(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6121019
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】電気的接続装置
(51)【国際特許分類】
H01R 11/01 20060101AFI20170417BHJP
H01R 12/51 20110101ALI20170417BHJP
H05K 3/32 20060101ALI20170417BHJP
H05K 3/36 20060101ALI20170417BHJP
H05K 1/14 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
H01R11/01 501C
H01R12/51
H05K3/32 C
H05K3/36 A
H05K1/14 J
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-60639(P2016-60639)
(22)【出願日】2016年3月24日
(62)【分割の表示】特願2011-133131(P2011-133131)の分割
【原出願日】2011年6月15日
(65)【公開番号】特開2016-171079(P2016-171079A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2016年3月24日
(31)【優先権主張番号】10 2010 030 063.2
(32)【優先日】2010年6月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ リスコフ
【審査官】
前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−251197(JP,A)
【文献】
特開2009−197950(JP,A)
【文献】
特開2008−21873(JP,A)
【文献】
特開2009−179725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 11/01
H01R 12/51
H05K 1/14
H05K 3/32
H05K 3/36
H01L 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御機器(10,50,90,140)と、多数の導体(40,42,58)を備えたベースプレート(38,56,126)との間の電気的接続装置において、
前記制御機器(10,50,90,140)は、熱可塑性の導電性プラスチックによって構成された多数のインタフェースパッド(24,44,46,60,94,98,142)を有しており、
前記インタフェースパッド(24,44,46,60,94,98,142)はそれぞれ、電気的接続を形成するために、前記ベースプレート(38,56)の導体(40,42,58)と溶着されており、
前記導体(40,42,58)は、導電性プラスチックによって構成されている、
ことを特徴とする電気的接続装置。
【請求項2】
前記導電性プラスチックは、導電性を有する粒子が混合された熱可塑性プラスチック材料である、
ことを特徴とする請求項1記載の電気的接続装置。
【請求項3】
前記導電性を有する粒子は、金属粒子および/または導電性ナノ粒子である、
ことを特徴とする請求項2記載の電気的接続装置。
【請求項4】
前記制御機器(10,50,90,140)は、少なくとも1つの回路担体(30,54)を収容するハウジング(28,52)を有し、
前記回路担体(30,54)は、回路を形成するための多数の電子および/または電気機械コンポーネントを有する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の電気的接続装置。
【請求項5】
前記インタフェースパッド(24,44,46,60,94,98,142)は、前記ハウジング(28,52)および/または前記回路担体(30,54)および/または金属接続部(92)に配置されており、それぞれ少なくとも1つの前記回路担体(30,54)の構成部分と導電性接続されている、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項記載の電気的接続装置。
【請求項6】
前記金属接続部(92)は、前記回路担体(30,54)の構成部分と電気的に接続されている、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項記載の電気的接続装置。
【請求項7】
少なくとも1つの導体(40,42,58)は、前記ベースプレート(38,56)に設けられたチャネルによって形成されており、
該チャネルには、少なくとも部分的に導電性プラスチックが充填されており、
前記ベースプレート(38,56)は電気絶縁性材料によって構成されている、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項記載の電気的接続装置。
【請求項8】
少なくとも1つの導体(40,42,58)は、前記ベースプレートの上に設けられた導電性プラスチックによって形成されており、
前記ベースプレート(38,56)は、電気絶縁性材料によって構成されている、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項記載の電気的接続装置。
【請求項9】
前記制御機器(10,50,90,140)は、モータ制御機器および/またはトランスミッション制御機器である、
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項記載の電気的接続装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
自動車内での電子システムコンポーネントの重要性はますます高まっている。電子システムコンポーネントでは殊に、自動車内の厳しい環境条件下において、センサ、アクチュエータ、差し込み接続部等への外部電気接続部(例えば、トランスミッション制御部用のメカトロニックモジュール)と電子制御機器との確実な電気的接触接続を保証するのは著しく困難である。目下、制御機器内に含まれる回路担体と外部接続部“AVT”(Aeussere Verbindungstechnik:外部接続技術)との間の電気的な接続はしばしばボンディングワイヤーによって行われている。このボンディングワイヤーは、回路担体の接続点と、制御機器ハウジングに嵌め込まれている接続ピンとを電気的に接続する。これによって、有害な環境影響からの制御機器のハーメチックな密閉が保証される。この環境影響は例えば化学的に攻撃性の媒体、湿気、温度変動並びに外部の機械的な加速または減速である。回路担体とは例えば、多層導体プレートまたは、その上に電子回路が構成されているいわゆる“LTCC”(“Low-Temperature-Cofired-Ceramic”:低温同時焼成セラミックス)−ハイブリッドである。
【0002】
さらに、回路担体を直接的に線路担体、殊に柔軟なフラット導体路(いわゆる“FPC”,Flexible Printed Circuit:フレキシブルプリント基板)と、ボンディングワイヤーによって接続することが知られている。
【背景技術】
【0003】
WO98/44593号から、柔軟な導線担体と回路担体との電気的な接続が公知である。ここでは電気的な接触接続は、オーバーラップ領域において、導電性接着剤を用いて行われている。ここでの欠点は、接着剤が正確に調量された量、および再現可能な位置でオーバーラップ領域内に被着されなければならない、ということである。DE19832062A1号は、自動車用の制御機器を開示している。この文献では、回路担体の接触接続素子は、接触接続区間におけるレーザ溶接箇所またはレーザはんだ付け箇所を介して、柔軟な導線担体と導電性接続されている。レーザ溶接箇所ないしレーザはんだ付け箇所を設けることによって、接触接続領域内に高熱が入力されてしまう。従って、レーザはんだ付けプロセスが行われる場合には、はんだ付け手段の形状の付加的な補助物質が加えられなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO98/44593号
【特許文献2】DE19832062A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、上記のような従来技術の欠点を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
制御機器、殊にモータ制御機器および/またはトランスミッション制御機器と、柔軟な線路担体の導線、殊に多芯フラット導体路の導線、または多数の導体を備えたベースプレートとの間の電気的接続装置を開示する。
【0007】
本発明では、制御機器は多数のインタフェースパッド(Interfaceballen)を有している。これらのインタフェースパッドは、熱可塑性の導電性プラスチックによって構成されている。ここでこれらのインタフェースパッドは電気的な接続を形成するためにそれぞれ、導線の導電パッドおよび/またはそれぞれ、ベースプレートの導体と熱によって溶融される。ここで導電パッドおよび導体は導電性プラスチックによって構成されている。
【0008】
熱可塑性の導電性プラスチックによって構成されているインタフェースパッドが制御機器に設けられることによって、およびこれに相応するように構成された導電パッド(Leiterballen)が柔軟な導体の領域内に設けられていることによって、ないしは、同様に導電性プラスチックによって構成された導体がベースプレートの領域内に設けられていることによって、補助物質を用いずに、インタフェースパッドと導電パッドを単に熱溶融することによって電気的な接触接続を形成することができる。ここでは、使用されている熱可塑性導電性プラスチックの溶融温度は比較的低い。
【0009】
はんだ付けおよび溶接とは異なり、コンタクト領域、ひいては接している構成部分内への熱入力が最小化される。なぜなら、熱可塑性導電性プラスチックを溶かすために必要な温度は典型的に、250℃〜400℃よりも低いからである。この効果はさらに次のことによって高められる。すなわち、接触接続プロセス時に、導電性接続されるべきインタフェースパッドおよび導電パッドが完全に溶融されるのではなく、小さい接続領域のみにおいて溶融されることによって高められる。
【0010】
金属的な補助物質が必要ではないので、ノイズ電圧を生じさせる、有害な電気化学的部材も接続領域内に存在しない。はんだ付け箇所における不所望な「ウィスカ」ないし針状結晶の形成、溶接およびはんだ付け時の金属飛沫並びにボンディング接続時の既知の腐食問題が回避される。さらに導電性プラスチックは、移行抵抗が低減された大きな接触接続面を保証する。この抵抗は、必要な場合には、その時に伝達されるべき電流強度に正確に合わせられる。
【0011】
導電性プラスチックは、電気的に十分な導電性を有する粒子によって形成される。この粒子は、適切な熱可塑性プラスチック材料から成るマトリクスないし基礎材料内に均一に分散して埋められている。マトリクス形成のために、十分な機械的耐性および熱的耐性を有している、既知の全ての熱可塑性プラスチックが使用可能である。
【0012】
導電性粒子として例えば、金属粒子および/または適切な導電性ナノ粒子、例えばカーボンナノチューブが使用可能である。金属基板、殊に金属ピン、フラットピン、接続端子ピン、金属片、柔軟な導線等の上にコンタクトパッドを製造する際に、導電性プラスチックの機械的付着を改善するために、殊にプラズマビーム処理の形の適切な機械的、化学的および/または物理的な表面処理を金属基板に施すことができる。
【0013】
ベースプレート内のインタフェースパッドおよび導線はそれぞれ、有利な円形ゲオメトリーまたは矩形ゲオメトリーを有する。これによって、十分に大きい移行面積にわたってできるだけ低い電気的移行抵抗が得られる。
【0014】
制御機器は通常、少なくとも1つの回路担体を収容するハウジングを有する。ここでこの回路担体上には多数の電子コンポーネントおよび/または電磁コンポーネントおよび/または機械コンポーネントが固定され、相互に電気的に接続される。制御機器は、例えばトランスミッション制御ユニットまたはモータ制御ユニットであり、いわゆる“TCM”/“MCU”(Transmission Control UnitまたはMotor Control Unit)であり、これは、しばしば厳しい周辺環境、すなわち殊に高い温度変動、湿度、および化学的に攻撃性の媒体の下で使用される。回路担体は例えば、印刷された銅導線を伴うエポキシ樹脂プレートによって構成される、またはLTCC(Low-Temperature-Cofired-Ceramicないしは低温同時焼成セラミックス)として構成される。付加的に制御機器は、機械的な補強のために、有利には下面に配置されたベースプレートを有することができる。このベースプレートは同時にヒートシンクとして用いられる。
【0015】
制御機器の機能を実現するために、制御機器は多数のアクチュエータおよびセンサと電気的に接続されなければならない。このような接続は、例えば既知のフラット導体路を介して行われる。フラット導体路では導線状の多数の銅線路ないし心線が、有利には相互に平行に間隔を空けて延在し、上方を絶縁するカバーフィルムおよび下方を絶縁するによって両側で覆われている。本発明の電気的接続装置は殊に、このような柔軟なフラット導体路と制御機器との間に、製造技術的に容易に、かつ低コストに、かつ確実に電気的接続を形成することを可能にする。ここでこの電気的接続はさらに、完全にハーメチックに密閉可能である。従って、有害な周辺環境は、電気的な接触接続に悪影響を与えない。
【0016】
その他に、インタフェースパッドを有していない金属接続部を有する制御機器と、多数の導体を備えたベースプレートとの間の電気的接続装置を開示する。
【0017】
本発明では、制御機器は多数の金属接続部を有している。これらの金属接続部は、電気的な接続を実現するためにそれぞれ、ベースプレートの導体および/または導電性移行部内に、熱によって溶かされる。ここで導体は導電性プラスチックによって構成されている。
【0018】
1つの実施形態では、制御機器は例えば丸ピン形状の金属接続部を有している。これはインタフェースパッドを有しておらず、電気的接続を形成するために、平行六面体形状の導電性移行部または導電性プラスチックから成る導体ガイド部内に直接的に溶かされる。
【0019】
図面に基づいて、本発明を以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】柔軟なフラット導体路(FPC)と(トランスミッション)制御機器(TCU)との間の、本発明による電気的接続装置
【
図2】制御機器内のフラット導体路と回路担体との間の接続装置の1つの実施形態
【
図4】制御機器と制御機器を担っているベースプレートとの間の接続装置の別の実施形態
【
図7】付加的な絶縁性フラット導体路を備えた接続装置の実施形態
【
図9】接触接続された状態の、
図7に示された接続装置
【
図10】インタフェースパッドを備えていない、金属接続部を備えた制御機器を有する電気的接続装置の別の実施形態
【
図11】接触接続していない状態の、
図10に示された接続装置の概略的な側面図
【
図12】オプショナルのカバー部と電気的に接続されている状態の、
図10に示された接続装置の概略的な部分断面図
【
図13】インタフェースパッドを備えていない、金属接続部を備えた制御機器を有する接続装置の別の実施形態
【
図14】金属接続部を備えた、制御機器の接続装置の別の実施形態
【
図15】制御機器内に組み込まれたインタフェースパッドを備えた接続装置の別の実施形態
【実施例】
【0021】
図1は、柔軟なフラット導体路(FPC)を制御機器(TCU)に電気的に接続する、本発明の電気的接続装置の第1の実施形態を示している。
【0022】
制御機器10は、既知の柔軟なフラット導体路12と導電性接続されている。この柔軟なフラット導体路12は、内部に(銅製の)導線14を有している。この導線の両側は、電気的絶縁のために、上方のプラスチックフィルム16および下方のプラスチックフィルム18によって覆われている。これらのプラスチックフィルム16、18は、電気的に高い絶縁性を有するプラスチック材料、例えばポリイミド材料またはポリエステル材料によって製造されている。これらの材料は25μm〜250μmの間の厚さを有している。プラスチックフィルム16、18は、アクリル接着剤またはエポキシド接着剤から成る図示されていない接着層によって、全面で導線14と接着されている。この導線14は、それぞれ30μm〜300μmの材料厚を備えている多数の銅製導線を代表している。これらの銅製導線は、有利には導線14に対して平行に等間隔で配置されており、ここでは見やすくするために、図示されていない。
【0023】
接続領域20において、下方のプラスチックフィルム18は設けられていない、ないししは除去されている。接続領域20に導電パッド22が配置されており、この導電パッドは本発明では、導電性の適切な熱可塑性プラスチック材料ないしは導電性プラスチックによって形成されている。導線14と導電パッド22との間には、導電性接続が形成されている。制御機器10にはインタフェースパッド24が配置されており、このインタフェースパッド24は、制御機器10内に含まれている、図示されていない電子コンポーネントおよび/または電気機械コンポーネントと、同様に導電性接続されている。導電パッド22およびインタフェースパッド24はそれぞれ、円形ないし楕円形に近似した断面形状を有している。択一的に、導電パッド22およびインタフェースパッド24が平行六面体形状、または立方体形状または球切断形状の空間形状を有していてもよい。
【0024】
フラット導体路12と制御機器10との間に導電性接続を形成するために、導電パッド22は溶融ゾーン26において、遮蔽された後に、インタフェースパッド24と熱溶融される。このためには、比較的僅かな熱入力しか必要とされない。なぜなら使用されている熱可塑性導電性プラスチックは通常、既に300℃の温度で十分に柔らかくなり、さらに導電パッド22もインタフェースパッド24も完全には溶かされないからである。これらのパッドの溶融は例えば、点状に供給される赤外ビームおよび/またはレーザビームによって行われる。このためにビームが焦点合わせされる、および/またはカバーによってマスキングされる。択一的に、点に沿った熱風供給または、レーザビームを供給する導光体の使用も可能である。さらに熱入力を、加熱部材によって、またはいわゆるThermoden
(R)はんだ付けプロセスと類似した方法によって行うこともできる。この場合には、点状の接触接続を形成するレーザ溶接方法ないしはレーザはんだ付け方法とは異なり、導電性プラスチックパッドの間の電気的接続ゾーンは平面状であり、殊に、全面で円形または矩形に構成される。これによって、電気的移行抵抗が低減される。さらに、接続ゾーンの平坦延在部は、柔軟に、所定の電流強度に合わせられる。有利には導電パッド22およびインタフェースパッド24は、同一の導電性プラスチックから構成されている。択一的に、種々異なる導電性の、熱可塑性プラスチックを使用することもできる。
【0025】
制御機器10をフラット導体路12と完全に導電性接続するために、多数のインタフェースパッドが、対応する導電パッドと溶融ないし溶接される。熱入力が低減されるということの他に、本発明による接続装置の重要な利点は、パッドを製造者側で既に、フラット導体路ないしは制御機器に付けて構成することができるということである。従って、元来の接触接続プロセスではもはや、補助物質を用いる必要はもはやない。
【0026】
図2は、制御機器内の柔軟なフラット導体路と回路担体との間の接続装置の1つの形態を示している。ここでは
図1とは異なり、電気的な接続が、フラット導体路12とハウジング内の制御機器10との間に形成されている。制御機器10は殊に、内部に回路担体30が配置されているハウジング28を含んでいる。回路担体30上には、詳細には図示されていない、多数の電子コンポーネントおよび/または電子機械コンポーネントが設けられている。これは例えばマイクロコントローラ、メモリ、別個にされている複数のトランジスタ、ダイオード、抵抗、コンデンサ、コイル、リレー、差し込み接続部等であり、これらは回路を構成する。さらにハウジング28は、フラット導体路12用の引き込み部32を有している。密閉作用をさらに改善するため、および、回路担体30のハーメチックに密閉された接続を実現するために、ハウジング28はこの実施形態では付加的に、プラスチック材料から成る電気絶縁性の充填コンパウンド34(いわゆる“金型コンパウンド”)によって完全に満たされる。回路担体30は例えば、従来のエポキシ樹脂プレートによって構成される。これは、銅導線および/またはLTCCハイブリッドモジュールを備えた多数の面を有している。フラット導体路12と、制御機器10との間に電気的な接触接続を形成するために、導電パッド22がインタフェースパッド24と溶融ゾーン26において溶融される。
図2に従った実施形態は、
図1に示された形態とは異なり、回路担体30を完全にハーメチックに密閉してカプセル封入することができるという利点を有している。従って回路担体30は、フラット導体路12への電気的な接続部を含めて完全に、上述した有害な周辺環境から保護される。
【0027】
図3は、
図2に示された接続装置の詳細な部分図を示している。
【0028】
インタフェースパッド24は回路担体30内に組み込まれており、接続線路36を介して、回路担体30上に存在する電子コンポーネントと導電性接続されている。接続線路36は金属材料、例えば銅合金によって、および/または導電性プラスチックによって構成されている。ここでこの導電性プラスチックは、導電パッド22ないしインタフェースパッド24にも使用される。択一的にインタフェースパッド24を導電性プラスチックから成る接続線路36と一体的に射出成型することもできる、ないし、導線36のプリントと空洞の充填とを組み合わせてインタフェースパッド24を形成することもできる。
【0029】
フラット導体路12と回路担体30ないし、回路担体30上に取り付けられた電子コンポーネントおよび/または電子機械コンポーネントとの間に導電性接続を形成するために、導電パッド22とインタフェースパッド24が、導電性プラスチックの溶融温度の範囲まで加熱される。次に導電パッド22が白い矢印の方向で、インタフェースパッド24に対してプレスされる。これによって導電パッドとインタフェースパッドが溶融ゾーンの領域において溶融される、ないしは熱によって接合される。これによって同時に、機械的に十分に耐性のある接続が、導電パッド22とインタフェースパッド24との間に形成される。次に、この装置がハウジング28内に入れられ、ハウジングが充填コンパウンドによって封印される。
【0030】
以降の明細書で同時に参照される
図4と5は、本発明の電気的接続装置の別の形態を示している。ここでは電気的な接続が制御機器と、制御機器を担っているベースプレートとの間に形成されている。制御機器10はベースプレート38上に固定、例えば接着されている。このベースプレート内には、例えば2つの導電性の、チャネル状導体40、42が入れられている。これらは同じように、導電パッドおよびインタフェースパッドに対しても使用されている導電性プラスチックによって形成されている。ベースプレート38は、非導電性の絶縁材料から構成される。導体40、42は例えば、ベースプレート38内に刻まれた溝によって形成される。この溝の中には次に、導電性プラスチックが射出される。制御機器10は、2つのインタフェースパッド44、46を有しており、これらは導電性プラスチックによって構成されている。制御機器10とベースプレート38との間の電気的な接触接続は単に、インタフェースパッド44、46と導体40、42とを熱溶融することによって行われる。これは制御機器10をベースプレート26上に固定する間または固定した後に行われる。インタフェースパッド44、46の下方にはオプションで、それぞれ破線で示された、ベースプレート38内の切欠き48が設けられている。この切欠きは、インタフェースパッド44、46と導体40、42との溶融に必要な熱エネルギーないしは熱を集中的に供給するために用いられる。インタフェースパッドの下にある切欠き48並びに図示されていない全ての切欠きは有利には円錐形の孔によって構成される。導体40、42を同じように(ここには図示されていない)、柔軟なフラット導体路と導電性接続することができる。
【0031】
図6は、択一的なハウジング形状を備えた制御機器を有する、電気的接続装置の別の1つの実施形態を図示している。
【0032】
ここでは制御機器50は、下に向かって開放された実質的に鍋形状のハウジング52を含む。ハウジング52は、該ハウジングの中に組み込まれた回路担体54を備えている。回路担体54の上には、回路を形成している参照符号が付されていない多数の電子コンポーネントが配置されている。制御機器50はベースプレート56上に固定されており、ベースプレート56には、導電性プラスチックによって形成された電気的な導体58が延在している。ここでも制御機器50と導体58の間の電気的接続は、インタフェースパッド60を導体58と単に熱溶融することによって実施され、溶融ゾーン62が形成される。ベースプレート56の下側に設けられた切欠き64によって、溶融熱を所期のように溶融ゾーン62に供給することができる。
【0033】
ハウジング52はこれまで図示したハウジング形状とは異なり、参照符号が付されていない周囲を取り囲むフランジを備えた、台形に近似した断面形状を有する。フランジは、ベースプレート56ないし導体58と固定的に接続、例えば接着されている。択一的に、フランジとベースプレート56ないし導体58との間に弾性のガスケットを設けることができる。この場合ハウジング52は、例えばネジまたはクランプ接続のような適当な機械的手段によってベースプレート56と緊締されている。制御機器50をハーメチックに密閉封止するために、ハウジング52には付加的にプラスチック材料から成る絶縁性の充填コンパウンド66が充填されている、ないしは回路担体54が完全に充填コンパウンド66によって射出成形により包囲されている。ハウジング52は、金属製の適当な材料および/または場合によって繊維強化されたプラスチック材料によって形成することができる。
【0034】
以降の明細書で同時に参照される
図7〜9は、電気的接続装置の別の実施形態を図示している。ここでは
図1とは異なり、インタフェースパッドおよび導電パッドに付加的な絶縁部が設けられている。
【0035】
フラット導体路12の導電パッド22は、制御機器10のインタフェースパッドに対して水平な方向において、熱溶融ができるだけ全面で行われるように、理想的には完全なカバー部が形成されるように配向されている。全面での熱溶融により、電気接触抵抗は可能な限り小さくなる。溶接プロセスにおいて、可塑化された導電パッド22は、充分に軟化したインタフェースパッド24に対して白い矢印の方向にプレスされ、溶融ゾーン26の領域にて導電性プラスチックが僅かに局地的に交互に混合する。制御機器10の内部にはさらに接続線路36が延在している。接続線路36は、ここでは図示されていない電子コンポーネントないし回路担体を電気的接続するために使用される。
図1〜3に基づいた実施形態とは異なり、導電パッド22もインタフェースパッド24も、電気絶縁性の高い実質的に非導電性である絶縁層68,70によって完全に取り囲まれている。絶縁層68,70は、熱可塑性および/または熱硬化性プラスチックによって形成することができる。
【0036】
図8から見て取れるように絶縁層68,70は、熱溶融ないし熱溶接されたインタフェースパッド22と導電パッド24によって形成された電気的な接触接続箇所74,76に対する、(溶融プロセス後に本来の電気的な接触接続箇所72を形成する)インタフェースパッドと導電パッド22,24の電気絶縁性を改善する。このことは殊に、接点間隔が小さい多芯のフラット導体路を制御機器10に電気的に接触接続したい場合に有利である。さらに絶縁層68,70は、接触接続箇所72〜76の機械的耐性を改善すると同時に、電気的な接触接続箇所72〜76の境界領域における汚染粒子および/または化学的に攻撃性の流体の侵入を阻止する。
【0037】
図9では、導電パッド22は、溶融ゾーン26の領域においてインタフェースパッド24と溶接されており、フラット導体路12と制御機器10の間の電気的接続および機械的接続が形成されている。導電パッド22はインタフェースパッド24と溶融されており、上側の絶縁層68は下側の絶縁層70と溶融されている。
【0038】
以降の明細書で同時に参照される
図10〜12は、多数の金属接続部が設けられた制御機器を備える電気的接続装置の別の実施形態を図示している。
【0039】
制御機器90は多数の直線状の金属接続部を有しており、これらのうち1つの金属接続部に、残りの全ての金属接続部を代表して参照符号92が付されている。金属接続部92は、制御機器90内の電子コンポーネントおよび/または電気機械コンポーネントと導電性接続されている。フラット導体路12には、互いに平行に等間隔を空けて延在している多数の導線が埋め込まれている。最も手前にある導線14は、金属接続部92と導電性接続されている。残りの金属接続部も、相応にフラット導体路12の導線に接続されている。制御機器90の金属接続部ないしフラットピンは、この実施例では長方形に近似した断面形状を有する。
【0040】
図11は、
図10の接続装置を、接触接続していない状態において、概略的な部分断面図にて図示している。銅線14は、上側および下側のプラスチックフィルム16,18によって両側が覆われている。接続領域20には、導電性プラスチックによって形成された導電パッド22が位置している。金属接続部92の下側には、同様に導電性プラスチックによって形成されたインタフェースパッド94が位置している。基本的には、導電性プラスチックの付着力を改善するために、金属接続部92に例えばプラズマ放射処理等のような適当な機械的、化学的、および/または物理的な前処理を施す必要がある。択一的に金属接続部92を、機械的に粗面化すること、および/または、適当な溶剤によって化学的に洗浄することも可能である。
【0041】
金属接続部92に対するインタフェースパッド94の付着力をさらに改善するために、金属接続部の中に孔部96を設けることができ、この孔部には、有利には完全に導電性プラスチックが侵入している。択一的に、破線で示すように金属接続部92の両側に導電性プラスチックを設けることも可能であり、こうすることによって結果的に、楕円形に近似した断面形状を有するインタフェースパッド98が形成される。導電パッド22およびインタフェースパッド94ないし98を充分に加熱した後、これらは白い矢印の方向に互いにプレスされ、導線14と金属接続部92の間の溶融、ひいては電気的な接触接続が形成される。
【0042】
図12では、導電パッド22がインタフェースパッド94と熱によって溶融されており、これによってフラット導体路12は制御機器90に導電性接続される。制御機器90とフラット導体路12の間のこの電気的接続をハーメチックに密閉するために、垂直方向に互いにずらされた2つの側方のフランジ部分102,104を備えた、周囲を取り囲む蓋部100が設けられている。蓋部100は、金属材料によって、および/または、熱可塑性または熱硬化性プラスチック材料によって形成することができる。フランジ部分102,104は、接着層106によって、フラット導体路12の上側ならびに制御機器の上側と接続されている。択一的に、蓋部100の位置を固定するために、ネジ接続および/またはクランプ接続を実施することも可能である。右側のフランジ部分104と金属接続部92の間には、円形とは異なる他の断面形状を有する弾性の密閉手段108が、例えばO型リングまたはリングガスケットの形態で配置されている。下側の密閉は、平坦な担体プレート110によって行われる。担体プレート110は、接着層106によってフラット導体路12ならびに制御機器の下側と接着されている。担体プレート110は金属材料によって形成することができ、純粋な密閉機能以外にも、制御機器90に含まれる電子および/電気機械コンポーネントを冷却するためのヒートシンクにもなる。さらに必要な場合には、蓋部100と金属接続部92の間ならびに金属接続部92と担体プレート110の間に形成される参照符号が付されていない中空空間に、封止のための電気絶縁性の充填コンパウンドを収容することが可能である。密閉手段108の寸法、殊に高さは、蓋部100の取り付け後にこの密閉手段が若干の機械的な予圧下にあるように、ひいては金属端部92が所定の力によってフラット導体路12をプレスするように、選択される。この際、担体プレート110が対応受けとして機能する。この構成によって、フラット導体路12と制御機器90の間で電気的な接触接続が保証されると同時に、接続の機械的耐性も一層最適化される。さらには有害な環境影響に対する密閉が保証されている。
【0043】
図13は、インタフェースパッドを有していない、金属接続部を備える制御機器を有する接続装置の別の実施形態を示す。
【0044】
これまで説明した実施形態とは異なり、制御機器120は、円形に近似した断面形状を有する下に向かって角度付けられた金属接続部122ないし丸ピンを使用することができる。この金属接続部ないし丸ピンには、インタフェースパッドが設けられていない(「インタフェースパッドを有していない」)。金属接続部122とベースプレート126の中の導体124との間の電気的接続を形成するために、熱可塑性の導電性プラスチックによって形成された導体124は熱供給によって充分に可塑化され、金属接続部122はこの導体124の中にプレスされ、溶融され、これによって電気的に接触接続されて、位置固定される。
【0045】
絶縁材料によって形成されたベースプレート126において導体124は例えば溝および/または他の凹部をフライス削りすることによって実現される。この溝および/または凹部には、導体124が有利には参照符号が付されていないベースプレート126の上側と同一平面状になるような量だけ、導電性プラスチックが供給される。
【0046】
制御機器120の、隣り合う金属接続部に対する電気絶縁作用を一層最適化するため、ならびに、不利な環境影響に対する耐性を一層最適化するために、金属接続部122に、適当な絶縁性の熱可塑性プラスチック材料によって形成されている中空円筒形の絶縁スリーブ128を設けることができる。制御機器120の完全な電気的接触接続のために、ベースプレート126には、基本的に多数の導体124が組み込まれている。有害な媒体に対する耐性を一層改善するために、装置全体をさらに充填コンパウンド(“金型コンパウンド”)によって被覆することができる。
【0047】
図14は、接続装置の別の1つの実施形態を図示している。
【0048】
図13による実施形態とは異なり、導電性プラスチックによって形成された、長方形に近似した断面を有する導体130が、参照符号の付されていないベースプレート126の表面上に延在しており、制御機器120は、直線状の金属接続部132ないし丸ピンまたはフラットピンを有する。導体130は例えば、押出ノズルによって導電性プラスチックをベースプレート126の上に射出することによって製造することができる。
【0049】
ここではさらに、電気絶縁性に構成されたベースプレート126の中に切欠き134が設けられている。参照符号の付されていない切欠き134の深さは、参照符号の付されていない制御機器120の構造高さに相当する。切欠き134の縁部側には、直方体形状に近似した、同じく導電性プラスチックから形成された少なくとも1つの導電性移行部136が位置している。基本的に多数の導電性移行部が必要とされるが、1つないし複数の導電性移行部136は、例えば可塑化された状態の導電性プラスチックを相応の構造の押出ノズルを用いて射出することによって形成することができるか、または事前に製造された導電性移行部を接着することによって形成することができる。この場合、設けるべき直方体形状の導電性移行部136の数は、導体130と制御機器120の金属接続部132との間で獲得すべき電気的な移行コンタクト(Uebergangskontakt)の数に相当する。複数の導電性移行部136はそれぞれ、この場合、図平面に対して垂直に互いに平行に間隔をあけて延在している。
【0050】
実質的に直方体形状の導電性移行部136は長方形の断面形状を有しており、導電性移行部136の高さは、制御機器120の構造高さにほぼ相当する。導体130と金属接続部132の間の電気的接続を形成するために、金属接続部132ならびに制御機器120の縁部側のハウジング部分が、充分な加熱によって軟化された導電性移行部136の中にプレスされ、これと同時に導電性移行部136が、溶融ゾーン138の領域において熱によって導体130と溶融される。
【0051】
金属接続部132ならびに導電性移行部136の充分な電気絶縁性を保証するために、導電性移行部136同士は基本的に、導電性移行部と導電性移行部の間に配置される絶縁移行部によって互いに分離する必要がある。これらの絶縁移行部は
図14では図示されていないが、有利には同様に直方体形状である。導電性移行部と絶縁移行部とが一連に互いに交互に配置されている上記記載の構造は、LCDディスプレイの接触接続のための導電性ゴムの構造に類似している。殊に機械的耐性を最適化するために、必要に応じて制御機器120をベースプレート126に接着させることも可能である。これまで説明してきた実施形態は、導体130と制御機器120とベースプレート126との間の電気的接続の、ハーメチックな完全な密閉封止を保証し、電気的接続部ないし接触部を有害な環境影響から充分に独立させることができる。ベースプレート126は、下側にて、すなわち導体130および導電性移行部136の領域の外側にて、排熱を改善するために金属材料によって覆われている。
【0052】
図15は、電気的接続装置の別の1つの実施形態を図示している。
【0053】
図13、14による実施形態とは異なり、制御機器140は、参照符号が付されていないハウジングの中またはハウジングに接して直接配置された少なくとも1つのインタフェースパッド142を有する。インタフェースパッド142は、制御機器140に含まれた電子および/または機械コンポーネントと導電性接続されている。接続領域20において、上側および下側のプラスチックフィルム16,18がフラット導体路12から除去されている。つまりフラット導体路はこの接続領域においては完全に絶縁除去されており、導電性の(銅製)導線14が露出している。導線14は全ての側にて、導体性プラスチックからなる導電パッド144によって周囲が被覆されている。導電パッド144は、鍋形ないしキャップ形に近似した形状を有し、かつ残りのプラスチックフィルム16,18に接続しており、このようにしてこの領域への異物および/または流体の侵入が阻止される。この導電パッド144は、例えば導線14を浸漬することによって簡単に相応の形状に製造することができる。導線14は、少なくとも部分的に、充分に軟化ないし可塑化された導体性プラスチックによって充填されている。したがって導電パッド144と導線14の間には電気的な接触接続が存在する。
【0054】
フラット導体路12と制御機器140の間の電気的接続を形成するために、インタフェースパッド142と導電パッド144は加熱によって充分に可塑化され、溶融ゾーン146の領域で小さな圧力によって互いにプレスされ、互いに溶融される。フラット導体路12と制御機器の間におけるこのように形成された電気的接続は、始めからハーメチックにカプセル封入されており、したがって完全に有害な環境影響から保護されている。
【0055】
この実施形態により、制御機器140とフラット導体路12の間の電気的接続は、非常に省スペースで、製造技術的に簡単かつ確実に取り扱うことができるようになり、必要に応じて多芯に構成することができる。