(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6120876
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】HIV吸着阻害剤のプロドラッグ化合物と賦形剤の共処理方法および製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/496 20060101AFI20170417BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20170417BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20170417BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
A61K31/496
A61K9/16
A61K47/38
A61P31/18
【請求項の数】16
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-549189(P2014-549189)
(86)(22)【出願日】2012年12月18日
(65)【公表番号】特表2015-503522(P2015-503522A)
(43)【公表日】2015年2月2日
(86)【国際出願番号】US2012070229
(87)【国際公開番号】WO2013096239
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2015年11月5日
(31)【優先権主張番号】61/578,689
(32)【優先日】2011年12月21日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/716,306
(32)【優先日】2012年12月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391015708
【氏名又は名称】ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(72)【発明者】
【氏名】シー−イン・チャン
(72)【発明者】
【氏名】ドナルド・シー・キーンツラー
(72)【発明者】
【氏名】デニズ・エルデミル
(72)【発明者】
【氏名】サン・キアン
(72)【発明者】
【氏名】タマル・ローゼンバウム
【審査官】
常見 優
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/028108(WO,A2)
【文献】
特表2004−538249(JP,A)
【文献】
特表2005−512994(JP,A)
【文献】
特表2007−505086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00−33/44
A61K 9/00− 9/72
47/00−47/48
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1-ベンゾイル-4-[2-[4-メトキシ-7-(3-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-1-[(ホスホノオキシ)メチル]-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-3-イル]-1,2-ジオキソエチル]-ピペラジン トリス塩である化合物の製剤の製造方法であって、
a)溶媒中に該化合物を溶解させて溶液を得ること;
b)第1の量の第1貧溶媒を該溶液に加えること;
c)第1の量のHPMCを該溶液中に分散させること;
d)第2の量の該第1貧溶媒を該溶液に加えること;
e)第2の量のHPMCを該溶液中に分散させること;そして、
f)アセトンおよび酢酸イソプロピル(IPAC)から実質的に成る組み合わせである第2貧溶媒を該溶液に加えて該HPMCとともに該化合物を結晶化させることにより製剤を得ること、
を含む、該方法。
【請求項2】
さらに、該結晶化された化合物を濾過し、洗浄し、乾燥させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該溶媒が水である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該第1貧溶媒がアセトンである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
HPMCの該第1の量が総量の約40〜60%である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該第2貧溶媒が約20:80 v/vの比のアセトンとIPACの組み合わせである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
該第2貧溶媒がさらなる化合物を実質的に含まない、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
該さらなる化合物が酢酸エチルおよび酢酸n-ブチルを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
該濾過および洗浄がアセトンを用いて行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
該乾燥が撹拌下で行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
該結晶化された化合物が向上した粉体流およびコンパクタビリティを有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
該結晶化された化合物が球状の凝集物の形態である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
該化合物が該HPMC内で実質的に結晶化されている、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程a)において、該化合物が実質的に結晶性であって、高いアスペクト比および非常に乏しい流動特性を有する高い充填性の脆弱な針状晶により特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
工程f)において、該第2貧溶媒を約1〜5時間かけて加える、請求項6に記載の方法。
【請求項16】
工程f)の後、該化合物:該HPMCの比が約3:1である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、賦形剤を含むHIV吸着阻害化合物製剤の製造方法、より具体的には、1個以上の賦形剤に包埋されたジケトピペラジン-ベースのプロドラッグである吸着阻害化合物を、物理的特性が向上した球状の凝集物として製造する方法に関する。本発明はまた、該方法で製造された結晶化製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
HIV-1(ヒト免疫不全ウイルス-1)感染は、2011年末の時点において世界中で推定4500〜5000万人が感染しており、依然として主要な医学上の問題である。HIVおよびAIDS(後天性免疫不全症候群)の症例の数は急速に増えている。2005年には、約500万の新しい感染が報告されており、310万人がAIDSで死亡した。HIVの治療のために現在利用可能な薬物としては、ヌクレオシド逆転写酵素(RT)阻害剤:ジドブジン(またはAZTもしくはレトロビル(登録商標))、ジダノシン(またはヴァイデックス(登録商標))、スタブジン(またはゼリット(登録商標))、ラミブジン(または3TCもしくはエピビル(登録商標))、ザルシタビン(またはDDCもしくはハイビッド(登録商標))、コハク酸アバカビル(またはザイアジェン(登録商標))、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩(またはビリアード(登録商標))、エムトリシタビン(またはFTC-エムトリバ(登録商標))、コンビビル(登録商標)(3TCとAZTを含む)、トリジビル(登録商標)(アバカビル、ラミブジン、およびジドブジンを含む)、エプジコム(アバカビルおよびラミブジンを含む)、ツルバダ(登録商標)(ビリアード(登録商標)およびエムトリバ(登録商標)を含む);非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤:リルピビリン(またはエジュラント)、ネビラピン(またはビラミューン(登録商標))、デラビルジン(またはレスクリプター(登録商標))およびエファビレンツ(またはサスティバ(登録商標))、アトリプラ(ツルバダ(登録商標)+サスティバ(登録商標))、コンプレラ(ツルバダ(登録商標)+エジュラント)、およびエトラビリン、ならびにペプチド模倣プロテアーゼ阻害剤あるいは認可された製剤:サキナビル、インジナビル、リトナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、ロピナビル、カレトラ(登録商標)(ロピナビルおよびリトナビル)、ダルナビル、アタザナビル(レイアタッツ(登録商標))およびチプラナビル(アプティバス(登録商標))、ならびにインテグラーゼ阻害剤、例えば、ラルテグラビル(アイセントレス)、ならびにエントリー阻害剤、例えば、エンフビルチド(T-20)(フゼオン(登録商標))およびマラビロク(シーエルセントリ)が挙げられる。他の薬物が、今後数年の間に認可される予定であるか、または様々な開発段階のうちのより早い段階にある。
【0003】
前述に加えて、HIV吸着阻害剤は抗ウイルス性化合物の新規サブクラスであり、HIV表面糖タンパク質gp120に結合し、表面タンパク質gp120と宿主細胞受容体CD4との間の相互作用を妨害する。従って、それらはHIVがヒトCD4 T-細胞に吸着するのを防ぎ、HIV生活環の第1ステージにおけるHIV複製を阻止する。抗ウイルス薬として最大限の有用性および有効性を有する化合物を得るために、該HIV吸着阻害剤の特性を改良する努力が続けられている。
【0004】
特に、ある1つのHIV吸着阻害化合物は、今では、HIVに対してかなり優れた能力を示す。この化合物は1-(4-ベンゾイル-ピペラジン-1-イル)-2-[4-メトキシ-7-(3-メチル-[1,2,4]トリアゾール-1-イル)-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-3-イル]-エタン-1,2-ジオンとして知られており、特許文献1(引用により本明細書に援用される)に記載および説明されている:
【化1】
【0005】
さらに、現在では、上記親化合物のリン酸エステルプロドラッグが開発されている。この化合物は1-ベンゾイル-4-[2-[4-メトキシ-7-(3-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-1-[(ホスホノオキシ)メチル]-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-3-イル]-1,2-ジオキソエチル]-ピペラジンである。それは特許文献2(引用によりその全般が本明細書に援用される)に記載および説明されている。該化合物は下記式により示される:
【化2】
【0006】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)と一緒にトリス塩の形態の上記リン酸エステルプロドラッグを含む製剤が、特許文献3(これもまた引用により本明細書に援用される)に記載および説明されている。
【0007】
しかしながら、ある特定の他の例では、賦形剤とともにAPIプロドラッグを製剤化することに関する問題が存在する。充填材料(input)である未処理のプロドラッグの結晶形態は、API単独であるかさらに賦形剤と混合されているかに関わらず、典型的には、高いアスペクト比、低いかさ密度、そして非常に乏しい流動能力(flow capability)を有する、高い充填性の脆弱な針状晶を特徴とする。比較
図1は未処理の結晶性リン酸エステルプロドラッグ化合物の写真である。これらの特徴は、乾式または湿式造粒技法のいずれかの重大な課題を示し得る。乾式造粒において、粉体流の乏しさは、ローラーコンパクターへのホッパー流および供給の制御における大きな課題をもたらす。湿式造粒においては、全体のプロセスに関連した形態の変更が困難であるので、しばしば、最終的に製造された製剤の安定性の乏しさがもたらされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7,354,924号
【特許文献2】米国特許第7,745,625号
【特許文献3】米国特許公開第2010/0056540A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在、当分野で必要とされているものは、賦形剤(HPMCを含む)とともにHIV吸着阻害剤のリン酸エステルプロドラッグ化合物を製剤化する新しい処理方法である。この方法によって、高いAPI含量、良好な放出特性、ならびに良好な流動、向上したかさ密度、および高いコンパクタビリティ(compactability)を有する製剤が製造される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の概要)
第一の実施態様において、本発明は、HIV吸着阻害剤のピペラジントリス塩プロドラッグ化合物の製剤の製造方法であって、
a)溶媒中に該プロドラッグ化合物を溶解させて溶液を得ること;
b)第1の量の第1貧溶媒を該溶液に加えること;
c)第1の量のHPMCを該溶液中に分散させること;
d)第2の量の該第1貧溶媒を該溶液に加えること;
e)第2の量のHPMCを該溶液中に分散させること;そして、
f)アセトンおよび酢酸イソプロピル(IPAC)から実質的に成る組み合わせである第2貧溶媒を該溶液に加えて該HPMCとともに該化合物を結晶化させることにより該製剤を得ること、
を含む、該製造方法に関する。
【0011】
さらに好ましくは、次の工程は、結晶化された化合物/HPMCをさらなる量の第1貧溶媒で濾過および洗浄すること、その後、撹拌型減圧乾燥によって実質的に全ての使用溶媒を除去することを含む。
【0012】
さらなる実施態様において、本発明は、HIV吸着阻害剤のピペラジントリス塩プロドラッグ化合物の製剤の製造方法であって、
a)第1貧溶媒を第1容器に加えること;
b)HPMCを該第1容器中に分散させること;
c)該プロドラッグ化合物を溶媒中に溶解させて溶液を得て、該溶液を該第1容器に加えること;
d)アセトンおよび酢酸イソプロピル(IPAC)から実質的に成る組み合わせである第2貧溶媒を該第1容器中の該溶液に加えて該HPMCとともに該化合物を結晶化させることにより該製剤を得ること、
を含む、該製造方法に関する。この実施態様において、次の工程は、該結晶化された化合物/HPMCを濾過および洗浄し、その後、撹拌型乾燥によって実質的に全ての溶媒を除去することを含む。
【0013】
本発明は、さらに、本明細書に記載の方法によってそのように製造された製剤に関する。
【0014】
さらなる実施態様において、本発明はまた、医薬品グレードの錠剤を製造するための該製剤の使用に関する。
【0015】
本発明は、これらならびに以降に記載の他の重要な目的に関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1(比較)は、材料である未処理のAPI HIV吸着阻害剤のピペラジンリン酸エステルプロドラッグ化合物の650Xの拡大率の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【0017】
【
図2A】
図2Aは、本発明の実施態様による、トレー乾燥させたプロドラッグ/HPMC製剤の50Xの拡大率のSEM画像である。
【0018】
【
図2B】
図2Bは、本発明のさらなる実施態様による、撹拌乾燥させたプロドラッグ/HPMC製剤の50Xの拡大率のSEM画像である。
【0019】
【0020】
【
図3B】
図3Bは、
図3Aに示す製剤のSEM画像であるが、ただし100Xの拡大率のものである。
【0021】
【
図3C】
図3Cは、
図3Aに示す製剤のSEM画像であるが、ただし250Xの拡大率のものである。
【0022】
【
図4A】
図4Aは、
図3Aに示す製剤の表面のSEM画像であって、1000Xの拡大率の個々の針状晶を示している。
【0023】
【0024】
【0025】
【
図5A】
図5Aは、一実施態様による本発明の製剤の696Xの拡大率のFIB-SEM断面像である。
【0026】
【
図5B】
図5Bは、
図5Aに示す本発明の製剤の4340Xの拡大率のFIB-SEM表面画像である。
【0027】
【
図6A】
図6Aは、さらなる実施態様による本発明の製剤の500Xの拡大率のFIB-SEM断面像である。
【0028】
【
図6B】
図6Bは、
図6Aに示す本発明の製剤の500Xの拡大率のFIB-SEM表面画像である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(発明の詳細な説明)
様々な水溶性塩の該リン酸エステルプロドラッグを用いてもよいが、とりわけ、トリス塩形態の1-ベンゾイル-4-[2-[4-メトキシ-7-(3-メチル-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-1-[(ホスホノオキシ)メチル]-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-3-イル]-1,2-ジオキソエチル]-ピペラジンが本明細書での使用に好ましい。
【0030】
該プロドラッグを、まず溶媒に溶解させて溶液を得る。該溶媒は、好ましくは、該プロドラッグ重量(グラム)に対して約1.67〜2.67体積(mL)の水である。
【0031】
次に、第1の量の第1貧溶媒を該プロドラッグ溶液に加える。この第1貧溶媒は、好ましくは、該プロドラッグ重量(グラム)に対して約4.0〜5.0体積(mL)、より好ましくは約4.66体積(mL)のアセトンである。当業者であれば、アセトニトリルが本明細書における第1貧溶媒としての一つの可能な代替物であることを見いだしうる。
【0032】
その後、第1の量のHPMCを該溶液中に分散させる。該第1の量のHPMCは、リン酸エステルプロドラッグとの共処理方法において用いられるHPMCの総量の、好ましくは約40-60%、さらに好ましくは約50%でありうる。さらに、本発明の方法が完了した後の該プロドラッグ化合物:HPMCの比は約3:1であることが好ましい。言い換えると、該HPMCは最終製剤の約20-30%、より好ましくは、その約25%を占めるであろう。該HPMCの添加後、該溶液を少なくとも20分間、より好ましくは最大約1時間程度静置させることが好ましい。
【0033】
次いで、該プロドラッグ重量(グラム)に対して約4.0〜5.0体積(mL)、より好ましくは約4.66体積(mL)の第2の量の第1貧溶媒を、分散させたHPMCを含むプロドラッグ溶液に加える。
【0034】
次に、残りのHPMCを該溶液に分散させる。この量は、本明細書において用いられるHPMCの総量の約60-40%、さらに好ましくは約50%に相当する。再度、該HPMCを含む溶液を、20分間、好ましくは最大約1時間程度、静置または熟成させることが好ましい。
【0035】
その後、該プロドラッグ重量(グラム)に対して約11.0〜12.0体積(mL)、より好ましくは約11.65体積(mL)の量の第2貧溶媒を、プロドラッグおよび分散させたHPMCを含む溶液に加える。該第2貧溶媒はアセトンと酢酸イソプロピル(IPAC)の混合液である。好ましくは、該混合液は、約22:78〜18:82 v/v アセトン:IPAC、さらに好ましくは約20:80 v/v アセトン:IPACの比である。該第2貧溶媒は、さらなる化合物(例えば、酢酸エチルおよび酢酸n-ブチルといった化合物)を実質的に含まないべきである。用いられる第2貧溶媒の特定の組み合わせ、およびそれらの各々の比率の両方ともが、本明細書の方法の重要な態様である。該第2貧溶媒を、約1〜5時間かけて該溶液に加える。該第2貧溶媒を加えた後、溶液全体をゆっくりと撹拌し、長時間、好ましくは約12時間以上、より好ましくは約16時間、熟成させる。いずれの特定の理論に縛られることなく、この長時間の熟成が、該HPMCポリマーの内部および表面上でのプロドラッグの結晶の成長を可能にさせると思われる。
【0036】
最後に、該プロドラッグとHPMCのスラリー混合物をアセトンで希釈し、フィルタードライヤーで濾過する。再び、該製剤混合物を、好ましくはアセトンで、洗浄する(好ましくは2回洗浄する)。その後、該製剤を、撹拌下において数分間圧縮してもよい。次いで、該製剤を減圧下においてトレー乾燥させるか、または適宜撹拌しながら乾燥させる。その後、該製剤を、当分野で利用可能な器具および方法を用いてふるいにかけるかまたは共にミルしてもよい。
【0037】
図2Aは、トレー乾燥された後に得られた製剤を示し、一方、
図2Bは、撹拌乾燥させた同様の製剤を示す。
図3A、3Bおよび3Cは、次第に高めた拡大率の本発明の製剤を示す。球状の凝集物が、各走査型電子顕微鏡画像において明瞭に示されている。
図4A、4Bおよび4Cは、該製剤の凝集物に個々の結晶化された針状晶が存在することを示す。とりわけ、
図4A-4Cの画像と
図1に示す画像とを対比するべきである。
【0038】
上記の通り、いくつかの実施態様において、該製剤を圧縮し、撹拌下で乾燥させることが好ましいものでありうる。
図5Aおよび5Bは、撹拌乾燥下における該製剤の組成特性を示す。
図6Aおよび6Bによって、撹拌しないトレー乾燥の方法は、これも本発明の一部であるが、わずかに好ましくないことが示される。
図5および6の全てをFIB-SEM(収束イオンビームSEM)により特性解析した。FIB-SEM装置は高エネルギーイオンビームを当ててサンプル粒子の表面を削り、その後、X線プローブを照射して内部表面の成分組成を走査し、断面の組成特性を得る。FIB-SEM特性解析によって、以下の2点が示される:1)API針状晶は、HPMCにより形成される骨格構造の内部および表面に包埋されている;および、2)トレー乾燥された粒子は構造の内部にさらに空間を有し、一方、撹拌乾燥された粒子はより密接して詰まっていてほとんど空洞が観察されない。
図5Aおよび6Aの両方において、ポリマー相は太線で輪郭が描かれている。さらに、
図6Aにおいて、APIを矢印で示している。
【実施例】
【0039】
以下の実施例は本発明の好ましい態様を説明するものであるが、発明の範囲を制限するものと解釈すべきではない。
実施例1
105gスケール(一例として)
結晶化工程:
1. 4Lの反応容器において245 mlのDI水中に105.0 gのAPIを溶解させる。
2. 490 mlのアセトンで希釈し、160 rpmおよび35℃で撹拌する。
3. 160 rpmおよび35℃で撹拌しながら21 gのHPMCを加える。
(注:ポリマーを加える際に懸濁液中にポリマーの塊が生じるのを防ぐ)
4. 30分間待った後、160 rpmで撹拌しながら490 mlのアセトンを5分(〜100 ml/分)で加える。
5. 14 gのHPMC(同一ロット)を加え、125 rpmで30分間撹拌する。
6. 1225 mlのアセトン/IPAC(1:4)を、45℃および100-105 rpmの撹拌速度で開始して、280分(添加速度 4.4 ml/分)で加える。
(注:15 gのバッチからの70分の混合時間に基づくスケールアップであり、70 mlから2450 mlへの実施体積のスケールアップには4倍の長いさが必要である。)
7. アセトン/IPAC添加の間に浴温度を45℃から20℃に280分で下げる(冷却速度 25℃/280分)。
8. 全てのアセトン/IPAC溶媒を加えた後、該スラリーを、20℃で、90-95 rpmで12-16時間撹拌しながら、熟成させる。
9. HPLCおよびカールフィッシャー装置のためにスラリーを確保し、収率チェックのためにML(母液)および洗液を確保する。
実施例2
別法として、該結晶化の順序は、以下に記載の別の実施例のように変更し得る。
1. 980 mLのアセトン(第1貧溶媒として)を4Lの反応容器に加える。
2. 35 gのHPMCを加え、160 RPMおよび45℃で撹拌する。
3. 別の容器において105.0 gのAPIを245 mlのDI水中に溶解させ、溶液を反応容器に加える。
4. 40分間待つ。
5. 1225 mlのアセトン/IPAC(1:4)(第2貧溶媒として)を、45℃および100-105 rpmの撹拌速度で開始して、280分で加える(添加速度 4.4 ml/分)。
(注:15 gのバッチからの70分の混合時間に基づくスケールアップであり、70 mlから2450 mlへの実施体積のスケールアップには4倍の長いさが必要である。)
6. アセトン/IPAC添加の間に浴温度を45℃から20℃に280分で下げる(冷却速度 25℃/280分)。
7. 全てのアセトン/IPAC溶媒を加えた後、該スラリーを、20℃で、90-95 rpmで12-16時間撹拌しながら、熟成させる。
8./9. HPLCおよびカールフィッシャー装置のためにスラリーを確保し、収率チェックのためにML(母液)および洗液を確保する。
濾過
10. 晶析装置において撹拌しながら、315 mlのアセトンを該スラリーに加える。2-3分間撹拌する。
11. スラリーを濾過する。
12. ケーキを完全に脱液する。風乾させない。
13. 525 mlのアセトンで再スラリー化洗浄する(Reslurry wash)。10-40 rpmで5-10分間撹拌する。
14. ケーキを完全に脱液する。風乾させない。
15. 210 mlのアセトンで置換洗浄する。
16. ケーキを完全に脱液する。風乾させない。
高密度化
17. ケーキを撹拌する。
・RPM=10-40, 完全に混合するために、RPM=3-10 rpmにて、攪拌機を昇降させることにより撹拌する。
・ケーキの体積が一定になるまで撹拌を続ける(〜10-30分)。
乾燥
18. 断続的に撹拌しながら減圧乾燥
・ジャケット温度を25℃〜50℃まで2-4時間かけて上昇させる。
・乾燥するまで、15〜30分毎に2-5分間撹拌する。
・LOD(乾燥による減量)<3%LODまで乾燥させる。
【0040】
本明細書に記載の様々な方法の実施態様に従って得られたリン酸エステルのプロドラッグ製剤は、非常に高いAPI含量を含む。該製剤は、また、向上したかさ密度、良好な流動特性および高いコンパクタビリティを特徴とする。当分野で利用可能な方法および装置を用いてさらに圧縮および製剤化する場合、得られる錠剤は優れた持続放出特性を示す。典型的なバッチ由来の製剤の特性を評価するための実施例1(バッチ1-5)から得た特性解析結果を、説明のために以下に提示する。
【表1】
【0041】
先の記載は実例に過ぎず、決して本発明の範囲および基本原理を制限するものと解されるべきではない。実際に、本明細書に示されて説明されるものに加えて、本発明の様々な改変が、前述の説明および実施例から当業者にとって明らかとなるであろう。そのような改変はまた、添付の特許請求の範囲内に含まれると意図される。