特許第6120949号(P6120949)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6120949乳化重合共役ジエン系重合体とシリカ懸濁液とからなるゴム組成物およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6120949
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】乳化重合共役ジエン系重合体とシリカ懸濁液とからなるゴム組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08C 1/14 20060101AFI20170417BHJP
   C08C 3/00 20060101ALI20170417BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20170417BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20170417BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20170417BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   C08C1/14
   C08C3/00
   C08L15/00
   C08K3/36
   C08J3/20 B
   B60C1/00 Z
【請求項の数】17
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-508410(P2015-508410)
(86)(22)【出願日】2014年3月20日
(86)【国際出願番号】JP2014057751
(87)【国際公開番号】WO2014156950
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2015年4月1日
(31)【優先権主張番号】特願2013-62996(P2013-62996)
(32)【優先日】2013年3月25日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513072684
【氏名又は名称】有限会社ETIC
(73)【特許権者】
【識別番号】399034220
【氏名又は名称】日本エイアンドエル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】服部 岩和
(72)【発明者】
【氏名】小野 壽男
(72)【発明者】
【氏名】三崎 皇雄
(72)【発明者】
【氏名】実綿 浩
【審査官】 前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−242709(JP,A)
【文献】 国際公開第2002/020655(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/114756(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/000957(WO,A1)
【文献】 特開2008−101055(JP,A)
【文献】 特開2012−251086(JP,A)
【文献】 特開2011−079912(JP,A)
【文献】 特開2011−012142(JP,A)
【文献】 特開2006−123272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C 1/00− 4/00
C08L 1/00−101/16
C08J 3/00− 7/18
B60C 1/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ基、ピリジル基、アルコキシシリル基、エポキシ基、カルボキシル基および水酸基から選択される少なくとも1種の官能基を有するモノマーを0.02〜10重量%共重合した乳化重合共役ジエン系共重合体の乳化液中の固形分100重量部に対して、シリカ懸濁液の固形分が10〜120重量部になるように、乳化重合共役ジエン系共重合体の乳化液とシリカ懸濁液とをスチーム噴出器(steam ejector)を用いて混合し、酸および/または1価ないし3価の金属塩を加え凝固した後、乾燥したゴム組成物。
【請求項2】
アミノ基、ピリジル基、アルコキシシリル基、エポキシ基、カルボキシル基および水酸基から選択される少なくとも1種の官能基を有するモノマーを0.02〜10重量%共重合した乳化重合共役ジエン系共重合体の乳化液中の固形分100重量部に対して、シリカ懸濁液の固形分が10〜120重量部になるように、乳化重合共役ジエン系共重合体の乳化液とシリカ懸濁液とを混合し、酸および/または1価ないし3価の金属塩を加え凝固した後、凝固後のクラム(ゴムの小さい塊)を熱風乾燥し、引き続いて少なくとも温度が100℃以上の熱ロールを通してシート状で乾燥したゴム組成物。
【請求項3】
シリカ懸濁液と、共役ジエン系共重合体乳化液とが、スチーム噴出器(steam ejector)を用いて混合される、請求項2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
シリカの一次粒子径が1〜200nmで、シリカの含水量が30重量%以下になる乾燥工程を経ていないシリカの懸濁液を用いて、共役ジエン系共重合体の乳化液中の固形分100重量部に対して、シリカの固形分が10〜120重量部になるように混合し、凝固、乾燥した請求項1〜3のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
シランカップリング剤を予めシリカ懸濁液へ加えたシリカの懸濁液を用いて、共役ジエン系共重合体の乳化液中の固形分100重量部に対して、シリカの固形分が10〜120重量部になるように、共役ジエン系共重合体乳化液と混合、凝固し、乾燥した請求項1〜4のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
乳化重合共役ジエン系共重合体が、アルコキシシリル基、エポキシ基、カルボキシル基から選択される少なくとも1種の官能基を有するモノマーを共重合した乳化重合共役ジエン系共重合体である請求項1〜5のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項7】
乳化重合共役ジエン系共重合体が、アルコキシシリル基、エポキシ基、カルボキシル基から選択される少なくとも1種の官能基を有するモノマーを0.02〜10重量%共重合した乳化重合共役ジエン系共重合体である請求項1〜6のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のゴム組成物に1〜50重量部の伸展油を配合したことを特徴とするゴム組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のゴム組成物に1〜50重量部のカーボンブラックを配合したことを特徴とするゴム組成物。
【請求項10】
アミノ基、ピリジル基、アルコキシシリル基、エポキシ基、カルボキシル基および水酸基から選択される少なくとも1種の官能基を有するモノマーを0.02〜10重量%共重合した乳化重合共役ジエン系共重合体の乳化液中の固形分100重量部に対して、シリカ懸濁液の固形分が10〜120重量部になるように、乳化重合共役ジエン系共重合体の乳化液とシリカ懸濁液とをスチーム噴出器(steam ejector)を用いて混合すること、酸および/または1価ないし3価の金属塩を加え凝固すること、および乾燥することを含む、ゴム組成物の製造方法。
【請求項11】
アミノ基、ピリジル基、アルコキシシリル基、エポキシ基、カルボキシル基および水酸基から選択される少なくとも1種の官能基を有するモノマーを0.02〜10重量%共重合した乳化重合共役ジエン系共重合体の乳化液中の固形分100重量部に対して、シリカ懸濁液の固形分が10〜120重量部になるように、乳化重合共役ジエン系共重合体の乳化液とシリカ懸濁液とを混合すること、酸および/または1価ないし3価の金属塩を加え凝固すること、凝固後のクラム(ゴムの小さい塊)を熱風乾燥し、引き続いて少なくとも温度が100℃以上の熱ロールを通してシート状で乾燥することを含む、ゴム組成物の製造方法。
【請求項12】
シリカ懸濁液と、共役ジエン系共重合体乳化液とを混合するにあたり、スチーム噴出器(steam ejector)を用いて混合する、請求項11に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項13】
pHが7以上のアルカリ条件下で調製したシリカ懸濁液と、共役ジエン系共重合体乳化液とを混合する、請求項10〜12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
シリカ懸濁液と、共役ジエン系共重合体乳化液とを混合し、酸および/または1価ないし3価の金属塩を加えてから、30℃〜100℃に加熱する、請求項10〜13のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
予め乳化液に、乳化分散液とした伸展油を配合、混合することを含む、請求項10〜14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
乾燥後、カーボンブラックを配合することを含む、請求項10〜15のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項17】
請求項1〜9のいずれか一項に記載されたゴム組成物を少なくとも30重量%以上含むタイヤ用ゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカの水溶液もしくは懸濁液(単に懸濁液という場合もある)と、シリカと親和性(affinity)の高い官能基を含有する乳化重合共役ジエン系共重合体とを、重合体の乳化液(latex)の状態で混合、凝固(coagulate)し、乾燥したシリカマスターバッチ(silica master-batch)からなるゴム組成物に関する。とりわけ、ゴム成分、シリカからなるマスターバッチ、ならびにそれを用いてなるタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0002】
以下、乳化重合スチレンブタジエンゴム(emulsion-polymerized styrene-butadiene rubber) (E-SBR)単独、ないしこれに他のモノマーや官応基を含むモノマーを含む乳化重合ジエン共重合体を配合したものも含めてE-SBRと表記する場合がある。
【背景技術】
【0003】
自動車に対する省エネルギーの社会的要求は古くからあり、自動車の低燃費化への対応は最近特に厳しくなっている。自動車などのタイヤに関しては、1980年代ごろより自動車の低燃費性向上及び耐摩耗性の改良によるタイヤ交換時期の長期間化、濡れた路面でのブレーキ性能(以後、ウエットグリップ性wet gripという)向上の観点から粒径の小さいカーボンブラックを補強剤として、高分散化するために末端変性の溶液重合スチレンブタジエンゴム(solution polymerized styrene-butadiene rubber)(S-SBR)が使用され、今でも改良検討が続けられている。
【0004】
一方、1990年代初めにミシュランタイヤ社Michelinがシリカ配合タイヤを発売し、シリカ配合の特長が再認識され、現在ではシリカ配合タイヤが低燃費性やウエットグリップ性の向上には必須であると考えられている。しかしながら、シリカ配合にはシランカップリング剤が必要であり、この試薬を使用するためにゴム混練の温度条件に制限があり、さらにタイヤ用ゴムに配合する場合、カーボンブラックより分散しにくいことから練り工程数が多くコスト高の課題もある。
【0005】
当初、シリカと反応性の高いアルコキシシリル基やアミノ基を末端に導入したS‐SBR(末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム)とシリカとをカーボンブラック配合と同じようにバンバリーミキサー(Banbury mixer)やロールミキサー(Roll mixer)で混練りして、シリカ配合ゴム組成物を製造していた。しかし、練りにくくシリカの分散が不十分であるため、溶液でゴムとシリカとを混合し、凝固、乾燥するウエットマスターバッチ(wet maser-batch)法が提案された。
【0006】
S−SBRの停止末端にシリカと反応性の高いアルコキシシリル基を導入し、有機溶媒中でシリカと混合することが試みられたが、有機溶媒中では安定的に両成分を均一分散することが困難であり、有機溶媒を完全に除去することが困難である等から工業生産には至らなかった。(特許文献1)
【0007】
溶液ではなくドライマスターバッチ(Dry master-batch)法の改良案として、シリカとカーボンブラックを併用するゴム配合物で、シリカと反応性の高いシランカップリング剤等を使用することが試みられたが、種々の工業化への課題が解決できていない。(特許文献2と特許文献3)
【0008】
天然ゴムラテックス(natural rubber latex)を用いる改良法では、カーボンブラックやシリカをあらかじめ水中に分散させた懸濁液を混合、凝固するウエットマスターバッチの調製法が挙げられるが、天然ゴム中のアミド結合を分解する工程が必須であることや、天然ゴム自身が充てん材による補強効果が低いこと、および天然ゴム自体がシリカと反応性の高い官能基をもたないこと等から、物性の改良効果は乏しい。(特許文献4)
【0009】
E‐SBR(乳化重合スチレンブタジエンゴム)と未乾燥シリカ、シランカップリング剤とを水溶液状態で混合、凝固、乾燥したシリカマスターバッチが試みられているが、水溶液状態でシランカップリング剤を使用することや、E‐SBR自体にシリカと反応性の高い官能基が無いことから、性能向上にはシリカ、シランカップリング剤、E‐SBRの三者結合の形成が必須のところから、安定的な調製が困難とされている。(特許文献5)
【0010】
E‐SBRとしてシリカと反応性の高い官能基を含むモノマーを共重合した三元共重合体を採用し、シリカを配合したゴム組成物も開示されている。(特許文献6と非特許文献1)
【0011】
しかし、いずれもドライ状態で混合するため、シリカが二次凝集したままであり、シリカの分散状態は良くない。
【0012】
E-SBR乳化液(E-SBR latex)とシリカ懸濁液、さらにカチオン性高分子の3成分を共凝固(coagulate)するゴム組成物とその製法も試みられている。(特許文献7)
【0013】
特定のガラス転移温度のE-SBRとシリカ懸濁液を共凝固したゴム組成物に特定の範囲でガラス転移温度が異なる共役ジエン系ゴムを配合したゴム組成物とその製法や成形体も試みられている。(特許文献8)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許2667420号
【特許文献2】特開平10−1565号公報
【特許文献3】特開平10−25368号公報
【特許文献4】特開2004−99625号公報
【特許文献5】特開2005−179436号公報
【特許文献6】特開2003−238604号公報
【特許文献7】特許4583308号
【特許文献8】特許4746989号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】G. Thielen, C. Berg: Kautsch. Gummi Kunstst., 07‐08/2008, 377(2008)
【0016】
これらの技術は、配合成分や混合組み合わせ条件などで課題が多く工業化の端緒にも至っていない。
【0017】
上記した従来技術は、シリカを高分散することで性能向上を目指すものであるが、凝集した(aggregated)シリカを再度解離(disaggregate)することは容易ではなく、またシリカとゴム系重合体とが反応しながら分散することは無いので、性能向上は不十分であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、湿式シリカが二次凝集する前の分散液、もしくは二次凝集塊(agglomerate)を機械的に解離したシリカを水中で高分散した懸濁液を、シリカと反応性もしくは親和性の高い官能基を含有する乳化重合共役ジエン系重合体類の乳化液と混合することによって、シリカが高分散したゴム組成物(シリカマスターバッチ)を得ること、およびその製造方法を提供する。
【0019】
さらに、本願発明のゴム組成物をタイヤに用いて、混練り時の電力削減、転がり抵抗(rolling resistance)の低減効果、耐摩耗性(abrasion resistance)、ウエットグリップ性に優れるタイヤを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、アミノ基、ピリジル基、アルコキシシリル基、エポキシ基、カルボキシル基および水酸基から選択される少なくとも1種の官能基を有するモノマーを0.02〜10重量%共重合した乳化重合共役ジエン系共重合体の乳化液中の固形分100重量部に対して、シリカ懸濁液の固形分が10〜120重量部になるように、乳化重合共役ジエン系共重合体の乳化液とシリカ懸濁液とを混合し、酸および/または1価ないし3価の金属塩を加え凝固した後、乾燥したゴム組成物に関する。
【0021】
また、本発明は、シリカの一次粒子径が1〜200nmで、シリカの含水量が30重量%以下になる乾燥工程を経ていないシリカの懸濁液を用いて、共役ジエン系共重合体の乳化液中の固形分100重量部に対して、シリカの固形分が10〜120重量部になるように混合し、凝固、乾燥したゴム組成物に関する。
【0022】
また、本発明は、シリカ表面のシラノール基と反応性を有する炭素数が6〜50の化合物を予めシリカ懸濁液へ加えたシリカの懸濁液を用いて、共役ジエン系共重合体の乳化液中の固形分100重量部に対して、シリカの固形分が10〜120重量部になるように、共役ジエン系共重合体乳化液と混合、凝固し、乾燥したゴム組成物に関する。
【0023】
また、本発明は、アルコキシシリル基かエポキシ基、カルボキシル基から選択される少なくとも1種の官能基を有するモノマーを共重合した乳化重合共役ジエン系共重合体であるゴム組成物に関する。
【0024】
また、本発明は、アルコキシシリル基、エポキシ基、カルボキシル基から選択される少なくとも1種の官能基を有するモノマーを0.02〜10重量%共重合した乳化重合共役ジエン系のゴム組成物に関する。
【0025】
また、本発明は、上記のゴム組成物にさらに1〜50重量部の伸展油を配合したゴム組成物に関する。
【0026】
また、本発明は、上記のゴム組成物に1〜50重量部のカーボンブラックを配合したゴム組成物に関する。
【0027】
さらに、本発明は、pHが7以上のアルカリ条件下で調製したシリカ懸濁液と、共役ジエン系共重合体乳化液とを混合し、加熱凝固した後、乾燥するゴム組成物の製造方法に関する。
【0028】
また、本発明は、シリカ懸濁液と、共役ジエン系共重合体乳化液とを混合し、酸および/または1価ないし3価の金属塩を加えてから、30℃〜100℃に加熱凝固した後、乾燥するゴム組成物の製造方法に関する。
【0029】
また、本発明は、製造方法における乾燥工程が、凝固後のクラム(ゴムの小さい塊)を熱風乾燥し、引き続いて少なくとも温度が100℃以上の熱ロールを通してシート状で乾燥する工程である、ゴム組成物の製造方法に関する。
【0030】
さらに、本発明は、上記のゴム組成物を少なくとも30重量%以上含むタイヤ用ゴム組成物に関する。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、分散したシリカのアグリゲートの懸濁液を、シリカ表面に存在するシラノール基と反応性もしくは親和性の高い官能基含有モノマー(アミノ基 、ピリジル基、アルコキシシリル基、エポキシ基、カルボキシル基および水酸基を含有するモノマー)を共重合した乳化重合共役ジエン系重合体の乳化液とを混合、凝固し、さらに乾燥することによって、シリカが高度に分散した補強性の高いゴム組成物が得られる。
【0032】
このシリカを含んだクラム(crumb)は乾燥しにくいため、通常のE−SBRの乾燥装置である、脱水機と熱風乾燥器の組み合わせでは乾燥が不十分である。そのため、更に熱ロールを加えた従来にない乾燥プロセスを含む製造工程も開発している。
【0033】
本発明のゴム組成物は、補強性が高く、加硫時の品質が安定化しており、さらに本ゴム組成物をタイヤに用いた場合、混練りが容易で、転がり抵抗の低減効果、耐摩耗性、ウエットグリップ性に優れるタイヤを提供する。
【0034】
乳化重合共役ジエン系共重合体の乳化液とシリカ懸濁液との混合方法としては、単に撹拌混合だけでなく、スチーム噴出器(steam ejector)を用いて、両者の混合系に熱や圧力の刺激を加えながら均一に混合させて、共凝固させる工程も望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】乳化重合共役ジエン系共重合体の乳化液とシリカ懸濁液とのスチーム噴出器(steam ejector)を用いた混合工程の構成例を示す。図1中の1は、乳化重合共役ジエン系共重合体の乳化液とシリカ懸濁液(silica suspension solution)との混合物の流入系を示す。図1中の2は、高圧スチームの流入系を示す。図1中の4は、スチーム噴出器(steam ejector)の本体を示す。図1中の6は、高圧スチームの温度と圧力の刺激を受けて処理された、乳化重合共役ジエン系共重合体の乳化液とシリカ懸濁液との混合物の吐出系を示す。図1中の7は、吐出物の配管系である。図1中の8は、クリーミングタンクである。図1中の9は、凝固タンクである。水や凝固剤が加えられ撹拌される。
【0036】
図2】スチーム噴出器の構成例を示す。図2中の1は、乳化重合共役ジエン系共重合体の乳化液とシリカ懸濁液との混合物の流入系を示す。図2中の2は、高圧スチームの流入系を示す。図2中の3は、スチーム噴出器のノズルを示す。図2中の4は、スチーム噴出器の本体ボディーを示す。図2中の5は、スチーム噴出器のディフューザーを示す。図2中の6は、スチームの温度と圧力の刺激を受けて処理された、乳化重合共役ジエン系共重合体の乳化液とシリカ懸濁液との混合物の吐出系を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下に、本発明を実施するための具体的な形態を説明する。
【0038】
シリカは一次粒子同士が結合して、強固なアグリゲート(aggregate、一次凝集体)となる。アグリゲートは乾燥するとさらに凝集してアグロメレート(agglomerate、二次凝集体)となる。アグロメレートは水中では比較的容易に分散でき、アグリゲートに戻すことができるが、乾燥した状態でゴム等に混合、分散することは非常に難しい。
【0039】
そのため、本発明は、分散したシリカのアグリゲートの懸濁液を、シリカ表面に存在するシラノール基と反応性を有するかもしくは、親和性の高い官能基含有モノマーを共重合したE−SBRの乳化液と混合し、凝固し、さらに乾燥することによって、シリカが高分散した補強性の高いゴム組成物を製造する。
【0040】
<乳化重合共役ジエン系重合体のモノマー>
乳化重合共役ジエン系重合体のモノマーとしては、1,3−ブタジエンとスチレンが必須であり、その他のモノマーとして2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンやα−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン等も併用することもできる。
【0041】
乳化重合共役ジエン系重合体中の1,3−ブタジエン含量は50〜95重量%であり、好ましくは60〜90重量%、さらに好ましくは65〜80重量%である。スチレン含量は5〜50重量%であり、好ましくは10〜40重量%、さらに好ましくは20〜35重量%である。
【0042】
ここに示すその他のモノマーはE−SBRのモノマーの10重量%以内なら1,3−ブタジエンとスチレンとを任意の割合で置換えることができる。
【0043】
極性基含有モノマーにおける極性基としては、シリカ表面と反応し得るものであれば特に限定されなく、例えば、アミノ基、ピリジル基、アルコキシシリル基、エポキシ基、カルボキシ基、水酸基等が挙げられる。これらの中でも、アミノ基、アルコキシシリル基、カルボキシル基、エポキシ基が好ましく、さらに好ましいのは、アルコキシシリル基やカルボキシル基、エポキシ基である。
【0044】
E‐SBR中の極性基含有モノマーの好適な含有量は、E−SBR中の全モノマーの0.02〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%であり、さらに好ましくは0.1〜3重量%である。
【0045】
第1級アミノ基含有モノマーとしては、例えば、p−アミノスチレン、アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0046】
第2級アミノ基含有モノマーとしてはN−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)メタアクリルアミドなどN−モノ置換(メタ)アクリルアミド類等が挙げられる。
【0047】
第3級アミノ基含有モノマーとしては、例えば、N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジ置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ置換アミノ芳香族ビニル化合物およびピリジル基を有するモノマー等が挙げられる。
【0048】
N,N−ジ置換アミノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N−メチル−N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N−ジヘキシルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジオクチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0049】
N,N−ジ置換アミノ芳香族ビニル化合物としては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチルスチレン、N,N−ジエチルアミノエチルスチレン、N,N−ジプロピルアミノエチルスチレン、N,N−ジオクチルアミノエチルスチレンなどが挙げられる。ピリジル基を有するモノマーとしては、例えば、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、5−メチル−2−ビニルピリジン、5−エチル−2−ビニルピリジンなどが挙げられる。これらの中でも、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンが好ましい。
【0050】
これらのアミノ基含有モノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
アルコキシシリル基含有モノマーは、1分子中に少なくとも1個のアルコキシシリル基を有するモノマーである。アルコキシシリル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリエトキシシラン、β−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、β−(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルヘキシルジメトキシシラン、β−アクリロキシエチルオキシメチルトリメトキシシラン、γ−(β−アクリロキシエチルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、γ−(γ−メタクリロキシプロピルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリ−tert−ブトキシシラン、ビニルトリ−sec−ブトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシランなどが挙げられる。
【0052】
これらの中でも、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、γ−(β−アクリロキシエチルオキシ)プロピルトリブトキシシラン、γ−(γ−メタクリロキシプロピルオキシ)プロピルトリブトキシシラン、ビニルアルコキシシラン類が好ましく、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、ビニルトリ−tert−ブトキシシランがより好ましい。
【0053】
これらのアルコキシシリル基含有モノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
カルボキシル基含有モノマーは、1分子中に少なくとも1つのカルボキシル基を有するモノマーである。カルボキシル基含有モノマーとしては、メタクリル酸、アクリル酸が好ましい。これらのカルボキシル基含有モノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
エポキシ基含有モノマーは、1分子中に少なくとも1つのエポキシ基を有するモノマーである。エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート、3,4−オキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、N−グリシジル(メタ)アクリルアミド、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、3,4−エポキシ−1−ブテン、3,4−エポキシ−1−メチル−1−ブテン、3,4−エポキシ−1−ペンテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ペンテン、5,6−エポキシ−1−ヘキセン、ビニルシクロヘキセンモノオキシド、スチレン−p−グリシジルエーテル、N−[4−(2,3−エポキシ−1−オキソ−3−フェニルプロパン−1−イル)フェニル]メタクリルアミドなどが挙げられる。なかでも、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。これらのエポキシ基含有モノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
ヒドロキシル基含有モノマーは、1分子中に少なくとも1個の第1級、第2級または第3級ヒドロキシル基を有するモノマーである。ヒドロキシル基含有モノマーの具体例としては、例えば、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−クロロ−3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、ジ−(エチレングリコール)イタコネート、ジ−(プロピレングリコール)イタコネート、ビス(2−ヒドロキシプロピル)イタコネート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イタコネート、ビス(2−ヒドロキシエチル)フマレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)マレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシメチルビニルケトン、アリルアルコールなどが挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミドなどが好ましい。
【0057】
<重合方法>
本発明で採用できる重合方法としては、種々の重合方法が適用できるが、重合反応時の反応熱の除去の容易性や生産性の点で、乳化重合法が好ましく採用できる。
【0058】
乳化重合法としては、通常の乳化重合法を用いればよく、例えば、所定量の上記単量体を乳化剤の存在下に水性媒体中に乳化分散し、重合開始剤により乳化重合する方法が挙げられる。各単量体の使用量は、重合体における各単量体単位量が所望の含有量になるよう、適宜選択される。
【0059】
乳化剤としては、例えば、炭素数10以上の長鎖脂肪酸塩および/またはロジン酸塩が用いられる。具体例としては、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの脂肪酸のカリウム塩またはナトリウム塩が例示される。乳化剤の使用量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは0.5〜10重量部、より好ましくは1〜8重量部である。
【0060】
重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウムや過硫酸カリウムのような過硫酸塩;過硫酸アンモニウムと硫酸第二鉄との組み合わせ、有機過酸化物と硫酸第二鉄との組み合わせ、及び過酸化水と硫酸第二鉄との組み合わせなどのレドックス系開始剤;などが挙げられる。重合開始剤の使用量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは0.01〜5重量部、より好ましくは0.05〜3重量部である。
【0061】
重合体のムーニー粘度を調節するために、分子量調整剤を使用する。分子量調整剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類、四塩化炭素、チオグリコール酸、ジテルペン、ターピノーレン、γ−テルピネン類などが挙げられる。なかでも、メルカプタン類が好ましく、t−ドデシルメルカプタンがより好ましく、使用できる。分子量調整剤の使用量は、特に限定されないが、全単量体100重量部に対して、通常、0.01〜5重量部、好ましくは0.02〜1重量部、より好ましくは0.05〜0.5重量部である。
【0062】
乳化重合の温度は、使用する重合開始剤の種類によって適宜選択することができるが、通常、0〜100℃で、好ましくは0〜60℃である。重合様式は、連続重合、回分重合等のいずれでの様式でも構わない。
【0063】
重合反応停止の際の重合転化率は、重合体のゲル化を防止する観点から、85重量%以下とすることが好ましく、50〜80重量%の範囲とすることがより好ましい。重合反応停止は、通常、所定の重合転化率に達した時点で、重合系に重合停止剤を添加することによって行われる。重合停止剤としては、例えば、ジエチルヒドロキシルアミンやヒドロキシルアミン等のアミン系化合物;ヒドロキノンやベンゾキノンなどのキノン系化合物;亜硝酸ナトリウム、ソジウムジチオカーバメートなどが挙げられる。
【0064】
重合反応停止後、必要に応じて、老化防止剤(antioxidant)を添加してもよい。重合反応停止後、得られた重合体乳化液から未反応モノマーを除去する。所望により、予め重合体乳化液に、乳化分散液とした伸展油を配合、混合して、油展ゴムとすることもできる。
【0065】
共凝固方法としては塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなどの塩を凝固剤とし、必要に応じて高分子凝集剤(flocculant)や塩酸、硫酸等の酸を添加して凝固系のpHを所定の値に調整しながら、二次凝集する前の湿式シリカ、もしくは二次凝集塊を機械的に解離したシリカを水中で高分散した懸濁液を、シリカと反応性もしくは親和性の高い官能基を含有する乳化重合共役ジエン系重合体類の乳化液とを混合することによって、クラム(crumb)として凝固させ回収できる。
【0066】
乳化重合共役ジエン系共重合体の乳化液とシリカ懸濁液との混合方法としては、単に撹拌したりして混合するだけでなく、[図1]のスチーム噴出器(steam ejector)を用いて、両者の混合系に熱や圧力の刺激を加えながら均一に混合させて、共凝固させる工程も望ましい。[図1]では、乳化重合共役ジエン系共重合体の乳化液とシリカ懸濁液との混合溶液を、スチーム噴出器を通じて、熱や圧力の刺激を加えながら均一に混合させて、共凝固させる工程の構成例を示す。
【0067】
高圧スチームの噴出・流入系から吐出系への勢いのある流れによって、混合溶液流入系の混合溶液は吸引されて、高温下で剪断力と熱刺激を受けてより均一な溶液となり吐出される。吐出物を凝固させると、ゴムにシリカが均一分散した、安定した混合品質のゴム組成物を製造することができる。
【0068】
図1]のように、スチームとともに吐出された混合溶液を、クリーミングタンクで撹拌の後、凝固タンクに移して水や凝固剤を加えつつ撹拌すると、均一な混合により更に安定した混合品質のゴム組成物を製造することができる。
【0069】
高圧スチームと、乳化重合共役ジエン系共重合体の乳化液とシリカ懸濁液との混合液を通す混合器は、例えば、[図2]のようなスチーム噴出器を用いることができる。
【0070】
ここで使用する高圧スチームとしては0.1MPa〜2MPa、好ましくは0.3MPa〜1.8MPa、さらに好ましくは0.5MPa〜1.5MPaである。
【0071】
噴出口の形状としては、混合された直後の配管(図1中の6)の口径よりも、出口配管(図1中の7)の口径が大きくなる方が好ましい。
【0072】
クラムは洗浄、脱水後、熱風乾燥機、熱ロールなどで乾燥し、目的とする共役ジエン系ゴムを得ることができる。
【0073】
しかしながら、シリカは水分を吸着しやすく、後工程に当たる加硫工程で品質のばらつきを引起す可能性が高いので、通常の脱水機と熱風乾燥機の乾燥だけでは不十分で、さらに温度が100℃以上の熱ロールを使用して十分に乾燥するのが好ましい。
【0074】
<シリカ>
シリカとしては、例えば、乾式シリカ、湿式シリカ、コロイダルシリカ、沈降シリカなどが挙げられる。これらの中でも、含水ケイ酸を主成分とする湿式シリカが特に好ましい。これらのシリカは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0075】
シリカの一次粒子の粒径は、特に制限されないが、1〜200nmであり、より好ましくは3〜100nmで、特に好ましくは5〜60nmである。シリカの一次粒子の粒径がこの範囲であると、引張特性および低発熱性のバランスに優れる。なお、一次粒子の粒径は、電子顕微鏡や比表面積等で測定できる。
【0076】
高分散したシリカ懸濁液は、未乾燥の湿式シリカをそのまま使用するか、乾燥したシリカを水中で薄膜旋回型高速撹拌機等により再分散することで製造できる。
【0077】
<シランカップリング剤>
本発明のゴム組成物に、引張特性および低発熱性をさらに改善する目的で、シランカップリング剤を配合することが好ましい。シランカップリング剤はシリカの懸濁液に加えても良いし、乾燥後のゴム組成物と他の薬剤とを配合するために混合する際に加えても良い。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリ−iso−プロポキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリブトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、γ−トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド、γ−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドなどのテトラスルフィド類、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリ−iso−プロポキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、γ−トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルジスルフィド、γ−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルジスルフィドなどを挙げることができる。
【0078】
混練時のスコーチ(scorch、熱変色、焦げ)を避けられるので、シランカップリング剤は、一分子中に含有される硫黄が4個以下のものが好ましい。さらに好ましくは硫黄が2個以下のものが好ましい。これらのシランカップリング剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0079】
シランカップリング剤の配合量は、シリカ100重量部に対して、好ましくは0.1〜30重量部、より好ましくは1〜20重量部、特に好ましくは2〜10重量部である。
【0080】
シランカップリング剤の添加する工程は、加硫工程前の混練り時に添加することができる。また、凝固前にシリカの懸濁液と共役ジエン系共重合体の乳化液との混合工程で、シランカップリング剤を添加することもでき、シリカ懸濁液もしくは、共役ジエン系共重合体の乳化液、さらにシリカの懸濁液と共役ジエン系共重合体の乳化液との混合液への添加もできる。
【0081】
凝固前にシランカップリング剤を添加する際は、嵩高いアルコキシシリル基を有するタイプが好ましく、さらにテトラスルフィド系よりもジスルフィド系のシランカップリング剤のほうが安定性と補強性の面から好ましい。
【0082】
<伸展油>
本発明のゴム組成物はシリカを配合した際の配合物粘度が高くなりすぎないように伸展油を含有することができる。伸展油としてはゴム工業において通常使用されるものが使用でき、パラフィン系伸展油、芳香族系伸展油、ナフテン系伸展油などがあげられる。
【0083】
伸展油の流動点は、好ましくは−20〜50℃、より好ましくは−10〜30℃である。この範囲であれば、伸展しやすく、引張特性と低発熱性のバランスに優れたゴム組成物が得られる。伸展油の好適なアロマ炭素含有量(CA%、クルツ分析法)は、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上であり、また、伸展油の好適なパラフィン炭素含有量(CP%)は、好ましくは55%以下、より好ましくは45%である。CA%が小さすぎたり、CP%が大きすぎたりすると、引張特性が不十分となる。伸展油の中の多環芳香族系化合物の含有量は、好ましくは3%未満である。この含有量は、IP346法(英国のThe Institute Petroleum の検査方法)により測定される。
【0084】
伸展油の含有量は、ゴム組成物100重量部に対して、好ましくは1〜50重量部、より好ましくは5〜30重量部である。伸展油の含有量がこの範囲にあると、シリカを配合したゴム組成物の粘度が適度となり、かつ引張特性および低発熱性のバランスに優れる。
【0085】
<カーボンブラック>
カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、グラファイトなどを用いることができる。これらの中でも、特にファーネスブラックが好ましく、その具体例としては、SAF、ISAF、ISAF−HS、ISAF−LS、IISAF−HS、HAF、HAF−HS、HAF−LS、FEFなどのグレードのものが挙げられる。これらのカーボンブラックは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0086】
カーボンブラックの比表面積は、特に制限はないが、窒素吸着比表面積(N2SA)で、好ましくは5〜200m/g、より好ましくは50〜150m/g、特に好ましくは80〜130m/gである。窒素吸着比表面積がこの範囲であると、より引張特性に優れる。また、カーボンブラックのDBP吸着量も、特に制限はないが、好ましくは5〜300ml/100g、より好ましくは50〜200ml/100g、特に好ましくは80〜160ml/100gである。DBP吸着量がこの範囲であると、より引張特性に優れたゴム組成物が得られる。さらに、カーボンブラックとして、特開平5−230290号公報に開示されているセチルトリメチルアンモニウムブロマイドの吸着(CTAB)比表面積が110〜170m/gであり、24,000psiの圧力で4回繰り返し圧縮を加えた後のDBP(24M4DBP)吸油量が110〜130ml/100gであるハイストラクチャーカーボンブラックを用いることにより、耐摩耗性を改善できる。
【0087】
カーボンブラックの配合量は、ゴム成分100重量部に対して、1〜50重量部、好ましくは2〜30重量部、特に好ましくは3〜20重量部である。
【0088】
本発明のゴム組成物をタイヤ用ゴム組成物として使用する場合は、本発明の効果を本質的に損なわない範囲で、乳化重合共役ジエン系重合体とシリカからなるゴム組成物以外のゴムを含んでも良い。その他のゴムとしては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴムなどが挙げられる。
【0089】
本発明のゴム組成物の使用時には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、通常ゴム工業界で用いられる各種薬品、例えば加硫剤、加硫促進剤、プロセス油、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸などを含有させることができる。本発明のゴム組成物は、ロール、インターナルミキサー等の混練り機を用いて混練りすることができる。成形加工後、加硫を行い、タイヤトレッド、アンダートレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部分等のタイヤ用途を始め、防振ゴム、ベルト、ホースその他の工業品等の用途にも用いることができるが、特にタイヤトレッド用ゴムに好適に使用される。
【0090】
本発明の空気入りタイヤは、本発明のゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて、上記のように各種薬品を含有させた本発明のゴム組成物が未加硫の段階でトレッド用部材に押出し加工され、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、タイヤが得られる。このようにして得られた本発明の空気入りタイヤは、低燃費性、破壊特性及び耐摩耗性に優れており、しかも該ゴム組成物の加工性が良好であるので、生産性にも優れている。
【実施例】
【0091】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。なお、重合体の物性は、下記の方法に従って測定した。
【0092】
<重合体の物性>
重合体の重量平均分子量(Mw)の測定はゲルパーミエーションクロマトグラフィ「GPC;東ソー製HLC−8020、カラム;東ソー製GMHXL(2本直列)」により行い、示差屈折率(R1)を用いて、単分散ポリスチレンを標準としてポリスチレン換算で行った。重合体中のスチレン単位含有量はH‐NMRスペクトルの積分比より算出した。重合体のガラス転移点(T)はパーキンエルマー社製の示差走査熱分析機(DSC)7型装置を用い、−100℃まで冷却した後に10℃/minで昇温する条件で測定した。
【0093】
混練り特性、加硫ゴムの物性を下記の方法で測定すると共に、ゴム組成物のムーニー粘度を下記のようにして測定した。
【0094】
<混練り方法>
ゴム組成物の加硫物作成のための混練りは、JIS K 6299:2001「ゴム−試験用試料の作製方法」に従った。
【0095】
加硫剤を含まないゴム組成物の混練条件(A 練り)は東洋精機製作所(株)製のラボプラストミルバンバリー形ミキサーを用い、充てん率が約65%(体積比)、ローター回転数が50rpm、混練り開始温度を90℃で実施した。
【0096】
A練り配合時の混練りトルク(Nm)の最高値で混練り特性を判定し、数値が小さいほど、容易に混練りできることを示す。
【0097】
A練り後のゴム組成物に加硫剤を配合する混練条件(B 練り)は(株)ダイハンDaihan Co., Ltd.製 8インチロールを用いて、室温で加硫剤を配合した。
【0098】
<加硫ゴムの物性>
(1)低発熱性
粘弾性試験の温度分散は「TA INSTRUMENTS 製粘弾性測定装置RSA3」を用いて、JIS K 7244−7:2007「プラスチック−動的機械特性の試験方法−第7部:ねじり振動−非共振法」に従って、測定周波数が10Hz、測定温度が−50〜80℃、動的ひずみが0.1%、昇温速度が4℃/minで、試験片形状が「幅5mm×長さ40mm×厚さ1mm」のサンプルで測定した。tanδ(60℃)が小さい程、低発熱性である。
【0099】
(2)破壊特性
切断時の強力(T)をJIS K 6251:2004に従って測定した。
【0100】
(3)耐摩耗性
JIS K 6264−2:2005「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−耐摩耗性の求め方−第7部:試験方法」に従って、アクロン摩耗試験、B法で、加硫ゴム組成物の摩耗量を測定した。コントロールサンプルの耐摩耗性を100として、耐摩耗指数として指数表示した。指数が大きい方が良好である。
【0101】
<ゴム組成物のムーニー粘度>
JIS K 6300−2001に準じ、100℃にてムーニー粘度[ML1+4/100℃]を測定した。
【0102】
製造例1
100Lの重合反応器を用いて、第1表の重合処方に応じて官能基含有モノマー用いずに所定量の水、乳化剤、スチレン、ブタジエンを仕込んだ。その後、重合用容器の温度を5℃に設定し、ラジカル重合開始剤として第1表の開始剤、分子量調節剤、電解質を添加して重合を開始した。約6時間後に重合転化率が60%に達した時点で、ジエチルヒドロキシルアミンを添加して重合を停止させた。次いで、スチームストリッピングにより未反応モノマーを回収し、共役ジエン系重合体の乳化液を得た。この乳化液の一部を分析用に抜き取り、硫酸と塩化ナトリウムにより凝固させてクラム(crumb)とした。次いで、このクラムを熱風乾燥機により乾燥させた。得られた共重合体の分析値は第2表にまとめた。得られた本乳化重合体の乳化液を「N−SB−L1」とし、凝固した乳化共重合体を「N−SB−R1」とした。
【0103】
共役ジエン系重合体の基本の重合処方を表1に示す。
【表1】
【0104】
製造例2
製造例1にしたがって、メタクリル酸を3重量部添加し、乳化重合条件を適切化後、同様に乳化重合した。同様な処方で分析し、得られた乳化共重合体の分析値を同じく第2表にまとめた。得られた本乳化重合体の乳化液を「M−SB−L1」とした。
【0105】
製造例3
製造例1にしたがって、γ-グリシジルメタクリレートを6重量部添加し、同様に乳化重合した。得られた乳化共重合体の分析値を同じく第2表にまとめた。得られた本乳化重合体の乳化液を「M−SB−L2」とした。
【0106】
製造例4
製造例3にしたがって、γ-グリシジルメタクリレートを3重量部添加し、同様に乳化重合した。得られた乳化共重合体の分析値を同じく第2表にまとめた。得られた本乳化重合体の乳化液を「M−SB−L3」とした。
【0107】
製造例5
製造例3にしたがって、γ-グリシジルメタクリレートを1.5重量部添加し、同様に乳化重合した。得られた乳化共重合体の分析値を同じく第2表にまとめた。得られた本乳化重合体の乳化液を「M−SB−L4」とした。
【0108】
製造例6
製造例3にしたがって、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートを1重量部添加し、同様に乳化重合した。得られた乳化共重合体の分析値を同じく表2にまとめた。得られた本乳化重合体の乳化液を「M−SB−L5」とした。
【0109】
製造例7
製造例3にしたがって、ビニルトリ−tert−ブトキシシランを1重量部添加し、同様に乳化重合した。得られた乳化共重合体の分析値を同じく表2にまとめた。得られた本乳化重合体の乳化液を「M−SB−L6」とした。
【0110】
得られた乳化共重合体の分析結果を表2に示す。
【表2】
【0111】
参考例
製造例2で製造した「M−SB−L1」とシリカを次の条件で共凝固することによってゴム組成物を製造した。
【0112】
シリカはシリカ製造会社より、通常の乾燥製造工程を経て計測すると、BET表面積が175m/g、DBP吸油量が220ml/100g、二次粒子平均粒径が120μmとなる特性のシリカの乾燥前のものの水との混合物であって、シリカ含量が20%のシリカケーキを入手した。このシリカの一次粒子平均粒径は20nmであった。このシリカケーキを「WS−1」とする。
【0113】
官能基含有乳化共重合体「M−SB−L1」の固形分1000g相当の乳化液にシリカケーキ「WS−1」の固形分550g相当を撹拌下少量ずつ加え乳化共重合体とシリカとの均一な懸濁液とした。これに老化防止剤としてスチレン化フェノールの乳化液をSBRあたり1部になるように添加した。次に10%の食塩水を900mlと1%のポリエチレングリコール水溶液と5%硫酸を加えてpHを4にした。1cm前後の大きさのシリカ・ゴム組成物がクラム状に析出した。これを40メッシュのステンレス製金網でろ過した後、水で洗浄して、シリカ・ゴム組成物を得た。この組成物を100℃の熱風乾燥機に入れ乾燥した。ゴム組成物の作業上のロスを考慮すると、ほぼ全量を回収した。このゴム組成物を燃焼することによって、シリカの含量を求めると54phrであった。
【0114】
参考例2〜6
参考例1と同様に製造例3〜7で製造した「M−SB−L2〜6」とシリカ「WS−1」を共凝固することによってゴム組成物を製造した。これらの組成物を用いて、第3表の配合処方で、加硫物性を評価し、表4にまとめた。
【0115】
比較例1
参考例1と同様に製造例1で製造した「N−SB−L1」とシリカ、「WS−1」を共凝固することによってゴム組成物を製造した。これらの組成物の加硫物性を表4にまとめた。
【0116】
比較例2〜4
比較例2は「N−SB−L1」を、シリカを用いないで単独で凝固した「N−SB−R1」と熱風乾燥したゴム組成物を用いて、参考例1と同様に加硫物性を評価し、第4表にまとめた。比較例3はJSR(株)製、乳化重合SBR#1502を用いて、シリカ配合で評価し、比較例4は同じ#1502と、シリカをカーボンブラックに置きかえた配合で加硫物性を評価し、表4にまとめた。
【0117】
乳化重合体とシリカとのゴム組成物の加硫物性配合処方を表3に示す。なお、表3で用いられている薬品名などの英語略号は、当業者に周知のものであるが、念のため、意味内容を示すと、以下の通りである。
シランカップリング剤「Si69」:ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド
ポリエチレングリコール「PEG4000」:ポリエチレングリコール4000
老化防止剤「6C」:N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニルジアミン、
加硫促進剤「D」:N,N’―ジフェニルグアニジン、
加硫促進剤「CZ」:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド
【0118】
【表3】
【0119】
乳化重合体とシリカとのゴム組成物の加硫物性の評価結果を第4表に示す。
【表4】
【0120】
表4の結果より、乳化重合共役ジエン系共重合体の乳化液とシリカ懸濁液 とより共凝固したゴム組成物は、混練り時の最大平均トルクが低く、良混練り性であった。
【0121】
参考例1〜6において、モジュラス(M100,M300)が高く、官応基含有乳化共重合体とシリカとの相互作用が高いと推定される。そのため、アクロン耐摩耗性も市販E−SBRとカーボンブラックの配合からなるゴム組成物と同等以上の良好な値を示した。低燃費性の指標となるtanδ(60℃)も、カーボンブラック配合のゴム組成物より非常に優れている。
【0122】
混練り時の加工性と耐久性、低燃費性、ウエットグリップ性さらに耐摩耗性のバランスが良好な加硫物性を示す結果である。
【0123】
参考例
参考例1と同様処方で、「M−SB−L4」とシリカ「WS−1」を共凝固する際に、シランカップリング剤、ビス(3−トリブトキシシリルプロピル)ジスルフィドをシリカの固形分あたり、2phr添加した以外は参考例1と同様にゴム組成物を調製した。参考例1と同様に、加硫物性を評価し、第5表にまとめた。
【0124】
実施例8
参考例7のゴム組成物を120℃の熱ロールで、10分間さらに追加乾燥し、ゴム組成物を調製した。このゴム組成物の加硫物性を評価し、表5にまとめた。
【0125】
実施例9
参考例1と同様処方で、「M−SB−L4」とシリカ「WS−1」を用いて、凝固し、熱風乾燥後、熱ロールで追加乾燥して、ゴム組成物を調製した。このゴム組成物の加硫物性を評価し、表5にまとめた。
【0126】
参考例10
参考例1で使用したシリカケーキの乾燥工程を経て乾燥されたシリカを、20%含有量になるように蒸留水に添加し、プライミクス(株)製、T.K.ハイビスディスパーミックスを用いて、シリカの懸濁液を調製した。このシリカ懸濁液を「WS−2」とする。引続いて、参考例1と同様処方で、「M−SB−L4」とシリカ「WS−2」を用いて、凝固、熱風乾燥して、ゴム組成物を調製した。このゴム組成物の加硫物性を評価し、表5にまとめた。
【0127】
【表5】
表5にまとめた結果より、重合体とシリカがより反応しやすい条件ほど加硫物性が良いと思われる。また、シリカの二次凝集体はある程度解離することが可能と思われる。
【0128】
実施例11
乳化重合体の乳化液「M−SB−L1」とシリカ懸濁液(silica water suspension solution)「WS−1」とをあらかじめ混合し、その混合溶液をスチーム噴出器を用いて混合する以外は参考例1と同様に、共凝固した。
【0129】
乳化重合共役ジエン系共重合体の乳化液とシリカ懸濁液とをスチーム噴出器を用いて混合すると、両者の混合物は、高圧スチームの温度と圧力の刺激を受けるなどの作用を受けて、乳化重合共役ジエン系共重合体の乳化微粒子とシリカ懸濁粒子とがより均一に混合した。
【0130】
この凝固物を熱風乾燥後、さらに熱ロールで追加乾燥して、ゴム組成物を調製した。シリカの含量はほぼ55phrであった。このゴム組成物の加硫物性を評価し、第6表にまとめた。
【0131】
実施例12〜実施例14
実施例11と同様な処方で、乳化重合体の乳化液「M−SB−L4」とシリカ懸濁液 「WS−1」との混合溶液をスチーム噴出器を用いて、高圧スチームの圧力を表に示すように、0.3MPa、0.6MPa、1.1MPaと変えて、混合溶液を均一化し、共凝固した。シリカの含量はほぼ55phrであったが、スチームの圧力が低くなるとゴム組成物の洗浄液は濁りが増加する傾向であった。
【0132】
この凝固物を熱風乾燥後、さらに熱ロールで追加乾燥して、ゴム組成物を調製した。このゴム組成物の加硫物性を評価し、第6表にまとめた。
【表6】
第6表にまとめた結果より、より高温で、より勢いよく吹き出し剪断力が大きい条件ほど乳化重合体の乳化液とシリカ懸濁液との均一化が促進され、加硫物性が良くなったと思われる。
図1
図2