(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
植物炭末色素と、鉄クロロフィリンナトリウム及び/又は銅クロロフィリンナトリウムと、水とを、前記植物炭末色素100重量部に対し、前記鉄クロロフィリンナトリウム及び/又は銅クロロフィリンナトリウムが5〜60重量部となる割合で混合し、前記植物炭末色素を分散させて、分散体を作製する第1の工程と、前記分散体、水及び水溶性有機溶剤を攪拌混合する第2の工程とを含む、インクジェットインクの作製方法。
請求項1から6までのいずれかに記載のインクジェットインクを、ドロップオンデマンドインクジェット装置より吐出させて、被印字対象物に前記インクジェットインクを付着させる、印字方法。
前記インク循環機構を有するインクジェット装置のインクジェットヘッドを少なくとも2台以上設け、前記インクジェットヘッド装置の少なくとも1台が稼働している間に、少なくとも他の1台をメンテナンス領域に待機させる、請求項9から14までのいずれかに記載の印字方法。
前記インクジェットヘッドに設けられたノズルにおいて、所定の時間内にインクを吐出しないノズルに、一定間隔の時間でプリカーサをする、請求項9から15までのいずれかに記載の印字方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、本実施の形態の記載内容のみに限定して解釈されるものではないことを記載しておく。
【0017】
〔インクジェットインク〕
本発明のインクジェットインクは、少なくとも、水と、鉄クロロフィリンナトリウム及び/又は銅クロロフィリンナトリウムと、植物炭末色素とを含む。
【0018】
<水>
水としては、イオン交換水、蒸留水等を用いることが好ましい。
水は、鉄クロロフィリンナトリウム及び/又は銅クロロフィリンナトリウムの溶解に寄与するものであり、インクジェットインク全量に対し50重量%以上の使用が好ましい。
水の含有は、分散良好性というメリットと、乾燥性低下というデメリットがあり、インクジェットインクに求められる性質を鑑みて使用量を決定すればよい。
水を多く含む液体に植物炭末色素を分散させると、植物炭末色素を微細に粉砕する効率が高くなり、さらに植物炭末色素の分散安定性が得られる。しかし、水を多く含むと、インクジェットインクの乾燥性が低下する。
したがって、印字対象物の表面が多孔質で水を吸収するような場合には多く使えるが、印字対象物の表面が平坦で吸水性がないような場合には、水は少量用い、代わりに揮発性の高い他の水溶性溶媒を多く用いることで乾燥させやすくすることができる。
【0019】
<鉄クロロフィリンナトリウム及び/又は銅クロロフィリンナトリウム>
鉄クロロフィリンナトリウム及び/又は銅クロロフィリンナトリウムは、植物炭末色素を分散させる分散剤としての作用を有する。
この分散作用は、植物炭末色素のカーボン面に、鉄クロロフィリンナトリウム及び/又は銅クロロフィリンナトリウムのポルフィリン環が結合しやすいことにより発揮されるものと推定される。
鉄クロロフィリンナトリウム及び/又は銅クロロフィリンナトリウムは、経口の可能な色素として認められているもので、緑色を有している。
【0020】
鉄クロロフィリンナトリウム及び/又は銅クロロフィリンナトリウムは、インクジェットインク全量に対し、0.1〜20重量%の割合であることが好ましく、0.2〜15重量%の割合であることがより好ましい。前記割合が0.1重量%以上であるのが好ましい理由は、植物炭末色素を安定して分散させるという観点からであり、前記割合が20重量%以下であるのが好ましい理由は、インクジェットインクの粘度が高くなりすぎず、インクジェット装置での吐出性の観点から好ましいからである。このようにインクジェットインクの粘度に配慮するべき理由は、液体、特にインクジェットインクのような混合系の液体の粘度は温度に依存して大きく変化し、低温では粘度が高く、高温では粘度が低くなる性質を有するため、インクを充填したインクジェット装置の周囲の温度が低くなると、インクジェットインクの粘度が高くなり、インクジェット装置で長時間連続して印字することが困難となる恐れがあるからである。
【0021】
また、鉄クロロフィリンナトリウム及び/又は銅クロロフィリンナトリウムの含有量の好適範囲は、植物炭末色素の含有量にも依存する。
具体的には、この鉄クロロフィリンナトリウム及び/又は銅クロロフィリンナトリウムは、植物炭末色素100重量部に対して、5〜60重量部の割合で用いることが好ましい。前記割合を5重量部以上とすることが好ましい理由は、十分に分散効果を得るという観点からであり、また、60重量部以下が好ましい理由は、インクジェットインクとしたとき、被印刷体の表面特性によりにじみが生じることや、耐水性が低下することを回避又は抑制する観点からである。前記割合は、植物炭末色素100重量部に対して、20〜50重量部の割合であることがより好ましい。
【0022】
<植物炭末色素>
植物炭末色素は、インクジェットインクの顔料としての働きを有する。
植物炭末色素は、植物を炭化させたものであり、食品添加物として認められているもの、又は、薬事法に準拠したものとして、備長炭、竹炭、活性炭等を粉砕したものを好ましく用いることができる。
これらは、そのまま用いても良いし、酸やアルカリ等による洗浄をすることも好ましい。
【0023】
植物炭末色素は、平均粒子径が0.01〜10μmのものが好ましい。植物炭末色素の平均粒子径が10μm以下であれば、分散処理に過度の時間を要せず、また、安定的な分散が可能となる。とりわけ、分散処理では熱を発生し、分散処理を長時間行うと過剰に熱の影響を受けて、植物炭末色素を分散させるための鉄クロロフィリンナトリウム及び/又は銅クロロフィリンナトリウムの特性を変えてしまうおそれがある。
【0024】
植物炭末色素は、インクジェットインク全量に対して0.1〜20重量%の割合で用いることが好ましい。前記割合が0.1重量%以上であることが好ましい理由は、顔料としての濃度、視認性の観点からである。また、前記割合が20重量%以下であることが好ましい理由は、インクジェットインク中の固形分増加が抑えられ、植物炭末色素の分散性、流動性の観点で好ましく、インクジェット装置で長時間連続して印字する上でも好ましいからである。前記割合は、より好ましくは、1〜10重量%、さらに好ましくは1〜5重量%である。
【0025】
<その他の任意成分>
水とともに水溶性有機溶剤を用いる場合、例えば、グリセリン、プロピレングリコール及びエタノールから選択される1種以上を用いることが好ましい。
水溶性有機溶剤は、必要に応じて使用量を調整するようにしてもよい。例えば、グリセリン、プロピレングリコールは、プリンタにインクの循環機構がついてない場合、多めに使用することが望ましいが、循環機構のプリンタにおいては、エタノールを多めに使用する組成とすることが望ましい。
水溶性有機溶剤を用いる場合は、被印刷体での乾燥性の向上が果たせる。
【0026】
本発明のインクジェットインクにおいて、水溶性有機溶剤の使用量は、インクジェットインク全量に対して、0〜50重量%であることが好ましい。
水溶性有機溶剤としては、エタノールを用いることが好ましい。なお、インクジェット装置からインクを吐出する際に、ノズル(又はオリフィスともいう)でのインクの乾燥を遅くするために、プロピレングリコール、グリセリン等、水よりも沸点が高く、かつ人体へ経口摂取されても問題ない水溶性有機溶剤を用いるようにしてもよい。
【0027】
本発明のインクジェットインクには、さらにカプリル酸エステルを用いても良い。
カプリル酸エステルとしては、モノエステル、ジエステル等があるが、モノエステルが好ましい。
モノカプリル酸エステルを用いる場合、インクジェットインク全量に対し、1〜15重量%の範囲で用いることが好ましく、4〜10重量%の範囲で用いることがより好ましい。このような範囲で用いれば、ノズルでの乾燥防止と、被印刷表面(特に錠剤表面)での乾燥速度の短縮化が得られる。
なお、モノカプリル酸エステルは、水溶液中での一般的な使用は、0.5重量%で、十分な表面張力の低下が得られるため、0.5重量%を超えての使用は想定されなかったが、過剰に用いることで、ノズルでの乾燥性制御、被印刷表面(特に錠剤表面)での乾燥速度の短縮が得られた。
本発明において、カプリル酸エステルを用いる場合、グリセリンの十量体にカプリル酸を付加したもので、HLB15〜17のモノエステルを用いることが好ましい。
【0028】
また、本発明のインクジェットインクには、食品添加物の乳化剤を用いても良い。
乳化剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン等が挙げられる。これらの乳化剤は可食性で水や水溶性溶剤中での安定性に優れ、インクジェットインク中の植物炭末色素の分散安定性に寄与する。
乳化剤は、水や水溶性溶剤への溶解性や、分散効果の観点から、インクジェットインク全量に対して、0.1〜9重量%の範囲で使用することが好ましく、1〜5重量%の範囲で使用することがより好ましい。
また、これらの乳化剤のうち、非イオン活性剤を用いる場合は、印字対象物の種類に応じてインクジェットインクの親水親油バランス(HLB)を考慮して選択することが好ましい。例えば、印字対象物が食品等を包む包装用のフィルムである場合、HLBが8〜16、油脂分の多い食品に対しては、HLBが1〜2のようなインクジェットインクに調整すると印字の品質が良好になる。
【0029】
また、本発明のインクジェットインクは、印字対象物へのインクの密着性や、印字後のインクの強度を付与するため、接着用の樹脂(バインダー)を用いることもできる。バインダーを用いることで、印字後の印字対象物を擦ったり、それが水に浸漬したりしても、記録したインクの剥がれや溶出を極力抑え、耐摩擦性や耐水性を持たせることができる。 このようなバインダーとしては、特に食品にも添加可能な樹脂として、セラック樹脂はもとより、ダンマル樹脂、コーパル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、水溶性有機溶剤、とりわけアルコール系溶剤への溶解性が高いことからインクジェットインクに用いやすい。その他に、バインダーとして、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、結晶セルロース、ゼラチン、カゼイン、大豆蛋白、アラビアゴム、シクロデキストリン、ポリビニルピロリドン等の樹脂、とりわけ水溶性の樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、バインダーとしてのみならず、分散剤としての機能を有するものもあり、これらはインクジェットインクに用いる溶剤への可溶性に応じて選択して用いることができる。
【0030】
さらに、インクジェットインクに含まれる樹脂の溶解性や安定性を調整するために、pH調整剤を加えることもできる。例えば、酸性への調整には、酢酸、クエン酸等、アルカリ性への調整には、炭酸アンモニウム等を用いることができる。
【0031】
<各成分の配合>
各成分の個別の好ましい含有割合については上述したが、各成分を組み合わせる際の相互の関係においては、植物性炭末色素0.1〜5重量部、鉄クロロフィリンナトリウム及び/又は銅クロロフィリンナトリウム0.01〜5重量部、水10〜80重量部、水溶性有機溶剤0〜50重量部、カプリル酸エステル0〜20重量部とすることが好ましい。
さらに好ましくは、植物性炭末色素0.2〜3重量部、鉄クロロフィリンナトリウム及び/又は銅クロロフィリンナトリウム0.02〜2重量部、水20〜70重量部、水溶性有機溶剤5〜40重量部、カプリル酸エステル1〜15重量部である。
本発明のインクジェットインクの作製において使用する前記水はもちろんのこと、前記水溶性有機溶剤、前記鉄クロロフィリンナトリウム及び/又は銅クロロフィリンナトリウム、及び前記植物性炭末色素はいずれも、可食性の材料から選択することができ、従って、本発明のインクジェットインクは、食品類等への応用も可能である。
【0032】
〔インクジェットインクの作製方法〕
上記本発明のインクジェットインクは、例えば、以下にその一実施形態を示す本発明のインクジェットインクの作製方法により作製することができる。
【0033】
本発明のインクジェットインクの作製方法は、植物炭末色素と、鉄クロロフィリンナトリウム及び/又は銅クロロフィリンナトリウムと、水とを混合し、前記植物炭末色素を分散させて、分散体を作製する第1の工程と、前記分散体、水及び水溶性有機溶剤を攪拌混合する第2の工程とを含む。
【0034】
第1の工程について、さらに詳説すると、例えば、まず、水、又は水と水溶性有機溶剤との混合溶液に鉄クロロフィリンナトリウム及び/又は銅クロロフィリンナトリウムを溶解させ、その後、植物炭末色素を分散させる。
この場合、鉄クロロフィリンナトリウム及び/又は銅クロロフィリンナトリウムを溶解させる溶液としては、水が50重量%以上、エタノールが50重量%未満である溶液を用いることが好ましい。水が50重量%以上であることで、植物炭末色素の分散安定性が良好となるからである。
鉄クロロフィリンナトリウム及び/又は銅クロロフィリンナトリウムは、水によく溶解するため、あらかじめ水溶液としておいてもよい。
【0035】
ここで、本発明のインクジェットインクの作製方法では、前記植物炭末色素100重量部に対し、前記鉄クロロフィリンナトリウム及び/又は銅クロロフィリンナトリウムが5〜60重量部となる割合とする。この割合の数値範囲は、上述のように、十分に分散効果を得るという観点、及び、インクジェットインクとしたとき、被印刷体の表面特性によりにじみが生じることや、耐水性が低下することを回避又は抑制する観点から選定されたものである。前記割合は、植物炭末色素100重量部に対して、20〜50重量部の割合であることがより好ましい。
【0036】
植物炭末色素の分散は、例えば、メディアレスの分散機を用いて行うこともできるし、分散メディアを用いる分散機を用いることもできる。
メディアレス分散機としては、例えば、マイクロフルイダイザー(商品名)、ナノマイザー(商品名)、スターバースト(登録商標)などが挙げられる。
目的外成分の混入(コンタミネーション)を避けるためには、メディアレスの分散機が好ましいが、処理量に制限がある、処理時間が長い、植物炭末色素の粒子径を小さくすることができない、などにより、生産性が低くなる、又は、分散時の発熱の影響で鉄クロロフィリンナトリウム及び/又は銅クロロフィリンナトリウムの効果が発揮されにくく、十分な分散効果が得られ難いといった点では、分散メディアを用いる分散機のほうが好ましい。
分散メディアを用いる分散機としては、例えば、サンドミルや、ビーズミルなどを用いる方法が好ましい。
本発明のインクジェットインクの作製方法では、植物炭末色素が鉄クロロフィリンナトリウム及び/又は銅クロロフィリンナトリウムにより良好に分散されるので、作製に際して、分散時におけるコンタミネーションが抑制され、例えば、ジルコニアビーズを用いても、ジルコニウムの混入量が50ppm以下であるドロップオンデマンド用のインクジェットインクを作製することも可能となる。
もっとも、ジルコニアやジルコニウムの混入をより確実に避ける場合には、分散メディアのビーズとして、ガラスビーズ、アルミナビーズ、スチールビーズを用いてもよい。
用いるビーズの直径としては、0.1〜2mmが好ましい。
また、分散メディアの構成成分が混入しないよう、分散機内部にポリエチレンあるいは、ポリウレタン樹脂等を用いてライニング(表面被覆)を設けるようにしてもよい。また、夾雑物を除去するため、濾過、遠心分離、分離膜法、イオン交換樹脂処理法、逆浸透法、活性炭法、ゼオライト法、水洗、溶剤抽出等の精製や洗浄を併用することも有効である。これらの精製や洗浄は、植物炭末色素を分散処理した後、又はインクジェットインク調製後のいずれの段階で行ってもよいが、夾雑物の混入は、分散処理時の分散メディアや分散容器からが主と考えられるため、植物炭末色素の分散処理後が最も有効であると考えられる。これらの精製や洗浄を複数の段階で行うのがより好ましい。
【0037】
第2の工程として、上記第1の工程により得られる分散体を、水及び水溶性有機溶剤と撹拌混合することで、インクジェットインクが作製できる。
【0038】
さらに、濾過工程等の他の工程を含んでも良い。
【0039】
以上、本発明のインクジェットインクの作製方法の一実施形態について説明したが、本発明のインクジェットインクを作製する方法はこれに限定されるものではない。
例えば、上記においては、第1の工程において分散剤を作製する方法として、水、又は水と水溶性有機溶剤との混合溶液に鉄クロロフィリンナトリウム及び/又は銅クロロフィリンナトリウムを溶解させ、その後、植物炭末色素を分散させる方法を例示したが、植物炭末色素と鉄クロロフィリンナトリウム及び/又は銅クロロフィリンナトリウムとを粉末の状態で混合してから、水又は水と水溶性有機溶剤の混合溶液を添加するようにしてもよい。
【0040】
〔印字方法〕
次に、本発明の印字方法について説明する。
本発明の印字方法は、ドロップオンデマンド方式のインクジェット装置を用いるが、これは、本発明のインクジェットインクがドロップオンデマンド方式のインクジェット装置において特に適性を有しているからである。
このインクジェット装置としては、インク循環機構を有するインクジェット装置を用いることが好ましい。
ここにいうインク循環機構とは、ドロップオンデマンド型のインクジェットヘッド内にインクの循環流路を有し、当該インクジェットヘッドとインクタンク筐体との間にインク循環経路を有し、インクジェットヘッドからインクタンクまでインクが循環可能な、インクジェット装置の機構をいう。
インクの循環は、インク供給経路にインク循環用のポンプを設け、インクがノズル(又はオリフィスともいう)から吐出(ないし排出)しないような条件、環境下で行う。当該インク循環機構を有するインクジェット装置は、一般的にコンティニアス型インクジェット(CIJ)と呼ばれるインクジェットとは異なり、インクの循環はヘッドのノズルからインクを吐出することなく行われる。
【0041】
また、インク循環機構に温度調整機構として、加熱機構(ヒーター)又は放熱機構を設けて実施することが好ましい。これは、インク循環機構を有するインクジェット装置は、装置が設置されている環境の温度変化が激しいと、インクジェットヘッド内のインクの温度が変化し、さらにインクジェットヘッド内のインクの温度が変化するとインクの体積や粘度等の物性が変化し、印字の乱れを生じるおそれがあるが、インクジェットヘッド内の温度を一定に保つため温度調整機構を設けることで、インク粘度を一定にし、印字の精度、印字品質を一定にすることができるからである。
インク循環機構を有するインクジェット装置に脱気機構、脱泡機構、フィルタ等を設けて実施することも好ましい。これらの機構により、気泡の発生を防止し、ゴミの混入を除去することができる。また、インクジェットヘッド内もインクが循環するため、ヘッド内でのインクの滞留を防止して植物炭末色素の堆積によるトラブルを防ぐ。
【0042】
さらに、本発明の印字方法では、連続した長期の稼働のため、複数のインクジェットヘッドを設け、1台又は複数台のインクジェットヘッドが印字のために稼働している間、少なくとも1台以上のインクジェットヘッドがメンテナンス領域(メンテステーション)で待機できる機構とすることが好ましい。そして、印字のために駆動しているインクジェットヘッドと、メンテナンス領域で待機しているインクジェットヘッドとが、所定の時間ごとに交換される機構とすることが好ましい。
メンテナンス領域(メンテステーション)で待機するインクジェットヘッドは、フラッシング、ワイピング、プリカーサ等を行う機構とすることが好ましい。フラッシングとは、インクジェットヘッドのノズル近傍の付着物をとりのぞき、飛行の曲りをなくすためのものであり、ヘッドの全ノズルからインクを強制的に吐出させる動作であり、ワイピングとはノズルに付着したごみや飛びはねたインクを払拭する動作である。プリカーサとは、インクジェットヘッドのノズルからインクが吐出しない程度の微振動を発生させ、インクメニスカスを振動することをいう。このメンテステーションでの機構は、インクの乾燥性が発揮させるようなインク組成において、特に、効果が発揮される。メンテステーションでのフラッシング、ワイピング、プリカーサ等の実施の間隔も、インクの乾燥性の許容値に応じた対応が必要となる。
【0043】
以上、本発明の印字方法について説明したが、本発明のインクジェットインクを用いた印字方法は、これに限定されるものではなく、例えば、連続式のインクジェット装置で用いることもできる。
【0044】
〔インクジェットインクの用途〕
本発明のインクジェットインクは、食品添加物、又は薬剤への添加が許容される材料のみを含むインクジェットインクを提供することができるため、食品や食品の包装材料に対して安心して使用することができる。
また、本発明のインクジェットインクは、高い濃度の植物炭末色素を安定に分散できる配合となっているため、これを用いて種々の食品、食品と接する材料、食品包装材料等に印字した場合でも、その印刷された文字に十分な視認性をもたらすことができる。
さらに、印字対象物が濃色であっても、染料を用いた場合のような視認性の低下を招くことがなく、植物炭末色素による明瞭な印刷文字を形成することができる。そして、水に濡れても溶出がなく、見た目に嫌悪感を与えない。
【0045】
さらに、本発明のインクジェットインクは、食品素材、食品添加物、又は薬剤用の材料として認められたもののみを含むこととすることができるので、食品のデザイン、装飾、品質のトレーサビリティー等にも有効に用いることができる。トレーサビリティ、又はデザインのデータとしては、例えば、生産地、収穫日時、生産者、日付、特殊記号、キャラクタ画像等がある。包装容器や梱包材ではなく、最終消費者が手にし、かつ流通の途中で変更することができない食品そのものに直接これらのデータを印刷することは、流通経路の確実な表示方法として、トレーザビリティの観点から商品流通の信頼性も付与することができる。
【0046】
本発明のインクジェットインクを用いて印字できる対象物として、食品類を包装する包装材料及び食品と接触する材料、ならびに食品類が挙げられる。例えば、包装材料としては、パンの包装、食品のトレイ、弁当容器、パック等があり、食品と接触する材料としては、割りはし、楊枝、串等が挙げられる。食品類としては、例えばガム、キャンディー、ビスケット、クッキー、饅頭、チョコレート等が例示される。また、みかん、りんご、スイカ、メロン、マンゴー、柿、桃等の果物や、野菜、加工肉類等にも記録することができる。
【0047】
また、本発明のインクジェットインクは、規制がないために却って厳しく自主規制されがちとなるジルコニアやジルコニウム又はジルコニウムイオン等を低減することができ、この場合には、薬剤関連での用途展開も容易となる。
したがって、健康食品や、医療用の錠剤等への記録も可能である。健康食品、又は医薬品用の錠剤は、コーティングの施された錠剤、コーティングのない素錠、易崩壊性の錠剤等、様々な種類の錠剤にも使用できる。
この錠剤としては、素錠、OD錠、フィルムコーティング錠、糖衣錠等の種々の剤形のものを対象とできる。
特に、一般の印刷の難しい、素錠やOD錠に対して、濃度、にじみ、裏移り、乾燥性等の良好なインクジェットインクとなり、錠剤への良好な印刷を行うことができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を用いて、本発明にかかるインクジェットインク、その作製方法及びその印字方法について詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0049】
〔実施例1〕
本実施例では、インクジェットインクの中間工程で得られる分散体として、下記表1に示す分散体1を作製した。分散体1は、鉄クロロフィリンナトリウム0.6重量部を精製水12.4重量部に溶解させた溶液中に、植物炭末色素として、うばめかしを原料とする備長炭2重量部を混合し、ディスクタイプの横型ビーズミルを用いて、Φ0.3mmジルコニアビーズにより2時間分散処理した分散体である。本実施例で作製した分散体1では、植物炭末色素である備長炭の平均粒子径は0.37μmであった。
続いて本実施例1では、分散体1を用いたインクジェットインクを作製した。本実施例では、分散体1を15重量部、プロピレングリコール35重量部、精製水45重量部、モノカプリル酸デカグリセリン(HLB16.1)5重量部を、ガラス製のビーカーに入れ、ステンレス製のプロペラで撹拌混合した後、濾過精度1μmのフィルタで濾過し、ドロップオンデマンド用のインクジェットインクを作製した。
本実施例1で作製したインクジェットインクのジルコニウム濃度をICP発光分析装置(堀場製作所製型式ULTIMA2)で測定したところ、ジルコニウムの含有量は50mg/kg以下、すなわち百万分率で50ppm以下(8.5ppm)であった。
【0050】
〔実施例2〕
下記の表1に示すように、植物炭末色素として備長炭を2重量部用い、銅クロロフィリンナトリウム0.6重量部を用いて、実施例1と同様の分散処理を行い、分散体2を作製した。
本実施例2で作製した分散体2を用いて、実施例1と同様に下記表2に記載された処方に基づき、インクジェットインクを作製した。
本実施例2で作製したインクジェットインクのジルコニウム濃度を実施例1と同様に測定したところ、ジルコニウムの含有量は50mg/kg以下、すなわち百万分率で50ppm以下(8.5ppm)であった。
【0051】
〔実施例3〕
下記の表1に示すように、植物炭末色素として竹炭を2重量部用い、実施例1と同様の分散処理を行い、分散体3を作製した。
本実施例3で作製した分散体3を用いて、実施例1と同様に下記表2に記載された処方に基づき、インクジェットインクを作製した。
本実施例3で作製したインクジェットインクのジルコニウム濃度を実施例1と同様に測定したところ、ジルコニウムの含有量は50mg/kg以下、すなわち百万分率で50ppm以下(9ppm)であった。
【0052】
〔実施例4〕
下記の表1に示すように、植物炭末色素として備長炭を2重量部用い、実施例1と同様の分散処理を行い、分散体4を作製した。
本実施例4で作製した分散体4を用いて、実施例1と同様に下記表2に記載された処方に基づき、インクジェットインクを作製した。
本実施例4で作製したインクジェットインクのジルコニウム濃度を実施例1と同様に測定したところ、ジルコニウムの含有量は50mg/kg以下、すなわち百万分率で50ppm以下(9ppm)であった。
【0053】
〔実施例5〕
実施例1で作製した分散体1を用いて、実施例1と同様に下記表2に記載された処方に基づき、インクジェットインクを作製した。
本実施例5で作製したインクジェットインクのジルコニウム濃度を実施例1と同様に測定したところ、ジルコニウムの含有量は測定限界の50ppm以下であった。
【0054】
〔実施例6〕
実施例1で作製した分散体1を用いて、実施例1と同様に下記表2に記載された処方に基づき、インクジェットインクを作製した。
本実施例6で作製したインクジェットインクのジルコニウム濃度を実施例1と同様に測定したところ、ジルコニウムの含有量は測定限界の50ppm以下であった。
【0055】
〔実施例7〕
実施例1で作製した分散体1を用いて、実施例1と同様に下記表2に記載された処方に基づき、インクジェットインクを作製した。
本実施例7で作製したインクジェットインクのジルコニウム濃度を実施例1と同様に測定したところ、ジルコニウムの含有量は測定限界の50ppm以下であった。
【0056】
〔実施例8〕
実施例1で作製した分散体1を用いて、実施例1と同様に下記表2に記載された処方に基づき、インクジェットインクを作製した。
本実施例8で作製したインクジェットインクのジルコニウム濃度を実施例1と同様に測定したところ、ジルコニウムの含有量は測定限界の50ppm以下であった。
【0057】
〔実施例9〕
実施例2で作製した分散体2を用いて、実施例1と同様に下記表2に記載された処方に基づき、インクジェットインクを作製した。
本実施例9で作製したインクジェットインクのジルコニウム濃度を実施例1と同様に測定したところ、ジルコニウムの含有量は測定限界の50ppm以下であった。
【0058】
〔実施例10〕
実施例3で作製した分散体3を用いて、実施例1と同様に下記表2に記載された処方に基づき、インクジェットインクを作製した。
本実施例10で作製したインクジェットインクのジルコニウム濃度を実施例1と同様に測定したところ、ジルコニウムの含有量は測定限界の50ppm以下であった。
【0059】
〔実施例11〕
実施例3で作製した分散体3を用いて、実施例1と同様に下記表2に記載された処方に基づき、インクジェットインクを作製した。
本実施例11で作製したインクジェットインクのジルコニウム濃度を実施例1と同様に測定したところ、ジルコニウムの含有量は測定限界の50ppm以下であった。
【0060】
〔実施例12〕
実施例3で作製した分散体3を用いて、実施例1と同様に下記表2に記載された処方に基づき、インクジェットインクを作製した。
本実施例12で作製したインクジェットインクのジルコニウム濃度を実施例1と同様に測定したところ、ジルコニウムの含有量は測定限界の50ppm以下であった。
【0061】
〔比較例1〕
下記の表3に示すように、植物炭末色素として備長炭を2重量部用い、分散剤としてヒドロキシプロピルセルロース0.6重量部を用いて、実施例1と同様の分散処理を行い、分散体1Aを作製した。
本比較例1で作製した分散体1Aを用いて、実施例1と同様に下記表4に記載された処方に基づき、インクジェットインクを作製した。
【0062】
〔比較例2〕
下記の表3に示すように、植物炭末色素として備長炭を2重量部用い、分散剤としてヒドロキシプロピルセルロース0.6重量部を用いて、実施例1と同様の分散処理を行い、分散体2Aを作製した。
本比較例2で作製した分散体2Aについて、実施例1と同様に下記表4に記載された処方に基づき、インクジェットインクを作製した。
【0063】
〔比較例3〕
下記の表3に示すように、植物炭末色素として備長炭を2重量部用い、分散剤としてカルボキシメチルセルロース1重量部を用いて、実施例1と同様の分散処理を行い、分散体3Aを作製した。
本比較例3で作製した分散体3Aを用いて、実施例1と同様に下記表4に記載された処方に基づき、インクジェットインクを作製した。
【0064】
〔比較例4〕
下記の表3に示すように、植物炭末色素として竹炭を2重量部用い、モノカプリル酸デカグリセリン1重量部を用いて、実施例1と同様の分散処理を行い、分散体4Aを作製した。
本比較例4で作製した分散体4Aを用いて、実施例1と同様に下記表4に記載された処方に基づき、インクジェットインクを作製した。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
なお、表中の処方を示す数値は重量部を表している。
表3及び表4中でのHPCはヒドロキシプロピルセルロースを示し、(*1)を付したものは2重量%のHPC水溶液の粘度が、20℃において2.5mPa・sとなるもの、(*2)を付したものは2重量%のHPC水溶液の粘度が、20℃において3.85mPa・sとなるものである。
【0070】
〔特性の測定・評価〕
実施例及び比較例でのそれぞれのインクの特性を下表5及び下表6に示す。
【0071】
【表5】
【0072】
【表6】
【0073】
各項目の詳細は以下のとおりである。
「平均粒子径」は、日機装株式会社製の粒度分布計(UPA型)を用いてインクジェットインク中の顔料のメジアン径(d50)を測定した。
「粘度」(20℃、mPa・s)は、TOKI産業社製の粘度計(EHコーン型)を用いて測定した。
「再分散性」は、作製後24時間以上放置したインクジェットインクに、未使用のインクを加えて、人の手によって20回振とうさせたのちに濾過し、その濾紙に顔料が残留するか否かで評価した。さらに、表5、表6に示した物性項目のうち、下記に挙げるものは、各実施例、比較例で作製したインクジェットインクを、ドロップオンデマンド式インクジェットプリンタ(紀州技研工業社製の試作品)に充填し、連続して印字テストを行ない、その印字テストに基づいて性能を評価した。この時の印字対象物には、錠剤を用いている。いずれにおいても良好な印字をしめした。
「乾燥性」は、印字直後の印字面に、印字直後の秒数に設定したタイミングで毛質の刷毛を接触させ、転写の有無で評価した。
「にじみ」は、印字ドットのぼやけ状態、色の分離の有無を目視により確認。
「定着性(剥離)」は、印字対象物を疑似錠剤とし、当該錠剤に対して各実施例で作製したインクジェットインクを用いて印字し、印字部分を綿棒で擦ったときの剥離の有無により確認した。
「視認性」は、文字の判読性を目視により評価した。
「こすり」は、錠剤と錠剤をこすっての剥離の有無を評価した。
「転写」は、印字直後の印字面に錠剤を接触させて、転写するかの確認をした。また、印字直後に毛ブラシに接触させてインクの付着を確認した。
「耐光性」は、120万lux・hr及び200W・h/m2での褪色、変色の有無を目視により評価した。
「耐湿性」は、30℃、湿度60%の恒温恒湿槽で印字し、その環境での印字のにじみ、乾燥、裏移り等を評価した。
「連続吐出性」は、ノズルの詰り、印字不良、フォント異常等の有無で判定した。
「循環機構なしの初期ドットの吐出性」は、1時間放置後の最初の印字における印字状態で不吐出の有無で確認した。
なお、判定基準は以下のとおりである。
◎は、非常に良好
○は、良好
△は、良好品よりも若干劣る
×は、明らかな不良
―は、評価不能ないし不可のために評価なし
【0074】
〔上記結果についての考察〕
上記試験では、いずれの実施例も、全般的に良好な印字性能を示すものであったといえる。なお、OD錠,FC錠にも同様に印字テストを行ったが、いずれも良好な印字を示した。
実施例のインクジェットインクでは、いずれにおいても、50ppm以上のジルコニウムのコンタミも検出されなかった。また、インクの再分散性、にじみもなく、良好な定着性も有していた。
錠剤での印刷におけるこすりや転写も生じない良好な視認性のある印字物を作製できた。
なお、鉄クロロフィリンナトリウム、銅クロロフィリンナトリウムが、分散作用を発揮するため、粘度の調整範囲も広くとれ、これらの使用量が2重量%以下であっても定着性や転写の問題がなかった。
実施例のインクジェットインクにおいては、錠剤表面との親和性も認められた。また、鉄クロロフィリンナトリウム、銅クロロフィリンナトリウムの使用量が少量であったため、温度変化の環境テスト、また、連続テストも良好な吐出性を示した。
また、実施例1〜10では、モノカプリル酸デカグリセリンが用いられていることで、連続吐出が長時間安定しており、また、錠剤表面での良好な乾燥性を示し、搬送系での未乾燥インクの転写も生じなかった。また、1時間放置後の最初の印字においても初期ドットが不吐出になることなく、印字かすれは生じなかった。
【0075】
比較例1のインクジェットインクは、セルロース成分が入っているため、良好な印字品質を有するインクであったが、実施例のインクジェットインクと比較すると、連続吐出性や放置後の初期ドットの吐出性が劣っていた、
比較例2のインクジェットインクも比較例1と同様であった。ただし、エタノールが入っている分乾燥性が良好であったが、放置後の初期ドットの吐出性は、やはりカスレを生じた。
比較例4のインクジェットインクは、モノカプリル酸デカグリセリンを分散剤として使用することを検討したものであるが、十分な分散性を示さなかった。
また、実施例1〜10のモノカプリル酸デカグリセリンに代えて、モノミリスチン酸デカグリセリンを使用したものは(比較例、例示せず)、ノズルからの連続吐出性が安定せず、1時間放置後の最初の印字では初期ドットが吐出不良を起こし、印字かすれが生じた。また、錠剤での印字状態も良くなく、転写やこすれによる汚れが目立った。DODプリンタでの適性がなかった。
【0076】
〔実施例13〕
上記実施例1〜12において作製したインクジェットインクを、DOD型インクジェット装置に充填し、連続した印字を実施した。
使用したDOD型インクジェット装置は、インクジェットヘッドとインクタンク筐体との間及びインクジェットヘッド内にインク循環経路を有する(循環型DOD)。
このような循環機構を有するインクジェット装置を使用することにより、インクジェットヘッド内にインクの滞留や植物炭末色素の沈降がなくなり、長時間安定した吐出及び高精細な印字を得た。このインク循環経路には、加熱手段及び放熱手段が設けられており、このような温度調整機構を利用することにより、環境温度変化、また、稼働状況でのインク温度の変化をなくすことができ、安定した吐出及び高精細な印字を継続することができた。
【0077】
〔実施例14〕
上記実施例1〜12において作製したインクジェットインクを、循環型DODに充填し、連続した印字を実施した。
本実施例14では、インクジェットインクをインクジェットヘッドとインクタンク筐体との間で循環させる際に、循環インクの脱気や脱泡を行うようにした。
具体的には、循環経路に、カートリッジ状の中空糸繊維を使用した脱気機構、及び、多孔質部材を使用した脱泡機構を付した。
これにより、インク圧力変化による気泡の発生、インクの流動に伴う振動や、外部からの振動による泡の発生があった場合にも、当該脱気機構及び消泡機構によりインクジェットインク中の気体や気泡を除去することができ、高速での印字を安定に継続できた。
【0078】
〔実施例15〕
上記実施例1〜12において作製したインクジェットインクを用い、インクジェット装置で印字対象物へ印字するために、循環型DODのインクジェットヘッドを2台設置した。
インクジェット装置が稼働し、上記2台の内、一方のインクジェットヘッドが印字対象物へ印字を行っている間、他方のインクジェットヘッドをメンテステーションに待機させ、待機中に、プリカーサ、フラッシング、ワイピングを一定間隔で実施した。
そして、2台のインクジェットヘッドの内、印字に用いるインクジェットヘッドと、メンテナンスステーションに待機させるインクジェットヘッドとを、所定の時間ごとに変更することで、さらに、長時間安定した吐出及び印字を継続することができた。
また、印字の精度、印字品質共に良好であった。
【0079】
〔実施例16〕
上記実施例1〜12において作製したインクジェットインクを、DOD型インクジェット装置に充填し、連続した印字を実施した。
使用したDOD型インクジェット装置は、インクジェットヘッドとインクタンク筐体との間及びインクジェットヘッド内にインク循環経路を有する(循環型DOD)。
このような循環機構のインク流路部に、深紫外LEDによる殺菌機構を設けインク循環での一般生菌類の殺菌をおこなった。
このインク循環経路に殺菌機構を設けることで、殺菌剤を使用せずとも、菌の繁殖を防ぐことができ、経口するインクの衛生性が確保されるようになった。