特許第6121138号(P6121138)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6121138バルブ用電動アクチュエータと緊急遮断弁・緊急開放弁
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6121138
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】バルブ用電動アクチュエータと緊急遮断弁・緊急開放弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20170417BHJP
【FI】
   F16K31/04 A
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-241163(P2012-241163)
(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公開番号】特開2014-92177(P2014-92177A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】唐沢 仁
【審査官】 正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−173385(JP,A)
【文献】 特開平08−247323(JP,A)
【文献】 特開昭62−254680(JP,A)
【文献】 特開2009−275844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブをモータで開閉する電動アクチュエータにおいて、交流電源を直流電源に変換する電源回路と、この電源回路を二次電池充電回路を介して二次電池に接続すると共に充電後の二次電池を前記モータに接続し、前記バルブの通過漏れが発生しない範囲内又は流量を満足する範囲内の角度で、前記アクチュエータを二次電池に充電された電力を用いて微動動作させて、二次電池の放電状況や微動動作後の充電状況を計測することにより、前記二次電池の性能を確認することを特徴とするバルブ用電動アクチュエータ。
【請求項2】
前記二次電池で微動動作させる際、その前後における前記二次電池の端子電圧を計測し、予め設定した値を超え、電圧が低下した場合は、前記二次電池の寿命と診する請求項1に記載のバルブ用電動アクチュエータ。
【請求項3】
前記二次電池で微動動作させた後において、前記二次電池の充電時間を計測し、その時間が予め設定した値を超えている場合には、前記二次電池の寿命と診断する請求項1に記載のバルブ用電動アクチュエータ。
【請求項4】
前記バルブは、バタフライバルブであり、又はボールバルブであり、バタフライバルブの場合における前記微動動作は、開度0〜8%、或いは開度90〜100%の範囲内で行うようにした請求項1乃至3の何れかに記載のバルブ用電動アクチュエータ
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の前記バルブ用電動アクチュエータを搭載したことを特徴とする緊急遮断弁・緊急開放弁
【請求項6】
感震器に接続した請求項5に記載の緊急遮断弁・緊急開放弁
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ用電動アクチュエータと緊急遮断弁・緊急開放弁に係り、特に、ボールバルブ、バタフライバルブ等の回転バルブに搭載され、緊急時にバルブを全閉または全開させるバルブ用電動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水や薬品等の流体を流す配管系には電動バルブが使用され、遠隔操作によりバルブを開閉して流体の流れを制御している。この様な配管システムでは、停電や地震、火災等が発生した緊急時には、速やかに管路を全閉状態または全開状態にすることが必要となる。
【0003】
現在、緊急時に管路を全閉状態または全開状態とするためのバルブに使用する緊急用電動アクチュエータの型式には、機械式スプリング型と二次電源駆動型が知られている。
【0004】
機械式スプリング型電動アクチュエータは、電動アクチュエータの駆動軸にスプリングを搭載し、弁体を回転させる際に弁体をその逆方向に回転させる復元力を貯えるようにスプリング巻き上げ、停電により電源の供給が遮断された際には、巻き上げによりスプリングに貯えられた復元力のエネルギで駆動軸を回転させ、バルブを全閉状態又は全開状態にするものである。
【0005】
二次電源駆動型電動アクチュエータは、直流モータと二次電源を搭載し、交流電源が供給されているときは、交流電源を直流に変換してモータを駆動させて弁体を所定の開度に維持し、停電により交流電源が遮断されると、直流である二次電源によりモータを駆動して、バルブを全閉状態又は全開状態とするものである。
【0006】
機械式スプリング型電動アクチュエータは、弁体を回転させる際に同時にスプリングを巻き上げるため、モータには弁体を回転させる負荷とスプリングを巻き上げる負荷が同時に作用することになる。このため、トルクが大きい大型のモータが必要であり、アクチュエータの大型化と重量化を招く欠点がある。
【0007】
これに対し、二次電源駆動型電動アクチュエータは、機械式スプリング型電動アクチュエータのような欠点を有さず、近年、二次電源として従来の二次電池より劣化が少なく長寿命の電気二重層コンデンサが使用されるようになっている。
【0008】
緊急用電動アクチュエータを緊急遮断バルブで使用する場合には、バルブは常時、全開や中間開度状態で維持されており、緊急時(停電、地震、火災等の発生時)に外部電源や二次電池によって直流モータを駆動してバルブを強制的に全閉状態とする。一方、緊急解放弁で使用する場合には、バルブは常時、全閉状態で維持されており、緊急時に外部電源や二次電池によって直流モータを駆動したバルブを強制的に全開状態とする。この様に、緊急遮断(開放)バルブは長期間にわたり全開状態もしくは全閉状態に保たれ、例えバルブの定期点検を実施したとしても、1年に1回程度しか弁を作動させる機会がないのが普通である。
【0009】
通常、緊急用電動アクチュエータの二次電源として電気二重層コンデンサを用いる場合には、コスト的に電動アクチュエータの駆動源としてDCブラシモータが採用される場合が多い。DCブラシモータを用いた電動アクチュエータが長時間停止していると、モータの整流器(ブラシ及びコンミテータ)部分のコンミテータは銅系金属で作られているため、長時間空気中に晒されることにより表面部分が酸化してブラシとの接触抵抗が増大し、モータのアマチュア(電機子コイル)に電流が流れなくなる接点障害が発生することにより、起動時に動作不能に陥るおそれがある。
【0010】
DCブラシモータの整流器部分だけでなく、電動アクチュエータの開閉位置を決定するリミットスイッチについても、長時間アクチュエータが停止していると接点の表面が酸化し、接触抵抗が増大することによって動作不能、誤作動が発生するおそれがある。
【0011】
また、アクチュエータの長時間の停止状態によって、アクチュエータ出力軸、ギア軸受け部及びDCモータの軸受け部からの潤滑油の流出、枯渇等による軸の焼き付き、固着が発生し、アクチュエータが作動不能に陥るおそれもある。さらには、アクチュエータの減速ギア部にグリス潤滑油膜の切れ、水分の混入による変質等が発生し、ギア焼き付きによる動作不能が発生するおそれもある。
【0012】
バルブが長時間全開、全閉状態に置かれていると、ボールシートやジスクにスラッジ等の堆積物が堆積して弁部に固着が発生するとともに、ステム部にも固着が発生し、バルブの動作不能が生じるおそれがある。この不具合は、二次電源駆動型電動アクチュエータだけでなく、簡単な機構で緊急時に弁体を回転させることができるために信頼性が高いと考えられている機械式スプリング型電動アクチュエータでも発生する可能性があり、緊急時に動作不能となるおそれを排除することができない。
【0013】
二次電源に電気二重層コンデンサを用いた緊急用電動アクチュエータが長時間停止状態にあると、従来の蓄電池に比して劣化が少なく長寿命である電気二重層コンデンサであっても、劣化による容量の低下等が発生し、緊急作動時にバルブを作動させるために必要な電力供給をすることができず、作動不能に陥るおそれがある。
【0014】
緊急遮断(開放)バルブは、事前の予測することが不可能で突如発生する緊急時において確実に作動することが求められるため、常時、緊急用電動アクチュエータを含むバルブ機能を正常に維持すると共に、モータに電力を供給する二次電源である電気二重層コンデンサの電力供給能力を維持し、緊急作動時の作動不能を防止する必要がある。
【0015】
この防止対策の一例として、特許文献1が提案されている。特許文献1には、長期間使用しなかった場合、流量制御弁の止水部のパッキンが弁軸に締めついたり、また水圧により流量調整弁と本体が絡み合ってしまうことによる始動時のトルク増大を防止するため、流量調整弁が閉止した後一定時間経過するごとに信号を出力するタイマ手段と、タイマ手段の信号により流量調整弁を第1の閉止位置検出手段と第2の閉止位置検出手段の間で駆動する制御手段とを備えた流量制御装置が記載されている。
【0016】
また、特許文献2には、フル充電された電気二重層キャパシタに放電抵抗を接続し、その放電抵抗を所定時間接続した後に電気二重層キャパシタの端子電圧を測定して、その測定した端子電圧とフル充電された電気二重層キャパシタの該放電抵抗についての寿命判断の基準となる放電特性における該所定時間経過後の残電圧とを比較して寿命を判定する電気二重層キャパシタの診断方法とその方法を用いた劣化検出装置を備えた緊急遮断弁が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平8−100864号公報
【特許文献2】特開2006−173385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、特許文献1に記載された流量制御装置は、長期間作動しないことにより流量調節弁の止水部のパッキンが流量調節弁の弁軸に締めつくことや、または水圧により流量調整弁と本体が絡み合ってしまい流量制御弁が固着することを防ぐことはできるが、流量調節弁の止水部や流量制御弁駆動手段の内部の劣化状況を事前に把握し、流量制御装置が作動不能になる前に劣化状況に応じた措置を講じることにより、該装置が作動不能となる事態を回避することはできない。
【0019】
特許文献2に記載された電気二重層キャパシタの診断方法とその方法を用いた劣化検出装置を備えた緊急遮断弁では、例えば定期点検の時に診断スイッチを作動させて電気二重層キャパシタの劣化状況を診断することができるが、電気二重層キャパシタの劣化状況は作為して点検しないと把握することができないので、点検と点検の間に電気二重層キャパシタの劣化が進んだ場合には、電気二重層キャパシタの電力供給能力の低下を把握して良品と交換することができず、緊急時にバルブを緊急遮断(開放)することができない事態が発生する可能性がある。
【0020】
本発明は、上記の課題を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、定期的かつ自動的に電動アクチュエータ及び該アクチュエータを搭載したバルブの信頼性を回復させるとともに、該アクチュエータ及び内蔵する二次電池、並びに搭載したバルブに不具合が発生した場合には、その不具合を解消するためのメンテナンスが可能であり、もって緊急時に確実にバルブを全閉状態又は全開状態にすることができるバルブ用電動アクチュエータと緊急遮断弁・緊急開放弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、バルブをモータで開閉する電動アクチュエータにおいて、交流電源を直流電源に変換する電源回路と、この電源回路を二次電池充電回路を介して二次電池に接続すると共に充電後の二次電池を前記モータに接続し、前記バルブの通過漏れが発生しない範囲内又は流量を満足する範囲内の角度で、前記アクチュエータを二次電池に充電された電力を用いて微動動作させて、二次電池の放電状況や微動動作後の充電状況を計測することにより、前記二次電池の性能を確認することを特徴とするバルブ用電動アクチュエータである。
【0025】
請求項に係る発明は、二次電池で微動動作させる際、その前後における前記二次電池の端子電圧を計測し、その変化幅が予め設定した値を超え、電圧が低下した場合は、前記二次電池の寿命と断するようにした。
【0026】
請求項に係る発明は、二次電池で定期的に数回微動動作させた後において、前記二次電池の充電時間を計測し、その時間が予め設定した値を超えている場合には、前記二次電池の寿命と診断するようにした。
【0027】
請求項に係る発明は、前記バルブは、バタフライバルブであり、又はボールバルブであり、バタフライバルブの場合における前記微動動作は、開度0〜8%、或いは開度90〜100%の範囲内で行うようにした。
【0028】
請求項5又は6に係る発明は、バルブ用電動アクチュエータを搭載した緊急遮断弁・緊急開放弁であり、これを感震器に接続するようにした。
【発明の効果】
【0029】
請求項1に係る発明によると、バルブの通過漏れが発生しない範囲内又は最大流量に影響しない範囲内の角度でアクチュエータを微動動作させるので、この時、アクチュエータのモータが揺動回転することにより当該モータのコンミテータ部表面及びリミットスイッチ接点部のクリーニングができるとともに、モータの揺動回転に従って作動するアクチュエータの駆動機構の軸受やギア列の油切れを防止することがで、さらには弁体が微動動作することによりボール、ジスク部の堆積物(スラッジ)を除去し、ステムの固着を回避することにより、当該電動アクチュエータを搭載したバルブの緊急遮断弁もしくは緊急解放弁としての信頼性を高めることができる。
【0030】
また、ボデー内に一対のボールシートで支受けされた貫通孔を有するボールを、ボールシートのボール支受け面シート幅の範囲内で揺動回転させるため、バルブの全閉状態においてはボール貫通孔が開放されることがなく、また、バルブの全開状態においてはボール貫通孔の断面積が絞られることがないので、バルブの通過漏れ又は最大流量への影響を生じさせることなくボールを揺動回転させることができるとともに、この時、アクチュエータのモータが揺動回転することにより当該モータのコンミテータ部表面及びリミットスイッチ接点部のクリーニングができるとともに、モータの揺動回転に従って作動するアクチュエータの駆動機構の軸受やギア列の油切れを防止することができ、さらには弁体が微動動作することによりボール部の堆積物を除去し、ステムの固着を回避することにより、当該電動アクチュエータを搭載したバルブの緊急遮断弁もしくは緊急開放弁としての信頼性を高めることができる。
【0031】
しかも、二次電池に充電された電力を用いてモータを揺動回転させてアクチュエータを微動動作させるため、モータが揺動回転による二次電池の放電状況、並びにモータ揺動回転後の二次電池の充電状況を計測することにより、二次電池の性能を別途の検査回路を用いることなく確認することができる。
【0032】
さらには、定期的かつ自動的にバルブの通過漏れが発生しない範囲内又は最大流量に影響しない範囲内の角度でアクチュエータを微動動作させるので、アクチュエータのモータが揺動回転することによりコンミテータ部表面及びリミットスイッチ接点部のクリーニングを行うことができるとともに、モータの揺動回転に従って作動する軸受やギア列の油切れを防止することができ、さらに弁体を微動動作させてジスク部の堆積物(スラッジ)の除去、ステムの固着回避を行うことにより、緊急時には確実にバルブを全閉状態又は全開状態にすることができるので、緊急遮断弁もしくは緊急開放弁としての信頼性を回復、維持することができる。
【0033】
請求項に係る発明によると、アクチュエータ微動動作前後の二次電池の電圧降下値を計測し、その変化幅が予め設定した値を超えていた場合には、二次電池の寿命もしくは電動アクチュエータの異常と診断して警報を発するので、二次電池が寿命に達していた場合には二次電池良品と交換することにより、また電動アクチュエータに異常が発生していた場合にはアクチュエータの整備、修理を行うことにより、アクチュエータの機能を正常な状態に復することができ、当該電動アクチュエータを搭載したバルブの緊急遮断弁もしくは緊急開放弁としての信頼性を回復、維持することができる。
【0034】
請求項に係る発明によると、二次電池でアクチュエータを数回微動動作させた後において、前記二次電池の充電時間を計測し、その時間が予め設定した値を超えている場合には、前記二次電池が寿命に達していると判断して警報を発するので、二次電池を良品と交換することにより、アクチュエータの機能を正常な状態に復することができ、当該電動アクチュエータを搭載したバルブの緊急遮断弁もしくは緊急開放弁としての信頼性を回復、維持することができる。
【0035】
請求項4又は5に係る発明によると、微動動作の範囲内で円板状のジスクの揺動範囲を設定することで、ボールバルブと同様にバルブ用電動アクチュエータを搭載した緊急遮断弁又は緊急開放弁としての信頼性を高めることができる
【0036】
請求項に係る発明によると、地震発生時にも外部からの強制入力によりバルブ用電動アクチュエータを緊急用電動アクチュエータとして確実に作動させることが可能となる
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明に係るバルブ用電動アクチュエータの構成を説明するブロック線図である。
図2】全閉状態のボール弁体の揺動状況を説明する模式図である。
図3】全開状態のボール弁体の揺動状況を説明する模式図である。
図4】本発明に係るバルブ用電動アクチュエータをボールバルブに搭載した状態を示す部分断面図である。
図5】(a)DCモータのコンミテータの表面に酸化被膜が形成された状況を示す模式図である。(b)DCモータのコンミテータの表面に形成された酸化被膜が、揺動回転によるブラシとの摩擦により除去された状況を示す模式図である。
図6】自己アイドリング機能と自己診断機能の動作を説明するフローチャートである。
図7】電気二重層コンデンサの充放電特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明に係るバルブ用電動アクチュエータの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0039】
図1は、本発明に係るバルブ用電動アクチュエータの構成を示すブロック線図であり、同図において、1はバルブ用電動アクチュエータ、2はこのバルブ用電動アクチュエータによって制御されるバルブを示す。
【0040】
図1において、バルブ用電動アクチュエータ1は、操作部3と、電源供給部4と、二次電源部5と、制御部6と、モータ駆動回路7と、直流モータ(DCモータ)8と、ギア列9と、出力軸10と、位置検出器11と、警報部12とを備えている。
【0041】
操作部3は、バルブ用電動アクチュエータ1の作動を外部から操作するために使用し、操作目的により動作モード切替操作機能、強制作動入力機能、リセット機能の各機能を適宜選択して操作することができる。
【0042】
操作部3は、動作モード切替機能により、バルブ用電動アクチュエータ1を搭載したバルブ2を緊急遮断弁として使用するか若しくは緊急解放弁として使用するかの選択を行うことができる。本機能により、バルブ用電動アクチュエータ1を搭載したバルブ2をその使用箇所に応じ、緊急遮断弁若しくは緊急解放弁として簡単に使い分けることができる。
【0043】
操作部3は、強制作動入力機能により、手動に操作により若しくは感震器からの信号等を入力することにより、制御部6の制御に優越させてバルブ用電動アクチュエータ1を作動させることができる。本機能により、停電発生時以外の緊急時、例えば、地震発生時や配管の損傷事故発生時等にも外部からの強制入力によりバルブ用電動アクチュエータ1を緊急用電動アクチュエータとして作動させることができる。
【0044】
また、操作部3は、リセット機能により、バルブ用電動アクチュエータ1を搭載したバルブ2が緊急遮断弁若しくは緊急解放弁として作動した後に、緊急作動したバルブ用電動アクチュエータ1の作動状況を動作モード切替操作機能で設定した通常時の作動状態へ復帰させることができる。本機能により、緊急作動したバルブ2を面倒な手動操作をすることなく通常の作動状態に自動的に復帰させることができる。
【0045】
電源供給部4は、バルブ用電動アクチュエータ1に作動用の電力を供給するため、交流/直流変換回路を備えており、外部交流電源13を直流に変換して二次電源部5及び制御部6に供給する。
【0046】
二次電源部5は、外部交流電源13の停電時、又は後述する自己アイドリング機能の実行時に制御部6に電力を供給するため、二次電池充電回路及び複数個を直列に接続した電気二重層コンデンサ14を備えている。二次電池充電回路は、電源供給部4から供給された直流電力を定電圧・定電流で電気二重層コンデンサ14に供給して充電する。
【0047】
電気二重層コンデンサ14は、図4に示すように、複数個の電気二重層コンデンサ14aを直列に接続して形成しているため、出力電圧を高くすることができる。このため、昇圧回路を経ることなくそのままDCモータ8に接続して駆動させることができるので、二次電源部5の構造を簡単にすることができるだけでなく、製造コストを低減させることができる。
【0048】
制御部6は、操作部3での操作に基づき、バルブ用電動アクチュエータ1の作動を制御する部位であり、その制御に必要な電源供給部出力監視機能、電源切替機能、バルブ開閉制御機能、2次充電制御機能、自己アイドリング機能、自己診断機能を有している。
【0049】
制御部6は、電源供給部監視機能により電源供給部4の出力電圧を常時監視し、その出力電圧が低下した場合には外部交流電源13に停電が発生したものと判断するとともに、電源切替機能により制御部6に対する電源供給源を電源供給部4から2次電源部5に切り替え、バルブ開閉制御機能により予め操作部3で設定した動作モードに従ってバルブ用電動アクチュエータ1を作動させ、バルブ2を全開状態又は全閉状態にする。これらの機能により、外部交流電源13の供給が停止されるような緊急時においても、確実にバルブ用電動アクチュエータ1の制御及び作動を継続することができ、確実にバルブ2を全閉状態又は全開状態にすることができる。
【0050】
また、制御部6は、二次充電制御機能により、DCモータ8作動後に電源供給部4から電力を供給させて電気二重層コンデンサ14を充電するとともにその充電状況を監視するが、電気二重層コンデンサ14の充電電圧が既定の電圧に達するまでの間は、操作部3により入力された動作モードの選択又は強制作動入力の受付を禁止する。本機能により、電気二重層コンデンサ14の充電時間を外部からの影響を受けることなく正確に計測することができ、電気二重層コンデンサ14の劣化状況を正しく把握することができる。
【0051】
さらに制御部6は、自己アイドリング機能により、緊急事態の発生とは関係なく定期的、かつ自動的にDCモータ8を揺動回転させ、バルブ2の通過漏れが発生しない角度範囲内、又は最大流量を満足する角度範囲内でバルブ2の弁体を揺動させる。本機能により、DCモータ8を含むバルブ用電動アクチュエータ1の内部機構が作動するので、電気接点の酸化防止、ギア列9などの油切れを防止することができるとともに、弁体の揺動作動により弁体及びステムの固着を防止し、緊急遮断弁もしくは緊急解放弁としての機能を維持することができる。この自己アイドリング機能は、後述する二次電池によるDCモータ8の揺動運転の他、電源供給部4から供給される商用電源によるDCモータ8の揺動運転によっても実現することができる。
【0052】
以上の機能に加え、制御部6は、自己診断機能により定期的に実施されるバルブ用電動アクチュエータ1の自己アイドリング時にDCモータ8を流れる電流を計測し、電流が計測されない場合や異常な電流値が計測された場合には、DCモータ8を含むバルブ用電動アクチュエータ1の機構部又は当該アクチュエータを取付けたバルブ2に異常が発生していると診断し、警報部12に異常発生信号を伝達する。本機能により、バルブ用電動アクチュエータ1及び当該アクチュエータを搭載したバルブ2に発生した不具合を早期に把握し、所要の整備又は故障部品の交換をすることができる。
【0053】
モータ駆動回路7は、制御部6のバルブ開閉制御機能からDCモータ8の動作指令を受け、操作部3により予め設定された動作モードに従ってDCモータ8が回転するように、電源供給部4又は2次電源部5から供給される直流電力をDCモータ8に供給する。
【0054】
DCモータ8は、モータ駆回路7から直流電力の供給を受けて駆動し、モータの回転軸に直結したギア列9に動力を伝達する。
【0055】
ギア列9は、DCモータ8から伝達された動力を、回転数を減速すると共にトルク増幅させて最終段ギアに取付けられた出力軸10に伝える。出力軸10には、バルブ2のステム15が連結され、図示しない弁体を回動させてバルブ2を開閉する。
【0056】
位置検出器11は、出力軸10の回転角度を検知してバルブ2の開度を制御する機能を有しており、図示しない主リミットスイッチと同じく図示しない補助リミットスイッチとから構成されている。主リミットスイッチは、バルブ2の弁体を全開、全閉位置で停止させるためのスイッチであり、補助リミットスイッチは、バルブ2の通過漏れが発生しない範囲内又は最大流量を満足する範囲内でバルブ2の弁体を揺動させる際に、弁体の揺動角度を通過漏れが発生しない角度内又は最大流量を満足する角度内に規制するためのスイッチである。なお、補助リミットスイッチに変えて、その他のセンサを用いてもよく、或いは揺動角度を予め制御部6に入力し、この入力された角度分だけ揺動するようにしても良い。
【0057】
主リミットスイッチと補助リミットスイッチは、それぞれ開側、閉側に置かれ、出力軸10に固定した開閉4個のカム16によってそれぞれON−OFF作動する。主リミットスイッチはDCモータ8へ直流電力を供給する回路に直列に配線され、それぞれバルブ2の弁体の全開、全閉位置で作動するように調整して取付け、DCモータ8への電力を直接切断することにより、バルブ用電動アクチュエータ1の出力軸10の回転を弁体の全開、全閉位置で停止させる。補助リミットスイッチは、バルブを通常時は全閉状態である緊急解放弁として使用する場合には、全閉側にバルブ2の通過漏れが発生しない程度の弁体の揺動角度α(バルブ流路の中心線を起点に3度〜6度の角度範囲)に調整して取付け、バルブを通常時は全開状態である緊急遮断弁として使用する場合には、全開側にバルブの最大流量を満足する弁体の揺動角度(バルブ流路の中心線を起点に84度〜87度の角度範囲)に調整して取付ける。前記の揺動角度はあくまでも一例であり、弁体の揺動角度は、バルブの構造や呼び径によって各々設定する必要がある。例えば、呼び径が3/8B〜10Bのフローティング型ボールバルブでは、呼び径に対応して6度〜15度の角度範囲で設定する。
【0058】
図2は、バルブを緊急解放弁として使用するため補助リミットスイッチを全閉側に取付けた場合の模式図を示している。ステム側から見たボール弁体17の揺動角度18は、バルブ流路の中心線19を挟み、ボール弁体17の外周表面20とボールシート21の接触面22全周とが密接する範囲内に制限されており、ボール弁体17の流路24が開放されることはなく、流体のバルブ通過漏れは発生しない。なお、図中の矢印はバルブの流路方向を示す。
【0059】
また、図中、実線で示した弁体はボール弁体17の流路24がバルブ流路の中心線19と直交する位置にある全閉状態のボール弁体17を示し、一点鎖線で示した弁体はボール弁体17を図の時計方向に揺動角度+α(例えば+3度)まで揺動した全閉状態のボール弁体17を示し、二点鎖線で示した弁体はボール弁体17を図の反時計方向に揺動角度−α(例えば−3度)まで揺動した全閉状態のボール弁体17を示す。実線で示した場合、一点鎖線で示した場合、二点鎖線で示した場合のいずれ場合であっても、ボール弁体17の揺動角度は少なくともボール弁体17の外周表面20とボールシート21の接触面22全周とが密接する範囲内に制限されていればよく、本実施例においては、実線で示した場合、一点鎖線で示した場合、二点鎖線で示した場合のいずれの場合であっても、接触面22の幅xの全面にわたって、ボール弁体17の外周表面20とボールシート21の接触面22が接している。バルブの全閉状態が維持され、通過漏れが発生しない範囲であれば、ボール弁体17の外周表面20とボールシート21の接触面22との接触が幅xを下回るまで、ボール弁体17の揺動角度を大きくしてもよい。
【0060】
図3は、バルブを緊急遮断弁として使用するため補助リミットスイッチを全開側に取付けた場合の模式図を示している。ステム側から見たボール弁体17の揺動角度25は、バルブ流路の中心線19に直交する基線26(通常、閉弁時のボール弁体17の流路24の中心線と一致する。)を挟み、ボール弁体17の外周表面20とボールシート21の接触面22全周が密接する範囲内に制限されており、ボール弁体17の流路24の面積が縮小されることがなく、バルブの最大流量が維持される。なお、図中の矢印はバルブの流路方向を示す。
【0061】
また、図中、実線で示した弁体は、ボール弁体17の流路24がバルブ流路の中心線19と平行する位置にある全開状態のボール弁体17を示し、一点鎖線で示した弁体は、ボール弁体17を図の時計方向に揺動角度+α(例えば+3度)まで揺動した全開状態のボール弁体17を示し、二点鎖線で示した弁体は、ボール弁体17を図の反時計方向に揺動角度−α(例えば−3度)まで揺動した全開状態のボール弁体17を示す。実線で示した場合、一点鎖線で示した場合、二点鎖線で示した場合のいずれの場合でも、ボール弁体17の揺動角度は、少なくともボール弁体17の外周表面20とボールシート21の接触面22全周とが密接する範囲内に制限されていればよく、本実施例においては、実線で示した場合、一点鎖線で示した場合、二点鎖線で示した場合のいずれの場合でも、接触面22の幅xの全面にわたって、ボール弁体17の外周表面20とボールシート21の接触面22が接している。バルブの全開状態が維持され、バルブの最大流量を満足する範囲内であれば、ボール弁体17の外周表面20とボールシート21の接触面22との接触が幅xを下回るまで、ボール弁体17の揺動角度を大きくしてもよい。
【0062】
警報部12は、制御部6の自己診断機能により不具合の発生が診断され、異常発生し信号が伝達されてきた場合に、その不具合内容を表示する。なお、警報部12は、必ずしも独立した機能としてバルブ用電動アクチュエータ1に設ける必要はなく、例えば、制御部6に設けたインターフェース回路から制御信号を出力し、別途、外部の器材に警報を表示させるようにすることもできる。配管のバルブ類を一括して遠隔操作する場合には、インターフェース回路から制御信号を出力させ、制御室の器材に不具合内容を表示させる方が運用性に優れている。
【0063】
図4は本発明に係るバルブ用電動アクチュエータ1をボールバルブ26に搭載した状態を示す部分断面図である。本図において、操作部3、電源供給部4、二次電源部5及び制御部6等は、DCモータ8及びギア列9等を収納した筐体27とは別の筐体28に収納され、前記筐体27の側面に付設されているが、本発明に係るバルブ用電動アクチュエータの実施形態はこのような形態に限られるものではなく、操作部3、電源供給部4、二次電源部5及び制御部6等をDCモータ8及びギア列9等と一緒に同一の筐体に収納しても何ら問題ないのはもちろんである。
【0064】
次に、本発明に係るバルブ用電動アクチュエータ1をボールバルブに搭載し、緊急遮断弁又は緊急解放弁とし動作させる場合を説明する。外部交流電源13をバルブ用電動アクチュエータ1の電線管口29に接続した後、操作部3の動作モード切替機能を使用し、バルブ用電動アクチュエータ1の動作モードを緊急遮断弁とするか又は緊急解放弁とするかを選択する。
【0065】
外部交流電源13が供給されると、二次電源部5は、電源供給部のAC/DC変換回路の二次側直流電力を2次電池充電回路で定電圧、定電流にて電気二重層コンデンサ14を充電する。制御部6は、電気二重層コンデンサ14の充電電圧を監視するとともに、電気二重層コンデンサ14の充電電圧が既定の電圧に達するまでの間は、操作部3により入力された動作モードの選択又は強制作動入力の受付を禁止し、バルブ用電動アクチュエータ1の停止状態を維持する。また、制御部6は自己診断機能により電気二重層コンデンサ14の充電電圧及び充電時間の計測を行い、既定の時間内に既定の充電電圧に充電が完了しない場合には、電気二重層コンデンサ14の不具合と判断し、警報信号を発する。
【0066】
電気二重層コンデンサ14の充電が完了すると、制御部6は操作部3で設定された動作モードの信号を判読判断して、モータ駆動回路7にDCモータ8の動作指令を与える。これにより、DCモータ8は動作モードに従う方向に回転する直流電力をからモータ駆動回路7供給され、バルブ2の弁体が全開もしくは全閉となった状態で停止し、緊急遮断弁もしくは緊急解放弁としてこの状態を維持する。
【0067】
緊急遮断弁又は緊急解放弁として使用されている間に停電が発生した場合には、制御部6の内部で以下の順序で制御が行われる。電源供給部4の出力電圧を常時監視している電源供給部出力監視機能は、出力電圧が低下すると同時に外部交流電源13に停電が発生したと判断する。電源供給部出力監視機能から停電発生の信号を受信した電源切替機能は、制御部6に電力を供給する電源を電源供給部4からに二次電源部5に切替える。次に、バルブ開閉機能はモータ駆動回路7に対し、操作部3により予め設定した動作モードに従ってバルブ2を開閉動作させる方向に回転する直流電力をDCモータ8に供給するように指令し、バルブ2の弁体は設定された動作モードに従い、緊急遮断弁もしくは緊急解放弁として機能する位置に回動して停止する。
【0068】
また、地震の発生による外部の感震器からの信号入力や、配管の破損等に伴う操作員の強制入力が操作部3の強制作動入力機能により入力された場合にも、上記と同じ制御が制御部6により行われ、バルブ2の弁体は設定された動作モードに従い、緊急遮断弁もしくは緊急解放弁として機能する位置に回動して停止する。
【0069】
外部交流電源13の停電が復旧した場合は、自動的に二次電源部5の電気二重層コンデンサ14に充電が開始されるので、電気二重層コンデンサ14の充電が完了した後に操作部3からリセット信号を入力することで通常の動作モードに復帰させることができる。
【0070】
緊急遮断弁及び緊急解放弁は正に緊急時に作動させるものであり、通常状態では作動することはなく、例えバルブの定期点検時に作動点検を行ったとしても、作動するのは1年に1回程度がせいぜいである。緊急遮断弁及び緊急解放弁を長期間作動させないでおくと、図5(a)に示すように、アチュエータ側ではDCモータ8のコンミテータ30の表面31に酸化被膜32が生成することによる接触不良、モータの軸受及びギア列の油切れが発生することが 、バルブ側では弁のステムの固着、接液しているボールとボールシート間へのスラッジ堆積によるステムトルクの上昇等の現象が発生することが考えられる。このため、緊急時に作動不良により全開状態又は全閉状態にすることができないおそれがあるが、緊急遮断弁又は緊急解放弁は、その使用目的から緊急時に確実に作動しなければならず、作動しない場合には周囲に大きな被害が発生するおそれもある。
【0071】
本発明に係るバルブ用電動アクチュエータでは、緊急時に確実に緊急遮断弁又は緊急解放弁として作動させるため、制御部6に自己アイドリング機能と自己診断機能を備え、緊急遮断弁又は緊急解放弁としての信頼性を維持、回復できるようにしている。制御部6は、自己アイドリング機能により、内蔵した停止カウントタイマにより一定期間内(例えば過去1ヶ月内)に1度もバルブの開閉動作が行なわれていないと判定した場合に、バルブの通過漏れが発生しない範囲内又は最大流量を満足する範囲内の角度で弁体を揺動させる。また、制御部6は、自己診断機能により、自己アイドリング実施時にDCモータの電機子を流れる電流値、電気二重層コンデンサの充電状況を計測し、その計測結果に基づき不具合の有無を判断して、不具合が発見された場合には所要の警告を発する。
【0072】
以下、図6を参照してバルブ用電動アクチュエータ1の自己アイドリング機能と自己診断機能の作動を説明する。先ず操作員が操作部3から動作モード切替操作機能又はリセット機能により入力することにより、制御部6の停止カウントタイマのリセットが行なわれる(ステップS01)。
【0073】
停止カウントタイマのリセットが行なわれた後、停止カウントタイマにより使用時間の計測が行なわれ(ステップS02)、一定の期間、例えば一ヶ月停止と判断されると(ステップS03)、制御部6の電源切替機能により制御部6への電源の供給源を電源供給部4から2次電源部5に切替え、電気二重層コンデンサ14をDCモータ8に接続し(ステップS04)、制御部6はDCモータ8を揺動運転する(ステップS05)。
【0074】
DCモータ8の揺動運転において弁体が揺動する角度はわずかであるが、ギア列9の減速比は大きいため、DCモータ8は十分に回転する。本実施例のバルブ用電動アクチュエータ1では、ギア列9の減速比を1348:1としており、出力軸10を3度分回転させるに必要なDCモータ8の回転回数は11.2回となる。このため、出力軸10を3度程度微動動作させる分だけDCモータ8を揺動回転させたとしても、DCモータ8のブラシ33とコンミテータ30の表面31は十分に擦り合わされ、その時の摩擦によってコンミテータ30の表面31がクリーニングされるので、図5(b)に示すように、酸化被膜が除去され、ブラシ33とコンミテータ30間の電気的接触を良好に保つことができる。同時に、DCモータ8の軸受部全体にもこの揺動回転により十分に潤滑油が供給される。
【0075】
また、同時にボール弁体34もバルブ用電動アクチュエータ1の出力軸10と同じ角度だけ揺動するので、この揺動によりステムの固着を回避できるとともに、ボール弁体35とジスクシート間に堆積したスラッジを除去することができ、バルブ側で固着が発生することを防止できる。
【0076】
この自己アイドリングにおいては、この他のバルブ用電動アクチュエータ1のギア列9も揺動回転し、主・副リミットスイッチも作動するので、ギア列9の潤滑状況及び主・福リミットスイッチの接点の酸化状況を改善し、バルブ用電動アクチュエータ1の作動不良を防止する効果がある。
【0077】
また、DCモータ8の揺動運転を行う際に、制御部6は電流検出器でDCモータ8の電機子を流れる電流を計測し(ステップS06)、電流が流れていない場合には、DCモータ8のコンミテータ30の表面31に酸化被膜32が生じたことによる接触不良と判断してモータ駆動回路7によりDCモータ8への電力の供給を停止し、モータ接触不良の警報を発する(ステップS07)。
【0078】
また、異常な値の電流値を計測した場合には(ステップS08)、DCモータ8の軸受、ギア列9の軸受の固着、ギアのグリス切れ、バルブステムの固着、ボールの固着、噛み込み等が予測されるため、機構部異常の警報を発する(ステップS09)。
【0079】
このDCモータ8の揺動運転時に制御部6は、図7に示すDCモータ8の揺動運転前後における電気二重層コンデンサ14の揺動運転電圧変化ΔV1sを読み取り、ΔV1sが予め設定した電圧変化幅を超えた場合には電気二重層コンデンサ14の劣化と判定し(ステップS10)、電気二重層コンデンサの寿命警報を発する(ステップS11)。
【0080】
DCモータ8の揺動運転をした後、制御部6は、DCモータ8への通電を禁止した状態で、電源供給部4から二次電源充電回路を介して電気二重層コンデンサ14を定電流で直流電力を供給し、電気二重層コンデンサ14を充電する(ステップS12)。制御部6は、図7に示す、充電時に受電電圧幅ΔVc(充電完了電圧−充電開始電圧)、及びその充電に要した充電時間tcを計測し、その傾き「ΔVc/tc」が予め設定した値を逸脱した場合には電気二重層コンデンサ14の劣化と判定し(ステップS13)、電気二重層コンデンサ14の寿命警報を発する(ステップS14)。
【0081】
以上説明したように、本発明に係るバルブ用電動アクチュエータを搭載したバルブを緊急遮断弁又は緊急解放弁として使用すると、定期的かつ自動的に自己アイドリング機能によりDCモータの揺動運転を実施し、DCモータのコンミテータ表面及びリミットスイッチ接点部のクリーニング、アクチュエータのギア列、軸受等の作動機構部の油切れの防止、ステムの固着回避、弁体とジスクとの間に堆積したスラッジの除去を行うとともに、その揺動運転と同時に自己診断機能によりバルブ用アクチュエータ内のDCモータ、ギア列、リミットスイッチ等、並びに電気二重層コンデンサの不具合発生状況を診断し、不具合が発生していた場合には警報が発せられるので、速やかに不具合部の整備、修理又は交換を行なうことにより、緊急遮断弁又は緊急解放弁としてのメンテナンスの信頼性を高めることができるので、その利用価値は非常に大きいものがある。
【0082】
本発明は、ボールバルブの他、バタフライバルブにも適用することができる。バタフライバルブは、弁開度と流路との関係を示す流量特性グラフ(図示せず)において、開度0〜8%の範囲内では流量が0%であり、開度90〜100%の範囲内では流量が100%近くに飽和するバルブである。従って、上述の範囲でバタフライバルブの円板状のジスクの揺動範囲を設定することで、ボールバルブと同様に、本発明に係るバルブ用電動アクチュエータを搭載したバルブの緊急遮断弁もしくは緊急解放弁としての信頼性を高めることができる。
【符号の説明】
【0083】
1 バルブ用電動アクチュエータ
2 バルブ
3 操作部
4 電源供給部
5 2次電源部
6 制御部
7 モータ駆動回路
8 DCモータ
11 位置検出器
14 電気二重層コンデンサ
30 コンミテータ
32 酸化被膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7