特許第6121146号(P6121146)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 現代自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6121146-ピストンリング装着構造 図000002
  • 特許6121146-ピストンリング装着構造 図000003
  • 特許6121146-ピストンリング装着構造 図000004
  • 特許6121146-ピストンリング装着構造 図000005
  • 特許6121146-ピストンリング装着構造 図000006
  • 特許6121146-ピストンリング装着構造 図000007
  • 特許6121146-ピストンリング装着構造 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6121146
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】ピストンリング装着構造
(51)【国際特許分類】
   F16J 9/24 20060101AFI20170417BHJP
   F02F 5/00 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   F16J9/24
   F02F5/00 H
   F02F5/00 K
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-256484(P2012-256484)
(22)【出願日】2012年11月22日
(65)【公開番号】特開2014-85009(P2014-85009A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年6月18日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0118110
(32)【優先日】2012年10月23日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ムン、フィ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジン、テ
(72)【発明者】
【氏名】シン、ヨン、ホ
【審査官】 竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭46−084882(JP,U)
【文献】 特開昭59−187171(JP,A)
【文献】 特開2003−294331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 9/24
F02F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンヘッド(12)の円周方向に沿ってリング溝(14)が形成され、前記リング溝(14)の外周面にその円周方向に沿って一定区間にわたってガイド溝(16)が形成されたピストン(10);及び
前記リング溝(14)に回転可能に嵌め合わせられ、両端部の間にエンドギャップ(18a)が設けられ、両端部の内周面にガイド突起(20)がそれぞれ形成され、前記ガイド突起(20)が前記ガイド溝(16)の区間内で回転するとともに前記ガイド溝(16)の両端部の段差部によって前記ガイド突起(20)の回転が制限されるように構成されたピストンリング(18);を含んでなり、
前記ピストンリング(18)を前記ピストンヘッド(12)に複数装着するとき、あるピストンリング(18)に形成されたエンドギャップ(18a)の回転区間が残りのピストンリング(18)に形成されたエンドギャップ(18a)の回転区間と重ならないように構成される、前記エンドギャップ(18a)が互いに一致することを防止するピストンリングの装着構造。
【請求項2】
前記ピストンリング(18)を前記ピストンヘッド(12)に複数装着するとき、あるリング溝(14)に形成されたガイド溝(16)の形成区間が残りのリング溝(14)に形成されたガイド溝(16)の形成区間と重ならないように形成されることを特徴とする、請求項1に記載のピストンリングの装着構造。
【請求項3】
前記ピストンリング(18)を前記ピストンヘッド(12)に複数装着するとき、それぞれのリング溝(14)に形成されたガイド溝(16)の形成区間が前記ピストンヘッド(12)の円周方向に沿って均等に分割されていることを特徴とする、請求項1に記載のピストンリングの装着構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はピストンリングを装着する構造に係り、より詳しくは複数のピストンリングに形成されたエンドギャップ部分がピストンヘッドの円周方向に沿って相異なる区間で回転するようにすることで、エンドギャップが互いに一致することを防止してブローバイガスを低減するようにしたピストンリング装着構造に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関において、エンジンのサイクル行程の際、シリンダー壁とピストンの間の隙間を通じて微量の混合気が漏れることになる。この現象をブローバイ現象といい、その混合気をブローバイガスという。
【0003】
このようなブローバイ現象はたいていの車両で現れ、このようなブローバイ現象を最小化することができるように、ピストンリングとエンジンオイルが密封の機能を担当することになる。
【0004】
図1は従来技術によるピストンリングの装着構造を示すものである。
【0005】
図1を参照すれば、前記ピストンヘッド1に多数のリング溝1aが円周方向に沿って形成され、前記リング溝1aにピストンリング2がそれぞれ嵌め合わせられる。この際、前記ピストンリング2は一部が切除されることで、エンドギャップ2aが形成される。そして、エンジンの駆動状態で、前記ピストンリング2は前記リング溝1a内で360°回転自在になっている。
【0006】
しかし、このような回転動作のうち、それぞれのピストンリングに形成されたエンドギャップが互いに一致する場合、ブローバイガス量が大きく増大して、ターボファウリング及び後処理性能低下が発生する問題がある。
【0007】
したがって、前記の問題点を解決するために、リング溝にストッパーを設けてピストンリングの回転を防ぐ技術が提案されたことがあるが、ピストンリングが回転することができないから、ピストンの局所的偏磨耗現象及びピストンリングの固着現象につながって、ピストンのスカッフィング現象が発生する問題があった。
【0008】
このような発明の背景となる技術として説明した事項は本発明の背景についての理解のためのものであるだけ、この技術分野で通常の知識を持った者にもう知られた従来技術に属することを認めるものとして受け入れられてはいけない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は前述したような従来の問題点を解決するためになされたもので、複数のピストンリングに形成されたエンドギャップ部分がピストンヘッドの円周方向に沿って相異なる区間で回転するようにすることで、エンドギャップが互いに一致することを防止してブローバイガスを低減するようにしたピストンリング装着構造を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記のような目的を達成するために、本発明は、ピストンヘッドの円周方向に沿ってリング溝が形成され、前記リング溝の外周面にその円周方向に沿って一定区間にわたってガイド溝が形成されたピストン;及び前記リング溝に回転可能に嵌め合わせられ、両端部の間にエンドギャップが設けられ、内周面にガイド突起が形成され、前記ガイド突起が前記ガイド溝の区間内で回転するように構成されたピストンリング;を含んでなり、前記ピストンリングを前記ピストンヘッドに複数装着するとき、あるピストンリングに形成されたエンドギャップの回転区間が残りのピストンリングに形成されたエンドギャップの回転区間と重ならないように構成されるピストンリングの装着構造を提供する。
【0011】
前記ガイド突起は、前記ピストンリングの端部に形成されることができる。
【0012】
前記ガイド突起は、前記ピストンリングの両端部にそれぞれ形成されることができる。
【0013】
前記ピストンリングを前記ピストンヘッドに複数装着するとき、あるリング溝に形成されたガイド溝の形成区間が残りのリング溝に形成されたガイド溝の形成区間と重ならないように形成されることができる。
【0014】
前記ピストンリングを前記ピストンヘッドに複数装着するとき、それぞれのリング溝に形成されたガイド溝の形成区間が前記ピストンヘッドの円周方向に沿って均等に分割されることができる。
【発明の効果】
【0015】
前記のような課題解決手段により、本発明は、前記ガイド突起がガイド溝の区間内に備えられ、前記ガイド突起がエンドギャップに隣接して形成されることにより、それぞれのピストンリングに形成されたエンドギャップが該当のピストンリングが回転する区間内では他のエンドギャップの回転区間と重ならなくなり、ピストンリングが回転することによってエンドギャップが互いに一致することを防止して、ブローバイガスが増加することを低減する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】従来技術によるピストンヘッドにピストンリングが嵌め合わせられた状態及びエンドギャップが互いに一致した状態を示す図である。
図2】本発明によるピストンヘッドにピストンリングが嵌め合わせられた状態を示す正面図である。
図3】本発明によってピストンヘッドにピストンリングが嵌め合わせられた状態の平断面図である。
図4図3に示すピストンヘッドとピストンリングの組立前状態の形状を分離して示す図である。
図5図5(a)及び(b)は、本発明によるピストンリングの装着数によるガイド溝の形成構造を説明する図である。
図6図2に示すピストンヘッドに二つのピストンリングが装着された場合のA−A線についての断面及びB−B線についての断面を示す図である。
図7図2に示すピストンヘッドに三つのピストンリングが装着された場合のA−A線についての断面、B−B線についての断面、C−C線についての断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好適な実施例を添付図面に基づいて詳細に説明すれば次のようである。
【0018】
図2図7に示す本発明のピストンリング装着構造は、大別してピストン10とピストンリング18を含んでなる。
【0019】
具体的に、ピストンヘッド12の円周方向に沿ってリング溝14が形成され、前記リング溝14の外周面にその円周方向に沿って一定区間にわたってガイド溝16が形成されたピストン10と、前記リング溝14に回転可能に嵌め合わせられ、内周面にガイド突起20が設けられ、前記ガイド突起20が前記ガイド溝16の区間内で回転するように構成されたピストンリング18とを含んでなる。
【0020】
ここで、前記ピストンリング18を前記ピストンヘッド12に複数装着するとき、あるピストンリング18に形成されたエンドギャップ18aの回転区間が残りのピストンリング18に形成されたエンドギャップ18aの回転区間と重ならないように構成される。
【0021】
図2は本発明によるピストンヘッド12にピストンリング18が嵌め合わせられた状態を示す正面図、図3は本発明によってピストンヘッド12にピストンリング18が嵌め合わせられた状態の平断面図、図4図3に示すピストンヘッド12とピストンリング18の組立前状態の形状を分離して示す図である。
【0022】
図2図4を参照すれば、前記ピストン10は上端に円柱状のピストンヘッド12が形成され、前記ピストンヘッド12にはその円周方向に沿って少なくとも二つ以上のリング溝14が形成される。そして、前記リング溝14の内側にはその外周面に前記リング溝14の円周方向に沿って一定区間にわたってガイド溝16が切削形成される。
【0023】
この際、前記ガイド溝16が形成された一定区間は前記リング溝14の円周方向への一定の角度範囲に分割され、前記ピストンリング18の設置個数によってガイド溝16の角度範囲が変わることができる。
【0024】
前記ピストンリング18は前記リング溝14に嵌め合わせられるもので、内周面の一部に、前記リング溝14に向かってガイド突起20が突設される。前記ガイド突起20は前記ガイド溝16の区間内に位置し、前記ガイド溝16の区間範囲内でだけ前記ガイド突起20が動けるようになっている。
【0025】
すなわち、前記ピストンリング18がリング溝14内で回転するとき、ガイド突起20が前記ピストンリング18と一緒に回転する。この際、前記ガイド突起20がガイド溝16の区間内に備えられることにより、前記ガイド溝16の両端部の段差部にガイド突起20がかかる。これにより、前記ガイド突起20の回転が制限されるとともに、前記ピストンリング18の回転もやはり制限される。
【0026】
特に、それぞれのピストンリング18に形成されたエンドギャップ18aは他のピストンリング18に形成された残りのエンドギャップ18aとは異なる回転区間内で回転するようにエンドギャップ18aが形成される。
【0027】
したがって、それぞれのピストンリング18に形成されたエンドギャップ18aが該当のピストンリング18が回転する区間内では残りのエンドギャップ18aの回転区間と重ならなくなることにより、エンジンの駆動中に前記エンドギャップ18aが互いに一致することを防止して、ブローバイガスの増加を防止することになる。
【0028】
前記ガイド突起20は前記ピストンリング18の端部に形成できる。すなわち、前記エンドギャップ18aが設けられたピストンリング18の一端部または他端部にガイド突起20を突設できる。
【0029】
好ましくは、図3及び図4に示すように、前記エンドギャップ18aが設けられるピストンリング18の両端部にガイド突起20がそれぞれ形成される。
【0030】
すなわち、前記ガイド突起20と隣接してエンドギャップ18aが設けられることで、それぞれのガイド突起20が回転する区間を互いに異なるようにする構造により、エンドギャップ18aが互いに一致することを自然に防止することができる。
【0031】
図5の(a)及び(b)は本発明によるピストンリング18の装着数によるガイド溝16の形成構造を説明する図、図6図2に示すピストンヘッド12に二つのピストンリング18が装着された場合のA−A線についての断面及びB−B線についての断面を示す図、図7図2に示すピストンヘッド12に三つのピストンリング18が装着された場合のA−A線についての断面、B−B線についての断面、C−C線についての断面を示す図である。
【0032】
図5図7を参照すれば、前記ガイド溝16が前記ピストンヘッド12に複数形成されるとき、前記ガイド溝16の形成区間が前記ピストンヘッド12の円周上で互いに重ならないように形成されることができる。
【0033】
好ましくは、前記ガイド溝16が前記ピストンヘッド12に複数形成されるとき、前記ガイド溝16の形成区間が前記ピストンヘッド12の円周方向に沿って均等に分割されて形成できる。
【0034】
すなわち、図5の(a)及び図6に示すように、二つのピストンリング18が装着される場合、ガイド溝16の形成区間がリング溝14の円周方向においておよそ180°の角度区間に分割されて形成されることができる。この際、前記ガイド溝16は、まんがいちエンドギャップ18aが互いに一致することを防止するために、180°よりちょっと小さな角度に形成可能であろう。
【0035】
また、図5の(b)及び図7に示すように、三つのピストンリング18が装着される場合、ガイド溝16の形成区間がリング溝14の円周方向においておよそ120゜の角度区間に分割されて形成されることができる。この際、前記ガイド溝16は、まんがいちエンドギャップ18aが互いに一致することを防止するために、120°よりちょっと小さな角度に形成可能であろう。
【0036】
このように、本発明は前記ガイド突起20がガイド溝16の区間内に備えられ、前記ガイド突起20がエンドギャップ18aに隣接して形成されることにより、それぞれのピストンリング18に形成されたエンドギャップ18aが該当のピストンリング18の回転区間内では残りのエンドギャップ18aの回転区間と重ならなくなる。よって、エンジンの駆動中にピストンリング18の回転によってエンドギャップ18aが互いに一致することを防止して、ブローバイガスが増加することを防止することになる。
【0037】
一方、本発明は前記具体例に基づいて詳細に説明したが、本発明の技術思想範囲内で多様な変形及び修正が可能であることは当業者に明らかであり、このような変形及び修正が添付の特許請求の範囲に属するのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、複数のピストンリングに形成されたエンドギャップ部分がピストンヘッドの円周方向に沿って相異なる区間で回転するようにすることで、エンドギャップが互いに一致することを防止してブローバイガスを低減するピストンリング装着構造に適用可能である。
【符号の説明】
【0039】
10 ピストン
12 ピストンヘッド
14 リング溝
16 ガイド溝
18 ピストンリング
18a エンドギャップ
20 ガイド突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7