特許第6121143号(P6121143)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6121143
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/01 20060101AFI20170417BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20170417BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20170417BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20170417BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20170417BHJP
   B60C 11/117 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   B60C11/01 B
   B60C11/03 100A
   B60C11/00 H
   B60C11/12 D
   B60C11/13 B
   B60C11/117
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-250358(P2012-250358)
(22)【出願日】2012年11月14日
(65)【公開番号】特開2014-97725(P2014-97725A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2015年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慶一
【審査官】 松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−001312(JP,A)
【文献】 特開平10−226207(JP,A)
【文献】 特開2009−051400(JP,A)
【文献】 特開平06−032115(JP,A)
【文献】 特開2009−090752(JP,A)
【文献】 特開2007−210534(JP,A)
【文献】 米国特許第3749145(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00
B60C 11/01
B60C 11/03
B60C 11/117
B60C 11/12
B60C 11/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドに設けられ、タイヤ周方向に延びる複数の周方向溝と、
タイヤ軸方向最外側の前記周方向溝のタイヤ軸方向外側に形成されたショルダー陸部と、
タイヤ軸方向最外側の前記周方向溝からタイヤ周方向に対して斜めに延びて前記ショルダー陸部内で終端する第1ショルダーサイプと、
前記トレッドの接地端からタイヤ周方向に対して斜めに延びて前記ショルダー陸部内で終端する第2ショルダーサイプと、
前記ショルダー陸部に設けられ、前記ショルダー陸部の表面に開口し、前記第1ショルダーサイプの延びる方向と同じ方向に並べられた複数の孔と、
を有し、
タイヤ赤道面側の前記孔は、タイヤ周方向で見て、前記第1ショルダーサイプの前記ショルダー陸部内で終端する端部と重なり、
前記接地端側の前記孔は、タイヤ周方向で見て、前記第2ショルダーサイプの前記ショルダー陸部内で終端する端部と重なっている空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記ショルダー陸部は、タイヤ周方向に連続している、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ショルダー陸部の前記周方向溝側には、切り欠き部が形成され、
前記第1ショルダーサイプは、前記切り欠き部からタイヤ周方向に対して斜めに延びている、請求項1または請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
複数の前記孔は、前記第1ショルダーサイプの延びる方向と平行に一列に並べられている 、請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記孔は、タイヤ周方向に互いに隣接する前記第1ショルダーサイプとその延長線間のタイヤ周方向の中央位置に配設されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ウエット性能向上のために、トレッドのショルダー部にタイヤ周方向に対して斜めに延びるサイプをタイヤ周方向に一定間隔で設けてブロック状のショルダー陸部を形成しているタイヤがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3913045号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的なタイヤでは、ロードノイズの抑制のために、陸部に多くの斜めサイプを設けて、接地時における陸部のタイヤ径方向の圧縮剛性を低下させることがある。
しかし、斜めサイプを配置し過ぎると、陸部のタイヤ周方向に対して斜め方向の剛性が低下してしまう。特に、ショルダー陸部では、旋回時に生じる応力が大きいため、陸部のタイヤ周方向に対して斜め方向の剛性が重要になる。
【0005】
本発明は、ショルダー陸部のタイヤ径方向の圧縮剛性を低減させつつ、ショルダー陸部のタイヤ周方向に対して斜め方向の剛性を確保することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の空気入りタイヤは、トレッドに設けられ、タイヤ周方向に延びる複数の周方向溝と、タイヤ軸方向最外側の前記周方向溝のタイヤ軸方向外側に形成されたショルダー陸部と、タイヤ軸方向最外側の前記周方向溝からタイヤ周方向に対して斜めに延びて前記ショルダー陸部内で終端する第1ショルダーサイプと、前記トレッドの接地端からタイヤ周方向に対して斜めに延びて前記ショルダー陸部内で終端する第2ショルダーサイプと、前記ショルダー陸部に設けられ、前記ショルダー陸部の表面に開口し、前記第1ショルダーサイプの延びる方向と同じ方向に並べられた複数の孔と、を有し、タイヤ赤道面側の前記孔は、タイヤ周方向で見て、前記第1ショルダーサイプの前記ショルダー陸部内で終端する端部と重なり、前記接地端側の前記孔は、タイヤ周方向で見て、前記第2ショルダーサイプの前記ショルダー陸部内で終端する端部と重なっている
本発明の請求項1に記載の空気入りタイヤでは、ショルダー陸部の表面に開口する孔をショルダー陸部に複数設けていることから、ショルダー陸部のタイヤ径方向の圧縮剛性 を低減させることができる。これにより、接地時にショルダー陸部がタイヤ径方向に圧縮変形しやすくなり、例えば、ロードノイズなどが低減される。
また、上記空気入りタイヤでは、上記複数の孔をサイプの延びる方向(タイヤ周方向に対して斜め方向)と同じ方向に並べていることから、例えば、複数の孔の代わりにサイプを設けたものと比べて、ショルダー陸部のタイヤ周方向に対して斜め方向の剛性 を確保することができる。これにより、旋回時にショルダー陸部に作用する力に対して該ショルダー陸部の変形を抑制することができる。
以上のことから、請求項1に記載の空気入りタイヤによれば、ショルダー陸部のタイヤ径方向の圧縮剛性 を低減させつつ、ショルダー陸部のタイヤ周方向に対して斜め方向の剛性 を確保することができる。
【0007】
本発明の請求項2に記載の空気入りタイヤは、請求項1に記載の空気入りタイヤにおいて、前記ショルダー陸部は、タイヤ周方向に連続している。
本発明の請求項2に記載の空気入りタイヤでは、ショルダー陸部がタイヤ周方向に連続していることから、例えば、ショルダー陸部がサイプによってタイヤ周方向に分断されているものと比べて、ショルダー陸部のタイヤ周方向に対して斜め方向の剛性をさらに確保することができる。
【0008】
本発明の請求項3に記載の空気入りタイヤは、請求項1または請求項2に記載の空気入りタイヤにおいて、前記ショルダー陸部の前記周方向溝側には、切り欠き部が形成され、前記第1ショルダーサイプは、前記切り欠き部からタイヤ周方向に対して斜めに延びている。
本発明の請求項3に記載の空気入りタイヤでは、ショルダー陸部に形成された切り欠き部からサイプをタイヤ周方向に対して斜めに延ばしていることから、ウエット路面走行時にサイプで除去した路面上の水を、切り欠き部を介して周方向溝へスムーズに流すことができる。
【0009】
本発明の請求項4に記載の空気入りタイヤは、請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、複数の前記孔は、前記第1ショルダーサイプの延びる方向と平行に一列に並べられている 。
本発明の請求項4に記載の空気入りタイヤでは、複数の孔をサイプの延びる方向と平行に一列に並べていることから、ショルダー陸部のタイヤ周方向に対して斜め方向の剛性 をより確保することができる。
本発明の請求項5に記載の空気入りタイヤは、請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、前記孔は、タイヤ周方向に互いに隣接する前記第1ショルダーサイプとその延長線間のタイヤ周方向の中央位置に配設されている。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明の空気入りタイヤは、ショルダー陸部のタイヤ径方向の圧縮剛性を低減させつつ、ショルダー陸部のタイヤ周方向に対して斜め方向の剛性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態の空気入りタイヤのタイヤ径方向外側からタイヤ表面を見たトレッドパターンを示す展開図である。
図2図1の2X部を示す拡大図である。
図3図2の3Y−3Y線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤについて説明する。
【0013】
第1実施形態に係る空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」と記載する。)10は、主にライトトラックに用いられるタイヤである。なお、本発明は、ライトトラック用の空気入りタイヤに限定されるものではなく、その他の用途の空気入りタイヤに用いてもよい。例えば、乗用車用の航空機用、及び、建築車両用などの空気入りタイヤなどに用いてもよい。
【0014】
図1には、タイヤ10のトレッド12の展開図が示されている。なお、図1中の矢印Sはタイヤ10の周方向(以下、適宜「タイヤ周方向」と記載する。)を示し、矢印Wはタイヤ10の軸方向(以下、適宜「タイヤ軸方向」と記載する。)を示している。タイヤ軸方向についてはタイヤ幅方向と読み替えてもよい。
また、符号CLはタイヤ10のタイヤ軸方向の中心を通りタイヤ軸方向に直角な面である赤道面(以下、適宜「タイヤ赤道面」と記載する。)を示している。
なお、本実施形態では、タイヤ軸方向に沿ってタイヤ10の赤道面CLに近い側を「タイヤ軸方向内側」、タイヤ軸方向に沿ってタイヤ10の赤道面CLから遠い側を「タイヤ軸方向外側」と記載する。
【0015】
また、図1中の符号12Eは、トレッド12の接地端を示している。なお、ここでいう「接地端」とは、タイヤ10をJATMA YEAR BOOK(日本自動車タイヤ協会規格、2012年度版)に規定されている標準リムに装着し、JATMA YEAR BOOKでの適用サイズ・プライレーティングにおける最大負荷能力(内圧−負荷能力対応表の太字荷重)に対応する空気圧(最大空気圧)の100%の内圧を充填し、最大負荷能力を負荷したときの接地面のタイヤ幅方向外側端を指している。また、タイヤ10の使用地又は製造地においては、JATMA規格に代わりTRA規格またはETRTO規格が適用される。
【0016】
本実施形態のタイヤ10は、内部構造として従来公知の空気入りタイヤの内部構造と同様のものを用いることができる。このため、タイヤ10の内部構造に関しては、説明を省略する。
【0017】
図1に示すように、タイヤ10の路面との接地部位を構成するトレッド12には、タイヤ赤道面CL上にタイヤ周方向に沿って略ジグザグ状に延びるセンター周方向溝14が形成されている。なお、本発明は、上記構成に限定されず、センター周方向溝14は、直線状に延びる構成であってもよい。
【0018】
また、トレッド12には、センター周方向溝14を挟んで両側にタイヤ周方向に沿って直線状に延びる一対のショルダー周方向溝16が形成されている。また、本実施形態では、ショルダー周方向溝16の溝幅が一定とされている。なお、ショルダー周方向溝16は、本発明のタイヤ軸方向最外側の周方向溝の一例である。
トレッド12には、センター周方向溝14からショルダー周方向溝16に向かって延び、途中でタイヤ周方向に折れ曲がるセンターラグ溝18が、タイヤ周方向に一定間隔で複数形成されている。
このセンターラグ溝18は、センター周方向溝14からタイヤ周方向に対して斜めに延びる横溝部18Aと、横溝部18Aの端部からタイヤ周方向に延びる縦溝部18Bとで構成されている。
【0019】
また、トレッド12には、縦溝部18Bの端部(センターラグ溝18の端部)とショルダー周方向溝16とを接続する第1センターサイプ20が設けられている。この第1センターサイプ20は、縦溝部18Bの端部からタイヤ周方向に延び、途中でショルダー周方向溝16に向かって折れ曲がっている。なお、本実施形態では、第1センターサイプ20の折れ曲がり部分20Aと横溝部18Aとがタイヤ周方向に対して逆向きに傾斜している。この構成により、例えば、走行時に折れ曲がり部分20Aのエッジと横溝部18Aのエッジとで生じるエッジ効果が互いに打ち消し合うため、車両の片側流れを抑制することができる。
【0020】
なお、ここでいう「サイプ」は、接地時に壁面同士が接触して閉じる程度の溝幅に設定された細溝を指している。また、サイプ以外の溝は、接地時に壁面同士が接触しない溝幅に設定されている。
【0021】
前述したセンター周方向溝14、ショルダー周方向溝16、センターラグ溝18、及び第1センターサイプ20によってトレッド12のセンター部には、ブロック状陸部22がタイヤ周方向に複数形成されている。なお、タイヤ周方向に並べられた複数のブロック状陸部22により、センター陸部が構成されている。
【0022】
ブロック状陸部22には、タイヤ周方向に隣接する横溝部18A間にセンター周方向溝14からショルダー周方向溝16に向かってタイヤ周方向に対して斜めに延びる第2センターサイプ24が形成されている。この第2センターサイプ24の端部は、ブロック状陸部22内で終端している。また、本実施形態の第2センターサイプ24の延びる方向は、横溝部18Aの延びる方向と同じ方向(本実施形態では、平行)とされている。
【0023】
また、ブロック状陸部22には、横溝部18Aの端部からショルダー周方向溝16に向かってタイヤ周方向に対して斜めに延びる第3センターサイプ26が形成されている。この第3センターサイプ26の端部は、ブロック状陸部22内で終端している。また、本実施形態の第3センターサイプ26の延びる方向は、横溝部18Aの延びる方向と同じ方向(本実施形態では、平行)とされている。
上記第2センターサイプ24及び第3センターサイプ26の各々の開口縁部(エッジ)により、ウエット路面上の水膜を除去できるため、ウエット路面走行時における走行性能(主に制動性能)が向上する。
【0024】
そして、ブロック状陸部22には、タイヤ周方向に隣接する第1センターサイプ20間にショルダー周方向溝16からセンター周方向溝14に向かってタイヤ軸方向に沿って直線状に延びる第4センターサイプ28がタイヤ周方向に間隔をあけて1つまたは複数(本実施形態では、3つ)形成されている。この第4センターサイプ28は、ブロック状陸部22内で終端している。
【0025】
上記第4センターサイプ28により、ブロック状陸部22のショルダー周方向溝16側の縁部22Aの剛性が低下するため、ブロック状陸部22にリバーウエアなどの偏摩耗が生じるのを抑制することができる。
【0026】
図1に示すように、トレッド12のショルダー部には、リブ状陸部30が形成されている。具体的には、リブ状陸部30は、ショルダー周方向溝16のタイヤ軸方向外側に形成されている。なお、リブ状陸部30は、本発明のショルダー陸部の一例である。
本実施形態では、ショルダー周方向溝16を含んでタイヤ軸方向内側をトレッド12のセンター部、このセンター部のタイヤ軸方向外側をショルダー部としている。
【0027】
リブ状陸部30には、後述する第1ショルダーサイプ32、第2ショルダーサイプ34、第3ショルダーサイプ36、第4ショルダーサイプ38及び小孔40のみが設けられている。なお、本発明はこの構成に限定されず、上記以外のパターン要素(例えば、サイプや溝など)がリブ状陸部30に設けられていてもよい。
【0028】
また、本実施形態のリブ状陸部30は、切り欠き部31、第1ショルダーサイプ32、第2ショルダーサイプ34、第3ショルダーサイプ36、及び第4ショルダーサイプ38によってタイヤ周方向に分断されずに、タイヤ周方向に連続している。言い換えると、リブ状陸部30は、タイヤ周方向に地続きになっている。
切り欠き部31は、リブ状陸部30のショルダー周方向溝16側の側壁をタイヤ軸方向外側に切り欠いて形成された部位であり、本実施形態では、上記側壁を略三角形状に切り欠いて形成された部位である。
【0029】
第1ショルダーサイプ32は、タイヤ周方向に対して斜めに延びてリブ状陸部30内で終端している。この第1ショルダーサイプ32は、タイヤ周方向に一定間隔で複数形成されている。本実施形態では、第1ショルダーサイプ32は、切り欠き部31の先端部からタイヤ周方向に対して斜めに延びている。また、本実施形態では、第1ショルダーサイプ32の延びる方向は、第3センターサイプ26の延びる方向と同じ方向(本実施形態では、平行)とされている。なお、本実施形態の第1ショルダーサイプ32は、本発明のサイプの一例である。
【0030】
第2ショルダーサイプ34は、接地端12Eからタイヤ周方向に対して斜めに延びてリブ状陸部30内で終端している。また、第2ショルダーサイプ34は、タイヤ周方向に第1ショルダーサイプ32と同じ間隔で形成されている。なお、本実施形態では、第1ショルダーサイプ32の延長線EL上に第2ショルダーサイプ34が配置されている。
【0031】
第3ショルダーサイプ36は、リブ状陸部30のタイヤ周方向に隣接する第1ショルダーサイプ32間にタイヤ周方向に間隔をあけて1つまたは複数(本実施形態では、3つ)形成され、ショルダー周方向溝16からタイヤ軸方向外側に向かってタイヤ軸方向に延びている。また、第3ショルダーサイプ36は、リブ状陸部30内で終端している。
上記第3ショルダーサイプ36により、リブ状陸部30のショルダー周方向溝16側の縁部30Bの剛性が低下するため、リブ状陸部30にリバーウエアなどの偏摩耗が生じるのを抑制することができる。
【0032】
第4ショルダーサイプ38は、リブ状陸部30のタイヤ周方向に隣接する第2ショルダーサイプ34間にタイヤ周方向に間隔をあけて1つまたは複数(本実施形態では、3つ)形成され、接地端12Eからショルダー周方向溝16に向かってタイヤ軸方向に延びている。また、第4ショルダーサイプ38は、リブ状陸部30内で終端している。
また、第4ショルダーサイプ38により、リブ状陸部30の接地端12E側の縁部30Bの剛性が低下するため、リブ状陸部30にリバーウエアなどの偏摩耗が生じるのを抑制することができる。
【0033】
図2及び図3に示すように、小孔40は、リブ状陸部30の表面30Aに開口し、タイヤ径方向(図3の矢印K方向)に直線状に延びている。なお、本実施形態では、リブ状陸部30の表面30Aと直交する方向は、タイヤ径方向と同じ方向となっている。これにより、小孔40の軸心PLが表面30Aと直交する。また、本実施形態の小孔40は、断面が円形状の丸孔であるが、本発明はこの構成に限定されず、例えば、断面が楕円形状の孔であっても、断面が角部を丸めた多角形状の孔であってもよい。
【0034】
また、複数の小孔40は、リブ状陸部30に第1ショルダーサイプ32の延びる方向と同じ方向に並べられている。具体的には、複数(本実施形態では2つ)の小孔40は、第1ショルダーサイプ32の延びる方向と平行に一列に並べられている。なお、本実施形態では、2つの小孔40の軸心PLが第1ショルダーサイプ32の延びる方向と平行に延びる直線SL上に一列に並べられている。
なお、本実施形態では、複数の小孔40の軸心PLを直線SL上に一列に並べる構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、複数の小孔40が直線SL上に重なり、一列に並べばよい。
また、本実施形態では、複数の小孔40を第1ショルダーサイプ32の延びる方向と平行に並べているが、本発明はこの構成に限定されず、複数の小孔40を第1ショルダーサイプ32の延びる方向と同じ方向に並べればよく、例えば、第1ショルダーサイプ32の延びる方向に対して±3度程度傾斜する直線(SL)上に並べてもよい。
【0035】
本実施形態では、複数の小孔40は、タイヤ周方向に互いに隣接する第1ショルダーサイプ32とその延長線EL間のタイヤ周方向の中央位置に配設されている。言い換えれば、タイヤ周方向の一方の第1ショルダーサイプ32とその延長線ELから複数の小孔40の軸心PLを通る直線SLまでのタイヤ周方向に沿った長さと、タイヤ周方向の他方の第1ショルダーサイプ32とその延長線ELから上記直線SLまでのタイヤ周方向に沿った長さが同じ長さとされている。なお、本発明は上記構成に限定されない。
【0036】
また、複数の小孔40のうち、タイヤ赤道面CL側の小孔40は、タイヤ周方向で見て、第1ショルダーサイプ32のリブ状陸部30内で終端する端部32Aと重なっている。言い換えると、タイヤ赤道面CL側の小孔40は、第1ショルダーサイプ32の端部32Aからタイヤ周方向に沿って延ばした直線XL1上に配設されている。一方、複数の小孔40のうち、接地端12E側の小孔40は、タイヤ周方向で見て、第2ショルダーサイプ34のリブ状陸部30内で終端する端部32Aと重なっている。言い換えると、接地端12E側の小孔40は、第2ショルダーサイプ34の端部34Aからタイヤ周方向に沿って延ばした直線XL2上に配設されている。なお、本発明は上記構成に限定されない。
【0037】
小孔40の開口径Rは、ショルダー周方向溝16の溝幅よりも狭く設定することが好ましい。
本実施形態では、小孔40の深さが第1ショルダーサイプ32よりも深くなっている。なお、本発明はこの構成に限定されず、小孔40の深さを第1ショルダーサイプ32と同じまたは浅くしてもよい。
【0038】
また、本実施形態では、図3に示すように、直線SLに沿った断面で見て、小孔40は、タイヤ径方向(本実施形態では、表面30Aと直交する方向)に沿って直線状に延びているが、本発明はこの構成に限定されず、例えば、直線SLに沿った断面で見て、小孔40は、タイヤ径方向(本実施形態では、表面30Aと直交する方向)に対して斜めに延びていてもよく、該直交する方向に対して折れ曲がりながら(例えば、ジグザグ状、波状に折れ曲がりながら)延びていてもよく、湾曲しながら延びていてもよい。
なお、図1に示すように、タイヤ10のトレッドパターンは、タイヤ赤道面CL上の任意の点に対して点対称となっている。
【0039】
次に、タイヤ10の作用効果について説明する。
タイヤ10では、ショルダー部のリブ状陸部30に第1ショルダーサイプ32及び第2ショルダーサイプ34を設けていることから、第1ショルダーサイプ32及び第2ショルダーサイプ34の各々の開口縁部(エッジ)により、ウエット路面上の水膜を除去することができるため、ウエット路面走行時における走行性能(主に制動性能)を確保することができる。
【0040】
また、タイヤ10では、リブ状陸部30の表面30Aに開口する小孔40をリブ状陸部30に複数設けていることから、リブ状陸部30のタイヤ径方向の圧縮剛性を低減させることができる。これにより、接地時にリブ状陸部30がタイヤ径方向に圧縮変形しやすくなり、走行時のリブ状陸部30の路面凹凸からの強制入力を吸収することができ、車軸へ伝達される振動が抑制され、車室内に伝達されるロードノイズが低減される。
【0041】
そして、上記複数の小孔40を第1ショルダーサイプ32の延びる方向と(タイヤ周方向に対して斜め方向)と同じ方向に並べていることから、リブ状陸部30のタイヤ周方向に対して斜め方向の剛性を確保することができる。これにより、旋回時にリブ状陸部30に作用する力(図2で示す合力F)に対して該リブ状陸部30の変形を抑制することができる。結果、旋回時に作用する力が大きいショルダー部のリブ状陸部30の変形が抑制されるため、旋回操縦安定性を確保することができる。
なお、図2に示すように、合力Fは、旋回時にリブ状陸部30に作用するタイヤ周方向の力F1と、旋回時にリブ状陸部30に作用するタイヤ軸方向の力F2との合力である。
以上のことから、タイヤ10によれば、ウエット性能及び旋回操縦安定性を確保しつつ、ロードノイズを低減することができる。
【0042】
さらに、タイヤ10では、複数の小孔40を第1ショルダーサイプ32の延びる方向と平行に一列に並べていることから、リブ状陸部30のタイヤ周方向に対して斜め方向の剛性をより確保することができる。これにより、旋回操縦安定性能を効果的に確保することができる。
また、複数の小孔40を第1ショルダーサイプ32の延びる方向と平行に一列に並べることで、摩耗進展時の外観変化を小さくすることができる
【0043】
さらに、タイヤ10では、リブ状陸部30がタイヤ周方向に連続していることから、例えば、リブ状陸部30がサイプによってタイヤ周方向に分断されているものと比べて、旋回時の入力に対するリブ状陸部30の剛性をさらに確保することができる。
【0044】
またさらに、リブ状陸部30に形成された切り欠き部31から第1ショルダーサイプ32をタイヤ周方向に対して斜めに延ばしていることから、ウエット路面走行時に第1ショルダーサイプ32で除去した路面上の水を、切り欠き部31を介してショルダー周方向溝16へスムーズに流すことができる。また、切り欠き部31の周方向エッジによって、エッジ効果を得ることもできる。
【0045】
また、小孔40を丸穴としていることから、リブ状陸部30に生じる応力が小孔40の一部に集中するのを抑制することができる。
【0046】
また、リブ状陸部30をタイヤ周方向に互いに隣接する第1ショルダーサイプ32とその延長線ELで区切った一つのブロック状陸部を想定した場合に、タイヤ10では、複数の小孔40をタイヤ周方向に互いに隣接する第1ショルダーサイプ32とその延長線EL間のタイヤ周方向の中央位置に配設していることから、複数の小孔40の軸心PLを通る直線SLを挟んでタイヤ周方向の一方側の半ブロック状陸部と、他方側の半ブロック状陸部の大きさが同じ大きさになり、一つの上記ブロック状陸部において、タイヤ周方向の剛性段差を低減することができる。この結果、リブ状陸部30に偏摩耗が発生するのを抑制することができ、かつ、ロードノイズの悪化を抑制することができる。
【0047】
タイヤ10では、複数の小孔40のうちタイヤ赤道面CL側の小孔40を第1ショルダーサイプ32の端部32Aから延びる直線XL1上に配設し、接地端12E側の小孔40を第2ショルダーサイプ34の端部34Aから延びる直線XL2上に配設していることから、第1ショルダーサイプ32と第2ショルダーサイプ34との間の間隔を一定の大きさ確保することができる。このため、第1ショルダーサイプ32や第2ショルダーサイプ34を延ばし過ぎることで各サイプのエッジに生じやすくなる偏摩耗(H&T偏摩耗)の発生を抑制することができる。これにより、ショルダー部のリブ状陸部30の剛性低下を抑制することができる。
【0048】
第1実施形態では、リブ状陸部30をタイヤ周方向に連続させる構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、リブ状陸部30を例えば、第1ショルダーサイプ32でタイヤ周方向に分断してもよい。
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0049】
10・・タイヤ(空気入りタイヤ)、 12・・トレッド、 16・・ショルダー周方向溝(タイヤ軸方向最外側の周方向溝)、 30・・ショルダー陸部、 30A・・表面、 32・・第1ショルダーサイプ(サイプ)、 40・・小孔(孔)、 CL・・タイヤ赤道面、 W・・タイヤ軸方向、 S・・タイヤ周方向。
図1
図2
図3