特許第6121015号(P6121015)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6121015
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】塗料組成物、塗装体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20170417BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20170417BHJP
   C09D 5/29 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   C09D201/00
   C09D7/12
   C09D5/29
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-29644(P2016-29644)
(22)【出願日】2016年2月19日
【審査請求日】2016年9月28日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成27年8月21日ホテルメルパルク仙台において開催された東北丸T会/平成27年10月2日松山全日空ホテル、平成27年10月12日北海道函館湯の川平成館海羊亭、平成27年10月16日博多エクセルホテル東急、平成27年10月25日電気ビル共創館においてそれぞれ開催されたDNT会で発表/ペイント&コーティングジャーナル第3157号(平成27年11月25日)株式会社コーティングメディア発行第1頁に発表
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003322
【氏名又は名称】大日本塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】甲斐上 誠
(72)【発明者】
【氏名】大田 快
(72)【発明者】
【氏名】田邉 祥子
(72)【発明者】
【氏名】赤沼 史子
(72)【発明者】
【氏名】山田 雅隆
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−177541(JP,A)
【文献】 特開2013−040293(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/005434(WO,A1)
【文献】 特開2005−324186(JP,A)
【文献】 特開2013−226814(JP,A)
【文献】 特開2015−112565(JP,A)
【文献】 特開2009−240960(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00− 10/00
101/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鱗片状金属顔料着色顔料、及びJIS K 2256に規定される混合アニリン点又はアニリン点が12〜70℃の範囲内にある溶剤を含む塗料組成物であって、該塗料組成物中における不揮発分の含有量が35〜60質量%であり且つ該不揮発分中における顔料体積濃度が10〜25体積%である塗料組成物であり、
前記塗料組成物の不揮発分から鱗片状金属顔料を除いた場合の隠蔽率が0.1〜50%であり、ここで、隠蔽率はJIS K−5600−4−1方法Bに従って測定されることを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
前記着色顔料は、50%体積平均径が5〜1000nmの範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記塗料組成物中に含まれる顔料に占める鱗片状金属顔料の割合が0.1〜99.9質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記着色顔料が無機顔料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項5】
更に、アミド化合物を含むことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載の塗料組成物で建築物又は構築物を塗装することを特徴とする塗装体の製造方法。
【請求項7】
建築物又は構築物と、建築物又は構築物上に形成された塗膜とを備えており、前記塗膜が請求項1〜のいずれか一項に記載の塗料組成物から形成されたことを特徴とする塗装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物並びに該塗料組成物を用いた塗装体及び該塗装体の製造方法に関し、特には、刷毛やローラーを用いて塗装を行う際にもムラなく高輝度な金属調塗膜を形成することが可能な塗料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高輝度で高意匠の塗膜を形成できるメタリック塗料は、自動車、家庭用電化製品、事務機器、玩具の他、建築物や構築物といった構造物等に幅広く利用されている。メタリック塗料は、一般的にアルミ等の鱗片状の金属顔料が配合されるが、この鱗片状金属顔料が基材に対して平行に配列された状態で塗膜中に存在していると、高輝度な塗膜となる。
【0003】
また、鱗片状金属顔料に着色顔料を組み合わせることで、鱗片状金属顔料に由来する金属光沢を維持しながら、鱗片状金属顔料に由来する色とは異なる色を表現する技術も知られている。
【0004】
特開2003−96334号公報(特許文献1)は、アルミニウムフレークの表面に着色顔料が付着した複合顔料を記載している。特開昭63−258973号公報(特許文献2)は、任意成分であるものの着色顔料を必須成分である光輝剤と組み合わせることを記載している。特開2007−106925号公報(特許文献3)は、透明な鱗片状基材が酸化チタン等で被覆された低明度光輝性顔料と透明性着色顔料を組み合わせることを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−96334号公報
【特許文献2】特開昭63−258973号公報
【特許文献3】特開2007−106925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
鱗片状金属顔料を含む塗料組成物に関して、鱗片状金属顔料を平行に配列させる最も一般的な方法は、スプレー塗装により鱗片状金属顔料の配向を制御する方法である。鱗片状金属顔料を含む塗料組成物は、スプレー塗装により、光輝感のある塗膜を形成することが可能であるが、既に建築・建設された構造物(建築物及び構築物)を塗り替える場合、塗装が困難になる問題があった。例えば、スプレー塗装の中でも、塗着効率の観点から、静電スプレー塗装が好適であるが、屋外での塗装は困難であり、建築物や構築物の塗り替えに対しては不適である。また、エアスプレー塗装やエアレススプレー塗装を屋外で行うと、周囲への塗料の飛散も大きく、コストや環境の面から好ましくない。このため、スプレー塗装を採用する際には屋内での塗装が好ましく、スプレー塗装は屋外での塗装に不適であると言える。
【0007】
一方、塗装手段としては刷毛塗装やローラー塗装があり、これら塗装手段は、スプレー塗装と比較して屋外での塗着効率に優れることが知られている。しかしながら、鱗片状金属顔料を含む塗料組成物を刷毛塗装やローラー塗装により基材上に塗布すると、金属調塗膜にムラが出てしまい、輝度を低下させる問題があった。更に、鱗片状金属顔料に加えて着色顔料を含むような塗料組成物について言えば、鱗片状金属顔料の配向制御はより困難なものになる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、刷毛やローラーを用いて塗装を行う際にもムラなく高輝度な金属調塗膜を形成することが可能な塗料組成物を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、刷毛やローラーを用いて塗装を行う場合であってもムラなく高輝度な金属調塗膜を備える塗装体及び該塗装体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、鱗片状金属顔料及び着色顔料を含む塗料組成物において、顔料を高い体積濃度で配合することによって(又は顔料体積濃度(PVC:Pigment Volume Concentration)を高くすることによって)、刷毛やローラーを用いて塗装を行う際にもムラなく高輝度な金属調塗膜を形成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。なお、塗料組成物中での鱗片状金属顔料の割合が高くなると、塗膜のつやを低下させることが知られており、金属調塗膜を形成する目的で塗料組成物を調製する際には鱗片状金属顔料の割合を低くする傾向にあるため、本発明が奏する効果は驚くべきものである。
【0011】
即ち、本発明の塗料組成物は、鱗片状金属顔料及び着色顔料を含む塗料組成物であって、該塗料組成物中における不揮発分の含有量が35〜60質量%であり且つ該不揮発分中における顔料体積濃度が10〜25体積%である塗料組成物であり、
前記塗料組成物の不揮発分から鱗片状金属顔料を除いた場合の隠蔽率が0.1〜50%であり、ここで、隠蔽率はJIS K−5600−4−1方法Bに従って測定されることを特徴とする。
【0012】
本発明の塗料組成物の好適例においては、前記着色顔料は、50%体積平均径が5〜1000nmの範囲内にある。
【0013】
本発明の塗料組成物の他の好適例においては、前記塗料組成物中に含まれる顔料に占める鱗片状金属顔料の割合が0.1〜99.9質量%である。
【0014】
本発明の塗料組成物の他の好適例においては、前記着色顔料が無機顔料である。
【0015】
本発明の塗料組成物の他の好適例においては、更に、JIS K 2256に規定される混合アニリン点又はアニリン点が12〜70℃の範囲内にある溶剤を含む。
【0016】
本発明の塗料組成物の他の好適例においては、更に、アミド化合物を含む。
【0017】
また、本発明の塗装体の製造方法は、上記の塗料組成物で建築物又は構築物を塗装することを特徴とする。
【0018】
更に、本発明の塗装体は、建築物又は構築物と、建築物又は構築物上に形成された塗膜とを備えており、前記塗膜が上記の塗料組成物から形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の塗料組成物によれば、刷毛やローラーを用いて塗装を行う際にもムラなく高輝度な金属調塗膜を形成することが可能な塗料組成物を提供することができる。また、本発明の塗料組成物を用いることで、刷毛やローラーを用いて塗装を行う場合であってもムラなく高輝度な金属調塗膜を備える塗装体及び該塗装体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の塗料組成物を詳細に説明する。本発明の塗料組成物は、鱗片状金属顔料及び着色顔料を含む塗料組成物であって、該塗料組成物中における不揮発分の含有量が35〜60質量%であり且つ該不揮発分中における顔料体積濃度が10〜25体積%である塗料組成物であり、前記塗料組成物の不揮発分から鱗片状金属顔料を除いた場合の隠蔽率が0.1〜50%であり、ここで、隠蔽率はJIS K−5600−4−1方法Bに従って測定されることを特徴とする。
【0021】
本発明の塗料組成物は、塗装作業性や塗膜の仕上がり外観を向上させる観点から、不揮発分の含有量が35〜60質量%である。なお、本発明においては、塗料組成物を130℃で60分間乾燥させた際に残存する成分を不揮発分として取り扱う。
【0022】
また、本発明の塗料組成物において、不揮発分中における顔料体積濃度は10〜25体積%である。なお、ここでいう顔料とは、塗料組成物中に含まれる全ての顔料を指しており、鱗片状金属顔料や着色顔料以外の顔料が使用される場合はその顔料も含まれる。不揮発分中における顔料体積濃度が10体積%以上であれば、刷毛やローラーを用いて塗装を行う際にもムラなく高輝度な金属調塗膜を形成することができる。顔料体積濃度が高いと、鱗片状金属顔料の自由度が低くなり、基材に対して平行に配列された状態で塗膜中に存在することで、このような効果が達成できるものと推定される。一方、不揮発分中における顔料体積濃度が25体積%を超えると、塗膜中の顔料の量が多くなりすぎ、その他の塗膜物性を悪化させることになる。
【0023】
なお、不揮発分中における顔料体積濃度は、不揮発分を構成する各成分の組成及び比重から計算により求めることができる。
【0024】
また、本発明の塗料組成物は、鱗片状金属顔料や着色顔料等の顔料を含むものであるが、本発明は、例えば、鱗片状金属顔料以外の顔料の隠蔽力が強すぎる場合、上記特定した範囲の顔料体積濃度であっても、ムラなく高輝度な金属調塗膜を形成させることができないことを見出した。このため、塗膜を構成する成分(不揮発分)のうち鱗片状金属顔料以外の成分の隠蔽力を調整することが重要になる。本発明の塗料組成物においては、該塗料組成物の不揮発分から鱗片状金属顔料を除いた場合の隠蔽率が0.1〜50%である。該隠蔽率が0.1〜50%の範囲内にあれば、ムラなく高輝度な金属調塗膜を確実に形成させることができる。なお、本発明において、上記隠蔽率はJIS K−5600−4−1方法Bに従って測定される。例えば、鱗片状金属顔料に代えて溶剤のような揮発分を配合することで、隠蔽率測定用の塗料組成物を容易に調製でき、該塗料組成物を、すきま100μmのフィルムアプリケータなどを使用して、白黒隠蔽率試験紙に塗布し、鱗片状金属顔料以外の不揮発分の隠蔽力を確認することができる。本発明においては、隠蔽率を測定する際の乾燥膜厚を15〜25μmの範囲とする。
【0025】
本発明の塗料組成物において、鱗片状金属顔料は、箔のような薄く平らな形状をした金属顔料であり、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、錫、銅、銀、白金、金等の金属顔料が挙げられ、更にはステンレス等の合金の顔料も含まれる。これらの中でも、アルミニウム顔料が好適に使用される。なお、これら金属顔料は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
上記鱗片状金属顔料は、50%体積平均径が0.1〜60μmであることが好ましく、5〜50μmであることが更に好ましい。鱗片状金属顔料の50%体積平均径が60μm以下であれば、金属光沢により優れる塗膜を形成することができる。一方、鱗片状金属顔料の50%体積平均径が0.1μm未満では、鱗片状金属顔料のアスペクト比が小さくなる傾向にあり、金属光沢が十分に得られない場合がある。
【0027】
本発明において、鱗片状金属顔料の50%体積平均径は、体積基準粒度分布の50%粒子径(D50)を指し、粒度分布測定装置(例えばレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置)を用いて測定される粒度分布から求めることができる。そして、本発明における粒子径は、レーザ回折・散乱法による球相当径で表される。
【0028】
また、上記鱗片状金属顔料は、アスペクト比が1以上であることが好ましく、3以上であることが更に好ましい。鱗片状金属顔料のアスペクト比が1以上であれば、塗膜の金属光沢を更に向上させることができる。なお、鱗片状金属顔料のアスペクト比の上限は通常400程度である。ここで、鱗片状金属顔料のアスペクト比は、50%体積平均径(D)と平均厚み(T)との比(D/T)である。なお、本発明においては、SEM(走査電子顕微鏡)を用いて鱗片状金属顔料の厚みを測定し、100個以上の粒子を対象にして平均厚みを求めた。
【0029】
なお、本発明の塗料組成物によれば、上記鱗片状金属顔料がノンリーフィングタイプのアルミニウム顔料である場合でも、刷毛やローラーを用いて塗装を行う際にムラなく高輝度な金属調塗膜を形成することができる。アルミニウム顔料としては、リーフィングの性質を持つアルミニウム顔料(リーフィングタイプ)やノンリーフィングの性質を持つアルミニウム顔料(ノンリーフィングタイプ)が知られる。なお、リーフィングとは、塗膜を作製したとき、塗膜表面にアルミニウム顔料が浮上し平行に配列する現象を指し、ノンリーフィングとは、塗膜を作製しても塗膜表面にアルミニウム顔料が浮上せず塗膜中に分散している現象を指す。このため、金属調塗膜を形成する目的で塗料組成物を調製する際には、通常、リーフィングタイプのアルミニウム顔料の使用が好ましい。しかしながら、塗膜表面にアルミニウム顔料が浮上すると、塗膜からアルミニウム顔料が剥がれ易くなるため、触れた場合に衣服や身体にアルミニウム顔料が付着しやすい。このため、通常人の触れない用途に使用される。一方で、ノンリーフィングタイプのアルミニウム顔料は、平行に配列された状態で塗膜中に分散させることが困難であるため、金属調塗膜にムラが出てしまい、輝度を低下させる問題がある。しかしながら、本発明の塗料組成物によれば、顔料体積濃度を高くすることによって、かかる問題を解決することができる。
【0030】
リーフィングタイプのアルミニウム顔料やノンリーフィングタイプのアルミニウム顔料は、いずれも市販品を使用できるが、これらアルミニウム顔料は、通常、脂肪酸で表面処理することによって、リーフィングの性質やノンリーフィングの性質を付与されている。具体例としては、オレイン酸で表面処理したアルミニウム顔料がノンリーフィングタイプとして使用されている。
【0031】
本発明の塗料組成物においては、不揮発分中における顔料体積濃度が10〜25体積%であれば、鱗片状金属顔料の量を適宜調整することが可能であるが、より確実に鱗片状金属顔料を平行に配列させる観点から、顔料に占める鱗片状金属顔料の割合は、0.1〜99.9質量%であることが好ましい。
【0032】
本発明の塗料組成物において、着色顔料には、塗料業界において着色剤として通常使用される顔料が含まれるが、鱗片状金属顔料のような光輝性顔料は除かれる。鱗片状金属顔料と組み合わせて着色顔料を用いることにより、所望の色を表現することができる。なお、着色顔料の量は、表現する色に応じて適宜調整されるため、不揮発分中における顔料体積濃度が10〜25体積%である限り特に制限されるものではない。
【0033】
本発明の塗料組成物において、着色顔料は、耐候性の向上効果の観点から、無機顔料が好ましく、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、コバルトブルー及び焼成顔料が特に好ましい。また、本発明の塗料組成物においては、着色顔料の形状が鱗片状である必要はなく、針状、球状、鱗片状等の様々な形状の着色顔料を使用できる。なお、本発明に使用される着色顔料は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
本発明の塗料組成物において、着色顔料は、50%体積平均径が5〜1000nmの範囲内にあることが好ましく、10〜500nmの範囲内にあることが更に好ましく、20〜100nmの範囲内にあることが最も好ましい。着色顔料の50%体積平均径が1000nm以下であれば、着色顔料による透明度の低下を防ぐことができ、金属光沢に悪影響を及ぼさない。一方、着色顔料の50%体積平均径が5nm未満では、着色顔料の着色力が弱くなり、所望の色を表現できない又はその表現が困難になる場合がある。
【0035】
本発明において、着色顔料の50%体積平均径は、体積基準粒度分布の50%粒子径(D50)を指し、粒度分布測定装置(例えばレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置)を用いて測定される粒度分布から求めることができる。そして、本発明における粒子径は、レーザ回折・散乱法による球相当径で表される。
【0036】
本発明の塗料組成物は、顔料を分散させる観点から、更には粘度を調整する等の目的で、有機溶剤を含むことが好ましく、JIS K 2256に規定される混合アニリン点又はアニリン点が12〜70℃の範囲内にある溶剤を含むことが更に好ましい。かかる溶剤は、環境に対する負荷が比較的少ない有機溶剤であり、塗料業界においては一般的に弱溶剤として分類され、常温乾燥にて除去できる。アニリン点及び混合アニリン点は、溶剤の溶解力を表す指標の一種であり、アニリン点又は混合アニリン点が高いほど溶解力が弱くなる。アニリン点は、等容積の溶剤とアニリンとが均一な溶液として存在する最低温度であり、混合アニリン点は、溶剤1容積、ヘプタン1容積及びアニリン2容積が均一な溶液として存在する最低温度である。混合アニリン点又はアニリン点が12℃未満では、溶剤の溶解力が強すぎるため、塗料組成物を被覆基材に塗装する場合、基材を既に覆っている塗膜(旧塗膜)が溶剤に侵され(具体的には旧塗膜が溶解したり膨潤したりして)、リフティング等の不具合が発生する恐れがあるので好ましくない。また、混合アニリン点又はアニリン点が70℃を超えると、溶剤の溶解力が弱すぎるため、実用的な性能を有する樹脂を溶解し難くなり好ましくない。
【0037】
上記混合アニリン点又はアニリン点が12〜70℃の範囲内にある溶剤には、例えば、脂肪族系溶剤、ナフテン系溶剤、芳香族ナフサ等の炭化水素系有機溶剤が挙げられる。上記炭化水素系有機溶剤の具体例としては、メチルシクロヘキサン(アニリン点:40℃)、エチルシクロヘキサン(アニリン点:44℃)、ミネラルスピリット(アニリン点:56℃)、テレビン油(アニリン点:44℃)が挙げられる。また、上記炭化水素系有機溶剤には、石油系炭化水素として市販されるものがあり、例えば、HAWS(シェルケミカルズジャパン社製、アニリン点:17℃)、LAWS(シェルケミカルズジャパン社製、アニリン点:44℃)、エッソナフサNo.6(エクソンモービル社製、アニリン点:43℃)、ペガゾール3040(エクソンモービル社製、アニリン点:55℃)、ペガゾールAN45(エクソンモービル社製、アニリン点42℃)、Aソルベント(新日本石油社製、アニリン点:45℃)、クレンゾル(新日本石油社製、アニリン点:64℃)、ミネラルスピリットA(新日本石油社製、アニリン点:43℃)、ハイアロム2S(新日本石油社製、アニリン点:44℃)、エクソールD30(エクソンモービル社製、アニリン点:64℃)、エクソールD40(エクソンモービル社製、アニリン点:69℃)、ニューソルDXハイソフト(新日本石油社製、アニリン点:68℃)、ソルベッソ100(エクソンモービル社製、混合アニリン点:14℃)、ソルベッソ150(エクソンモービル社製、混合アニリン点:18.3℃)、スワゾール100(丸善石油化学社製、混合アニリン点:24.6℃)、スワゾール200(丸善石油化学社製、混合アニリン点:23.8℃)、スワゾール1000(丸善石油化学社製、混合アニリン点:12.7℃)、スワゾール1500(丸善石油化学社製、混合アニリン点:16.5℃)、スワゾール1800(丸善石油化学社製、混合アニリン点:15.7℃)、出光イプゾール100(出光興産社製、混合アニリン点:13.5℃)、出光イプゾール150(出光興産社製、混合アニリン点:15.2℃)、ペガゾールARO−80(エクソンモービル社製、混合アニリン点:25℃)、ペガゾールR−100(エクソンモービル社製、混合アニリン点:14℃)、昭石特ハイゾール(シェルケミカルズジャパン社製、混合アニリン点:12.6℃)、日石ハイゾール(新日本石油社製、混合アニリン点:17℃以下)等が挙げられる。なお、これら弱溶剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
本発明の塗料組成物において、有機溶剤の含有量は、例えば40〜65質量%であることが好ましい。また、上記塗料組成物において、有機溶剤に占める「JIS K 2256に規定される混合アニリン点又はアニリン点が12〜70℃の範囲内にある溶剤」の割合は、50質量%以上であることが好ましく、その上限は100質量%である。なお、その他の有機溶剤は、特に限定されるものではなく、従来から公知の各種有機溶剤、例えばケトン類、エステル類、エーテル類、アルコール類等を使用できる。
【0039】
本発明の塗料組成物は、刷毛やローラーを用いて塗装を行う際にもムラなく高輝度な金属調塗膜を形成する観点から、アミド化合物を更に含むことが好ましい。ここで、アミド化合物としては、脂肪酸アミド化合物等が好適に挙げられる。本発明の塗料組成物中において、アミド化合物の含有量は、0.05〜1.0質量%であることが好ましい。
【0040】
脂肪酸アミド化合物としては、第一級アミド及び第二級アミドであることが好ましい。脂肪酸アミド化合物の具体例としては、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘン酸アミド、メチレンビスラウリン酸アミド、メチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、メチレンビスオレン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ブチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、エタノールアミンジステアレート、ラウリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリル酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等が挙げられる。なお、これらアミド化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
また、本発明の塗料組成物は、少なくともポリオールを含む主剤と、少なくともポリイソシアネートを含む硬化剤から構成される2液型の塗料組成物であることが好ましい。このような塗料組成物は、塗装時に主剤と硬化剤とを混合することで使用され、ポリオールとポリイソシアネートとの反応によってウレタン結合を有する樹脂が形成されるものであるが、常温乾燥型の塗料組成物として容易に使用可能である。本発明の塗料組成物が1液型の塗料組成物である場合、塗料業界において通常使用されるバインダー樹脂、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、フマル酸樹脂、ビニル樹脂、ふっ素樹脂、シリコーン樹脂等を使用できるが、好適な2液型の塗料組成物に基づき本発明の塗料組成物について以下に説明する。
【0042】
上記主剤は、少なくともポリオールを含むものであるが、上述した鱗片状金属顔料、着色顔料、有機溶剤、アミド化合物等を適宜配合することができる。
【0043】
ポリオールは、水酸基を2個以上有する化合物であり、ポリイソシアネートのイソシアネート基と反応することでウレタン結合を形成するが、上記主剤に用いるポリオールは、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有アクリルシリコーン樹脂及び水酸基含有ふっ素樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含むことが好ましい。これら水酸基含有樹脂は、市販品を好適に使用できるが、例えばアクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂又はふっ素樹脂の合成の際に、水酸基含有モノマーを用いることで容易に得られる。
【0044】
本発明の塗料組成物において、ポリオールに占める上記水酸基含有樹脂(即ち、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有アクリルシリコーン樹脂及び水酸基含有ふっ素樹脂)の割合は、50質量%以上であることが好ましく、その上限は100質量%である。なお、上記水酸基含有樹脂以外のポリオールとしては、特に限定されるものではなく、従来から公知の各種ポリオール、例えばポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール等を使用できる。
【0045】
ポリオールは、数平均分子量が300〜10,000であることが好ましく、400〜2,000であることが更に好ましい。ポリオールの数平均分子量が300未満であると、不粘着性が十分な塗膜が得られない場合があり、一方、数平均分子量が10,000を超えると塗装作業性が低下する場合がある。なお、数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定されるポリスチレン換算した数平均分子量である。
【0046】
また、ポリオールは、水酸基価が5〜150mgKOH/gであることが好ましい。なお、水酸基価は、試料1g中の遊離水酸基を無水酢酸で完全にアセチル化した後、それを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数である。
【0047】
本発明の塗料組成物中において、ポリオールの含有量は、20〜42質量%であることが好ましい。
【0048】
上記硬化剤は、少なくともポリイソシアネートを含むものであるが、上述した鱗片状金属顔料、着色顔料、有機溶剤、アミド化合物等を適宜配合することができる。なお、ポリイソシアネートは、ポリオールの水酸基に対してイソシアネート基が0.5〜1.5当量であることが好ましく、0.8〜1.2当量であることが更に好ましい。このように、ポリイソシアネートの含有量は、ポリオールの官能基の量に応じて適宜調整されるものであるが、例えば、本発明の塗料組成物中におけるポリイソシアネートの含有量は、0.5〜15質量%であることが好ましい。
【0049】
上記ポリイソシアネートは、イソシアネート基を2個以上有する化合物であり、例えば、脂肪族、芳香族又は芳香脂肪族のポリイソシアネートが含まれ、具体例としては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の他、これらポリイソシアネートの変性体が挙げられる。変性体の具体例としては、ビウレット変性体、イソシアヌレート変性体、アダクト変性体(例えばトリメチロールプロパン付加物)、アロファネート変性体、ウレトジオン変性体等が挙げられる。これらの中でも、ヘキサメチレンジイソシアネートの各種変性体やイソホロンジイソシアネートの各種変性体が、硬化性や塗膜特性の観点から好ましい。なお、これらポリイソシアネートは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
本発明の塗料組成物には、体質顔料や防錆顔料等の他の顔料や、反応触媒、分散剤、消泡剤、脱水剤、レベリング剤、表面調整剤、沈降防止剤、ダレ止め剤、防藻剤、防カビ剤、防腐剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を必要に応じて適宜配合してもよい。
【0051】
本発明の塗料組成物(2液型の塗料組成物の場合には主剤及び硬化剤)は、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することによって調製できる。
【0052】
本発明の塗料組成物は、せん断速度0.1s−1の粘度が0.1〜10,000Pa・sであり、且つせん断速度1,000s−1の粘度が0.05〜10Pa・sであることが好ましい。なお、本発明において、粘度はTAインスツルメンツ社製レオメーターARESを用い、液温を23℃に調整した後測定される。
【0053】
塗装方法は、特に限定されず、既知の塗装手段、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、コテ塗装、ヘラ塗装、スプレー塗装等が利用できるが、本発明の塗料組成物は、刷毛塗装やローラー塗装での使用に好適である。
【0054】
また、本発明の塗料組成物を塗装する対象としては、特に限定されるものではなく、土地に定着した構造物の塗り替えに対しても、本発明の塗料組成物を塗装することで、ムラなく高輝度な金属調塗膜を形成することが可能である。従って、本発明の塗料組成物は、建築物又は構築物に対して塗装を行うための塗料組成物として好適である。なお、本発明において、建築物とは、人間が居住又は滞在する目的で建築された構造物を意味し、例えば住宅やビル、工場等が挙げられ、構築物とは、人間が居住又は滞在する目的以外のために建設された構造物を意味し、例えば煙突、立体駐車場等が挙げられる。
【0055】
次に、本発明の塗装体について詳細に説明する。本発明の塗装体は、建築物又は構築物と、建築物又は構築物上に形成された塗膜(以下、金属調塗膜ともいう)とを備えており、前記塗膜が、上述した本発明の塗料組成物から形成されたことを特徴とする。本発明の塗料組成物を用いることで、ムラなく高輝度な金属調塗膜を所望の色で形成することができる。
【0056】
本発明の塗装体は、建築物又は構築物と金属調塗膜の間に下塗り塗膜を備えることが好ましい。これにより、金属調塗膜をより均一な表面上に形成できるため、金属調塗膜のムラをより確実に防ぐことができる。また、下塗り塗膜を設けることで、塗膜全体の構造物に対する密着性を向上でき、また、下塗り塗料としてエナメル塗料を使用すれば、構造物をより確実に隠蔽することが可能であり、意匠を改善できる。本発明において、エナメル塗料とは着色剤を含む塗料を指す。
【0057】
本発明の塗装体は、金属調塗膜上に形成されたクリヤー塗膜を備えることが好ましい。これにより、塗膜の光沢を向上させることができる。本発明によれば、顔料体積濃度(特には鱗片状金属顔料の含有量)を高くすることによって、塗膜のつやが低下する傾向にあるため、塗膜の光沢を確保する目的からクリヤー塗膜の形成は好ましい。また、炭酸カルシウム、タルク、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、アモルファスシリカ、珪砂、バライト、沈降性硫酸バリウム等の体質顔料や、樹脂ビーズをクリヤー塗料に配合することで、塗膜のつやを容易に調整することができる。本発明において、クリヤー塗料とは着色剤を含まない塗料を指す。
【0058】
本発明の塗装体は、少なくとも金属調塗膜を含み、好ましくは下塗り塗膜及びクリヤー塗膜の一方又は両方を含む。なお、金属調塗膜の厚さは、5〜30μmであることが好ましく、下塗り塗膜の厚さは、10〜40μmであることが好ましく、クリヤー塗膜の厚さは、5〜30μmであることが好ましい。
【0059】
次に、本発明の塗装体の製造方法について詳細に説明する。本発明の塗装体の製造方法は、上述した本発明の塗料組成物で建築物又は構築物を塗装する工程(以下、第1の工程ともいう)を含むことを特徴とする。本発明の塗料組成物を用いることで、ムラなく高輝度な金属調塗膜を所望の色で形成することができる。
【0060】
本発明の塗装体の製造方法は、第1の工程の前に、下塗り塗料で建築物又は構築物を塗装し、下塗り塗膜を形成させる第2の工程を更に含むことが好ましい。この場合、上述した本発明の塗料組成物による塗装が、下塗り塗膜上で行われる。下塗り塗料には、溶媒として有機溶剤を用いる有機溶剤系塗料、主溶媒として水を用いる水系塗料、無溶剤系塗料、粉体塗料の各種エナメル塗料又はクリヤー塗料等の従来から公知の各種塗料が利用可能であるが、有機溶剤系エナメル塗料または水系エナメル塗料が好ましい。また、下塗り塗料に使用できる樹脂としては、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂及びフッ素樹脂等の各種合成樹脂が挙げられる。なお、これら樹脂は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。上記下塗り塗料には、その他の成分として、顔料、硬化剤成分、紫外線吸収剤、光安定剤、レオロジー調整剤、レベリング剤、酸化防止剤、可塑剤、防錆剤、溶剤、充填剤、pH調整剤、消泡剤、荷電制御剤、応力緩和剤、浸透剤、導光材、磁性材、蛍光体、ワックス等の添加剤を必要に応じて使用してもよい。下塗り塗料は、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することによって、調製できる。下塗り塗料の塗装方法は、特に限定されず、既知の塗装手段、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、コテ塗装、ヘラ塗装、スプレー塗装等が利用できるが、刷毛塗装やローラー塗装が好適である。
【0061】
本発明の塗装体の製造方法は、第1の工程の後に、クリヤー塗料で金属調塗膜を塗装し、クリヤー塗膜を形成させる第3の工程を更に含むことが好ましい。クリヤー塗料には、溶媒として有機溶剤を用いる有機溶剤系塗料、主溶媒として水を用いる水系塗料、無溶剤系塗料、粉体塗料等、従来から公知の各種塗料が利用可能である。また、クリヤー塗料に使用できる樹脂としては、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂及びフッ素樹脂等の各種合成樹脂が挙げられる。なお、これら樹脂は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。上記クリヤー塗料には、その他の成分として、硬化剤成分、紫外線吸収剤、光安定剤、レオロジー調整剤、レベリング剤、酸化防止剤、可塑剤、防錆剤、溶剤、充填剤、pH調整剤、消泡剤、荷電制御剤、応力緩和剤、浸透剤、導光材、磁性材、ワックス等の添加剤を必要に応じて使用してもよい。クリヤー塗料は、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することによって、調製できる。クリヤー塗料の塗装方法は、特に限定されず、既知の塗装手段、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、コテ塗装、ヘラ塗装、スプレー塗装等が利用できるが、刷毛塗装やローラー塗装が好適である。
【実施例】
【0062】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0063】
<光輝顔料分散体1>
混合器に入ったヒタロイド6500B(日立化成社製水酸基含有アクリル樹脂のミネラルスピリット溶液、不揮発分50質量%、不揮発分の水酸基価30mgKOH/g)100質量部の中に、ミネラルスピリット50質量部、アルペースト7675NS(東洋アルミ社製ノンリーフィングタイプのアルミニウムペースト、不揮発分65質量%、D50=16μm)25質量部を攪拌環境下で徐々に投入し20分間攪拌を行った。さらに、フローレンAO−82(共栄社化学社製消泡剤)0.3質量部、ポリフローKL−401(共栄社化学社製レベリング剤)0.6質量部、ディスパロン6820−10M(楠本化成社製アミド化合物のミネラルスピリット分散体、不揮発分10質量%)5.0質量部を投入し、10分間撹拌を行い、光輝顔料分散体1を調製した。
【0064】
<光輝顔料分散体2〜8>
上記光輝顔料分散体1の調製方法と同様に、表1に示す配合処方に従って光輝顔料分散体2〜8を調製した。
【0065】
【表1】
【0066】
(注1)ルミフロンLF800(旭硝子社製水酸基含有ふっ素樹脂のミネラルスピリット溶液、不揮発分60質量%、不揮発分の水酸基価35mgKOH/g)
(注2)ルミフロンLF200(旭硝子社製水酸基含有ふっ素樹脂のキシレン溶液、不揮発分60質量%、不揮発分の水酸基価50mgKOH/g)
(注3)アルペースト54−452(東洋アルミ社製ノンリーフィングタイプのアルミニウムペースト、不揮発分65質量%、D50=37μm)
【0067】
<着色顔料分散体1>
混合器に入ったヒタロイド6500B 100質量部の中に、ミネラルスピリット35質量部、ダイピロキサイドTMレッド8270(大日精化工業社製赤色酸化鉄(着色顔料)、不揮発分100質量%、D50=70nm) 40質量部、アエロジル AR−200(日本アエロジル社製シリカ、体質顔料) 1質量部を攪拌環境下で徐々に投入し20分間攪拌を行った後、ペイントコンディショナーを用いて1時間練合した。さらに、フローレンAO−82 0.3質量部、ポリフローKL−401 0.6質量部、ディスパロン6820−10M 5.0質量部を投入し、10分間撹拌を行い、着色顔料分散体1を調製した。
【0068】
<着色顔料分散体2〜12>
上記着色顔料分散体1と同様に、表2に示す配合処方に従って着色顔料分散体2〜12を調製した。
【0069】
【表2】
【0070】
(注4)ダイピロキサイドTMイエロー8170(大日精化工業社製黄色酸化鉄(着色顔料)、不揮発分100質量%、D50=70nm)
(注5)ダイピロキサイドTMブルー3490E(大日精化工業社製コバルトブルー顔料(着色顔料)、不揮発分100質量%、D50=50nm)
(注6)ダイピロキサイドTMブラック3550(大日精化工業社製複合酸化物系ブラック顔料(着色顔料)、不揮発分100質量%、D50=60nm)
(注7)IRGAZIN Red 179(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製縮合多環化合物系赤色顔料、不揮発分100質量%、D50=60nm)
(注8)トダカラー130ED(戸田工業社製赤色酸化鉄(着色顔料)、不揮発分100質量%、D50=160nm)
【0071】
<隠蔽率測定用樹脂溶液1>
混合器に入ったヒタロイド6500B 100質量部の中に、ミネラルスピリット75質量部を投入し20分間攪拌を行った。さらに、フローレンAO−82 0.3質量部、ポリフローKL−401 0.6質量部を投入し、10分間撹拌を行い、隠蔽率測定用樹脂溶液1を調製した。
隠蔽率測定用樹脂溶液1の配合処方は、光輝顔料分散体1、2、3及び6の配合処方におけるアルペースト及びその配合量をミネラルスピリットに代えたものであり、隠蔽率測定用樹脂溶液1は、光輝顔料分散体1、2、3及び6を用いた塗料組成物中における不揮発分から鱗片状金属顔料を除いた場合の隠蔽率を測定するために使用される。
【0072】
<隠蔽率測定用樹脂溶液2〜4>
上記隠蔽率測定用樹脂溶液1と同様に、表3に示す配合処方に従って隠蔽率測定用樹脂溶液2〜4を調製した。ここで、隠蔽率測定用樹脂溶液2は、光輝顔料分散体4及び5を用いた塗料組成物中における不揮発分から鱗片状金属顔料を除いた場合の隠蔽率を測定するために使用され、隠蔽率測定用樹脂溶液3は、光輝顔料分散体7を用いた塗料組成物中における不揮発分から鱗片状金属顔料を除いた場合の隠蔽率を測定するために使用され、隠蔽率測定用樹脂溶液4は、光輝顔料分散体8を用いた塗料組成物中における不揮発分から鱗片状金属顔料を除いた場合の隠蔽率を測定するために使用される。
【0073】
【表3】
【0074】
<実施例1>
上記光輝顔料分散体1 50質量部に、着色顔料分散体1 50質量部を混合し、主剤とした。さらに硬化剤としてデュラネートTSA−100(旭化成ケミカルズ社製ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体、不揮発分100質量%) 3.0質量部を加え、実施例1の塗料を調製した。塗料組成物中における不揮発分の含有量は45.2質量%、PVC(顔料体積濃度)は14.6体積%、塗料組成物中における鱗片状金属顔料の含有量は4.4質量%であった。結果を表4に示す。
なお、実施例1の光輝顔料分散体1の代わりに、隠蔽率測定用樹脂用液1を用いて、隠蔽率測定用塗料組成物(実施例1’の塗料)を調製し、これを白黒隠蔽率試験紙にすきま100μmのフィルムアプリケータで塗装し、隠蔽率を測定した結果、3.9%であった。結果を表6に示す。
【0075】
<実施例2〜17、比較例1〜7>
上記実施例1の調製方法と同様に、以下の表4〜5に示す配合処方に従って実施例2〜17、比較例1〜7の塗料を調製した。なお、塗料組成物中における不揮発分の含有量、PVC及び塗料組成物中における鱗片状金属顔料の含有量を表4〜5に示す。
また、上記実施例1’の場合と同様に、以下の表6〜7に示す配合処方に従って、隠蔽率測定用塗料組成物(実施例2’〜17’、比較例1’〜7’の塗料)を調製し、隠蔽率を測定した。結果を表6〜7に示す。
【0076】
なお、表4〜7中、「タケネートD−140N」とは、以下の硬化剤を指す。
(注9)タケネートD−140N(三井化学社製イソホロンジイソシアネートのビュレット変性体の酢酸エチル溶液、不揮発分75質量%)
【0077】
【表4】
【0078】
【表5】
【0079】
【表6】
【0080】
【表7】
【0081】
実施例1〜17、比較例1〜7の塗装作業性、仕上がり外観及び輝度、塗り替え適性、耐候性を測定及び評価した。結果を表4〜5に示す。
【0082】
<塗装作業性>
ブリキ板に調製した塗料組成物を短毛ローラーで塗装し、下記の基準に従って評価した。
◎:塗装作業に問題なく、極めて塗りやすい。
〇:塗装作業に問題がない。
△:乾燥が速く、塗装作業に熟練を要する。
×:ローラーや刷毛が重い、または軽すぎ、塗装しにくい。
【0083】
<仕上がり外観及び輝度>
ブリキ板に調製した塗料組成物を短毛ローラーで塗装し、常温で24時間乾燥した塗装面について目視で観察を行い、下記の基準に従って評価した。
〇:全体に輝度があり、ムラなく均一に仕上がる。
×:全体に輝度がない、または輝度にムラがあり、均一に仕上がらない。
【0084】
<塗り替え適性>
ブリキ板に以下の塗料を塗装したそれぞれの板に対して、調製した塗料組成物を短毛ローラーで塗装し、その塗装性と仕上がり外観を評価した。
1)デュラクロンCW 白(大日本塗料社製アクリル樹脂塗料)
2)ビニローゼ 白(大日本塗料社製塩化ビニル樹脂塗料)
○:いずれの板にも異常が見られない。
△:1)の板は異常がないが、2)の板に異常がある。
×:いずれの板にも異常がある。
【0085】
<耐候性>
試験板をさらに常温で7日間乾燥した後、JIS K5600−7−7サイクルAの条件で2000時間の照射を行い、下記の基準に従って評価した。
○:光沢保持率が80%以上で、色の変化が認識できない。
△:光沢保持率が80%以上だが、色の変化が認識できる。
×:光沢保持率が80%未満である。
【要約】
【課題】刷毛やローラーを用いて塗装を行う際にもムラなく高輝度な金属調塗膜を形成することが可能な塗料組成物を提供する。
【解決手段】鱗片状金属顔料及び着色顔料を含む塗料組成物であって、該塗料組成物中における不揮発分の含有量が35〜60質量%であり且つ該不揮発分中における顔料体積濃度が10〜25体積%である塗料組成物であり、前記塗料組成物の不揮発分から鱗片状金属顔料を除いた場合の隠蔽率が0.1〜50%であり、ここで、隠蔽率はJIS K−5600−4−1方法Bに従って測定されることを特徴とする塗料組成物である。
【選択図】なし