【実施例】
【0067】
本発明の樹脂組成物及びそれより形成した自己潤滑性ライナーを備える摺動部材を実施例により説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。
<紫外線硬化樹脂組成物の製造>
[実施例1]
イソシアヌル酸環を有する(メタ)アクリレート化合物として、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート(A−9300−1CL、新中村化学工業社製)と、可とう性付与剤としてシリコンジアクリレート(EBECRYL350、ダイセル・オルネクス社製)、固形潤滑剤としてメラミンシアヌレート(MELAPUR MC25、BASF社製)及びPTFE(KT−60、喜多村社製)と、光重合開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(DAROCURE1173、BASF社製)と、ガラス繊維(平均繊維長80μm×平均径φ11μm、PT80E−401、日東紡社製)と、ヒュームドシリカ(AEROSIL R972、日本アエロジル社製)と、添加剤を、それぞれ、表1に記載の組成となるように混合して液状の樹脂組成物を調合した。添加剤として、熱硬化剤、酸化防止剤、光安定剤、重合禁止剤、保存安定剤をそれぞれ微量で含み、その総含有量を表1に示した。
【0068】
[実施例2]
ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、シリコンジアクリレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表1に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0069】
[実施例3]
ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、シリコンジアクリレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表1に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0070】
[実施例4]
ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、シリコンジアクリレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表1に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0071】
[実施例5]
ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、シリコンジアクリレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表1に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0072】
[実施例6]
ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、シリコンジアクリレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表1に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0073】
[実施例7]
ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、シリコンジアクリレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表1に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0074】
[実施例8]
ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、シリコンジアクリレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表1に記載の重量%で用い、メラミンシアヌレートを用いなかった以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0075】
[実施例9]
ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、シリコンジアクリレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、添加剤とを表1に記載の重量%で用い、ヒュームドシリカを用いなかった以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0076】
[実施例10]
ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、シリコンジアクリレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表1に記載の重量%で用い、ガラス繊維を用いなかった以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0077】
[実施例11]
ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、シリコンジアクリレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、添加剤とを表1に記載の重量%で用い、ガラス繊維及びヒュームドシリカを用いなかった以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0078】
[実施例12]
ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、シリコンジアクリレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表1に記載の重量%で用い、さらに、ビスフェノールA型エポキシアクリレート(EBECRYL3700、ダイセル・オルネクス社製)を10重量%で添加した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0079】
[実施例13]
ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、シリコンジアクリレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表1に記載の重量%で用い、さらに、ビスフェノールA型エポキシアクリレートを5重量%、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート(A−DPH、新中村化学工業社製)を5重量%、イソボルニルメタクリレート(ライトエステルIB−X、共栄社化学社製)を4重量%、ヒドロキシエチルメタクリレート(ライトエステルHO−250(N)、共栄社化学社製)を4重量%、エチレングリコールジメタクリレート(1G、新中村化学工業社製)を2重量%で添加した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0080】
[実施例14]
ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、シリコンジアクリレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表2に記載の重量%で用い、さらに、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレートを5重量%、ペンタエリトリトールトリアクリレート(ライトアクリレートPE-3A、共栄社化学社製)を5重量%、ヒドロキシエチルメタクリレートを5重量%で添加した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0081】
[実施例15]
ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、シリコンジアクリレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表2に記載の重量%で用い、さらに、ペンタエリトリトールトリアクリレートを5重量%、エチレングリコールジメタクリレートを5重量%で添加した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0082】
[実施例16]
ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートの代わりに、ジ−(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート及びトリス−(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート(FA−731AT、日立化成社製)をそれぞれ22.5重量%及び22.5重量%で用い、シリコンジアクリレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表2に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0083】
[実施例17]
ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートの代わりに、ジ−(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート(M―215、東亞合成社製)を45重量%で用い、シリコンジアクリレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表2に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0084】
[実施例18]
シリコンジアクリレートの代わりに、シリコンヘキサアクリレート(EBECRYL1360、ダイセル・オルネクス社製)を0.5重量%で用い、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表2に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0085】
[実施例19]
シリコンジアクリレートの代わりに、シリコンヘキサアクリレートを3重量%で用い、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表2に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0086】
[実施例20]
シリコンジアクリレートの代わりに、シリコンヘキサアクリレートを6重量%で用い、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表2に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0087】
[実施例21]
ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、シリコンジアクリレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表2に記載の重量%で用い、さらに、シリコンヘキサアクリレートを1.5重量%で添加した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0088】
[実施例22]
シリコンジアクリレートの代わりに、一般式(2)で表されるアクリル基導入ポリロタキサン(直鎖状分子の分子量:35,000)(SA3400C、アドバンスト・ソフトマテリアルズ社製)を0.5重量%で用い、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表2に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0089】
[実施例23]
シリコンジアクリレートの代わりに、一般式(2)で表されるアクリル基導入ポリロタキサン(直鎖状分子の分子量:35,000)を1重量%で用い、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表2に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0090】
[実施例24]
シリコンジアクリレートの代わりに、一般式(2)で表されるアクリル基導入ポリロタキサン(直鎖状分子の分子量:35,000)を3重量%で用い、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表2に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0091】
[実施例25]
シリコンジアクリレートの代わりに、一般式(2)で表されるアクリル基導入ポリロタキサン(直鎖状分子の分子量:35,000)を6重量%で用い、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表2に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0092】
[実施例26]
シリコンジアクリレートの代わりに、一般式(2)で表されるアクリル基導入ポリロタキサン(直鎖状分子の分子量:35,000)を10重量%で用い、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表2に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0093】
[実施例27]
シリコンジアクリレートの代わりに、一般式(2)で表されるアクリル基導入ポリロタキサン(直鎖状分子の分子量:35,000)を15重量%で用い、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表3に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0094】
[実施例28]
シリコンジアクリレートの代わりに、一般式(2)で表されるアクリル基導入ポリロタキサン(直鎖状分子の分子量:20,000)(SA2400C、アドバンスト・ソフトマテリアルズ社製)を0.5重量%で用い、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表3に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0095】
[実施例29]
シリコンジアクリレートの代わりに、一般式(2)で表されるアクリル基導入ポリロタキサン(直鎖状分子の分子量:20,000)を6重量%で用い、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表3に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0096】
[実施例30]
シリコンジアクリレートの代わりに、一般式(2)で表されるアクリル基導入ポリロタキサン(直鎖状分子の分子量:20,000)を10重量%で用い、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表3に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0097】
[実施例31]
シリコンジアクリレートの代わりに、一般式(2)で表されるアクリル基導入ポリロタキサン(直鎖状分子の分子量:20,000)を15重量%で用い、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表3に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0098】
[実施例32]
シリコンジアクリレートの代わりに、一般式(2)で表されるアクリル基導入ポリロタキサン(直鎖状分子の分子量:35,000)を3重量%及び一般式(2)で表されるアクリル基導入ポリロタキサン(直鎖状分子の分子量:20,000)を3重量%で用い、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表3に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0099】
[実施例33]
シリコンジアクリレートの代わりに、一般式(3)で表される化合物を含む架橋ポリロタキサンを有するウレタン系エラストマー材料(SH3400M、アドバンスト・ソフトマテリアルズ社製)を0.5重量%で用い、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表3に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0100】
[実施例34]
シリコンジアクリレートの代わりに、一般式(3)で表される化合物を含む架橋ポリロタキサンを有するウレタン系エラストマー材料を1重量%で用い、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表3に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0101】
[実施例35]
シリコンジアクリレートの代わりに、一般式(3)で表される化合物を含む架橋ポリロタキサンを有するウレタン系エラストマー材料を3重量%で用い、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表3に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0102】
[実施例36]
シリコンジアクリレートの代わりに、一般式(3)で表される化合物を含む架橋ポリロタキサンを有するウレタン系エラストマー材料を6重量%で用い、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表3に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0103】
[実施例37]
シリコンジアクリレートの代わりに、一般式(3)で表される化合物を含む架橋ポリロタキサンを有するウレタン系エラストマー材料を10重量%で用い、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表3に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0104】
[実施例38]
シリコンジアクリレートの代わりに、一般式(3)で表される化合物を含む架橋ポリロタキサンを有するウレタン系エラストマー材料を15重量%で用い、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表3に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0105】
[比較例1]
ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表4に記載の重量%で用い、シリコンジアクリレートを用いなかった以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0106】
[比較例2]
ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、シリコンジアクリレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表4に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0107】
[比較例3]
ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、シリコンジアクリレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表4に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0108】
[比較例4]
ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、シリコンジアクリレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表4に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0109】
[比較例5]
ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、シリコンジアクリレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表4に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0110】
[比較例6]
ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、シリコンジアクリレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表4に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0111】
[比較例7]
ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、シリコンジアクリレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表4に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0112】
[比較例8]
シリコンジアクリレートの代わりに、シリコンヘキサアクリレートを10重量%で用い、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表4に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0113】
[比較例9]
シリコンジアクリレートの代わりに、一般式(2)で表されるアクリル基導入ポリロタキサン(直鎖状分子の分子量:35,000)を20重量%で用い、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表4に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0114】
[比較例10]
シリコンジアクリレートの代わりに、一般式(2)で表されるアクリル基導入ポリロタキサン(直鎖状分子の分子量:20,000)を20重量%で用い、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表4に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0115】
[比較例11]
シリコンジアクリレートの代わりに、一般式(3)で表される化合物を含む架橋ポリロタキサンを有するウレタン系エラストマー材料を20重量%で用い、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートと、メラミンシアヌレートと、PTFEと、光重合開始剤と、ガラス繊維と、ヒュームドシリカと、添加剤とを表4に記載の重量%で用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を調合した。
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】
【0118】
【表3】
【0119】
【表4】
【0120】
表1〜表4に示す紫外線硬化性樹脂組成物中に含まれる化合物は以下である。
CTAI:ε‐カプロラクトン変性トリス‐(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート
DATIC:ジ‐(2‐アクリロキシエチル)イソシアヌレート
TAEIC:トリス‐(2‐アクリロキシエチル)イソシアヌレート
可とう性付与剤A:シリコンアクリレート
可とう性付与剤B:アクリル基導入ポリロタキサン
可とう性付与剤C:架橋ポリロタキサンを有するポリウレタン系エラストマー材料
SDA:シリコンジアクリレート
SHA:シリコンヘキサアクリレート
AP3:一般式(2)で表されるアクリル基導入ポリロタキサン(直鎖状分子の分子量:35,000)
PA2:一般式(2)で表されるアクリル基導入ポリロタキサン(直鎖状分子の分子量:20,000)
PoEr:一般式(3)で表される化合物を含む架橋ポリロタキサンを有するウレタン系エラストマー材料
BEA:ビスフェノールA型エポキシアクリレート
DPHA:ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート
PETA:ペンタエリトリトールトリアクリレート
IBXMA:イソボルニルメタクリレート
HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート
EGDM:エチレングリコールジメタクリレート
MC:メラミンシアヌレート樹脂
PTFE:ポリテトラフルオロエチレン樹脂
光重合剤:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン
GF:ガラス繊維
FS:ヒュームドシリカ
添加剤:熱硬化剤、酸化防止剤、光安定剤、重合禁止剤、保存安定剤
【0121】
<自己潤滑性ライナーの製造>
SUS630ステンレス鋼をH1150条件で熱処理した材料を用いて
図1に示すような球面状の滑り軸受20を作製した。球面状の滑り軸受20において、レース外径22b:25.4mm、ボール内径26b:12.7mm、レース幅22c:9.9mm、ボール幅26c:12.7mm、ライナー24の厚み:0.25mmとした。
【0122】
球面滑り軸受20は、
図2(a)〜
図2(c)に示すようなスウェジ加工によるプロセスで製造した。最初に、外輪22の内周面22aに実施例1〜38及び比較例1〜11で調製した樹脂組成物を塗布してマシナブルライナー24を形成した。その後、外輪22に内輪26を挿入した(
図2(a))。次に、スウェジ加工によって外輪22を内輪26の外周面に倣うようにプレスで塑性変形させた(
図2(b))。次いで、切削加工によって外輪22の外側の仕上げを行い、球面滑り軸受20を完成させた(
図2(c))。こうして実施例1〜38及び比較例1〜11で調製した樹脂組成物、及び該樹脂組成物よりなるマシナブルライナーについて性能評価を行った。
【0123】
<スウェジ加工に関するシミュレーション>
スウェジ加工により割れが発生せず、航空機用の球面滑り軸受として使用可能なマシナブルライナーのヤング率の範囲を有限要素解析(FEA)により検討した。
【0124】
実際のスウェジ加工によるマシナブルライナーの割れは、マシナブルライナーの端部(エッジ部)付近で生じる場合がある。ライナーの端部は一面が拘束されていないため、三軸応力状態となるライナーの中央付近よりも低い圧縮応力で割れると推測される。そこで、ヤング率1.1GPaの従来のマシナブルライナーがスウェジ加工で割れた時の状態を有限要素解析(FEA)で再現し、マシナブルライナーのエッジ部の最大圧縮応力を求めた。その結果、マシナブルライナーのエッジ部の最大圧縮応力は、300MPaであった。一方、航空機用球面すべり軸受の規格であるAS81820規格によると、航空機用のライナータイプ球面滑り軸受のコンフォミティの最大許容値は0.076mmである。コンフォミティとは、スウェジ加工で外輪
(レース)を塑性変形させた後のライナー厚みの最大と最小の差である。以上から、スウェジ加工で割れが生じず、航空機用の球面滑り軸受として使用可能なマシナブルライナーの条件は、スウェジ加工時のマシナブルライナーのエッジ部の圧縮応力が300MPa未満であり、コンフォミティが0.076mm以下であることがわかった。
【0125】
次に、有限要素解析(FEA)により、マシナブルライナーのヤング率を変化させた際のエッジ部の最大圧縮応力の変化及びコンフォミティの変化をシミュレーションした。更に、シミュレーション結果から、以下の判断基準に基づき、上述の航空機用の球面滑り軸受として使用可能なマシナブルライナーの条件に合致するか否か判断した。結果を表5に示す。
【0126】
シミュレーション結果の判断基準:
○:スウェジ加工時のマシナブルライナーのエッジ部の圧縮応力が300MPa未満であり、コンフォミティが0.076mm以下である。
×:スウェジ加工におけるマシナブルライナーのエッジ部の圧縮応力が300MPa以上であるか、またはコンフォミティが0.076mmを超える。
【0127】
【表5】
【0128】
表5から、スウェジ加工により割れが発生せず、航空機用の球面滑り軸受として使用可能なマシナブルライナーのヤング率は、0.4〜1.0GPaであることがわかった。
【0129】
<マシナブルライナーの性能評価>
1.ヤング率の測定
次に、実施例1〜4、22〜27、33〜38、比較例1、6、7、9及び11で調製した樹脂組成物から得られた試料でヤング率を測定した。ヤング率の測定は、JIS7161の測定方法にしたがって、各実施例及び比較例の樹脂組成物から試験片としてダンベル状3号を作製して引張り試験機で実施し、得られた測定値をマシナブルライナーのヤング率とした。表6に、実施例1〜4、22〜27、33〜38、比較例1、6、7、9及び11における樹脂組成物中の可とう性付与剤の含有量及び測定したヤング率を示す。実施例1〜4、比較例6及び7は、可とう性付与剤としてシリコンアクリレートであるシリコンジアクリレートを用い、実施例22〜27及び比較例9は、可とう性付与剤としてアクリル基導入ポリロタキサン(直鎖状分子の分子量:30,000)を用い、実施例33〜38及び比較例11は、可とう性付与剤として架橋ポリロタキサンを有するポリウレタン系エラストマー材料を用いた例である。そして、比較例1は、樹脂組成物中に可とう性付与剤を含んでいない例である。尚、表6に記載した全ての実施例及び比較例では、樹脂組成物中において、イソシアヌル酸環を有する(メタ)アクリレートと可とう性付与剤との合計含有量は51重量%とした。
【0130】
【表6】
【0131】
図3に、表6に示す樹脂組成物中の可とう性付与剤の含有量と、各樹脂組成物から得られたマシナブルライナーのヤング率との関係を可とう性付与剤の種類ごとに示す。
図3に示すように、樹脂組成物中のシリコンアクリレートの含有量が0.3〜6重量%であるとき、アクリル基導入ポリロタキサンの含有量が0.2〜15重量%であるとき、及び架橋ポリロタキサンを有するポリウレタン系エラストマー材料の含有量が0.2〜15重量%であるとき、マシナブルライナーのヤング率は、0.4〜1.0GPaであった。この結果から、シリコンアクリレート、アクリル基導入ポリロタキサン及び架橋ポリロタキサンを有するポリウレタン系エラストマー材料のいずれか1種の可とう性付与剤が樹脂組成物中に含まれ、樹脂組成物中のシリコンアクリレートの含有量が0.3〜6重量%、アクリル基導入ポリロタキサンの含有量が0.2〜15重量%、または架橋ポリロタキサンを有するポリウレタン系エラストマー材料の含有量が0.2〜15重量%であるとき、スウェジ加工により割れが発生せず、航空機用の球面滑り軸受として使用可能なマシナブルライナーが得られることがわかった。
【0132】
2.スウェジ加工性及びコンフォミティの評価
まず、実施例1〜38及び比較例1〜11で調製した樹脂組成物から得られたマシナブルライナーのスウェジ加工性を以下の評価基準に従って判断した。結果を表7〜9に示す。
【0133】
スウェジ加工性の評価基準:
A :スウェジ加工により、マシナブルライナーに割れが発生しなかった。
B1:スウェジ加工により、マシナブルライナーに割れが発生した。
B2:スウェジ加工時に、マシナブルライナーが変形して外輪の外へ飛び出した。
【0134】
次に、スウェジ加工性が良好(評価結果:A)であった実施例及び比較例について、コンフォミティを測定した。結果を表7〜9に示す。
【0135】
更に、以下の評価基準に従って、スウェジ加工性及びコンフォミティの総合評価を行った。結果を表7〜9に示す。
【0136】
スウェジ加工性及びコンフォミティの総合評価基準:
○:スウェジ加工性が良好(評価結果:A)であり、コンフォミティがAS81820規格要求を満たした(0.076mm以下であった)。
△:スウェジ加工性が良好(評価結果:A)であったが、コンフォミティがAS81820規格要求を満たさなかった(0.076mmを超えた)。
×:スウェジ加工性が不良であった(評価結果:B1またはB2)
【0137】
【表7】
【0138】
【表8】
【0139】
【表9】
【0140】
表7及び8に示すように、樹脂組成物中のシリコンアクリレートの含有量が0.3〜6重量%、アクリル基導入ポリロタキサンの含有量が0.2〜15重量%、または架橋ポリロタキサンを有するポリウレタン系エラストマー材料の含有量が0.2〜15重量%である全ての実施例1〜38は、総合評価が良好であり(総合評価結果:○)、スウェジ加工によりマシナブルライナーに割れが発生せず、航空機用の球面滑り軸受として使用可能なマシナブルライナーが得られることがわかった。
【0141】
一方、表9に示すように、樹脂組成物中に可とう性付与剤を含有していない比較例1では、スウェジ加工によりマシナブルライナーに割れが発生した(総合評価結果:×)。また、樹脂組成物中のイソシアヌル酸環を有する(メタ)アクリレートの含有量が80重量%を超え、且つポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)の含有量が10重量%未満である比較例2、アクリル基を導入したポリロタキサンの含有量が15重量%を超えている比較例9及び10では、スウェジ加工性が良好であったが、得られたマシナブルライナーのコンフォミティが0.076mmを越えてAS81820規格基要求を満たさなかった(総合評価結果:△)。また、樹脂組成物中のイソシアヌル酸環を有する(メタ)アクリレートの含有量が20重量%未満である比較例3、PTFEの含有量が50重量%を超えている比較例4、シリコンアクリレートの含有量が6重量%を超え、且つメラミンシアヌレート樹脂(MC)の含有量が30重量%を超えている比較例5、シリコンアクリレートの含有量が6重量%を超える比較例6〜8、及び架橋ポリロタキサンを有するポリウレタン系エラストマー材料の含有量が15重量%を超える比較例11では、スウェジ加工時にマシナブルライナーが変形して外輪の外へ飛び出してしまった(総合評価結果:×)。比較例3〜8及び11のマシナブルライナーは、ヤング率が低く柔らかいため、スウェジ加工時に大きく変形したものと推測される。
【0142】
次に、スウェジ加工性及びコンフォミティの総合評価が良好(評価結果:○)であった全ての実施例1〜38のマシナブルライナーについて、以下に説明するラジアル静的限界荷重(静荷重試験)、アキシャル静的限界荷重(静荷重試験)、ラジアル荷重下での揺動試験及び耐油性確認試験を行った。
【0143】
3.ラジアル静的限界荷重(静荷重試験)
この試験におけるAS81820規格要求を表10に示す。AS81820規格は、ポリテトラフルオロエチレン含有ライナーを備えた航空機用球面すべり軸受の規格であり、表10の左欄に示すように、球面状の滑り軸受の材料(アルミ合金とステンレス鋼)及び内径寸法ごとにラジアル静的限界荷重を定めている。実施例1〜38で用いた球面状の滑り軸受の材料及び寸法からすれば、表10に記載の型式番号MS14104−8に相当するので、最大試験荷重は80kN(17900lb)とした。
【0144】
【表10】
【0145】
まず、
図4に示すように球面すべり軸受20を試験治具T1にセットする。試験治具T1は、軸部材32を支持する断面H字状の基部40と、軸部材32が挿入された球面状の滑り軸受20のラジアル方向に負荷をかけるためのハウジング41と、基部40の下方に設置されたダイヤルゲージ42を有する。球面すべり軸受20の内輪の内径に、炭素鋼製の軸部材32を嵌合させ、ラジアル方向に荷重を負荷する。荷重はラジアル静的限界荷重値80kN(17900lb)まで徐々に増加させ、限界荷重値に達したら徐々に除荷させる。試験中はダイヤルゲージ42で変位を測定し、荷重をゼロに戻したときの永久歪量を荷重−変位曲線から読み取る。AS81820規格要求によると、このときの永久歪量(ラジアル静的限界荷重負荷後の最大許容永久歪量)は、0.076mm(0.003in)以下でなければならない。実施例1〜38で調製した樹脂組成物から得られた自己潤滑性ライナーは、80kNの負荷時における歪量がいずれも0.38mm以下であった。また、負荷後の永久歪量は、実施例1〜38のいずれの例の自己潤滑性ライナーでも0.076mm以下であった。評価結果を表11及び表12に示す。
【0146】
4.アキシャル静的限界荷重(静荷重試験)
まず、
図5に示すように球面滑り軸受20を試験治具T2にセットする。試験治具T2は、球面滑り軸受20を外輪(レース)の端部で支持する段付きの断面中空状軸の基部70と、球面滑り軸受20のアキシャル方向に負荷をかけるための段付きシャフト71と、基部70の下方に設置されたダイヤルゲージ72を有する。球面すべり軸受20の内輪の内径に、段付きシャフト71を嵌合させ、アキシャル方向に荷重を負荷する。荷重は、表10の右欄に記載される規格上のアキシャル静的限界荷重値9.3kN(2,100lb)まで徐々に増加させ、限界荷重値に達したら徐々に除荷させる。試験中はダイヤルゲージ72で変位を測定し、荷重をゼロに戻したときの永久歪量を荷重−変位曲線から読み取る。AS81820規格要求によると、このときの永久歪量(アキシャル静的限界荷重負荷後の最大許容永久歪量)は、0.127mm(0.005in)以下でなければならない。負荷後の永久歪量は、実施例1〜38のいずれの例の自己潤滑性ライナーでも0.127mm以下であった。評価結果を表11及び表12に示す。
【0147】
5.ラジアル荷重下での揺動試験
揺動試験は、常温、温度163℃(+6℃/−0℃)の高温及び温度−54℃以下の低温の3つの温度条件下で行われる。この試験におけるAS81820規格要求は、常温揺動試験における許容可能なライナー摩耗量の上限値は、1,000サイクル後0.089mm(0.0035in)、5,000サイクル後0.102mm(0.0040in)、25,000サイクル後0.114mm(0.0045in)である。高温揺動試験における25,000サイクル後の摩耗量の上限値は0.152mm(0.0060in)である。また、低温揺動試験における25,000サイクル後の摩耗量の上限値は0.203mm(0.0080in)である。
【0148】
(a)常温揺動試験
図4のように球面滑り軸受20を試験治具T1にセットして、表10の右欄に記載された規格上の要求荷重46.3kN(10,400lb)をラジアル方向に掛けて静的に15分間保持する。15分経過後ダイヤルゲージ42の変位量をゼロにセットして軸部材32の揺動を開始する。軸部材32は±25°の角度範囲で揺動させる。角度位置0°から+25°まで行って0°へ戻り、次に−25°まで行って再度0°へ戻るまでを1サイクルとし、揺動速度は毎分10サイクル(10CPM)以上とする。今回の試験では毎分20サイクルとした。揺動試験中はダイヤルゲージ42から摩耗量を読み取り、記録する。常温揺動試験25000サイクル後の摩耗量は、実施例1〜38のいずれの例の自己潤滑性ライナーでも0.114mm以下であった。評価結果を表11及び表12に示す。
【0149】
(b)高温揺動試験
図4の試験治具T1において軸部材32とライナーを温度163℃〜169℃に保った以外は、常温揺動試験と同様の方法で、揺動荷重46.3kNの一定方向ラジアル荷重下で±25°揺動(10CPM以上)させる高温揺動試験を行った。高温揺動試験25000サイクル後の摩耗量は、実施例1〜38のいずれの例の自己潤滑性ライナーでも0.152mm以下であった。評価結果を表11及び表12に示す。
【0150】
(c)低温揺動試験
図4の試験治具T1において軸部材32とライナーを温度−54℃以下の低温に保ち、ラジアル荷重を常温揺動試験の75%の34.7kNとし、揺動速度を毎分5サイクル(5CPM)以上とした以外は、常温揺動試験と同様の方法で、揺動荷重34.7kNの一定方向ラジアル荷重下で±25°揺動(5CPM以上)させる低温揺動試験を行った。低温揺動試験25000サイクル後の摩耗量は、実施例1〜38のいずれの例の自己潤滑性ライナーでも0.203mm以下であった。評価結果を表11及び表12に示す。
【0151】
6.耐油性確認試験
この試験におけるAS81820規格要求は、耐油性確認試験後の許容可能なライナー磨耗量上限値が0.152mm(0.0060in)である。上記のようにして作製したマシナブルライナーを有する球面滑り軸受20を温度71℃±3℃で、下記に示す6種類の油剤a〜fにそれぞれ24時間浸漬させた後、油剤から取り出して30分以内に上記の常温揺動試験を行った。ただし、油剤bについては温度43℃±3℃で、24時間浸漬させた。また、油剤eについては上記の揺動試験の75%の面圧条件とした。
【0152】
油剤a.Skydrol(商標)500B作動液
油剤b.MIL−DTL−5624タービン燃料油JP4またはJP5
油剤c.MIL−PRF−7808潤滑油
油材d.MIL−PRF−5606油圧作動油
油剤e.AS8243凍結防止剤
油剤f.MIL−PRF−83282作動液
【0153】
上記試験の結果、油剤fに24時間浸漬させた後の揺動試験において、全実施例1〜38のいずれの例の自己潤滑性ライナーも、25,000サイクル後のライナー摩耗量が0.152mm以下であった。評価結果を表11及び表12に示す。尚、油剤fを用いた耐油性確認試験は、油剤a〜油剤fを用いた試験の中で最も過酷な条件の試験である。油剤a〜油剤eを用いた耐油性確認試験においても、油剤fを用いた試験と同様、ライナー摩耗量はAS81820規格要求を満たした。
【0154】
【表11】
【0155】
【表12】
【0156】
スウェジ加工によりマシナブルライナーに割れが生じず、航空機用の球面滑り軸受として使用可能である実施例1〜38のマシナブルライナーは、表11及び表12に示すように、高耐久性、高耐荷重性、高耐熱性、高耐油性を有することが確認された。
【0157】
上記実施例では、本発明の樹脂組成物を
図1に示すような形状の球面滑り軸受20に適用したが、それに限らず種々の形状及び構造の摺動部材に適用することができる。
【0158】
<ロッドエンド球面滑り軸受>
上記球面滑り軸受20をロッドエンドボディ50に組み込んだロッドエンド球面滑り軸受60の例を
図6に示す。ロッドエンドボディ50は、球面滑り軸受20を組み込む貫通穴52aを有する頭部52と、メネジまたはオネジ56を設けた軸部54からなる。軸部54は頭部52から貫通穴52aの半径方向に延在する略円筒体である。球面滑り軸受20は貫通穴52aに挿入された後、貫通穴52aの縁に形成されているV溝(不図示)をカシメることによってロッドエンドボディ50に固定される。
【0159】
本発明を実施例により説明してきたが、本発明はそれらに限定されることなく、特許請求の範囲内において種々に形態または態様で具現化することができる。例えば、前記具体例においては、球面滑り軸受及びロッドエンド球面滑り軸受の外輪の内周面に自己潤滑性ライナーを形成したが、内輪の外周面に自己潤滑性ライナーを形成してもよい。また、摺動部材として、球面滑り軸受及びロッドエンド球面滑り軸受例に挙げて説明したが、本発明はそれらに限らず自己潤滑性ライナーを有する摺動部材であれば任意の摺動部材に適用することができる。特に、上記実施形態では、部材やパーツの回転運動に使用される摺動部材を例に挙げて説明したが、本発明の摺動部材は、回転運動に限らず、部材やパーツの並進(直動)運動、揺動運動、それらの組み合わせ運動など任意の方向の摺動運動に使用される摺動部材も包含している。