯タンクの内部で温度成層を形成させながら湯水を貯える熱回収運転を行う排熱回収システムの水質維持方法であって、
前記貯湯タンクの内部で温度成層を形成して貯えられている湯水の現状の合計蓄熱量を導出する蓄熱量導出工程と、
前記蓄熱量導出工程で導出した前記現状の合計蓄熱量が所定蓄熱量範囲内にあるか否かを判定する蓄熱状態判定工程と、
前記蓄熱状態判定工程において湯水の前記現状の合計蓄熱量が前記所定蓄熱量範囲内にあると判定したとき、前記貯湯タンクの内部で湯水の温度分布を均一化して、均一化後温度の湯水を得る温度均一化工程と、
前記温度均一化工程によって前記貯湯タンクの内部での温度分布が均一化された前記均一化後温度の湯水を用いて前記熱回収運転を行うことで、前記均一化後温度の湯水の昇温を前記熱電併給装置からの熱回収により行う昇温工程とを有し、
前記所定蓄熱量範囲は、前記蓄熱量導出工程で導出した前記現状の合計蓄熱量の下で前記貯湯タンクの内部での湯水の温度分布を均一化した場合に予測される前記貯湯タンク内での湯水の予測均一化後温度が、前記熱電併給装置からの熱回収に用いるときの湯水に要求される上限湯水温度以下の所定温度範囲内になるときの、前記現状の合計蓄熱量の範囲である点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、熱電併給装置の運転継続中、貯湯タンクの内部下方から取り出した湯水を熱電併給装置からの熱回収に用い、熱回収を行った後の湯水を貯湯タンクの内部上方に流入させることで、貯湯タンクの内部で温度成層を形成させながら湯水を貯える熱回収運転を行いつつ、貯湯タンクの内部で温度成層を形成して貯えられている湯水の現状の合計蓄熱量を導出する蓄熱量導出工程と、その蓄熱量導出工程で導出した現状の合計蓄熱量が所定蓄熱量範囲内にあるか否かを判定する蓄熱状態判定工程と、その蓄熱状態判定工程において湯水の現状の合計蓄熱量が所定蓄熱量範囲内にあると判定したとき、貯湯タンクの内部で湯水の温度分布を均一化して、均一化後温度の湯水を得る温度均一化工程を行う。そして、その温度均一化工程によって貯湯タンクの内部での温度分布が均一化された均一化後温度の湯水を用いて熱回収運転を行うと、均一化後温度の湯水の昇温を熱電併給装置からの熱回収により行う昇温工程が行われることとなる。つまり、温度均一化工程によって、貯湯タンクの内部で湯水の温度分布を均一化することで、貯湯タンクの内部で温度成層が形成されている場合に比べて、貯湯タンクの内部下方での湯水温度を相対的に高くすることができる。その結果、貯湯タンクから熱電併給装置へと熱回収のために供給される湯水の温度を相対的に高くすることができる。そして、その後の昇温工程において、均一化後温度の湯水(即ち、貯湯タンクの内部で温度成層が形成されている場合に比べて相対的に高温の湯水)の昇温を熱電併給装置からの熱回収により行うことで、熱電併給装置から帰還して貯湯タンクの内部上方に流入する湯水の温度も、貯湯タンクの内部で温度成層が形成されている場合に比べて高くなり、且つ、そのために排熱回収時の湯水の流速を遅くする必要はない。
【0014】
このように、本特徴構成では、内部で温度成層が形成されている貯湯タンクが貯えている相対的に低温の湯水を、単純に熱電併給装置の排熱によって昇温するのではなく、温度均一化工程によって貯湯タンクの内部で湯水の温度分布を均一化した上で更に熱電併給装置の排熱によって昇温する。その結果、内部で温度成層が形成されている貯湯タンクが貯えている相対的に低温の湯水を単純に熱電併給装置の排熱によって昇温した場合(即ち、温度均一化工程を行わない場合)には到達できない高温にまで湯水の温度を高めることができる。また、このような湯水の昇温を、熱電併給装置を運転しながら行えるため、熱電併給装置の稼働率が向上することによる省エネ性や経済性の向上という利点が得られる。
従って、熱電併給装置から発生する熱のみを用いて貯湯タンクが貯えている湯水を高温にして菌の繁殖を抑制するという水質維持運転を実行できる排熱回収システムの水質維持方法を提供できる。
【0015】
本発明に係る排熱回収システムの水質維持方法の別の特徴構成は、前記蓄熱状態判定工程において湯水の前記現状の合計蓄熱量が前記所定蓄熱量範囲よりも低いと判定したとき、前記温度均一化工程に先立って、湯水の前記予測均一化後温度を前記所定温度範囲内にするために前記貯湯タンクに貯えられている湯水に対して追加する必要のある追加蓄熱量を導出する追加熱量導出工程と、前記追加熱量導出工程で導出した前記追加蓄熱量を前記貯湯タンクに貯えられている湯水に対して追加するために前記熱回収運転を行う熱追加工程とを行う点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、温度均一化工程に先立って、湯水の予測均一化後温度を所定温度範囲内にするために貯湯タンクに貯えられている湯水に対して追加する必要のある追加蓄熱量を導出する追加熱量導出工程と、その追加熱量導出工程で導出した追加蓄熱量を貯湯タンクに貯えられている湯水に対して追加するために熱回収運転を行う熱追加工程とが実行される。つまり、追加熱量導出工程と熱追加工程とが行われることで、温度均一化工程を行った後での湯水の均一化後温度を所定温度範囲内にすることができる。その結果、温度均一化工程を行った後での湯水を昇温工程によって確実に昇温させることができる。
【0017】
本発明に係る排熱回収システムの水質維持方法の更に別の特徴構成は、前記蓄熱状態判定工程は、前記蓄熱量導出工程で導出した前記現状の合計蓄熱量の下で前記貯湯タンクの内部での湯水の温度分布を均一化した場合に予測される前記貯湯タンクの内部での湯水の前記予測均一化後温度を導出する均一化後温度導出工程と、前記均一化後温度導出工程で導出した湯水の前記予測均一化後温度が前記所定温度範囲内にあるときに前記現状の合計蓄熱量が前記所定蓄熱量範囲内にあると判定する温度条件判定工程とを有する点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、均一化後温度導出工程において、蓄熱量導出工程で導出した現状の合計蓄熱量の下で貯湯タンクの内部での湯水の温度分布を均一化した場合に予測される貯湯タンクの内部での湯水の予測均一化後温度を導出し、温度条件判定工程において、均一化後温度導出工程で導出した湯水の予測均一化後温度が所定温度範囲内にあるときに現状の合計蓄熱量が所定蓄熱量範囲内にあると判定することで、温度を指標として現状の合計蓄熱量が所定蓄熱量範囲内にあるか否かを知ることができる。
【0019】
本発明に係る排熱回収システムの水質維持方法の更に別の特徴構成は、前記温度均一化工程は、前記貯湯タンクの内部下方から取り出した湯水を、前記貯湯タンクの内部上方に流入させることによって行われる点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、温度成層が形成されることで、内部上方に相対的に高温の湯水が貯えられ且つ内部下方に相対的に低温の湯水が貯えられている貯湯タンクにおいて、貯湯タンクの内部下方から取り出した湯水を、貯湯タンクの内部上方に流入させることで、低温の湯水と高温の湯水とが混合されて、貯湯タンクの内部で湯水の温度分布が均一化される。
【0021】
本発明に係る排熱回収システムの水質維持方法の更に別の特徴構成は、前記温度均一化工程で処理した後の湯水の前記均一化後温度は、前記熱電併給装置からの熱回収に用いるときの湯水に要求されている上限湯水温度以下の前記所定温度範囲内となる温度であり、前記温度均一化工程で処理した後の前記均一化後温度の湯水を前記昇温工程で処理した後の昇温後温度は、湯水の水質維持のために必要な必要湯水温度以上の温度である点にある。
【0022】
上記特徴構成によれば、温度均一化工程で処理した後の湯水を、熱電併給装置からの熱回収において確実に利用することができ、昇温工程で処理した後の湯水を、湯水の水質維持のために確実に利用することができる。
【0023】
本発明に係る排熱回収システムの特徴構成は、熱と電気とを併せて発生する熱電併給装置と、前記熱電併給装置で発生した熱を、湯水を蓄熱媒体として用いて蓄える貯湯タンクと、前記熱電併給装置の運転制御及び湯水の流動制御とを行う運転制御手段とを備え、前記運転制御手段が、前記熱電併給装置の運転継続中、前記貯湯タンクの内部下方から取り出した湯水を前記熱電併給装置からの熱回収に用い、熱回収を行った後の湯水を前記貯湯タンクの内部上方に流入させることで、前記貯湯タンクの内部で温度成層を形成させながら湯水を貯える熱回収運転を行う排熱回収システムであって、
前記運転制御手段は、
前記貯湯タンクの内部で温度成層を形成して貯えられている湯水の現状の合計蓄熱量を導出し、及び、
導出した前記現状の合計蓄熱量が所定蓄熱量範囲内にあるか否かを判定し、及び、
湯水の前記現状の合計蓄熱量が前記所定蓄熱量範囲内にあると判定したとき、前記貯湯タンクの内部で湯水の温度分布を均一化して、均一化後温度の湯水を得て、及び、
前記貯湯タンクの内部での温度分布が均一化された前記均一化後温度の湯水を用いて前記熱回収運転を行うことで、前記均一化後温度の湯水の昇温を前記熱電併給装置からの熱回収により行うように構成され、
前記所定蓄熱量範囲は、前記現状の合計蓄熱量の下で前記貯湯タンクの内部での湯水の温度分布を均一化した場合に予測される前記貯湯タンク内での湯水の予測均一化後温度が、前記熱電併給装置からの熱回収に用いるときの湯水に要求される上限湯水温度以下の所定温度範囲内になるときの、前記現状の合計蓄熱量の範囲である点にある。
【0024】
上記特徴構成によれば、熱電併給装置の運転継続中、貯湯タンクの内部下方から取り出した湯水を熱電併給装置からの熱回収に用い、熱回収を行った後の湯水を貯湯タンクの内部上方に流入させることで、貯湯タンクの内部で温度成層を形成させながら湯水を貯える熱回収運転を行いつつ、貯湯タンクの内部で温度成層を形成して貯えられている湯水の現状の合計蓄熱量を導出し、その導出した現状の合計蓄熱量が所定蓄熱量範囲内にあるか否かを判定し、その現状の合計蓄熱量が所定蓄熱量範囲内にあると判定したとき、貯湯タンクの内部で湯水の温度分布を均一化する。その結果、均一化後温度の湯水を得て、その貯湯タンクの内部での温度分布が均一化された均一化後温度の湯水を用いて熱回収運転を行うことで、均一化後温度の湯水の昇温を熱電併給装置からの熱回収により行う。つまり、貯湯タンクの内部で湯水の温度分布を均一化することで、貯湯タンクの内部で温度成層が形成されている場合に比べて、貯湯タンクの内部下方での湯水温度を相対的に高くすることができる。その結果、貯湯タンクから熱電併給装置へと熱回収のために供給される湯水の温度を相対的に高くすることができる。そして、その後において、均一化後温度の湯水(即ち、貯湯タンクの内部で温度成層が形成されている場合に比べて相対的に高温の湯水)の昇温を熱電併給装置からの熱回収により行うことで、熱電併給装置から帰還して貯湯タンクの内部上方に流入する湯水の温度も、貯湯タンクの内部で温度成層が形成されている場合に比べて高くなり、且つ、そのために排熱回収時の湯水の流速を遅くする必要はない。
【0025】
このように、本特徴構成では、内部で温度成層が形成されている貯湯タンクが貯えている相対的に低温の湯水を、単純に熱電併給装置の排熱によって昇温するのではなく、貯湯タンクの内部で湯水の温度分布を均一化した上で更に熱電併給装置の排熱によって昇温する。その結果、内部で温度成層が形成されている貯湯タンクが貯えている相対的に低温の湯水を単純に熱電併給装置の排熱によって昇温した場合(即ち、上述した温度均一化を行わない場合)には到達できない高温にまで湯水の温度を高めることができる。また、このような湯水の昇温を、熱電併給装置を運転しながら行えるため、熱電併給装置の稼働率が向上することによる省エネ性や経済性の向上という利点が得られる。
【0026】
本発明に係る排熱回収システムの別の特徴構成は、湯水の前記均一化後温度は、前記熱電併給装置からの熱回収を用いるときの湯水に要求されている上限湯水温度以下の前記所定温度範囲内となる温度であり、
前記均一化後温度の湯水を用いて前記熱回収運転を行うことで、前記均一化後温度の湯水の昇温を行った後の昇温後温度は、湯水の水質維持のために必要な必要湯水温度以上の温度である点にある。
【0027】
上記特徴構成によれば、温度均一化の処理を行った後の湯水を、熱電併給装置からの熱回収において確実に利用することができ、昇温の処理を行った後の湯水を、湯水の水質維持のために確実に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、図面を参照して本発明に係る排熱回収システム及び排熱回収システムの水質維持方法について説明する。
図1は、排熱回収システムの構成を示す図である。
図1に示すように、排熱回収システムは、熱と電気とを併せて発生する熱電併給装置1と、熱電併給装置1で発生した熱を、湯水を蓄熱媒体として用いて蓄える貯湯タンクと、熱電併給装置1の運転制御及び湯水の流動制御を行う運転制御手段Cとを備える。運転制御手段Cは、後述する各種のポンプや弁などの動作や、排熱回収システムが備える各装置の動作の制御も行う。
【0030】
〔システム構成の説明〕
熱電併給装置1は、熱と電気とを併せて発生させることのできる装置であれば、どのような構成のものでも構わない。例えば、燃料電池や、エンジンとそのエンジンによって駆動される発電機とを備えてエンジンの排熱と発電機の発電電力とを利用するような装置などを、熱電併給装置1として利用できる。図示は省略するが、熱電併給装置1の発電出力側には例えばインバータ等が設けられ、そのインバータは、熱電併給装置1の出力電力を商用電力系統から供給される電力と同じ電圧及び同じ周波数にするように構成されている。そして、インバータから出力される電力は、様々な電力負荷装置に供給される。
【0031】
熱電併給装置1と貯湯タンク4とは、蓄熱媒体(例えば、水(湯水)など)が循環する排熱循環路L8を用いて接続されている。つまり、湯水が、排熱循環路L8を介して、熱電併給装置1と貯湯タンク4との間を循環するように構成されている。運転制御手段Cは、熱電併給装置1を運転させている間、熱電併給装置1と貯湯タンク4との間に湯水を循環させる。湯水は、熱電併給装置1を冷却する役割と、熱電併給装置1から排熱を回収する役割とを担っている。
【0032】
貯湯タンク4には、温度成層を形成する形態で湯水が貯えられている。貯湯タンク4の内部下方には相対的に低温の湯水が貯えられ、貯湯タンク4の内部上方には相対的に高温の湯水が貯えられている。貯湯タンク4の内部には、下方側から上方側に向かって、貯湯温度センサ25と貯湯温度センサ26と貯湯温度センサ27と貯湯温度センサ28とが設けられている。貯湯タンク4の内部では、温度成層を形成する形態で湯水が貯えられているので、最も上方に設けられている貯湯温度センサ28は最も高温側の湯水の温度を計測し、最も下方に設けられている貯湯温度センサ25は最も低温側の湯水の温度を計測する。
【0033】
熱電併給装置1には、貯湯タンク4の内部下方から取り出された相対的に低温の湯水が、排熱循環路L8を通って供給される。熱電併給装置1の排熱を回収した後の相対的に高温の湯水(即ち、熱電併給装置1の冷却に用いられた後の湯水)は、排熱循環路L8を通って貯湯タンク4の内部上方に流入する。このように、貯湯タンク4に貯えられている相対的に低温の湯水が熱電併給装置1によって昇温され、その後、相対的に高温の湯水として貯湯タンク4に貯えられることになる。排熱循環路L8に設けられている温度センサ38によって、熱電併給装置1に供給される湯水の温度が検出される。排熱循環路L8に設けられている温度センサ39によって、熱電併給装置1で排熱を回収した後の湯水の温度が検出される。温度センサ38及び温度センサ39の検出結果は、運転制御手段Cに伝達され、記憶手段Sに記憶される。
【0034】
本実施形態では、熱電併給装置1から貯湯タンク4へ至る排熱循環路L8の途中に貯湯三方弁19が設けられている。排熱循環路L8はこの貯湯三方弁19からバイパス路L9へと分岐する。バイパス路L9は、貯湯タンク4から熱電併給装置1へ至る排熱循環路L8の途中の合流部に接続されている。貯湯タンク4をバイパスして、湯水を循環させることができる。具体的には、運転制御手段Cは、温度センサ39で検出される湯水の温度(即ち、熱電併給装置1から帰還する湯水の温度)が所定温度よりも低い場合、貯湯三方弁19を、貯湯タンク4側ではなく、バイパス路L9を流れる側に切り換えることで、低温の湯水が貯湯タンク4に帰還することを回避する。そして、バイパス路L9を流れた後、再度、熱電併給装置1に供給されて昇温された湯水の温度が温度センサ39の検出部位で所定温度以上になれば、貯湯三方弁19を貯湯タンク4側に切り換えて、その高温の湯水が貯湯タンク4へと帰還するようにする。例えば、熱電併給装置1の起動時には、熱電併給装置1からの排熱量が非常に少ないため、貯湯タンク4から熱電併給装置1へ湯水(即ち、低温の湯水)を供給しても、その供給した湯水の温度に近い温度の湯水が熱電併給装置1から帰還する。このような場合も、温度センサ39で検出される湯水の温度が所定温度以上になるまでは、湯水をバイパス路L9に流すようにする。
【0035】
貯湯タンク4に貯えられている湯水は、貯湯タンク4の内部上方に接続されている出湯路L1から取り出すことができる。出湯路L1の途中には、貯湯タンク4から出て、上流側三方弁13と補助熱源装置5と分岐部42と下流側三方弁14とが順に設けられている。また、出湯路L1の途中には、貯湯タンク4と上流側三方弁13との間で圧力スイッチ29が設けられ、上流側三方弁13と補助熱源装置5との間で水量センサ30及び上流側温度センサ31が設けられ、補助熱源装置5と分岐部42との間で下流側温度センサ32が設けられている。
【0036】
補助熱源装置5は、燃料を消費して熱を発生することで、湯水を加熱することができる装置である。例えば、補助熱源装置5は、供給されるガスを燃焼し、その燃焼熱などを用いて湯水を加熱する加熱運転状態で運転できる。補助熱源装置5の運転は、運転制御手段Cが制御する。
【0037】
圧力スイッチ29は、出湯路L1の内部の水圧を検出する機能を有している。例えば、圧力スイッチ29が設けられている部位での湯水の水圧が設定値以上であれば、圧力スイッチ29はオン状態を出力する。これに対して、圧力スイッチ29が設けられている部位での湯水の水圧が上記設定値未満になると、圧力スイッチ29はオフ状態を出力する。圧力スイッチ29の検出結果は、運転制御手段Cに伝達され、記憶手段Sに記憶される。
【0038】
水量センサ30は、上流側三方弁13よりも下流側の出湯路L1を流れる湯水の流量を計測する。水量センサ30の検出結果は、運転制御手段Cに伝達され、記憶手段Sに記憶される。
上流側温度センサ31は、補助熱源装置5へと流入する前の湯水の温度を計測する。つまり、補助熱源装置5が加熱運転状態であるとき、上流側温度センサ31は、補助熱源装置5によって加熱される前の湯水の温度を計測する。
下流側温度センサ32は、補助熱源装置5から流出した後の湯水の温度を計測する。つまり、補助熱源装置5が加熱運転状態であるとき、下流側温度センサ32は、補助熱源装置5によって加熱された後の湯水の温度を計測する。
【0039】
出湯路L1は、補助熱源装置5よりも下流側の分岐部42で給湯路L5を分岐し、その分岐部42よりも下流側の下流側三方弁14で湯水循環路L3と風呂循環路L4とに分れる。
【0040】
湯水循環路L3は、下流側三方弁14と暖房用熱交換器7と合流部46と循環ポンプ20と上流側三方弁13と補助熱源装置5とを経由して上記下流側三方弁14に戻る経路を辿る。湯水循環路L3を湯水が循環しており、且つ、補助熱源装置5が加熱運転状態であるとき、暖房用熱交換器7には、補助熱源装置5によって加熱された後の湯水が供給される。
【0041】
暖房循環路L7は、暖房用熱媒が、暖房ポンプ22と暖房用熱交換器7と暖房装置2とを順に循環する経路である。また、暖房循環路L7の途中には、暖房用熱媒が一時的に貯えられる暖房水タンク8も設けられている。本実施形態において、暖房用熱媒は水(湯水)である。
【0042】
暖房用熱交換器7では、湯水循環路L3を通流する湯水と、暖房循環路L7を通流する暖房用熱媒との熱交換が行われる。補助熱源装置5が加熱運転状態であるとき、湯水循環路L3を通流する湯水は補助熱源装置5によって加熱された後で暖房用熱交換器7に流入する。そして、暖房用熱交換器7において、暖房用循環路を通流する暖房用熱媒へ、補助熱源装置5によって加熱された後の湯水が保有する熱が伝達される。そして、暖房用熱交換器7において昇温された後の暖房用熱媒は、暖房循環路L7を通って暖房装置2へと供給される。暖房装置2で熱消費が行われた後の暖房用熱媒は、暖房循環路L7を通って暖房用熱交換器7に流入して昇温される。
【0043】
暖房循環路L7の途中には、暖房用熱交換器7と暖房装置2との間に温度センサ40が設けられ、暖房装置2と暖房水タンク8との間に温度センサ41が設けられる。温度センサ40は、暖房装置2に流入する暖房用熱媒の温度を計測し、温度センサ41は暖房装置2から流出する暖房用熱媒の温度を計測する。温度センサ40及び温度センサ41の検出結果は、運転制御手段Cに伝達され、記憶手段Sに記憶される。
【0044】
風呂循環路L4は、下流側三方弁14と風呂用熱交換器6と合流部50と合流部46と循環ポンプ20と上流側三方弁13と補助熱源装置5とを経由して上記下流側三方弁14に戻る経路を辿る。風呂循環路L4を湯水が循環しており、且つ、補助熱源装置5が加熱運転状態であるとき、風呂用熱交換器6には、補助熱源装置5によって加熱された後の湯水が供給される。
【0045】
浴槽水循環路L6は、湯水が、風呂ポンプ21と浴槽3とを順に循環する経路である。尚、浴槽3の水栓が開けられている場合、湯水は水栓から排出されるため、浴槽3から風呂用熱交換器6に湯水は帰還しない。
【0046】
風呂用熱交換器6では、風呂循環路L4を通流する湯水と、浴槽水循環路L6を通流する湯水との熱交換が行われる。補助熱源装置5が加熱運転状態であるとき、風呂循環路L4を通流する湯水は補助熱源装置5によって加熱された後で風呂用熱交換器6に流入する。そして、風呂用熱交換器6において、浴槽水循環路L6を通流する湯水へ、補助熱源装置5によって加熱された後の湯水が保有する熱が伝達される。そして、風呂用熱交換器6において昇温された後の湯水は、浴槽水循環路L6を通って浴槽3へと供給される。
【0047】
浴槽水循環路L6の途中には、浴槽3と合流部45との間に風呂水位センサ35及び風呂温度センサ36及び風呂水流スイッチ37が設けられる。風呂水位センサ35は、浴槽3に貯えられている湯水の水位を計測する。風呂温度センサ36は、浴槽3に貯えられている湯水の温度を計測する。風呂水位センサ35及び風呂温度センサ36の検出結果は、運転制御手段Cに伝達され、記憶手段Sに記憶される。
【0048】
風呂水流スイッチ37は、浴槽水循環路L6の循環を検出する機能を有している。例えば、浴槽3に湯水が一定量貯まっている場合に風呂ポンプ21を運転させると、浴槽水循環路L6を湯水が循環し、風呂水流スイッチ37はオン状態を出力する。これに対して、浴槽3に湯水が一定量貯まっていない場合は、風呂ポンプ21を運転させても浴槽水循環路L6を湯水が循環しないため、風呂水流スイッチ37はオフ状態を出力する。風呂水流スイッチ37の検出結果は、運転制御手段Cに伝達され、記憶手段Sに記憶される。また、運転制御手段Cは、風呂水流スイッチ37によるオン状態又はオフ状態の出力結果を確定させた後、風呂ポンプ21を停止させる。
【0049】
浴槽水循環路L6の途中に設けられる合流部45には、給湯路L5が接続される。給湯路L5は、出湯路L1の途中の補助熱源装置5よりも下流側から分岐する分岐部42に接続されている。つまり、給湯路L5を流れる湯水は、貯湯タンク4の内部上方から出湯された湯水、或いは、貯湯タンク4の内部上方から出湯された後で更に補助熱源装置5によって加熱された後の湯水である。出湯路L1は、分岐部44において、カランなどに接続される給湯路L5aと、浴槽3(浴槽水循環路L6)に接続される給湯路L5bとに分岐する。給湯路L5bの途中には、湯張弁17及び水量センサ34が設けられる。水量センサの検出結果は運転制御手段Cに伝達され、記憶手段Sに記憶される。湯張弁17の動作は、運転制御手段Cが制御する。運転制御手段Cは、給湯路L5から浴槽水循環路L6へと湯水を新たに供給するとき、水量センサ34で検出される湯水の流量が所望の流量になるように湯張弁17を開弁する。
【0050】
貯湯タンク4に貯えられている湯水は、給水路L2を経由して補給される。給水路L2は、上水などの給水源に接続されている。給水路L2は、貯湯タンク4に接続される給水路L2aと、暖房水タンク8に接続される給水路L2bと、給湯路L5に接続される給水路L2c、風呂循環路L4に接続される給水路L2dとに分岐する。
【0051】
給水路L2aには上水の水圧が常時加わっており、給水路L2aが接続される貯湯タンク4にもその水圧が加わっている。そのため、貯湯タンク4に接続されている各水路内にも給水圧が加わっており、各水路の先を開放するとその給水圧で湯水が押し出される。
【0052】
尚、給水源から給水路L2への給水が遮断されている断水状態であるとき、例えば、貯湯タンク4から出湯路L1及び給湯路L5及び浴槽水循環路L6を介して浴槽3へと湯水が流れ出すと、断水による給水圧の喪失によって貯湯タンク4や出湯路L1等の内部での水圧が低下したままになる。そして、出湯路L1の内部での水圧が設定値未満にまで低下したとき、出湯路L1の途中に設けられている圧力スイッチ29がオフ状態を検出することになる。
【0053】
給水路L2bは、給水路L2の途中に設けられる分岐部47から分岐し、暖房水タンク8に至る。給水路L2bの途中には、補給水閉止弁11と暖房補給水弁18とが設けられる。補給水閉止弁11は常に開状態にされており、暖房補給水弁18の動作は運転制御手段Cによって制御される。運転制御手段Cは、例えば暖房水タンク8の水位が低下すると、その水位を上昇させるように暖房補給水弁18を開弁し、暖房水タンク8へ水を流入させる。
【0054】
給水路L2cは、給水路L2の途中に設けられる分岐部48から分岐し、給湯路L5との合流部43に至る。給水路L2cの途中には、水比例弁16が設けられる。合流部43よりも上流側の給湯路L5には湯比例弁15が設けられる。合流部43よりも下流側の給湯路L5には、通流する湯水の温度を計測する給湯温度センサ33が設けられる。給湯温度センサ33の検出結果は運転制御手段Cに伝達されて、記憶手段Sに記憶される。水比例弁16及び湯比例弁15の動作は、運転制御手段Cが制御する。運転制御手段Cは、給湯温度センサ33で検出される湯水の温度が所望の温度になるように、給湯路L5から合流部43へと供給される相対的に高温の湯水の流量を湯比例弁15によって制御し、且つ、給水路から合流部へと供給される相対的に低温の上水の流量を水比例弁16によって制御する。
【0055】
給水路L2dは、給水路L2の途中に設けられる分岐部49から分岐し、風呂循環路L4の途中に設けられる合流部50に至る。給水路L2dの途中には、循環比例弁12が設けられる。運転制御手段Cは、補助熱源装置5で昇温した湯水を貯湯タンク4に貯える運転を行うとき、この循環比例弁12を開状態に制御し、それ以外の場合は循環比例弁12を閉状態に制御する。具体的には、運転制御手段Cは、補助熱源装置5で昇温した湯水を貯湯タンク4に貯える運転を行うとき、循環ポンプ20を動作させながら補助熱源装置5を運転し及び循環比例弁12を開状態に制御して、湯水を二つの経路、即ち、湯水循環路L3(循環ポンプ20→上流側三方弁13→補助熱源装置5→下流側三方弁14→合流部46→循環ポンプ20)と、それとは別の経路(循環ポンプ20→上流側三方弁13→貯湯タンク4→分岐部49→循環比例弁12→合流部50→循環ポンプ20)、とに湯水が流れる状態を作り出す。ここで、循環ポンプ20を通過した後の湯水には補助熱源装置5で昇温された高温の湯水が混合されており、その循環ポンプ20を通過した後の湯水が上流側三方弁13において貯湯タンク4側と補助熱源装置5側とに分配されるため、結果として、貯湯タンク4には補助熱源装置5で昇温した湯水が貯えられることになる。
【0056】
給水路L2の途中に設けられる分岐部47と分岐部48との間には、給水温度センサ23及び給水水量センサ24が設けられる。給水温度センサ23及び給水水量センサ24の検出結果は、運転制御手段Cに伝達されて、記憶手段Sに記憶される。
【0057】
本実施形態の排熱回収システムでは、運転制御手段Cは、熱電併給装置1の運転制御及び湯水の流動制御を行う。例えば、運転制御手段Cは、熱電併給装置1の運転継続中、貯湯タンク4の内部下方から取り出した湯水を熱電併給装置1からの熱回収に用い、熱回収を行った後の湯水を貯湯タンク4の内部上方に流入させることで、貯湯タンク4の内部で温度成層を形成させながら湯水を貯える熱回収運転を行う。
【0058】
運転制御手段Cは様々な情報処理を行うことができる演算処理装置を用いて実現でき、例えば家庭内の台所や浴室、脱衣室などに設けられるリモコン装置Rと通信線(図示せず)を介して接続される。リモコン装置Rは、情報を表示する表示部r1、使用者からの指令情報などの入力を受け付ける情報入力部r2、情報を音声メッセージや鳴動音等によって出力する音声出力部r3を備える。表示部r1は、文字情報などを表示できる装置(例えば液晶表示装置など)を用いて実現できる。情報入力部r2は、操作ボタン等を用いて実現でき、或いは、タッチパネル式の表示部r1に表示させた画像ボタンを用いて実現できる。記憶手段Sは、半導体メモリなどを用いて実現でき、排熱回収システムで取り扱われる情報を記憶する。尚、記憶手段Sは、運転制御手段Cやリモコン装置Rとは別体で設けられている場合や、運転制御手段Cやリモコン装置Rに内蔵されている場合など、何れであってもよい。
【0059】
運転制御手段Cは、熱電併給装置1を運転するときには、熱電併給装置1を運転して熱と電気とを併せて発生させる熱電発生運転を実行し、それと併せて、熱を貯湯タンク4へ回収する熱回収運転も行う。その結果、熱電併給装置1の熱電発生運転が行われているとき、貯湯タンク4には常に熱の蓄熱が行われる。そのため、貯湯タンク4に対して新たに蓄えられる熱量が、給湯用途(浴槽3での給湯用途を含む)での熱需要を上回っている場合、貯湯タンク4での蓄熱量は増加する。
【0060】
そして、貯湯タンク4での蓄熱量が上限蓄熱量に達する(即ち、満蓄状態になる)こともある。例えば、運転制御手段Cは、貯湯タンク4に貯えられている湯水のうち、最も低温の湯水の温度を計測する貯湯温度センサ25が、熱電併給装置1からの熱回収に用いるときの湯水に要求される上限湯水温度になったとき、即ち、貯湯タンク4に貯えられている全ての湯水の温度がその上限湯水温度になったとき、貯湯タンク4での蓄熱量が上限蓄熱量に達したと判定する。
【0061】
言い換えると、貯湯タンク4の湯水は、熱電併給装置1からの熱回収に用いるため、即ち、熱電併給装置1を冷却するために利用されるので、上限湯水温度より高い温度の湯水を熱電併給装置1に供給することはできない。つまり、上限湯水温度は、熱電併給装置1の冷却水として許容される上限温度に対応する。そのため、運転制御手段Cは、熱電併給装置1に供給される湯水の近くに存在している湯水の温度を計測する貯湯温度センサ25が上限湯水温度を検出したとき、貯湯タンク4での蓄熱量が上限蓄熱量に達したと判定する。
【0062】
〔水質維持方法〕
図1に示したような、湯水を蓄熱媒体として用いて蓄える貯湯タンク4を備える排熱回収システムでは、貯湯タンク4に貯える湯水に菌が繁殖しないような対策を講じることが必要である。そのような対策としては、貯湯タンク4に貯えている湯水の温度を、湯水の水質維持のために必要な必要湯水温度(例えば、菌の不活化が期待される温度)にまで昇温する対策がある。貯湯タンク4が貯えている湯水の全てを、水質維持のために昇温する場合、補助熱源装置5を用いることなく、熱電併給装置1の排熱のみを用いて行うことができれば好ましい。
【0063】
以下に説明する排熱回収システムの水質維持方法及び排熱回収システムは、熱電併給装置から発生する熱のみを用いて水質維持運転を実行できるように構成してある。
先ず、排熱回収システムで行われる水質維持処理の概要を説明すると、運転制御手段Cは、貯湯タンク4の内部で温度成層を形成して貯えられている湯水の現状の合計蓄熱量を導出し、及び、導出した現状の合計蓄熱量が所定蓄熱量範囲内にあるか否かを判定し、及び、湯水の現状の合計蓄熱量が所定蓄熱量範囲内にあると判定したとき、貯湯タンク4の内部で湯水の温度分布を均一化して、均一化後温度の湯水を得て、及び、貯湯タンク4の内部での温度分布が均一化された均一化後温度の湯水を用いて熱回収運転を行うことで、均一化後温度の湯水の昇温を熱電併給装置1からの熱回収により行う。
【0064】
図2は、水質維持処理を説明するフローチャートである。
工程#10において運転制御手段Cは、貯湯タンク4の内部で温度成層を形成して貯えられている湯水の現状の合計蓄熱量を導出する(蓄熱量導出工程)。具体的には、運転制御手段Cは、記憶手段Sに記憶されている貯湯タンク4の容量(即ち、湯水の量)、貯湯タンク4に設けられている貯湯温度センサ25〜28の検出結果を参照して、貯湯タンク4にどのような温度の湯水がどれだけの量だけ貯えられているのか、即ち、現状の合計蓄熱量を導出する。
【0065】
次に、工程#20において運転制御手段Cは、蓄熱量導出工程で導出した現状の合計蓄熱量が所定蓄熱量範囲内にあるか否かを判定する(蓄熱状態判定工程)。この所定蓄熱量範囲は、上記蓄熱量導出工程で導出した現状の合計蓄熱量の下で貯湯タンク4の内部での湯水の温度分布を均一化した場合に予測される貯湯タンク内での湯水の予測均一化後温度が、熱電併給装置1からの熱回収に用いるときの湯水に要求される上限湯水温度以下の所定温度範囲内になるときの、現状の合計蓄熱量の範囲である。
【0066】
現状では湯水は貯湯タンク4において温度成層を形成して貯えられているが、後述する温度均一化工程(工程#50)で実際に貯湯タンク4の内部での湯水の温度分布を均一化し、その温度均一化が施された湯水を用いて熱電併給装置1からの熱回収に用いる予定がある。つまり、温度均一化が施された湯水を熱電併給装置1の冷却目的で利用する予定があるため、温度均一化が施された湯水が上限湯水温度以下の所定温度範囲内になっている必要がある。そのため、ここで貯湯タンク4の内部での湯水の均一化後温度を考慮している。
【0067】
ここで、貯湯タンク4の容量が同じであれば、合計蓄熱量が大きくなるにつれて予測均一化後温度も高くなるというように、合計蓄熱量と予測均一化後温度との間の関係はほぼ線形な関係にある。そして、その関係に基づいて、予測均一化後温度に関する上記所定温度範囲に対応するように、合計蓄熱量に関する所定蓄熱量範囲が決まる。従って、運転制御手段Cは、予め導出しておいた所定蓄熱量範囲を記憶手段Sに記憶しておき、蓄熱量導出工程で導出した現状の合計蓄熱量がその所定蓄熱量範囲内にあるか否かを判定することができる。
【0068】
或いは、運転制御手段Cは、予測均一化後温度を導出した上で、その予測均一化後温度が上限湯水温度以下の所定温度範囲内になっているか否かを判定してもよい。具体的には、
図2の工程#20に関して括弧書きで示しているように、運転制御手段Cは、蓄熱状態判定工程において、上記蓄熱量導出工程で導出した現状の合計蓄熱量の下で貯湯タンク4の内部での湯水の温度分布を均一化した場合に予測される貯湯タンク4の内部での湯水の予測均一化後温度を導出し(均一化後温度導出工程)、その均一化後温度導出工程で導出した湯水の予測均一化後温度が所定温度範囲内にあるときに現状の合計蓄熱量が所定蓄熱量範囲内にあると判定する(温度条件判定工程)。
【0069】
以上のようにして、運転制御手段Cは、工程#20において現状の合計蓄熱量が所定蓄熱量範囲内にあるか否かの判定を行い、現状の合計蓄熱量が所定蓄熱量範囲内にあると判定した場合には後述する温度均一化工程(工程#50)へと移行する。つまり、
図2において工程#30及び工程#40を括弧書きで示しているように、運転制御手段Cは、工程#20において現状の合計蓄熱量が所定蓄熱量範囲内にあると判定した場合には、工程#30及び工程#40を行わずに、温度均一化工程(工程#50)へと移行する。
【0070】
これに対して、運転制御手段Cは、工程#20において湯水の現状の合計蓄熱量が所定蓄熱量範囲よりも低いと判定したとき、後述する温度均一化工程に先立って、工程#30において、湯水の予測均一化後温度を所定温度範囲内にするために貯湯タンク4に貯えられている湯水に対して追加する必要のある追加蓄熱量を導出し(追加熱量導出工程)、次に工程#40において、その追加熱量導出工程で導出した追加蓄熱量を貯湯タンク4に貯えられている湯水に対して追加するために熱回収運転を行う(熱追加工程)。
【0071】
具体的には、運転制御手段Cは、記憶手段Sに記憶している所定蓄熱量範囲の最低値と、蓄熱量導出工程で導出した合計蓄熱量との差である上記追加蓄熱量を導出する。そして、運転制御手段Cは、その追加蓄熱量を貯湯タンク4に貯えられている湯水に対して追加するために熱回収運転を行う。例えば、運転制御手段Cは、所定の運転条件(例えば、熱電併給装置1の出力条件、排熱循環路L8での湯水の流量条件など)下での熱回収運転を単位期間行ったときに貯湯タンク4へどれだけの蓄熱量が追加されるのかを記憶しておき、導出した上記追加蓄熱量を貯湯タンク4に加えるために、熱追加工程としての熱回収運転をどれだけの期間行えばよいのかを決定し、その期間だけ熱回収運転を行えばよい。或いは、運転制御手段Cは、熱電併給装置1へ供給される湯水の温度(温度センサ39の検出値)と、熱電併給装置1から排出される湯水の温度(温度センサ38の検出値)と、排熱循環路L8での湯水の流量とから、実際に貯湯タンク4へ追加される蓄熱量を計測し、上記追加蓄熱量が貯湯タンク4に追加された時点で、この熱追加工程を終了してもよい。
【0072】
工程#50において運転制御手段Cは、湯水の現状の合計蓄熱量が所定蓄熱量範囲内にあると判定したとき、貯湯タンク4の内部で湯水の温度分布を均一化して、均一化後温度の湯水を得る(温度均一化工程)。
図3は、温度均一化工程を説明する図である。
【0073】
図3中で太線で示すのが、温度均一化工程が行われているときの湯水の流動状態である。このように、運転制御手段Cは、貯湯タンク4の内部下方から取り出した湯水を、貯湯タンク4の内部上方に流入させることによって温度均一化工程を行う。具体的には、運転制御手段Cは、循環ポンプ20を作動させ、及び、循環比例弁12を開弁させ、及び、循環ポンプ20から貯湯タンク4の内部上方へと湯水が流動可能なように上流側三方弁13の開放状態を制御する。このような温度均一化工程が行われることで、温度成層が形成された状態で内部上方に相対的に高温の湯水が貯えられ且つ内部下方に相対的に低温の湯水が貯えられている貯湯タンク4において、貯湯タンク4の内部下方から取り出した湯水が、貯湯タンク4の内部上方に流入され、低温の湯水と高温の湯水とが混合されて、貯湯タンク4の内部で湯水の温度分布が均一化される。
尚、上流側三方弁13は通常時、圧力スイッチ29と水量センサ30と循環ポンプ20とが連通するように制御されるが、水質維持処理開始と同時に圧力スイッチ29と循環ポンプ20とが連通するように制御され、水質維持処理が完了していない状態の湯水が貯湯タンク4から水量センサ30側へ流出することを防止している。また、水質維持処理中に給湯が発生した場合、上流側三方弁13は、循環ポンプ20と水量センサ30が連通するように制御され、貯湯タンク4からの湯水の流出を防止する。
【0074】
工程#60において運転制御手段Cは、貯湯タンク4の内部での温度分布が均一化された均一化後温度の湯水を用いて熱回収運転を行うことで、均一化後温度の湯水の昇温を熱電併給装置1からの熱回収により行う(昇温工程)。この昇温工程に先立つ温度均一化工程によって、貯湯タンク4の内部で湯水の温度分布が均一化されているので、貯湯タンク4の内部で温度成層が形成されている場合に比べて、貯湯タンク4の内部下方での湯水温度は相対的に高くなり、貯湯タンク4から熱電併給装置1へと熱回収のために供給される湯水の温度は相対的に高くなる。そして、その後の昇温工程において、均一化後温度の湯水(即ち、貯湯タンク4の内部で温度成層が形成されている場合に比べて相対的に高温の湯水)の昇温を熱電併給装置1からの熱回収により行うことで、熱電併給装置1から帰還して貯湯タンク4の内部上方に流入する湯水の温度も、貯湯タンク4の内部で温度成層が形成されている場合に比べて高くなる。
【0075】
次に、
図2で説明した水質維持処理を行った場合の実施例と、比較例(内部で温度成層が形成されている貯湯タンク4が貯えている相対的に低温の湯水を、単純に熱電併給装置1の排熱によって昇温した場合の例)とを説明する。
【0076】
〔実施例〕
この実施例において、熱電併給装置1は排熱回収熱量800W(688kcal/h)であるとする。また、熱電併給装置1では、熱電併給装置1の出口温度(温度センサ39で検出される湯水の温度)が65℃となるように排熱循環路L8での湯水流量の調節が行われる。貯湯タンク4へ給水路L2を介して供給される水の温度、即ち、成層貯湯が行われているときの貯湯タンク4の内部下方に貯えられている湯水の温度は15℃とする。熱電併給装置1からの熱回収に用いるときの湯水(即ち、熱電併給装置1にとっての冷却水)に要求される上限湯水温度は40℃である。貯湯タンク4の容量は200Lである。熱電併給装置1から貯湯タンク4への配管経路の容積は2Lであり、その配管経路での湯水の移動時間当たりの放熱量を2kcal/minとする。貯湯タンク4での放熱は無いものとする。温度均一化工程が行われない限り、貯湯タンク4では湯水は成層貯湯されている。湯水の水質維持のために必要な必要湯水温度を60℃とする。
【0077】
この場合、運転制御手段Cが、熱電併給装置1の運転継続中、貯湯タンク4の内部下方から取り出した湯水(15℃)を熱電併給装置1からの熱回収に用い、熱回収を行った後の湯水を貯湯タンク4の内部上方に流入させることで、貯湯タンク4の内部で温度成層を形成させながら湯水を貯える熱回収運転を行うと、貯湯タンク4の内部上方に流入する熱回収後の湯水の温度は56.3℃になる。この段階で、上述した蓄熱量導出工程と蓄熱状態判定工程とが行われる。
【0078】
そして、追加熱量導出工程が行われることで、追加で必要な湯水(56.3℃)の貯湯量が121.1[L]と導出される。この値は、(40[℃]−15[℃])×200[L]/(56.3[℃]−15[℃])=121.1[L]という演算で導出できる。そして、56.3℃の湯水を貯湯タンク4に121.1L流入させる熱追加工程が行われ、その後、温度均一化工程が実施される。その結果、貯湯タンク4に貯えられている湯水の温度は40℃となる。この40℃という温度は、熱電併給装置1からの熱回収に用いるときの湯水に要求される上限湯水温度(40℃)以下の所定温度範囲内に入っているので、この40℃の湯水を熱電併給装置1からの熱回収に用いる状態で、熱電併給装置1の運転を行う昇温工程が実施される。このとき、熱電併給装置1から貯湯タンク4への排熱回収流量(湯水の流量)は、0.46[L/min]である。この値は、800[Wh]×0.86[kcal/h/Wh]/(65[℃]−40[℃])/60[min]=0.46[L/min]という演算で導出できる。また、熱電併給装置1から貯湯タンク4への湯水の移動に要する時間は4.3[min]である。この値は、2[L]/0.46[L/min]=4.3[min]という演算で導出できる。この場合、熱電併給装置1から貯湯タンク4に入るまでの湯水の放熱量は8.6[kcal]となる。この値は、2[kcal/min]×4.3[min]=8.6[kcal]という演算で導出できる。従って、熱電併給装置1で熱回収した後で貯湯タンク4に流入する湯水の温度は60.7[℃](=65[℃]−8.6kcal]/2[L])となる。つまり、熱電併給装置1からの熱回収のみで、貯湯タンク4内の湯水の全量を、湯水の水質維持のために必要な必要湯水温度である60℃以上とすることができる。
【0079】
〔比較例〕
この比較例は、内部で温度成層が形成されている貯湯タンク4が貯えている相対的に低温の湯水を単純に熱電併給装置1の排熱によって昇温する場合の例である。
貯湯タンク4の内部下方から取り出した湯水(15℃)を熱電併給装置1からの排熱で昇温して65℃にするので、熱電併給装置1から貯湯タンク4への排熱回収流量(湯水の流量)は0.23[L/min]となる。この値は、800[Wh]×0.86[kcal/h/Wh]/(65[℃]−15[℃])/60[min]=0.23[L/min]という演算で導出できる。熱電併給装置1から貯湯タンク4への湯水の移動に要する時間は8.7[min]である。この値は、2[L]/0.23[L/min]=8.7[min]という演算で導出できる。この場合、熱電併給装置1から貯湯タンク4に入るまでの湯水の放熱量は17.4kcalとなる。この値は、2[kcal/min]×8.7[min]=17.4kcalという演算で導出できる。従って、熱電併給装置1で熱回収した後で貯湯タンク4に流入する湯水の温度は56.3[℃](=65[℃]−17.4[kcal]/2[L])となる。つまり、貯湯タンク4の内部は56.3℃の湯水で満たされることになるが、この温度は湯水の水質維持のために必要な必要湯水温度(60℃)に満たない。更に、この56.3℃の湯水は、熱電併給装置1からの熱回収に用いるときの湯水(即ち、熱電併給装置1にとっての冷却水)に要求される上限湯水温度(40℃)を超えているため、熱電併給装置1での熱回収に用いることはできない(即ち、熱電併給装置1を運転継続することはできない)。従って、貯湯タンク4に貯えている湯水の温度を60℃以上にするためには、補助熱源装置5を使って60℃以上に沸き上げるなどの対応をとらなければならない。
【0080】
以上のように、本発明では、内部で温度成層が形成されている貯湯タンク4が貯えている相対的に低温の湯水を、単純に熱電併給装置1の排熱によって昇温するのではなく、温度均一化工程によって貯湯タンク4の内部で湯水の温度分布を均一化した上で更に熱電併給装置1の排熱によって昇温する。その結果、内部で温度成層が形成されている貯湯タンク4が貯えている相対的に低温の湯水を単純に熱電併給装置1の排熱によって昇温した場合には到達しないような高温にまで湯水の温度を高めることができる。また、このような湯水の昇温を、熱電併給装置1を運転しながら行えるため、熱電併給装置1の稼働率が向上することによる省エネ性や経済性の向上という利点が得られる。
【0081】
更に、上記温度均一化工程で処理した後の湯水の均一化後温度は、熱電併給装置1からの熱回収を用いるときの湯水に要求されている上限湯水温度以下の所定温度範囲内となる温度であり、上記温度均一化工程で処理した後の均一化後温度の湯水を上記昇温工程で処理した後の昇温後温度は、湯水の水質維持のために必要な必要湯水温度以上の温度であるので、温度均一化の処理を行った後の湯水を、熱電併給装置1からの熱回収において確実に利用することができ、昇温の処理を行った後の湯水を、湯水の水質維持のために確実に利用することができる。
【0082】
<別実施形態>
<1>
上記実施形態では、
図1に例示した構成の排熱回収システムで本発明の水質維持方法を実施する場合について説明したが、別の構成の排熱回収システムにおいて本発明の水質維持方法を実施してもよい。
【0083】
<2>
上記実施形態では、湯水の温度などについての具体的な数値を挙げたが、それらの数値は単に例示目的で挙げたものであり、本発明がそれらの数値に限定されることはない。
【0084】
<3>
上記実施形態では、
図3を用いて説明したような温度均一化工程を行う場合について記載したが、別の手法によって温度均一化工程を行ってもよい。例えば、
図3に例示したのとは別の流路を用いて湯水を流動させることで、貯湯タンク4の内部下方から取り出した湯水を、貯湯タンク4の内部上方に流入させてもよい。他には、貯湯タンク4の内部に攪拌機を設けておき、運転制御手段Cが温度均一化工程を行うときにっその攪拌機を攪拌作動させるような改変も可能である。
【0085】
<4>
上記実施形態では、熱電併給装置1から発生する熱のみを用いて水質維持運転を実行するための水質維持方法について説明したが、熱電併給装置1から発生する熱のみを用いて湯水を昇温する上記昇温工程を行った後、例えば補助熱源装置5を用いて更に湯水の温度を昇温するような改変も可能である。