特許第6121067号(P6121067)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6121067バスパーティシパント装置およびバスパーティシパント装置の動作の方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6121067
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】バスパーティシパント装置およびバスパーティシパント装置の動作の方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/40 20060101AFI20170417BHJP
【FI】
   H04L12/40 M
【請求項の数】18
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-550236(P2016-550236)
(86)(22)【出願日】2014年11月24日
(65)【公表番号】特表2017-505586(P2017-505586A)
(43)【公表日】2017年2月16日
(86)【国際出願番号】EP2014075441
(87)【国際公開番号】WO2015075249
(87)【国際公開日】20150528
【審査請求日】2016年8月3日
(31)【優先権主張番号】102013223971.8
(32)【優先日】2013年11月23日
(33)【優先権主張国】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516151184
【氏名又は名称】ケーニッヒ−ペーアー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルト・シュピーゲル
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクトア・ヴィソツキ
【審査官】 宮島 郁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−281800(JP,A)
【文献】 特開2002−077423(JP,A)
【文献】 特表平11−509394(JP,A)
【文献】 特表2010−510741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L12/00−12/955
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスター/スレーブ方法によりデータテレグラム(18)をシリアルデータバス(12)経由で送受信するためのバスパーティシパントデバイス(30)であって、前記バスパーティシパントデバイス(30)は、
マスターユニット(38)と、
スレーブスタック(SSS)と、スレーブコントローラ(SSC)と、マスターユニット(48)と、を備えたスレーブユニット(36)と、
前記スレーブユニット(36)により制御可能な機能チェンジャ(40)と、
前記マスターユニット(38)とスレーブユニット(36)との間の直接通信のための内部通信手段(58)と、を備え、
前記バスパーティシパントデバイス(30)の前記マスターユニット(38)は、前記バスパーティシパントデバイス(30)の前記マスターユニット(38)よりも前のマスターユニットの機能を引き受けるために必要な前記データバス(12)上のデータテレグラム(18)のモニタリングを行うために構成されており、
前記スレーブユニット(36)および読み取りの目的のみで活性化されている前記マスターユニット(38)は、第2のスイッチングモードで前記データバス(12)に切り替え可能であり、
モニタリング出力は前記マスターユニット(38)から前記スレーブユニット(36)に通信可能であり、
前記データバス(12)へのまたは前記データバス(12)からの切り替えは、前記スレーブユニット(36)からの切り替え信号(50)に対する反応として、機能チェンジャー(40)によって行うことが可能であり、
前記バスパーティシパントデバイス(30)の前記マスターユニット(38)は、前記データバス(12)上のデータテレグラム(18)に基づき前記バスパーティシパントデバイス(30)の前記スレーブユニット(36)によってモニタリング、活性化、不活性化が可能であることを特徴とする、バスパーティシパントデバイス(30)。
【請求項2】
前記バスパーティシパントデバイス(30)は、内部通信手段(58)を経由した前記マスターユニット(38)と前記スレーブユニット(36)間の直接通信のために構成されており、
前記バスパーティシパントデバイス(30)は、
前記スレーブユニット(36)および前記マスターユニット(38)によってアクセス可能なストレージエリア、
従来型のバスシステム、または
パラレルデータポートとの直接接続
を介して通信が行われるように構成されている、請求項1に記載のバスパーティシパントデバイス(30)。
【請求項3】
バスパーティシパントデバイス(30)が機能チェンジャー(40)によって以下のスイッチングモードの間の切り替えが可能なことを特徴とするものであり、
スレーブユニット(36)はマスターユニット(38)無しの第1のスイッチングモードにおいてデータバス(12)に切り替えられ、
スレーブユニット(36)は活性化されているマスターユニット(38)有りの第2のスイッチングモードにおいてデータバス(12)に読み取り専用に切り替えられ、また
スレーブユニット(36)と活性化されたマスターユニット(38)は第3のスイッチングモードにおいて順次データバス(12)に読み書き両用に切り替えられる、請求項1または2に記載のバスパーティシパントデバイス(30)。
【請求項4】
マスターユニット(48)が、機能チェンジャー(40)および内部通信ユニット(58)に接続されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のバスパーティシパントデバイス(30)。
【請求項5】
機能チェンジャー(40)によってスレーブユニット(36)の以下の内部ポート、
スレーブの第1送信ポート(Ts1)、
スレーブの第1受信ポート(Rs1)、
スレーブの第2送信ポート(Ts2)、
スレーブの第2受信ポート(Rs2)、
マスターユニット(38)の以下の内部ポート、
マスターの送信ポート(Tm1)、
マスターの受信ポート(Rm1)、および
バスパーティシパントデバイス(30)のインターフェース(32)と(34)の切り替えが可能であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のバスパーティシパントデバイス(30)。
【請求項6】
前記第1のスイッチングモードにおいて、マスターユニット(38)はデータバス(12)から切り離されており、バスパーティシパントデバイス(30)はスレーブとして機能するように構成されており、
そこではスレーブユニット(36)は送受信ポートを2重に備えており、また
そこでは機能チェンジャー(40)が切り替えられており、
スレーブユニット(36)の送信ポート(Ts1)は
バスパーティシパントデバイス(30)のインターフェース(32)と接続されており、またスレーブユニット(36)のスレーブRs1の第1受信ポート(Rs1)はバスパーティシパントデバイス(30)のインターフェース(32)と接続されており、スレーブユニット(36)の第2送信ポート(Ts2)はバスパーティシパントデバイス(30)のインターフェース(34)と接続されており、スレーブユニット(36)のスレーブの第2受信ポート(Rs2)はバスパーティシパントデバイス(30)のインターフェース(34)と接続されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のバスパーティシパントデバイス(30)。
【請求項7】
スレーブユニット(36)が送受信ポートを2重に備えていることを特徴とし、
第2のスイッチングモードにおいては、受動マスターユニット(38)は読み取り専用にのみデータバス(12)に切り替え可能であり、スレーブユニット(36)はデータバス(12)に切り替え可能であり、
そこでは機能チェンジャー(40)が切り替えられており、それによって
マスターユニット(38)の受信ポート(Rm1)は
バスパーティシパントデバイス(30)のインターフェース(34)に接続され、また
マスターユニット(36)の第1送信ポート(Ts1)は
バスパーティシパントデバイス(30)のインターフェース(32)に接続され、
スレーブユニット(36)の第1受信ポート(Rs1)は
バスパーティシパントデバイス(30)のインターフェース(32)に接続され、
スレーブユニット(36)の第2送信ポート(Ts2)は
バスパーティシパントデバイス(30)のインターフェース(34)に接続され、また
スレーブユニット(36)の第2受信ポート(Rs2)は
バスパーティシパントデバイス(30)のインターフェース(34)に接続されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載のバスパーティシパントデバイス(30)。
【請求項8】
スレーブユニット(36)が送受信ポートを2重に備えており、システムが正常に作動しているときは、機能チェンジャー(40)が第3のスイッチングモードに切り替えられることを特徴としており、それによって
活性化されたマスターユニット(38)の送信ポート(Tm1)は
スレーブユニット(36)の第1受信ポート(Rs1)に接続されており、また
活性化されたマスターユニット(38)の受信ポート(Rm1)は
スレーブユニット(36)の第1送信ポート(Ts1)に接続されており、また
スレーブユニット(36)の第2送信ポート(Ts2)は
バスパーティシパントデバイス(30)のインターフェース(34)に接続されており、また
スレーブユニット(36)の第2受信ポート(Rs2)は
バスパーティシパントデバイス(30)のインターフェース(34)に接続されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載のバスパーティシパントデバイス(30)。
【請求項9】
スレーブユニット(36)が2重の送受信ポートを備えていること、そこでは第3のスイッチングモードにおいて、スレーブユニット(36)と活性化されたマスターユニット(38)が読み書き両用に同時にまた直列にデータバス(12)に切り替え可能であり、
そこでは、機能チェンジャー(40)がバスパーティシパントデバイス(30)の作動のためにオープンリングに構成されたデータバス(12)に切り替えられており、それによってローカル活性化マスターユニット(38)の送信ポート(Tm1)が
スレーブユニット(36)の第1受信ポート(Rs1)に接続され、
活性化されたマスターユニット(38)の受信ポート(Rm1)はバスパーティシパントデバイス(30)のインターフェース(32)に接続され、また
スレーブユニット(36)の第1送信ポート(Ts1)は
バスパーティシパントデバイス(30)のインターフェース(32)に接続され、また
スレーブユニット(36)の第2送信ポート(Ts2)は
バスパーティシパントデバイス(30)のインターフェース(34)に接続され、また
スレーブユニット(36)のスレーブの受信ポート(Rs2)はバスパーティシパントデバイス(30)のインターフェース(34)に接続されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のバスパーティシパントデバイス(30)。
【請求項10】
マスター/スレーブ方法によって作動されるシリアルデータバス(12)を稼働させる方法であり、第1のバスパーティシパントデバイス(30)と第2のバスパーティシパントデバイス(30)がデータバス(12)に接続されており、またそれぞれが請求項1に記載のバスパーティシパントデバイス(30)であることを特徴としており、
そこでは第1のバスパーティシパントデバイス(30)が活性化されたマスターユニット(38)を含み、第2のバスパーティシパントデバイス(30)が受動的なマスターユニット(38)を含み、また
その方法が、
a1. 第1のバスパーティシパントデバイス(30)のスレーブユニット(36)はデータバス(12)上のデータテレグラム(18)の送信のモニタリングの結果、第1のバスパーティシパントデバイス(30)の活性化されたマスターユニット(38)を不活性化し、
a2. 第2のバスパーティシパントデバイス(30)のスレーブユニット(36)はデータバス(12)上のデータテレグラム(18)に基づいて第1のバスパーティシパントデバイス(30)内の活性化されたマスターユニット(38)をモニタし、
b1. 誤作動が生じた場合は、第1のバスパーティシパントデバイス(30)のスレーブユニット(36)は、以後マスターユニット(38)からはデータテレグラム(18)がデータバス(12)に到達しないように機能チェンジャー(40)によって第1のバスパーティシパントデバイス(30)の活性化されたマスターユニット(38)を第1のスイッチングモードに切り替え、また
b2. 第2のバスパーティシパントデバイス(30)のスレーブユニット(36)がモニタリングの結果によって第2のバスパーティシパントデバイス(30)まれたマスターユニット(38)の活性化に影響を及ぼすようなプロセスを含むことを特徴とする、方法。
【請求項11】
スレーブユニット(36)がデータテレグラム(18)が到達しない場合または予想しないときに到達した場合に自動的に識別するように構成されていることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
バスパーティシパントデバイス(30)のスレーブユニット(36)が、データバス(12)を経由するデータテレグラム(18)の送達をモニタすることにより、マスターユニット(38)が規則的にデータテレグラム(18)を送達すること、またデータテレグラム(18)か高レベルの誤りを含むことを認識すること、およびそのような場合にはスレーブユニット(36)が第1のバスパーティシパントデバイス(30)のマスターユニットを不動態化すること、すなわち誤操作の頻度および/または数量が異常であることの閾値を超えたことを認識することを特徴とする、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
バスパーティシパントデバイス(30)が機能チェンジャー(40)によって以下の3つのスイッチングモードの間の切り替えることを特徴とする方法であり、
第1のスイッチングモードにおいては、スレーブユニット(36)はマスターユニット(38)無しの第1のスイッチングモードにおいてデータバス(12)に切り替えられ、
第2のスイッチングモードにおいては、スレーブユニット(36)はマスターユニット(38)有りのデータバス(12)に読み取り専用に切り替えられ、また
第3のスイッチングモードにおいては、スレーブユニット(36)とマスターユニット(38)は順次データバス(12)に読み書き両用に切り替えられることが可能な、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
マスターユニット(48)により決定されたモニタリングの結果がマスターユニット(38)のステータスチェンジ、スレーブユニット(36)から構成されるマスターユニット(48)がマスターユニット(38)にそこで必要とされるステータスチェンジ、すなわちそれまでの受動的なステータスであって単にデータバス(12)を経由して送達されるデータテレグラム(18)を聴くだけから、バスマスター(14)の機能を推定し、マスターユニット(48)が機能チェンジャー(40)を切り替えるためのスイッチング信号(50)を作成する能動的なステータスへの変更を直接知らせることを意味すること特徴とする、請求項10〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
マスターユニット(48)がマスターユニット(38)を活性化する活性化活動の予定値をマスターコントロールレジスター(60)に書き込み、一方マスターコントロールレジスター(60)はマスターユニット(38)によって定期的にモニタされることを特徴とする、請求項10〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
受動および能動マスターユニット(38)に送達されるべきデータは1つまたは複数のプロセスデータオブジェクト(POD)またはサービスデータオブジェクト(SDO)によってバスパーティシパントデバイス(30)のローカルスレーブユニット(36)宛に送られることを特徴とし、
そこではローカルスレーブユニット(36)は受信するプロセスデータオブジェクト(POD)またはサービスデータオブジェクト(SDO)を検討し、そこに含まれているマスターユニット(38)宛てのデータを
マスターユニット(38)のストレージエリアの住所に直送するか、
またはそこからデータバス(12)に転送する、請求項10〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
マスターユニット(38)が外部のバスパーティシパントによってスレーブユニット(36)のサブグループとして扱われており、そこではスレーブユニット(36)が受動おおび能動的マスターユニット(38)へのリレーとして機能することを特徴とする、請求項10〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
マスターの変化の発生前、発生中または発生後にバスパーティシパント(16、30)を同期させるために、マスターユニット(38)が新しいマスターユニット(38)とその他のパーティシパント間の時間的な遅れを計算し、使用してバスパーティシパントを同調させることを特徴とする、請求項10〜17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバスパーティシパント装置およびバスパーティシパント装置の動作の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バスパーティシパント装置は、マスタースレーブ方式に従って、媒体へのアクセス制御を有するシリアルデータバスに接続することが意図されている。さらに可能性のある機能としては、ホップツーホップ方式によるアクティブディストリビューションおよびフレーム加算方式によるデータテレグラム内のデータの共同利用がある。これらの機能を有するバスパーティシパント装置の原理は公知である。冒頭に挙げた種類のバスパーティシパント装置の例は、データバスにおいてマスターまたはスレーブとして機能する装置である。データバスおよびそれに接続された装置全体、即ち、1つのマスターおよび通常は複数である少なくとも1つのスレーブを、以下では、ネットワークまたは略してネットと呼ぶ。
【0003】
ネットワーク内では、マスターのみが、データバスを経由して、標準的な専門用語でフレームとも呼ばれるデータテレグラムを送信する。
【0004】
フレームは、すべてのデータまたはスレーブの個別のデータを含むことができる。例えば、ホップツーホップ方式では、データバスに転送されるデータテレグラムは1つのスレーブまたは一連のスレーブによって受信され、好ましくはバスに接続されているスレーブの各々によって受信される。この過程で、スレーブはデータテレグラム内の同スレーブに割り当てられたデータパッケージセグメント(入力データ)を、同スレーブを通過するデータフローから受け取り、出力データをデータパッケージセグメントとしてデータテレグラム内に挿入することができる。各スレーブが、このように修正されたデータテレグラムを、対応する後続のスレーブに転送する。通常、すべてのスレーブが同様に挙動する。リング状に閉じていないストリング状のバスアーキテクチャ内の最後のスレーブは、その開放ポートとして知られる送信インターフェースにそれ以降のスレーブが接続されていないので、自らを最後のスレーブとして認識する。次に、データバス内の最後のスレーブは、その受信インターフェースを経由してその前のスレーブにデータテレグラムを返送する。上流のすべてのスレーブが同様に挙動する。データテレグラム18は、このようにしてマスターに返される。このように、最後のスレーブが論理リングを閉じる。物理的には、すべてのスレーブまたはスレーブ群は直列接続されており、受動状態である。即ち、これらは、マスターによってデータバス上に転送されるデータテレグラムの範囲内でのみ、自らデータバスにデータを転送することができる。この種のフレーム加算方式では、マスターとして機能している通信パーティシパントとスレーブとして機能している通信パーティシパントとの間に機能的な違いが存在する。ここでは、スレーブとして機能している通信パーティシパントは、比較的簡単な設計によって特徴づけられている。マスターが故障すると、イニシエータが存在しないので、ネットワーク内の通信が行われない。ネットワーク全体が、事実上アイドル状態となる。
【0005】
コスト的な理由により、現行の技術、特にイーサネット(登録商標)通信によれば、環状構造はほとんどの場合回避される。これにもかかわらず冗長通信が必要な場合は、ホップツーホップ式バスパーティシパントのチェーン内の個別の接続を非活性化することにより環状構造を分離することが可能である。しかし、このために、とりわけ伝送方向を反転させるために使用される方法は、低速であり、したがって、高速のリアルタイム通信には適していない。変形の概要については、IEC規格62439に見ることができる。通信回線の故障に関する所謂問題のないスムーズなプロトコルもまた、62439−3に定義されている。このことは、可能であれば、通信の中断またはデータの消失がないことを意味し、これは切り替え時の可能な限り高速な移行を通じて達成することができる。しかし、以下の2つの形態におけるアプリケーションの機能に関しては、この定義は妥当ではない。
【0006】
並列冗長プロトコル(Parallel Reduncancy Protocol:PRP)は、ネットワークおよびそれらの接続を単に重複させる方法を説明している。しかし、これは非常に複雑である。
【0007】
高可用シームレスリング(High availability Seamless Ring:HSR)は、冗長データをリングを経由する2つの経路上で処理する方法を説明している。しかし、このことは、すべてのスレーブの実現のための追加の手間を意味する。
【0008】
Beckhoff Automation GmbH社による公知の解決策は、3つのスイッチおよび4つの追加回線を経由し、追加のプロプライエタリプロトコルによって、または、例えばEtherCATAutomationプロトコル(EtherCATAutomation Protocol:EAP)のような標準プロトコルに基づいてマスター間の通信が行われる2つのマスターの冗長を必要とする。解決策は、Beckhoff社のアプリケーションノートK9321−0809−0004に公開されている。この解決策は、非常に複雑である。この解決策はまた、セキュリティ関連アプリケーションまたは同期型アプリケーションには不向きである。
米国特許出願第2011/0029687A1号には、ネットワークを介してフレームを送るマスター、代替マスター、フレームにデータを書き込むソースノード、およびフレームからデータを抽出するデスティネーションノードを備えた通信ネットワークが記載されている。
米国特許第5,751,220号には、マスターがネットワークの同期を提供するマスタースレーブ方式のネットワークが開示されている。ネットワークには、マスターに切り替えることのできる代替マスターの機能を備えるスレーブが存在する。
米国特許出願第2009/0235001号には、主たる能動マスター、少なくとも1つのスレーブ、および初期に非活性である代替マスターを備えるマスタースレーブ方式のデータバスが開示されている。通信システムを再構成することができ、代替マスターを活性化することができる。
【0009】
特に安全機能を伴うマスタースレーブネットワークにおいては、マスターが故障した場合に、スレーブまたはネットワークが動作するシステム全体を安全状態に置くことが困難な場合がある。例えば、自動車上では、故障したマスターの機能を迅速にテイクオーバーする代替マスターが非常に重要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の課題は、バスマスターを切り替えるためのマスタースレーブネットワークの簡潔かつ効率的な選択肢を提供することである。
【0011】
本発明によれば、この課題は、請求項1に記載の特徴を有するバスパーティシパント装置によって解決される。バスパーティシパント装置は、シリアルデータバスに接続し、ホップツーホップ方式に従ってデータバスを経由して伝送されるデータテレグラムを受信する公知の手段を備えている。さらに、バスパーティシパント装置は、このバスパーティシパント装置の備えるスレーブユニットのうちの1つを使用するスレーブ動作においてデータバス上のスレーブとして機能するように構成されている。バスパーティシパント装置は、接続可能なマスターユニットを備えている。
【0012】
これにより、追加のマスター冗長機能を備えていないスレーブを有するシステムと比較して、追加の接続を必要とせずにマスター冗長性が達成される。したがって、ほとんど手間を必要とせずに追加の冗長性が提供され、また既存のシステム内で、例えば既存のスレーブを本発明に係るバスパーティシパント装置で置き換えることで、容易に改良することができる。また、マスター冗長性を備えた本発明に係るバスパーティシパント装置の追加接続により、既存のシステムをアップグレードすることもできる。このように、本発明に係るマスター冗長性を備えたバスシステムは、故障発生後に継続動作する確率が高いことを意味する高故障時動作性を提供することができる。バスパーティシパント装置は、機械的に分離されたユニットとして構成することができる。
【0013】
データテレグラムの伝送は、データバス経由でスレーブユニットを使用して監視することが好ましい。バスパーティシパント装置の備えるマスターユニットは、バスパーティシパント装置のスレーブユニットを使用した監視の結果に依存して活性化することができる
【0014】
スレーブによってマスターを活性化する一利点の根拠は、マスターが複雑であるほど故障の確率が高くなることである。具体的には、マスターは本質的にソフトウェアによって制御され、スレーブは本質的にハードウェアによって制御されるので、マスターによる自己活性化とは対照的に活性化に安全なスレーブを使用することによりシステム全体の安全性が向上する。マスターおよびスレーブは、バスパーティシパント装置内で一緒に配置されている。したがって、活性化をバスパーティシパント装置内部で実行することができる。このとき、バスマスターとしてのマスターユニットの活性化はバス動作の問題からは独立しており、このことは、例えばケーブルの断線もしくは送信ユニットの故障または以前のマスターの故障などによるバスアーキテクチャの改造後の切り替え時に特に意味を持つ。このことはまた、故障に対するバス動作のセキュリティをおおいに向上させる。スレーブユニットによる専一的な監視を通じて、システムの安全性をよりさらに向上させることができる。
【0015】
また、外部からバスパーティシパント装置のスレーブユニットへのメッセージを介して追加のマスターを活性化または非活性化することにより、これを活性化または非活性化することもできる。この目的のために、バスパーティシパント装置内でマスターユニットとスレーブユニットとの間の内部通信が、例えば共有メモリー領域を介して行われている。マスターユニットは、スレーブユニットのサブユニットとして外部バスパーティシパントに応答することができる。
【0016】
したがって、提案されている手法によれば、スレーブ動作においてスレーブとしてのみ機能するバスパーティシパント装置は、そのスレーブ機能を放棄せずにネットワーク内のある種の管理者となる。このように、スレーブとして機能するバスパーティシパント装置は、スレーブの他の機能も実行する。具体的には、バスパーティシパント装置内のスレーブは、バスパーティシパント装置の外部のバスマスターによってデータバス上に送り出されたデータテレグラムの受信を監視する。さらに、このスレーブは、特定の設定に従ってデータテレグラムのデータフローからデータパッケージセグメントを取り出すこともできる。このスレーブは、特定の設定に従って、データテレグラム内のデータフロー内にデータパッケージセグメントを挿入することができる。例えば、バスパーティシパント装置内のスレーブユニットによるデータバスを経由したデータテレグラムの送信の監視の故に、ネットワーク内のマスターとして機能する装置の故障を認識することができる。このような状況が認識された場合、スレーブユニットを使用して、バスパーティシパント装置の備えるマスターユニットを自動的に活性化することができる。バスパーティシパント装置の動作中にこのような状況が認識されると、バスパーティシパント装置の備えるマスターユニットによって自動的に活性化を行うことができる。バスパーティシパント装置は、スレーブ動作では受動状態でありながらスレーブユニットによって活性化することができ、したがってデータバス上でまたはネットワーク内でスレーブまたはマスターのいずれかとして機能することのできるスレーブユニットおよびマスターユニットを備えているので、ここで提案されているバスパーティシパント装置はまた、以下ではハイブリッドとしても参照される。受動マスターとは、このマスターがバスから伝送されるデータを監視し、ハイブリッド内のスレーブから受信したデータを評価する動作モードを意味する。受動マスターは、このデータのすべてを監視することが好ましい。しかし、受動マスターはデータを送信することはしない。受動マスターは、好ましくは、監視を行うためにデータバスに接続されているべきである。
【0017】
スレーブユニットを使用してマスターユニットを活性化しまたは非活性化するために、スレーブユニットは、例えば以前の能動マスターの監視エラーの結果として、例えばデータのトラフィックを監視している以前の受動マスターユニットから、これに関するコマンドを受信することができる。スレーブユニットはまた、例えばデータテレグラムの不在または予期されていなかった受信時刻に基づいて、活性化のケース自体を認識することもできる。
【0018】
2つ以上のバスパーティシパント装置、特に同じ種類のものを、データバスに接続することができ、これらは単一のまたは多重のマスター冗長性を形成することができる。多重冗長性の場合において、マスターを切り替える際に、代替マスターのうちのいずれを使用するかを選択するインスタンスをインストールすることが好ましい。これにより、バス上のいくつかのマスターが衝突することが防止される。
【0019】
バスパーティシパント装置は、好ましくは、バスと通信するための厳密に2つのインターフェースを有するべきである。好ましくは、同装置は、バスに対する1つもしくはいくつかのインターフェース以外には一切のインターフェースを有しない。インターフェースは、好ましくは、イーサネット(登録商標)インターフェースである。あるいは、バスパーティシパント装置をパラメータ化するための第3のインターフェース、具体的にはイーサネット(登録商標)インターフェースが考えられる。
【0020】
バスパーティシパント装置は、データバス上で、バスオフマスターを伴うスレーブ、受動マスターを伴うスレーブ、または能動マスターを伴うスレーブのいずれかとして機能することができる。バスオフマスターとして設定されているマスターは、バスから切断されたマスターとしてみなさなければならない。バスパーティシパント装置内のマスターユニットに欠陥がある場合は、好ましくは純粋なスレーブとしての種類の動作が実行される。
【0021】
バスパーティシパント装置は、以前のバスマスターが故障した場合に同装置の備えるマスターユニットを用いて同バスマスターの機能をテイクオーバーすることのできる、ネットワーク内の通信パーティシパントに相当する。このために必要なバス上のデータトラフィックの監視は、バスパーティシパント装置内のスレーブユニットおよび/またはバス上のデータを読み出す同装置内のマスターユニットによって行うことができる。したがって、スレーブユニットは、データバス上の制御インスタンスである。
【0022】
別の方法として、または追加の方法として、この機能をマスターユニットがテイクオーバーすることもできる。これに対応する管理結果を、マスターユニットによってスレーブユニットに伝達することができる。
【0023】
本特許出願内の方法はまた、従属装置の要件に対応してさらに開発することができ、その逆もまた可能であることに留意されたい。
【0024】
バスパーティシパント装置の一実施形態において、そのスレーブユニットは、データテレグラムの入力とその直後のデータテレグラムの入力との間の期間を管理する方法、ならびに該当する期間を与えられたまたは与えることのできる限界値と比較する方法を備えている。限界値を超えた場合は、スレーブユニットを使用してマスターユニットを活性化することができる。データバスを経由したデータテレグラムの送信の管理は、ウォッチドッグの役割のように実行される。このような管理により、通常は定期的に、具体的には等時間間隔で受信されるデータテレグラムの不在に基づき、バスマスターの故障を認識することができる。
【0025】
バスパーティシパント装置のさらなる実施形態において、この実施形態は、スレーブユニットによって制御可能な機能切り替え装置を備えている。機能切り替え装置により、マスターユニットの活性化の過程でスレーブユニットからの切り替え信号に対する反応としてデータバスからの読み出しを行うためのデータバスへの接続を行うことができる。具体的には、データバスに書き込みを行うためのマスターユニットの活性化のためにスレーブユニットを使用することもまた可能である。ここで、接続とは、データ接続の作成を意味する。機能切り替え装置は、好ましくは、スレーブユニットを使用して制御できるべきである。スレーブユニットおよびマスターユニットまでのデータバスのいろいろな種類の接続を行うことができ、したがって、バスパーティシパント装置のいろいろな動作モードを実現することができる。機能切り替え装置は、バスパーティシパント装置の内部通信経路のうちの少なくともいくつかを決定する。
【0026】
マスターユニットの活性化が完了する以前であっても、読み出しのためにマスターユニットをデータバスに接続することができる。このとき、機能切り替え装置は、スレーブユニットの切り替え信号に対する反応として、データバスへの書き込みの可能性を含むマスターユニットの完全接続をデータバス上に生じさせる。マスターユニットがデータバスに既に接続されていない場合、スレーブユニットからの切り替え信号に対する反応として機能切り替え装置がマスターユニットをデータバスに接続する。
【0027】
バスパーティシパント装置の一実施形態において、マスターを伴わずにスレーブユニットをデータバスに接続する第1の切り替えモードまたはスレーブユニットおよび読み出しのためのみに接続されたマスターユニットをデータバスに接続できる第2のモードのいずれか一方で、機能切り替え装置を使用することができる。さらなる第3の切り替えモードにおいて、読み出しおよび書き込みを順次行うためにスレーブユニットおよび能動マスターユニットをデータバスに接続することができる。
【0028】
第2の切り替えモードは、読み出しを行うためにマスターユニットをデータバスに接続することを可能とする。このようにすれば、マスターユニットはバスマスターとしての機能をテイクオーバーせずにデータバス上のデータトラフィックを持続的にリッスンすることができる。このようにすれば、受動マスターは能動バスマスターと共有する利用可能なデータを保持することができるので、ほとんど問題を起こすことなくマスターの切り替えを実行することができる。特に、マスターはその状態に関するデータを送信する。これにより、最先端技術によるネットワーク内の冗長マスターが存在する場合には必要となるであろうところの、標準データバスとは異なる経路を経由したマスターの直接接続を不要とすることができる。
【0029】
マスターの切り替えに続いて、新しいマスターに対するデータバス上のバスパーティシパントの配列が変化する。マスターの切り替え後の新しいマスターからその他のバスパーティシパントまでの伝搬時間が変わるので、パーティシパントを相互に再同期する必要がある。個別のパーティシパント間の伝搬時間は、あらかじめ決定したうえで格納することができる。別の方法としてまたは追加的方法として、これらを動作中に決定することもできる。この既知のデータを使用して、新しいマスターとその他のパーティシパントとの間の伝搬時間の遅延を計算することができる。個別のバスパーティシパント間の伝搬時間は、1つのパーティシパントと新しいマスターとの間の伝搬時間を求めるような方法で加算することができる。これらの値の計算を利用して、より迅速にマスターの切り替えを完了することができる。具体的には、マスターまでの新しい伝搬時間は、マスターの切り替え以前に既に計算またはパラメータ化されている。このような再同期に続いて、公知の方法を使用して伝搬時間の等化を実行することができる。具体的には、これには、数ナノ秒の同期遅延が考慮されている。同期は、バスパーティシパントが(具体的には能動バスマスターが)データバスに基準時刻を書き込み、その他のバスパーティシパントが各々の時刻を受信時刻と該当する伝搬時間とを加算したものに調節するようにして実行することができる。
【0030】
また、スレーブユニットは、順方向および逆方向での送受信を行うようにデータバスに接続することができ、または接続可能とすることができる。このことは、少なくとも、バスパーティシパント装置がリングを形成するように閉じずに配置されている該当するストリングでは、ストリングアーキテクチャのバス上のバスパーティシパント装置の動作に関して有益な場合がある。しかし、場合によってはパーティシパントの故障により切断される可能性があるので、この種のパーティシパント装置をリング状のアーキテクチャに含めることが便利な場合がある。このとき、結果として生じるストリングアーキテクチャ内で動作を継続することができる。スレーブは、この目的のための2組の送信ポートおよび受信ポートを有することができる。バスパーティシパント装置上の2つのインターフェースは各々、スレーブユニット上の送信ポートおよび受信ポートにそれぞれ接続することができ、または接続可能とすることができる。
【0031】
このとき、スレーブは、バスパーティシパント装置上のインターフェースの各々の上で送受信ができるので、バスパーティシパント装置からのデータの送信は、順方向または逆方向のいずれの方向でも行うことができる。その結果、非リング状のバスアーキテクチャ内のバスを経由して両方向で、バスパーティシパント装置からデータテレグラムを送信することが可能である。
【0032】
スレーブユニットのみがバスに接続されている(本出願では「切り替えられている」という言葉もまた使用される)場合(第1の切り替えモード)、バスパーティシパント装置上の機能切り替え装置は、好ましくは、データテレグラムがスレーブを経由して進行するような方法で接続されるべきである。これらデータテレグラムが順方向に進行する場合、バスパーティシパント装置上の受信インターフェースとして動作するインターフェースからスレーブユニット上の内部受信ポートへ、スレーブの中をスレーブユニット上の内部送信ポートへと進行し、そこから送信インターフェースとして機能するバスパーティシパント装置上のインターフェースへと進行することができる。バスの動作方向を切り替えるためにデータテレグラムをバスパーティシパント装置の中を逆方向に進行させる場合は、機能切り替え装置は、以前は受信インターフェースとして動作していたバスパーティシパント装置上のインターフェースをスレーブユニット上の送信ポートと相互接続し、バスパーティシパント装置上の送信ポートをスレーブユニット上の受信ポートと相互接続することができる。次に、順方向において送信インターフェースとして機能するバスパーティシパント装置上のインターフェースからデータテレグラムを受信することができ、スレーブユニット上の受信ポートへと進行させ、さらにスレーブを経由して最終的に順方向において受信インターフェースとして機能するバスパーティシパント装置上のインターフェースへと進行させることができる。
【0033】
読み出しを行うために受動マスターユニットもまたバスに接続されている場合(第2の切り替えモード)、受動マスターは、バスパーティシパント装置を通過するデータフロー上の任意のタップポイントをアクセスすることができる。この目的のために、マスターユニット上の内部受信ポートがタップポイントに接続されている。
【0034】
バスパーティシパント装置が能動バスマスターとして動作する場合(第3の切り替えモード)、機能切り替え装置の第1の切り替えの変形において、バスパーティシパント装置を通過するデータフローに関して、パーティシパント装置の2つのインターフェースの1つがスレーブユニット上の1つの送信ポートおよび1つの受信ポートにそれぞれ接続されており、これらのポートのうちの1つが能動状態であり、1つが受動状態である。スレーブユニットは、第2の組の送信ポートおよび受信ポートを介してマスターユニットに接続されており、したがって、データバスからマスターユニットへとデータを転送し、マスターユニットからデータバスへとデータを通過させることができる。この形態は、閉鎖リングとして実現されているデータバス上の動作に特に最適である。
【0035】
第3の切り替えモードの別の方法の切り替え形態において、バスパーティシパント装置を通過するデータテレグラムの伝送方向に関して、スレーブユニットおよびマスターユニットを内部的に直列接続することができる。この形態は、開放リングまたはストリング上での動作に特に最適である。バスパーティシパント装置がこの方向で動作する場合、データテレグラムをマスターユニットからスレーブユニットへと送信することができる。このデータはスレーブユニット上の受信ポートで受信され、スレーブユニットを通過した後にその送信ポートを経由して、送信インターフェースとして動作するバスパーティシパント装置上のインターフェースへと進行する。次に、このデータはデータバス上のストリング部分を通ってその開放端部へと進行し、そこからバスパーティシパント装置へと返送され、以前は送信インターフェースとして動作したインターフェースが今度は受信インターフェースとして動作する。したがって、この切り替え形態内のスイッチのうちの1つは、反対方向から到着するデータについて、そのスレーブユニットのみが、反対方向での受信インターフェースとして動作しているインターフェースからこの時点でバスパーティシパント装置上の送信インターフェースとして動作しているインターフェースにデータを伝達するさらなる伝送に関与することを意味する。これは、データバス上のバスパーティシパント装置とデータバスの第2の端部との間の第2のストリング区画に接続されている。この端部では、データは本来の伝送方向でバスパーティシパント装置に返送され、この時点では受信インターフェースとして動作している、このデータを最後に送信したバスパーティシパント装置に到着する。データはそこからマスターユニット上の受信ポートに伝達され、特にここで処理される。スレーブユニットは、指定された機能の実現を可能とするために、2組の送信ポートおよび受信ポート(メディア冗長性)を有する。
【0036】
一形態において、スレーブユニットおよびマスターユニットは各々、2組の受信ポートおよび送信ポートを有することができる。したがって、マスターユニットおよびスレーブユニット上の1つの受信ポートおよび1つの送信ポートの各々をバスパーティシパント装置上の各インターフェースに接続することができる。内部的には、マスターユニットおよびスレーブユニットは、残りの内部ポートを介して両方向に接続されている。したがって、順方向に転送するかあるいは逆方向に転送するか、送受信にマスターユニットおよびスレーブユニット上のどのポートを使用するか、およびマスターユニットとスレーブユニットとの間の内部通信をどの方向で進行させるべきかを決定することができる
【0037】
1.切り替え論理回路を有する標準的なマスターおよび標準的なスレーブの構成要素を備えたマスター冗長性の実現のためのハイブリッドの使用。
【0038】
2.監視機能を有するローカルスレーブによる故障した能動マスターの監視および確実なハードウェア遮断。
【0039】
3.能動マスターの故障後のローカルスレーブによる受動マスターの活性化。
【0040】
4.バス自体の情報フローから切り替えに関する情報が取得される。
【0041】
5.能動マスターのローカルスレーブが基準クロックとしての役割を果たすことができる。機能切り替え装置内の切り替え論理回路が、マスターの切り替え後であっても追加の取り組みを必要とせずにネットワーク内のパーティシパントが同期したままであることを確実にする。
【0042】
図面を使用しながら、本発明の例示的な実施形態の説明を以下に記す。すべての図中、相互に対応するオブジェクトまたは要素には同一の参照番号が記されている。
【0043】
この例示的な実施形態およびその他の例示的な実施形態を、本発明を限定するものとして理解すべきではない。むしろ、本開示の範囲内での変更および修正が当然可能であり、特に、例えば一般的もしくは具体的な説明の段落で記述されまたは請求項および/もしくは図面内に包含され、および組み合わせ可能な特徴により新たな主題または新たな方法のステップもしくは方法のステップの順序につながる、個別の特徴および/もしくは要素ならびに/または方法のステップの変形もしくは組み合わせによる課題の解決策に関する専門家によって認識できる形態および組み合わせが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
以下の図面が示されている。
図1】データバスを介して通信可能に接続されているバスパーティシパントを有するネットワーク。
図2】データバスを経由してフレーム加算方式に従って伝送されるデータテレグラムのレイアウト。
図3】本明細書内で提案されている、マスターユニットおよびスレーブユニットを備える種類のバスパーティシパント装置。
図4】通信パーティシパントとして機能する少なくとも2つのバスパーティシパント装置および図3によるバスパーティシパント間の伝搬時間を有する、図1によるネットワーク。
図5】さらなる詳細を伴い、特に、バスパーティシパント装置の備える、スレーブのメディア冗長性を備えていない機能切り替え装置を伴う、図3によるバスパーティシパント装置。
図6図5とは異なる切り替え状況の機能切り替え装置。
図7】スレーブユニットが2組の受信ポートおよび送信ポートを有し、スレーブユニットが順方向および逆方向のデータテレグラムを通過させるように接続されており、マスターユニットが読み出しのために接続されている、図3によるバスパーティシパント装置。
図8】スレーブユニットが一方向に送受信するように接続されている、図7によるバスパーティシパント装置。
図9】スレーブユニットおよびマスターユニットが順方向および逆方向に送受信するように接続されている、図7によるバスパーティシパント装置。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1中の描写は、バスパーティシパントがデータバス12を介して相互に通信可能に接続されており、その1つがバスマスター(マスター)14として機能し、その他がスレーブとして機能する、最新技術によるネットワーク10を簡潔な様式で概略的に示している。マスター14およびスレーブ16はまた、描写内でこれらをさらに区別するために、「M」ならびに/または「S1」、「S2」、「S3」、および「S4」の記号で示されている。マスター14から送信されスレーブ16によって受信されるデータテレグラム18を使用した通信が、以下に簡略的にバス12としても参照されるデータバス12を経由して行われる。
【0046】
図2中の描写は、以下に簡略的にテレグラム18としても参照されるデータテレグラム18のレイアウトを簡略的な様式で概略的に示している。フレーム加算方式によってバス12を経由して転送されるテレグラム18の構造は、原理的には公知であるので、これに関しては専門家の文献を参照することができる。テレグラム18は、バス12に接続されている各スレーブ16についてスレーブ16に明確に割り当てられた区画20を含んでいる。さらに、テレグラム18はまた、接続されているスレーブ16のサブセットに関する区画20のみを含むことができる。最低限、各テレグラムは、厳密に1つのスレーブ16に関して厳密に1つの区画20を含む。データテレグラムはまた、制御情報を含むこともできる。
【0047】
マスター14から送信されたテレグラム18は、バス12に接続されている各スレーブ16によって受信される。各スレーブ16は同スレーブを通過して流れるデータフローから同スレーブに宛てられた区画20内の入力データを抽出し、同スレーブの出力データを同スレーブの区画20の所定の部分内に複製する。次に、必要に応じてこのように修正されたテレグラム18は、次のスレーブに伝達され(ホップツーホップ方式)または返送される。後者については、下記の例で説明する。
【0048】
図3中の描写は、本明細書内で提示されている方法によるバスパーティシパント装置30の実施形態を簡略的な様式で概略的に示している。バスパーティシパント装置30は図1によるシリアルデータバス12上で動作するように意図され構成されており、そのために、このようなデータバス12に接続する手段ならびにデータバスを経由してホップツーホップ方式に従って伝送されるデータテレグラム18を受信する手段を備えている。
【0049】
言及されている手段は、インターフェース32およびインターフェース34である。しかし、データバス12を経由してホップツーホップ法に従って伝送されるデータテレグラム18を受信する手段には、バスパーティシパント装置36の備えるスレーブユニット36(「S」の記号で示す)もまた含まれる。マスター14が正常に機能しているとき、即ち、通常動作において、データバス18上のバスパーティシパント装置30は、スレーブユニット36を用いてスレーブ16(図1)として機能する。スレーブユニット36に加え、バスパーティシパント装置30はまた、活性化することのできるマスターユニット38(「M」の記号で示す)をも備えている。
【0050】
データバス12上のバスパーティシパント装置30は、その通常動作においてスレーブユニット36を用いてスレーブ16として機能し、データバス12を経由したデータテレグラム18の送信を監視することができる。
【0051】
監視の結果次第では、スレーブユニット36を用いてバスパーティシパント装置30の備えるマスターユニット38を活性化することができる。監視の結果次第では、動作中にこのような活性化を行うことができる。このような活性化が行われた後、データバス12のマスターとして機能しスレーブユニット36と直列接続されているマスターユニット38を有するバス12上のバスパーティシパント装置30は、スレーブ16として機能し続ける。
【0052】
バスパーティシパント装置30は、このようにデータバス12上で、バスオフマスターを伴うスレーブ16として、受動マスター14を伴うスレーブ16として、または能動マスター14を伴うスレーブ16として機能することができるので、バスパーティシパント装置30はまた、以下において時折ただ単にハイブリッド(「H」の記号)として簡略的に参照されることもある。スレーブユニット36および/またはマスターユニット38をデータバス12に接続するために、バスパーティシパント装置30(ハイブリッド30)は、 以下に簡略的に機能切り替え装置40(記号としては「FW」)として時折参照されることもある機能切り替えユニット40を備えている。
【0053】
図4中の描写は、本質的には図1中の描写の繰り返しなので、そこでの説明が参照される。ネットワーク10は、図1中の描写とは対照的に、2つの図3によるバスパーティシパント装置30、即ち第1および第2のハイブリッド30を備えている。ハイブリッド30のうちの一方が、例えば対応する構成に基づいて、バス12上でマスター14(記号としては「H(M)」)として機能する。他方のハイブリッド30は、バス12上でスレーブ(記号としては「H(S4)」)として機能する。通常動作において、能動マスター14として機能しているハイブリッド30はバス12上で「通常の」マスター14(図1)のように動作し、通常は、他の通信パーティシパントはこれを通常のマスター14と区別できない。通常動作時にスレーブとして機能するハイブリッド30は、バス12上で他のすべての通信パーティシパントには「通常の」スレーブとして見え、したがって、これもまた通常のスレーブ16とは区別がつかない。バス12上のハイブリッド30の数は、原理的には制約がない。さらには、バス12上に2つのハイブリッド30を接続することもまた、必ずしも必要ではない。マスターの機能もまた、原理的には、「通常の」マスター14(図1)が引き受けることができる。少なくとも1つのハイブリッド30がバス12に接続されているので、マスター14またはマスターとして機能しているハイブリッド30のうちの1つが故障または誤動作した場合、ハイブリッド30のうちのマスターユニット38が冗長マスター14として利用可能である。エラーが発生した場合にはハイブリッド30、即ちそのマスター38がマスター機能を引き継ぐので、ネットワーク10の継続的な動作が保証される。
【0054】
初期にはスレーブ16として(のみ)機能するバス12上のハイブリッド30は、その他の通信パーティシパントにはトランスペアレントな方法でデータバス12を経由したデータテレグラム18の送信を監視する。さらに、図5中の描写は、図3によるハイブリッド30を、追加的な詳細と共に示している。
【0055】
スレーブユニット36は、初期には、それ自体は原理的に公知のスレーブコントローラ42(「standard slave controller:標準的なスレーブコントローラ」の記号として「SSC」)ならびにそれ自体は原理的に公知のスレーブスタック44(「standard slave stack:標準的なスレーブスタック」の記号として「SSS」)を備えている。したがって、ハイブリッド30によって(スレーブ16としての機能において)受信されるテレグラム18からのデータのテイクオーバーならびにこのようなテレグラム18へのデータのハンドオーバーが可能である。このことは、スレーブユニット36を出入りする二重ブロック矢印によって描写内に図示されている。
【0056】
スレーブユニット36のそれぞれの機能は、このために提供されているものの別個に図示されてはいないスレーブユニット36のメモリー内にロードされている制御プログラム46(記号としては「SApp」)によって決定される。スレーブの制御プログラム46(アプリケーション46)が、バスパーティシパント装置30のスレーブ機能を決定する。制御プログラム46は、テレグラム18から入力データとしてテイクオーバーすべきデータにアクセスし、テレグラム18に出力データとしてハンドオーバーすべきデータを提供することができる。
【0057】
「通常の」スレーブ16とは対照的に、ハイブリッド30のスレーブユニット36は、以下に制御ユニット48として簡略的に時折参照されることもあるマスター制御ユニット48(「Master−Steuereinheit」の記号として「MSE」)を備えている。前述のスレーブユニット36によるバス12を経由したテレグラム18の送信の監視は、このマスター制御ユニット48を用いて行われる。監視の結果次第により、制御ユニット48を用いて機能切り替え装置40が活性化の意義の範囲内で制御されているとき、制御ユニット48を用いて、したがって制御ユニット48を備えるスレーブユニット36によって、バスパーティシパント装置30の備えるマスターユニット38が活性化される。このような活性化を行うために、制御ユニット48は、活性化をもたらし、または少なくとも始動する切り替え信号50を生成する。
【0058】
バス12はハイブリッド30内をインターフェース32からインターフェース34まで延びており、バス12は機能切り替え装置40の中を通って延びている。図示の実施形態におけるデータバス12は、機能切り替え装置内を、第1、第2、および第3の切り替えモード間で切り替えることのできる4つのスイッチSa、Sb、Sc、およびSdを経由して延びている。
【0059】
図示の機能切り替え装置40の実施形態を用いて、バス12をマスターがバスから分離されているスレーブユニット36のみに接続し(マスターがバスオフ状態である第1の切り替えモード)、読み出しのみのための受動マスターユニット38およびスレーブ36に接続し(第2の切り替えモード)、またはスレーブユニット36ならびに順次の読み出しおよび書き込みのための能動マスター38に同時に接続する(第3の切り替えモード)ことができる。したがって、機能切り替え装置40は、少なくとも3つの切り替えモード、即ち、第1、第2、および第3の切り替えモードを有する。
【0060】
第1の切り替えモードにおいて、バス12にはハイブリッド30のスレーブユニット36のみが接続されており、マスターはバスオフ状態に切り替えられている。スレーブ動作において、通常動作では、バスパーティシパント装置30はスレーブ専用として動作する。リング状のデータバス上での標準的な動作方向について、バスパーティシパント装置のインターフェース32および34は、各々1つの機能のみ、即ち、送信インターフェースとしてまたは受信インターフェースとしての機能のみを有する。
【0061】
第2の切り替えモードにおいて、ハイブリッド30のマスターユニット38はバス12に受動的に接続されており、即ち、読み出しのためにデータバスに接続されている。したがって、マスターユニット38は、データバス12上のトラフィックを読み出すことができる。したがって、能動バスマスター14と少なくとも部分的に、好ましくは少なくともほぼ同じ情報状態をもたらすデータを受信することができる。能動バスマスターは、その状態に関する情報を伴うデータを送信することができる。リング状のデータバス上での標準的な動作方向について、バスパーティシパント装置のインターフェース32および34は、各々1つの機能のみ、即ち、送信インターフェースとしてまたは受信インターフェースとしての機能のみを有する。
【0062】
第3の切り替えモードにおいて、スレーブユニット36は読み出しおよび書き込みのためにバス12に接続されており、ハイブリッド30の能動マスターユニット38は読み出しのみのためにバス12上のスレーブユニット36に直列に接続されている。バスパーティシパント装置のインターフェース32および34は各々、送信インターフェースまたは受信インターフェースとして動作できるので、バスパーティシパント装置の双方向動作が可能である。
【0063】
図5中の描写は、スレーブユニット36およびマスターユニット38がバス12に直列接続されている第3の切り替えモードにある機能切り替え装置40を示している。このように、スレーブユニット36およびマスターユニット38は、両方のユニット36および38が入力テレグラム18を受信できるように、インターフェース32、34を介してデータバス12に接続されている。スレーブユニット36は、受信したテレグラム18を転送することができる。マスターユニット38は、独自のテレグラム18を送信することができる。ここでは、それぞれのユニット36、38のインターフェース32との接続を介して受信が行われる。それぞれのユニット36、38のインターフェース34との接続を介して転送または送信が行われる。このことは、図5中に記号で示す機能切り替え装置40の切り替え状態に対応する。
【0064】
第2の切り替えモードにおいて、スレーブユニット36およびマスターユニット38は、両方のユニット36および38が入力テレグラム18を受信できるように、データバス12、即ち、インターフェース32、34に接続されている。スレーブユニット36が受信テレグラム18を転送できる一方で、マスターユニット38自体は送信することができない。スレーブユニット36はインターフェース32、34に接続されている一方で、マスターユニット38はインターフェース32にのみ接続されている。機能切り替え装置40の状態によりハイブリッド30のユニット36、38のうちの一方がインターフェース32、34のうちの一方に接続されているので、それぞれのインターフェース32、34はそれぞれのユニット36、38まで接続されている。この目的のために、機能切り替え装置40のスイッチが対応する切り替え設定に設定されている。
【0065】
第2の切り替えモードでのスレーブユニット36およびマスターユニット38の直列切り替えにおいて、ハイブリッド30のスレーブユニット36のみならずマスターユニット38もが、バス12を経由して伝送される各テレグラム18を受信する。したがって、マスターユニット38もまた、謂わば、バス12上のデータトラフィックをヒア(hear)する。バスマスター14は、例えばその状態に関するデータなどの、特定のデータを送信することができる。したがって、その結果、受動マスターは、現行のバスマスター14と部分的に同じかまたは少なくともほぼ同じで、好ましくは常に同じデータへのアクセスを有する。これにより、バスマスター14が故障した場合に、マスターユニット38がほとんど問題なくバスマスター14の機能を確実にテイクオーバーすることができる。
【0066】
バスマスター14としてバス12上のデータトラフィックをオーバーヒアするのみならずテレグラム18を送受信するために、マスターユニット38は、それ自体は公知であるイーサネット(登録商標)コントローラ(「Standard Ethernet−Controller:標準的なイーサネット(登録商標)コントローラ」の記号として「SEthC」)ならびに同様にそれ自体は公知であるマスタースタック54(「Standard Master Stack:標準的なマスタースタック」の記号として「SMS」)を備えている。マスターユニット38のそれぞれの機能は、別個に図示されてはいないこの目的のためのマスターユニット38のメモリー内にロードされている制御プログラム56(記号としては「MApp」)によって決定される。ハイブリッド30がバス12上のマスター14として(もまた)動作する場合、制御プログラム56(アプリケーション56)はそれぞれのテレグラム18を送信する。テレグラム18を受信すると、ハイブリッド30はスレーブ16によってテレグラム18に入力されたデータを解析する。第2の切り替えモードにおいて、バス12上のハイブリッド30はスレーブ14としてのみ機能し、その場合、マスターユニット38がバス12上のデータトラフィックをオーバーヒアすることを可能とする機能切り替え装置40の切り替え設定の結果、アプリケーション56がオーバーヒアされたテレグラム18内にスレーブ16が入力したデータを解析する。
【0067】
図5中に、機能切り替え装置とマスターユニット38との間の二重ブロック矢印によってマスターユニットに出入りするデータ伝送が図示されている。
【0068】
マスター制御ユニット48は、既に言及したスレーブユニット36によるバス12を経由したテレグラム18の送信を監視する手段として機能する。ここで、制御ユニット48は、データテレグラム18の受信とその直後のデータテレグラム18の受信との間の時間間隔を監視する手段として、およびそれぞれの時間間隔を事前設定されている、またはすることのできる閾値と比較する手段として機能する。間隔が閾値を超えた場合、制御ユニット48を用いて、したがって制御ユニット48を備えるスレーブユニット36を用いて、ハイブリッド30の内部切り替えおよびローカルマスターユニット38の活性化を行うことができる。このように、制御ユニット48はウォッチドッグとして機能する。
【0069】
したがって、それぞれの時間間隔を閾値と比較するために考慮される一手段としては、例えば、各テレグラム18の受信時に閾値に対応する開始値に設定され、開始される減衰カウンタであってもよく、このとき、その値の終了は閾値を超えたことを示す。このようにすれば、スレーブユニット36は、そのマスター制御ユニット48を用いて、それぞれのバスマスター14がバス12上にテレグラム18を定期的に供給するか否かを監視することができる。バスマスター14が故障するか、またはテレグラム18の定期的な送信を妨げる別の故障が発生した場合、これは制御ユニット48によって自動的に検出される。閾値を超えたことの検出に反応して、切り替え信号50が自動的に発行され、切り替えが行われる。
【0070】
マスターユニット38がテレグラム18を能動的に送信することを可能とするために、マスターユニット38はインターフェース32およびインターフェース34まで接続されている。このとき、機能切り替え装置40は、図5中の描写に示す切り替え状態(第3の切り替えモード)にある。マスターユニット38が送信権を有さず受動マスター14としてバス12上のデータトラフィックをオーバーヒアするのみ(第2の切り替えモード)である限り、図5に示す中位の切り替え設定に反して、例えばそこに「Sc」および「Sd」の記号で印すスイッチは、低位の切り替え位置にある(したがって、スレーブ36によって受信され、場合によってはそこで修正される各テレグラム18は、マスターユニット38およびインターフェース34に同時に到着する)。同様に、図5に示す上位の切り替え位置に反して、「Sa」と印されたスイッチは中位の切り替え位置にある(したがって、マスターユニット38はインターフェース34にまで接続されていない)。
【0071】
この結果である機能切り替え装置40の切り替え設定(第2の切り替えモード)を図6中の描写に示す。ここで、図5および図6中の機能切り替え装置40の描写ならびにそこに簡単なスイッチとして示す切り替え要素は、通信経路、考え得る切り替え処理、および(スイッチの)状態を図示する目的の象徴的な描写としてのみ理解されるべきであることもまた、指摘しておかなければならない。
【0072】
制御ユニット48によって判定される監視結果が状態の変化を意味する場合は、制御ユニット48はマスターユニット38にそこでの必要な状態の変化、即ち、現行の受動状態でありバス12を経由して伝送されるテレグラム18の単なるオーバーヒアリングからバスマスター14としての機能をテイクオーバーする能動状態への状態変化を直接通知する。さらに、制御ユニット48は、機能切り替え装置40を切り替える切り替え信号50を生成する。
【0073】
このために、ハイブリッド30は、具体的にはスレーブユニット36およびマスターユニット38にアクセス可能なレジスタまたはメモリー領域の形態の、スレーブユニット36とマスターユニット38との間の直接通信を可能とする通信手段58を有する。象徴的に(但し、一切のさらなる一般的適用性を放棄することなく)、通信手段58は、図5中の描写の中に、IKM(「Internes Kommunikationsmittel」(internal means of communication:内部通信手段))と印されている。もっとも簡単な場合、通信手段58は、1ビットのメモリーセル(フラッグ)である。あるいは、これは従来型のアクセス制御で実現されるメールボックスであってもよい。また、原理的には、通信手段58は、分散メモリー領域、即ち、スレーブユニット36の部分の上にあるメモリー領域およびマスターユニット38の部分の上にあるメモリー領域であってもよい。メモリーの内容または個別のメモリー領域は、所定のパターンに従って、および具体的には上位ユニットによって、一方から他方へと相互に定期的に複製しあうこともできる。
【0074】
以下の説明は(既述の通り、一切のさらなる一般的適用性を放棄することなく)、スレーブユニット36およびマスターユニット38の両方にアクセス可能なメモリー領域の形態を有する内部通信手段58の例について継続する。マスターユニット38を活性化するために、制御ユニット48は、マスターユニット38によって定期的に監視されるマスター制御レジスタ60内に所定の値を書き込む。所定の値(例えば「1」)が、現行の受動状態から能動状態への切り替えが必要であること、およびマスターユニット38がバス12上のバスマスター14としての機能をテイクオーバーするべきであることを、マスターユニット38に合図する。
【0075】
マスター制御レジスタ60の状態の定期的監視の過程で、マスターユニット38がバスマスター14としての機能の引き継ぎのリクエストを検出次第、マスターユニット38は内部的な切り替えを行い、この時点からはバス12上でマスター14として機能する。インターフェース34までの接続、したがってマスターユニット38がバス12にテレグラム18を能動的に供給できる可能性は、機能切り替え装置40の切り替えの結果として起こる。バス12上のデータトラフィックの現行の受動的なオーバーヒアリングの結果、将来的にバスマスター14として機能することとなるマスターユニット38は、この切り替えに必要なデータを有する。現行の受動マスターの活性化自体についてはマスター切り替えまたはマスター冗長性というキーワードによって公知であり、この点については追加的な説明は必要ないと思われ、関連する従来技術の参照がなされる。
【0076】
ハイブリッド30の備えるマスターユニット38との通信の選択肢について、下記に説明する。ここでは、初期の問題はマスターユニット38が受動状態であるか、またはマスターユニット38がバス12上でバスマスター14として機能するかではない。以下の説明はバス12に接続されている追加の通信パーティシパントについても言及しており、追加のハイブリッド30および同ハイブリッドの備えるスレーブユニット36との通信を行うことができるので、通信の対象となるマスターユニット38と同じハイブリッド30に属するスレーブユニット36はローカルスレーブユニット36として指定されており、追加のハイブリッド30の備えるスレーブユニット36の形態の遠隔通信パーティシパントは遠隔スレーブユニット36として指定されている。
【0077】
バス12上の受動/能動マスターユニット38はその他の通信パーティシパントには見えていないので、能動/受動マスターユニット38へのデータの送信について、伝送されるこれらのデータは、1つ以上のプロセスデータオブジェクト(process data objects:PDO)またはサービスデータオブジェクト(service data objects:SDO)の交換手段による通信の範囲内で、ハイブリッド30のローカルスレーブユニット36に対してアドレス指定されると規定することができる。このために、ローカルスレーブユニット36は入力プロセスデータオブジェクトまたはサービスデータオブジェクトを解析し、マスターユニット38のためのデータをマスターユニット38のメモリーのアドレス領域に直接転送し、またはそこからデータを読み出してそのデータをバス12に転送する。これらのデータは、バスオフ/能動/受動などの、受動/能動マスターに対するコマンドであるかもしれない。受動/能動マスターはまた、スレーブユニット36を経由して、バスオフ/能動/受動といったマスター状態などの状態情報および/または1つ以上のエラーカウンタ情報をも転送することができる
【0078】
多くの場合、ローカルスレーブユニット36は、受動/能動マスターユニット38へのアクセスゲートまたはリレーとして機能する。ここではPDO通信またはSDO通信が使用されているので、本質的に、ハイブリッド30のスレーブユニット36およびマスターユニット38は、具体的には共有メモリー領域を経由してバックグラウンドで通信する、「通常の」スレーブ16または「通常の」マスター14のように実行することができる。マスターユニット38はまた、別の種類の内部通信、具体的には、従来型の内部バスシステム、または例えばマスターユニット38およびスレーブユニット36のパラレルデータポートのような直接接続を介して、スレーブユニット36に結合させることもできる。
【0079】
バスパーティシパント装置30は、スレーブユニット36が、バス12を経由したデータテレグラム18の伝送の監視の範囲内で、(上述の通りに)前記バスパーティシパント装置30の備えるマスターユニット38を活性化するのみならず、能動マスターユニット38を非活性化することもできると規定する。これは、切断スレーブユニット36と同じバスパーティシパント装置30内に配置することのできるマスターユニット38であってもよい。これにより、先述に提案したバスパーティシパント装置30、および特に同装置30の備えるスレーブユニット36が、さらに広い範囲で(訳者注16)、バス12上のコントローラとなる。下記にスレーブユニット36およびマスターユニット38の双方を、同一のバスパーティシパント装置30の備えるユニット36、38として言及するとき、これ以降、それぞれのユニット36、38を、ハイブリッドユニット36、38と呼ぶ。したがって、マスターユニット38を発端として、ハイブリッドスレーブユニット36は、マスターユニット38もまた属する同じバスパーティシパント装置30の備えるスレーブユニット36である。
【0080】
マスターユニット38が依然としてテレグラム18を定期的に送信し続けているとき、ハイブリッドスレーブユニット36による能動マスターユニット38の自動的な活性化の考え得る一シナリオが起こるが、例えばこれらのテレグラム18は、高頻度のエラーを呈する。ハイブリッドスレーブユニット36は、バスを経由したデータテレグラム18の伝送を監視するときにこのような状況を検出し、ハイブリッドマスターユニット38を受動状態とすることができる。自動的な受動化は、マスター制御ユニット48および同ユニット48によって生成される切り替え信号50によって行われる。少なくともマスターユニット38上のインターフェース34を介した切り替えが終了した結果である機能切り替え装置40の切り替え状態の故に、マスターユニット38からのテレグラム18はバス12に到着できなくなる。上述のテレグラム18の不在は、バス12に接続されている追加のハイブリッド30のスレーブユニット36によって検出される。次に、このユニットがそのハイブリッドマスターユニット38を活性化するので、次に後者がバスマスター14としての機能をテイクオーバーする。
【0081】
マスターユニット38の自動的な受動化と同時に、マスター制御レジスタ60もまた制御ユニット48によって然るべく設定することができる。マスターユニット38が少なくともマスター制御レジスタ60の解析が可能な範囲で依然として動作可能である場合、マスターユニット38の状態の整然とした切り替えを、制御プログラム56よりも上位のマスターユニット38のソフトウェアシステムの機能性の範囲内で、このような方法で行うことができる。
【0082】
ハイブリッドマスターユニット38を自動的に受動化することができることに基づくスレーブユニット36によるデータテレグラム18の伝送の監視の別の選択肢は、所謂作動カウンタ(working counter)、即ち、バスマスター14が送信したテレグラム18がバス12に接続されているスレーブ16の群のすべてに到達したかを監視するカウンタの監視である。具体的には、作動カウンタは、バスパーティシパントを通過するときのデータテレグラムの処理を記録するために、フレーム加算方式で使用される。この目的で、作動カウンタの値が変更される。作動カウンタの状態によって1つ以上のエラーが示される場合、スレーブユニット36はその能動ハイブリッドマスターユニット38を自動的に受動化することができ、この場合、起動される受動化に関してエラーの数が閾値を越えなければならないと規定することができる。次に、バスマスターの資格の別のマスターユニット38への引き渡しが、上述の通りに行われる。作動カウンタの監視は、具体的には、バスパーティシパント装置のスレーブユニットまたはマスターユニット内のプログラムの実行の監視において公知のように、ウォッチドッグの方法で行うことができる。
【0083】
追加的にまたは別の方法として、バス12上のデータトラフィックの継続的なオーバーヒアリングに基づく、受動マスターユニット38によって生成されたデータを解析する選択肢もある。通常は、スレーブ16から受信された同じデータに基づいて、ならびに同一の制御プログラムまたは試験プログラム56に基づいて、能動マスターユニット38および受動マスターユニット38は同じデータを生成すると予想すべきである。能動マスターユニット38によって生成されるデータは、少なくとも部分的には、後者によってバス12上に発行されるテレグラム18内に見いだされる。受動マスターユニット38のハイブリッドスレーブユニット36は、テレグラム18と共に受信されたデータをそのハイブリッドマスターユニット38によって生成されたデータと自動的に比較することができる。エラーが発生した場合、特にエラーの量および/または頻度において規定された閾値を超えた場合、それぞれのスレーブユニット36は、そのハイブリッドマスターユニット38を自動的に受動化することができる。ここでもまた、バスマスターの資格の別のマスターユニット38への引き渡しが、上述の通りに行われる。
【0084】
図7は、相互に独立して切り替えることのできる、ハイブリッドHのスレーブユニット36上の2つの別個のスレーブインターフェースを示している。これにより、データバスのリング配線が可能となる。具体的には、しかし排他的ではなく、可用性の要求度が低い場合、線形配線を実現することもでき、分岐を有することもできる。
【0085】
マスター14、38およびスレーブ16、36におけるアプリケーションの同期処理に関して、これらのローカルクロックは相互に同期していなければならない。ローカルクロックは、ネットワーク内のスレーブの各々の中で従来通りに構成されている。同期に関しては、選択されたクロック(基準クロック)の時刻が、マスター14、38によって少なくとも1つの、しかし好ましくはすべてのスレーブ16、36に送信される。このクロックは、能動マスターユニット38のローカルスレーブ36内で実現される。その他のクロックのばらつきはそれぞれのスレーブ16、36によってハードウェア内で測定でき、能動マスターによって読み出して補償することができ、その過程で伝送によって生じる経時的遅延が検出され、オフセットされる。これらの遅延は、データバス12上のパーティシパントの位置に依存し、変更が発生した場合には調節することができる。
【0086】
代替マスターの活性化を通じ、同マスターによって管理されるスレーブの順序が変更される。したがって、マスターの切り替えの最中またはその後に、位置に依存する遅延を再計算することが提案される。このようにすれば、既存の同期を継続することができ、時間のかかる再同期を回避することができる。
【0087】
図4に示すリング構造のデータバスにおいて、両方向での遅延時間は各々以下を含んでいる。
H(M)とS1との間:700ns
S1とS2との間:500ns
S2とS3との間:300ns
S3とH(S4)との間:600ns
H(S4)とH(M)との間:200ns
【0088】
例において、ハイブリッドH(M)とスレーブS2との間の遅延時間は、700+500nsである。スレーブ2における受信時刻は、H(M)のハイブリッド30のスレーブ36から送信された時刻と比較して1200ns補正される。例えば、マスターH(M)が完全に故障したことによりリングが分断された場合、新しいマスターH(S4)が経路H(S4)、S3、S2を経由してスレーブ2と連絡を取る。その結果、この時点での遅延は、600+300である。したがって、スレーブ2における受信時刻は900ns補正される。新しい遅延時間は、既に分かっている遅延の加算により決定される。受動マスターは、受動フェーズの間に既に切り替えが発生した場合に必要なこの計算を行うことができる。好ましくは、マスターの切り替え後、まず補正が行われ、それに続いて再同期が行われる。
【0089】
再同期について上記に説明したばかりの方法では、遅延時間が分かっている必要がある。同期の再決定は、パラメータ化または動的計算によって行うことができる。動的計算では、同期しようとするユニットの受信時刻の差がバスパーティシパントの直列配置内の後続のユニットの受信時刻の差から減算され、その結果が2分割される。この方法は公知であり、ここではさらに論じない。ほとんどの場合、スレーブには受信時刻のタイムスタンプを使用する方法が既に組み込まれている。しかし、ハイブリッドH(M)の受信インターフェースとして機能するインターフェースでは、リングが開放されている場合、通常、これは標準的な構成要素では対応されていない。したがって、この機能は、追加的な装置(例えばタイマー)を用いて実現することができる。多くのスレーブが、この処理に対応したハードウェアを既に備えている。
【0090】
図7は、マスターユニット38、スレーブユニット36、および機能切り替え装置40を備えるバスパーティシパント装置30を示している。機能切り替え装置は、スレーブユニット36およびマスターユニット38の内部ポートTs1、Rs1、Ts2、Rs2、Tm1、Rm1間ならびにバスパーティシパント装置30のインターフェース32および34との切り替え接続を行う。この接続は、バスパーティシパント装置30の第1および第2の切り替えモードに対応する。
【0091】
能動マスターによって送信されたデータは、受信インターフェースとして動作するインターフェース32上でハイブリッドに到達する。次に、データは、機能切り替え装置40を経由してスレーブユニット36に転送される。これらデータは、そこでTs2に到達し、送信インターフェースとして動作するインターフェース34を経由して、次に他のスレーブ、好ましくは次のスレーブから開始してバスの物理的な端部のスレーブまですべてのスレーブを通過するために、ハイブリッド30から出発する。したがって、データは後続のスレーブの第1の開放ポートで返送され、インターフェース34で再度バスパーティシパント装置30に到達する。そこで、データは機能切り替え装置40によってスレーブユニット36のRs2、Ts1およびTinを経由してマスターの方向に向かってその次のスレーブに転送される。
【0092】
マスターユニット38もまた、スレーブユニット36が受信したデータを受信する。図7において、マスターユニット38の受信ポートRm1は、例えばバスパーティシパント装置30のインターフェース34に接続されており、このインターフェース34は同時にスレーブユニット36の受信ポートRs2に接続されている。この例において、インターフェース34はバスパーティシパント装置30の受信インターフェースとして動作するので、マスターユニット38もまた受信されたデータを受信する。スレーブユニット36はその送信ポートTs1を経由して受信データを内部的に伝送し、インターフェース32を経由してデータを送信する。スレーブユニット36は、図示の切り替えにおいて、2組の送受信ポートTs1、Rs1、Ts2、Rs2を用いて、バスパーティシパント装置30のインターフェース32と34との間でデータテレグラムを双方向に転送することができる。このためにポートTs1およびRs1はインターフェース32に接続されているので、スレーブユニット36はこのインターフェース32上で送信および受信の両方を行うことができる。このことは、インターフェース34に関してもポートTs2およびRs2に同様に適用される。このように、バスパーティシパント装置30は、データバス12で可能性のある両方の動作方向でホップツーホップ方式に従って、スレーブとして動作することができる。スレーブユニット36は、データを単に通過させることもでき、またはこれらをさらに処理することもできる。この処理は、ポートTs1、Rs1、Ts2、Rs2間で破線矢印によって示されている。インターフェース32上でデータテレグラムを受信できる使用法において、マスターユニット38の入力ポートRm1は、図7中の描写とは異なって、インターフェース32およびスレーブユニット36の受信ポートRs1と接続することができる。しかし、データがスレーブユニット36によって処理された後に、マスターユニット38がこれを受信することもまた考え得る。
【0093】
図8図7にも示したバスパーティシパント装置30を示しているが、ここでは、機能切り替え装置40が、バスパーティシパント装置30のスレーブユニット36、マスターユニット38、ならびにインターフェース32および34の内部ポート間の異なる切り替え接続を行う。この相互接続は、特に閉鎖リング上での動作について、バスパーティシパント装置30の第3の切り替えモードに対応し、このことは、システムがエラーを発生させずに動作している場合に好ましい。マスターユニット38はバスマスターとして動作し、Tm1からスレーブユニット36にデータを送信する。データはそこから他のスレーブに送信され、最後の開放ポートから以前のすべてのスレーブおよびスレーブユニット36のTs1を経由して再度マスターユニット38のRm1に返送される。マスターはマスターユニット38によって送信されたメッセージを受信するバスパーティシパントのチェーンの始点および終点に位置しているので、バスパーティシパント装置30の第2のインターフェース32は内部的に空けたままにしておくことができる。
【0094】
インターフェース34は、スレーブユニット36の送信ポートTs2および受信ポートRs2に接続されている。このように、インターフェース34は、送信ならびに受信を行うように構成されている。スレーブユニット36およびマスターユニット38は、内部的にはポートTm1とRs1との接続およびTs2とRm2との接続を経由して双方向通信を行うように連結されている。このように、スレーブユニット36は、スレーブユニット36が受信したデータおよび/もしくはさらに処理したデータをマスターユニット38に転送することができ、または後者からデータを受信し、それらをインターフェース34に転送することができる。スレーブユニット36は、データを単に通過させることもでき、またはこれらをさらに処理することもできる。この処理は、ポートTs1、Rs1、Ts2、Rs2間で破線矢印によって表示されている。
【0095】
図9図8にも示したバスパーティシパント装置30を示しているが、ここでは、機能切り替え装置40が、バスパーティシパント装置30のスレーブユニット36およびマスターユニット38の内部ポートTs1、Rs1、Ts2、Rs2、Tm1、Rm1間ならびにインターフェース32およびインターフェース34との異なる相互接続を行う。図示の相互接続は、ストリングまたは開放リングとして構成されたデータバス12上のバスパーティシパント装置の動作に特に好適である。マスターユニット38およびスレーブユニット36は図8のようにインターフェース32および34と相互接続されているが、返送されるすべてのデータテレグラム18がマスターユニット38のポートRm1に辿り着くわけではない点が異なる。スレーブユニット36の送信ポートTs1は送信インターフェースとして機能するインターフェース32に接続されているので、データテレグラム18はデータバスのストランドの接続区間のスレーブに転送される。返送データテレグラム18のみが、このとき受信インターフェースとして動作するインターフェース32を経由してマスターユニット38の受信ポートRm1に到達する。この相互接続は、開放リングまたはストランドで動作するときのバスパーティシパント装置30の第3の切り替えモードに好適である。このようなアーキテクチャは意図的である場合もあるが、例えば、通常動作ではホップツーホップ方式でデータテレグラム18を転送するスレーブ14またはバスパーティシパント装置30の故障が原因で、データバス12のリングアーキテクチャの分断によって形成される場合もある。ケーブルの断線も同様の結果を招く場合がある。マスターユニット38からスレーブユニット36を経由してデータテレグラム18を送信することができ、データは、マスターユニット38のポートTm1からスレーブユニット36のポートRs1へ、破線で示すスレーブユニット36の中を通る接続を経由してその送信ポートTs2へ、およびそこからインターフェース34を経由し、図示していないバスパーティシパントを経由してストランドの一方の端部まで通過する。データは最後のバスパーティシパントから反対方向に送信され、再度バスパーティシパント装置30に到着する。バスパーティシパント装置30がストランドの他方の端部に位置する場合、データテレグラムはここで終了し、あるいは既に通過した第1のストランド区画から反対方向にある第2のストランド区画に転送される。ここで、データテレグラム18はインターフェース34およびスレーブユニット36内の受信ポートRs2を経由して通過し、この受信ポートRs2が破線で示す内部接続を経由して、インターフェース32に接続されている送信ポートTs1にデータを伝送する。データテレグラムはそこから第2のストランド区画の端部まで通過し、最後のバスパーティシパントによって返送され、最終的にバスパーティシパント装置30に再度到着する。ここからマスターユニット38の受信ポートRm1を経由してデータが読み出される。このようにすれば、バスパーティシパント装置は、ストランド状のバスアーキテクチャのすべてのバスパーティシパントからフィードバック、特に接続されているバスパーティシパントに関するエラーの検出および/またはバスパーティシパント間の伝達時間の測定に関するフィードバックを受信することができる。後者の情報は、他のバスパーティシパントを同期するためにマスターユニット38によって使用することができる。例えば、新しい同期データを伴うリフレッシュ用(refresher)テレグラムをバスパーティシパントに送信することができる。同期データは、例えば、格納されている伝達時間および/またはマスターユニット38がバスパーティシパントからのフィードバックから計算した伝達時間から計算することができる。
【符号の説明】
【0096】
10 ネットワーク
12 バス
14 マスター
16 スレーブ
18 データテレグラム
20 区画
30 ハイブリッド
32 インターフェース
34 インターフェース
36 スレーブユニット
38 マスターユニット
40 機能切り替えユニット
42 スレーブコントローラ
44 スレーブスタック
46 制御プログラム
48 マスター制御ユニット
50 切り替え信号
54 マスタースタック
56 制御プログラム
58 通信手段
60 マスター制御レジスタ
H ハイブリッド
Rm1 受信ポート
Rs1 受信ポート
Rs2 受信ポート
Tm1 受信ポート
Ts1 送信ポート
Ts2 送信ポート
S1 スレーブ
S2 スレーブ
S3 スレーブ
S4 スレーブ
Sa スイッチ
Sb スイッチ
Sc スイッチ
Sd スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9