(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、設定された測定軌道に沿って測定範囲が非常に狭いレーザプローブがワークの変位量を測定する際、所定の微小な間隔で測定軌道(エッジ)を逐一認識するため、ワーク全体を測定するのに膨大な時間を要する。また、比較的大きなワークを測定できない構造である。さらに、撮像ユニットをXYZ方向に駆動するための機構も必要である。
【0006】
一方、特許文献2の技術では、比較的大きなワークを計測することができるが、単一のカメラで撮影した撮影画像に基づいて当該カメラの撮影位置を求めるため、精度が低く、したがって、2つのボルト孔間の距離の算出精度も低い。
【0007】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、計測装置および計測方法を提供することである。
【0008】
この発明の他の目的は、比較的短時間で、高精度の計測結果を得ることができる、計測装置および計測方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、計測対象物を撮影した撮影画像に基づいて当該計測対象物の表面に形成された形成物に関する寸法を計測する計測装置であって、
形成物が形成された表面のうちの上面の全体を撮影するカメラと、上面の全体の外側から内向きで当該上面に対して水平またはほぼ水平に光を照射し、形成物のエッジを光らせる水平照射部を備えた少なくとも一対の光源を、計測対象物を挟んで設けた照明装置と、
カメラで撮影する画像において、形成物のエッジが所望の
輝度となるように照明装置に設けた各々の光源の明るさを調整する調整部を備える、計測装置である。
【0010】
第1の発明では、計測装置は、計測対象物を撮影した撮影画像に基づいて当該計測対象物の表面に形成された穴、溝、突起などの形成物に関する寸法を計測する。たとえば、計測対象物の表面に形成された穴の直径や、溝または突起の幅や、穴と穴、溝と溝、突起と突起の間の距離(ピッチ)が計測される。この計測装
置は、形成物が形成された表面のうちの上面の全体を撮影するカメラを備える。また、計測装置は、上面の全体の外側から内向きで当該上面に対して水平またはほぼ水平に光を照射し、形成物のエッジを光らせる水平照射部を備えた少なくとも一対の光源を、計測対象物を挟んで設けた照明装置を備える。たとえば、計測対象物の
上面に溝が形成される場合には、溝のエッジを照明するように当該計測対象物を挟んで一対の直線状の光源が設けられる。また、たとえば、計測対象物の
上面に穴が形成される場合には、穴のエッジを照明するように当該計測対象物を囲むように多角形ないし円形の光源が設けられる。計測対象物の周囲から強度が一様な光を照射した場合、形成物と光源までの距離や、エッジの加工状態の違いや汚れなどにより、形成物毎、あるいは一つの形成物のエッジの領域(たとえば、穴の右側と左側)毎で反射する光の強度が異なるが、調整部は、
カメラで撮影する画像において、形成物のエッジが所望の輝度となるように照明装置に設けた各々の光
源の明るさを調整し、各形成物の位置やエッジの加工状態に応じて適切な明るさになるようにする。
【0011】
第1の発明によれば、
カメラで撮影する画像において、形成物のエッジが所望の
輝度となるように、計測対象物を挟んで設けられる各々の光源の明るさを細かく調整することにより、計測対象物の
上面に形成された各形成物のエッジを所望の
輝度で確実に光らせるので、計測対象物を撮影した撮影画像のコントラストから各形成物のエッジを正確に認識することができる。つまり、形成物のエッジの傾斜面と対面する光源までの距離や、エッジの傾斜面の加工状態などに応じて、各々の光源から適切な明るさの光を照射することができ、計測対象物を広い範囲で撮影した撮影画像から、各形成物のエッジを正確に認識することができるので、比較的短時間で、高精度の計測結果を得ることができる。
また、第1の発明によれば、計測対象物の上面に対してほぼ水平に光を照射するので、ほとんどの計測対象物の上面の形成物(穴、溝、突起など)のエッジの傾斜面のみを光らすことができ、撮影画像から各形成物のエッジの抽出を容易にすることができる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明に従属し、
水平照射部は、計測対象物の平坦な上面に形成され当該上面から凹んだエッジを有している形成物に光を照射し、当該エッジを光らせる。
【0014】
第3の発明は、第1または第2の発明に従属し、光源は
形成物が形成された上面に対して所定角度だけ斜めに光を照射する斜め照射部を
さらに備え、
斜め照射部は、水平照射部から照射される光が入り難い形成物のエッジを光らせる。
【0015】
第3の発明によれば、計測対象物の
上面に対して斜めに光を照射するので、たとえば水平照射では光が入り難い、光源より遠距離にある小径の穴や幅の狭い溝のエッジの傾斜面を光らせることができるようになり、エッジを確実に光らすことができる。
【0016】
第4の発明は、計測対象物を撮影した撮影画像に基づいて当該計測対象物の表面に形成された形成物に関する寸法を計測する計測装置であって、
形成物が形成された表面のうちの上面の全体を撮影するカメラと、上面に光を照射し、当該計測対象物を挟んで設けられる少なくとも一対の光源を設けた照明装置と、少なくとも光源の各々の点灯および消灯を制御する光源制御部を備え、光源は、
上面の全体の外側から内向きで当該上面に対して水平またはほぼ水平に光を照射
し、当該形成物のエッジを光らせる水平照射部と、当該水平照射部の上段に設けられ、当該計測対象物の
上面に対して所定角度だけ斜めに光を照射する斜め照射部を含み、光源制御部は、光源の各々について水平照射部または斜め照射部を点灯させる。
【0017】
第4の発明では、計測装置は、計測対象物を撮影した撮影画像に基づいて当該計測対象物に関する寸法を計測する。この計測装置は、
カメラを備え、このカメラは、形成物が形成された表面のうちの上面の全体を撮影する。また、この計測装置は、上面に光を照射し、当該計測対象物を挟んで設けられる少なくとも一対の光源を設けた照明装置と、少なくとも光源の各々の点灯および消灯を制御する光源制御部を備える。光源は、水平照射部と斜め照射部を含む。水平照射部は、計測対象物の
上面の全体の外側から内向きで当該上面に対して水平またはほぼ水平に光を照射
し、当該形成物のエッジを光らせる。斜め照射部は、その水平照射部の上段に設けられ、計測対象物の
上面に対して所定角度だけ斜めに光を照射する。光源制御部は、光源の各々について水平照射部または斜め照射部を点灯させる。たとえば、光源制御部は、使用する照射部を切り替える。
【0018】
第4の発明においても、第1の発明と同様に、エッジを正確に認識することができるので、比較的短時間で、高精度の計測結果を得ることができる。
【0019】
第5の発明は、第4の発明に従属し、光源制御部は、光源の各々について、点灯させる水平照射部または斜め照射部の明るさをさらに調整する調整部を含む。
【0020】
第5の発明によれば、たとえば、光源とエッジとの距離、形成物の大きさ、エッジの傾斜面の加工状態に応じて適切な明るさの光を照射することができる。
【0021】
第6の発明は、第1ないし第3または第5の発明のいずれかに従属し、計測装置は、左右の2つのカメラで計測対象物を撮影するステレオカメラをさらに備える。調整部は、左右のカメラのそれぞれの撮影に対して照明装置に設けられる各々の光源の明るさを調整する。また、計測装置は、調整部によって明るさを調整された場合における左右の2つのカメラのそれぞれの撮影画像に基づいて当該計測対象物に関する寸法を計測する寸法計測部をさらに備える。
【0022】
第6の発明によれば、計測対象物の形成物のエッジについての3次元位置を知ることができる。また、左右の2つのカメラは位置が異なるために、同じエッジ部でも撮影画像の明るさに差異が発生し、それが寸法計測の誤差となるが、左右の2つのカメラでの撮影毎に適切な明るさの光を照射することによって、極めて高精度な計測が可能となる。したがって、たとえば、穴同士の3次元空間における距離を精度良く計測することができる。
第7の発明は、第1ないし第6の発明のいずれかに従属し、照明装置は、表面に対し少なくとも8方向から光を照射する。
【0023】
第
8の発明は、第
6または第7の発明に従属し、
計測対象物は鋳物であり、計測対象物の温度を計測する温度計測部と、温度計測部によって計測された温度に基づいて寸法計測部で計測された寸法を補正する補正部をさらに備える。
【0024】
第
8の発明では、
計測対象物は鋳物である。計測装置は、温度計測部と補正部をさらに備える。温度計測部は、計測対象物の温度を計測する。補正部は、計測された温度に基づいて計測された寸法を補正する。たとえば、熱膨張による寸法の変化を是正する。
【0025】
第
8の発明によれば、計測対象物の温度に基づいて寸法を補正するので、計測時の温度に起因する測定誤差を吸収することができる。
【0026】
第9の発明は、計測対象物の表面に形成された形成物に関する寸法を計測するコンピュータの計測方法であって、(a)計測対象物の周囲から当該計測対象物の表面のうちの上面に
、当該上面の全体の外側から内向きで当該上面に対して水平またはほぼ水平に光を照射し、形成物のエッジを光らせる複数の光源を用い
て、異なる明るさで変化する光を照射し、(b)ステップ(a)において複数の光源を用いて異なる明るさで変化する光を照射した場合に、それぞれの明るさについて計測対象物の上面を撮影した複数の第1撮影画像を取得し、(c)ステップ(b)において取得した複数の第1撮影画像のそれぞれについて、計測対象物の上面に形成された形成物のエッジの輝度を検出し、(d)複数の光源の各々について、ステップ(c)において検出したエッジの輝度が所望の値となる場合の明るさを判定し、(e)複数の光源の各々の明るさを、ステップ(d)において判定した明るさに調整し、(f)ステップ(e)において調整した明るさの光を照射した場合の計測対象物の上面を撮影した第2撮影画像を取得し、そして(g)ステップ(f)において取得した第2撮影画像に基づいて計測対象物の上面に形成された形成物に関する寸法を計測する、計測方法である。
【0027】
第
9の発明においても、第1の発明と同様に、比較的短時間で、高精度の計測結果を得ることができる。
第10の発明は、第9の発明に従属し、コンピュータに接続され、左右の2つのカメラで計測対象物を撮影するステレオカメラを備え、左右の2つのカメラのうちの一方のカメラに対してステップ(a)からステップ(h)までを行うことにより各形成物の第2撮影画像を取得し、左右の2つのカメラのうちの他方のカメラに対してステップ(a)からステップ(h)までを行うことにより各形成物の第2撮影画像を取得し、左右の2つのカメラの各々について取得した全ての第2撮影画像に基づいて計測対象物の上面に形成された形成物に関する寸法を計測する。
【発明の効果】
【0028】
この発明によれば、計測対象物を挟んで対に設けられる光源のそれぞれの明るさを調整することにより、計測対象物の表面に形成される形成物のエッジを所望の明るさで確実に光らせるので、撮影画像のコントラストからエッジを正確に認識することができる。つまり、比較的大きな撮影画像から各形成物のエッジを正確に認識することができるので、比較的短時間で、高精度の計測結果を得ることができる。
【0029】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1はこの実施例の計測装置10の電気的な構成を示す。
図1を参照して、計測装置10は、コンピュータ12を含み、コンピュータ12には、ステレオカメラ14、照明装置16および温度計18が接続される。
【0032】
コンピュータ12は、汎用のパーソナルコンピュータまたはワークステーションである。ステレオカメラ14は、2つのカメラ(左カメラ14a、右カメラ14b)を含む。左カメラ14aおよび右カメラ14bとしては、CCDまたはCMOSのような撮像装置を用いた汎用のカメラを用いることができる。
【0033】
照明装置16は、複数(この実施例では、8個)の光源を含み、後述するように、各光源は複数段(この実施例では、2段)に設けられた照射部を備える。温度計18は、汎用の赤外線温度計である。
【0034】
この実施例では、コンピュータ12は、ステレオカメラ14に撮影指示を送信する。ただし、左カメラ14aおよび右カメラ14bに対して、個別に撮影指示を与えることができる。コンピュータ12は、ステレオカメラ14から送信される撮影された画像(撮影画像)に対応する撮影画像データを受信し、内部のメモリ(HDDやRAMなど)に記憶する。
【0035】
また、コンピュータ12は、照明装置16を制御する。この実施例では、照明装置16に含まれる光源(照射部)の点灯および消灯を制御するとともに、点灯する光源(照射部)の明るさを制御する。さらに、コンピュータ12は、温度計18に温度計測の指示を与え、これに応じて、温度計18から送信される温度に対応するデータを取得(受信)する。
【0036】
図2はこの実施例の計測装置10の全体的な構成を示す図解図である。ただし、
図2では、内部を見えるように示すために、一部の構成を断面で示してある。この
図2を参照して、計測装置10は、四角形の台座30を含み、台座30の下面の四隅には脚部32が設けられる。脚部32は、計測装置10を所定の位置に配置する際に台座30を支持する。また、台座30の上面には定石盤(ステージ)38が設けられる。このステージ38上に鋳物のような計測対象物(ワーク)Wが載置される。
【0037】
この実施例では、ワークWは、ほぼ立方体形状であり、
図2では分からないが、表面(上面)に大小様々な複数の穴が形成される。また、ワークWの表面に現れる穴の形状は、円(真円)である。ただし、これらの形状は設計上の理想的な形状であり、実際には、少しずれている。
【0038】
また、ステージ38上には、フレーム40が形成され、フレーム40に固定された板部材42にステレオカメラ14が取り付けられる。
図2に示すように、左カメラ14aおよび右カメラ14bは、地面から同じ高さであり、水平方向において所定の間隔(この実施例では、200mm)を隔てて、少し傾けて設置される。少し傾けるのは、左カメラ14aおよび右カメラ14bのそれぞれの撮影方向(視線方向)がワークWの上面(撮影面)の中心またはほぼ中心を向き、ワークWの上面の全体を撮影するようにするためである。また、ステージ38上には、固定部材44が設けられ、この固定部材44に温度計18が固定される。ただし、温度計18は、ワークWの表面(側面)の中心付近の温度を計測する向きで固定される。
【0039】
さらに、台座30上には、ステレオカメラ14、温度計18、フレーム40およびワークWを覆うようにカバー46が設けられる。たとえば、カバー46は、照明装置16からの光以外の光がワークWに照射されるのを防止する。このカバー46の内側の側面には、固定部材48が設けられ、固定部材48に各光源(照射部)が固定される。
【0040】
なお、この実施例の計測装置10では、ステレオカメラ14(左カメラ14a、右カメラ14b)の位置(レンズの位置)からワークWの上面までの距離は800〜1000mmに設定される。
【0041】
また、
図2では、コンピュータ12を省略してあるが、コンピュータ12は、ステレオカメラ14、照明装置16および温度計18と電気的に接続され、カバー46の外部に設けられる。
【0042】
なお、
図2に示すように、3次元空間の座標系が示される。
図2における横方向がX軸方向であり、奥行き方向がY軸方向であり、垂直方向がZ軸方向である。
【0043】
このような構成の計測装置10では、ワークWの表面(上面)の全体をステレオカメラ14で撮影し、撮影された画像(撮影画像)に基づいて、ワークWに形成された穴同士(穴間)の距離(ピッチ)を計測する。つまり、穴間の寸法が計測される。穴間のピッチを正確に計測するためには、撮影画像から穴の位置および大きさを正確に把握する必要がある。このため、ワークWの表面に形成された穴のエッジを適切な明るさで光らせて、ステレオカメラ14で撮影された撮影画像のコントラストからくっきりとしたエッジを認識できるようにしてある。具体的には、
図3に示すように、照明装置16を構成するとともに、穴毎に、寸法を計測するための撮影画像を取得するための撮影(以下、「計測時の撮影」という。)において点灯する(使用する)照射部160a−174bを予め決定するようにしてある。したがって、穴毎に、計測時の撮影において点灯しない(使用しない)照射部160a−174bも予め決定される。
【0044】
まず、照明装置16の構成について説明する。上述したように、この実施例では、照明装置16は、8個の光源160、162、164、166,168、170、172、174を含む。
図3(A)に示すように、照明装置16を上方から見ると、正八角形を形成するように、光源160−174は配置される。したがって、光源160−174によってワークWは囲まれる。また、光源160−174は、正八角形を形成するように配置されるので、ワークWを挟んで対になるように構成されている。さらに、
図3(A)からも分かるように、照明装置16では、光源160と光源168が対向し、光源162と光源170が対向し、光源164と光源172が対向し、そして、光源166と光源174が対向する。この実施例では、各光源160−174は、正八角形の内部に向けて光を照射する。したがって、ワークWの表面(上面)全体の外側から内向きに、全周(360°方向)から照明が当てられる。このようにワークWの上面全体が照明され、その上面全体が撮影されるので、ステレオカメラ14を動かす構造を設ける必要がない。
【0045】
また、
図3(B)に示すように、光源160は、上段の照射部160aおよび下段の照射部160bを含む。たとえば、照射部160aおよび照射部160bは、所定長さの線状に形成され、図示しない複数のLEDを直線状に並べて構成される。ただし、LEDに限定される必要はなく、有機ELのような明るさを調整できる任意の発光装置を用いることができる。後述するように、この実施例では、計測時の撮影を行う毎に、使用する照射部160aまたは照射部160bが決定されるとともに、使用する照射部160aまたは照射部160bの明るさが調整される。
【0046】
図2からも分かるように、上段の照射部160aは、発光方向(光の照射方向)が斜め下向き(たとえば、水平方向から下向きに15°)になるように設置され、所定角度(たとえば、入射角が15°)でワークWの上面に光が照射される。また、下段の照射部160bは、光の照射方向が水平方向になるように設置され、ワークWの上面に水平またはほぼ水平に光が照射される。さらに、この実施例では、下段の照射部160bの上方に80mm〜100mm程度隔てて上段の照射部160aが設置される。
【0047】
このように、二段に照射部160a、160bを設けるのは、径の大きさの異なる穴のエッジを確実に照明するためである。ただし、穴のエッジのうち、その傾斜面と対面(対向)するように照射面が設けられた照射部から照射された光が当る当該エッジの部分で当該光は反射される。したがって、この実施例では、ワークWを囲むように照明装置16を構成し、円形の穴のエッジを確実に光らせるようにしてある。
【0048】
この実施例では、基本的には、上段の照射部160aは小径の穴のエッジを光らす(照明する)ために設けられ、下段の照射部160bは大径の穴のエッジを照明するために設けられる。
【0049】
ここで、撮影画像から測定対象物の表面に形成された形成物に関する寸法を計測するために、形成物のエッジを抽出する処理を行うが、そのためには、形成物のエッジのみが光る画像であることが望ましい。
【0050】
下段の照射部160bを用いて、ワークWの上面に水平またはほぼ水平に光を照射することで、計測対象物の表面から反射する光はステレオカメラ14には入射せず、形成物のエッジの部分で反射した光がステレオカメラ14に入射するので、各形成物のエッジの部分のみが光った撮影画像を取得することが可能となる。
【0051】
しかしながら、小径の穴のエッジを照明するのに、上段の照射部160aを用いるのは、水平方向から照明すると、つまり下段の照射部160bを使用すると、照明しようとする穴のエッジの部分が、当該穴の反対側の部分(180°対向したエッジの部分)で影になってしまい、照明しようとする穴のエッジの部分(面取りにより形成されたテーパ部)の奥まで光が届かないからである。このような現象は、光源160(照射部160b)から遠い場合に顕著に現れる。
【0052】
なお、小径か否かを判定するための閾値は、予め試験等によって得られた結果に従って決定される。
【0053】
したがって、たとえば、
図4に示すようなワークWに形成された大径の穴50および小径の穴52のエッジを照明する場合には、上段の照射部160aおよび照射部168aから照射された光はそれぞれが対向する穴52のエッジで反射され、反射光はステレオカメラ14に向けて照射される。また、下段の照射部160bおよび照射部168bから照射された光はそれぞれが対向する穴50のエッジで反射され、反射光はステレオカメラ14に向けて照射される。
【0054】
ただし、小径の穴が光源(照射部)に近い場合には、上段の照射部を使用すると、穴の奥まで照明されてしまい、撮影画像からエッジを認識する場合に、穴の奥にあるキリ加工痕(輪郭)に影響されて、ワークWの表面に現れる穴のエッジを正しく認識できない場合がある。したがって、後述するように、所定の範囲については、小径の穴であっても下段の照射部を使用するようにしてある。
【0055】
なお、図示および詳細な説明は省略するが、他の光源162−174についても光源160と同様である。
【0056】
次に、穴毎に、計測時の撮影において使用する照射部160a−174bおよびそれぞれの明るさを予め決定する方法について説明する。上述したように、ワークWの上面に形成された穴毎に、穴の大きさに応じて、各発光部160−174において、上段の照射部160a、162a、164a、166a、168a、170a、172a、174aおよび下段の照射部160b、162b、164b、166b、168b、170b、172b、174bのいずれを使用するかを決定する。また、後述する明るさの判定結果に応じて、使用する上段または下段の照射部のそれぞれについての明るさを決定する。以下、計測時の撮影において使用する照射部およびそれぞれの明るさを「照射条件」と言うことがある。
【0057】
計測時の撮影において使用する各照射部の明るさを決定する場合には、たとえば、上段の照射部160a−174aのみを点灯する場合と、下段の照射部160b−174bのみを点灯する場合に分けて、各穴のエッジの明るさが判定される。
【0058】
まず、上段の照射部160a−174aを点灯しないで(オフしたままで)、下段の照射部160b−174bの明るさが複数の段階(たとえば、10段階)で変化され、その都度ステレオカメラ14(左カメラ14aおよび右カメラ14b)でワークWの上面が撮影される。たとえば、下段の照射部160b−174bの明るさは、最小(0)から最大(255)までの間を、10段階で変化される。したがって、左カメラ14aについて10枚の撮影画像が取得され、対応する撮影画像データはコンピュータ12のメモリに記憶される。同様に、右カメラ14bについて10枚の撮影画像が取得され、対応する撮影画像データがコンピュータ12のメモリに記憶される。ただし、ここでの撮影は、明るさを判定(決定)するための撮影画像を取得するための撮影である。
【0059】
なお、この実施例では、下段の照射部160b−174bの明るさを10段階で変化させるようにしてあるが、これは一例であり、明るさを適切に変化させることができるのであれば、10段階よりも少なくてもよいし、多くてもよい。
【0060】
照射条件は、左カメラ14aおよび右カメラ14bのそれぞれについて決定される。これは、同じ穴に着目している場合であっても、左カメラ14aと右カメラ14bとでは、設置位置が水平方向にずれるとともに、視線方向が異なるため、使用される照射部160b−174bまたは/および照射部160b−174bの明るさが異なるからである。
【0061】
これらのことは、上段の照射部160a−174aの明るさを変化させる場合も同様である。
【0062】
次に、各撮影画像において、各穴についてのエッジの明るさ(輝度値)に基づいて、下段の照射部160b−174bの明るさが判定される。この明るさの判定の処理は、コンピュータ12がメモリに記憶された撮影画像データを用いて行う。
図5−
図8は、着目する穴における下段の照射部160b−174bの明るさを判定する方法を説明するための説明図である。
【0063】
ただし、
図5(A)、
図6(A)、
図7(A)および
図8(A)においては、着目する穴のエッジの明るさと下段の照射部160b−174bの明るさを対比するために、下段の照射部160b−174bの中央に1つの着目する穴を示してあるが、実際には、着目する穴はワークWの上面側に形成されたすべての穴である。
【0064】
また、
図5(A)、
図6(A)、
図7(A)および
図8(A)では、下段の照射部160b−174bのそれぞれによって照明される穴のエッジの部分を8つの均等な部分に分けて示してあるが、これは下段の照射部160b−174bの各々と照明されるエッジの部分の対応関係を分かり易く示しているだけであり、実際には均等になるとは限らない。
【0065】
さらに、ここでは、着目する穴における下段の照射部160b−174bの明るさを判定する方法について説明するが、着目する穴における上段の照射部160a−174aの明るさを判定する方法についても同様である。このため、重複した説明は省略する。
【0066】
図5は、照射部160bおよび照射部168bに着目した場合の図である。
図5(A)の例では、照射部160bの明るさおよび照射部160bで照明される穴のエッジの右側部分の明るさは最適であり、照射部168bの明るさおよび照射部168bで照明される穴のエッジの左側部分の明るさは明る過ぎることが示される。
【0067】
ただし、
図5(A)、
図6(A)、
図7(A)および
図8(A)においては、網掛け線を付した範囲は明るさが明る過ぎることを示し、斜線を付した範囲は明るさが最適であることを示し、点を付した範囲は明るさが暗いことを示す。
【0068】
図5(A)、
図6(A)、
図7(A)および
図8(A)に示すように、着目する穴における下段の照射部160b−174bの明るさを判定するための四角形(この実施例では、正方形)の領域(以下、「全領域」という)200が設定される。
【0069】
なお、着目する穴の位置および大きさはワークWの設計図等から予め分かるため、それによって全領域200を設定する位置および大きさは予め設定される。
【0070】
図5(A)に示すように、全領域200のうちの右半分の領域が照射部160bの判定領域として設定され、全領域200のうちの左半分の領域が照射部168bの判定領域として設定される。そして、設定された判定領域において、画素毎の輝度値が検出され、各輝度値についての画素数の分布が求められる。
【0071】
図5(A)に示した場合においては、左半分の判定領域についての各輝度値における画素数の分布は、
図5(B)のように示される。この実施例では、撮影画像における穴のエッジの明るさ(輝度値)についての目標値(目標輝度値)が設定されている。具体的には、目標輝度値は155に設定され、理想輝度範囲は150−160に設定される。たとえば、反射して光っている画素(輝度値100以上)の集合から輝度値の重心を求めたときの数値が目標輝度値として155に設定される。そして、画素数のピークが目標輝度値を含む所定範囲(理想輝度範囲)に収まる場合には、最適な明るさであることが判定される。さらに、輝度の許容範囲(輝度許容範囲)が設定されている。この実施例では、輝度許容範囲は、110−180に設定される。このように輝度許容範囲を設定するのは、画素数のピークが輝度許容範囲内に収まらない場合には、暗過ぎたり明る過ぎたりするため、情報の信憑性が低いと考えられ、そのような明るさでワークWを照明するのは適切ではないからである。
【0072】
ただし、
図5(B)では、目標輝度値は点線で示され、理想輝度範囲は斜線を付して示され、輝度許容範囲は二本の実線で示され、そして、画素数のピークは丸印を付して示される。後述する
図5(C)、
図6(B)、(C)、
図7(B)、(C)および
図8(B)、(C)においても同じである。
【0073】
なお、
図5(A)では分かり易く示すために、穴の内部およびエッジの外側を白色で示してあるが、実際には、穴の内部はほとんど黒であり、また、エッジの外側も黒または灰色である。このため、
図5(B)からも分かるように、輝度値が0およびその近傍の値となる画素数も多い。つまり、実際の画素数のピークは、輝度値が0またはその近傍に現れるが、これは下段の照射部160b−174bの明るさを決定する場合には対象外であることは明らかである。したがって、所定の輝度値(たとえば、100)未満についての画素数は、明るさを決定する際には無視される。
【0074】
図5(B)では、画素数のピークが理想輝度範囲よりも右側である。したがって、照射部168bの明るさが明る過ぎると判定される。
【0075】
また、
図5(A)に示した場合においては、右半分の判定領域についての各輝度値における画素数の分布は、
図5(C)のように示される。
図5(C)では、画素数のピークが理想輝度範囲内に収まっている。したがって、照射部160bの明るさは最適であると判定される。
【0076】
図6は、照射部166bおよび照射部174bに着目した場合の図である。
図6(A)の例では、照射部166bおよび照射部174bの明るさは暗く、また、照射部174bで照明される穴の右斜め下側のエッジ部分の明るさおよび照射部166bで照明される穴の左斜め上側のエッジ部分の明るさは暗いことを示す。
【0077】
図6(A)に示すように、照射部174bに対しては、全領域200を右上頂点と左下頂点とを結ぶ対角線で分割した場合の右斜め半分の領域が判定領域として設定され、照射部166bに対しては、その場合の左斜め半分の領域が判定領域として設定される。
図6(B)は、左斜め半分の判定領域についての各輝度値に対応する画素数の分布を示す。また、
図6(C)は、右斜め半分の判定領域についての各輝度値に対応する画素数の分布を示す。
【0078】
図6(B)では、画素数のピークは理想輝度範囲の左側であり、照射部166bの明るさが暗いことが判定される。また、
図6(C)においても、画素数のピークは理想輝度範囲の左側であり、照射部174bの明るさが暗いことが判定される。
【0079】
図7は、照射部164bおよび照射部172bに着目した場合の図である。
図7(A)の例では、照射部172bの明るさおよび照射部172bで照明される穴の下側のエッジ部分の明るさは明る過ぎであり、照射部164bの明るさおよび照射部164bで照明される穴の上側のエッジ部分の明るさは暗いことを示す。
【0080】
図7(A)に示すように、照射部164bに対しては、全領域200のうちの上半分が判定領域として設定され、照射部172bに対しては、全領域200のうちの下半分が判定領域として設定される。
図7(B)は、上半分の判定領域についての各輝度値に対応する画素数の分布を示す。また、
図7(C)は、下半分の判定領域についての各輝度値に対応する画素数の分布を示す。
【0081】
図7(B)では、画素数のピークは理想輝度範囲の左側であり、照射部164bの明るさが暗いことが判定される。一方、
図7(C)では、画素数のピークは理想輝度範囲の右側であり、照射部172bの明るさが明る過ぎることが判定される。
【0082】
図8は、照射部162bおよび照射部170bに着目した場合の図である。
図8(A)の例では、照射部162bの明るさおよび照射部162bで照明される穴の右上のエッジ部分の明るさは暗く、照射部170bの明るさおよび照射部170bで照明される穴の左下のエッジ部分の明るさは明る過ぎることを示す。
【0083】
図8(A)に示すように、照射部162bに対しては、全領域200を左上頂点と右下頂点とを結ぶ対角線で分割した場合の右斜め半分の領域が判定領域として設定され、照射部170bに対しては、その場合の左斜め半分の領域が判定領域として設定される。
図8(B)は、左斜め半分の判定領域についての各輝度値に対応する画素数の分布を示す。また、
図8(C)は、右斜め半分の判定領域についての各輝度値に対応する画素数の分布を示す。
【0084】
図8(B)では、画素数のピークは理想輝度範囲の右側であり、照射部170bの明るさが明る過ぎると判定される。一方、
図8(C)では、画素数のピークは理想輝度範囲の左側であり、照射部162bの明るさが暗いことが判定される。
【0085】
このように、各穴について下段の照射部160b−174bの明るさを各々10段階で変化させた場合の各段階における判定結果がコンピュータ12のメモリに記憶される。
【0086】
また、下段の照射部160b−174bのみを照射した場合の各穴のエッジの明るさが判定されると、次に、上段の照射部160a−174aのみを点灯する場合について、各穴のエッジの輝度に基づいて、上段の照射部160a−174aの明るさが判定される。明るさの判定方法は、下段の照射部160b−174bに変えて上段の照射部160a−174aを使用する以外は、上述したとおりであるため、重複した説明は省略する。したがって、各穴について上段の照射部160a−174aの明るさを各々10段階で変化させた場合の各段階における判定結果がコンピュータ12のメモリに記憶される。
【0087】
このようにして得られたすべての判定結果から、コンピュータ12は、各穴に着目して計測時の撮影処理を実行する場合の照射条件を決定する。ただし、左カメラ14aと右カメラ14bとは別々に照射条件が決定される。
【0088】
照射条件を決定する場合には、各穴について、各光源160−174単位で使用する照射部およびその明るさが決定される。たとえば、光源160について説明すると、或る穴についての当該穴の径の大きさに応じて使用する照射部160aまたは照射部160bが決定される。上述したように、基本的には、下側の光源160bが使用され、小径の穴については上側の光源160aが使用される。そして、決定された使用する照射部160aまたは照射部160bのすべての判定結果から、画素数のピークが理想輝度範囲内である判定結果を抽出する。そして、抽出された判定結果を得たときの明るさ(10段階のうちのいずれかの段階)を使用する照射部(160aまたは160b)の明るさに決定する。このような決定処理が、各穴について、各光源160−174で行われる。
【0089】
ただし、画素数のピークが理想輝度範囲内である判定結果が複数有る場合には、目標輝度値にもっとも近い判定結果が抽出される。
【0090】
なお、ここでは、画素数のピークが理想輝度範囲内である判定結果があることを前提に説明してあるが、場合によっては、そのような判定結果を有していない光源160−174が存在することもあり得る。かかる場合には、輝度許容範囲内で最も理想輝度範囲に近い場合の判定結果が抽出される。
【0091】
また、上述したように、基本的には、小径の穴のエッジを光らせる場合には、上段の照射部(160aなど)を使用するようにしてあるが、所定の領域内に形成された小径の穴を撮影する場合には、上段の照射部(160aなど)を使用しないようにしてある。
【0092】
たとえば、
図9(A)に示すように、所定の領域210は、ワークWの上面のうち、光源162、166、170および174に近い四隅の領域に設定される。
図9(A)においては、所定の領域210を、網掛け線を付した四角形で示してある。このような所定の領域210においては、
図9(B)に示すように、上段の照射部(ここでは、174a)を使用すると、小径の穴54の底のエッジ(キリ加工痕)を光らせてしまい、撮影画像において所望でないエッジを認識してしまうからである。
【0093】
したがって、着目する小径の穴が左上の所定の領域210内にある場合には、計測時の撮影において上段の照射部174aを使用せずに、下段の照射部174bを使用することが判断される。また、着目する小径の穴が左下の所定の領域210内にある場合には、計測時の撮影において上段の照射部162aを使用せずに、下段の照射部162bを使用することが判断される。同様に、着目する小径の穴が右下の所定の領域210内にある場合には、計測時の撮影において上段の照射部166aを使用せずに、下段の照射部166bを使用することが判断される。そして、着目する小径の穴が右上の所定の領域210内にある場合には、計測時の撮影において上段の照射部170aを使用せずに、下段の照射部170bを使用することが判断される。
【0094】
このように、ワークWの上面に形成された各穴における照射部160a−174bの明るさの判定処理が行われることにより、計測時の撮影において使用する照射部160a−174bの明るさが決定され、照射条件が事前にメモリに記憶される。そして、計測時の撮影処理が実行される場合に、着目する穴に応じて照射条件に従って、使用する照射部160a−174bが決定されるとともに、それぞれの明るさが設定(調整)される。つまり、照明装置16がコンピュータ12によって制御される。したがって、使用する照射部160a−174bの明るさが細かく調整される。
【0095】
なお、上述したように、各穴に応じて照射条件が異なるため、後述するように、計測時の撮影処理では、各穴に応じた照射条件で穴の数だけ撮影が行われる。また、上述したように、同じ穴に着目して撮影する場合であっても、左カメラ14aと右カメラ14bでは照射条件が異なるため、後述するように、左カメラ14aおよび右カメラ14bは別々で撮影を行う。
【0096】
続いて、計測時の撮影処理および計測処理について説明する。上述したように、計測時の撮影処理は、左カメラ14aおよび右カメラ14bで別々に実行される。また、計測時の撮影処理は、左カメラ14aおよび右カメラ14bのそれぞれについて、ワークWの上面に形成された穴の数だけワークWの上面が撮影される。このとき、撮影毎に、着目する穴が変化され、その都度、着目する穴に応じた照射条件が設定されるのである。ただし、着目する穴の順番は予め決定されており、その順番に従って照射条件が設定される。
【0097】
左カメラ14aで撮影された撮影画像に対応する撮影画像データおよび右カメラ14bで撮影された撮影画像に対応する撮影画像データは、それぞれ、識別可能にメモリに記憶される。そして、左カメラ14aおよび右カメラ14bのそれぞれについての合成画像が得られる。つまり、左カメラ14aで各穴に着目して撮影された複数の撮影画像から合成画像が生成される。また、右カメラ14bで各穴に着目して撮影された複数の撮影画像から合成画像が生成される。合成画像を生成する場合には、撮影画像から当該撮影画像を撮影したときに着目した穴についての画像が切り取られ、1つの画像に貼りつけられる。この切り取りおよび貼り付け処理が各撮影画像について行われる。また、画像を貼りつける位置は、左カメラ14aの撮影画像および右カメラ14bの撮影画像のそれぞれにおける2次元画像での絶対座標で決定される。
【0098】
ただし、合成画像を生成する場合には、メモリに記憶された左カメラ14aの撮影画像データおよび右カメラ14bの撮影画像データのそれぞれが用いられる。詳細な説明は省略するが、ノイズが除去された撮影画像データが使用される。
【0099】
具体的には、
図10(A)に示す第1撮影画像は、着目する穴54について撮影した場合の撮影画像であり、
図10(B)に示す第2撮影画像は、着目する穴56について撮影した場合の撮影画像である。
図10(A)および
図10(B)においては、着目する穴のエッジがはっきりしていることを太線で示してある。このことは、
図10(C)の合成画像においても同じである。また、
図10(A)および
図10(B)においては、点線で示す穴はワークWには設けられるが撮影画像においてそのエッジが現れていないことを示し、細線で示す穴は明るさが十分でない、つまりエッジがはっきりしないことを示す。
図10(C)に示すように、合成画像では、第1撮影画像から穴54についての画像が切り取られて貼り付けられ、第2撮影画像から穴56についての画像が切り取られて貼り付けられる。図示は省略するが、他の穴の画像についても同様である。
【0100】
また、左カメラ14aおよび右カメラ14bの撮影画像から着目する穴の3次元位置、直径および法線ベクトルが求められる。具体的には、撮影画像が取得されると、撮影画像からノイズ成分が除去される。そして、撮影画像の輝度の変化の閾値を元にエッジ候補を検出する。これらの処理は、左カメラ14aおよび右カメラ14bの撮影画像のそれぞれについて実行される。さらに、検出したエッジ候補から、着目する穴のおおよその姿勢および位置を認識する。
【0101】
次に、左カメラ14aおよび右カメラ14bの各々の撮影画像のエッジ情報から、それぞれに最もマッチングする楕円を計算する(楕円マッチング)。ただし、楕円マッチングの処理は、着目する穴毎に実行される。そして、着目する穴の開口が真円であることを前提として、当該穴の中心の3次元位置、直径および法線ベクトルが求められる(計測される)。ただし、穴の中心のZ座標は、当該穴に着目して撮影した場合の左カメラ14aの撮影画像および右カメラ14bの撮影画像を用いて、ステレオマッチング法(ステレオカメラ法)に従って算出され、ステレオカメラ14から穴の中心までの距離で決定される。
【0102】
したがって、穴の中心の3次元位置(3次元座標)を用いることにより、合成画像において穴間の2次元平面におけるピッチを算出(計測)することができるだけでなく、穴の3次元位置に基づいて、穴間の3次元空間におけるピッチを算出(計測)することもできる。このため、ワークWの上面が傾斜している場合にも正しいピッチを知ることができる。
【0103】
なお、この実施例では、
図2に示したように、3次元空間の座標系は設定されている。
【0104】
たとえば、或る穴の中心の3次元座標が(x
1,y
1,z
1)であり、他の穴の中心の3次元座標が(x
2,y
2,z
3)である場合に、それら2つの穴間の2次元平面におけるピッチL1は、数1に従って算出され、3次元空間におけるピッチL2は、数2に従って算出される。
【0105】
[数1]
L1=√{(x
1−x
2)
2+(y
1−y
2)
2}
[数2]
L2=√{(x
1−x
2)
2+(y
1−y
2)
2+(z
1−z
2)
2}
さらに、この実施例では、ワークWの温度が温度計18で計測され、計測されたワークWの温度に応じて穴間のピッチが補正される。これは温度の違いによる測定誤差を吸収するためである。この実施例では、計測されたピッチL2の補正値ΔL(伸び)は数3に従って算出され、この補正値ΔLがピッチL2に加算される(L2+ΔL)。数1において、αはワークWの材料に応じた線膨張率であり、ΔTは温度差(計測温度−基準温度)である。ただし、ΔTは正数である。
【0106】
[数3]
ΔL=L2×α×ΔT
なお、ワークWの温度は、計測時の撮影処理が開始される前、計測時の撮影処理の途中、または計測時の撮影処理の終了後のように、任意のタイミングで計測される。
【0107】
この実施例によれば、ステレオカメラを用いて、着目する穴毎に最適な明るさでワークの上面を照明して撮影処理を行うだけなので、撮影画像のコントラストからワークのエッジを正確に認識することができる。したがって、比較的短時間で正確な穴の3次元位置を計測することができる。よって、3次元空間における穴間のピッチを正確に計測することができる。
【0108】
なお、この実施例では、照明装置を上方から見た場合に正八角形になるように線状の光源(照射部)を配置したが、部分ごとに明るさを調整できるのであれば、光源は、正十六角形や正三十二角形のような他の偶数の正多角形、または、正七角形のような奇数の正多角形、或いは、各辺の長さが均一でない多角形になるように配置されてよく、さらには、円形になるように配置(構成)されてもよい。ただし、正十六角形や正三十二角形などの一辺の長さが短い形状で照明装置を構成する場合には、実施例で示したように、線分単位で明るさを調整する必要はなく、隣接する複数の線分単位で明るさを調整するようにしてもよい。
【0109】
また、この実施例では、ワークの上面に形成された円形の穴間のピッチを計測するため、円形の穴を正確に検出するために、ワークを囲むように照明装置を設けたが、これに限定される必要はない。検出する対象によって照明装置は適宜変更することができる。
【0110】
たとえば、
図11に示すように、横長の溝が形成された横長のワークに対しては、当該ワークの溝と平行であり、当該ワークを挟んで対向する(対となる)2つの直線状の光源によって構成される照明装置を設けることができる。図示は省略するが、各光源は、上段および下段の照射部を有している。ただし、
図11は、ワークおよび照明装置を上方から見た図である。このように構成することにより、ワークの表面に形成される溝のエッジを所望の明るさで光らせることができる。
【0111】
また、この実施例では、光源の明るさを調整するようにしたが、光源の明るさを調整せずに、使用する上段または下段の照射部を切り替えるようにするだけでもよい場合がある。たとえば、ワークの上面に、大きさが均等であり、均等な間隔で整列した複数の穴が形成されているような場合には、距離に応じて上段と下段とを切り替えるだけで、各穴のエッジを最適な明るさで光らすことができる場合がある。
【0112】
さらに、この実施例では、光源から比較的離れた位置のエッジを光らせる必要があるため、2段の照射部を設けるようにしたが、これに限定される必要はない。たとえば、ワークの中央にのみ比較的大きい穴が形成されるような場合には、ワークの上面と平行またはほぼ平行に水平方向に照射する1段の照射部のみを設けても穴のエッジを適切な明るさで光らせることができる。また、たとえば、ワークがかなり大きく、ワークの上面に設けられる複数の小径の穴が分散しているような場合には、3段以上の照明部を設けて、穴のエッジを適切な明るさで光らせるようにしてもよい。つまり、照明装置において、照射部を単数(1段)にするか、複数(2段以上)にするかは計測するワークに応じて決定される。
【0113】
また、この実施例では、ワークの表面に形成された形成物としての穴間のピッチを計測するようにしたが、これに限定される必要はない。たとえば、ワークの表面に形成された穴の直径、他の形成物としての突起や溝の幅、突起間のピッチ、溝間のピッチまたは異なる形成物間のピッチを計測するようにしてもよい。
【0114】
さらに、この実施例では、鋳物のようなワークに関する寸法を計測するようにしたが、これに限定される必要はない。プラスチックのような樹脂で形成された成形品に関する寸法を計測することもできる。
【0115】
なお、この実施例で示した具体的な数値は単なる一例であり、限定されるべきではなく、実際の装置ないし製品等に応じて適宜変更可能である。