(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記圧力調整部によって均一に調整された前記第一圧縮部の吐出側の空間の圧力と前記第二圧縮部の吐出側の空間の圧力とを、所定の差圧となるよう調整する差圧調整部を備える請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の遠心圧縮機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したようなダブルフローギアド圧縮機では、両端の圧縮部から従動軸に対して働くスラスト力を相殺して、従動軸に中心軸方向のどちらか一方に偏ったスラスト力が働かない状態とすることが好ましい。ところが、ダブルフローギアド圧縮機の設置状況によっては、圧縮部の吐出口に接続される配管の長さの差に起因して流路抵抗が異なってしまう場合がある。そのため、両側の圧縮部の吐出圧力に差が生じて、スラスト力が生じ、圧縮部を支持する従動軸やそのスラスト軸受等に意図しない負荷がかかることがある。
【0006】
本発明は、二つの圧縮部から生じるスラスト力の差によって生じる負荷を低減することが可能な遠心圧縮機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様に係る遠心圧縮機は、回転駆動される駆動軸と、前記駆動軸に接続される駆動歯車と、前記駆動歯車の回転が伝達される従動歯車と、前記従動歯車の中心軸方向の両側へと延びる従動軸と、前記従動軸の中心軸方向の第一の端部側に設けられ、前記従動軸の回転によって流体を圧縮する第一圧縮部と、前記従動軸の中心軸方向の第二の端部側に設けられ、前記従動軸の回転によって流体を圧縮する第二圧縮部と、前記第一圧縮部における流体の吐出側の空間の圧力と前記第二圧縮部における流体の吐出側の空間の圧力とを均一に調整するための圧力調整部と
、前記第一圧縮部及び前記第二圧縮部から吐出される流体の熱交換を行う熱交換器と、前記第一圧縮部の吐出口と前記熱交換器とを接続する第一接続路と、前記第二圧縮部の吐出口と前記熱交換器とを接続する第二接続路と、を備え、前記圧力調整部は、前記第一圧縮部の吐出口からの距離と、前記第二圧縮部の吐出口からの距離とが同じとなる位置で、前記第一接続路と前記第二接続路とを接続する。
【0008】
このような遠心圧縮機によれば、第一圧縮部の吐出圧力と第二圧縮部の吐出圧力との差を軽減することができる。したがって、第一圧縮部と第二圧縮部との圧力差により生じるスラスト力を軽減できる。これにより、第一圧縮部及び第二圧縮部の二つの圧縮部から生じるスラスト力の差によって生じる負荷を低減することができる。
【0010】
このような遠心圧縮機によれば、第一圧縮部における流体の吐出側の空間である第一接続路内の空間の圧力と、第二圧縮部における流体の吐出側の空間である第二接続路内の空間の圧力とを均一とすることができる。例えば、遠心圧縮機の設置場所等のレイアウトの都合上、第一接続路と第二接続路との長さに違いが出ることで、第一接続路及び第二接続路における圧力損失に差が生じてしまう場合であっても、第一圧縮部の吐出圧力と第二圧縮部の吐出圧力に生じる差を容易に軽減することができる。したがって、第一圧縮部と第二圧縮部との圧力差により生じるスラスト力を容易に軽減できる。これにより、第一圧縮部及び第二圧縮部の二つの圧縮部から生じるスラスト力の差による負荷を容易に低減することができる。
【0011】
本発明の
第二又は第三の態様に係る遠心圧縮機は、前記第一圧縮部は、前記従動軸に対して固定されて該従動軸とともに回転して流体を圧縮する第一インペラと、前記第一インペラの前記従動軸の中心軸方向の第二の端部側の面との間に第一空間を形成する第一ケーシングとを有し、前記第二圧縮部は、前記従動軸に対して固定されて該従動軸とともに回転して流体を圧縮する第二インペラと、前記第二インペラの前記従動軸の中心軸方向の第一の端部側の面との間に第二空間を形成する第二ケーシングとを有し、前記圧力調整部は、前記第一空間及び前記第二空間を連通させるように、前記第一ケーシング及び前記第二ケーシングを貫通して設けられてもよい。
【0012】
このような遠心圧縮機によれば、第一空間の圧力と第二空間との圧力を均一にすることができる。そのため、第一圧縮部及び第二圧縮部内の吐出口よりも吸込口側の流路の圧力を均一に近づけて圧力差を小さくすることができる。即ち、第一圧縮部における流体の吐出側の流路の空間の圧力と、第二圧縮部における流体の吐出側の流路の空間の圧力とを高い精度で均一に近づけるとすることができる。その結果、第一圧縮部の吐出圧力と第二圧縮部の吐出圧力とに生じる差をより一層軽減することができる。したがって、第一空間と第二空間とを圧力調整部で接続することで、第一圧縮部と第二圧縮部との圧力差により生じるスラスト力を容易により一層軽減できる。これにより、第一圧縮部及び第二圧縮部の二つの圧縮部から生じるスラスト力の差による負荷をより一層低減することができる。
【0013】
本発明の第四の態様に係る遠心圧縮機は、前記圧力調整部によって均一に調整された前記第一圧縮部の吐出側の空間の圧力と前記第二圧縮部の吐出側の空間の圧力とを、所定の差圧となるよう調整する差圧調整部を備えていてもよい。
【0014】
このような遠心圧縮機によれば、第一空間の圧力と第二空間の圧力との差を均一な状態から調整することができ、所定の差圧に高い精度で調整することができる。そのため、第一圧縮部及び第二圧縮部により従動軸に働くスラスト力を容易に調整することができる。したがって、第一圧縮部及び第二圧縮部の影響以外で従動軸や駆動軸等に働いたスラスト力を相殺することができる。これにより、従動軸や駆動軸に余計な負荷をかけることなく安定して運転することができる。
【0015】
本発明の第五の態様に係る遠心圧縮機は、前記駆動歯車及び前記従動歯車がはすば歯車であり、前記差圧調整部は、前記駆動歯車と前記従動歯車とによって生じるスラスト力を相殺する差圧となるよう調整してもよい。
【0016】
このような構成の遠心圧縮機によれば、はすば歯車で構成された駆動歯車や従動歯車により生じるスラスト力を相殺する差圧とすることで、はすば歯車による従動軸や駆動軸等に働いたスラスト力を相殺することができる。これにより、従動軸や駆動軸に余計な負荷をかけることなくより安定して運転することができる。
【発明の効果】
【0017】
上記した遠心圧縮機によれば、第一圧縮部における流体の吐出側の空間の圧力と第二圧縮部における流体の吐出側の空間の圧力とを均一に調整することで、二つの圧縮部のスラスト力のずれによって生じる負荷を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
《第一実施形態》
以下、本発明における第一実施形態について
図1及び
図2を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の遠心圧縮機1は、増速機10を内蔵したいわゆるギアド圧縮機である。第一実施形態の遠心圧縮機1は、動力を発生させる駆動源19と、駆動源19によって回転駆動される駆動軸2と、駆動軸2の回転駆動を変速、伝達させる増速機10と、増速機10によって伝達された動力が出力される従動軸3と、従動軸3に伝達された動力により駆動する複数の圧縮部4と、複数の圧縮部4で圧縮された流体を冷却する熱交換器5と、流体の流路である配管部6とを備える。
【0020】
駆動軸2は、駆動源19によって中心軸回りに回転する回転軸である。
増速機10は、駆動軸2の中心軸方向の第二の端部側で接続される駆動歯車11と、駆動歯車11の回転がそれぞれ伝達される第一従動歯車12及び第二従動歯車13と、を有する。増速機10は、第一従動歯車12に対して駆動歯車11の回転を伝達する第一中間歯車14と、第二従動歯車13に対して駆動歯車11の回転を伝達する第二中間歯車15とを有する。即ち、本実施形態の増速機10の歯車群は、第二従動歯車13から順に第二中間歯車15、駆動歯車11、第一中間歯車14、第一従動歯車12と互いに噛み合って配置されている。増速機10を構成する歯車群は、ケーシング20の内部に収められている。本実施形態における増速機10を構成する歯車群は、平歯車である。
【0021】
第一中間歯車14は、第一中間軸17によって回転可能に支持されている。また、第二中間歯車15は、第二中間軸18によって回転可能に支持されている。第一中間軸17及び第二中間軸18は、ケーシング20に図示しない軸受を介して支持されている。
【0022】
従動軸3は、第一従動歯車12の中心軸方向の両側に延びる第一従動軸31と、第二従動歯車13の中心軸方向の両側に延びる第二従動軸32とを有する。第一従動軸31及び第二従動軸32は、ケーシング20に図示しない軸受を介して支持されている。
【0023】
圧縮部4は、吸込口より吸い込まれたガス等の流体を、その内部に形成された流路を介して径方向外周側に向かって圧縮して吐出するものである。圧縮部4は、第一従動軸31において駆動源19が設けられた側である中心軸方向の第一の端部側に設けられる第一圧縮部41と、第一従動軸31において駆動源19が設けられた側と反対側となる中心軸方向の第二の端部側に設けられる第二圧縮部42と、第二従動軸32において中心軸方向の第二の端部側に設けられる第三圧縮部43、第二従動軸32において中心軸方向の第一の端部側に設けられる第四圧縮部44とを有する。
【0024】
第一圧縮部41は、第一従動軸31の中心軸方向の第一の端部側の端部に設けられ、第一従動軸31の回転によって流体を吸込口から径方向外側の吐出口に向かって圧縮して流通させる。第一圧縮部41は、遠心圧縮機1における一段目の圧縮部4である。本実施形態の第一圧縮部41は、第一従動軸31に対して固定されて第一従動軸31とともに回転して流体を圧縮する第一インペラ41aと、第一インペラ41aを覆って流体の流路を形成する第一ケーシング41bとを有する。
【0025】
第二圧縮部42は、第一従動軸31の中心軸方向の第二の端部側の端部に設けられ、第一従動軸31の回転によって流体を吸込口から径方向外側の吐出口に向かって圧縮して流通させる。即ち、第二圧縮部42は、第一圧縮部41に対して第一従動軸31を挟んで反対側の端部に配置されている。第二圧縮部42は、第一圧縮部41と同様の構成をしており、第一圧縮部41と同じ流量の流体を第一従動軸31の回転によって圧縮する。第二圧縮部42は、第一圧縮部41と同時に流体を圧縮することで遠心圧縮機1における一段目の圧縮部4となっている。本実施形態の第二圧縮部42は、第一従動軸31に対して固定されて第一従動軸31とともに回転して流体を圧縮する第二インペラ42aと、第二インペラ42aを覆って流体の流路を形成する第二ケーシング42bとを有する。
【0026】
第三圧縮部43は、第二従動軸32の中心軸方向の第二の端部側の端部に設けられ、第二従動軸32の回転によって流体を吸込口から径方向外側の吐出口に向かって圧縮して流通させる。第三圧縮部43は、遠心圧縮機1における二段目の圧縮部4である。本実施形態の第三圧縮部43は、第二従動軸32に対して固定されて第二従動軸32とともに回転して流体を圧縮する第三インペラ43aと、第三インペラ43aを覆って流体の流路を形成する第三ケーシング43bとを有する。
【0027】
第四圧縮部44は、第二従動軸32の中心軸方向の第二の端部側の端部に設けられ、第二従動軸32の回転によって流体を吸込口から径方向外側の吐出口に向かって圧縮して流通させる。即ち、第四圧縮部44は、第三圧縮部43に対して第二従動軸32を挟んで反対側の端部に配置されている。第四圧縮部44は、遠心圧縮機1における三段目の圧縮部4である。本実施形態の第四圧縮部44は、第二従動軸32に対して固定されて第二従動軸32とともに回転して流体を圧縮する第四インペラ44aと、第四インペラ44aを覆って流体の流路を形成する第四ケーシング44bとを有する。
【0028】
熱交換器5は、圧縮過程での流体を中間的に冷却することによって、遠心圧縮機1の駆動に必要とされる動力を低減させる。本実施形態の熱交換器5は、第一圧縮部41及び第二圧縮部42で圧縮された流体の熱交換を行うことで冷却を行う第一熱交換器51と、第三圧縮部43で圧縮された流体の冷却を行う第二熱交換器52とを有する。
【0029】
第一熱交換器51は、二つの入口ノズルと一つの出口ノズルを備えている。第一段熱交換器5は、第一圧縮部41及び第二圧縮部42から吐出される二系統の流体を冷却するとともに、二系統の流体を合流させる。第一熱交換器51は、第一圧縮部41及び第二圧縮部42と、第三圧縮部43との間に配置されている。本実施形態の第一熱交換器51は、第一圧縮部41よりも第二圧縮部42に近い位置である駆動軸2の中心軸方向の第二の端部側に配置されている。
【0030】
第二熱交換器52は、一つの入口ノズルと一つの出口ノズルを備えている。第二段熱交換器5は、第三圧縮部43から吐出される流体を冷却し、第四圧縮部44へ送り出す。
【0031】
配管部6は、各圧縮部4で圧縮された流体を流通する流路を形成する配管である。配管部6は、第一圧縮部41から第一熱交換器51までを接続する第一圧縮部吐出配管61と、第二圧縮部42から第一熱交換器51までを接続する第二圧縮部吐出配管62と、第一熱交換器51から第三圧縮部43までを接続する第三圧縮部吸込配管63とを有する。配管部6は、第三圧縮部43から第二熱交換器52までを接続する第三圧縮部吐出配管64と、第二熱交換器52から第四圧縮部44までを接続する第四圧縮部吸込配管65と、第四圧縮部44から所定のプラントPまでを接続する第四圧縮部吐出配管66とを有する。配管部6は、第一圧縮部41の吐出口の圧力と第二圧縮部42の吐出口の圧力とを均一に調整するための圧力調整部7を有する。
【0032】
第一圧縮部吐出配管61は、第一圧縮部41の吐出口と第一熱交換器51とを接続する第一接続路であって、第一圧縮部41で圧縮された流体を第一熱交換器51まで流通させる。また、第一圧縮部吐出配管61は、第一圧縮部41の吐出口と第一熱交換器51の入口ノズルの一つとを接続している。
【0033】
第二圧縮部吐出配管62は、第二圧縮部42の吐出口と第一熱交換器51とを接続する第二接続路であって、第二圧縮部42で圧縮された流体を第一熱交換器51まで流通させる。また、第二圧縮部吐出配管62は、第二圧縮部42の吐出口と第一熱交換器51の第一圧縮部吐出配管61が接続されていない側の入口ノズルの一つとを接続している。
【0034】
第三圧縮部吸込配管63は、第一熱交換器51で冷却された第一圧縮部41からの流体と第二圧縮部42からの流体とを合流させて第三圧縮部43まで流通させる配管であって、第一熱交換器51の出口ノズルと第三圧縮部43の吸込口とを接続している。
【0035】
第三圧縮部吐出配管64は、第三圧縮部43で圧縮された流体を第二熱交換器52まで流通させる流路であって、第三圧縮部43の吐出口と第二熱交換器52の入口ノズルとを接続している。
【0036】
第四圧縮部吸込配管65は、第二熱交換器52で冷却された第三圧縮部43からの流体を第四圧縮部44まで流通させる配管であって、第二熱交換器52の出口ノズルから第四圧縮部44の吸込口に接続されている。
【0037】
第四圧縮部吐出配管66は、第四圧縮部44で圧縮された流体を圧縮された流体の供給先である所定のプラントPまで流通させる配管であって、第四圧縮部44の吐出口からプラントPの不図示の機器に接続されている。
【0038】
圧力調整部7は、第一圧縮部41の吐出側の空間の圧力と第二圧縮部42の吐出側の空間の圧力とを均一に調整する。圧力調整部7は、
図2に示すように。第一接続路である第一圧縮部吐出配管61と第二接続路である第二圧縮部吐出配管62とを接続している。本実施形態の圧力調整部7は、第一圧縮部吐出配管61における第一圧縮部41の吐出口からの距離lと第二圧縮部吐出配管62における第二圧縮部42の吐出口からの距離lとが同じとなる位置で連通させる。
【0039】
次に、上記構成の第一実施形態の遠心圧縮機1の作用について説明する。
上記のような実施形態の遠心圧縮機1では、圧縮すべき流体が第一圧縮部41及び第二圧縮部42の吸込口にそれぞれ同時に吸い込まれると、第一圧縮部41及び第二圧縮部42によって一段目の圧縮が行われる。
【0040】
ここで、第一圧縮部41及び第二圧縮部42の吐出口からの距離lが同じとなる位置で、第一圧縮部吐出配管61と第二圧縮部吐出配管62とが圧力調整部7である配管によって接続されている。そのため、第一圧縮部吐出配管61内の圧力調整部7が接続されている付近の圧力と第二圧縮部吐出配管62内の圧力調整部7が接続されている付近の圧力とが均一になる。即ち、第一圧縮部41における流体の吐出側の空間である第一圧縮部吐出配管61内の空間の圧力と、第二圧縮部42における流体の吐出側の空間である第二圧縮部吐出配管62内の空間の圧力とが、圧力調整部7が接続されている部分でほぼ均一の状態となっている。
なお、ここでいう圧力が均一な状態とは、第一圧縮部41側と第二圧縮部42側とで実質的に第一従動軸31等に影響を及ぼさないとみなせる程度の差しかない状態をいう。
【0041】
この状態で、第一圧縮部41によって圧縮された流体は、第一圧縮部吐出配管61内を流れて、第一熱交換器51の入口ノズルに流入する。同時に、第二圧縮部42によって圧縮された流体も、第二圧縮部吐出配管62内を流れて、第一熱交換器51の入口ノズルに流入する。
【0042】
第一圧縮部吐出配管61と第二圧縮部吐出配管62とから第一熱交換器51の二つの入口ノズルに流入した流体は、第一熱交換器51内で合流され、中間冷却される。その後、第三圧縮部吸込配管63内を流通して第三圧縮部43の吸込口に流入すると、第三圧縮部43によって二段目の圧縮が行われる。第三圧縮部43によって圧縮された流体は、第三圧縮部吐出配管64内を流れて、第二熱交換器52に流入する。第二熱交換器52に流入した流体は、第二熱交換器52内で中間冷却された後、第四圧縮部吸込配管65内を流通して第四圧縮部44の吸込口に流入する。その後、流体は第四圧縮部44において三段目の圧縮が施された後、圧縮された流体の供給先である所定のプラントPの機器に供給される。
【0043】
上記のような遠心圧縮機1によれば、圧力調整部7により第一圧縮部41及び第二圧縮部42における流体の吐出側の圧力を均一にすることで、第一圧縮部41の吐出圧力と第二圧縮部42の吐出圧力との差を軽減することができる。したがって、第一圧縮部41と第二圧縮部42との圧力差により生じるスラスト力を軽減できる。これにより、第一圧縮部41及び第二圧縮部42の二つの圧縮部4から生じるスラスト力の差によって生じる負荷を低減することができる。
【0044】
また、圧力調整部7である配管によって、第一圧縮部41及び第二圧縮部42の吐出口からの距離lが同じ位置で、第一圧縮部吐出配管61と第二圧縮部吐出配管62とが接続されている。そのため、第一圧縮部41の吐出口と接続されて第一圧縮部41における流体の吐出側の空間である第一圧縮部吐出配管61内の空間の圧力と、第二圧縮部42の吐出口と接続されて第二圧縮部42における流体の吐出側の空間である第二圧縮部吐出配管62内の空間の圧力とを均一とすることができる。例えば、遠心圧縮機1の設置場所等のレイアウトの都合上、第一圧縮部吐出配管61と第二圧縮部吐出配管62との配管の長さに違いが出ると、二つの配管における圧力損失に差が生じてしまう。即ち、この場合では第一圧縮部吐出配管61内の圧力と第二圧縮部吐出配管62内の圧力とに差が生じ、第一圧縮部41の吐出圧力と第二圧縮部42の吐出圧力とに差が生じる。ところが、第一圧縮部41及び第二圧縮部42の吐出口からの距離lが等しく同じ位置の空間の圧力が均一にされていることで、第一圧縮部41の吐出圧力と第二圧縮部42の吐出圧力に生じる差を容易に軽減することができる。したがって、第一圧縮部41と第二圧縮部42との圧力差により生じるスラスト力を容易に軽減できる。これにより、第一圧縮部41及び第二圧縮部42の二つの圧縮部4から生じるスラスト力の差によって生じる負荷を容易に低減することができる。
【0045】
《第二実施形態》
次に、
図3を参照して第二実施形態の遠心圧縮機1について説明する。
第二実施形態においては第一実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。この第二実施形態の遠心圧縮機1は、圧力調整部7の接続される位置について、第一実施形態と相違する。
【0046】
即ち、第二実施形態の遠心圧縮機1は、
図3に示すように、圧力調整部7に代わって、第一圧縮部41の第一インペラ41aと第一ケーシング41bとの間に形成される空間と、第二圧縮部42の第二インペラ42aと第二ケーシング42bとの間に形成される空間とを接続する空間圧力調整部70とを備える。
【0047】
第二実施形態の第一圧縮部41では、第一インペラ41aの第一従動軸31の中心軸方向の第二の端部側の面との間に第一空間A1を形成するよう第一ケーシング41bが配置されている。
第一空間A1は、第一ケーシング41b内の空間であって、第一インペラ41aと第一ケーシング41bの壁面とによって画成される空間である。第一空間A1は、第一インペラ41aのディスクの第一従動軸31の中心軸方向の第二の端部側の底面と、第一ケーシング41bの底部とによって挟まれた空間である。
【0048】
第二実施形態の第二圧縮機では、第二インペラ42aの第一従動軸31の中心軸方向の第一の端部側の面との間に第二空間A2を形成するよう第二ケーシング42bが配置されている。
第二空間A2は、第二ケーシング42b内の空間であって、第二インペラ42aと第二ケーシング42bの壁面とによって画成される空間である。第二空間A2は、第二インペラ42aのディスクの第一従動軸31の中心軸方向の第一の端部側の底面と、第二ケーシング42bの底部とによって挟まれた空間である。
【0049】
空間圧力調整部70は、第一空間A1及び第二空間A2を連通させるように、第一ケーシング41b及び第二ケーシング42bを貫通して設けられる。本実施形態の空間圧力調整部70は、第一ケーシング41bにおける第一従動軸31の中心軸方向の第二の端部側の面である第一ケーシング41bの底面を貫通する第一貫通孔71と、第二ケーシング42bにおける第一従動軸31の中心軸方向の第一の端部側の面である第二ケーシング42bの底面を貫通する第二貫通孔72と、第一貫通孔71と第二貫通孔72とを接続する5mm程度の小径の配管である空間圧力調整部本体73とを有する。
【0050】
次に、上記構成の第二実施形態の遠心圧縮機1の作用について説明する。
第一圧縮部41の吸込口から吸い込まれた流体は、第一インペラ41aが回転することで圧縮される。そして、第一圧縮部41の吐出口に向かって流体は流れていく。第一インペラ41aは第一ケーシング41bに対して回転するために、第一ケーシング41bと第一インペラ41aとの間には流体の流れを阻害しないような微小な隙間が形成されている。第一空間A1はこの微小な隙間によって流体の吐出側の流路と連通している。そのため、第一空間A1内の圧力は、圧縮された流体が流通する吐出側の流路に対応する圧力とほぼ同等となっている。
【0051】
同様に、第二圧縮部42の吸込口から吸い込まれた流体は、第二インペラ42aが回転することで圧縮される。そして、第二圧縮機の吐出口に向かって流体は流れていく。第二インペラ42aは第二ケーシング42bに対して回転するために、第二ケーシング42bと第二インペラ42aとの間には流体の流れを阻害しないような微小な隙間が形成されている。第二空間A2はこの微小な隙間によって流体の吐出側の流路と連通している。そのため、第二空間A2内の圧力は、圧縮された流体が流通する吐出側の流路に対応する圧力とはほぼ同等となっている。
【0052】
第一空間A1と第二空間A2とを第一貫通孔71と第二貫通孔72とを介して空間圧力調整部本体73である配管によって連通させることで、第一空間A1の圧力と第二空間A2との圧力が均一となっている。即ち、第一空間A1と微小な隙間で連通する第一圧縮部41における流体の吐出側の流路の空間の圧力と、第二空間A2と微小な隙間で連通する第二圧縮部42における流体の吐出側の流路の空間の圧力とが、ほとんど一定の状態となっている。この状態で第一圧縮部41によって圧縮された流体は、第一圧縮部吐出配管61内を流れて、第一熱交換器51の入口ノズルに流入する。同時に、第二圧縮部42によって圧縮された流体も、第二圧縮部吐出配管62内を流れて、第一熱交換器51の入口ノズルに流入する。
【0053】
上記のような遠心圧縮機1によれば、空間圧力調整部本体73である配管によって第一貫通孔71と第二貫通孔72とを介して、第一空間A1と第二空間A2とを接続することで、第一空間A1の圧力と第二空間A2との圧力を均一にすることができる。そのため、第一圧縮部41内及び第二圧縮部42内の吐出口よりも吸込口側の流路の圧力を均一に近づけて圧力差を小さくすることができる。即ち、第一圧縮部41における流体の吐出側の流路の空間の圧力と、第二圧縮部42における流体の吐出側の流路の空間の圧力とを高い精度で均一に近づけることができる。その結果、第一圧縮部41の吐出圧力と第二圧縮部42の吐出圧力とに生じる差をより一層軽減することができる。したがって、第一空間A1と第二空間A2とを空間圧力調整部本体73で接続することで、第一圧縮部41と第二圧縮部42との圧力差により生じるスラスト力をより一層軽減することができる。これにより、第一圧縮部41及び第二圧縮部42の二つの圧縮部4から生じるスラスト力の差による負荷をより一層低減することができる。
【0054】
また、第一空間A1と第二空間A2とがそれぞれ第一ケーシング41bと第二ケーシング42bとに面する空間であるため、各ケーシング20に第一貫通孔71及び第二貫通孔72を設けるだけで第一空間A1及び第二空間A2を接続する空間圧力調整部70を設けることができる。
【0055】
《第三実施形態》
次に、
図4を参照して第三実施形態の遠心圧縮機1について説明する。
第三実施形態においては第一実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。この第三実施形態の遠心圧縮機1は、圧力調整部7によって均一にされた圧力に再び差を生じさせる点について、第一実施形態と相違する。
【0056】
即ち、第三実施形態の遠心圧縮機1は、
図4に示すように、第二実施形態の空間圧力調整部70に設けられる差圧調整部8を有する。また、本実施形態の遠心圧縮機1の増速機10の歯車群は、はすば歯車で構成されている。即ち、駆動歯車11a、第一従動歯車12a、第二従動歯車13a、第一中間歯車14a、及び第二中間歯車15aはすべてはすば歯車である。
【0057】
差圧調整部8は、空間圧力調整部70が均一に調整した第一圧縮部41の吐出側の空間の圧力と第二圧縮部42の吐出側の空間の圧力との差圧が、所定の差圧となるよう調整する。本実施形態の差圧調整部8は、第一従動軸31に生じるスラスト力に応じて、空間圧力調整部70によって均一にされている第一空間A1の圧力と第二空間A2の圧力とに差が生じるように調整する。具体的には差圧調整部8は、第一従動軸31の中心軸方向の変位を測定する変位測定部81と、測定された第一従動軸31の変位に基づいて所定の差圧を算出する差圧制御部82と、差圧制御部82の算出結果に基づいて空間圧力調整部本体73の開放量を調整する弁部83とを有する。
【0058】
変位測定部81は、ケーシング20に設置された変位センサによって第一従動軸31のケーシング20に対する中心軸方向の相対変位量を測定する。変位測定部81は、差圧制御部82に測定結果を出力する。
差圧制御部82は、変位測定部81の測定結果が入力される変位入力部82aと、入力された変位に基づいて第一従動軸31に働くスラスト力を算出するスラスト力算出部82bと、スラスト力算出部82bで算出したスラスト力に基づいて、第一空間A1と第二空間A2とにおける差圧を算出する差圧算出部82cと、差圧算出部82cの算出結果に基づいて弁部83に開放量を指示する弁調整部82dとを有する。
【0059】
変位入力部82aは、変位測定部81によって測定されたケーシング20に対する第一従動軸31の中心軸方向の相対変位量の情報が入力される。変位入力部82aは、入力された相対変位量の情報をスラスト力算出部82bに送る。
スラスト力算出部82bは、受け取った相対変位量の情報に基づいて、第一従動軸31にどれだけのスラスト力が働いているかを算出する。スラスト力算出部82bは、算出したスラスト力を差圧算出部82cに送る。
【0060】
差圧算出部82cは、受け取ったスラスト力に基づいて、増速機10の駆動歯車11aと第一中間歯車14aを介して接続される第一従動歯車12aによって第一従動軸31に生じるスラスト力を相殺させるように第一空間A1の圧力と第二空間A2の圧力との差圧を算出する。差圧算出部82cは、算出した差圧を所定の差圧として情報を弁調整部82dに送る。
弁調整部82dは、受け取った所定の差圧の情報に基づいて、弁部83の開放量を算出し、算出した開放量となるように弁部83に指示を信号として送る。
【0061】
弁部83は、空間圧力調整部本体73である配管の途中に設けられている。弁部83は、弁調整部82dから入力される信号に基づいて、弁を開閉することで配管の流量を調整する。
【0062】
次に、上記構成の第三実施形態の遠心圧縮機1の作用について説明する。
第三実施形態の遠心圧縮機1は、増速機10を構成する歯車群がはすば歯車で形成されているため、駆動軸2の回転が伝達される中で、第一中間歯車14aや第一従動歯車12a等に中心軸方向のいずれか一方に向かってスラスト力が働く。即ち、第一従動歯車12aと接続されている第一従動軸31にも中心軸方向のいずれか一方に向かってスラスト力が働く。その結果、第一従動軸31は、ケーシング20に対して中心軸方向の第一の端部側か第二の端部側のいずれかに移動する。
【0063】
第一従動軸31が移動すると、ケーシング20に設けられた変位測定部81によってケーシング20に対する中心軸方向の相対変位量が測定される。変位測定部81は、測定した相対変位量の情報を差圧制御部82の変位入力部82aに対して出力する。相対変位量の情報が入力された変位入力部82aは、入力された情報をスラスト力算出部82bに送る。スラスト力算出部82bは、受け取った変位量の情報に基づいて、増速機10の歯車群によって第一従動軸31に働いているスラスト力を算出する。スラスト力算出部82bは、算出したスラスト力の情報を差圧算出部82cに送る。差圧算出部82cは、受け取ったスラスト力の情報に基づいて、第一従動軸31に働いているスラスト力を相殺するための差圧である第一空間A1の圧力と第二空間A2の圧力との差を所定の差圧として算出する。差圧算出部82cは、算出した所定の差圧の情報を弁調整部82dに送る。弁調整部82dは、受け取った所定の差圧の情報に基づいて、弁部83の開放量を算出して弁部83に指示を信号として送る。信号を受けた弁部83は、指示された開放量となるように、空間圧力調整部本体73である配管を連通させる量を調整する。その結果、第一空間A1と第二空間A2との圧力が所定の差圧だけずれた状態となる。
【0064】
この状態で、第一圧縮部41によって圧縮された流体は、第一圧縮部吐出配管61内を流れて、第一熱交換器51の入口ノズルに流入する。同時に、第二圧縮部42によって圧縮された流体も、第二圧縮部吐出配管62内を流れて、第一熱交換器51の入口ノズルに流入する。第一圧縮部41から圧縮された流体が吐出される吐出圧力と第二圧縮部42から圧縮された流体が吐出される吐出圧力とによって、第一圧縮部41から第一従動軸31に働くスラスト力と第二圧縮部42から第一従動軸31に働くスラスト力とに差が生じる。中心軸方向のスラスト力の小さい方に向かって第一従動軸31が移動する。したがって、第一従動軸31は、駆動軸2の回転が伝達される中で、はすば歯車で構成された増速機10から働くスラスト力により移動する前の位置に戻される。
【0065】
上記のような遠心圧縮機1によれば、空間圧力調整部70によって均一に調整可能とされた第一空間A1の圧力と第二空間A2の圧力とを、差圧算出部82cで算出した所定の差圧となるように弁部83の開放量を調整する。その結果、第一空間A1の圧力と第二空間A2の圧力との差を均一な状態から調整することができ、所定の差圧に高い精度で調整することができる。そのため、第一圧縮部41及び第二圧縮部42により第一従動軸31に働くスラスト力を容易に調整することができる。したがって、第一圧縮部41及び第二圧縮部42の影響以外で第一従動軸31や第一従動軸31に接続される駆動軸2等に働いたスラスト力を容易に相殺することができる。これにより、増速機10である第一従動軸31や駆動軸2に余計な負荷をかけることなく安定して運転することができる。
【0066】
また、駆動歯車11aや第一従動歯車12a等の歯車群が、はすば歯車である場合に、差圧算出部82cで算出する所定の差圧を、これらの歯車群により生じるスラスト力を相殺する差圧とすることで、はすば歯車による第一従動軸31や第一従動軸31に接続される駆動軸2等に働いたスラスト力を相殺することができる。これにより、第一従動軸31や駆動軸2に余計な負荷をかけることなくより安定して運転することができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0068】
なお、圧縮部4は、本実施形態の遠心圧縮機1のように三段の構成であることに限定されるものではない。即ち、第四圧縮部44がない二段の構成であってもよく、第五圧縮部や第六圧縮部を有して四段以上の構成としてもよい。