(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6121152
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】タービン翼及びタービン
(51)【国際特許分類】
F01D 5/16 20060101AFI20170417BHJP
F01D 9/02 20060101ALI20170417BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
F01D5/16
F01D9/02 104
F02C7/00 C
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-268750(P2012-268750)
(22)【出願日】2012年12月7日
(65)【公開番号】特開2014-114734(P2014-114734A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】山下 洋行
(72)【発明者】
【氏名】森 一石
(72)【発明者】
【氏名】大山 宏治
【審査官】
米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−40119(JP,A)
【文献】
実開昭63−24301(JP,U)
【文献】
特開平7−91206(JP,A)
【文献】
特開2005−256786(JP,A)
【文献】
特開2009−68338(JP,A)
【文献】
特開平6−346703(JP,A)
【文献】
特開平8−284607(JP,A)
【文献】
特開2010−151044(JP,A)
【文献】
特開平8−61004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/16
F01D 9/02
F02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体が流動する空間に配置される複数の翼体と、
該翼体の端部を支持するシュラウドと、
隣接する前記シュラウド間を連結して円環状に形成したダンパー機構と、
を備え、
該ダンパー機構は、隣接する前記シュラウド間の相対運動に対して粘弾性を有し、前記粘弾性の性質によって前記シュラウド間の相対運動を抑制することを特徴とするタービン翼。
【請求項2】
前記翼体は、先端部が前記シュラウドに支持される静翼体であり、
前記ダンパー機構は、隣接する前記静翼体を支持する前記シュラウド間を内周方向に連結して円環状に形成したことを特徴とする請求項1に記載のタービン翼。
【請求項3】
前記翼体は、先端部が前記シュラウドに支持される動翼体であり、
前記ダンパー機構は、隣接する前記動翼体を支持する前記シュラウド間を外周方向に連結して円環状に形成したことを特徴とする請求項1に記載のタービン翼。
【請求項4】
前記ダンパー機構は、隣接する前記シュラウド間を、弾性を有するバネ部、及び粘性を有するダッシュポット部によって連結する機構であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のタービン翼。
【請求項5】
前記ダンパー機構は、隣接する前記シュラウド間の対向面のうち、一方の前記対向面から該対向面を有する前記シュラウドの内部に向かって形成された凹部に設置されたゴム部材である減衰部と、他方の前記対向面から一方の前記対向面に向かって延設された連結部と、を有し、
該連結部の延出部分は、前記減衰部内に埋設されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のタービン翼。
【請求項6】
前記ダンパー機構は、隣接する前記シュラウド間の対向面のうち、一方の前記対向面から該対向面を有する前記シュラウドの内部に向かって形成された凹部に設置された金属繊維の編み上げ構造体である減衰部と、他方の前記対向面から一方の前記対向面に向かって延設された連結部と、を有し、
該連結部の延出部分は、前記減衰部内に埋設されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のタービン翼。
【請求項7】
タービン車室と、
該タービン車室内に、複数配設された請求項1〜6のいずれか一項に記載のタービン翼と、
該タービン翼の中心に配置されたロータと、
を備え、
前記タービン翼に前記作動流体が流動することによって前記ロータが回転することを特徴とするタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動流体の圧力による振動を減衰させるタービン翼及びタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なタービン(例えば、ガスタービン)は、圧縮機と、燃焼器と、タービン部とを備えている。タービン部は、車室内に回転軸であるロータが回転自在に支持され、このロータの外周部に動翼が設置されると共に、車室の内壁に静翼が設置され、ガス通路に静翼と動翼とが交互に複数配設されて構成されている。圧縮機は、空気取込口から取り込まれた空気を圧縮して高温高圧の圧縮空気とし、燃焼器は、この圧縮空気に対して燃料を混合して燃焼させ、作動流体である高温高圧の燃焼ガスを発生させる。タービン部は、この燃焼ガスによって動翼及びロータが回転駆動され、ロータに連結された発電機等を駆動させる。
【0003】
ところで、複数の静翼及び動翼を供えたタービン部においては、各静翼の両端部が車室に固定された円環状に配列された内側シュラウド及び外側シュラウドによってそれぞれ支持されており、各静翼には、ガスタービンの運転時に微小振動が発生する。例えば、ガスタービンの運転時に、作動流体の流動方向の上流側に位置する動翼間から流出する作動流体が、その動翼の下流側に位置する静翼に対して外力として作用し、静翼を振動させる。特に、外力の周波数と静翼の固有振動数とが一致した場合、静翼は共振状態となる。ここで、複数の静翼の内側シュラウドが独立して連結されている場合、上記の振動によって、連結部に相対変位が発生し、この相対変位による摩擦抵抗によって振動は若干減衰するものの、長期的に連結部の磨耗が進行するという問題がある。
【0004】
また、昨今のタービンのタービン翼は、高効率化及び低コスト化を実現するため、薄肉化及び高アスペクト比化が進んでいる。このため、タービン翼の振動に対する強度の信頼性を向上させるために、タービン翼の振動を減衰させる振動減衰機構の採用が行われている。
【0005】
このような静翼の振動減衰機構を備えたガスタービンとして、例えば、特許文献1には、圧縮機において、流体通路に配置された静翼と、静翼の内周端をディスクに支持する内周シュラウド及びシール部材と、圧縮状態で配置されたメッシュワイヤとを備えたガスタービンが記載されている。メッシュワイヤは、内周シュラウドとシール部材との間に形成された緩衝体収容室に圧縮状態で配置されている金属繊維部材であり、内周シュラウド及びシール部材に接触するメッシュワイヤの接触箇所がこれらに対して摺動する。この摺動によって、静翼の振動エネルギーが摺動の滑り摩擦による摩擦エネルギーに変換され、振動が減衰される。
【0006】
また、静翼の振動減衰機構を備えたガスタービンとして、例えば、特許文献2には、静翼体の端部に配置されたシュラウド部と、シュラウド部との間に空間を形成する端部筐体と、空間に配置され、シュラウド部と端部筐体とを離間させる方向に付勢する弾性部材と、を備えたガスタービンが記載されている。そして、弾性部材であるバネは、シュラウド部と摺動することによって、静翼(静翼体及びシュラウド部を含む)の振動エネルギーが摺動の滑り摩擦による摩擦エネルギーに変換され、振動が減衰される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−68338号公報
【特許文献2】特開2010−151044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されたガスタービンにおいて、内周シュラウド及びシール部材に接触するメッシュワイヤの接触箇所のこれらに対する摺動によって、静翼の固有振動数が変化するという問題がある。また、静翼の固有振動数が変化すると、静翼の固有振動数を正確に予測し、静翼に作用すると予想される励振周波数からずらす、すなわち、離調させる設計が困難になるという問題がある。また、特許文献2に記載されたガスタービンにおいても、同様の問題がある。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、タービンの稼働中に、タービン翼の振動を減衰させつつ、タービン翼の固有振動数の変化を抑制するタービン翼及びタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための本発明に係るタービン翼は、作動流体が流動する空間に配置される複数の翼体と、該翼体の端部を支持するシュラウドと、隣接する前記シュラウド間を連結して円環状に形成したダンパー機構と、を備え、該ダンパー機構は、隣接する前記シュラウド間の相対運動に対して粘弾性を有し
、前記粘弾性の性質によって前記シュラウド間の相対運動を抑制することを特徴とするものである。このうち、前記翼体は、先端部が前記シュラウドに支持される静翼体であり、前記ダンパー機構は、隣接する前記静翼体を支持する前記シュラウド間を内周方向に連結して円環状に形成するものとしてもよい。また、前記翼体は、先端部が前記シュラウドに支持される動翼体であり、前記ダンパー機構は、隣接する前記動翼体を支持する前記シュラウド間を外周方向に連結して円環状に形成するものとしてもよい。
【0011】
これによって、隣接する2つのシュラウドをダンパー機構によって連結した構造とすることによって、ダンパー機構の粘弾性の性質により、タービン翼に発生する振動を減衰させることができ、タービン翼の耐久性を向上させることができる。また、隣接する2つのシュラウドの間にダンパー機構を設けることによって、シュラウド間の距離の変化に対する剛性が小さいので、タービン翼の固有振動数の変化を抑制することができる。したがって、タービン翼の固有振動数の予測が容易となり、タービン翼に作用すると予想される励振周波数からずらす離調設計が可能となる。
【0012】
また、本発明に係るタービン翼は、前記ダンパー機構が、隣接する前記シュラウド間を、弾性を有するバネ部、及び粘性を有するダッシュポット部によって連結する機構であることを特徴としている。
【0013】
これによって、ダンパー機構は、隣接するシュラウド間の相対運動に対して粘弾性を具備し、ガスタービンの運転中に発生するタービン翼の振動、すなわち、隣接するシュラウド間に発生する微小運動を減衰させることができる。
【0014】
また、本発明に係るタービン翼は、前記ダンパー機構が、隣接する前記シュラウド間の対向面のうち、一方の前記対向面から該対向面を有する前記シュラウドの内部に向かって形成された凹部に設置されたゴム部材である減衰部と、他方の前記対向面から一方の前記対向面に向かって延設された連結部と、を有し、該連結部の延出部分は、前記減衰部内に埋設されたことを特徴としている。
【0015】
このように、減衰部はゴム部材であることによりシュラウドへの設置が容易であり、簡易にダンパー機構を構成することができる。
【0016】
また、本発明に係るタービン翼は、前記ダンパー機構が、隣接する前記シュラウド間の対向面のうち、一方の前記対向面から該対向面を有する前記シュラウドの内部に向かって形成された凹部に設置された金属繊維の編み上げ構造体である減衰部と、他方の前記対向面から一方の前記対向面に向かって延設された連結部と、を有し、該連結部の延出部分は、前記減衰部内に埋設されたことを特徴としている。また、前記金属繊維は、インコネル(登録商標)によって形成されることが望ましい。
【0017】
このように、金属繊維をインコネル(登録商標)によって形成することによって、高温高圧である作動流体に対して、耐高温性を確保することができる。
【0018】
また、本発明に係るタービンは、タービン車室と、該タービン車室内に、複数配設された上記のいずれか1つのタービン翼と、該タービン翼の中心に配置されたロータと、を備え、前記タービン翼に作動流体が流動することによって前記ロータが回転することを特徴とするものである。
【0019】
これによって、隣接する2つのシュラウドをダンパー機構によって連結した構造とすることによって、ダンパー機構の粘弾性の性質により、タービン翼に発生する振動を減衰させることができ、タービン翼の耐久性を向上させたタービンを得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るタービン翼によれば、タービンの稼働中に、タービン翼の振動を減衰させつつ、タービン翼の固有振動数の変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るガスタービンの概略構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態1の静翼を示す概略図である。
【
図3】
図3は、実施形態1の静翼のダンパー機構の例を示す概略図である。
【
図4】
図4は、実施形態1のダンパー機構の等価構造図である。
【
図5】
図5は、実施形態2の静翼のダンパー機構の例を示す概略図である。
【
図6】
図6は、実施形態3の静翼のダンパー機構の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[実施形態1]
(ガスタービン1の概略構成及び動作)
図1は、実施形態1に係るガスタービンの概略構成図である。
図1を参照しながら、実施形態1のガスタービン1の構造の概略について説明する。
【0023】
実施形態1に係るガスタービン1は、
図1に示すように、圧縮機11と、燃焼器12と、タービン部13と、排気室14とを備えている。また、圧縮機11、燃焼器12及びタービン部13の中心部には、ロータ19が貫通して配置されている。このロータ19の排気室14側の端部には、発電機(図示せず)が連結されている。
【0024】
圧縮機11は、外部の空気を空気取込口15から取り込み、圧縮して高温高圧の圧縮空気を生成する機構である。
【0025】
燃焼器12は、圧縮機11によって生成された圧縮空気に対して燃料を供給し、点火及び燃焼させて燃焼ガスを生成する装置である。
【0026】
タービン部13は、燃焼器12で生成された燃焼ガスによってロータ19に回転動力を発生させる機構である。このタービン部13は、タービン車室16と、タービン車室16内に設けられた複数のタービン静翼17及びタービン動翼18とを備えている。タービン静翼17は、タービン車室16の内壁面に周方向に沿って、固定されている。タービン動翼18は、ロータ19に形成された円盤状のディスクの外周に周方向に沿って固定されている。複数のタービン静翼17及びタービン動翼18は、ロータ19の軸方向に沿って、複数段に亘って交互に配設されている。
【0027】
排気室14は、タービン部13内のタービン静翼17及びタービン動翼18が配設され、作動流体である燃焼ガスが通過する作動流体通路に連通し、作動流体通路を通過した燃焼ガスを外部に排出する。
【0028】
圧縮機11の空気取込口15から取り込まれた空気は、圧縮機11によって圧縮され、高温高圧の圧縮空気が生成される。燃焼器12は、この圧縮空気に対して燃料を供給し、点火及び燃焼させて高温高圧の燃焼ガスを生成する。この作動流体である燃焼ガスが、タービン部13内のタービン静翼17及びタービン動翼18が配置された作動流体通路を通過することによって、タービン動翼18及びロータ19が回転駆動し、ロータ19に連結された発電機が駆動する。作動流体通路を通過した燃焼ガスは、排気室14から外部に排出される。
【0029】
(タービン静翼17の構造)
図2は、実施形態1の静翼を示す概略図である。
図2を参照しながら、タービン静翼17の構造について説明する。
【0030】
タービン静翼17は、
図2に示すように、静翼体21のロータ19の径方向の内側部分である先端部が内側シュラウド22に支持され、ロータ19の径方向の外側部分である基端部が外側シュラウド23に支持されて構成されている。これらの複数の内側シュラウド22は、互いに連結し、円環状の内側シュラウド環24を形成する。また、複数の外側シュラウド23は、互いに連結し、円環状の外側シュラウド環25を形成し、外側シュラウド環25は、タービン部13の内壁面に固定される。
【0031】
このように構成されたタービン静翼17は、ガスタービン1の運転時に、タービン部13内における作動流体の流動方向の上流側に位置するタービン動翼18から流出する作動流体による外力を受けて振動する。そこで、実施形態1に係るガスタービン1のタービン静翼17には、その振動を減衰させる振動減衰機構が備えられている。
【0032】
(ダンパー機構31による振動減衰作用)
図3は、実施形態1の静翼のダンパー機構の例を示す概略図であり、
図4は、実施形態1のダンパー機構の等価構造図である。
図3及び
図4を参照しながら、タービン静翼17のダンパー機構31について説明する。
【0033】
図3に示すように、タービン静翼17の内側シュラウド環24の周方向に隣接する一対の内側シュラウド22のうち、紙面視左側の内側シュラウド22を内側シュラウド22aとし、紙面視右側の内側シュラウド22を内側シュラウド22bとする。また、内側シュラウド22aに支持された静翼体21を静翼体21aとし、内側シュラウド22bに支持された静翼体21を静翼体21bとする。また、内側シュラウド22a、22bにおいて、互いに対向する面をそれぞれ内側シュラウド対向面34a、34bとする。内側シュラウド対向面34aから内側シュラウド22aの内部に向かって形成された凹部には減衰部33が設置されている。また、内側シュラウド22a、22bを連結するための突起部である連結部32が、内側シュラウド対向面34bから内側シュラウド対向面34aに向かって延設されており、連結部32の延出部分は、内側シュラウド22aの減衰部33内に収納されている。少なくとも連結部32及び減衰部33によって、タービン静翼17において発生する振動を減衰する振動減衰機構であるダンパー機構31が構成されると共に、内側シュラウド22a、22bが互いに連結される。このように、内側シュラウド環24を構成する全ての内側シュラウド22において、隣接する内側シュラウド22との間にダンパー機構31を設置する。
【0034】
図4は、
図3に示すダンパー機構31の機能を説明するためのダンパー機構31の等価構造図を示す。ダンパー機構31は、等価的に、内側シュラウド22a、22bが、弾性を示すバネ部41、及び粘性を示すダッシュポット部42によって並列に連結される構造で表される。ダッシュポット部42の具体的な構成としては、減衰部33の内部に、オイルが満たされたシリンダ内において貫通穴が形成されたピストンバルブが移動する周知の構造が内蔵された構成が考えられる。このように構成されたダンパー機構31は、内側シュラウド22a、22bが離間する方向に外力が働くと、時間経過に伴い内側シュラウド22a、22b間の距離が大きくなり、外力がなくなると時間経過に伴い元の状態(バネ部41の伸びがない状態)に戻る。すなわち、ダンパー機構31は、内側シュラウド22a、22bの相対運動に対して粘弾性の性質を示す。このように、粘弾性の性質を有するダンパー機構31は、ガスタービン1の運転中に発生するタービン静翼17の振動、すなわち、内側シュラウド22a、22b間に発生する微小運動を減衰させることができる。なお、ダンパー機構31は、等価的に、内側シュラウド22a、22bが、バネ部41及びダッシュポット部42によって並列に連結される構造としたが、これに限定されるものではない。すなわち、ダンパー機構31は、等価的に、内側シュラウド22a、22bが、バネ部41とダッシュポット部42との直列構造によって連結される構造であってもよい。
【0035】
以上のように、隣接する2つの内側シュラウド22をダンパー機構31によって連結した構造とすることによって、ダンパー機構31の粘弾性の性質により、タービン静翼17に発生する振動を減衰させることができ、タービン静翼17の耐久性を向上させることができる。また、隣接する2つの内側シュラウド22の間にダンパー機構31を設けることによって、内側シュラウド22間の距離の変化に対する剛性が小さいので、タービン静翼17の固有振動数の変化を抑制することができる。したがって、タービン静翼17の固有振動数の予測が容易となり、タービン静翼17に作用すると予想される励振周波数からずらす離調設計が可能となる。
【0036】
なお、
図3に示すように、減衰部33は、内側シュラウド22aに形成された凹部に設置され、連結部32は、内側シュラウド22bの内側シュラウド対向面34bから延設される構造としたが、これに限定されるものではない。すなわち、連結部32及び減衰部33によって構成されるダンパー機構31をユニット化し、内側シュラウド22a、22bそれぞれに凹部を形成して、その凹部にユニット化したダンパー機構31を嵌め込んで固定する構造としてもよい。これによって、複数の内側シュラウド22を互いに連結して、内側シュラウド環24を形成する際の作業効率を向上させることができる。
【0037】
また、
図3に示すように、タービン静翼17の隣接する2つの内側シュラウド22の間にダンパー機構31が設けられる構造としたが、これに限定されるものではない。すなわち、タービン静翼17の内側シュラウド22と同様に、タービン動翼18の動翼体の先端部を支持する外周シュラウドが互いに連結して円環状に形成された外周シュラウド環において、隣接する外周シュラウドとの間にダンパー機構31を適用してもよい。これによって、タービン静翼17に発生する振動と同様に、タービン動翼18に発生する振動についても、前述と同様の効果を得ることができる。
【0038】
また、振動減衰機構であるダンパー機構31を備えたタービン静翼17は、ガスタービンに備えられるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、蒸気タービンその他の回転機械に備えられるタービン翼についても、ダンパー機構31を適用することができる。
【0039】
[実施形態2]
実施形態2のタービン翼の振動減衰構造について、実施形態1のタービン翼の振動減衰構造と相違する点を中心に説明する。なお、実施形態2のガスタービンの概略構成及び動作は、実施形態1のガスタービンの概略構成及び動作と同様である。
【0040】
(ダンパー機構31aによる振動減衰作用)
図5は、実施形態2の静翼のダンパー機構の例を示す概略図である。
図5を参照しながら、タービン静翼17のダンパー機構31aについて説明する。
【0041】
図5に示すように、内側シュラウド対向面34aから内側シュラウド22aの内部に向かって形成された凹部には減衰部33aが設置されている。この減衰部33aは、粘弾性及び制振性を有するゴム部材である。また、内側シュラウド22a、22bを連結するための突起部である連結部32aが、内側シュラウド対向面34bから内側シュラウド対向面34aに向かって延設されており、連結部32aの延出部分は、内側シュラウド22aの減衰部33a内に埋設されている。この連結部32a及び減衰部33aによって、タービン静翼17において発生する振動を減衰する振動減衰機構であるダンパー機構31aが構成されると共に、内側シュラウド22a、22bが互いに連結される。このように、内側シュラウド環24を構成する全ての内側シュラウド22において、隣接する内側シュラウド22との間にダンパー機構31aを設置する。
【0042】
ダンパー機構31aは、連結部32aの延出部分がゴム部材である減衰部33a内を摺動することによって、実施形態1のダンパー機構31と同様に、等価的に、内側シュラウド22a、22bが、弾性を示すバネ部41、及び粘性を示すダッシュポット部42によって並列に連結される構造で表される。したがって、ダンパー機構31aは粘弾性を有し、ガスタービン1の運転中に発生するタービン静翼17の振動、すなわち、内側シュラウド22a、22b間に発生する微小振動を減衰させることができる。
【0043】
以上のように、隣接する2つの内側シュラウド22をゴム部材である減衰部33aを備えたダンパー機構31aによって連結した構造とすることによって、実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0044】
また、減衰部33aはゴム部材であることにより内側シュラウド22への設置が容易であり、簡易にダンパー機構31aを構成することができる。
【0045】
[実施形態3]
実施形態3のタービン翼の振動減衰構造について、実施形態1のタービン翼の振動減衰構造と相違する点を中心に説明する。なお、実施形態3のガスタービンの概略構成及び動作は、実施形態1のガスタービンの概略構成及び動作と同様である。
【0046】
(ダンパー機構31bによる振動減衰作用)
図6は、実施形態3の静翼のダンパー機構の例を示す概略図である。
図6を参照しながら、タービン静翼17のダンパー機構31bについて説明する。
【0047】
図6に示すように、内側シュラウド対向面34aから内側シュラウド22aの内部に向かって形成された凹部には減衰部33bが設置されている。この減衰部33bは、粘弾性及び制振性を有する金属繊維(例えば、インコネル(登録商標)線)をメッシュ状に編み上げた構造体である。また、内側シュラウド22a、22bを連結するための突起部である連結部32bが、内側シュラウド対向面34bから内側シュラウド対向面34aに向かって延設されており、連結部32bの延出部分は、内側シュラウド22aの減衰部33b内に埋設されている。この連結部32b及び減衰部33bによって、タービン静翼17において発生する振動を減衰する振動減衰機構であるダンパー機構31bが構成されると共に、内側シュラウド22a、22bが互いに連結される。このように、内側シュラウド環24を構成する全ての内側シュラウド22において、隣接する内側シュラウド22との間にダンパー機構31bを設置する。
【0048】
ダンパー機構31bは、連結部32bの延出部分が減衰部33b内を摺動することによって、実施形態1のダンパー機構31と同様に、等価的に、内側シュラウド22a、22bが、弾性を示すバネ部41、及び粘性を示すダッシュポット部42によって並列に連結される構造で表される。したがって、ダンパー機構31bは粘弾性を有し、ガスタービン1の運転中に発生するタービン静翼17の振動、すなわち、内側シュラウド22a、22b間に発生する微小振動を減衰させることができる。
【0049】
以上のように、隣接する2つの内側シュラウド22を金属繊維の編み上げ構造体である減衰部33bを備えたダンパー機構31bによって連結した構造とすることによって、実施形態1と同様の効果を得ることができる。
【0050】
また、金属繊維をインコネル(登録商標)線によって形成した場合、高温高圧である燃焼ガスに対して、耐高温性を確保することができる。
【0051】
以上、実施形態1〜3について説明したが、前述した内容によって実施形態1〜3が限定されるものではない。また、前述した実施形態1〜3の構成要素には、当業者が容易に想到できるもの、実質的に同一のもの、及びいわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、実施形態1〜3の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換及び変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0052】
1 ガスタービン
11 圧縮機
12 燃焼器
13 タービン部
14 排気室
15 空気取込口
16 タービン車室
17 タービン静翼
18 タービン動翼
19 ロータ
21、21a、21b 静翼体
22、22a、22b 内側シュラウド
23 外側シュラウド
24 内側シュラウド環
25 外側シュラウド環
31、31a、31b ダンパー機構
32、32a、32b 連結部
33、33a、33b 減衰部
34a、34b 内側シュラウド対向面
41 バネ部
42 ダッシュポット部