特許第6120947号(P6120947)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6120947電磁ビーム用散乱層を作製する方法および電磁ビームを散乱するための散乱層
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6120947
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】電磁ビーム用散乱層を作製する方法および電磁ビームを散乱するための散乱層
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/02 20060101AFI20170417BHJP
   C03C 17/04 20060101ALI20170417BHJP
   C03C 17/34 20060101ALI20170417BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   H05B33/02
   C03C17/04 Z
   C03C17/34 Z
   H05B33/14 A
【請求項の数】15
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-507458(P2015-507458)
(86)(22)【出願日】2013年4月11日
(65)【公表番号】特表2015-517194(P2015-517194A)
(43)【公表日】2015年6月18日
(86)【国際出願番号】EP2013057633
(87)【国際公開番号】WO2013160120
(87)【国際公開日】20131031
【審査請求日】2014年11月19日
(31)【優先権主張番号】102012206955.0
(32)【優先日】2012年4月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514272140
【氏名又は名称】オスラム オーエルイーディー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】OSRAM OLED GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル シュテフェン ゼッツ
(72)【発明者】
【氏名】アンゲラ エーバーハート
(72)【発明者】
【氏名】マンフレート ダイゼンホーファー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーナ ヴィレ
【審査官】 濱野 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−194204(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/017035(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0153972(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/116531(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0001159(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/060916(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0230667(US,A1)
【文献】 特表2013−539158(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0114269(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/046156(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0194064(US,A1)
【文献】 特表2008−503064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/02
C03C 17/04
C03C 17/34
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁ビーム用散乱層(106)を作製する方法において、
該方法は、
・ 電子素子の支持体(102,104)上に散乱中心体(306)を載置するステップと、
・ 前記散乱中心体(306)上にガラス(312)を載置するステップと、
・ 前記ガラス(312)を液状化して、液状化したガラス(312)の一部を前記散乱中心体(306)の間に流れ込ませて前記支持体(102,104)の表面(302、404)に到達させるステップであって、前記液状化が、前記液状化したガラス(312)の一部をなお前記散乱中心体(306)の上方に残存させ、かつ、前記散乱中心体(306,410)の体積密度を、前記支持体(102,104)の前記表面(302,404)から減少させるように行われるステップとを有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記散乱中心体(306)は、約0.1μmから約3μmまでの平均粒径を有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、
前記散乱中心体(306)上にガラス(312)を載置する前記ステップは、
前記散乱中心体(306)が、前記支持体(102,104)上に、約0.1μmから約10μmまでの厚さを有する層(304)を形成するように載置されることを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法において、
前記ガラス(312)は、約1.7よりも大きい屈折率を有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法において、
前記散乱中心体(306)上または当該散乱中心体(306)の上方における前記ガラス(312)は、電磁ビーム用前記散乱層(106)上に形成される、前記電子素子の複数の層を有する層積層体の、層厚で重み付けした屈折率よりも大きいかまたはほぼ等しい屈折率を有する物質または物質混合物からなる、
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法において、
前記ガラス(312)を硬化した後、前記散乱層(106)は、前記ガラス(312)の屈折率と、前記散乱中心体(306)の屈折率との間に約0.05よりも大きな屈折率の差分を有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれ1項に記載の方法において、
ソーダ石灰ガラスを支持体(102)として使用する場合、前記ガラス粉末(312)は最大で約600℃までの温度においてガラス化する、
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法において、
前記ガラス(312)を液状化した後に
前記支持体(102,104)上に約1μmから約40μmの厚さで前記散乱層(106)を被着する、
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法において、
前記支持体(102,104)上にまたは当該支持体(102,104)の上方に散乱中心体懸濁液ないしは散乱中心体ペーストからなる前記散乱中心体(306)を被着する、
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
前記支持体(102,104)上または当該支持体(102,104)の上方で、気化性の構成成分を用いて前記散乱中心体懸濁液を乾燥する、
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法において、
粒子(312)の前記ガラス(312)を、ガラス粉末(312)として前記散乱中心体に被着する、
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、
前記ガラス粒子(312)は、約0.1μmから約30μmまでの直径を有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項13】
光学素子において、
該光学素子は、
支持体(102,104)および散乱層(106)を有しており、
該散乱層(106)は、
・ マトリクス(408)と、当該マトリクス(408)内に埋め込まれかつ前記マトリクス(408)よりも屈折率の高いまたは屈折率の低い第1のタイプの少なくとも1つの光学的散乱中心体(306,410)とを有しており、
・ 前記散乱層(106)と前記支持体(102,104)との前記境界面(404)は、0%より大きい前記マトリクス(408)の体積密度を有しており、
前記散乱層(106)の前記表面(402)が、マトリクスを有しない散乱中心体の最上部の層の粗度より小さい粗度を有するようになるように、前記散乱層(106)の前記表面(402)は、100%の前記マトリクス(408)の体積密度を有しており、
・ 前記散乱層(106)の前記マトリクス(408)は、前記支持体(102,104)の前記表面(302,404)から前記散乱層(106)の前記表面(402)までに至る隙間のない、つながった少なくとも1つの結合体を有しており、
・ 少なくとも1つのタイプの散乱中心体(306,410)の前記体積密度は、前記支持体(102,104)の前記表面(302,404)から減少している、
ことを特徴とする光学素子。
【請求項14】
光学素子において、
該光学素子は、
支持体(102,104)および散乱層(106)を有しており、
該散乱層(106)は、
・ マトリクス(408)と、当該マトリクス(408)内に埋め込まれかつ前記マトリクス(408)よりも屈折率の高いまたは屈折率の低い第1のタイプの少なくとも1つの光学的散乱中心体(306,410)とを有しており、
・ 前記散乱層(106)と前記支持体(102,104)との前記境界面(404)は、0%より大きい前記マトリクス(408)の体積密度を有しており、
前記散乱層(106)の前記表面(402)が、10nm未満の平方根(RMS)の粗度を有するように、前記散乱層(106)の前記表面(402)は、100%の前記マトリクス(408)の体積密度を有しており、
・ 前記散乱層(106)の前記マトリクス(408)は、前記支持体(102,104)の前記表面(302、404)から前記散乱層(106)の前記表面(402)までに至る隙間のない、つながった少なくとも1つの結合体を有しており、
・ 少なくとも1つのタイプの散乱中心体(306,410)の前記体積密度は、前記支持体(102,104)の前記表面(302,404)から減少している、
ことを特徴とする光学素子。
【請求項15】
請求項13または14に記載された光学素子を有し、前記散乱層(106)上または上方に形成される第1の電極(110)を更に有する、有機発光ダイオード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明では種々異なる実施形態において、電磁ビーム用散乱層を作製する方法および電磁ビームを散乱するための散乱層を提供する。
【0002】
支持体上の有機発光ダイオード(OLED organic light emitting diode)は、第1電極と第2電極との間に有機機能層構造体を有しており、上記の第1電極は、支持体に接触接続しており、第2電極上またはその上方にはカプセリング層をデポジットすることができる。上記の電極間で電流が流れることにより、有機機能層システム内で電磁ビームが形成される。この電磁ビームは、構成素子内の全反射により、一般的には技術的な補助手段がなければ、20%未満しかOLEDから出力結合することができない。
【0003】
上記のOLEDにおける内部的な全反射は、散乱層を使用することにより、例えば、上記の第1電極と支持体との間の散乱層によって低減することができる。これにより、形成される電磁ビームのより多くの部分、例えば光を出力することができる。
【0004】
従来公知の1つの散乱層では、別の屈折率を有する散乱中心体を埋め込んだ有機マトリクスが使用される(WO 02/37580 A1)。しかしながら有機散乱層は、水および/または酸素と接触すると経年変化ないしは劣化し、これによってOLEDの安定性が低減されてしまうことがある。有機散乱層の別の欠点は、その屈折率が小さいことである(n≒1.475)。有機機能層構造体は多くの場合約1.7の屈折率を有しているため、上記の有機散乱層の屈折率が小さいことにより、上記の散乱層と第1電極との境界面における全反射の上記の判定基準に対し、入射角は中程度になるのである。
【0005】
さらに従来では、散乱層は、散乱中心体が埋め込まれた高屈折のガラスはんだから構成される。この散乱中心体の数密度は従来、内側から外側に向かって減少する(EP 2 178 343 A1,US 2010/0187987 A1,WO 2011/046190 A1)かまたは層断面において均一である。この層断面は、例えばガラスはんだのようなマトリクス材と散乱中心体とからなるペーストないしは懸濁液から構成される層を作製する従来公知の方法から得られるものである。しかしながらこの散乱層の粗度または散乱中心体の形状は、散乱層表面におけるスパイクの形成に結び付き得るのである。散乱中心体として散乱粒子をする際には、散乱層表面において、ガラスによって完全に包囲されていない散乱粒子もスパイクを形成することがある。スパイクとは、縦横比の大きい局所的な粗面部のことである。殊にOLEDを薄く構成する場合、スパイクは、第1電極と第2電極との短絡に結び付き得る。さらにOLEDを作製する際、散乱層上または散乱層の上方において、散乱層のスパイクの直ぐ近くの周囲に、例えば第1電極または有機機能層のような層に局所的な歪みまたは網状組織分解が発生し得る。上記の構成素子上に薄膜カプセリングを被着する場合、上記のスパイクにより、この薄膜カプセリングが局所的に密になっておらず、この構成素子の劣化に結び付き得るという危険性が生じるのである。
【0006】
例えば粗度が少ないまたは所定のウェービネスなどの表面特性は、従来、付加的に被着されるガラス層によって調整される(EP 2 278 852 A1,WO 2010/084922,WO 2010/084923)。これにより、ガラスによって完全に包囲されていない散乱粒子が上の散乱層表面上に存在するという危険性が低減される。しかしながらこの付加的な層には多くの場合に付加的な温度処理ステップが必要であり、これによってプロセスの遂行にかかる時間が長くなってしまうのである。
【0007】
本発明では種々異なる実施形態において、ただ1つの温度処理ステップにより、調整可能な散乱断面積および平坦な表面を有する散乱層を作製できるようにする方法が提供される。
【0008】
この明細書の枠内において、有機物質とは、各凝集状態を無視して、化学的に一定な形態で存在し、かつ、特徴的な物理的および化学的に特徴によって特徴付けられる炭素化合物のことと理解することができる。さらにこの明細書の枠内において無機材料とは、各凝集状態を無視して、化学的に一定の形態で存在し、かつ、特徴的な物理的および化学的に特徴によって特徴付けられる、炭素を含まない化合物または簡単な炭素化合物のことと理解することができる。この明細書の枠内において、有機無機物(ハイブリッド物質)とは、各凝集状態を無視して、化学的に一定の形態で存在し、かつ、特徴的な物理的および化学的に特徴によって特徴付けられる化合物であって、炭素を含有するおよび炭素を含有しない化合物部分を有する化合物のことと理解することができる。この明細書の枠内において「物質」という概念には、上で挙げた物質、例えば有機物、無機物、および/またはハイブリッド物が含まれる。さらにこの明細書の枠内において混合物質とは、相異なる2つまたはそれ以上の物質から構成される構成部分からなるものであり、その構成部分が極めて細かく分散されているもののことと理解することができる。物質クラスとは、1つまたは複数の有機物質、1つまたは複数の無機物質または1つまたは複数のハイブリッド物質からなる物質混合物または1つの物質と理解することができる。「材料」という概念は「物質」と概念の同義語として使用され得る。
【0009】
種々異なる実施形態において、電磁ビーム用散乱層を作製する方法が提供され、この方法は、支持体上に散乱中心体を載置するステップと、この散乱中心体にガラスを載置するステップと、このガラスを液状化して、この液状化したガラスの一部が、散乱中心体間に流れ込んで支持体の表面まで到達するが、この液状化したガラスの一部がなお散乱中心体の上方に残存しているようにするステップとを有する。
【0010】
ここでは上記の散乱中心の上方にある散乱層の1部分が、ガラスを有しない散乱中心体の最上部の層の粗度と同じ厚さまたはそれ以上の厚さを有するようにして、少なくとも1つの平坦な表面が形成されるようにする。すなわち、この表面は、わずかなRMS(root mean square 二乗平均)粗度を有し、この粗度は、例えば10nm未満である。上記の散乱中心体の最上部の層の粗度は、散乱中心体の実際のサイズに依存する。すなわち、上記の支持体に平行な面における散乱中心体密度および平均粒径だけに依存するのではない。
【0011】
この方法にとって重要であるのは、上記の散乱中心体を載置した後にガラスを液状化することである。これにより、散乱層における散乱中心体の分布状態を調整することができ、また、例えば温度プロセスのようなガラスのただ1つの液状化プロセスにおいて上記の散乱層の平坦な表面を形成することができる。ここでの意味において、ガラス粒子からないしはガラス粉末を有するペーストないしは懸濁液を作製することは液状化として理解すべきではない。なぜならばガラス粒子の形状は上記の懸濁液によって変化しないからである。
【0012】
上記の方法の1つの実施形態において上記の支持体はガラスを有することができ、例えば軟質ガラス、例えばソーダ石灰ガラスを有することができる。
【0013】
上記の方法の別の1つの実施形態では上記の支持体を機械的にフレキシブルに形成することできる。
【0014】
上記の方法の別の1つの実施形態では上記の支持体を平坦に形成することができる。
【0015】
上記の方法の別の1つの実施形態において上記の散乱中心体は、複数の無機物質からなる物質のグループから形成することができるかまたは1つの物質または物質混合物を有し得る。
【0016】
上記の散乱中心体は、例えばTiO2,CeO2,Bi23,Y23,ZrO2,SiO2,Al2,ZnO,SnO2もしくは発光物質からなる粒子から形成することができるか、または、無機物質もしくは無機物質混合物を有することができる。しかしながら散乱中心体は、ガラスマトリクスとは異なる屈折率を有しかつガラスマトリクスよりも高温で軟化する、すなわち軟化温度の高いガラス粒子として構成することも可能である。
【0017】
別の実施形態では、散乱中心体として発光物質を使用する場合には、上記の散乱層を同時に電磁ビームの波長変換を行うために構成することができる。上記の発光物質は、ストークス偏移を有し、入射する電磁ビームをより長い波長で放射することができる。
【0018】
上記の方法の別の実施形態において、上記の散乱中心体はアーチ形の表面を有する。
【0019】
上記の散乱中心体の幾何学形状は任意とすることが可能であり、球面状、非球面状、例えばプリズム状、楕円体状とすることができ、また中空または小型に構成することができる。
【0020】
上記の方法のさらに別の実施形態において、上記の散乱中心体は、約0.1μmから約3μmまでの平均粒径を有する。
【0021】
上記の方法の別の実施形態において、(全く異なるものも含めて)複数の散乱中心体の複数の層を上下に重ねて上記の支持体に載置することができる。
【0022】
上記の方法の別の実施形態において、上記の散乱中心体の個々の層は、平均粒径の異なる散乱中心体を有し得る。
【0023】
上記の方法の別の実施形態において、上記の散乱中心体の平均粒径は、上記の支持体の表面から減少し得る。
【0024】
上記の方法の別の実施形態において、上記の支持体に被着される散乱中心体は、約0.1μmから約10μmの厚さを有する層を構成し得る。
【0025】
上記の方法の別の実施形態では、上記の散乱中心体上においてガラスは、層断面における複数の別の層の屈折率よりも大きいかまたはほぼ等しい屈折率を有する物質または物質混合物からなる。これによって入射する電磁ビームは、散乱層の境界面において、いかなる入射角でも全反射しない。このことは、上記の構成素子から電磁ビームを出力結合するのに有利である。
【0026】
上記の方法の別の実施形態において、上記のガラスを硬化した後、散乱層は、ガラスの屈折率と、散乱中心体の屈折率との間に約0.05よりも大きな差分を有し得る。
【0027】
上記の方法の別の実施形態において、最大600℃までの温度においてガラス化し得るガラス粉末と組み合わせられたソーダ石灰ガラスからなる支持体が使用される。このこと意味するのは、ガラス粉末が平坦になるまでこれを軟化させることである。
【0028】
上記の方法の別の実施形態において、上記のガラスはガラス粉末として構成することができ、最大で約600℃までの温度においてガラス化することができる。すなわち、ガラス粉末は、これが平坦な表面を構成し得るように軟化されるのである。支持体の物質および物質混合物は、例えばソーダ石灰ガラスは、ガラス粉末のガラス化温度において熱的に安定するように、すなわち層断面が変化しないようにする。
【0029】
上記の方法の別の実施形態において、上記のガラスは、ガラスはんだを有するかまたは以下のガラス系のグループから形成することができる。すなわち、例えばPbOを含有する系:
PbO−B23
PbO−SiO2
PbO−B23−SiO2
PbO−B23−ZnO2
PbO−B23−Al23
から形成することができ、PbOを含有するガラスはんだはBi23を有し得る。または鉛フリーのガラス系、例えばBi23を含有する系、すなわち、
Bi23−B23
Bi23−B23−SiO2
Bi23−B23−ZnO,
Bi23−B23−ZnO−SiO2
から形成することができる。
【0030】
Bi23を含有する系は、別のガラス成分も有することが可能であり、例えばAl23,アルカリ土類酸化物、アルカリ酸化物、ZrO2,TiO2,HfO2,Nb25,Ta25,TeO2,WO3,MO3,Sb23,Ag2O,SnO2ならびに希土類酸化物を含むことができる。
【0031】
上記の方法の別の実施形態において、上記の散乱層は、約0.1μmから約40μmまでの、例えば約10μmから30μmまでの厚さで上記の支持体上に被着することができる。
【0032】
上記の方法の別の実施形態では、散乱中心体懸濁液ないしはペーストから得られる上記の散乱中心体を上記の支持体上またはその上方に被着することができる。
【0033】
懸濁液ないしはペーストから複数の層を作製する方法は、例えば、スクリーン印刷、ステンシル印刷、ドクターブレード処理とすることができ、またはスプレー法とすることも可能である。
【0034】
上記の方法の別の実施形態において、散乱中心体懸濁液ないしはペーストは、散乱中心体の他に、液状かつ気化性の構成成分および/または有機構成成分を有する。これらの構成成分は、種々異なる付加物、いわゆる添加物とすることが可能であり、例えば、溶媒、バインダ、例えばセルロース、セルロース誘導体、ニトロセルロース、セルロースアセテート、アクリレートとすることができ、それぞれの方法に対し、またその都度達成しようとする層厚に対して粘度を調整するため、散乱中心体ないしはガラス粒子に添加することができる。
【0035】
多くの場合に液状でありおよび/または揮発性であり得る有機添加物は、熱的に上記の層から除去することができる。すなわちこの層は熱によって乾燥させることができるのである。不揮発性の有機添加物は、熱分解によって除去することができる。この際には温度を上げることによって上記の乾燥ないしは熱分解を加速ないしは可能にすることができる。
【0036】
上記の方法の別の実施形態において、上記の支持体上またはこの支持体の上方の散乱中心体懸濁液ないしはペーストは、気化性の構成成分によって乾燥させることができる。
【0037】
上記の方法の別の実施形態において、上記の粒子のガラスをガラス粉末として上記の散乱中心体に被着することができる。
【0038】
上記の方法の別の実施形態において、懸濁液ないしはペースト中の上記のガラス粒子を上記の散乱中心体に被着することができる。
【0039】
上記の方法の別の実施形態において、上記のガラス粒子は約0.1μmから約30μmまでの直径を有する。
【0040】
上記の方法の別の実施形態において、上記のガラス粒子懸濁液ないしはガラス粒子ペースは、ガラス粒子ないはガラス粉末の他に、液状の気化性の成分および/または有機成分、例えばバインダを有し得る。
【0041】
上記の方法の別の実施形態において、上記のガラス粒子懸濁液ないしはガラス粒子ペーストおよび散乱中心体懸濁液ないしは散乱中心体ペーストは、互いに混合可能な液状の気化性成分および/または有機成分を有し得る。これにより、上記の乾燥される散乱中心体懸濁液ないしは散乱中心体ペーストないしは乾燥されるガラス層懸濁液ないしは散乱中心体ペースト内における相分離または付加物の沈殿を回避することができる。
【0042】
上記の方法の別の実施形態において、上記のガラス粒子懸濁液ないしは散乱中心体ペーストは、散乱中心体上またはその上方において、気化性の成分を用いて乾燥させることができる。
【0043】
上記の方法の別の実施形態では、温度を上昇させることにより、上記の乾燥される散乱中心体層から、ならびに、乾燥されるガラス粉末層から実質的に完全に上記の有機構成成分(バインダ)を除去することができる。
【0044】
上記の方法の別の実施形態では、上記の乾燥の第1の温度よりも格段に高い第2の値の温度まで温度を上昇させることにより、上記のガラスないしはガラス粉末を軟化させて、これが流動できるようにする、例えばこれを液状にすることできる。
【0045】
上記のガラス粉末層を液状化ないしはガラス化するための第2の温度の最大値は、上記の支持体に依存し得る。温度領域(温度および時間)は、上記の支持体が変形しないが、ガラス粉末層のガラスはんだがすでに所定の粘度を有して、これが滑らかに移動する、すなわち流れることができ、極めて平坦なガラスの表面が形成できるように選択することができる。
【0046】
上記のガラス粉末層のガラスは、第2の温度、すなわちガラス化温度を有することができる。このガラス化温度は、例えば上記の支持体の、例えば支持体ガラスの変態点以下の温度であり、(支持体の粘度はη=1014.5dPa・s)であり、支持体ガラスの軟化温度において最大(支持体の粘度はη=107.6dPa・s)であり、例えば、上記の軟化温度以下であり、かつ、おおよそ歪点にある(支持体の粘度はη=1013.0dPa・s)。
【0047】
上記の方法の別の実施形態において、ソーダ石灰ガラスを支持体として使用する場合、上記のガラス粉末は、最大で約600℃までの温度においてガラス化することが可能である。
【0048】
上記の方法の別の実施形態において、上記の散乱中心体上またはその上にあるガラスは、層断面における複数の別の層の、層厚で重み付けした屈折率よりも大きいかまたはほぼ等しい屈折率を有する物質または物質混合物から構成することができる。
【0049】
層厚で重み付けした屈折率とは、層厚のそれぞれの割合で重み付けした屈折率の平均値のことである。
【0050】
上記の方法の別の実施形態では、上記の散乱中心体間の液状化したガラスにより、散乱中心体の上方に液状化したガラスを有する、隙間のなくつながった少なくとも1つのガラス結合体を形成することができる。
【0051】
上記の方法の別の実施形態において、上記の支持体は、ソーダ石灰ガラスを有するかまたはソーダ石灰ガラスから形成することができ、ガラス粉末ないしはガラス粉末層をガラス化するための温度の値は最大で約600℃にする。
【0052】
上記の方法の別の実施形態において、上記の散乱中心体の上方の液状化したガラスの表面は、硬化後、局所的に加熱することにより、再度付加的に平坦化することができる。
【0053】
上記の方法の別の実施形態において、上記の局所的な加熱は、プラズマまたはレーザビームによって形成することできる。
【0054】
上記の方法の別の実施形態において、上記の散乱層は、有機発光ダイオードの層断面の一部として形成することができる。
【0055】
種々異なる実施例において、光学素子が提供され、この光学素子は、例えば軟質ガラスである支持体および散乱層を有しており、この散乱層は、マトリクスと、このマトリクスに埋め込まれかつこのマトリクスよりも屈折率の高いまたは低い第1のタイプの少なくとも1つの光学的散乱中心体とを有しており、上記の支持体と散乱層との境界面は、0%より大きいマトリクスの体積密度を有しており、上記の散乱層の表面は、100%のマトリクスの体積密度を有しており、上記の散乱層のマトリクスは、支持体の表面から散乱層の表面までに至る隙間のない、つながった少なくとも1つの結合体を有しており、少なくとも1つのタイプの散乱中心体の体積密度は、支持体の表面から減少している。
【0056】
1つの実施形態において、上記の散乱中心体の屈折率と、マトリクスの屈折率との差分は、少なくとも約0.05を有し得る。
【0057】
別の実施形態において、上記のマトリクスは、約1.5よりも大きな屈折率を有し得る。
【0058】
別の実施形態において、上記のマトリクスは、非晶質に形成することができる。
【0059】
別の実施形態において、上記のマトリクスは、以下のガラス系からなる物質混合物または物質を含むガラスはんだから形成するかまたはガラスはんだを有することでき、このガラス系は、例えば、
PbO−B23
PbO−SiO2
PbO−B23−SiO2
PbO−B23−ZnO2
PbO−B23−Al23
であり、PbOを含有するガラスはんだはBi23を有し得る。または上記のガラス系は、鉛フリーのガラス系、例えばBi23を含有する系、すなわち、
Bi23−B23
Bi23−B23−SiO2
Bi23−B23−ZnO,
Bi23−B23−ZnO−SiO2
である。
【0060】
Bi23を含有する系は、別のガラス成分も有することが可能であり、例えばAl23,アルカリ土類酸化物、アルカリ酸化物、ZrO2,TiO2,HfO2,Nb25,Ta25,TeO2,WO3,MO3,Sb23,Ag2O,SnO2ならびに希土類酸化物を含むことができる。
【0061】
別の実施形態において、上記の第1のタイプの散乱中心体は、上記のマトリクスおよび/または物質または物質混合物におけるキャビティとして、化学量論的化合物を有し得るか、以下の複数の物質からなるグループから形成することができ、すなわち、上記のガラスマトリクスとは異なる屈折率を有しかつガラスマトリクスよりも高い温度で軟化するガラス粒子または発光物質またはTiO2,CeO2,Bi23,Y23,ZrO2,SiO2,Al2,ZnO,SnO2からから形成することができ、または金属製のナノ粒子から形成することも可能である。
【0062】
別の実施形態において、上記の第1の散乱中心体の平均粒径は、支持体の表面から減少し得る。
【0063】
別の実施形態において、上記の散乱層は、少なくとも1μmから約100μmまでの、有利に10〜30μmの厚さを有し得る。
【0064】
別の実施形態において、上記の散乱層は、発光ダイオードにおける1つの層として作製することができる。
【0065】
本発明の実施例を図面に示し、以下で詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】種々異なる実施例による有機発光ダイオードの概略断面図である。
図2】種々異なる実施例による散乱層作製方法の流れ図である。
図3】種々異なる実施例による散乱層作製方法における散乱層の概略断面図である。
図4】種々異なる実施例による散乱層作製方法における散乱層の別の概略断面図である。
【0067】
以下の詳細な説明では、添付の複数の図面を参照する。これらの図面は、明細書の一部であり、またこの図面には説明のために、本発明を実施することができる特定の複数の実施形態が示されている。これに関して、例えば「上」、「下」、「前」、「後」、「前方」、「後方」などの方向を示す語句は、説明している図面の方向を基準にして使用している。実施形態の構成部材は、相異なる複数の方向において配置することができるため、上記の方向を示す語句は、説明のためのものであり、まったく制限的なものではない。本発明の保護範囲を逸脱することなく、別の複数の実施形態を利用でき、また構造的または論理的な変更を行えることは当然である。ここで説明している種々異なる例示的な実施形態は、特に断らない限り、互いに組み合わせられることは当然である。したがって以下の詳細な説明は、制限的な意味で捉えるべきではなく、また本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって定められるのである。
【0068】
この説明の範囲内において、「接合されている」、「接続されている」ならびに「結合されている」という用語はそれぞれ、直接的な接合も間接的な接合も、直接的な接続も間接的な接続も、ならびに直接的な結合も間接的な結合も共に表すために使用されている。複数の図面において同じまたは類似の部材には、理に叶っているのであれば、同じ参照符号が付されている。
【0069】
図1には、種々異なる実施例による有機発光ダイオード100の概略断面図が示されている。
【0070】
有機発光ダイオード100の形態のこの発光素子100は、支持体102を有し得る。支持体102は、例えば電子素子または層、例えば発光素子用の支持部材として使用可能である。例えば、支持体102は、ガラス(軟質ガラスまたは硬質ガラス、有利には軟質ガラス)または石英ガラスとすることが可能である。さらに支持体102は、プラスチックシート、または、1つまたは複数のプラスチックシートを備えた1つの積層体を有し得る。支持体102は、透光性に実施することができ、または透明に実施することも可能である。
【0071】
「透光性」ないしは「透光性層」という用語は、種々異なる実施例において、1つの層が、例えば発光素子によって形成した、例えば1つのまたは複数の波長領域の光に対して、例えば、(例えば380nmから780nmの波長領域の少なくとも部分領域における)可視光の波長領域における光に対して透過性を有することと理解することができる。例えば、種々異なる実施例において「透光性の層」という用語は実質的に、1つの構造体(例えば1つの層)に入力結合される全光量がこの構造体(例えば層)からも出力結合され、この光の一部が散乱され得ることと理解することができる。
【0072】
「透明」または「透明層」という用語は、種々異なる実施例において、(例えば少なくとも380nmから780nmまでの波長領域の部分領域の)光に対して透過であり、1つの構造体において(例えば1つの層)に入力結合される光が、実質的に散乱されるかまたは光変換されることなくこの構造体(例えば層)からも出力結合されることと理解することができる。したがって種々異なる実施例において「透明」は、「透光性」の特別な場合とみなすことができるのである。
【0073】
例えば単色のまたは放射スペクトルが限定された発光性の電子素子を提供する場合、上記の透光性層構造体が少なくとも、所望の単色光の波長領域の部分領域においてまたは上記の限定された放射スペクトルに対して透光性であれば十分である。
【0074】
種々異なる実施例において上記の有機発光ダイオード100(または上で説明した実施例または以下でさらに説明する実施例による発光素子も)いわゆるトップエミッタおよびボトムエミッタとすることが可能である。トップおよびボトムエミッタは、例えば透明有機発光ダイオードのような、光学的に透明な素子と称することも可能である。
【0075】
種々異なる実施例において支持体102上または支持体の上方にはオプションでバリア層104を配置することができる。バリア層104は、以下の1つまたは複数の材料を有するかこれらの材料から構成することができる。すなわち、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ランタン、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、インジウムすず酸化物、インジウム亜鉛酸化物、アルミニウムをドーピングした酸化亜鉛ならびにこれらの混合物および合金を有するかまたはこれらの材料から構成することができる。さらにバリア層104は、種々異なる実施形態において、約0.1nm(1原子層)から約5000nmの、例えば約10nmから約200nmまでの範囲の、例えば約40nmの層厚を有し得る。
【0076】
種々異なる実施例において、バリア層104上またはその上方に(または、バリア層104がない場合には、支持体102上またはその上方に)散乱層106を被着することができる。
【0077】
種々異なる実施例において散乱層106の厚さは約1μmから約40μmであり、例えば約1μmから約30μm、例えば3μmから約20μm、例えば5μmから約15μmとすることが可能である。散乱層106のその他の詳細は、図2図3図4および図5の説明から得ることができる。
【0078】
種々異なる実施例において散乱層104上またはその上方には(例えば第1電極層110の形態の)第1電極110を被着することができる。(以下では下側電極110とも称される)第1電極110は、導電性材料から形成するか導電性材料とし得る。この導電性材料は、例えば、金属または透明導電性酸化物(TCO transparent conductive oxide)からなるか、または同じ金属ないしは異なる金属および/または同じTCOまたは異なるTCOからなる複数の層の層積層体からなる。透明導電性酸化物は、透明かつ導電性の材料、例えば金属酸化物であり、例えば、酸化亜鉛、酸化すず、酸化カドミウム、酸化チタン、酸化インジウムまたはインジウムすず酸化物(ITO)である。例えばZnO,SnO2またはIn23のような二元の金属酸化物化合物の他に、例えばAlZnO,Zn2SnO4,CdSnO3,ZnSnO3,MgIn24,GaInO3,Zn2In25またはIn4Sn312または種々異なる透明導電性酸化物の混合物が上記のTCOのグループに所属し、種々異なる実施例において使用可能である。さらに上記のTCOは必ずしも化学量論的組成に相応する必要はなく、さらにpドーピングまたはnドーピングすることができる。
【0079】
種々異なる実施例において、第1電極110は、例えばAg,Pt,Au,Mg,Al,Ba,In,Ag,Au,Mg,Ca,SmまたはLiのような金属を有することができ、ならびにこれらの材料の化合物、組み合わせまたは合金を有し得る。
【0080】
種々異なる実施例において、第1電極110は、1つのTCOの層上の1つの金属の層の組み合わせまたはその逆によって形成することができる。1つの例は、ITO(Indium Tin Oxide)層に被着される銀層(Ag over ITO)であるかまたはITO−Ag−ITOマルチ層である。
【0081】
種々異なる実施例において、第1電極110は、上で述べた材料とは択一的にまたはこれらの材料に加えて以下の材料のうちの1つまたは複数の材料を含むことができる。すなわち、例えばAgからなる金属製のナノワイヤおよびナノ粒子からなる網状組織、炭素ナノチューブからなる網状組織、グラフェン粒子およびグラフェン層、半導体ナノワイヤからなる網状組織のうちの1つまたは複数の材料を含むことができるのである。
【0082】
さらに第1電極110は、導電性ポリマまたは遷移金属酸化物または透明導電性酸化物を有し得る。
【0083】
種々異なる実施例において、第1電極110および支持体101は透光性または透明に形成することできる。第1電極110が金属から形成される場合、第1電極110は、例えば、約25nm以下の層厚を、例えば約20nm以下の層厚を、例えば約18nm以下の層厚を有し得る。さらに第1電極110は、例えば約10nm以上の層厚を、例えば約15nm以上の層厚を有し得る。種々異なる実施例において、第1電極110は、約10nmから約25nmの範囲の層厚を、例えば約10nmから約18nmの範囲の層厚を、例えば約15nmから約18nmの範囲の層厚を有し得る。
【0084】
さらに第1電極110が透明導電性酸化物(TCO)から形成される場合、第1電極110は、例えば約50nmから約500nmの範囲の層厚を、例えば約75nmから約250nmの範囲の層厚を、例えば約100nmから約150nmの範囲の層厚を有する。
【0085】
さらに第1電極110が、導電性ポリマと組み合わせることの可能な、例えばAgからなる金属製ナノワイヤの網状組織から形成されるか、導電性ポリマと組み合わせることの可能な炭素ナノチューブからなる網状組織から形成されるか、またはグラフェン層および合成物から形成される場合、第1電極110は、例えば、約1nmから約500nmの範囲の層厚を、例えば約10nmから約400nmの範囲の層厚を、例えば約40nmから約250nmの範囲の層厚を有する。
【0086】
第1電極110はアノードとして、すなわち正孔注入電極として形成することができ、またはカソードとして、すなわち電子注入電極として形成することができる。
【0087】
第1電極110は、第1電気端子を有することができ、この端子には、(例えば電流源または電圧源である(図示しない)エネルギ源によって供給される)第1電位を印加することできる。択一的には第1電位を支持体102に印加することができるかまたはこれが印加されており、この場合にはこの支持体を介して間接的に第1電極110に第1電位を供給できるかまたはこれが供給されている。上記の第1電位は、例えば、アース電位またはあらかじめ設定した別の基準電位とすることができる。
【0088】
さらに発光素子100の電気的にアクティブ領域108は、有機エレクトロルミネッセンス層構造体112ないしは有機機能層構造体112を有することができ、これらは第1電極110の上またはその上方に被着されているかまたは被着される。
【0089】
有機エレクトロルミネッセンス層構造体112には、例えば蛍光性および/またはリン光性のエミッタを有する1つまたは複数のエミッタ層118が含まれており、ならびに、1つまたは複数の(ホールトランスポート層120とも称される)正孔輸送層120が含まれている。種々異なる実施例では択一的または付加的に1つまたは複数の(電子トランスポート層122とも称される)電子輸送層122を設けることができる。
【0090】
種々異なる実施例による発光素子100において発光層118に使用可能なエミッタ材料の例には、有機化合物または有機金属化合物が含まれており、ポリフルオレン、ポリチオフェンおよびポリフェニレン(例えば2−または2,5−置換ポリpペニレンビニレン)の誘導体、ならびに、金属錯体、例えばイリジウム錯体、例えば青色リン光性FIrPic(ビス(3,5−ジフルオロ−2−(2−ピリジル)フェニル(2−カルボキシルピリジル)−イリジウムIII)、緑色リン光性のIR(ppy)3の(トリス(2−フェニルピリジン)イリジウムIII)、赤色のリン光性Ru(dtb−bpy)3*2(PF6)(トリス[4,4'−ジ−t−ブチル−(2,2’)−ビピリジン]ルテニウム(III)錯体)ならびに青色の蛍光性のDPAVBi(4,4−ビス[4−(ジ−p−トリラミノ)スチリル]ビフェニル)、緑色の蛍光性のTTPA(9,10−ビス[N,N−ジ−(p−トリル)−アミノ]アントラセン)および赤色の蛍光性のDCM2(4−ジシアノメチレン)−2−メチル−6−ジュロリジル−9−エニル−4H−ピラン)などが非ポリマエミッタとして含まれている。このような非ポリマエミッタは、例えば、熱蒸着によってデポジット可能である。さらに殊に、例えばスピンコーティングなどの湿式化学法によってデポジット可能なポリマエミッタを使用可能である。
【0091】
上記のエミッタ材料は、適当な方法でマトリクス材料に埋め込むことができる。
【0092】
別の実施例では別の適切なエミッタ材料も設けられることを指摘しておく。
【0093】
発光素子100のエミッタ層118のエミッタ材料は、例えば、発光素子100が白色光を放射するように選択することができる。エミッタ層118は種々異なる色(例えば青色および黄色、または、青色、緑色および赤色)を放射するエミッタ材料を有することができ、択一的にはエミッタ層118を複数の部分層から構成することも可能であり、青色の蛍光性のエミッタ層118または青色のリン光性のエミッタ層118、緑色のリン光性エミッタ層118および赤色のリン光性エミッタ層118の複数の部分層から構成することも可能である。上記の種々異なる色を混ぜることにより、白色の色印象を有する光を結果的に放射することができる。択一的には、上記の層によって形成される1次発光のビーム路に変換材料を配置することも可能であり、この変換材料は、この1次ビームを少なくとも部分的に吸収して別の波長の2次ビームを放射し、これによって(まだ白色でない)1次ビームから、1次ビームと2次ビームとを組み合わせることにより、白色の色印象が得られるのである。
【0094】
有機エレクトロルミネッセンス層構造体112は一般的に1つまたは複数のエレクトロルミネッセンス層を有し得る。この1つまたは複数のエレクトロルミネッセンス層は、有機ポリマ、有機オリゴマ、有機モノマ、非重合の有機小分子(small molecule)またはこれらの材料の組み合わせを有し得る。例えば有機エレクトロルミネッセンス層構造体112は、1つまたは複数のエレクトロルミネッセンス層を有することができ、これは正孔輸送層120として実施されているため、例えばOLEDの場合には電界発光性層または電界発光性領域への効率的な正孔注入が可能になる。択一的には種々異なる実施例において有機エレクトロルミネッセンス層構造体112は、1つまたは複数の機能層を有することができ、この機能層は、電子輸送層122として実施されているため、例えばOLEDにおいて電界発光性層または電界発光性領域への効率的な電子注入が可能になる。正孔輸送層120用の材料として、例えば、三元アミン、カルバゾール誘導体、導電性ポリアニリンまたはポリエチレンジオキシチオフェンを使用可能である。種々異なる実施例において上記の1つまたは複数のエレクトロルミネッセンス層は、電界発光性層実施することができる。
【0095】
種々異なる実施例において正孔輸送層120は、第1電極110上またはその上方に例えばデポジットすることによって載置することができ、エミッタ層118は、正孔輸送層120上またはその上方に、例えばデポジットすることによって載置することができる。種々異なる実施例において電子輸送層122は、エミッタ層118の上またはその上方に、例えばデポジットすることによって載置することができる。
【0096】
種々異なる実施例において上記の有機エレクトロルミネッセンス層構造体112の層厚は、(すなわち例えば、正孔輸送層120,エミッタ層118および電子輸送層122の厚さの合計)は、最大で約1.5μmの、例えば最大で約1.2μmの、例えば最大で約1μmの、例えば最大で約800nmの、例えば最大で約500nmの、例えば最大で約400nmの、例えば最大で約300nmである。種々異なる実施例において、有機エレクトロルミネッセンス層構造体112は、例えば、直接上下に配置される複数の有機発光ダイオード(OLED)からなる積層体を有することができ、各OLEDは、例えば、最大で約1.5μmの、例えば最大で約1.2μmの、例えば最大で約1μmの、例えば最大で約800nmの、例えば最大で約500nmの、例えば最大で約400nmの、例えば最大で約300nmの層厚を有し得る。種々異なる実施例において、上記の有機エレクトロルミネッセンス層構造体112は、例えば、直接上下に配置される2つ、3つまたは4つのOLEDの積層体を有することができ、この場合には、例えば、上記の有機エレクトロルミネッセンス層構造体112は、最大で約3μmの層厚を有し得る。
【0097】
一般的に発光素子100はオプションで、例えば1つもしくは複数のエミッタ層118上もしくはその上方に、または、1つもしくは複数の電子輸送層122上もしくはその上方に配置される別の複数の有機機能層を有することができ、これらの有機機能層は、上記の機能をさらに改善し、ひいては発光素子100の効率をさらに改善するために使用される。
【0098】
有機エレクトロルミネッセンス層構造体112上もしくはその上方には、または、場合によっては1つもしくは複数の別の有機機能層上もしくはその上方には、(例えば第2電極層114の形態の)第2電極114を載置することができる。
【0099】
種々異なる実施例において第2電極114は、第1電極110と同じ材料を有するかまたは同じ材料から形成することができ、また種々異なる実施例において金属が殊に好適である。
【0100】
種々異なる実施例において、第2電極114(例えば金属製の第2電極114の場合)は、例えば、約50nm以下の層厚を、例えば約45nm以下の層厚を、例えば約40nm以下の層厚を、例えば約35nm以下の層厚を、例えば約30nm以下の層厚を、例えば約25nm以下の層厚を、例えば約20nm以下の層厚を、例えば約15nm以下の層厚を、例えば約10nm以下の層厚を有し得る。
【0101】
第2電極114は一般的に第1電極110と同じ手法で形成されるか形成することができ、またはこれとは異なる手法で形成することができる。第2電極114は種々異なる実施例において、第1電極110に関連して上で説明したのと同じ1つまたは複数の材料から、また対応する各層厚で形成することができる。種々異なる実施例において第1電極110および第2電極114は共に透光性または透明に形成される。これにより、図1に示した発光素子100はトップおよびボトムエミッタ(別の表現をすれば双方向に放射する発光素子100)とすることが可能である。
【0102】
第2電極114はアノードとして、すなわち正孔注入電極として形成することができるかまたはカソードとして、すなわち電子注入電極として形成することができる。
【0103】
第2電極114は第2電気端子を有することができ、この端子には、上記のエネルギ源から供給される(第1電位とは異なる)第2電位が印加可能である。第2電位は、例えば、第1電位に対する差分が、約1.5Vから約20Vの範囲の値に、例えば約2.5Vから約15Vの範囲の値に、例えば約3Vから約12Vの範囲の値になるような値を有し得る。
【0104】
第2電極114上またはその上方には、したがって電気的にアクティブな領域108上またはその上方にはオプションでさらに、カプセル部116、例えば、バリア薄層/薄層カプセル部116が形成されているかまたはこれを形成することが可能である。
【0105】
この明細書の枠内において、「バリア薄層」ないしは「バリア薄膜」116とは、例えば、化学的な汚染ないしは大気物質に対する、殊に水(湿気)および酸素に対するバリアを形成するのに適した層または層構造体のことである。言い換えると、バリア薄層116は、これに、水、酸素または溶媒などのOLEDに有害な物質が入り込めないようにするかまたは最大で極めてわずかな割合でしか入り込み得ないように形成されるのである。
【0106】
1つの実施形態によれば、バリア薄層116は、単独の層として(言い換えると個別層として)形成することができる。択一的な実施形態によれば、バリア薄層116は、上下に形成される複数の部分層を有し得る。言い換えると1つの実施形態によれば、バリア薄層116は層積層体(スタック)として形成することができるのである。バリア薄層116またはバリア薄層116の1つもしくは複数の部分層は、例えば、適当なデポジット法によって形成することができる。例えば、1つの実施形態においては原子層堆積法(ALD Atomic Layer Deposition)を用いて、例えばプラズマ強化原子層堆積法(PEALD Plasma Enhanced Atomic Layer Deposition)もしくはプラズマレス原子堆積法(PLALD Plasma Less Atomic Layer Deposition)を用いて、または、別の1つの実施形態においては化学気相成長法(CVD Chemical Vapor Deposition)を用いて、例えばプラズマ強化気相成長法(PECVD Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)もしくはプラズマレス化学気相成長法(PLCVD Plasma Less Chemical Vapor Deposition)を用いて、または、択一的には別の好適なデポジョン法を用いて形成される。
【0107】
原子層堆積法(ALD)を使用することにより、極めて薄い層をデポジットすることができる。殊に層厚が原子層範囲にある層をデポジットすることができる。
【0108】
1つの実施形態では、複数の部分層を有するバリア薄層116において、すべての部分層が原子層堆積法によって形成される。ALD層だけを有する積層体は、「ナノ積層体」とも称することができる。
【0109】
択一的な実施形態では、複数の部分層を有するバリア薄層116において、このバリア薄層116の1つまたは複数の部分層を、原子層堆積法とは別のデポジット法によって、例えば気相成長法によってデポジットすることができる。
【0110】
バリア薄層116は、1つの実施形態において約0.1nm(1原子層)から約1000nmの層厚を有することができ、例えば1つの実施形態では約10nmから約100nmの層厚を、例えば1つの実施形態では約40nmの層厚を有することができる。
【0111】
バリア薄層116が複数の部分層を有する1つの実施形態において、すべての部分層は同じ層厚を有し得る。別の実施形態において、バリア薄層116の個々の部分層の層厚は異なり得る。言い換えると、上記の複数の部分層の少なくとも1つは、これらの部分層の1つまたは複数とは異なる層厚を有し得るのである。
【0112】
上記のバリア薄層116、または、このバリア薄層116の個々の部分層は、1つの実施形態において、透光性または透明の層として形成することができる。言い換えると、バリア薄層116(またはバリア薄層116の個々の部分層)は、透光性または透明な材料(または透光性または透明である材料組み合わせ)から構成することができる。
【0113】
1つの実施形態によれば、バリア薄層116または(複数の部分層を有する層積層体の場合)バリア薄層116の複数の部分層の1つまたは複数は、以下の複数の材料のうちの1つを有するかまたはこのような材料から構成することができる。すなわち、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ランタン、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化インジウム、インジウムすず酸化物、インジウム亜鉛酸化物、アルミニウムをドーピングした酸化亜鉛、ならびにこれらの物質の混合物および合金から構成することができる。種々異なる実施例において、バリア薄層116または(複数の部分層を有する層積層体の場合)バリア薄層116の複数の部分層の1つまたは複数は、1つまたは複数の高屈折率の材料を有し得る。言い換えると、例えば少なくとも2の屈折率を有する、屈折率の高い1つまたは複数の材料を有し得るのである。
【0114】
バリア薄層16上またはその上方には接着剤および/または保護塗料124を設けることができ、これにより、例えばカバー126(例えばガラスカバー126)をバリア薄層116上に固定、例えば接着する。種々異なる実施例において、接着剤および/または保護塗料124からなる上記の透光性の層は、1μmよりも大きい層厚を、例えば数μmの層厚を有し得る。種々異なる実施例において上記の接着剤は、積層体接着剤を有するかそのようなものとすることが可能である。
【0115】
種々異なる実施例において上記の接着剤の層(接着層とも称する)には、さらに光散乱性粒子を埋め込むことができ、この光散乱粒子により、色相の歪みおよび出力結合効率をさらに改善させることができる。種々異なる実施例において、光散乱性粒子として、例えば誘電性散乱粒子を設けることができ、例えば酸化ケイ素(SiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化アルミニウムまたは酸化チタンのような、例えば金属酸化物の誘電性散乱粒子を設けることができる。上記の透光性層構造体のマトリクスの有効屈折率とは異なる屈折率を有しているであれば、例えば気泡、アクリラート、ガラス製の中空球のような別の粒子も好適になり得る。さらに金属製のナノ粒子または類似のものを光散乱性粒子として設けることが可能であり、この金属は、例えば、金、銀、鉄などである。
【0116】
種々異なる実施例において、第2電極114と、接着剤124および/または保護塗料124からなる層との間にさらに1つの(図示しない)電気絶縁層を被着するかまたはこれが被着されていることが可能である。この電気絶縁層は、例えばSiNであり、例えば約300nmから約1.5μmの範囲の層厚を、例えば約500nmから約1μmの範囲の層厚を有しており、これにより、例えば湿式化学プロセス中に電気的に不安定な材料が保護される。
【0117】
種々異なる実施例では、上記の接着剤それ自体が、カバー126の屈折率よりも小さい屈折率を有するようにすることができる。このような接着剤は、例えば、約1.3の屈折率を有するアクリレートのような低屈折率の接着剤とすることが可能である。さらに、接着剤積層体を形成する相異なる複数の接着剤を設けることができる。
【0118】
さらに指摘しておきたいのは、種々異なる実施例において、接着剤124を完全に省略することもできることであり、例えばガラス製のカバー126が、例えばプラズマ溶射によってバリア薄層116に被着される実施形態では接着剤124を省略可能である。
【0119】
種々異なる実施例において、カバー126および/または接着剤124は、(例えば633nmの波長において)1.55の屈折率を有し得る。
【0120】
さらに種々異なる実施例においては付加的に、1つまたは複数の反射防止層を(例を挙げれば、例えば薄層カプセル部116のようなカプセル部116と組み合わせて)発光素子100に設けることができる。
【0121】
図2には、種々異なる実施例にしたがって散乱層106を作製する方法の流れ図200が示されている。
【0122】
ここに示されているのは、支持体を準備するステップ202と、散乱中心体前駆体を載置するステップ204と、散乱中心体前駆体を乾燥するステップ206と、ガラス層前駆体を載置するステップ208と、ガラス層前駆体を乾燥するステップ210と、散乱中心層およびガラス層から不揮発性の有機構成成分を除去するステップ(脱バインディング)212と、ガラス層前駆体を液状化するステップ214ないしはガラス粉末層を液状化(ガラス化する)ステップ214と、ガラスを硬化するステップ216と、表面特性を設定するステップ218とであり、ここで表面特性を設定するステップ218はオプションとすることができる。
【0123】
例えば約1.5の屈折率を有するソーダ石灰ガラスのような支持体を準備するステップ202は、例を挙げれば、例えばSiO2であるバリア層104を載置するステップと、支持体102もしくはバリア層104の表面302を浄化するステップ、または、支持体102もしくはバリア層104の表面302における表面粗度もしくは化学基を調整するステップとを有し得る。
【0124】
支持体102を準備するステップ202の後、支持体102ないしはバリア層104の表面302に散乱中心体前駆体304を載置することができる。散乱中心体前駆体204を載置するステップは、例えば、散乱中心体306と、揮発性および不揮発性の有機構成成分とからなる懸濁液またはペーストを表面302に載置するステップを有し得る。
【0125】
制限的なものと見なすことのべきでない実施形態では、例えばKRONOS 2056(TiO2,d50=0.45μm)またはCR10(Al23,d50=0.45μm)のような酸化散乱粒子306からなるスクリーン印刷可能ペーストないしは懸濁液から、および、市販のスクリーン印刷剤(例えばエチルアセテート内のニトロセルロースまたはグリコールエーテル内のセルロース誘導体)から、例えば約30μmのウェット層厚を有する薄いスクリーン印刷層304または散乱中心体前駆体304を形成することができる。
【0126】
例えば懸濁液またはペーストにおける揮発性の溶媒を用いて散乱中心体前駆体304を載置した後、散乱中心体前駆体304の乾燥206が行われる。スクリーン印刷層304は、例えば、70℃の温度において3時間で乾燥させることができる。乾燥206中、スクリーン印刷層304の揮発性の構成成分が除去される。しかしながらスクリーン印刷層304はなお、バインダのような不揮発性の有機構成成分を有しており、このバインダは、散乱粒子を互いに結合しまた散乱粒子を支持体に結合し、これによって後続のプロセスステップに対して所定の機械的な安定性を与える。
【0127】
スクリーン印刷層304を乾燥206した後、例えばスクリーン印刷またはステンシル印刷によってガラス層前駆体310を被着する。この前駆体は、例えば、ホウ酸鉛ガラス粒子またはホウケイ酸鉛ガラス粒子からなる粒子を有し得るガラス粉末懸濁液またはガラス粉末ペーストを有する。このガラス粉末懸濁液またはガラス粉末ペーストにも同様に市販のスクリーン印刷剤(例えばエチルアセテート内のニトロセルロースまたはグリコールエーテル内のセルロース誘導体)が含まれている。ガラス粉末印刷層310は、例えば約30μmのウェット層厚を有し得る。ホウ酸鉛ガラス粒子またはホウケイ酸鉛ガラス粒子は、例えば、約1.7ないし約1.9の範囲の屈折率を有し得る。ホウ酸鉛ガラス粒子またはホウケイ酸鉛ガラス粒子は、例えば、D90<12μmおよびD50<3μmの粒径分布を有し得る。ホウ酸鉛ガラス粒子またはホウケイ酸鉛ガラス粒子の熱膨張率は、例えば、約50℃ないし約400℃の温度範囲に対して約7.5×10-6 l/Kを有することができ、ソーダ石灰ガラスを有する支持体の熱膨張率は、例えば約8.5〜9×10-6 l/Kである。
【0128】
ガラス層前駆体310の厚さは、ガラス層前駆体310におけるガラス312の全体体積が、散乱中心体306と、例えばバインダ、溶媒などの揮発性および不揮発性の有機物質の体積との間の空いた体積体よりも大きくなるように、または言い方を変えれば、散乱中心体前駆体304において、散乱中心体306間の中間空間308が占める体積よりも大きくなるようにすることができる。
【0129】
ガラス層前駆体310の載置ステップ208の後、上記の方法は、例えば70℃で3時間、ガラス層前駆体310を乾燥するステップ210を有し、これによって揮発性の構成成分を除去することができる。
【0130】
ガラス層前駆体310を乾燥するステップ210の後、不揮発性の有機構成成分は、乾燥したスクリーン印刷層304および乾燥したガラス層前駆体310において、不揮発性の有機構成成分の除去ステップ212によって熱的に除去することができ、これは、例えば熱分解によって行われる。上記のスクリーン印刷媒体は、上記のガラス粉末が軟らかくなる前に上記の脱バインダが終了するように選択する。使用される上記のホウケイ酸ガラスは、約500℃以上で軟化し始めるため、上で挙げた2つのバインダ・溶媒系はこのガラスに好適である。なぜならばこれらの系は、系に応じて約200℃から約400℃の間で焼成し得るからである。
【0131】
散乱中心体前駆体304およびガラス層前駆体310における不揮発性の有機構成成分を除去するステップ212は、散乱中心体前駆体304およびガラス層前駆体310における空いた容積体308を構成し得る。
【0132】
不揮発性の有機構成成分を除去するステップ212の後、ガラス層前駆体310の液状化ステップ212を行うことができる。
【0133】
ガラス粉末層310としての上記のホウケイ酸ガラスはんだでは、上記のガラス化は、約500℃以上の温度において行うことができる。約550℃の徐冷点を有する、支持体102としてのソーダ石灰ガラスの例では、支持体の変形を少なく保つかないしはこれを回避するため、加熱方法に応じ、上限温度は約600℃の値を有し得る。ガラス化の際には、ガラス層前駆体310ないしはガラス粒子312の粘度が低下する。これにより、ガラス層前駆体310ないしはガラス粒子312は、乾燥したスクリーン印刷層304の散乱中心体306間の空いた容積体308を占有することができる。このプロセスはガラス化とも称される。このガラス化が、支持体102ないしは支持体ガラス102の転移温度以下で行われる場合、ここに熱応力が組み込まれることはない。双方の結合相手、すなわち支持体102およびガラスはんだ312の熱膨張係数は、支持体312と散乱層106との間の大きな接合応力を回避し、これによって永続的な接合を保証するため、あまり大きく異ならないようにする。散乱層106は、バリア層と類似に作用し得るため、例えばガラスマトリクス312がアルカリを含有しない場合、バリア薄層104を省略することができる。
【0134】
上記のガラス化を用いれば、スクリーン印刷層304ないしは散乱中心体前駆体304の厚さおよびガラス層前駆体310の層厚についての厚さを、例えば約10μmの厚さに低減することができる。この実施形態を用いれば、光出力結合を格段に増大させることができる。液状化したガラスによって占有されない容積体308、いわゆるキャビティ410は、散乱中心体306に加えて、ガラスマトリクス408ないしはガラス層408における別の散乱中心体410を形成することができる。
【0135】
ガラス層前駆体214を液状化して散乱中心体306間の空間308に液状化したガラスが流れ込んだ後、例えば冷却により、例えば受動的冷却により、ガラス408の硬化ステップ216を行うことできる。ガラス408の硬化ステップ216により、散乱層106を形成することができる。
【0136】
散乱層106の硬化ステップ216の後、散乱層106の表面特性を調整するステップ216を、例えば研磨を、すなわち散乱層106の表面502の平滑化を、例えば局所的に温度を短時間上げることによって行うことができ、これは、例えば火炎研磨としてまたはレーザ研磨として、例えば指向性のプラズマを用いて行うことができる。
【0137】
別の1つの実施形態では、ガラス層前駆体310に対し、例えば、D90<15μmおよびD50<6μmを有する粒径分布を有するホウ酸鉛ガラス粒子またはホウケイ酸鉛ガラス粒子を使用することができる。ホウ酸鉛ガラス粒子またはホウケイ酸鉛ガラス粒子は、例えば約12.5×10-6 1/Kの熱膨張係数を有し得る。このガラスを使用する際には、約500℃以下の温度において上記のガラス化を行うことできる。なぜならばその軟化は約360℃で始まり得るからである。
【0138】
別の実施形態では、ガラス層前駆体310に対して鉛フリーのガラス粒子を使用することも可能であり、これは、例えば約1.7と約2.1との間の屈折率を有し得る。これらは、例えば、約1μmの粒径分布D50と、約50℃から約350℃の温度範囲に対して約8.5×10-6 1/Kの熱膨張率とを有するビスマスホウ酸ガラス粒子またはビスマスホウケイ酸ガラス粒子とすることが可能である。択一的には、例えば、約50℃から約300℃の温度範囲に対して約10×10-6 1/Kの熱膨張率と、約7μmの粒径分布D50を有するビスマス亜鉛ホウ酸ガラス粒子またはビスマス亜鉛ホウケイ酸ガラス粒子を選択することもできる。
【0139】
図3には、種々異なる実施例にしたがって散乱層を作製する方法200における散乱層106の概略断面図が示されており、この概略断面図は、支持体102ないしバリア層104の表面302上の、散乱中心体306を有する散乱中心体前駆体304、および、ガラス粒子312を有するガラス層前駆体310の不揮発性の有機構成部分を除去するステップ212後のものである。散乱中心体前駆体304およびガラス層前駆体310の不揮発性の有機構成成分を除去することにより、散乱中心体306間およびガラス粒子312間に、空いた容積体308を形成することができる。ここで前駆体304,310は、揮発性および/または不揮発性の有機構成成分を有するないしはこれを有しない散乱中心体306およびガラス粒子312が被着された層を表す。
【0140】
図4には、種々異なる実施例にしたがって散乱層を作製する方法200における散乱層106の概略断面図が示されており、この概略断面図は、ガラス312を液状化212し、散乱中心体306間の空いた容積体308内に流し込んだ後のものである。
【0141】
散乱層106の図示した層断面は、例えば、液状化したガラス粒子308を硬化216させてガラス層408ないしはガラスマトリクス408を形成した後の層断面に対応する。ガラス408は、覆われていない表面402を有し、また、支持体102ないしはバリア層104と共通の境界面404を共有し得る。さらにガラス層408と散乱中心体306とは、共通の1つの境界面406または複数の共通の境界面406を共有し得る。
【0142】
散乱中心体306に加えて、例えば液状化したガラスが入り込めない空きの容積体308により、ガラスマトリクス308内にキャビティ410が形成され得る。
【0143】
種々異なる実施形態において、ただ1つの温度ステップにより、調整可能な散乱断面積および平坦な表面を有する散乱層を作製することの可能な方法が提供される。殊に、本発明において提供される方法により、PbOを含まない高屈折率ガラスからなる非晶質散乱層を作製することができ、ひいてはオプトエレクトロニクス素子における規定2002/95/EGの実行に貢献することができる。この方法は、鉛フリーガラスを有する散乱層に極めて好適である。散乱粒子およびガラス粒子を含む均一な混合物から形成されていた散乱層に比べて、この方法により、高屈折のガラスマトリクスを非晶質に凝固させるための一層大きなプロセスウィンドウが可能になる。
図1
図2
図3
図4