特許第6120894号(P6120894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 6120894-原料肉塊の処理方法及びその処理装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6120894
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】原料肉塊の処理方法及びその処理装置
(51)【国際特許分類】
   A23L 13/70 20160101AFI20170417BHJP
   A22C 17/00 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   A23L13/70
   A22C17/00
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-39857(P2015-39857)
(22)【出願日】2015年3月2日
(65)【公開番号】特開2016-158556(P2016-158556A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2015年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】511250611
【氏名又は名称】手塚 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】110002169
【氏名又は名称】彩雲国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100088052
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 文彦
(74)【代理人】
【識別番号】100189968
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 浩司
(72)【発明者】
【氏名】手塚 健太郎
【審査官】 星 浩臣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−085504(JP,A)
【文献】 特開2011−244807(JP,A)
【文献】 特開平06−209693(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0208187(US,A1)
【文献】 特開2014−076040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 13/00−17/50
A22C 5/00−29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下動可能に設けられ、ピックル液が送り込まれる注入ヘッドと、前記注入ヘッドに設けられ、原料肉塊に打ち込まれてピックル液を注入する注入針と、前記注入ヘッドに連通すると共に、前記ピックル液を泡状のピックル液に生成する泡生成手段と、を備えている原料肉塊の処理装置を用いる原料肉塊の処理方法であって、
前記泡生成手段によりピックル液を微細泡状のピックル液に生成する泡生成行程と、
前記注入ヘッドを上下動させて前記注入ヘッドの注入針を原料肉塊に打ち込み、該注入針から前記微細泡状のピックル液を噴出させて前記原料肉塊内に注入する注入行程と、
を備えていることを特徴とする原料肉塊の処理方法
【請求項2】
前記泡生成手段は、ガスを吸引してピックル液を発泡させることを特徴とする請求項1記載の原料肉塊の処理方法
【請求項3】
前記微細泡状のピックル液は、マイクロバブル、又は、ナノバブルであることを特徴とする請求項1記載の原料肉塊の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、豚肉、牛肉、家禽肉等の食肉塊(「原料肉塊」という)の処理方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハム、ソーセージ、ベーコン等の製品では、製品全体にわたり、均一な味であることが求められている。そこで、従来、ピックル液注入インジェクタを用いて、前記製品の原料である、豚肉、牛肉、家禽肉等の食肉塊に、所定量のピックル液や調味料など(以下、単に、「ピックル液」と言うことがある)を注入している(例えば、特許文献1、参照)。
このインジェクタでは、送りコンベヤ(ベルトコンベヤ)の上方に多数の注入針を有する注入ヘッドを配設し、前記コンベヤで搬送される原料肉塊が前記注入ヘッドの真下に到達したときに、該コンベヤを一時停止させるとともに、前記注入ヘッドを急降下させて前記注入ヘッドの注入針を前記原料肉塊に刺さ込み前記ピックル液を注入している。
【0003】
しかし、前記原料肉塊に注入針を打ち込んでピックル液を圧入すると、ピックル液は、原料肉塊内に広がるが、該原料肉塊の腿の部位などの硬い部分では、針が刺さりにくいとともに、ピッックル液も浸透しにくい。そのため、所定時間内に所定量のピックル液を注入するためには、ピックル液圧送用の液ポンプを大きくしなければならない、という問題が発生する。
【0004】
そこで、前記問題を解決するために、本件発明者は、原料肉塊にガス注入針を差し込んで前記原料肉塊の肉組織の中にガスを注入した後に前記注入針を抜き出す前処理行程と、前記前処理行程完了後、該原料肉塊にピックル液を注入するピックル注入行程、とを備えた原料肉塊の処理方法、を開発した(例えば、特許文献2、参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06―209693号公報
【特許文献2】特開2014−76040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献2記載の発明は、前処理行程、即ち、ガス注入針で原料肉塊にガス注入して該原料肉塊を膨張させると共、該原料肉塊内のガスが排出されてほぼ元の状態に戻った後に、ピックル液注入行程を行う。そのため、この発明では、前処理行程を行うことなく、ピックル注入行程だけを行う処理方法(先行文献1記載の発明)に比べ、処理時間が長くなるので、原料肉塊の処理効率上、問題となることがある。
【0007】
この発明は、上記事情に鑑み、原料肉塊にピックル液が速やかに浸透するようにすると共に、原料肉塊の処理時間の短縮化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上下動可能に設けられ、ピックル液が送り込まれる注入ヘッドと、前記注入ヘッドに設けられ、原料肉塊に打ち込まれてピックル液を注入する注入針と、前記注入ヘッドに連通すると共に、前記ピックル液を泡状のピックル液に生成する泡生成手段と、を備えている原料肉塊の処理装置を用いる原料肉塊の処理方法であって、前記泡生成手段によりピックル液を微細泡状のピックル液に生成する泡生成行程と、前記注入ヘッドを上下動させて前記注入ヘッドの注入針を原料肉塊に打ち込み、該注入針から前記微細泡状のピックル液を噴出させて前記原料肉塊内に注入する注入行程と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
この発明の泡生成手段は、ガスを吸引してピックル液を発泡させることを特徴とする。
【0011】
この発明の前記泡状のピックル液は、マイクロバブル、又は、ナノバブルであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明は、以上のように構成したので、注入針が原料肉塊に打ち込まれると、該注入針から泡状のピックル液が注入される。そのため、前記泡状のピックル液は、泡により原料肉塊を膨張させるようにしながら注入されるので、前記泡状ピックル液が該原料肉塊内に拡散しやすく、均一な注入を行うことが可能となる。又、従来例(特許文献2)と異なり、前処理行程を必要としないので、処理時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の実施形態を図1により説明する。原料肉塊Bの載置部1には、コンベヤが設けられ、その上方には、注入ヘッド3が対向して配設されている。前記注入ヘッド3は、ホルダプレート5を介してガイドロッド7に固定されている。該ガイドロッド7は軸受筒9に挿着されている。
【0015】
前記ホルダプレート5の上部には、コイルスプリング11を収納するスプリングカバー13が立設され、その下部にはカストリブロック(「原料肉塊押え板」という)17と注入針19が設けられている。
【0016】
前記カストリブロック17は、カストリブロック支持棒15を介して保持され、又、前記注入針19は、接続パイプ21を介して前記注入ヘッド3に連通している。前記注入針19の先端部は、前記カストリブロック17の挿通孔に挿入されている。前記注入針19の本数及び直径等は、必要に応じて適宜選択されるが、例えば、その直径は、0.4 mm、に形成されている。
【0017】
前記注入ヘッド3には、連結パイプ23及びポンプPを介して泡状のピックル液が圧送されるが、この泡状のピックル液は、該ポンプPに連結された泡生成手段により生成される。この泡生成手段として、公知の泡生成器が用いられる。
【0018】
前記泡生成手段は、空気などのガスを吸入してピックル液と混合して泡状のピックル液を生成する。この泡の大きさ(直径)は、必要に応じて適宜調整されるが、大きな泡よりも小さい泡、例えば、マイクロバブル(直径が数十μm)、ナノバブル(直径が数百nm)などの微細泡、が好適なものとして選択される。
【0019】
前記ガイドロッド7の下端部は、上下動アーム25に固定され、該アーム25の中央部には、コネクテングロッド27が連結されている。このコネクテングロッド27の下端部は、コネクテングロッド取付円板28に連結されている。
【0020】
図1において、29は前記取付円板28を介してコネクテングロッド27(上下動アーム25)を上下動させる二相誘導電動機(モータ)、31は減速機、33は位置検出センサ、をそれぞれ示す。
【0021】
次に、本実施形態の作動について説明する。 裁置部のコンベヤ1は、図示しない制御装置により制御されている。このコンベヤ1に原料肉塊Bを載置すると、該原料肉塊Bが、注入ヘッド3側に搬送される。そして、該原料肉塊Bが、前記注入ヘッド3の真下に到達すると、コンベヤ1が停止する。
【0022】
前記制御装置は、モータ29を駆動させて上下動アーム25を矢印A1方向に急降下させるので、注入ヘッド3も矢印A1方向に急降下し、前記注入針19が原料肉塊Bに刺し込まれる。この時、前記制御装置の制御により泡生成手段が作動し、泡状のピックル液が注入ヘッド3に圧送されているので、前記泡状のピックル液が、注入針19から噴出し前記原料肉塊B内に注入される。
【0023】
前記原料肉塊Bに注入された泡状のピックル液は、前記原料肉塊Bを膨張させ、肉の繊維組織を伸ばすようにしながら前記原料肉塊B内に浸透する。
【0024】
前記注入針19の先端部が所定の深さ迄刺し込まれると、前記制御装置の指示により注入針19への泡状のピックル液の圧送が停止されるとともに、前記モータ29が駆動して上下動アーム25を矢印A1と反対方向に急上昇させる。そうすると、注入ヘッド3も同方向に移動するので、前記注入針19は、前記原料肉塊Bから抜けるとともに、該注入ヘッド3は元の位置に戻る。
【0025】
この様にして、原料肉塊Bに泡状のピックル液を注入する行程が完了したら、前記原料肉塊Bを次の処理行程に移してマッサージなどの処理をする。
【0026】
この発明の実施形態は、上記に限定されるものではなく、例えば、前記実施形態では、注入ヘッド(泡生成手段に連通している)を垂直方向に上下動させることにより、載置部に横長方向に載せられている原料肉塊に注入針を打ち込んでいるが(片面うち)、この様にする代わりに、間隔をあけて対向する左右一対の注入ヘッド(泡生成手段に連通している)を設け、前記両注入ヘッドの注入針が互いに近づく様に移動させることにより、前記注入ヘッド間に保持されている原料肉塊の両側に注入針を打ち込む様にすることもできる(両面打ち)。
【符号の説明】
【0027】
1 載置部
3 注入ヘッド
5 ホルダプレート
17 カストリブロック
19 注入針
B 原料肉塊
図1