特許第6120789号(P6120789)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 6120789-ピットライト連動制御装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6120789
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】ピットライト連動制御装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20170417BHJP
【FI】
   B66B5/00 D
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-36154(P2014-36154)
(22)【出願日】2014年2月27日
(65)【公開番号】特開2015-160698(P2015-160698A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2015年11月25日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】半田 功
【審査官】 井上 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−83775(JP,A)
【文献】 特開平7−285748(JP,A)
【文献】 特開2006−44844(JP,A)
【文献】 特開2013−220895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ操作による自動運行モード、及び作業員操作による手動運行モードを有し、前記乗りかごが最下階の位置にいないときに前記自動運行モードのままでもピット内に作業員が入ることが可能なエレベータシステムに用いられるピットライト連動制御装置であって、
前記ピット内に設けられオン状態またはオフ状態を有するスイッチ部であり、前記オン状態となったときにピット内照明を消灯状態から点灯状態へと切り替え、前記オフ状態となったときに前記ピット内照明を前記点灯状態から前記消灯状態へと切り替えるスイッチ部と、
前記オン状態となったときに、前記自動運行モードを前記手動運行モードに強制的に切り替える切替手段と、
を備え
前記ピット内照明は、前記ピット内に配置され、
前記手動運行モードは、前記乗りかごの行き先階の設定が禁止されるモードであり、
前記エレベータシステムは、前記ピット内に配置された巻上機を有することを特徴とするピットライト連動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のピットライト連動制御装置において、
前記切替手段は、
前記オフ状態となったときに、前記手動運行モードから前記自動運行モードに強制的に切り替えることを特徴とするピットライト連動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピットライト連動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータシステムは、ユーザ操作によって乗りかごを昇降させる自動運行モードと、作業員操作によって乗りかごを昇降させる手動運行モードとの2つの運行モードを有する。エレベータシステムでは、巻上機や制御盤等が定期的に点検される。この点検の際に、エレベータシステムの運行モードを自動運行モードから手動運行モードへ移行させる必要があるが、作業員がこの移行処理を忘れたまま点検作業を行ってしまうことがある。
【0003】
特許文献1には、点検作業員であることを識別する識別信号を送信する無線通信機能を有するリモコン装置を作業員に携帯させ、リモコン装置から送信された識別信号を受信する受信装置をエレベータに配置し、受信装置が識別信号を受信した場合にエレベータの運行モードを自動的に手動運行モードに切り替える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−41155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
定期点検の対象である巻上機や制御盤等は、機械室に配置される場合やピット内に配置される場合がある。ピット内は、乗りかごが昇降する昇降路の下部に形成された領域であるため、作業員の作業中に乗りかごの不測な下降を確実に防止する必要がある。しかしながら、上記特許文献1の構成では、作業員がリモコン装置の携帯を忘れた場合に手動運行モードへの切り替えが行われない可能性があり、ユーザ操作等によって乗りかごが不測な下降を行うおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、ピット内で保守点検を行う際に、確実に手動運行モードに切り替えることを可能とするピットライト連動制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るピットライト連動制御装置は、ユーザ操作による自動運行モード、及び作業員操作による手動運行モードを有し、前記乗りかごが最下階の位置にいないときに前記自動運行モードのままでもピット内に作業員が入ることが可能なエレベータシステムに用いられるピットライト連動制御装置であって、前記ピット内に設けられオン状態またはオフ状態を有するスイッチ部であり、前記オン状態となったときにピット内照明を消灯状態から点灯状態へと切り替え、前記オフ状態となったときに前記ピット内照明を前記点灯状態から前記消灯状態へと切り替えるスイッチ部と、前記オン状態となったときに、前記自動運行モードを前記手動運行モードに強制的に切り替える切替手段と、を備え、前記ピット内照明は、前記ピット内に配置され、前記手動運行モードは、前記乗りかごの行き先階の設定が禁止されるモードであり、前記エレベータシステムは、前記ピット内に配置された巻上機を有することを特徴とする。

【0008】
また、本発明に係るピットライト連動制御装置において、前記切替手段は、前記オフ状態となったときに、前記手動運行モードから前記自動運行モードに強制的に切り替えることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
上記構成により、ピット内照明が消灯状態から点灯状態へと切り替えられたときに、自動運行モードから手動運行モードへ運行モードが切り替えられる。これにより、作業員が手動運行モードへの切り替えを忘れたままピット内に入った場合であっても、ピット内照明を点灯させて保守点検作業をする際に、確実に手動運行モードに切り替えられる。したがって、作業員は、より安全に保守点検を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る実施形態のピットライト連動制御装置を備えるエレベータシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。また、以下では、全ての図面において対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
図1は、ピットライト連動制御装置24を備えるエレベータシステム10を示す図である。エレベータシステム10は、昇降路12内を昇降する乗りかご14と、乗りかご14とバランスをとるためのつり合い錘16と、乗りかご14及びつり合い錘16に接続される主ロープ18を駆動する巻上機20とを備える。
【0013】
エレベータシステム10は、乗りかご14に設置される運行モード切替部22と、ピットライト連動制御装置24と、制御部26とを備える。
【0014】
運行モード切替部22は、エレベータシステム10の運行モードを設定するための操作部を有する。エレベータシステム10の運行モードは2つ存在する。1つは、ユーザ操作によって乗りかご14を昇降させる自動運行モードである。もう1つは、作業員操作によって乗りかご14を昇降させる手動運行モードである。
【0015】
「自動運行モード」とは、一般的な乗りかご14の運行であり、ユーザ操作によって設定された行き先階に乗りかご14が移動するモードである。「手動運行モード」とは、作業員8が保守点検を行う際に、ユーザ操作による乗りかご14の行き先階の設定を禁止し、作業員8が保守点検のために必要な操作を行うことで乗りかご14が移動するモードである。
【0016】
運行モード切替部22は、作業員8がエレベータシステム10の運行モードを自動運行モードから手動運行モードへ切り替えた場合に、これに対応する切替信号を制御部26に送信する。運行モード切替部22は、作業員8がエレベータシステム10の運行モードを手動運行モードから自動運行モードへ切り替えた場合に、これに対応する切替信号を出力する。この切替信号は、信号線を介して制御部26に伝送される。
【0017】
ピットライト連動制御装置24は、昇降路12の下部のピット13内を照らすピットライト28と、ピットライト28を切り替えるスイッチ部30とを備える。
【0018】
ピットライト28は、ピット13内の壁に設置されるピット内照明である。ピットライト28は、例えば、LEDを用いて構成される。昇降路12及びピット13は、閉ざされた空間領域で暗闇であるが、ピットライト28を点灯させることで作業員8はピット内13で保守点検作業を行うことができる。なお、作業員8は、保守用の鍵を用いて最下階の乗場扉の錠を解錠し、乗場扉を強制的に開いてピット13内に入ることができる。
【0019】
スイッチ部30は、ピット13内に設けられており、オン状態またはオフ状態を有する。スイッチ部30は、オン状態となったときにピットライト28を消灯状態から点灯状態へと切り替え、オフ状態となったときにピットライト28を点灯状態から消灯状態へと切り替える。
【0020】
スイッチ部30は、オン状態となったときに、エレベータシステム10の運行モードを自動運行モードから手動運行モードへ強制的に切り替える切替信号を制御部26に送信する。スイッチ部30は、オフ状態となったときに、エレベータシステム10の運行モードを手動運行モードから自動運行モードへ強制的に切り替えるための切替信号を出力する。この切替信号は、信号線を介して制御部26に伝送される。
【0021】
制御部26は、エレベータシステム10全般を制御する。ここでは、特に、制御部26によるエレベータシステム10の運行モードの切替機能について説明する。制御部26は、運行モード切替部22及びスイッチ部30から伝送される切替信号に基づいて、エレベータシステム10の運行モードを切り替える。
【0022】
続いて、上記構成のピットライト連動制御装置24の作用について説明する。エレベータシステム10では、制御部26がピット13内に配置されている。ピット13内は、乗りかご14が昇降する昇降路12の下部に形成された領域であるため、作業員8の作業中に乗りかご14の不測な下降を確実に防止する必要がある。
【0023】
作業員8が乗りかご14内の運行モード切替部22を用いて、エレベータシステム10の運行モードを自動運行モードから手動運行モードへ切り替えた後、作業員8が最下階の乗場からピット13内に入って作業する場合は問題無いが、作業員8が乗りかご14内の運行モード切替部22を用いて手動運行モードに切り替えることを忘れるおそれがある。
【0024】
しかしながら、エレベータシステム10では、ピットライト連動制御装置24が設置されているため、仮に、作業員8が乗りかご14内の運行モード切替部22を用いて手動運行モードへの切り替えを忘れてしまった場合であっても、暗闇のピット13内で作業を行う際には、スイッチ30をオン状態にしてピットライト28を点灯させることが推定される。
【0025】
ピットライト連動制御装置24によれば、ピットライト28の点灯に連動して運行モードが強制的に自動運行モードから手動運行モードに切り替わるため、作業員8が乗りかご14内の運行モード切替部22を用いて手動運行モードへの切り替えを忘れてままピット13内に入った場合であっても、乗りかご13が予測しない昇降動作をすることはないため、作業員8は安全に保守点検作業を行うことができる。
【0026】
また、作業員8が保守点検作業を終えて、スイッチ30をオフ状態にして、ピットライト28を消灯させたときに連動して、運行モードが強制的に手動運行モードから自動運行モードに切り替わる。したがって、作業員8が乗りかご14内の運行モード切替部22を用いて自動運行モードに戻さなくても自動的に自動運転モードに復旧させることができる。
【0027】
なお、上記では、作業員8が乗りかご14内の運行モード切替部22を手動運行モードへの切り替えを忘れてしまった場合について説明したが、仮に運行モード切替部22が故障等によって操作できない場合にも、ピットライト連動制御装置24によれば、ピットライト28の点灯に連動して運行モードが強制的に自動運行モードから手動運行モードに切り替えることができる。
【符号の説明】
【0028】
8 作業員、10 エレベータシステム、12 昇降路、13 ピット、14 乗りかご、16 つり合い錘、18 主ロープ、20 巻上機、22 運行モード切替部、24 ピットライト連動制御装置、26 制御部、28 ピットライト、30 スイッチ。
図1