(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
圃場に対する供給物を貯留するホッパと、供給物を前記ホッパから所定量ずつ繰り出す複数の繰出機構と、複数の前記繰出機構にわたる左右向きの繰出駆動軸と、走行車体からの動力を前記繰出駆動軸に伝達する繰出用伝動機構と、それぞれの前記繰出機構による供給物繰り出し量を一括して調節する繰出量調節機構とを備え、
前記繰出用伝動機構は、前記走行車体からの回転動力を往復揺動運動に変換する第1変換部と、その往復揺動運動を前記繰出駆動軸の正回転運動に変換する第2変換部とを備える構成で、前記繰出量調節機構に連係する前記第2変換部を前記繰出量調節機構とともに機体の左右一側端部に配備し、
前記第2変換部は、前記繰出駆動軸の左右一側端部に外嵌する一対のワンウェイクラッチと、前記第1変換部からの往方向の揺動運動を一方の前記ワンウェイクラッチを介して前記繰出駆動軸の正回転動力として前記繰出駆動軸に伝える第1リンク機構と、前記第1変換部からの復方向の揺動運動を他方の前記ワンウェイクラッチを介して前記繰出駆動軸の正回転動力として前記繰出駆動軸に伝える第2リンク機構とを備え、かつ、前記第1リンク機構と前記第2リンク機構のうちの機体横外側に配備する一方のリンク機構に、該リンク機構の連係状態と連係解除状態との切り替えを可能にする切替部を備え、
前記切替部を横外方に開放する状態で前記繰出量調節機構と前記第2変換部とを覆うカバーを備えている水田作業機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成では、繰出量調節機構のみによって各繰出機構による供給物繰り出し量を調節することから、供給物繰り出し量の調節範囲を広くする場合には、繰出量調節機構が大型化する不都合を招くようになっていた。
【0005】
本発明の目的は、繰出量調節機構が大型化する不都合を招くことなく、各繰出機構による供給物繰り出し量の調節範囲を広くすることにある。
することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題解決手段は、
圃場に対する供給物を貯留するホッパと、供給物を前記ホッパから所定量ずつ繰り出す複数の繰出機構と、複数の前記繰出機構にわたる左右向きの繰出駆動軸と、走行車体からの動力を前記繰出駆動軸に伝達する繰出用伝動機構と、それぞれの前記繰出機構による供給物繰り出し量を一括して調節する繰出量調節機構とを備え、
前記繰出用伝動機構は、前記走行車体からの回転動力を往復揺動運動に変換する第1変換部と、その往復揺動運動を前記繰出駆動軸の正回転運動に変換する第2変換部とを備える構成で、前記繰出量調節機構に連係する前記第2変換部を前記繰出量調節機構とともに機体の左右一側端部に配備し、
前記第2変換部は、前記繰出駆動軸の左右一側端部に外嵌する一対のワンウェイクラッチと、前記第1変換部からの往方向の揺動運動を一方の前記ワンウェイクラッチを介して前記繰出駆動軸の正回転動力として前記繰出駆動軸に伝える第1リンク機構と、前記第1変換部からの復方向の揺動運動を他方の前記ワンウェイクラッチを介して前記繰出駆動軸の正回転動力として前記繰出駆動軸に伝える第2リンク機構とを備え、かつ、前記第1リンク機構と前記第2リンク機構のうちの機体横外側に配備する一方のリンク機構に、該リンク機構の連係状態と連係解除状態との切り替えを可能にする切替部を備え、
前記切替部を横外方に開放する状態で前記繰出量調節機構と前記第2変換部とを覆うカバーを備えている。
【0007】
この手段によると、機体横外側に配備するリンク機構に備えた切替部により、第1変換部からの往方向の揺動運動のみを繰出駆動軸に伝える伝動状態と、第1変換部からの往方向の揺動運動と復方向の揺動運動とを繰出駆動軸に伝える伝動状態とに切り替えることができる。そして、それらの各伝動状態において、繰出量調節機構による供給物繰り出し量の調節を行うことができる。
【0008】
その結果、繰出量調節機構が大型化する不都合を招くことなく、各繰出機構による供給物繰り出し量の調節範囲を広くすることができる。
【0009】
又、繰出量調節機構と第2変換部とを覆うカバーを備えることにより、繰出量調節機構と第2変換部とを個々に覆うカバーを備える場合に比較して構成の簡素化を図ることができる。
【0010】
そして、そのカバーは、切替部を横外方に開放するものであることから、カバーの着脱を行うことなく、切替部による伝動状態の切り替えを簡単に行うことができる。
【0011】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記繰出量調節機構は、繰り出し量の調節に伴って前後方向に変位する指針を備え、
前記カバーは、その天板部に、前記一方のリンク機構を連係状態に切り替えた第1繰り出し状態に対応する前後向きの第1目盛り部と、前記一方のリンク機構を連係解除状態に切り替えた第2繰り出し状態に対応する前後向きの第2目盛り部とを、前記指針の前後方向への変位を許容する前後向きのスリットを挟んで左右に並べて備える樹脂成形品により構成し、
前記カバーを、前記第1目盛り部と前記第2目盛り部のうち、前記カバーに対する型抜き方向の下手側に位置する目盛り部の高さが型抜き方向の上手側に位置する目盛り部の高さよりも高くなるように形成している。
【0012】
この手段によると、スリット形成用のスライド型を用いることなく、カバーに指針用のスリットを形成することができる。これにより、カバーに要する型費を削減することができる。
【0013】
又、機体の横外側から第1目盛り部又は第2目盛り部に対する指針の位置を読み取って肥料繰り出し量を確認する場合には、スリットの機体横方向内側に位置する目盛り部の高さが、スリットの機体横方向外側に位置する目盛り部の高さよりも高くなることから、機体の横外側からの各目盛り部に対する指針位置の視認性を向上させることができる。
【0014】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記カバーは、前記繰出量調節機構に備えた被係合部に対して機体横外側から係合する係合部を備え、
前記被係合部と前記係合部のうちの一方は、それらの他方に備えた係合枠の係合孔に係入する弾性変形可能な係合爪と、前記係合爪の係入完了に伴って前記係合枠を受け止めて前記係合爪の先端部との間に前記係合枠を前記係合爪の係脱方向で挟み込む受止部と、前記係合爪の係入完了に伴って前記係合枠における前記係合爪の爪幅方向に位置する一対の枠部分に外側から接触して前記係合枠を爪幅方向で挟み込む一対の係合片とを備え、
前記被係合部と前記係合部のうちの他方は、前記係合枠と、前記係合爪の係入完了に伴って前記係合爪の基端部を受け止めて前記係合枠との間に前記係合爪をその弾性変形方向で挟み込む受止部とを備えている。
【0015】
この手段によると、カバーの係合部を繰出量調節機構の被係合部に係合してカバーを繰出量調節機構に取り付けた状態では、カバーを、繰出量調節機構に対して、係合爪の係脱方向と、この係脱方向と直交する係合爪の爪幅方向と、係脱方向及び爪幅方向に直交する係合爪の弾性変形方向との3方向において位置決めすることができる。
【0016】
その結果、機体の走行時や輸送時などにおける機体の振動などに起因して、カバーが繰出量調節機構に対して位置ズレして繰出量調節機構との係合連結を不測に解除する不都合の発生を回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明を水田作業機の一例である乗用田植機に適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1及び
図2に示すように、本実施形態で例示する乗用田植機は、乗用型の4輪駆動形式に構成した走行車体1の後部に、単動型の油圧シリンダを採用した昇降シリンダ2の作動によって上下揺動する上下揺動式のリンク機構3を介して、5条植え用の苗植付装置4を昇降可能に連結して構成している。又、圃場に対する供給物の一例である粒状の肥料を圃場に供給する供給装置Aとしての5条施肥用の施肥装置5を、走行車体1の後部と苗植付装置4とにわたって装備している。これにより、5条植え用のミッドマウント施肥仕様に構成している。
【0020】
図1に示すように、走行車体1は、その前部に空冷式のエンジン6を防振搭載している。そして、エンジン6からの動力を、伝動系7を介して、左右の前輪8、左右の後輪9、苗植付装置4、及び、施肥装置5、などに伝達している。伝動系7は、エンジン6からの動力を断続するベルトテンション式の主クラッチ10、主変速装置として備えた静油圧式無段変速装置11、及び、トランスミッションケース(以下、T/Mケースと称する)12に内蔵したギア式の副変速装置(図示せず)、などを経由した走行用の動力を、左右の前輪8及び左右の後輪9に伝達している。そして、静油圧式無段変速装置11による変速後の動力を、T/Mケース12の内部において走行用と苗植え付け用とに分配し、T/Mケース12に内蔵したギア式の株間変速装置(図示せず)などを経由した苗植え付け用の動力を苗植付装置4に伝達している。又、副変速装置による変速後の動力を、T/Mケース12の内部において走行用と施肥用とに分配し、T/Mケース12に内蔵した施肥クラッチ(図示せず)などを経由した施肥用の動力を施肥装置5に伝達している。
【0021】
図示は省略するが、施肥クラッチは、T/Mケース12に内蔵した植付クラッチの断続操作に連動して断続操作されるように植付クラッチに操作連係している。
【0022】
図1及び
図2に示すように、走行車体1は、その後部側に搭乗運転部13を形成している。搭乗運転部13は、前輪操舵用のステアリングホイール14及び運転座席15などを備えている。
【0023】
苗植付装置4は、1条用のセンタフロート16、2条用の左右のサイドフロート17、苗載台18、動力分配機構19、横送り機構20、5組のロータリ式の植付機構21、及び、5組の縦送り機構22、などを備えて、最大5条分の苗の植え付けを行うように構成している。各フロート16,17は、作業走行に走行車体1の走行に伴って圃場の泥面を整地しながら滑走する。苗載台18は、最大5条分のマット状苗を載置するように形成している。動力分配機構19は、走行車体1からの動力を、横送り機構20と各植付機構21と各縦送り機構22とに分配供給する。横送り機構20は、動力分配機構19からの動力により、苗載台18を左右方向に一定ストロークで往復移動させる。各植付機構21は、動力分配機構19からの動力により、苗載台18とともに左右方向に往復移動するマット状苗の下端から所定量ずつの植付苗を切り取って各フロート16,17による整地後の圃場泥土部に植え付ける。各縦送り機構22は、苗載台18が左右のストローク端に達するごとに、動力分配機構19からの動力により、対応するマット状苗を苗載台18の下端に向けて所定ピッチで縦送りする。
【0024】
図1〜5に示すように、施肥装置5は、肥料貯留用のホッパ23、3基の繰出機構24、5本の施肥ホース25、5つの作溝器26、及び、電動式のブロワ27、などを備えて最大5条分の側条施肥を行うように構成している。ホッパ23は、5条分の肥料を貯留する横長形状に形成している。そして、その左右中心が機体の左右中心と一致する配置で、各繰出機構24及びブロワ27とともに走行車体1の後部に搭載している。各繰出機構24は、左端の繰出機構24が右端の繰出機構24よりも機体の左右中央寄りに位置する状態で、2基の繰出機構24が機体の左右中心よりも右側に位置し、かつ、1基の繰出機構24が機体の左右中心よりも左側に位置するように、左右方向に所定間隔をあけて並べた配置でホッパ23の下端部に連接している。そして、走行車体1からの施肥用の動力により、各繰出機構24に内蔵した繰出ロール28が回転することにより、ホッパ内の肥料をホッパ23の下端部から所定量ずつ下方に繰り出す。又、各繰出機構24は、2条施肥仕様と1条施肥仕様とに仕様変更可能に構成している。そして、左右の繰出機構24を2条施肥仕様に仕様変更し、左右中央の繰出機構24を1条施肥仕様に仕様変更することにより、最大5条分の肥料の繰り出しを行うように構成している。各施肥ホース25は、各繰出機構24が繰り出した肥料を対応する作溝器26に案内する。各作溝器26は、左右方向に所定間隔をあけて並ぶように対応するフロート16,17に装備している。そして、走行車体1の走行に伴って圃場の泥土部に施肥用の溝を形成して、その溝内に肥料を埋没させる。ブロワ27は、各繰出機構24が繰り出した肥料を圃場に向けて搬送する搬送風を生起して、各施肥ホース25の内部での肥料の流動を円滑にする。
【0025】
図1〜8に示すように、施肥装置5は、その伝動系として、全ての繰出機構24にわたる左右向きの繰出駆動軸29、走行車体1からの施肥用の動力を繰出駆動軸29に伝達する繰出用伝動機構30、及び、各繰出機構24による肥料繰り出し量を一括して調節する繰出量調節機構31、などを備えている。
【0026】
繰出駆動軸29は、各繰出機構24に備えた入力ギア32と噛み合い連動する3つの出力ギア33を相対回転可能に外嵌装備している。又、繰出駆動軸29から対応する出力ギア33への伝動を断続する3つの施肥条数切替クラッチ34を外嵌装備している。各施肥条数切替クラッチ34は、搭乗運転部13において運転座席15の左右に分散配備した3本の条数切替レバー35に、連係ワイヤ36などを備える3系統の施肥条数切替操作系37を介して、対応する条数切替レバー35による断続操作が可能な状態に操作連係している。
【0027】
一方、苗植付装置4は、動力分配機構19から対応する植付機構21への伝動を断続する3つの植付条数切替クラッチ38、及び、動力分配機構19から対応する縦送り機構22への伝動を断続する3つの縦送り条数切替クラッチ39、を備えている。各植付条数切替クラッチ38は、対応する条数切替レバー35に、連係ワイヤ40などを備える3系統の植付条数切替操作系41を介して、対応する条数切替レバー35による断続操作が可能な状態に操作連係している。各縦送り条数切替クラッチ39は、対応する条数切替レバー35に、連係ワイヤ42などを備える3系統の植付条数切替操作系43を介して、対応する条数切替レバー35による断続操作が可能な状態に操作連係している。
【0028】
そして、上記の連係から、各条数切替レバー35を操作することにより、この乗用田植機による作業状態を、苗植付装置4における全ての植付機構21と縦送り機構22とを作動させ、かつ、施肥装置5における全ての繰出機構24を作動させる全条作業状態、苗植付装置4における左側2条分の植付機構21と縦送り機構22、及び、左右中央の1条分の植付機構21と縦送り機構22とを作動させ、かつ、施肥装置5における左側の繰出機構24と左右中央の繰出機構24とを作動させる左側3条作業状態、苗植付装置4における左側2条分の植付機構21と縦送り機構22とを作動させ、かつ、施肥装置5における左側の繰出機構24を作動させる左側2条作業状態、苗植付装置4における右側2条分の植付機構21と縦送り機構22、及び、左右中央の1条分の植付機構21と縦送り機構22とを作動させ、かつ、施肥装置5における右側の繰出機構24と左右中央の繰出機構24とを作動させる右側3条作業状態、苗植付装置4における右側2条分の植付機構21と縦送り機構22とを作動させ、かつ、施肥装置5における右側の繰出機構24を作動させる右側2条作業状態、又は、苗植付装置4における全ての植付機構21と縦送り機構22とを停止させ、かつ、施肥装置5における全ての繰出機構24を停止させる全条停止状態に、択一的に切り替えられるように構成している。
【0029】
図4〜6及び
図8に示すように、施肥装置5は、各繰出機構24を停止状態に一括して切り替える施肥停止用の切替レバー44を備えている。切替レバー44は、各繰出機構24を支持する左右向きの支持部材45の右端部に、停止位置と停止解除位置とに揺動切り替え可能に配備している。そして、その停止解除位置から停止位置への揺動切り替え操作に伴って、各繰出機構24が、各条数切替レバー35の操作位置にかかわらず停止状態に切り替わり、又、停止位置から停止解除位置への揺動切り替え操作に伴って、各繰出機構24が、対応する条数切替レバー35の操作位置に応じた作動状態に切り替わるように、左右向きの連係部材46などを備える施肥状態切替操作系47を介して各施肥条数切替クラッチ34に操作連係している。
【0030】
この構成から、施肥停止用の切替レバー44を操作することにより、この乗用田植機による作業状態を、苗植付装置4による苗の植え付けと施肥装置5による施肥とを行う植え付け施肥作業状態と、施肥装置5による施肥を行わずに苗植付装置4による苗の植え付けのみを行う植え付け作業状態とに切り替えることができる。
【0031】
図1、
図4、
図5及び
図8〜
図16に示すように、繰出用伝動機構30は、T/Mケース12の左側部に備えた左右向きの施肥動力取出軸48が施肥用の動力として出力する回転動力を往復揺動運動に変換する第1変換部49と、その往復揺動運動を繰出駆動軸29の正回転運動に変換する第2変換部50とを備えている。そして、前述した繰出量調節機構31に連係する第2変換部50を繰出量調節機構31とともに機体の右端部に配備している。
【0032】
第1変換部49は、施肥動力取出軸48と一体回転する回転アーム51の遊端部に一端部をピン連結した連係ロッド52、連係ロッド52の他端部に遊端部をピン連結した第1アーム53、第1アーム53を左端部に固着した左右向きの連係軸54、及び、第1アーム53と連係軸54を介して一体揺動するように連係軸54の右端部に固着した第2アーム55、などを備えている。そして、これらにより、施肥動力取出軸48からの回転動力を第1アーム53及び第2アーム55の往復揺動運動に変換するように構成している。
【0033】
繰出駆動軸29は、その最右端部に繰出駆動軸29の逆回転を防止する逆転防止用のワンウェイクラッチ56を外嵌装備している。逆転防止用のワンウェイクラッチ56は、そのアウタレース56aを前述した支持部材45の右端部にボルト連結して固定している。
【0034】
第2変換部50は、繰出駆動軸29の正回転操作を可能にする正回転操作用の一対のワンウェイクラッチ57、第1変換部49における第2アーム55の往方向(機体後方向き)の揺動運動を正回転操作用の左側のワンウェイクラッチ57(以下、第1ワンウェイクラッチ57Aと称する)を介して繰出駆動軸29の正回転動力として繰出駆動軸29に伝える第1リンク機構58、及び、第1変換部49における第2アーム55の復方向(機体前方向き)の揺動運動を正回転操作用の右側のワンウェイクラッチ57(以下、第2ワンウェイクラッチ57Bと称する)を介して繰出駆動軸29の正回転動力として繰出駆動軸29に伝える第2リンク機構59、などを備えている。
【0035】
正回転操作用の第1ワンウェイクラッチ57A及び第2ワンウェイクラッチ57Bは、繰出駆動軸29の右端部における逆転防止用のワンウェイクラッチ56よりも機体内側の位置に、左右に並べた状態で外嵌装備している。
【0036】
第1リンク機構58及び第2リンク機構59は、第2アーム55の遊端部に一端部をピン連結したターンバックル式の連係ロッド60、連係ロッド60の他端部に遊端部をピン連結した揺動部材61、揺動部材61の遊端部に一端部をピン連結した連係部材62、及び、連係部材62の他端部に遊端部をピン連結した揺動リンク63、などにより構成している。そして、連係ロッド60及び揺動部材61を第1リンク機構58と第2リンク機構59とに共用する共用部品とすることにより、構成の簡素化を図るようにしている。
【0037】
第1リンク機構58の連係部材62には、帯鋼板からなる連係プレート62Aを採用している。第2リンク機構59の連係部材62には、強度の高い連係ロッド62Bを採用している。第1リンク機構58の揺動リンク63(以下、第1揺動リンク63Aと称する)は、その基端部を第1ワンウェイクラッチ57Aのアウタレース57aに固着している。第2リンク機構59の揺動リンク63(以下、第2揺動リンク63Bと称する)は、その基端部を第2ワンウェイクラッチ57Bのアウタレース57bに固着している。これにより、第2リンク機構59の連係ロッド62B及び第2揺動リンク63Bが、第1リンク機構58の連係プレート62A及び第1揺動リンク63Aよりも機体の右外側に位置するように構成している。
【0038】
第2リンク機構59は、第2リンク機構59の連係状態と連係解除状態との切り替えを可能にする切替部64を備えている。切替部64は、揺動部材61の遊端部と連係ロッド62Bの一端部とを連結する連結ピン65、及び、連結ピン65を抜け止めするベータピン(図示せず)などにより構成している。
【0039】
この構成から、切替部64により第2リンク機構59を連係状態に切り替えると、第1変換部49における第2アーム55の往方向の揺動運動と復方向の揺動運動とを第2変換部50を介して繰出駆動軸29の正回転動力として伝えることができる。これにより、第2アーム55の往復揺動から得られる各繰出機構24における繰出ロール28の回動角を大きくすることができ、第2アーム55の1往復揺動当たりでの各繰出機構24による肥料繰出量を多くすることができる。
【0040】
逆に、切替部64により第2リンク機構59を連係解除状態に切り替えると、第1変換部49における第2アーム55の往方向の揺動運動のみを第2変換部50を介して繰出駆動軸29の正回転動力として伝えることができる。これにより、第2アーム55の往復揺動から得られる各繰出機構24における繰出ロール28の回動角を小さくすることができ、第2アーム55の1往復揺動当たりでの各繰出機構24による肥料繰出量を少なくすることができる。
【0041】
つまり、切替部64にて第2リンク機構59を連係状態と連係解除状態とに切り替えることにより、各繰出機構24の肥料繰り出し状態を、第2アーム55の1往復揺動当たりの肥料繰り出し量を標準量とする第1繰り出し状態と、第2アーム55の1往復揺動当たりの肥料繰り出し量を標準量よりも少なくする第2繰り出し状態とに切り替えることができ、施肥装置5の作動状態を、標準量の施肥を行う標準施肥状態と、標準量よりも施肥量の少ない施肥を行う減量施肥状態とに切り替えることができる。
【0042】
図9〜
図14に示すように、連係軸54の右端部を支持する支持部材66は、施肥装置5の作動状態を標準施肥状態から減量施肥状態に切り替えるために揺動部材61とのピン連結を解除した連係ロッド62Bの一端部とのピン連結を可能にする連結孔66Aを備えている。これにより、施肥装置5の減量施肥状態においては、連係ロッド62Bを支持部材66に連結ピン65にて連結することにより、連係ロッド62Bとともに、この連係ロッド62Bに第2揺動リンク63Bを介して連係している第2ワンウェイクラッチ57Bのアウタレース57bを固定することができる。その結果、走行時の振動などに起因して、連係ロッド62Bとともに第2揺動リンク63Bが揺動して第2ワンウェイクラッチ57Bのアウタレース57bが回動することにより、施肥装置5の肥料繰り出し量が変化する不都合の発生を回避することができる。
【0043】
図2、
図3〜5及び
図7〜
図16に示すように、繰出量調節機構31は、支持部材45の右端部に立設した前後方向視略逆U字状の第1支持板67、第1支持板67の前下部にボルト連結した第2支持板68、第1支持板67に備えた左右向きのボス部67Aに相対回動可能に内嵌した左右向きの支軸69、支軸69に備えた前後向きのボス部69Aに後部を相対回動可能に内嵌した前後向きのネジ軸70、ネジ軸70の前端に固定した人為操作用のハンドル71、ネジ軸70に螺合した左右向きの連係軸72、第1支持板67と第2支持板68とにわたる左右向きの支点軸73、及び、支点軸73に相対揺動可能に外嵌した上下向きの連係アーム74、などを備えている。そして、連係アーム74の上端部を連係軸72の延出部72Aに外嵌している。又、連係アーム74の下端部を、第1変換部49の揺動部材61に、その揺動部材61の支点軸として機能する左右向きの連結ピン75を介して連結している。
【0044】
この構成により、ハンドル71とともにネジ軸70を減量方向に回転させると、ネジ軸70の回転に伴って、連係アーム74の上部側が減量方向(機体後方)に揺動変位する。そして、この連係アーム74の揺動変位に伴って、第2変換部50における揺動部材61の支点軸である連結ピン75が機体後方側に変位して、繰出駆動軸29に備えた正回転操作用の各ワンウェイクラッチ57A,57Bから離れる。これにより、揺動部材61と正回転操作用の各ワンウェイクラッチ57A,57Bとを連係する連係部材62A,62Bと揺動リンク63A,63Bとの屈曲が浅くなり、揺動部材61の揺動角に対する揺動リンク63A,63Bの揺動角が小さくなる。その結果、施肥装置5の各繰出機構24による肥料繰り出し量を一括して減少させることができる。
【0045】
逆に、ハンドル71とともにネジ軸70を増量方向に回転させると、ネジ軸70の回転に伴って、連係アーム74の上部側が増量方向(機体前方)に揺動変位する。そして、この連係アーム74の揺動変位に伴って、第2変換部50における揺動部材61の支点軸である連結ピン75が機体前方側に変位して、繰出駆動軸29に備えた正回転操作用の各ワンウェイクラッチ57A,57Bに近づく。これにより、揺動部材61と正回転操作用の各ワンウェイクラッチ57A,57Bとを連係する連係部材62A,62Bと揺動リンク63A,63Bとの屈曲が深くなり、揺動部材61の揺動角に対する揺動リンク63A,63Bの揺動角が大きくなる。その結果、施肥装置5の各繰出機構24による肥料繰り出し量を一括して増加させることができる。
【0046】
つまり、繰出量調節機構31は、ネジ軸70及び連係軸72などから構成したネジ送り調節部31Aにより、走行車体1からの施肥用の回転動力に対する各揺動リンク63A,63Bの揺動角を変更することにより、各繰出機構24による肥料繰り出し量を一括して無段階に調節するネジ送り調節式に構成している。
【0047】
図9〜
図16に示すように、第2変換部50は、施肥装置5の標準施肥状態での各繰出機構24の肥料繰り出し量を繰出量調節機構31にて最少に設定した場合と、施肥装置5の減量施肥状態での各繰出機構24の肥料繰り出し量を繰出量調節機構31にて最多に設定した場合とで、第1変換部49における第2アーム55の1回の往復揺動に対する繰出駆動軸29の正回転方向での回転角が同じになって各繰出機構24の肥料繰り出し量が同じになるように、第1リンク機構58及び第2リンク機構59のリンク比を設定している。
【0048】
これにより、施肥装置5の標準施肥状態での繰出量調節機構31による肥料繰り出し量の調節領域と、施肥装置5の減量施肥状態での繰出量調節機構31による肥料繰り出し量の調節領域とに、肥料繰り出し量が重複する無駄な調節領域が存在することを阻止することができる。その結果、施肥装置5の標準施肥状態と減量施肥状態との切り替えを利用した繰出量調節機構31による肥料繰り出し量の調節を、無駄なく連続する広範囲の調節領域によって良好に行うことができる。
【0049】
ところで、施肥装置5の標準施肥状態と減量施肥状態とにおいては、第2リンク機構59を連係状態と連係解除状態とに切り替えることに起因して、第2アーム55の往方向での揺動角に対する繰出駆動軸29の正回転方向での回転角が異なる。そこで、第2変換部50においては、その点を考慮して第1リンク機構58及び第2リンク機構59のリンク比を設定している。
【0050】
詳述すると、前述したように、施肥装置5の標準施肥状態では、第2リンク機構59を連係状態に切り替えることにより、第2アーム55の往方向の揺動運動を、第1リンク機構58及び第1ワンウェイクラッチ57Aを介して繰出駆動軸29の正回転動力として伝え、かつ、第2アーム55の復方向の揺動運動を、第2リンク機構59及び第2ワンウェイクラッチ57Bを介して繰出駆動軸29の正回転動力として伝えている。そのため、第2アーム55の往方向への揺動に伴って第1ワンウェイクラッチ57Aとともに繰出駆動軸29が正回転する場合には、このときの第2アーム55の往方向への揺動に伴って第2ワンウェイクラッチ57Bのアウタレース57bが逆回転することにより、第2ワンウェイクラッチ57Bが繰出駆動軸29の正回転に対する負荷として作用することになる。逆に、第2アーム55の復方向への揺動に伴って第2ワンウェイクラッチ57Bとともに繰出駆動軸29が正回転する場合には、このときの第2アーム55の復方向への揺動に伴って第1ワンウェイクラッチ57Aのアウタレース57aが逆回転することにより、第1ワンウェイクラッチ57Aが繰出駆動軸29の正回転に対する負荷として作用することになる。その結果、第2アーム55の往方向又は復方向への揺動に伴って繰出駆動軸29が正回転する場合には、そのときの慣性による繰出駆動軸29の正回転方向へのオーバーランが生じ難くなっている。
【0051】
これに対し、施肥装置5の減量施肥状態では、第2リンク機構59を連係解除状態に切り替えることにより、第2アーム55の往方向の揺動運動のみを、第1リンク機構58及び第1ワンウェイクラッチ57Aを介して繰出駆動軸29の正回転動力として伝えている。そのため、第2アーム55の往方向への揺動に伴って第1ワンウェイクラッチ57Aとともに繰出駆動軸29が正回転する場合には、このときの第2アーム55の往方向への揺動に伴って第2ワンウェイクラッチ57Bのアウタレース57bが逆回転しなくなり、第2ワンウェイクラッチ57Bが繰出駆動軸29の正回転に対する負荷として作用しなくなる。その結果、第2アーム55の往方向への揺動に伴って繰出駆動軸29が正回転する場合には、そのときの慣性による繰出駆動軸29の正回転方向へのオーバーランが生じ易くなっている。
【0052】
つまり、施肥装置5の標準施肥状態において第2アーム55の往方向の揺動運動で繰出駆動軸29を正回転駆動する場合と、施肥装置5の減量施肥状態において第2アーム55の往方向の揺動運動で繰出駆動軸29を正回転駆動する場合とでは、第2リンク機構59の連係状態と連係解除状態との切り替えに伴って変化する繰出駆動軸29の慣性による正回転方向へのオーバーランに起因して、第2アーム55の往方向での揺動角に対する繰出駆動軸29の正回転方向での回転角が異なることになる。
【0053】
そこで、第2変換部50においては、施肥装置5の標準施肥状態での各繰出機構24の肥料繰り出し量を繰出量調節機構31にて最少に設定した場合に得られる第2アーム55の1回の往復揺動に対する繰出駆動軸29の正回転方向での回転角(第2アーム55の1回の往揺動で得られる繰出駆動軸29の正回転方向での慣性によるオーバーランの少ない回転角と、第2アーム55の1回の復揺動で得られる繰出駆動軸29の正回転方向での慣性によるオーバーランの少ない回転角とを加えた回転角)と、施肥装置5の減量施肥状態での各繰出機構24の肥料繰り出し量を繰出量調節機構31にて最多に設定した場合に得られる第2アーム55の1回の往復揺動に対する繰出駆動軸29の正回転方向での回転角(第2アーム55の1回の往揺動で得られる繰出駆動軸29の正回転方向での慣性によるオーバーランの多い回転角)とが同じになるように、第1リンク機構58及び第2リンク機構59のリンク比を設定している。
【0054】
これにより、施肥装置5の標準施肥状態と減量施肥状態とにおいては、第2リンク機構59を連係状態と連係解除状態とに切り替えることに起因して、第2アーム55の往方向での揺動角に対する繰出駆動軸29の正回転方向での回転角が異なるにもかかわらず、施肥装置5の標準施肥状態での各繰出機構24の肥料繰り出し量を繰出量調節機構31にて最少に設定した場合と、施肥装置5の減量施肥状態での各繰出機構24の肥料繰り出し量を繰出量調節機構31にて最多に設定した場合とで、第1変換部49における第2アーム55の1回の往復揺動に対する繰出駆動軸29の正回転方向での回転角を同じにして、各繰出機構24の肥料繰り出し量を同じにすることができる。
【0055】
ところで、施肥装置5の標準施肥状態においては、前述したように、第1変換部49における第2アーム55の往方向の揺動運動を、第2変換部50の第1リンク機構58及び第1ワンウェイクラッチ57Aにより繰出駆動軸29の正回転動力に変換して繰出駆動軸29に伝え、かつ、第2アーム55の復方向の揺動運動を、第2変換部50の第2リンク機構59及び第2ワンウェイクラッチ57Bにより繰出駆動軸29の正回転動力に変換して繰出駆動軸29に伝えている。
【0056】
そのため、第2アーム55の往方向の揺動運動を繰出駆動軸29に伝える場合と、第2アーム55の復方向の揺動運動を繰出駆動軸29に伝える場合とでは、例えば、第1リンク機構58と第2リンク機構59とのリンク比を同じに設定しても、第1リンク機構58の連係プレート62A及び第1揺動リンク63Aと第2リンク機構59の連係ロッド62B及び第2揺動リンク63Bとの基準姿勢の違いや、第1ワンウェイクラッチ57Aと第2ワンウェイクラッチ57Bとの個体差などに起因して、第2アーム55から繰出駆動軸29への伝動効率に差が生じることにより、第2アーム55の揺動角に対する繰出駆動軸29の正回転方向での回転角が異なるようになる。
【0057】
つまり、第2アーム55の往方向の揺動運動を第1リンク機構58及び第1ワンウェイクラッチ57Aを介して繰出駆動軸29に伝える場合と、第2アーム55の復方向の揺動運動を第2リンク機構59及び第2ワンウェイクラッチ57Bを介して繰出駆動軸29に伝える場合との伝動効率の差に応じて、第1リンク機構58と第2リンク機構59とのリンク比を異ならせる必要が生じる。
【0058】
そこで、第2変換部50においては、第2アーム55の往方向の揺動運動を第1リンク機構58及び第1ワンウェイクラッチ57Aを介して繰出駆動軸29に伝える場合と、第2アーム55の復方向の揺動運動を第2リンク機構59及び第2ワンウェイクラッチ57Bを介して繰出駆動軸29に伝える場合との伝動効率の差を考慮して、その伝動効率の差が是正されるように第1リンク機構58及び第2リンク機構59のリンク比を設定している。
【0059】
その結果、第2アーム55の往方向の揺動運動を第1リンク機構58及び第1ワンウェイクラッチ57Aを介して繰出駆動軸29に伝える場合と、第2アーム55の復方向の揺動運動を第2リンク機構59及び第2ワンウェイクラッチ57Bを介して繰出駆動軸29に伝える場合とのそれぞれにおいて、それらの間に生じる伝動効率の差にかかわらず、第2アーム55の揺動角に対する繰出駆動軸29の正回転方向での回転角を適正にすることができ、各繰出機構24による肥料繰り出し量を適正にすることができる。
【0060】
ちなみに、第2変換部50においては、第1リンク機構58及び第2リンク機構59のリンク比を適正にするために、第1リンク機構58における連係プレート62Aの長さを第2リンク機構59における連係ロッド62Bの長さよりも所定長さだけ短くしている。又、第1リンク機構58と第2リンク機構59とに共用する揺動部材61の揺動支点Paから揺動部材61と連係プレート62Aとの連結点Pbにわたる第1連係距離L1を、揺動部材61の揺動支点Paから揺動部材61と連係ロッド62Bとの連結点Pcにわたる第2連係距離L2よりも所定長さだけ短くしている。そして、揺動部材61に対する連係プレート62Aの連結点Pbが、連係ロッド62Bの連結点Pcよりも所定角度θだけ揺動部材61の往揺動側に位置するように設定している。
【0061】
図9〜14に示すように、繰出用伝動機構30は、各繰出機構24による肥料繰り出し量を高低2段に一括して調節する繰出量調節部30Aを備えている。繰出量調節部30Aは、第1変換部49の第1アーム53により構成している。第1アーム53は、連係軸54に固着した基端部53Aに、連係ロッド52にピン連結する遊端部53Bを着脱可能にボルト連結して構成している。基端部53Aは、遊端部53Bとのボルト連結を可能にする円形の連結孔53aを備えている。遊端部53Bは、その基端部53Aに対する延出方向での連結位置の変更を可能にするダルマ状の2連孔53bと、基端部53Aに対する延出方向での連結位置の変更を許容する長さに形成した連係軸挿通用の長孔53cとを備えている。そして、基端部53Aと遊端部53Bとの連結状態を、2連孔53bの基端側部分を使用して連結する状態と、2連孔53bの遊端側部分を使用して連結する状態とに切り替えることにより、第1アーム53の長さを2段階に変更することができ、各繰出機構24による肥料繰り出し量を高低2段に一括して調節することができる。
【0062】
これにより、各繰出機構24による肥料繰り出し量の調節範囲を広げることができ、より適切な肥料繰り出し量の調節を可能にすることができる。
【0063】
図1〜4及び
図7に示すように、施肥装置5のホッパ23は、その左右両側端に、左右の外端に配備する繰出機構24から横外方に張り出す張出部23A,23Bを備えている。左右の張出部23A,23Bは、それらの底面として、張出部内の肥料を隣接する繰出機構24に案内する横外上がり傾斜姿勢の案内面23a,23bを備えている。そして、前述したように、左端の繰出機構24が右端の繰出機構24よりも機体の左右中央寄りに位置することから、左側の張出部23Aにおける左端の繰出機構24からの張り出し量が、右側の張出部23Bにおける右端の繰出機構24からの張り出し量よりも大きくなるように形成している。
【0064】
これにより、ホッパ23の容量を大きくしながら、ホッパ2の左右中心を機体の左右中心に一致させた状態で、左右の張出部23A,23Bの下方に、横外側ほど上側に大きくなる空間76A,76Bを、左側の空間76Aが右側の空間76Bよりも大きくなる状態で形成することができる。
【0065】
図2〜4及び
図7に示すように、繰出量調節機構31及び第2変換部50は、それらの左端部を、右側の張出部23Bの下方に位置する右側の空間76Bに入り込ませた状態で、機体の右端部に配備している。又、前述した施肥停止用の切替レバー44を、右側の空間76Bにおいて隣接する右端の繰出機構24と繰出量調節機構31との間に配備している。一方、ブロワ27は、その略全体を、左側の張出部23Aの下方に位置する左側の空間76Aに入り込ませた状態で、機体の左端部に配備している。
【0066】
これにより、繰出量調節機構31、第2変換部50、施肥停止用の切替レバー44、及び、ブロワ27を、機体の左右両端部において機体の左右中央側に極力寄せた状態で配備することができる。その結果、繰出量調節機構31、第2変換部50、及び、ブロワ27に対する機体横外側からのメンテナンスを行い易くしながら、機体の左右バランスを向上させることができる。又、施肥装置5の左右幅を狭くすることができ、機体の輸送や格納の面において有利にすることができる。更に、繰出量調節機構31のハンドル71及び施肥停止用の切替レバー44が走行車体1の搭乗運転部13に近づくことにより、搭乗運転部13からのハンドル71及び切替レバー44の操作が行い易くなり、ハンドル71の操作による肥料繰り出し量の調節、及び、切替レバー44の操作による乗用田植機の植え付け施肥作業状態と植え付け作業状態との切り替えを行い易くすることができる。
【0067】
特に、繰出量調節機構31及び第2変換部50に比較して重量の重いブロワ27を、左側の大きい空間76Aにブロワ27の略全体を入り込ませた状態で機体の左端部に配備することにより、右側の小さい空間76Bに左端部を入り込ませた状態で機体の右端部に配備する繰出量調節機構31及び第2変換部50に対して、ブロワ27を、機体の左右中央寄りに配置することができ、これにより、繰出量調節機構31及び第2変換部50とブロワ27との重量差を改善することができる。
【0068】
又、これに加えて、前述したように、ブロワ27とは左右反対側となる機体右側の位置に2基の繰出機構24を配備し、かつ、ブロワ27と左右同じ側となる機体左側の位置に1基の繰出機構24を配備することにより、繰出量調節機構31及び第2変換部50とブロワ27との重量差をより好適に改善することができる。
【0069】
その結果、機体の左右バランスを効果的に改善することができ、機体の安定性を効果的に向上させることができる。
【0070】
図5及び
図7〜11に示すように、繰出量調節機構31は、その前後向きのネジ軸70を第2変換部50よりも右外側の上方箇所に配備している。これにより、ネジ軸70の前端部に備えたハンドル71の高さ位置を高くすることができ、搭乗運転部13からのハンドル71の操作を更に行い易くすることができる。又、ネジ軸70を備える繰出量調節機構31が第2変換部50の右側上方に位置するようになり、これにより、右側の張出部23Bの下方において右外側ほど上側に大きくなる右側の空間76Bに対して、繰出量調節機構31及び第2変換部50の左端部を入り込ませ易くなることから、右側の空間76Bに対する繰出量調節機構31及び第2変換部50の入り込み量を大きくすることができ、施肥装置5の左右幅を更に狭くすることができる。
【0071】
図2〜5、
図7〜
図11、
図15及び
図17〜
図22に示すように、施肥装置5は、繰出量調節機構31の切替部64を右外方に開放する状態で繰出量調節機構31と第2変換部とを機体の右外側から覆うカバー77を着脱可能に備えている。
【0072】
これにより、繰出量調節機構31と第2変換部とを覆うカバー77を備えて、繰出量調節機構31と第2変換部とを保護するように構成しながら、カバー77を着脱する手間を要することなく、切替部64による施肥装置5の標準施肥状態と減量施肥状態との切り替えを行うことができる。
【0073】
繰出量調節機構31は、第1支持板67の左側板部における上端後部箇所と後端下部箇所、及び、第1支持板67の前端下部を支持部材45などに連結する連結部材78の前端箇所の合計3箇所に、カバー77の係合連結を可能にする被係合部79を備えている。カバー77は、繰出量調節機構31の各被係合部79との対応箇所のそれぞれに、対応する被係合部79に対して機体の右外側から係合する係合部80を備えている。
【0074】
各係合部80は、対応する被係合部79に備えた係合枠79Aの係合孔79Aaに係入する弾性変形可能な係合爪80A、係合爪80Aの係入完了に伴って係合枠79Aを受け止めて係合爪80Aの先端部80Aaとの間に係合枠79Aを係合爪80Aの係脱方向で挟み込む受止部80B、及び、係合爪80Aの係入完了に伴って係合枠79Aにおける係合爪80Aの爪幅方向に位置する一対の枠部分79Abに外側から接触して係合枠79Aを爪幅方向で挟み込む一対の係合片80Cを備えている。
【0075】
被係合部79は、前述した係合枠79A、及び、係合爪80Aの係入完了に伴って係合爪80Aの基端部80Abを受け止めて係合枠79Aとの間に係合爪80Aをその弾性変形方向で挟み込む受止部79Bを備えている。
【0076】
上記の構成により、各被係合部79及び各係合部80は、それらの係合状態において、係合爪80Aの係脱方向と、この係脱方向と直交する係合爪80Aの爪幅方向と、係脱方向及び爪幅方向に直交する係合爪80Aの弾性変形方向との3方向の位置決めを行うように構成している。
【0077】
これにより、繰出量調節機構31の各被係合部79にカバー77の各係合部80を係合してカバー77を繰出量調節機構31に係合連結した状態では、カバー77を、係合爪80Aの係脱方向である機体の左右方向と、機体の左右方向と直交する機体の前後方向と上下方向との3方向での繰出量調節機構31に対する位置ズレを阻止することができる。
【0078】
その結果、機体の走行時や輸送時などにおける機体の振動などに起因して、カバー77が繰出量調節機構31に対して位置ズレして繰出量調節機構31との係合連結を不測に解除する不都合の発生を回避することができる。
【0079】
図3、
図4、
図7、
図9〜11、
図15及び
図17〜19に示すように、繰出量調節機構31は、その連係アーム74の上端が、肥料繰り出し量の調節に伴って前後方向に変位する指針81として機能するように構成している。
【0080】
カバー77は、その天板部77Aに、第2リンク機構59を連係状態に切り替えた第1繰り出し状態に対応する前後向きの第1目盛り部77Bと、第2リンク機構59を連係解除状態に切り替えた第2繰り出し状態に対応する前後向きの第2目盛り部77Cとを、指針81の前後方向への変位を許容する前後向きのスリット77Dを挟んで左右に並べて備える樹脂成形品により構成している。そして、第1目盛り部77Bと第2目盛り部77Cのうち、カバー77に対する型抜き方向の下手側となるスリット77Dの左側に位置する第2目盛り部77Cの高さが、型抜き方向の上手側となるスリット77Dの右側に位置する第1目盛り部77Bの高さよりも高くなるように形成している。
【0081】
これにより、スリット形成用のスライド型を用いることなく、カバー77に指針用のスリット77Dを形成することができる。その結果、カバー77に要する型費を削減することができる。又、機体の右外側から第1目盛り部77B又は第2目盛り部77Cに対する指針81の位置を読み取って肥料繰り出し量を確認する場合には、スリット77Dの左側に位置することで機体横方向の内側に位置することになる第2目盛り部77Cの高さが、スリット77Dの右側に位置することで機体横方向の外側に位置することになる第1目盛り部77Bの高さよりも高くなることで、機体の右外側からの第1目盛り部77B及び第2目盛り部77Cに対する指針位置の視認性を向上させることができる。
【0083】
〔1〕水田作業機は、施肥装置5、薬剤散布装置、及び、直播装置などの供給装置Aのうちの少なくともいずれか一つを備えた田植機又は直播機などであってもよい。
【0084】
〔2〕施肥装置5、薬剤散布装置、及び、直播装置などの供給装置Aは、その全体を苗植付装置4に装備する構成であってもよい。又、ブロワ27を備えない構成であってもよい。
【0085】
〔3〕施肥装置5、薬剤散布装置、及び、直播装置などの供給装置Aの作業条数は種々の変更が可能であり、例えば、供給装置Aを、4条用、6条用、又は、8条用などに構成してもよい。
【0086】
〔4〕ホッパ23は、例えば、1条分又は2条分などの肥料(供給物)を貯留する構成のものを左右方向に並べる配置で装備してもよい。
【0087】
〔5〕複数の繰出機構24は、左右方向に一定間隔をあけて配備してもよい。
【0088】
〔6〕繰出用伝動機構30は、第2変換部50における第1リンク機構58と第2リンク機構59とのそれぞれに、専用の連係ロッド60と揺動部材61とを備えるように構成してもよい。
【0089】
〔7〕繰出用伝動機構30は、第2変換部50の第1リンク機構60を第2リンク機構59よりも機体横外側に配備して、第1リンク機構60に切替部64を備えるように構成してもよい。
【0090】
〔8〕繰出用伝動機構30は、第1変換部49からの往方向の揺動運動で得られる供給物の繰り出し量と、第1変換部49からの復方向の揺動運動で得られる供給物の繰り出し量とが同じになるように構成してもよい。
【0091】
〔9〕切替部64は、連係部材62と揺動リンク63とを連結状態と連結解除状態とに切り替えることにより、機体横外側のリンク機構59,60を連係状態と連係解除状態とに切り替えるように構成してもよい。
【0092】
〔10〕
図23に示すように、繰出量調節機構31は、ネジ送り調節部31Aを備えずに、上下向きの連係アーム74が操作レバーとして機能するように構成し、かつ、第1支持板67に、操作レバー74の前後方向への揺動操作を許容するとともに、操作レバー74の複数段の操作位置での係合保持を可能にするレバーガイド部67Bを備えて、操作レバー74の揺動操作により、走行車体1からの施肥用の回転動力に対する各揺動リンク63A,63Bの揺動角を変更することにより、各繰出機構24による肥料繰り出し量を一括して有段階に調節するレバー調節式に構成してもよい。
【0093】
〔11〕繰出量調節機構31は、例えば、ネジ送り調節部31Aを電動モータで駆動する電動式に構成してもよい。この構成においては、電動モータ用の操作具を搭乗運転部13に配備することが望ましい。
【0094】
〔12〕繰出量調節機構31及び繰出用伝動機構30の第2変換部50を機体の左端部に配備してもよい。
【0095】
〔13〕カバー77は、第1目盛り部77Bが、カバー77に対する型抜き方向の下手側に位置して、その高さが型抜き方向の上手側に位置する第2目盛り部77Cの高さよりも高くなるように形成してもよい。又、カバー77は板金製などであってもよい。
【0096】
〔14〕繰出量調節機構31の被係合部79が、カバー77の係合部80に備えた係合枠の係合孔に係入する弾性変形可能な係合爪と、係合爪の係入完了に伴って係合枠を受け止めて係合爪の先端部との間に係合枠を係合爪の係脱方向で挟み込む受止部と、係合爪の係入完了に伴って係合枠における係合爪の爪幅方向に位置する一対の枠部分に外側から接触して係合枠を爪幅方向で挟み込む一対の係合片とを備え、カバー77の係合部80が、前述した係合枠と、係合爪の係入完了に伴って係合爪の基端部を受け止めて係合枠との間に係合爪をその弾性変形方向で挟み込む受止部とを備えるように構成してもよい。