(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6120882
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】電気泳動ディスプレイのためのマイクロカップ構造
(51)【国際特許分類】
G02F 1/167 20060101AFI20170417BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20170417BHJP
G09F 9/37 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
G02F1/167
G09F9/30 308C
G09F9/37
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-557725(P2014-557725)
(86)(22)【出願日】2013年2月12日
(65)【公表番号】特表2015-508910(P2015-508910A)
(43)【公表日】2015年3月23日
(86)【国際出願番号】US2013025769
(87)【国際公開番号】WO2013122952
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2015年9月16日
(31)【優先権主張番号】61/598,725
(32)【優先日】2012年2月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514205768
【氏名又は名称】イー・インク・カリフォルニア・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】E INK CALIFORNIA,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ボ−ル
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ・リン
(72)【発明者】
【氏名】カン・イー−ミン
【審査官】
佐藤 洋允
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−088434(JP,A)
【文献】
特表2011−524548(JP,A)
【文献】
特開2005−062638(JP,A)
【文献】
特開2011−248267(JP,A)
【文献】
特表2008−523438(JP,A)
【文献】
特開2005−024868(JP,A)
【文献】
特開2011−158693(JP,A)
【文献】
特開2011−123468(JP,A)
【文献】
特開2007−140365(JP,A)
【文献】
特開2004−272199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F1/15−1/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)それぞれ第1の形状を有する複数の第1のマイクロカップと、
b)それぞれが前記第1の形状とは異なる第2の形状を有し、全マイクロカップ数の少なくとも10%を占め、前記第1のマイクロカップの間にランダムに散在している、複数の第2のマイクロカップと、
を備え、
前記第2の形状の各側面長さが、前記第1の形状の側面長さの2倍以下である、電気泳動ディスプレイフィルム。
【請求項2】
前記の複数の第2のマイクロカップが、全マイクロカップ数の少なくとも30%を占める請求項1に記載のディスプレイフィルム。
【請求項3】
前記の複数の第2のマイクロカップが、全マイクロカップ数の少なくとも50%を占める請求項1に記載のディスプレイフィルム。
【請求項4】
電極プレートに重ね合わされている請求項1に記載のディスプレイフィルム。
【請求項5】
複数のマイクロカップを含み、全てのマイクロカップがそれぞれ異なる形状を有する請求項1に記載のディスプレイフィルム。
【請求項6】
電極プレートに重ね合わされている請求項5に記載のディスプレイフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ画面の目立った欠陥を減少させるとともに、モアレ現象を防止することを目的とする電気泳動ディスプレイ用マイクロカップ構造を対象とする。
【背景技術】
【0002】
米国特許第6,930,818号は、マイクロカップ技術に基づく電気泳動ディスプレイについて開示している。当該特許は、マイクロエンボス加工を施すこと、もしくは、像様露光(imagewise exposure)により、マイクロカップをディスプレイセルとして製造することを開示する。このマイクロカップは、その後、溶媒もしくは溶媒混合物に分散された、電荷を帯びたピグメント粒子を含む電気泳動流体で充填される。
【0003】
従来、マイクロカップの上方開口部は同じサイズ及び同じ形状を有し、そのようなマイクロカップが全ディスプレイ表面に亘って分散されている。例えば、マイクロカップの全部が、視認側(viewing side)に、四角形状の上方開口部を有するか、もしくは、マイクロカップの全部が、視認側に、六角形の上方開口部を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来のタイプの構造においては、マイクロカップがランダム化(randomized)されていないため、繰り返された規則的なパターンを有するTFTバックプレーンにマイクロカップフィルムを貼り合わせた際、モアレパターンが発生しうる。カラーフィルターが、そのようなディスプレイ装置において用いられた場合、モアレパターンはより深刻となる。これは、当該カラーフィルターは、繰り返された規則的なパターンを有するからである。
【0005】
それ程深刻ではない角度だけマイクロカップを回転させることにより、モアレ現象を低減させることができる。しかしながら、そのような構造の変化は、切断歩留(cutting yield)を低下させてしまう。また、回転角度が正確であるため製造コストを増加させうる
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、a)第1の形状を有する複数のマイクロカップと、b)全マイクロカップの数の少なくとも10%を占め、第1の形状と異なる形状を有する他の複数のマイクロカップと、を有する電気泳動ディスプレイフィルムを対象とする。
【0007】
ある態様では、前記他の複数のマイクロカップは、全マイクロカップの数の少なくとも30%を占める。他の態様では、前記他の複数のマイクロカップは、全マイクロカップの数の少なくとも50%を占める。
【0008】
ある態様では、(b)のマイクロカップは、(a)のマイクロカップの中でランダムに分散されている。
【0009】
ある態様では、(b)のマイクロカップは、予め決定された数の(a)のマイクロカップの間仕切壁を除去し、除去された間仕切壁を新たな間仕切壁に置き換えることにより形成される。
【0010】
他の態様では、(b)のマイクロカップは、規定された領域内において、予め決定された数の(a)のマイクロカップの各頂点を独立してシフトさせ、シフトされた頂点を再接続することにより形成される。
【0011】
ある態様において、規定された領域は円形である。ある態様において、頂点は、X方向にΔX、Y方向にΔYだけ独立してシフトしている。ある実施の形態において、ΔXもしくはΔYの絶対値は前記規定された領域である円の半径を超えない。
【0012】
ある態様において、電気泳動ディスプレイフィルムはマイクロカップを含み、全てのマイクロカップがそれぞれ異なる形状を有する。
【0013】
本発明のさらに別の態様は、マイクロカップを含み、少なくとも1つのマイクロカップが波状の間仕切壁を有する電気泳動ディスプレイを対象とする。
【0014】
ある態様では、波状の間仕切壁のピッチは異なる。
【0015】
ある態様では、波状の間仕切壁の振幅は異なる。
【0016】
ある態様では、波状の間仕切壁のピッチは異なり、波状の間仕切壁の振幅は同じである。
【0017】
ある態様では、波状の間仕切壁の振幅は異なり、波状の間仕切壁のピッチは同じである。
【0018】
ある態様では、波状の間仕切壁の振幅は異なり、波状の間仕切壁のピッチは異なる。
【0019】
ある態様では、マイクロカップの少なくとも1つは四角形の開口部を有し、少なくとも1組の平行な間仕切壁が波状である。
【0020】
ある態様では、マイクロカップの少なくとも1つは六角形の開口部を有し、少なくとも1組の平行な間仕切壁が波状である。
【0021】
ある態様では、波状の間仕切壁は5μm〜2000μmの範囲のピッチを有する。
【0022】
ある態様では、波状の間仕切壁は0.1μm〜20μmの範囲の振幅を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、(a)四角形の開口部、及び、(b)六角形の開口部をそれぞれ有するマイクロカップを示す。
【
図2】
図2は、マイクロカップの開口形状がどのようにしてランダム化されるかを示している。
【
図3】
図3は、マイクロカップの開口形状がどのようにしてランダム化されるかを示している。
【
図4】
図4は、マイクロカップベースのディスプレイフィルムの“フィルファクター(fill factor)”を示している。
【
図5】
図5(a)〜(c)は、本発明の別の態様を示している。
【
図6】
図6は、(a)同じ形状を有するマイクロカップ、及び、(b)ランダム化された形状を有するマイクロカップを備えるディスプレイフィルムに重ね合わされたTFTバックプレーンを示す。
【
図7】
図7は、波状の間仕切壁を有するマイクロカップフィルムの斜視図である。
【
図8】
図8は、波状の間仕切壁を有するマイクロカップフィルムの上面図である。
【
図9】
図9は、波状の間仕切壁のピッチ及び振幅を示す。
【
図10】
図10は、波状の間仕切壁を有するマイクロカップを示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、マイクロカップの形状もしくはマイクロカップの間仕切壁の形状をランダム化することによりディスプレイ装置におけるモアレパターンもしくは目に見える欠陥を最小化することを対象とする。
【0025】
本発明における“形状”との用語は、視認側におけるマイクロカップの上方開口部の形状をいう。例えば、マイクロカップは、
図1(a)に示すような四角形の開口部(すなわち、四角い形状)を有していてもよいし、もしくは、
図1(b)に示すような六角形の開口部(すなわち、六角形の形状)を有していてもよい。
【0026】
本発明のある態様では、マイクロカップは、
図2及び3に示すように、同じ形状を有するマイクロカップの間仕切壁(点線)を取り除き、取り除かれた間仕切壁を新たな間仕切壁(実線の濃色ライン)で置き換えることによりランダム化されてもよい。新たな間仕切壁は、2つの頂点を接続することにより形成される。これは、取り除かれる間仕切壁を接続する2つの頂点と同じものではない。
【0027】
同じサイズ及び同じ形状を有する全てのマイクロカップをはじめとして、この方法により、少なくとも10%のマイクロカップが変換されることが好ましく、少なくとも30%のマイクロカップが変換されることがより好ましい。さらに、変換されたマイクロカップは、変換されていないマイクロカップの中でランダムに分散されていることが好ましい。
【0028】
どの間仕切壁を除去するか、及び、どこに新たな間仕切壁を追加するかについて、1つの基準は、最終の構造において、フィルファクター(fill factor)が実質的に維持されなければならないということである。より具体的には、変換されたマイクロカップベースのフィルムのフィルファクターは、同じサイズ及び同じ形状を有するマイクロカップを含む元々のマイクロカップベースフィルムのフィルファクターの30%を超えて変換されない。
【0029】
フィルファクターは、壁領域以外の領域を全領域により除したものにより決定される。
図4に示すように、フィルファクターは、領域A(ディスプレイ流体が存在する)の合計を領域A及び領域W(壁領域)の合計により除したものである。
【0030】
他の態様では、マイクロカップの形状は、
図5(a)〜5(c)に示されるように、ランダム化されていてもよい。
図5(a)において、元々のマイクロカップは、同じ形状、すなわち六角形を有する。当該形状をランダム化する際、六角形の各頂点(P)は、決定された領域内において独立してシフトされていてもよい。決定された領域は、各頂点の周りに同じサイズ及び形状を有する。
図5(a)の具体例において、決定された領域である円形が各頂点の周りに示されている。
【0031】
図5(b)において、元々の頂点(P)は、X方向にΔx、Y方向にΔYの距離だけシフトされるように、すなわち、点P‘までシフトされるように示されている。Δx及びΔyの値は、シフトの方向に基づいて、正であってもよいし、また、負であってもよい。決定された領域が、図示されているように円形である場合、ΔxもしくはΔyは零より大きい。しかし、その絶対値は、円形の半径を超えない。
【0032】
ここでは、この方法を例示するために具体例が示されている。当初の配置として、100μmの名目上ピッチを有する規則的な六角形状マイクロカップを有する。“名目上ピッチ”との用語は、規則的な六角形状マイクロカップの当初のX、Y座標を対象とするものである。
【0033】
この具体例において、さらに、Δx及びΔyの両方の絶対値は、10μm〜25μmに亘る。これは、X方向もしくはY方向のそれぞれについて、元々の頂点が、少なくとも10μm、しかしながら、25μmを超えない距離移動してもよいことを意味する。上述のように、Δx及びΔyは、シフトの方向によって、正であってもよいし、もしくは負であってもよい。
【0035】
この方法は、予め決定されたパラメータをプログラムに供給することにより、CADもしくは同等のもの等、コンピュータプログラムの助力により実行される。この具体例に基づくランダム化されたマイクロカップが、
図5(c)に示されている。
【0036】
全ての頂点についてΔxの合計は、実質的に零であるはずであるから、結果として得られるマイクロカップの名目上ピッチは、平均して、約100μmのままである。これは、Δyについても当てはまる。フィルファクターは、また、ランダム化の前及び後において実質的に同じに維持される。
【0037】
より大きなΔxもしくはΔyにより、変換されたマイクロカップにおいて、ランダム化の程度はより大きくなることに留意すべきである。ΔxもしくはΔyの最大値は、六角形の元々の側面長さ以下であり、好ましくは、六角形の元々の側面長さの50%以下に制御されるべきである。
【0038】
この方法は、四角形、三角形、もしくは、八角形等の他の形状のマイクロカップに適用することができる。
【0039】
図6aは、同じ六角形状を有するマイクロカップが、TFTバックプレーンに重ね合わされたマイクロカップベースフィルムを示す。このケースにおいては、モアレパターンが観察されうる。
図6bは、ランダムな形状を有するマイクロカップが、TFTバックプレーンに重ね合わされたマイクロカップベースフィルムを示す。ここでは、モアレパターンは観察されない。
【0040】
本発明のさらに別の態様は、マイクロカップの間仕切壁を変更することを対象とする。
図7は、マイクロカップの軸の一つ(具体的には、X軸)に沿って間仕切壁が擬似ランダム化され、Y軸に沿って間仕切壁が直線である斜視図である。
【0041】
この変換は、X/Y平面についてのみ行われ;Z軸については行われていない。これは、マイクロカップの壁の高さが一定に保たれていることを意味する。
【0042】
図8は、このマイクロカップ構造の上面図であり、ピッチは、一のマイクロカップ壁における曲面と、同じマイクロカップ壁の他の曲面とで異なっていてもよいことは理解されよう。これは、
図9においてさらに示されている。
図9は、波状のマイクロカップ壁(91)を示している。これは、
図8において示された壁(81)に相当するものである。
【0043】
例示のため、4個の点、”a”、”b”、”c”及び”d”において波状の壁(91)と交差する水平の参照ライン(92)が存在する。点”a”及び”b”の間の距離は、第1のピッチP1に;点”b”及び”c”の間の距離は、第2のピッチP2に;点”c”及び”d”の間の距離は、第3のピッチP3に相当する。本発明の明細書において、P1、P2、P3は異なることが好ましい。他の実施の形態において、それらの少なくとも2つが同じであってもよい。
【0044】
波状のマイクロカップを規定する他のパラメータは振幅である。これは、参照ライン92から、波状壁91における曲面上の最も外側の点までの距離である。
図9に示すように、波状の壁の最も外側の3つの点、”e”、”f”及び”g”が存在する。参照ライン92と、点”e”との間の距離は、第1の振幅Aに;参照ライン92と、点”f”との間の距離は第2の振幅A’に;参照ライン92と、点”g”との間の距離は、第3の振幅A”に相当する。本発明の明細書において、A、A’、A”は異なることが好ましい。他の実施の形態において、それらの少なくとも2つが同じであってもよい。
【0045】
ある態様では、ピッチP1=P2=P3であり、A≠A’≠A”である。他の態様では、A=A’=A”であり、P1≠P2≠P3である。さらに別の態様では、P1≠P2≠P3であり、A≠A’≠A”である。
【0046】
間仕切壁のいくつかは、
図8の上面において波状に示されている。しかしながら、
図7に示すように、曲面は、全壁領域の深さ方向に延びることに留意すべきである。
【0047】
本デザインにおいて、ピッチは、5μm〜2000μmに亘り、振幅は、0.1μm〜20μmに亘っていてもよい。上述したピッチ及び振幅は、独立して変更してもよい。
【0048】
本デザインのある実施の形態では、波状の壁は、一の軸において形成される。しかしながら、それらは、2つの軸において形成されてもよい。
図10aは、四角形の形状を有するマイクロカップを示している。このケースにおいて、2対の間仕切壁A及びBが存在する。それぞれの対は、互いに平行な2つの間仕切壁を有する。本発明によれば、対Aの両方の間仕切壁が波状であってもよく、もしくは、対Bの両方の間仕切壁が波状であってもよく、もしくは、両方の対の両方の間仕切壁が波状であってもよい。
【0049】
マイクロカップの上方開口部は、六角形状もしくは他の任意の形状であってもよい。
図10bは、六角形の上方開口部を有するマイクロカップを示す。このケースにおいて、平行な3対の間仕切壁A、B及びCが存在する。本発明によれば、少なくとも1対の間仕切壁が波状である。換言すれば、間仕切壁の少なくとも1対のみが波状であるか、もしくは、3対の間仕切壁のうち2つが波状であるか、もしくは、間仕切壁の3対全てが波状である。
【0050】
本発明のデザインではモアレパターンを減少させることができる。さらに、ランダム化されたマイクロカップもしくは波状の間仕切壁により、不規則な(fuzzy)外観を有することとなる。規則正しい形状のマイクロカップはこの不規則な外観を有せず、そのため、任意の小さな欠陥(例えば、スクラッチもしくはダスト)が目立たなくなる。
【0051】
本発明のマイクロカップは、米国特許第6,930,818号に開示されたマイクロエンボスプロセスにより製造してもよく、当該内容は、全体として、本明細書において引用することにより援用する。形成されたマイクロカップは、その後、この米国特許における開示に従い充填され密閉される。
【0052】
本発明は、その特定の実施の形態を参照しつつ記載されているが、本発明の範囲から逸脱しない範囲で、当該技術分野における当業者は、様々な変更を行うことができ、等価物と交換することができることは理解できよう。さらに、多くの修正を行い、特定のシチュエーション、材料、組成、プロセス、プロセス工程、もしくは、工程を他の対象物、本発明の範囲に適用してもよい。そのような全ての修正は、添付されたクレームの範囲にあることが意図されている。