(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記細胞が、成体幹細胞、胎児幹細胞、前駆細胞、末梢造血幹細胞、内皮前駆細胞、循環中の腫瘍細胞、成熟の循環中の内皮細胞、羊膜幹細胞、間充織幹細胞、脂肪由来幹細胞、腸管幹細胞、皮膚幹細胞、神経幹細胞、または癌幹細胞である、請求項10に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、抗体の標準的な溶液(0.1mg/mlおよび0.05mg/mlの抗体)に比較したPEG−および抗体―官能化ヒドロゲル(ゲルII−VII)の赤外線スペクトルの図示である。測定はバルク測定であることに注意のこと。
【
図2】
図2は、ヒドロゲルでコーティングしたマイクロ流体デバイス内のアクセス可能な抗体の定性的測定の図示である。
【
図3A】
図3Aは、PEG−および抗体−官能化ヒドロゲルヒドロゲルでコーティングしたマイクロ流体デバイス内の全血から捕獲した内皮前駆細胞(EPC)捕獲の収率を示している図示である。
【
図3B】
図3Bは、PEG−および抗体−官能化ヒドロゲルヒドロゲルでコーティングしたマイクロ流体デバイス内の全血から捕獲したEPCの純度を示している図示である。
【
図4A】
図4A〜
図4Cは、異なるゲルタイプにおける構造的相違を示しているグラフの図示である。
図4Aでは、全ての試薬(PEG、抗体、アルギン酸を含む)を、ゲルタイプII〜IV中で一緒に組み合わせる。
図4Bでは、ゲルタイプVは、2段階のプロトコールを利用し、ここでは、PEG、抗体、EDC、およびスルホ−NHSを、一回の第一工程で組み合わせる。
図4Cでは、ゲルタイプVI−VIIは、他の成分を混合する前にPEG、および抗体の事前混合を有する。
【
図4B】
図4A〜
図4Cは、異なるゲルタイプにおける構造的相違を示しているグラフの図示である。
図4Bでは、ゲルタイプVは、2段階のプロトコールを利用し、ここでは、PEG、抗体、EDC、およびスルホ−NHSを、一回の第一工程で組み合わせる。
【
図4C】
図4A〜
図4Cは、異なるゲルタイプにおける構造的相違を示しているグラフの図示である。
図4Cでは、ゲルタイプVI−VIIは、他の成分を混合する前にPEG、および抗体の事前混合を有する。
【
図5A】
図5〜
図5Cは、マイクロ流体アレイの前後の注入および遊離された懸濁物の定性的な提示を示す。注入された集団(
図5Aに示す)は、それぞれの濃度でのチップ内の沈降効果(
図5Bに示す)に起因して100,000〜200,000細胞/mlの濃度に制約された。
図5Cでは、細胞を24ウェルのプレート中に遊離させ、細胞密度の顕著な減少を観察した。スケールのバーは100μmに相当する。
【
図5B】
図5〜
図5Cは、マイクロ流体アレイの前後の注入および遊離された懸濁物の定性的な提示を示す。注入された集団(
図5Aに示す)は、それぞれの濃度でのチップ内の沈降効果(
図5Bに示す)に起因して100,000〜200,000細胞/mlの濃度に制約された。スケールのバーは100μmに相当する。
【
図5C】
図5〜
図5Cは、マイクロ流体アレイの前後の注入および遊離された懸濁物の定性的な提示を示す。
図5Cでは、細胞を24ウェルのプレート中に遊離させ、細胞密度の顕著な減少を観察した。スケールのバーは100μmに相当する。
【
図6A】
図6A〜
図6Dは、抗体−官能化アルギン酸塩の最適化によって、改善された捕獲効率および純度の収率が可能になったことを図示する。
図6Aは、サンプルおよび処方物を、各々が1つの変数が異なる、5つのシナリオに分けたことを示す。
図6Bは、注入された集団に対してこれらのシナリオの純度収率を比較する。純度パーセントの定量は、注入した細胞(
図6C)および遊離した細胞(
図6D)に対するフローサイトメトリーによって行った。
【
図6B】
図6A〜
図6Dは、抗体−官能化アルギン酸塩の最適化によって、改善された捕獲効率および純度の収率が可能になったことを図示する。
図6Bは、注入された集団に対してこれらのシナリオの純度収率を比較する。
【
図6C】
図6A〜
図6Dは、抗体−官能化アルギン酸塩の最適化によって、改善された捕獲効率および純度の収率が可能になったことを図示する。純度パーセントの定量は、注入した細胞(
図6C)および遊離した細胞(
図6D)に対するフローサイトメトリーによって行った。
【
図6D】
図6A〜
図6Dは、抗体−官能化アルギン酸塩の最適化によって、改善された捕獲効率および純度の収率が可能になったことを図示する。純度パーセントの定量は、注入した細胞(
図6C)および遊離した細胞(
図6D)に対するフローサイトメトリーによって行った。
【
図7A】
図7A〜
図7Fは、Wnt3aタンパク質の非存在下において富化されていない集団に対する遊離された細胞のエイジ・プログレッション(age progression)を示す。富化されていないオルガノイドの発達(progression)(
図7A〜Cに示す)では、外来の集団によって囲まれる有意に大きい嚢胞様のオルガノイドが生じた。
図7D〜
図7Fは、単一細胞懸濁物由来の富化されたオルガノイドの4日の発達を示す。
図7Dは、単一の細胞の増殖を2日で示し、
図7Eは、誘導された過形成を3日で示し、
図7Fは、周囲の分泌されたアポトーシス細胞で知覚された小さい管腔の形成を4日で示す。
【
図7B】
図7A〜
図7Fは、Wnt3aタンパク質の非存在下において富化されていない集団に対する遊離された細胞のエイジ・プログレッション(age progression)を示す。富化されていないオルガノイドの発達(progression)(
図7A〜Cに示す)では、外来の集団によって囲まれる有意に大きい嚢胞様のオルガノイドが生じた。
【
図7C】
図7A〜
図7Fは、Wnt3aタンパク質の非存在下において富化されていない集団に対する遊離された細胞のエイジ・プログレッション(age progression)を示す。富化されていないオルガノイドの発達(progression)(
図7A〜Cに示す)では、外来の集団によって囲まれる有意に大きい嚢胞様のオルガノイドが生じた。
【
図7D】
図7A〜
図7Fは、Wnt3aタンパク質の非存在下において富化されていない集団に対する遊離された細胞のエイジ・プログレッション(age progression)を示す。
図7D〜
図7Fは、単一細胞懸濁物由来の富化されたオルガノイドの4日の発達を示す。
図7Dは、単一の細胞の増殖を2日で示し、
図7Eは、誘導された過形成を3日で示し、
図7Fは、周囲の分泌されたアポトーシス細胞で知覚された小さい管腔の形成を4日で示す。
【
図7E】
図7A〜
図7Fは、Wnt3aタンパク質の非存在下において富化されていない集団に対する遊離された細胞のエイジ・プログレッション(age progression)を示す。
図7D〜
図7Fは、単一細胞懸濁物由来の富化されたオルガノイドの4日の発達を示す。
図7Dは、単一の細胞の増殖を2日で示し、
図7Eは、誘導された過形成を3日で示し、
図7Fは、周囲の分泌されたアポトーシス細胞で知覚された小さい管腔の形成を4日で示す。
【
図7F】
図7A〜
図7Fは、Wnt3aタンパク質の非存在下において富化されていない集団に対する遊離された細胞のエイジ・プログレッション(age progression)を示す。
図7D〜
図7Fは、単一細胞懸濁物由来の富化されたオルガノイドの4日の発達を示す。
図7Dは、単一の細胞の増殖を2日で示し、
図7Eは、誘導された過形成を3日で示し、
図7Fは、周囲の分泌されたアポトーシス細胞で知覚された小さい管腔の形成を4日で示す。
【
図8A】
図8A〜Dでは、Lgr5基本培地の構成およびWnt3aに存在する富化されたオルガノイドおよび富化されていないオルガノイドが示される。
図8Aは、富化されていない集団ではWnt3aの存在下でプレート効率の増大がなんらなかったことを示す。
図8Cは、注入された培養物中で形成されたほとんどのオルガノイドが、アポトーシス細胞を保有している嚢胞様構造を発現したことを示す。
図8Bでは、富化された集団はプレート効率が増大しており、単一に由来するオルガノイド増殖をもたらすことを示す。
図8Dでは、富化された細胞が、同様の時点で研究(d)の非存在下でwnt3aと同様の形態を示したことが示される。
【
図8B】
図8A〜Dでは、Lgr5基本培地の構成およびWnt3aに存在する富化されたオルガノイドおよび富化されていないオルガノイドが示される。
図8Bでは、富化された集団はプレート効率が増大しており、単一に由来するオルガノイド増殖をもたらすことを示す。
【
図8C】
図8A〜Dでは、Lgr5基本培地の構成およびWnt3aに存在する富化されたオルガノイドおよび富化されていないオルガノイドが示される。
図8Cは、注入された培養物中で形成されたほとんどのオルガノイドが、アポトーシス細胞を保有している嚢胞様構造を発現したことを示す。
【
図8D】
図8A〜Dでは、Lgr5基本培地の構成およびWnt3aに存在する富化されたオルガノイドおよび富化されていないオルガノイドが示される。
図8Dでは、富化された細胞が、同様の時点で研究(d)の非存在下でwnt3aと同様の形態を示したことが示される。
【
図9A】
図9A〜
図9Dは、開示されたマイクロ流体単離技術をも用いた後、富化されたオルガノイドを図示している共焦点圧縮画像を示す。
図9Cは、球状のオルガノイド中の中空の性質の指標である形成された管腔を示す。
図9Aは、休眠状態を示している有意なSox9発現を示す、CD24の尖端局在化を示す。
図9Bでは、単離捕獲抗体、GPR49/Lgr5(b)が中央ドメイン内で高頻度であるが、発現はCD24に比較して低かったことが示される。
【
図9B】
図9A〜
図9Dは、開示されたマイクロ流体単離技術をも用いた後、富化されたオルガノイドを図示している共焦点圧縮画像を示す。
図9Bでは、単離捕獲抗体、GPR49/Lgr5(b)が中央ドメイン内で高頻度であるが、発現はCD24に比較して低かったことが示される。
【
図9C】
図9A〜
図9Dは、開示されたマイクロ流体単離技術をも用いた後、富化されたオルガノイドを図示している共焦点圧縮画像を示す。
図9Cは、球状のオルガノイド中の中空の性質の指標である形成された管腔を示す。
【
図9D】
図9A〜
図9Dは、開示されたマイクロ流体単離技術をも用いた後、富化されたオルガノイドを図示している共焦点圧縮画像を示す。
【
図10A】
図10A〜
図10Dは、z面で圧縮した富化されていないオルガノイド共焦点画像を示す。オルガノイドは培養物中で4日後にマトリゲルから抽出した。アポトーシス細胞は中央管腔内で顕著である(
図10C)が、オルガノイドの形態は球状かつ平坦である。CD24発現(
図10A)は、中央ドメイン内で尖端に局在し、密度のレベルが変化する。GPCR49/Lgr5は、矢印で示している、CD24が発現される位置に低密度で存在する。GPCR49/Lgr5発現の顕著な存在は、CD24の重層によって作られた(
図10D)。
【
図10B】
図10A〜
図10Dは、z面で圧縮した富化されていないオルガノイド共焦点画像を示す。オルガノイドは培養物中で4日後にマトリゲルから抽出した。GPCR49/Lgr5は、矢印で示している、CD24が発現される位置に低密度で存在する。
【
図10C】
図10A〜
図10Dは、z面で圧縮した富化されていないオルガノイド共焦点画像を示す。オルガノイドは培養物中で4日後にマトリゲルから抽出した。アポトーシス細胞は中央管腔内で顕著である(
図10C)が、オルガノイドの形態は球状かつ平坦である。
【
図10D】
図10A〜
図10Dは、z面で圧縮した富化されていないオルガノイド共焦点画像を示す。オルガノイドは培養物中で4日後にマトリゲルから抽出した。GPCR49/Lgr5発現の顕著な存在は、CD24の重層によって作られた(
図10D)。
【
図11A】
図11A〜
図11Dは、複数の表面マーカーに対する細胞の接着ベースのマイクロ流体分離の一実施形態のデバイスの順序を表す。デバイスからの捕獲および遊離後に(
図11A)、マーカー1を発現する細胞は、デバイスに入り(
図11B)、ここでは、塩化カルシウム溶液を同時注入して、細胞懸濁液中に存在するエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を中和する。デバイスの別の部分(
図11C)を塩化カルシウム溶液および細胞懸濁液と混合する。最終的に、
図11Dでは、チャンバはマーカー2に対する細胞を捕獲し、次いでこれが、EDTA溶液の注射を用いて溶出され得る。
【
図11B】
図11A〜
図11Dは、複数の表面マーカーに対する細胞の接着ベースのマイクロ流体分離の一実施形態のデバイスの順序を表す。デバイスからの捕獲および遊離後に(
図11A)、マーカー1を発現する細胞は、デバイスに入り(
図11B)、ここでは、塩化カルシウム溶液を同時注入して、細胞懸濁液中に存在するエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を中和する。
【
図11C】
図11A〜
図11Dは、複数の表面マーカーに対する細胞の接着ベースのマイクロ流体分離の一実施形態のデバイスの順序を表す。デバイスの別の部分(
図11C)を塩化カルシウム溶液および細胞懸濁液と混合する。
【
図11D】
図11A〜
図11Dは、複数の表面マーカーに対する細胞の接着ベースのマイクロ流体分離の一実施形態のデバイスの順序を表す。最終的に、
図11Dでは、チャンバはマーカー2に対する細胞を捕獲し、次いでこれが、EDTA溶液の注射を用いて溶出され得る。
【
図12】
図12は、二重マーカー分離における、多段階の捕獲−遊離デバイスシステムの能力を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
詳細な説明
本開示は、細胞などの生物学的材料の極めて特異的な捕獲および遊離のための組成物および方法に関する。ヒドロゲルを形成するために、分岐したポリマー分子または1つ以上の結合剤に対してコンジュゲートされるかまたはそれらと混合された複数のアルギン酸分子を含んでいるヒドロゲル組成物を開示する。
【0034】
いくつかの実施形態では、開示された方法および組成物は、捕獲された細胞を非破壊的に遊離する追加的な能力を有する、異種懸濁物からの標的細胞タイプの選択的な捕獲のための表面コーティングを提供する。本明細書に開示される処方物および技術によって、フルオロカーボン類およびシリコーン類を含むがこれに限定されない、細胞を結合および遊離する能力を有するが、細胞およびタンパク質結合を抑制することが公知である分岐したポリマー類、例えば、ポリ(エチレングリコール)(PEG)または化学的な官能基を有する分岐したポリマー類と、有意な非特異的な細胞接着をしやすい、アルギン酸ヒドロゲルの変化した化学的組成が可能になる。ヒドロゲル構築物への分岐したポリマーの組み込みは、結合剤(例えば、抗体、抗体フラグメント、ペプチド模倣化合物、ペプチド、小分子または核酸)でのアルギン酸塩プレポリマーの官能化がまた捕獲の特異性ももたらすことを可能にする方法で行われる。
【0035】
いくつかの実施形態では、マイクロ流体チャネルのような、限定された構造内のヒドロゲルのインサイチュアセンブリのための合成技術を設計する。本明細書で開示されるアセンブリ技術によって、ある種類の材料を必要とすることなく、任意の材料からできているチャネルのコーティングが可能になる。全血からこのアプローチを用いて捕獲および脱離した細胞のフローサイトメトリー分析によって、このプロセスは化学的にかつ生物学的に非破壊的であることが示され、具体的には、細胞生存度または表現型の同一性には変化が全くないか、またはごくわずかにしかない。さらに、ヒドロゲル構造内のPEGのような分岐したポリマーの組み込みによって、公知のヒドロゲル捕獲システムと関連した多くの問題が克服される。
【0036】
本明細書は、電位または小さい温度変化のような、外部刺激が与えられた場合の細胞脱離を容易にし得る表面コーティングの設計を記載する。電位での例は、電気活性の化学官能基を介して表面に結合されたリガンドからなる表面コーティングである。電気活性のキノインエステルは、電位を加えた際にラクトンへの化学的変化を受ける。このアプローチには、捕獲デバイスへの電極組み込みおよび遊離パラメーターの注意深い最適化を必要とする。37℃で疎水性であり、かつ20℃で親水性であるポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)のような熱反応性のポリマーの使用は、別の現在記載されるアプローチである。疎水性表面は、細胞に接着され、その形質転換は比較的完全な細胞遊離を生じる。
【0037】
このような方法の欠点は、低流量レジメンでの接着特異性の欠失、および37℃という生理学的温度の下へ温度を低下するという潜在的な有害効果である。アルギン酸塩ヒドロゲルを、マイクロ流体システムにおける細胞の捕獲および遊離のために使用し、ただし非接着性分子での化学的修飾なしに、これらのヒドロゲルは、非特異的な細胞およびタンパク質接着を極めて受けやすく、高い効率の細胞遊離はない。
【0038】
本発明の開示の利点は、レセプターリガンド相互作用を通じて選択性の捕獲を可能にするということである。さらに、開示される方法およびデバイスによって、停止細胞培養またはフローベースの細胞分離のいずれかにおいて基板から標的細胞の遊離が可能になる。本発明の開示は、細胞脱離のための機械的、酵素的、電気的または光学的な境界を必要としない。開示される方法およびデバイスは、生物学的環境に対して過度の物理的または化学的な摂動なしに用いられ得る。先行技術は、他方では、例えば、細胞環境を損なう外部刺激を必要とするか、または物理的もしくは化学的な摂動を必要とする。
【0039】
本発明の開示を用いて、例えば、幹細胞および前駆細胞の集団を単離するための生物学的材料を選択的に捕獲および遊離してもよい。単離された集団を、遺伝子操作された足場に播種するために用いてもよい。遺伝子操作された移植用臓器および再生医療は一般には、まれな細胞の純粋な集団が機能的な臓器を生じることを必要とする。
【0040】
本明細書に言及されるすべての刊行物、特許出願、特許および他の引用文献は、その全体が参照によって援用される。矛盾する場合、定義を含んでいる本明細書が優先する。さらに、材料、方法および実施例は例示に過ぎず、限定することは意図しない。
【0041】
多に規定しない限り、本明細書に用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当該分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と同様または等価な方法および材料を、本発明の実施または試験において用いてもよいが、適切な方法および材料は下に記載する。
【0042】
定義
便宜上、本明細書、実施例および特許請求の範囲で使用されるある用語をここにまとめる。別段定義しない限り、本開示で用いる全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する当該分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本開示で提供される群または用語について提供される最初の定義は、別段示されない限り、本開示全体を通じてその群または用語に対して、個々にまたは別の群の一部としてあてはまる。
【0043】
本開示で用いられるような「化合物」および「化合物類(複数)」という用語は、本開示の化合物、ならびに任意のかつ全ての可能性のある、異性体、立体異性体、光学異性体、ジアステレオマー、互変異性体、薬学的に許容される塩、およびそれらの溶媒和化合物を指す。
【0044】
一般に、本開示の組成物はあるいは、本開示で開示される任意の適切な構成要素を含むか、それらからなるか、または本質的に構成するように処方されてもよい。開示の組成物はさらに、またはあるいは、先行技術の組成物で用いられる任意の構成要素、材料、成分、アジュバントもしくは種を欠くか、または実質的に含まないように処方されてもよく、またはそうでなければ、本開示の機能および/または目的の達成を必要としない。
【0045】
「1つの、ある(不定冠詞:aおよびan)」という項目は、本開示において、その項目の文法上の目的のうちの1つまたは2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すのに用いられる。例えば、「ある要素(an element)」とは、1つの要素、または2つ以上の要素を意味する。
【0046】
「または」という用語は、本開示において用いて、他に示さない限り「および/または」という用語を意味し、それと交換可能に用いられる。
【0047】
「約」という用語は、本開示で用いて、所定の数値プラスまたはマイナスこの所定の数値の20%を意味する。
【0048】
「ヒドロゲル」とは、比較的大量の水が存在する1つ以上の分子の三次元の、半固体の網目状構造である。いくつかの場合には、ヒドロゲルはポリマーであってもよい。本明細書において用いる場合、「ポリマー」はモノマーから構成されている構造である。
【0049】
「モノマー」とは、お互いとまたは他の種類のモノマーと反応して、ポリマーを形成し得る、1つ以上の基を有する分子である。モノマーの非限定的な例は、塩化ビニルであり、これは、「ビニル」として公知のプラスチックをもたらし得る。ビニルモノマーの別の非限定的な例は、ポリアクリルアミドとして公知のゲルをもたらし得るアクリルアミドである。
【0050】
全般
本開示では、アルギン酸が二価の陽イオンの存在下である、アルギン酸塩ヒドロゲルを含んでいる組成物を、部分的には提供する。このような組成物は、キレーターの存在下で容易に溶解し得る。さらに、現在開示されるヒドロゲルは生体適合性であり、かつ細胞接着分子で官能化(すなわち、コンジュゲート)され得る。アルギン酸塩ヒドロゲルは、結合剤で官能化され得る。本明細書において用いる場合、「結合剤」という用語は、別の分子または複合構造に結合する分子を意味する。結合剤としては、抗体、抗体フラグメント、ペプチド模倣化合物、ペプチド、小分子、および核酸が挙げられる。抗体は、GPR49、LGR5、CD24、FLK1、CD45、CD31、CD34、sca−1、および種々の他のタンパク質に対する抗体からなる群より選択される。
【0051】
アルギン酸塩ヒドロゲルはまた、フルオロカーボン類およびシリコーン類を含むがこれに限定されない、細胞およびタンパク質の結合を抑制することが公知である分岐したポリマー類、例えば、ポリ(エチレングリコール)(PEG)または化学的な官能基を有する分岐したポリマー類を含んでもよい。PEGは、結合剤とコンジュゲートされるか、または混合され(すなわち、官能化され)てもよい。さらに、PEGは、アルギン酸分子とコンジュゲートされるか、または混合されて、ヒドロゲルを形成する。ある実施形態では、ヒドロゲルは、各々のアームの末端に一級アミン末端を有する4−アームのPEG分子を利用する。4−アームのPEG分子は、アルギン酸、結合剤、またはリンカーのような他の因子との官能化のための4つの結合ポイントを有する。特定の実施形態では、各々の4−アームのPEG分子の1つのアームは、アルギン酸塩ヒドロゲル骨格に対してカルボン酸基を結合し、結合剤との官能化のための最大3個までの一級アミン基を残す。4−アームの配置によって、ヒドロゲルの結合剤(例えば、抗体)含量を3倍にすることが可能になり、非ペグ化した(non PEG−y−lated)アルギン酸塩ヒドロゲルに対する非特異的な細胞結合に対して防御がもたらされる。
【0052】
さらに、本明細書に開示されるヒドロゲルを作製するための方法が開示される。ヒドロゲル組成物を作製する方法は、ポリエチレングリコール分子と1つ以上の結合剤とを緩衝液中で反応させることと、ポリエチレングリコール−結合剤溶液と少なくとも1つのアルギン酸分子とを反応させて、官能化されたヒドロゲルを形成することとを包含し、この官能化されたヒドロゲルは、1つ以上の結合剤に対してコンジュゲートされ、さらに少なくとも1つのアルギン酸分子に対してコンジュゲートされた各々のポリエチレングリコール分子を含んでいる。
【0053】
本明細書に記載される方法では、PEG分子のような分岐したポリマー中の少なくとも1つの結合ポイントが、アルギン酸塩ゲルマトリクスとの結合に利用可能であり、抗体のような結合剤での官能化のための少なくとも別の結合ポイントを残すことが確実にされる。抗体としては、限定するものではないが、GPR49、LGR5、CD24、FLK1、CD45、CD31、CD34、sca−1、および種々の他のタンパク質に対する抗体が挙げられる。ある実施形態では、この方法は、アルギン酸を抗体のような結合剤に対してコンジュゲートすることと、抗体/アルギン酸コンジュゲートをPEGのような分岐したポリマーに提供してヒドロゲルを形成することとを包含する。このアルギン酸−抗体コンジュゲートは、アミン末端のPEG分子と反応される。ある実施形態では、このアミン末端のPEG分子は、4−アームのPEG分子である。他の実施形態では、この結合剤、抗体、およびPEGは同時に反応されて、抗体/アルギン酸/PEGヒドロゲルが生み出される。さらに他の実施形態では、PEGおよび結合剤がコンジュゲートされる。これらの実施形態では、コンジュゲートはアルギン酸と反応される。
【0054】
いくつかの態様では、この方法はさらに、フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)基のような保護基を利用して、一級アミン基に対する結合剤のコンジュゲーションを上回る制御を達成することを包含する。この方法はまた、抗体/アルギン酸/PEGヒドロゲルをマイクロ流体デバイスに対して添加して、そのデバイスの内面をコーティングすることを包含する。このような実施形態では、ヒドロゲルは、インサイチュで形成すること、およびデバイスの1つ以上のチャンバの内面をコーティングすることが可能になる。
【0055】
また開示されたのは、本明細書に開示されるマイクロ流体セパレーターを用いて複合媒体から細胞を分離する方法である。一態様では、この開示は、基板を含んでいるマイクロ流体デバイスを記載しており;かつサンプルを受容するための1つ以上のチャンバは標的の生物学的材料を含んでおり、この1つ以上のチャンバは、ヒドロゲル組成物でコーティングされた表面を備え、このヒドロゲル組成物は、複数のアルギン酸分子および複数のポリエチレングリコール分子を含んでおり、ここで各々のポリエチレングリコール分子は複数の基を含み、各々のポリエチレングリコール分子の少なくとも1つの基は、アルギン酸分子に対してコンジュゲートされ、そして各々のポリエチレングリコール分子の少なくとも1つの他の基は、結合剤に対してコンジュゲートされる。本明細書に開示されるデバイスはさらに、結合した標的の生物学的材料と中和剤とを混合するための混合チャンバと、ヒドロゲル組成物でコーティングされた1つ以上の追加の表面とを備える。このヒドロゲル組成物は、複数のアルギン酸分子および複数のポリエチレングリコール分子を含み、ここで各々のポリエチレングリコール分子は、複数の基を含み、かつ各々のポリエチレングリコール分子の少なくとも1つの基は、アルギン酸分子に対してコンジュゲートされる。さらに、各々のポリエチレングリコール分子の少なくとも1つの基は、工程(i)における結合剤とは異なる結合剤に対してコンジュゲートされる。
【0056】
種々の基板が、開示されたデバイスで用いられ得る。いくつかの実施形態では、この基板は、シリカ含有物質(例えば、ガラス、PDMS)である。いくつかの実施形態では、この基板は、ポリマー材料(生体適合性および非生体適合性の両方)であり、かつこのポリマーは、それ自体に結合されるか、または他のシリカ基板に対して結合される。いくつかの実施形態では、この基板は、繊維強化プラスチックを含めて、エポキシのような熱硬化性のプラスチックである。いくつかの実施形態では、この基板は、金属(例えば、金、銀、プラチナ、銅、アルミニウム);金属合金;金属酸化物(酸化銅、酸化アルミニウム、酸化銀、インジウムスズ酸化物など);無機物質、例としては、限定するものではないが、半導体および磁気物質である。いくつかの実施形態では、この基板は、本明細書に記載される、シリカ物質、ポリマー物質、金属素材、または無機物質の組み合わせである。
【0057】
当該分野で公知のマイクロ流体デバイスはまた、本明細書に開示の方法についても利用され得る。この方法は、血管組織遺伝子操作における引き続く使用、またはインビボでの血管組織の細胞ベースの再生修復のために、血液から例えばEPCを分離するために用いられ得る。この方法は、アルギン酸/PEGヒドロゲルが、マイクロ流体デバイス中でインサイチュで(その場で)形成することを可能にすることを包含する。この方法はさらに、サンプルをデバイスに提供すること、およびヒドロゲルにコンジュゲートされた結合剤が標的の生物学的材料、例えば、ある細胞タイプを捕獲することを可能にすることを必要とする。このサンプルは、デバイスを通過することを可能にされ、この捕獲された細胞は、遊離剤を用いて遊離される。ある実施形態では、この遊離剤は、遊離緩衝液であり、これには、例えば、キレーター、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール四酢酸(EGTA)、およびクエン酸ナトリウムが挙げられる。これらの実施形態では、サンプルとしては限定するものではないが、全血、血清、唾液、リンパ、胆汁、尿および任意の他の生体液が挙げられる。
【0058】
いくつかの態様では、サンプルから標的の生物学的材料を捕獲および遊離する方法は、流体を受容するための1つ以上のチャンバを備えるマイクロ流体デバイスを提供することを包含し、ここでこの1つ以上のチャンバの少なくとも1つは、ヒドロゲル組成物でコーティングされた表面を備える。このヒドロゲル組成物は、複数のアルギン酸分子および複数の分岐したポリマー分子を含み、ここでこの各々の分岐したポリマー分子は、複数の基を含み、そして各々の分岐したポリマー分子のうちの少なくとも1つの基は、アルギン酸分子に対してコンジュゲートされる。さらに、各々の分岐したポリマー分子のうちの少なくとも1つの他の基は、1つ以上の結合剤に対してコンジュゲートされる。この方法はさらに、標的のおよび非標的の生物学的材料を含んでいるサンプルを、ヒドロゲル組成物に対して標的の生物学的材料を結合するのに有効な条件下で1つ以上のチャンバ中に導入すること、および遊離剤を用いて標的の生物学的材料を遊離することを包含する。
【0059】
いくつかの実施形態では、この方法はさらに、サンプルから未結合の非標的材料を除去することを包含する。
【0060】
別の態様では、サンプルから標的の生物学的材料を捕獲および遊離する方法は、(a)流体を受容するための1つ以上のチャンバを備えているマイクロ流体デバイスを設けることであって、ここでこの1つ以上のチャンバのうちの少なくとも1つが、ヒドロゲル組成物でコーティングされた少なくとも1つの表面を備えることを包含する。いくつかの実施形態では、このヒドロゲル組成物は、複数のアルギン酸分子および複数の分岐したポリマー分子を含み、ここで各々の分岐したポリマー分子は、複数の基を含み、各々の分岐したポリマー分子のうちの少なくとも1つの基は、アルギン酸分子に対してコンジュゲートされ、そして各々の分岐したポリマー分子のうちの少なくとも1つの他の基は1つ以上の結合剤に対してコンジュゲートされる。さらに、この方法は、(b)標的の生物学的材料を含んでいるサンプルを上記デバイスの第一のチャンバ中に、生物学的材料がヒドロゲル組成物に結合するのに有効な条件下で導入することと;(c)この結合した生物学的材料を、遊離剤を用いて遊離することと;(d)この遊離剤と中和剤とを接触させて、第二のチャンバ中で遊離剤を中和することとを包含する。ある実施形態では、この方法は、(e)上記第二のチャンバの内容物を、ヒドロゲル組成物に対して標的の生物学的材料を結合するのに有効な条件下で、ヒドロゲル組成物でコーティングされた表面を備える第三のチャンバ中に提供することであって、ここで第三のチャンバ中の結合剤が、(a)で用いられたものとは異なる結合剤であることと;(f)上記結合した標的の生物学的材料を、遊離剤を用いて遊離することと;
を必要とする。
【0061】
図11A〜
図11Dは、複数のチャンバを用いるデバイスおよび方法を図示する。
図11A〜
図11Dでは、サンプルを、シリンジポンプで、第一のアルギン酸塩−ベースの捕獲ステージ中に注入した(「マーカー1単離(Marker 1 isolation)」/
図11A)。このステージを、2方向バルブであるステージBまで続けた。その「閉じた」構成では、このバルブによって、ステージA由来の廃棄物を、収集管を通過させた。この廃棄物が通過した後、その廃棄物のストリームを、例えば、ピンチバルブを用いて閉じた。(
図11B)。塩化カルシウムの目的は、ステージから生じる細胞懸濁物中のEDTAを中和することであった(
図11A)。塩化カルシウム溶液とこの細胞懸濁物との混合を確実にするために、合わせたアウトプット(これはラミナフロー中であった)を、ヘリングボーン構造を備える混合チャンバ(
図11C)中に送った。次いで、この混合された溶液をステージに入れ(
図11D)、ここで第二の捕獲分子について受容体を発現する細胞を捕獲した。この分離プロセスの最終工程は、ステージA(
図11A)インレットへのEDTA溶液の注入であって、ここではステージBから捕獲された細胞を遊離する(
図11B)。この溶液を、過剰の培養培地を含有する管に収集して、細胞に対するEDTAのなんらかの有害な影響を最小限にした。
【0062】
いくつかの実施形態では、この方法はさらに、遊離された生物学的材料に対して培養培地を添加することを包含する。いくつかの実施形態では、(d)〜(f)を、異なる結合剤を用いて繰り返してもよい。いくつかの実施形態では、この方法はさらに、ヒドロゲル組成物からの遊離後に標的の生物学的材料を検出することを包含する。いくつかの実施形態では、この方法はさらに、生きている細胞を含めて細胞を培養、検出、分析または形質転換するのに有効な条件下で細胞を維持することを包含する。
【0063】
いくつかの実施形態では、この細胞とは、まれな細胞であって、これには限定するものではないが、成体幹細胞、胎児幹細胞、前駆細胞、末梢造血幹細胞、内皮前駆細胞、循環中の腫瘍細胞、成熟した循環中の内皮細胞、羊膜幹細胞、間充織幹細胞、脂肪由来幹細胞、腸管幹細胞、皮膚幹細胞、神経幹細胞、および癌幹細胞が挙げられる。いくつかの実施形態では、この細胞とは、サンプルから捕獲された生きている細胞である。いくつかの実施形態では、キレート剤は、EDTA、EGTA、およびクエン酸ナトリウムからなる群より選択される。
【0064】
図4A〜
図4Cは、ヒドロゲル(ゲルタイプI〜VIIと命名)の産生のための種々の合成法を図示する。ゲルタイプII〜VIIからのEPC捕獲の収率および純度における進歩的な改善が示される。
図4Aでは、全ての試薬(PEG、抗体、アルギン酸を含む)を、ゲルタイプII〜IVにおいて一緒に組み合わせる。
図4Bでは、ゲルタイプVは、二段階のプロトコールを利用し、ここではPEG、抗体、EDC、およびスルホ−NHSを一回の第一工程で組み合わせる。
図4Cでは、ゲルタイプVI−VIIは、他の成分との混合の前に、PEGおよび抗体の事前混合を有する。事前混合によって、PEG鎖の中での抗体分子の最適の分散が可能になる。
【0065】
抗CD34抗体の結合効果は、ゲルタイプIおよびIIを比較することによって証明される(
図3A)。
図3A〜
図3Bは、ヘパリン管に収集した300μLの全血を個々のマイクロ流体デバイス中に直接注入し、10個のデバイスを並行して使用した後の結果を示す。各々のデバイスから遊離された細胞を、単一の懸濁物中にプールして、フローサイトメトリーによる計数を可能にした。報告されたデータは、3mLの総血液量から回収したEPCの収率および純度を示す。エラーバーは、EPCの3つの独立した測定および同じサンプルで行った総細胞カウントに基づく標準偏差を示す。収量および純度の増大が、10kのMWのPEGの組み込みで観察された(ゲルタイプII対IV)。開示される方法および組成物はまた、20kのMWのPEGで用いられてもよいし、同様に立体力のようなサイズ制限が細胞結合の効率に影響しない限り、他の分子量のPEG分子で用いられてもよい。
【0066】
図4Bでは、合成における第一工程は、第二工程のアルギン酸の添加の前の、PEGおよび抗体と、カップリング剤EDCおよびスルホ−NHSとの組み合わせであった。ゲルタイプIVに対して、ゲルタイプVは、わずかに大きいEPC捕獲をもたらすが、散乱の程度は低く、このことは、抗体分子とPEGとのより良好な混合を示している。ゲルタイプVのアクセス可能な抗体含量は、ゲルタイプIVのものと同様であり(
図2)、このことで、PEG−抗体混合が良いことは、際立った要因であることが示される。
図2では、ビシンコニン酸(BCA)アッセイキットを利用して、各々のデバイスを流れる溶液にアクセス可能な抗体の相対量を測定した。吸光度が低いほど、アクセス可能な抗体の量が大きいことに関連する。エラーバーは、各々のゲルタイプについて8つの独立した測定に基づく標準誤差を示す。混合がよいほどまた、ヒドロゲル表面上でPEGおよび抗体分子のさらに有効な分散が可能になり、これは、ゲルタイプIVに対してゲルタイプVで得られたより高いEPC純度と一致している。PEG−および抗体−官能化アルギン酸溶液ではPEG粒子がより少ないことが観察され、これは、PEG−抗体混合がより優れていることと一致する。
【0067】
ゲルタイプVIおよびVIIについての二段階の合成プロトコールによって、EDCおよびスルホ−NHSの存在を強制することなく、抗体およびPEG分子が「邪魔されることなく」混合するための時間を得ることによって、事前混合が可能になる。事前混合は、本明細書に開示される方法および組成物に必ずしも必要ではないが、より長い混合時間によって、ゲルタイプVIおよびVIIとゲルタイプVを比較したときみられるように、収率および純度に関してEPC捕獲能力を改善することが可能である。ゲルタイプVIに対してゲルタイプVIIについて提供されるより長い混合およびインキュベーションの時間によって、良好な収率(約10
4のEPCが回収)および純度(74%)が同様に得られた。
【0068】
等価物
当業者は、本明細書に詳細に記載される特定の実施形態に対する多数の等価物を、慣用的な実験以下を用いて、理解するか、または獲得できる。このような等価物は、添付の特許請求の範囲に包含されるものとする。
【0069】
実施例
実施例1−マイクロ流体の捕獲および遊離のデザイン
実施例1は、細胞のような生物学的材料の極めて特異的な捕獲および遊離のための方法および組成物を記載する。
【0070】
材料および装置
ガラススライド、EDC、スルホ−NHS、EDTA、MES緩衝液、マイクロビシンコニン酸(bicinchoninic acid)(BCA)タンパク質アッセイキット(Protein Assay Kit)およびヘパリン真空管(採血管)は、Fisher Scientific(Fair Lawn,NJ)から購入した。マイクロ流体デバイス製造のために、SU−8フォトレジストおよび現像液は、MicroChem(Newton、MA)から入手した;シリコーンエラストマーおよび硬化剤は、Dow Corning(Midland、MI)から入手した。リン酸緩衝化生理食塩水(PBS;1×、カルシウムもマグネシウムもなし)は、Mediatech(Herndon、VA)から購入した。捕獲抗体、モノクローナルマウス抗ヒトCD34、およびヤギ抗ヒトFLK−1を、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz,CA)から入手した。抗ヒトCD133−PE、抗ヒトCD45−FITC、および抗ヤギIgG−PerCP抗体は、eBioscience(San Diego,CA)から入手した。ウサギIgGは、Vector Labs(Burlingame,CA)から購入した。塩化カルシウム二水和物およびアルギン酸は、Sigma(St.Louis,MO)から購入した。10,000(10kのMW)および20,000(20kのMW)という分子量を有するアミン末端の4−アームのPEG(PEG−NH2)を、Laysan Bio(Arab、AL)から購入した。
【0071】
マイクロ流体細胞捕獲デバイスのデザイン
このデバイスは、Nagrathら、Nature,450(7173),123−U10(2007)に用いられるデザインと同様のアレイ後デザインを用いた。流動ストリームを途絶して、最適の捕獲を達成するために、Gleghornら、Lap Chip,10(1),27−29(2010)に記載のように六角形のレイアウトでポストを配置した。このポストは100μmの直径、および中心と中心の間が150μmという横の間隔であった。列は、中心から中心の間隔が125μmであって、各々が50μmずつ相殺される。このポストのアレイは0.7cm長および0.5cm幅であった。このポストの高さは下記のようにソフトリソグラフィーによって製造したデバイスについては約50μmであった。
【0072】
ポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)デバイス製造のため、シリコーンエラストマーおよび硬化剤を10:1(w/w)の比で混合して、ネガティブマスター(雌型)ウエハの上に注いで、脱気して、65℃で一晩硬化させた。次いで、PDMSのレプリカをこのウエハから引っ張り出した後に、19ゲージの鈍い切っ先(ブラントノーズ)の針を用いて入口の穴と出口の穴とを穿孔した。このレプリカおよびガラススライドを、PX−250プラズマチャンバ(March Instruments,Concord,MA)中で酸素プラズマ(100mWで8%酸素30秒間)に曝し、直ちにお互いと接触させた。PDMSとガラスとの間の不可逆的な結合を、65℃で5分間焼き付けることによって完了させた。
【0073】
PEG/抗体−官能化ヒドロゲル合成
7つの異なるヒドロゲル処方物を、この研究で検討し、これらをゲルタイプI〜VIIと命名する。ゲルタイプIについては、45mgのアルギン酸、4.8mgのEDC、13.2mgのスルホ−NHS、および20μLの不活性なIgG(1g/mL)を、2mlのMES緩衝液溶液に添加して、IKA Ultra Turrax Tube Disperserを用いて29分間混合し、60分間インキュベートさせた。ゲルタイプIIについては、45mgのアルギン酸、4.8mgのEDC、13.2mgのスルホ−NHSおよび100μLの抗ヒトCD34(200μg/mL)を、2mLのMES緩衝液に添加し、前と同様に混合して、60分間インキュベートさせた。ゲルタイプIIIについては、45mgのアルギン酸、4.8mgのEDC、13.2mgのスルホ−NHS、22.5mgの20kのMWのPEGおよび100μLの抗ヒツジCD34を、2mLのMES緩衝液に添加し、29分間混合し、60分間インキュベートさせた。ゲルタイプIVは、45mgのアルギン酸、4.8mgのEDC、13.2mgのスルホ−NHS、22.5mgの10kのMWのPEGおよび100μLの抗ヒツジCD34から構成され、2mLのMES緩衝液を添加され、29分間混合され、60分間インキュベートされた。ゲルタイプVは、4.8mgのEDC、13.2mgのスルホ−NHS、22.5mgの10kのMWのPEGおよび100μLの抗ヒツジCD34を2mlのMES緩衝液中で29分間混合すること、次いで45mgのアルギン酸を添加すること、続いて29分間の混合および60分間のインキュベーションによって作製した。ゲルVIおよびVIIは、22.5mgの10kのMWのPEGと100μLの抗体とを2mLのMES緩衝液中で混合すること、ならびに、それぞれ10分間および29分間混合すること、ならびにそれぞれ15分間および60分間インキュベートすることによって形成した。次いで、4.8mgのEDC、13.2mgのスルホ−NHS、および45mgのアルギン酸をこの混合物に添加して、29分間混合し、60分間インキュベートさせた。
【0074】
このインキュベーション工程に続いて、各々のゲルタイプについての各々の官能化されたアルギン酸溶液を、Slide−A−Lyzer Dialysis Cassette 10,000分子量カットオフ(Fisher)に注入して、MES緩衝液に対して48時間透析して、未反応のスルホ−NHSおよびEDCを取り除いた。表1は、各々のゲルタイプについての合成工程および構成要素をまとめている。工程1および2では、それぞれの試薬を組み合わせるために従ったプロトコールの結果として生じた性質を示す。
【表1】
【0075】
赤外線分光法
官能化したアルギン酸サンプルを、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)のサンプルカード(Crystal Labs,Garfield,NJ)上に、スパーテルを用いて広げ、4時間肥厚させた。次いで、このカードを、Perkin Elmer 1000フーリエ変換赤外(Fourier−transform Infrared)(FTIR)分光計に挿入した。638cm
-1の吸光度を分析して、各々のゲルタイプについて比較した。このピーク(これは、抗体分子がPEG−NH
2に対して首尾よくコンジュゲートされた時に形成されたアミド結合と関連する)は、ヒドロゲル中の抗体負荷の指標である。
【0076】
マイクロ流体デバイス内の其の位置でのヒドロゲル形成
脱イオン水中のCaCl
2の1g/mL溶液を、各々のデバイス中に注入し(1mLのシリンジを用いて手技によって)、一晩インキュベートさせた。次いでCaCl
2溶液を、1mLのシリンジを用いて手動で取り出した。各々ゲルタイプについて調製されたPEG−および抗体−官能化アルギン酸塩溶液を、次いで、手動でデバイス中に注入して、1時間吸着させた。次に、このデバイスを、Harvard Apparatus PHD 2000シリンジポンプ(Holliston、MA)を用い、10μl/分で10分間、MES緩衝液で、続いてMES緩衝液中の100mMのCaCl
2溶液によって10μL/分で10分間リンスして、マイクロチャネルの壁に対して薄いヒドロゲルの層を形成した。最終的にこのデバイスを、MES緩衝液を用いて、5μL/分で10分間リンスして、未反応のCaCl
2を除去した。
【0077】
BCAタンパク質アッセイ
BCAタンパク質アッセイ溶液を、製造業者の指示に従って調製した。次いで、この溶液を、各々のデバイス中に5μL/分で40分間注入した。このアウトプットをマイクロプレート中に収集し、562nmの吸収を、Bio−Tek Powerwave XS分光計を用いて測定した。
【0078】
採血
ヒトの全血を、ノースイースタン大学施設内倫理委員会(Northeastern University Institutional Review Board)が承認したプロトコールのもとで、健康なボランティアからヘパリン収集管中に採取した。
【0079】
EPC捕獲実験
全血を、マイクロ流体捕獲デバイス中に、5μL/分で60分間注入した。次いで、各々のデバイスを、MES緩衝液を10μl/分で用いて5分間リンスした。捕獲した細胞の遊離のため、PBSに含有されるEDTAの50mM溶液を、10μL/分で10分間注入し、そのアウトプットを1.5mLの微小遠心管中に収集した。各々の個々の実験は、10のマイクロ流体デバイスを含んだ。300μLの血液を、上記で特定した速度で、各々のデバイスを通過させた。各々のデバイスから遊離された細胞を、単一の懸濁物にプールして、フローサイトメトリーによる計数を可能にした。
図3A〜
図3Bに報告されるデータによって、3mLという血液の総容積から回収したEPCの収率および純度が示される。
【0080】
フローサイトメトリー
EPCの計数のために、各々のデバイスから遊離された細胞を、抗ヒトCD133PE、抗ヒトCD45FITC、抗ヤギFLK−1、および抗ヤギIgGPerCPの各々の10μlと混合した。この混合物を、暗野に30分間保管して、130×gで10分間遠心分離した。その上清をデカントして、細胞を、Beckman Coulter Cell Lab Quanta SCフローサイトメーターを用いる計数のために200μLのPBS中に懸濁した。CD133+、CD45−、およびFLK−1+であった細胞をEPCとしてカウントした。
【0081】
結果
図1は、一段階または二段階の合成プロトコールから生じる官能化されたアルギン酸溶液内の抗体負荷の定量のための赤外線分光法データを示す。既知の抗CD34濃度の標準溶液と比較した場合、全てのアルギン酸溶液は、0.05〜0.06mg/mLの間の匹敵する抗体含量を有する。
【0082】
図2は、BCAアッセイキットを用いて行った相対的なタンパク質測定を示す。BCA溶液は、抗体のようなタンパク質と接触するにつれて、より透明になる。従って、ヒドロゲルコーティングしたマイクロ流体デバイスを通じてこの溶液を流すことによって、各々のゲルタイプ上のアクセス可能な抗体の量を比較できる。デバイスを出る溶液のタンパク質含量は、
図2でゲルタイプの関数として示され、較正された質量または濃度としてではなく、任意の単位の吸収で表現される。相対的な測定によって、各々のゲルタイプの間のアクセス可能な抗CD34捕獲抗体の比較が可能になる。
図2では、混合物に添加された抗体の総量が一定のままであるが、ゲルタイプI〜VII由来のアクセス可能な抗体の増大が示され(
図1)、このことは、ゲル化表面と抗体との間のコンジュゲーションの効率の増大を示している。
【0083】
図3は、ヒドロゲルコーティングしたマイクロ流体デバイスを用いる全血からのEPCの捕獲について収率および純度のデータを示す。
図3Aでは、ゲルタイプI(これにコンジュゲートされた不活性抗体を有する)は、予想どおり無視できるEPC結合を示す。ゲルタイプIIは、抗CD34抗体を含んでおり、散乱の程度が高いにもかかわらず、ゲルタイプIに対して有意に高いEPC結合を示す(p<0.005)。しかし、ゲルタイプIIで達成された捕獲の純度は、比較的低い(約23%;
図3B)。ヒドロゲル構造に対して4−アームのPEGを追加することの効果は、ゲルタイプIIおよびIV(その合成プロトコールは、それ以外は同一である)を比較することによって明らかに示される。4−アームの10kのMWのPEG分子の分岐したアミン末端では、より高い全体的なEPC結合で反映されるとおり、より大きいレベルの抗体コンジュゲーションの機会が得られる(
図3A)。非特異的な結合の抑制によって、純度の増大が生じる(
図3B;ゲルタイプIV)。興味深いことに、20kのMWのPEG(ゲルタイプIII)の使用によって、同じ合成条件下で10kのMWのPEGに対して有意に低いEPC捕獲収率が生じ(ゲルタイプIV;p<0.005)、純度のレベルは匹敵した。
【0084】
ゲルタイプV−VIIでは、試薬を組み合わせるため二段階のプロトコールに従った。ゲルタイプVでは、4−アームのPEGに対する抗体分子のコンジュゲーションを、アルギン酸の導入前に最初に行う。この処方物は、ゲルタイプIVに対してEPC捕獲の収率および純度を改善した。この二段階のプロトコールは、EDCおよびスルホ−NHSをアルギン酸による第二の工程に加え、および第一工程は、PEGおよび抗体の一緒の混合に限定するように、改変した。第一の工程のための混合およびインキュベーションを短時間にした場合(ゲルタイプVIについてはそれぞれ10分間および15分間)、その収率は、ゲルタイプVに対しては改善されなかったが、純度は高かった。より長い混合およびインキュベーション時間を次に検討し(ゲルタイプVIIについて、それぞれ29および60分間)、PEG分子と抗体分子とのより大きい混合およびエンタングルメント(絡み合い)を達成した。この処方物によって、ゲルタイプVIおよびVIIに対して有意に高い収率および純度が得られた(それぞれ、p<0.005およびp<0.01)。
【0085】
実施例2−GPR49/Lgr5受容体を用いる幹細胞のマイクロ流体捕獲および遊離
実施例2は、2つの結合剤、具体的には、GPR49およびLgr5抗体の受容体を用いる腸管幹細胞のマイクロ流体捕獲および遊離のためのデバイスおよび方法を開示する。
【0086】
腸管系内の多能性および静止期の幹細胞を検討することに向かって進むことが、近年広まっている(David、H.S.ら、Current View:Intestinal Stem Cells and Signaling.Gastroenterology 2008、134(3)、849〜864.; Montgomery、R.K.ら、Promininl(CD133)as an Intestinal Stem Cell Marker:Promise and Nuance.Gastroenterology 2009、136(7)、2051〜2054.)。しかし、現行の方法は、ハイブリダイズのマウスモデルおよび蛍光マーカーに依拠している。本開示は、親和性捕獲と組み合わされたマイクロ流体を実行することによって、蛍光マーカーおよび細胞ソーティング装置の必要性を回避する。
【0087】
腸管幹細胞を特徴付けることおよび特定することは、胃腸病学のグループ内でかなり精査された(Sangiorgi、E.、ら、Bmi1 is expressed in vivo in intestinal stem cells.Nat Genet 2008、40(7)、915〜920;Snippert、H.J.ら、Prominin−1/CD133 Marks Stem Cells and Early Progenitors in Mouse Small Intestine.Gastroenterology 2009、136(7)、2187〜2194;Bjerknes、M.ら、Intestinal epithelial stem cells and progenitors.Method Enzymol 2006、419、337〜383;Barker、N.、ら、The intestinal stem cell.Gene Dev 2008、22(14)、1856〜1864.)
【0088】
これらの細胞が、陰窩領域にある矛盾するモデルは、+4標識保持細胞(LRC)モデルおよび陰窩底部円柱細胞(crypt based columnar cell)(CBC)モデルに制約された。最近まで、腸管幹細胞集団の特徴付けマーカーは、BMI−1、Mushashi−1、ならびに細胞内ドメインに制限された他の静止期のおよび活性な循環中のマーカーに依拠していた。Barkerらは、活性な循環中の腸管幹細胞をコードする遺伝子が、ロイシンカップリングしたGタンパク質受容体(Lgr5)として公知の受容体に存在することを発見した(Barker、N.、ら、Identification of stem cells in small intestine and colon by marker gene Lgr5.Nature 2007、449(7165)、1003−U1)。GFP−FACSソーティングと組み合わされたハイブリダイズしたマウスにおけるこれらの遺伝子の過剰発現によって、インビトロの培養系を開発することおよびこれらの細胞タイプをゲノム分析することが可能になった。Sato、T.ら、Single Lgr5 stem cells build crypt−villus structures in vitro without a mesenchymal niche.Nature 2009、459(7244)、262−U147)。市販の抗体を利用することによって、Lgr5受容体を標的する、これらの幹細胞サブタイプの細胞外染色が可能になった。(Olsen Hult、L.T.ら、EP Receptor Expression in Human Intestinal Epithelium and Localization Relative to the Stem Cell Zone of the Crypts.PLoS One 2011、6(10)、e26816)。これらを実行することによって、抗体で野性型ラット組織由来の抗体で官能化されたアルギン酸塩を利用する、これらの標的細胞の選択的な捕獲および遊離が可能になる。
【0089】
逆に、本実施例によって、回避された標的集団の生存度を保持しながら、多重化して、およびより大きいサンプル容積を処理することが可能になる。他のグループによる以前の研究では、培養方法は、単一細胞由来の過形成およびオルガノイド形成単位の誘導を発症した(Sato、T.ら、Single Lgr5 stem cells build crypt−villus structures in vitro without a mesenchymal niche.Nature 2009、459(7244)、262−U147)。これらの細胞は、これらの単位に発達するために間葉性のニッチを必要とせず、分化の合図を誘導するための増殖因子に依拠する。培養中のlgr5細胞は、6%というプレート有効性を有することが報告された(Sato 2009);近年の発展によって、プレートを改善するためにPaneth細胞を介した必須のwntシグナル伝達がほのめかされた。(Sato ら、Paneth cells constitute the niche for Lgr5 stem cells in intestinal crypts.Nature 2011,469(7330)、415−+)。
【0090】
本実施例では、富化されたlgr5陽性集団は、開示された方法を用いて捕獲および遊離され、そしてこの細胞は、以前のグループによって生じたのと同様の形態学的応答を生じた。さらに、培養物中のwnt3aの添加は、プレートの効率の増大を容易にした。共焦点顕微鏡と組み合わされた免疫組織学的分析によって、近年の報告と一致する中央管腔内のlgr5およびcd24発現が明らかになった。(Gracz、A.D.ら、Sox9 expression marks a subset of CD24−expressing small intestine epithelial stem cells that form organoids in vitro.Am J Physiol−Gastr L 2010、298(5)、G590−G600を参照のこと)。
【0091】
本実施例では、共有結合した拮抗性のGPR49/Lgr5を有するアルギン酸塩ヒドロゲルでは、捕獲および遊離の機構は、キレート化遊離を伴うヒドロゲルとカルシウムとの架橋に存在する。本実施例は、野性型ラット結腸陰窩消化物からGPR49/Lgr5陽性細胞を選択的に捕獲および遊離する能力を実証する。ワンパスのアプローチを通じて、出発の懸濁物からGPR49/Lgr5細胞の49%という最終純度まで24倍の富化が得られた。提示されたマイクロ流体プラットフォームでは、最終使用者がサンプルを多重化する能力をもたらしながら、標的細胞の生存度を保持する。本開示によって、腸管幹細胞単離が可能になり、これは組織工学の分野および同時培養の適用での進歩の能力を有する。
【0092】
方法
動物
雄性および雌性の新生仔のLewisラット(Charles River)を用いて、米国の東部標準時間に従って、12時間の明/暗サイクルによって室温条件で飼育した。前駆細胞の単離研究のために、2日齢〜5日齢の新生仔ラットを利用して、断頭によって屠殺した。全ての研究およびプロトコールは、ノースイースタン大学(Northeastern University)の施設内動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)(IACUC)によって承認された。
【0093】
組織消化
腸組織サンプルは、新生仔Lewisラットから入手した。大腸を取り出し、側方に分けて、1mmの切片に断片化した。断片化した組織を、2mMのEDTA中で、4℃で30分間インキュベートした。組織サンプルを、溶液から分離し、20mLのリン酸緩衝化生理食塩水(PBS、Gibco)中に入れて10分間撹拌した。次いで上清の液を収集して、150×gで3分間遠心分離し;ペレットを収集し、10mLの無血清ダルベッコの改変イーグル培地(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)(DMEM,Cellgrow)中に懸濁して、150×gで再度遠心分離した。このペレットを、5mLの無血清のDMEM溶液に懸濁して、100μmの細胞ストレーナーを通して濾過した。次いで、溶液を20μmの細胞ストレーナーを通して、1mLのエッペンドルフチューブ中に濾過した。
【0094】
マイクロ流体細胞単離デバイス製造
マイクロ流体デバイスを、ノースイースタン大学(Northeastern University)のジョージ・ジェイ・コスタス・ナノスケール・テクノロジー・アンド・マニュファクチャリング・リサーチ・センター(George J.Kostas Nanoscale Technology and Manufacturing Research Center)で伝統的なソフトリソグラフィーを用いて製造した。このデバイスの物理的な寸法およびデザインは、Hatchらによって記載されるデバイスのものと同一であった。これらのデバイスは、ガラススライドに結合された100μmの直径のピラーでパターン化されたポリジメチルシロキサン(PDMS)からなる。
【0095】
アルギン酸処方物
抗体−官能化アルギン酸塩反応は、6つの異なるシナリオを経験したが、試薬の化学量論的な比は、各々のスキームを通じて一定のままであった。1940μLのMES(Thermo−fisher)、.04mgの抗GPCR GPR49(Abeam)、および22.5mgの10KDの4−アームのstar PEG()を30分間混合した。MESのpHは各々のそれぞれのシナリオについて変更され、ph4.7または6.0のいずれかで保持された;このpHは、NaOHを用いて6.0のpHまで滴定された。アマルガムをシナリオIIで60分間インキュベートさせたが、残りのシナリオでは引き続く試薬を直ちに添加した。13.8mgのスルホ−NHS(pierce)、4.8mgのEDC(pierce)、および45mgのアルギン酸塩(thermo)を添加して、60分間混合させ、シナリオIIでさらに60分間インキュベートした。この官能化されたアルギン酸塩を、10KDの透析カセット(Thermo)に注入し、そのそれぞれのシナリオpHで48時間、その拡張MES中で懸濁した。
【0096】
チャネル形成、注入および遊離
六角形のポストのアレイを有するマイクロ流体デバイスを、細胞分離に利用した。各々のデバイスを抗GPCR GPR49で官能化されたアルギン酸で満たし、60分間インキュベートさせた。チャネルは、100μLのpH6のMES緩衝液を10μL/分で、100μLの100mMのCaCl
2を10μL/分で、および100μLの0.1%のウシ血清アルブミンを10μL/分で流すことによって形成した。Harvard Apparatusシリンジポンプを用いて正確な流速を得た。得られた細胞溶液を混合して、均一な懸濁物を保証して、200μLを1mLのシリンジに吸引した。100μLの細胞溶液を、各々のデバイスを通して、3μL/分の速度で、続いて100μLのpH6のMES緩衝液を3μL/分でポンピングしてリンスした。次いで、100μLの100mMのEDTA溶液を、デバイスを通して10μL/分でポンピングして、このデバイスから細胞を遊離させた。培養のために、細胞を、氷上の、50μLのMatrigel(BD Bioscience)を含有するエッペンドルフチューブ中に遊離した。
【0097】
フローサイトメトリー
出発の(すなわち、組織消化物)細胞懸濁物および単離した細胞の両方のフローサイトメトリー分析を、Beckman Coulter Quanta SCフローサイトメーターを用いて行った。抗GPCR GPR49−RPEを用いて、注入された集団および遊離された集団を定量した。一次および二次をそれぞれ、PBS中で1:50希釈した。
【0098】
細胞培養
富化された幹細胞集団を、遊離後にマトリゲルと混合し、各々のサンプルをウェルプレート中にプレートして、10分間、37℃でインキュベートした。Lgr5基本培地は、以下の構成要素を含んだ:進行したDMEM F−12、5mlのN2補充物、10mLのB27(ビタミンAなし)、5mL HEPES、6.25mLのグルタマックス(glutamax)。各々のサンプルを350μLのLgr5基本培地でリンスして、細胞培養物からEDTAを除去した。次いで17μLのROCKインヒビター(y−27632、Sigma−Aldrich)を10mLのLgr5培地に添加した。この溶液の486μLを、以下の濃度で増殖因子とともに各々のウェルのプレートに添加した:100ng/mLのマウスNoggin(Peprotech)、100ng/mLのマウスWnt3A(Peprotech)、50ng/mLのラット、EGF(Peprotech)、および1μg/mLのマウスRspondin−1(R&D Biosciences)。各々の増殖因子を添加した後、サンプルを37℃、5%CO
2で保持した湿潤チャンバ中に移動した。細胞増殖の2日後、培地を回復させた。使用済み培地を取り除き、Lgr5培地(ROCKインヒビターなし)を、各々のウェルプレートに添加する。増殖因子を以下の濃度で添加した:100ng/mLのNoggin、100ng/mLのWnt3A、50ng/mLのEGF、および500ng/mLのRspondin−1。
【0099】
オルガノイドの免疫組織化学染色
富化されたオルガノイドを、4%のパラホルムアルデヒドで固定して、PBS中に含有される2mMのグリシンでリンスした。6U/mlのディスパーゼ(ステム・セル・テクノロジーズ(stem cell technologies))を添加して、1時間インキュベートして、マトリゲルからオルガノイドを遊離した。オルガノイドを、以下を含有する200μLのLgr5培地ブロッキング溶液中にピペッティングした:3%のBSA、10%のヤギ血清、1%のtriton X−100、10mMのHEPESおよび10mMのグリシン。ブロッキング溶液に対して、1:50のそれぞれの抗体、抗GPCR GPR49および抗CD24を添加して、4℃で一晩インキュベートした。オルガノイド類の溶液をピペッティングして、中和濃度のAlexfluor488、Alexafluor568、および0.5μg/mlのDAPIを含有する200μLのブロッキング溶液中に3時間入れた。オルガノイドをガラスカバースライドに装填して、ニコンの共焦点顕微鏡で共焦点画像を撮った。
【0100】
結果
腸幹細胞のマイクロ流体富化
実験パラメーターの改変、例としては、反応pHの調節および調停(pacification)が、Lgr5富化および純度の倍数を増大するのに必要であった(
図6A)。サンプルおよび処方物を、各々が1つの変数で異なる5つのシナリオに分けた(
図6A)。これらのシナリオの純度収率を、注入された集団に対して比較した。純度パーセントの量子化は、注入((
図6C)および遊離された(
図6C)に対してフローサイトメトリーを介して行った。各々のヒストグラムは、EV対側方散乱のレジメンからゲートして、ノイズをミディカゲートし(midicagate)、各々のゲートは、各々のサンプルを通して伝播させた。
*P<.0005、
**P<.001、
***P>.05;n=3。Lgr5捕獲のための最適化は、流速、調停、pHおよび反応時間を含めて4つの変数を包含した。調停因子であるウシ血清アルブミン(BSA)によって、マイクロ流体チャネル内のファウリングの減少が可能になり、これによって、チャネルを横切る一定の流速およびアルギン酸塩/抗体のコンジュゲートに対する非特異的な結合の阻害の確立が容易になった。BSAの濃度は、手順IVおよびVで異なり、システムにはほとんど影響はなく、純度収率に影響はなかった(
図6B)。流速を、3〜5μL/分(シナリオIIIおよびIV)に調節したところ、かなり有意な不均衡が生じ、ここでは、高い流速で標的細胞に対して潜在的な剪断効果がほのめかされた(
図6B)。
【0101】
4−アームのスター(star)PEG、EDC、および抗体の相互作用を改善するためにアルギン酸塩反応に影響するpHを検討した。シナリオIIIおよびVIの比較では、4.7〜6.0のpHの変化が、Lgr5陽性細胞を捕獲するのにおけるアルギン酸塩ヒドロゲルの有効性に対して有意な全体的な影響を有することが証明された(p<.001)。pHを増大することは、反応部位を脱プロトン化し、これによって、抗体−PEGおよびアルギン酸塩−EDCコンジュゲートの反応力の増大を可能にし、全体的な反応を完了させる。混合およびインキュベーションの時間は、富化において統計学的に有意な影響はなかった。シナリオIIIでは、最高の純度収率が得られ、これは放出されるLgr5陽性細胞のうちほぼ49%純粋な集団であった;この処方物は、注入された懸濁物からの24倍のlgr5富化を容易にした(
図6B)。生存度は、マイクロ流体アプローチで評価して、約85%生存可能を保持した(データ示さず)。
【0102】
フローサイトメトリーを介したLgr5陽性細胞の検証および計数
マイクロ流体デバイス後の富化能力および純度収率を決定するため、フローサイトメトリーを用いて、異なるアルギン酸塩/抗体処方物に対して陽性の集団を計数した。側方および前方の散乱レジメン内の最初のゲーティングによって、外因性の細片を軽減することが可能になった。注入および遊離された腸内消化懸濁物を、PBS中の抗GPCR GPR49−RPEとコンジュゲートした。コントロールの集団は、抗体タグの非存在下で、同じ方式で流して、ノイズと自己蛍光との調停を可能にした。注入集団および遊離集団は、同じ方式でゲーティングされコントロールに対して重層されて、ノイズを相殺した。注入されたサンプルは、腸内消化物由来の約2.3%のLgr5陽性細胞から構成された(
図6C)。このフローサイトメトリー分析によって、シナリオIIIにおける遊離に比較して標的のLgr5陽性集団の24倍の富化が図示された(
図6D)。
【0103】
富化された細胞は、過形成および単一細胞からのオルガノイドを誘導した。
遊離された富化されたLgr5陽性細胞をマトリゲルに埋め込んで、Satoら;Single Lgr5 stem cells build crypt−villus structures in vitro without a mesenchymal niche.Nature 2009,459(7244),262−U147に記載と同様の条件下で増殖させた。lgr5陽性細胞の培養技術が含む増殖因子成分は、種依存性の要因を考慮するためにわずかに変更されていた。ハイブリダイズしたマウスモデルを実行した原文献とは対照的に、ラット内皮増殖因子(EGF)およびマウスrspondin−1を用いた。ロックインヒビター(rock inhibitor)であるY−26743を用いて培養の安定性を改善し、単一細胞懸濁物におけるアノイキスを防いだ。このインヒビターをまた、マイクロ流体富化技術において併用して、プレート有効性の増大(データ示さず)を生じることを観察したが、富化されてない培養物ではほとんど影響は示されなかった(
図7A〜
図C)。富化された単一のlgr5細胞からのオルガノイドの発達は、4日までに見られ、富化されていない集団と比較された(
図7D〜
図7E)。増殖には2日目に気づき、3日目に過形成の段階まで進行した。過形成の増大と組み合わされた小管腔形成は、4日目に観察される。
【0104】
図7A〜
図7Cでは、富化されていないオルガノイドの発達(progression)が、外因性集団によって囲まれた有意に大きい嚢胞様オルガノイドを生じたことが示される。
図7D〜
図7Fは、単一細胞懸濁物由来の富化されたオルガノイドの発達を4日で示す。2日目の単一細胞の増殖(
図7D)、3日目の誘導された過形成(
図7E)、および4日目の周囲の分泌されたアポトーシス細胞で判明した小管腔形成(
図7F)を示す。スケールバーは100μmを表す。
【0105】
遊離されたlgr5陽性細胞の一日の発達は、富化されていない集団に対して並行して培養した。富化されていない懸濁物を、遊離された集団と同じ容積で播種して、同じ条件下で培養した。富化されていない培養では多重の形態が明らかになり、これはアポトーシス細胞を保有している、中央管腔を有するオルガノイド(
図7Cおよび
図8C)から線維芽細胞の形態におよぶ。富化されてない懸濁物の増殖速度は、富化された集団に比較してさらに加速された。プレート効率は、培養系に対するWnt3aの添加によって富化された集団のなかで改善された(
図8B)。培養培地に対するwnt3aの添加によって、生存度およびパネート細胞からの独立が維持される(
図8D)。
【0106】
富化されていない集団(
図8A)は、Wnt3aタンパク質の存在下でプレート効率の増大をなんら有さない。注入された培養物中で形成されるほとんどのオルガノイド類は、アポトーシス細胞を保有する嚢胞様構造を発現した(
図8C)。逆に、富化された集団(
図8B)は、プレート効率の増大を有し、これによって、単一に由来するオルガノイド増殖が多くなる。富化された細胞は、同様の時点でwnt3aなしの研究(
図8D)と同様の形態を示した。3日目に培養物中の画像を撮った;スケールバーは、100μmを表す。
【0107】
共焦点顕微鏡を介した富化されたオルガノイドおよび富化されていないオルガノイドの免疫染色
負荷されたおよび富化されていないオルガノイドを、ディスパーゼ処理によって4日で培養物から遊離して、マトリゲル(Matrigel)を分解した。染色されたオルガノイドを、抗GPR GPRCR49、抗CD24、およびDAPIに曝して、各々をアレクサフルオル(alexa fluor)488(緑)および524(赤)とコンジュゲートした。(
図9および10)。共焦点顕微鏡によって、オルガノイドおよびタンパク質発現の形態の決定が容易になった。富化されていないオルガノイド(
図10)は、中央ドメイン内にアポトーシス細胞の有意な集団を有した。このオルガノイドは、培養期間の間過形成を受けず、楕円形パターンの明るいCD−24シグナルを示した。抗Lgr5/GPRCR49発現は、かすかであって(
図10b)、発現はオルガノイドの管腔ドメインに限定された。抗Lgr5/GPRCR49の局在化は、低CD24集団を有意に減らした(
図10A−B)。
【0108】
富化されていない培養のトポグラフィーによって、球形であった、富化されたオルガノイド(
図9D)とは対照的に、楕円の平面な形態が示された(
図10D)。中央のドメインは、頂端膜に局在する、CD−24(緑)および抗Lgr5/GPCR49(赤)を発現した(
図9A〜B)。CD−24発現は、4つの異なる膜にそって局在化し(
図9A)、発現は、富化されていないオルガノイドに比較して強度が低かった。局在化された抗Lgr5/GPCR49は、頂端膜に集中し、2つの膜で発現された(
図9B)。両方のマーカーの発現は、中央ドメインに厳密に制限され、これはSox9(CD−24)およびLgr5のゲノムの傾向と一致していた(Gracz、A.D.ら、Sox9 expression marks a subset of CD24−expressing small intestine epithelial stem cells that form organoids in vitro.Am J Physiol−Gastr L 2010、298(5)、G590〜G600;14;Sei、Y.ら、A stem cell marker−expressing subset of enteroendocrine cells resides at the crypt base in the small intestine.Am J Physiol−Gastr L 2011、300(2)、G345〜G356)。
【0109】
考察
本発明の開示は、費用効果的で蛍光の不要な細胞単離デバイス、および組織工学のような適用のための方法を開発における要件を満たす。腸管幹細胞単離における従来の方法は、ハイブリダイズしたマウスモデルおよびFACSのような複雑な装置に依拠する。本発明の実施例は、抗GPCR49/Lgr5と組み合わせてアルギン酸を用いる、腸管幹細胞集団を富化するマイクロ流体方法を記載する。さらに、この富化されたlgr5細胞は、適切な培養培地中で増殖された。培地に細胞を添加した後、オルガノイド中央ドメインでのLgr5発現と一致しているCD24発現を検討した。本実施例は、生存度、発現および増殖の形態を維持したままで、選択した標的集団を富化する方法およびデバイスを記載する。
【0110】
本実施例は、49%というGPCR49/Lgr5純度まで24倍富化できる、ワンパス(one−pass)のマイクロ流体アルギン酸塩捕獲および遊離モデルを記載する。安定化剤(pacifying agent)であるBSAを用いて、非特異的な結合の減少を可能にした。この現象は、カスケードの影響を生じ、ここではlgr5陽性細胞を含んでいる凝集した細胞タイプがアルギン酸塩コーティングに結合する;濾過した細胞を即時に注入して、分散を容易にした。アルギン酸塩、EDC、4−アームのスターPEG、抗GPCR49/Lgr5の間の化学的な相互作用および安定性は、反応のpHがより塩基性になるにつれて増大した
【0111】
いかなる理論にも束縛されないが、反応pHが大きくなれば、4−スターPEGの活性部位は脱プロトン化され、これは、抗体相互作用を4つの活性部位に対して制限し得、従って、吸着効果を生じるアルギン酸塩マトリックスに対する共有結合を阻害する。相互作用の可能性は、要求されていない副反応を阻害するためのキャッピング試薬を導入することによって軽減され得る。従来の方法とは対照的に、開示された方法は、多くのデバイスを多重化し、並行して駆動できるようにし、処理能力を向上するために用いられ得る。さらに、開示された方法によって、インサイチュで同様の増殖形態を維持したままで、腸管幹細胞の蛍光標識なしの単離が可能になった。
【0112】
注入および単離された細胞集団の培養によって、細胞の組成、形態、および可溶性の因子、特にWnt3aの効果に関する情報が得られた。注入されたサンプルおよび遊離されたサンプルを、文献で以前に報告されたのと同様の方式で培養した。Lgr5が富化された集団および変更されていない消化物の形態学的な増殖を検討するため、培養物を、並行して流して、増殖および形態の相違を評価した。富化されてない集団内の増殖には、オルガノイドとオルガノイドとの間で有意な形態学的変動があった。オルガノイドの多くは、過形成を受けず、嚢胞様の状態で残ったが、他方では、モノリシックの線維形成性層が形成された。Wnt3aが培養物内に存在しようとしまいと、富化されていないオルガノイドは、影響されないまま残り、同様の形態を維持した。富化されていない集団は、パネート(paneth)−lgr5陽性細胞の二重構造を含み、これによってWntシグナル伝達の必要性は残る;従って、補因子の存在下ではヌル効果が注目された。Wnt3aの非存在下では、富化されていない集団の中のプレート効率は、富化された懸濁物よりもわずかに高いことが注目された;これは、パネート細胞ニッチのシグナル伝達の指標であり、これによって長期のオルガノイド生存度の改善が可能になる。富化されたオルガノイドを、注入された懸濁物に対して同様の方式でプレートしたが、遊離されたGPCR49/lgr5陽性細胞の形態学的変化およびプレート効率には有意な相違が存在していた。
【0113】
Wnt3aの不存在下では、富化された集団のプレート効率は、以前に報告された6%の範囲内であった。Wnt3a欠損細胞のエイジ・プログレッション(age progression)によって、管腔形成および最終的な過形成の発現が示された。これらは、単一のLgr5由来オルガノイドの以前に報告された形態と一致している。分泌されたアポトーシス細胞は、富化されたオルガノイドを囲み、これは、インビボの増殖を模倣する、自律的な性質を示した。Wnt3aの存在は、プレート効率の増大および形態の変化をもたらした。Wnt3a欠損培養物における同様の時点で、形態は嚢胞様であって、前駆体の表現型を呈した。この構成の追加によって、r−スポンジン1の活性化が容易になり、直接接触なしにパネート細胞ニッチが保持される。
【0114】
最近の文献では、腸管幹細胞が、2つのコードされた遺伝子、Sox9およびLgr5に潜在的に属することが示唆される。これらの発現傾向は、それぞれ、CD24およびGPCR49で特定され得る、細胞の細胞内ドメインおよび細胞外ドメインと結び付けられる。オルガノイド内のこの発現傾向を検討するために、共焦点顕微鏡と組み合わされた免疫組織化学によってこれらのパターンへの洞察が得られた。富化されていない臓器は、中央のドメイン内にアポトーシス細胞を保有する嚢胞様の形態を呈する。CD24発現は、中央管腔内の頂端膜で示されるが、GPCR49/Lgr5は、CD24発現の低い領域で正の発現を示した;この傾向は、以前に発見されたゲノム発現と同様である。逆に、富化されたオルガノイドは、わずかに異なる形態だが、同様の免疫発現パターンを示した。この画像によって、小さい中央管腔を有するより小さいオルガノイドは、なんらアポトーシス細胞を形成して保有しなかったことが示される。CD24およびGPCR49/Lgr5発現は、GPCR49/Lgr5と同様の発現パターンを有する中央ドメインに結び付けられた。提示された画像では、マイクロ流体富化プロセスが前に報告されたのと同様の形態学的な結果を保持するということにはならなかった。
【0115】
本実施例は、細胞のソーティング(分取)および組織工学に用いられ得る方法およびデバイスを開示する。本実施例は、野性型腸管消化物からの腸管幹細胞単離技術を記載する。現在の慣例は、これらの細胞を単離するにはトランスジェニックマウスモデルおよび複雑な装置に限定される。この開示された方法によって、エンドユーザーは、細胞の生存度を維持しながら、スピーディーなプロセスで細胞の亜種を単離することが可能になる。
【0116】
実施例3−多段階の捕獲および遊離のデバイスおよび方法
本実施例は、細胞のような生物学的材料の多段階の、極めて特異的な捕獲および遊離のための組成物および方法に関する。
【0117】
その同一性が2つの異なる表面細胞受容体によって規定される標的細胞(例えば、CD31+およびFLK1+の両方である全血由来の細胞集団)の分離における第一の工程。
図11A〜
図11Dでは、2つの抗体の各々について捕獲ステージを包含する、アルギン酸塩−ヒドロゲルベースのデバイスの構成を示す。いくつかの実施形態では、2つ以上の抗体が考慮される。
【0118】
図11A〜
図11Dでは、サンプルを、シリンジポンプを介して、第一のアルギン酸塩−ベースの捕獲ステージ(「マーカー1単離(Marker 1 isolation)」
図11A)に注入した。このステージは、ステージBにつながり、これは2方向のバルブであった。その閉じた構成では、このバルブによって、ステージAからの廃棄物を収集管に通過させることが可能になった。廃棄物が通過した後、この廃棄物のストリームを、例えば、ピンチバルブを用いて閉じた。(
図11B)。塩化カルシウムの目的は、ステージから生じる細胞懸濁物中のEDTAを中和することであった(
図11A)。塩化カルシウム溶液とこの細胞懸濁物との混合を確実にするために、合わせたアウトプット(これはラミナフロー中であった)を、ヘリングボーン構造を備える混合チャンバ(
図11C)中に送った。次いで、この混合された溶液をステージに入り(
図11D)、ここで第二の捕獲分子について受容体を発現する細胞を捕獲した。この分離プロセスの最終工程は、ステージA(
図11A)インレットへのEDTA溶液の注入であって、ここではステージBから捕獲された細胞を遊離する(
図11B)。この溶液を、過剰の培養培地を含有する管に収集して、細胞に対するEDTAのなんらかの有害な影響を最小限にした。
【0119】
本実施例によって、未反応の全血から内皮前駆細胞(EPC)を単離するためのこの二段階(dual−stage)の捕獲システムの能力が示された。この目的は、CD34+/FLK1+である細胞を捕獲することであった。
図12は、ステージAおよびステージBから生じる細胞の細胞カウント(フローサイトメトリーによって得られる)を示す。
図12では、示される種々の集団は、CD34+細胞のカテゴリーを表し、および「総(total)」のカラムは、遊離された細胞の総数を表す。第二の捕獲デバイスの目的は、第二のマーカーFLK−1を発現しないCD34+細胞、すなわち、CD45+でもあるCD34+細胞を除去することであった。第一の捕獲ステージに対して第二の捕獲ステージから生じたCD45+細胞の数の急激な減少によって、この富化が示される。
【0120】
他の態様、改変および実施形態は、添付の特許請求の範囲内である。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕ヒドロゲル組成物であって:
複数のアルギン酸分子と;
複数の分岐したポリマー分子と;を含み
ここで前記複数のアルギン酸分子が、前記分岐したポリマー分子または1つ以上の結合剤に対してコンジュゲートされるかまたはそれらと混合されて、ヒドロゲルを形成し;かつ
各々の前記分岐したポリマー分子が複数の基を含み、
ここで、各々の分岐したポリマー分子の少なくとも1つの基が、前記アルギン酸分子に対してコンジュゲートされ;かつ
各々の分岐したポリマー分子の少なくとも1つの他の基が、前記1つ以上の結合剤に対してコンジュゲートされる、ヒドロゲル組成物。
〔2〕前記分岐したポリマーが、ポリエチレングリコールである、前記〔1〕に記載の組成物。
〔3〕前記ポリエチレングリコール分子が4−アーム分子である、前記〔2〕に記載の組成物。
〔4〕前記1つ以上の結合剤が、抗体、抗体フラグメント、ペプチド模倣化合物、ペプチド、小分子、または核酸である、前記〔1〕に記載の組成物。
〔5〕前記抗体が、GPR49、LGR5、CD24、FLK1、CD45、CD31、CD34、およびsca−1タンパク質に対する抗体からなる群より選択される、前記〔4〕に記載の組成物。
〔6〕サンプルから標的の生物学的材料を捕獲および遊離する方法であって:
(a)流体を受容するための1つ以上のチャンバを備えているマイクロ流体デバイスを設けることであって、ここで前記1つ以上のチャンバのうちの少なくとも1つが、ヒドロゲル組成物でコーティングされた表面を備え、前記ヒドロゲル組成物が:
複数のアルギン酸分子および複数の分岐したポリマー分子を含み;
ここで前記複数のアルギン酸分子が、分岐したポリマー分子または1つ以上の結合剤とコンジュゲートされるかまたはそれらと混合されて、ヒドロゲルを形成し;かつ
ここで前記各々の分岐したポリマー分子が、複数の基を含み、各々の分岐したポリマー分子のうちの少なくとも1つの基が、アルギン酸分子に対してコンジュゲートされ、そして各々の分岐したポリマー分子のうちの少なくとも1つの他の基が、前記1つ以上の結合剤に対してコンジュゲートされることと;
(b)標的および非標的の生物学的材料を含んでいるサンプルを、前記ヒドロゲル組成物に対して前記標的の生物学的材料を結合するのに有効な条件下で前記1つ以上のチャンバ中に導入することと;
(c)前記標的の生物学的材料を、遊離剤を用いて遊離することと;
を包含する、方法。
〔7〕前記サンプルから未結合の非標的の材料を除去することをさらに包含する、前記〔6〕に記載の方法。
〔8〕サンプルから標的の生物学的材料を捕獲および遊離する方法であって:
(a)流体を受容するための1つ以上のチャンバを備えているマイクロ流体デバイスを設けることであって、ここで前記1つ以上のチャンバのうちの少なくとも1つが、ヒドロゲル組成物でコーティングされた少なくとも1つの表面を備え、前記ヒドロゲル組成物が: 複数のアルギン酸分子および複数の分岐したポリマー分子を含み;
ここで前記複数のアルギン酸分子が、分岐したポリマー分子または1つ以上の結合剤に対してコンジュゲートされて、ヒドロゲルを形成し;かつ
ここで前記各々の分岐したポリマー分子が、複数の基を含み、各々の分岐したポリマー分子のうちの少なくとも1つの基が、アルギン酸分子に対してコンジュゲートされ、そして各々の分岐したポリマー分子のうちの少なくとも1つの他の基が、1つ以上の結合剤に対してコンジュゲートされることと;
(b)標的の生物学的材料を含んでいるサンプルを、前記ヒドロゲル組成物に対して生物学的材料を結合するのに有効な条件下で前記デバイスの第一のチャンバ中に導入することと;
(c)前記結合した生物学的材料を、遊離剤を用いて遊離することと;
(d)前記遊離剤と中和剤とを接触させて、第二のチャンバ中で前記遊離剤を中和することと;
(e)前記第二のチャンバの内容物を、前記ヒドロゲル組成物でコーティングされた表面を備える第三のチャンバ中に提供することであって、ここで前記第三のチャンバ中の前記結合剤が、(a)前記ヒドロゲル組成物に対して前記標的の生物学的材料を結合するのに有効な条件下で、で用いられたものとは異なる結合剤であることと;
(f)前記結合した標的の生物学的材料を、遊離剤を用いて遊離することと;
を包含する、方法。
〔9〕前記遊離された生物学的材料に対して培養培地を添加することをさらに包含する、前記〔8〕に記載の方法。
〔10〕異なる結合剤を用いて、(d)から(f)を繰り返すことをさらに包含する、前記〔8〕に記載の方法。
〔11〕前記ヒドロゲル組成物からの遊離後に、前記標的の生物学的材料を検出することをさらに包含する、前記〔10〕に記載の方法。
〔12〕前記生物学的材料が、細胞、タンパク質、溶質または粒子であり、ここで前記遊離剤がキレート剤、酵素、またはそれらの組み合わせである、前記〔6〕〜〔11〕のいずれか1項に記載の方法。
〔13〕前記細胞が、成体幹細胞、胎児幹細胞、前駆細胞、末梢造血幹細胞、内皮前駆細胞、循環中の腫瘍細胞、成熟の循環中の内皮細胞、羊膜幹細胞、間充織幹細胞、脂肪由来幹細胞、腸管幹細胞、皮膚幹細胞、神経幹細胞、または癌幹細胞である、前記〔12〕に記載の方法。
〔14〕前記細胞が、前記サンプルから捕獲された生きている細胞である、前記〔12〕に記載の方法。
〔15〕前記キレート剤が、EDTA、EGTA、およびクエン酸ナトリウムからなる群より選択される、前記〔12〕に記載の方法。
〔16〕前記生きている細胞を培養、検出、分析または形質転換するために有効な条件下で前記生きている細胞を維持することをさらに包含する、前記〔14〕に記載の方法。
〔17〕ヒドロゲル組成物を作製する方法であって:
(a)分岐したポリマー分子と1つ以上の結合剤とを緩衝液中で反応させることと;
(b)前記分岐したポリマー−結合剤溶液と少なくとも1つのアルギン酸分子とを反応させて、官能化されたヒドロゲルを形成し、前記官能化されたヒドロゲルは、1つ以上の結合剤に対してコンジュゲートされ、さらに少なくとも1つのアルギン酸分子に対してコンジュゲートされた各々の分岐したポリマー分子を含んでいることと、
を包含する、方法。
〔18〕前記分岐したポリマーがポリエチレングリコール分子である、前記〔17〕に記載の方法。
〔19〕前記ポリエチレングリコール分子が4−アーム分子である、前記〔18〕に記載の方法。
〔20〕前記1つ以上の結合剤が、抗体、抗体フラグメント、ペプチド模倣化合物、ペプチド、小分子、または核酸である、前記〔17〕に記載の方法。
〔21〕前記抗体が、GPR49、LGR5、CD24、FLK1、CD45、CD31、CD34、およびsca−1タンパク質に対する抗体からなる群より選択される、前記〔20〕に記載の方法。
〔22〕マイクロ流体デバイスであって:前記マイクロ流体デバイスは
(a)基板と;
(b)1つ以上のチャンバを含み、標的の生物学的材料を含んでいるサンプルを受容するための1つ以上のチャンバであって、前記1つ以上のチャンバが:
(i)ヒドロゲル組成物でコーティングされた表面であって、前記ヒドロゲル組成物が:
複数のアルギン酸分子および複数の分岐したポリマー分子を含んでおり、
ここで、前記複数のアルギン酸分子が、前記分岐したポリマー1分子または1つ以上の結合剤に対してコンジュゲートされて、ヒドロゲルを形成し;かつ
ここで、前記各々の分岐したポリマー分子が複数の基を含み、各々の分岐したポリマー分子のうちの少なくとも1つの基がアルギン酸分子に対してコンジュゲートされ、かつ各々の分岐したポリマー分子のうちの少なくとも1つの他の基が前記結合剤に対してコンジュゲートされ;
(ii)結合された標的の生物学的材料と中和剤とを混合するための混合チャンバと;
(iii)ヒドロゲル組成物でコーティングされた1つ以上の追加の表面であって、前記ヒドロゲル組成物が:
複数のアルギン酸分子および複数の分岐したポリマー分子を含んでおり;
ここで、前記複数のアルギン酸分子が、前記分岐したポリマー分子または前記1つ以上の結合剤に対してコンジュゲートされてヒドロゲルを形成し;かつ
ここで、各々の前記分岐したポリマー分子が、複数の基を含み、各々の分岐したポリマー分子のうちの少なくとも1つの基が、アルギン酸分子に対してコンジュゲートされ、かつ各々の分岐したポリマー分子のうちの少なくとも1つの他の基が、工程(i)における前記結合剤とは異なる前記結合剤に対してコンジュゲートされる、
チャンバと、
を備える、マイクロ流体デバイス。
〔23〕前記分岐したポリマー分子がポリエチレングリコール分子である、前記〔22〕に記載のデバイス。
〔24〕前記1つ以上の結合剤が、抗体、抗体フラグメント、ペプチド模倣化合物、ペプチド、小分子、または核酸である、前記〔22〕に記載のデバイス。
〔25〕前記ポリエチレングリコール分子が4−アーム分子である、前記〔23〕に記載のデバイス。
〔26〕前記抗体が、GPR49、LGR5、CD24、FLK1、CD45、CD31、CD34、およびsca−1タンパク質に対する抗体からなる群より選択される、前記〔25〕に記載のデバイス。