特許第6121158号(P6121158)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6121158
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】排ガス処理装置および排ガス処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/50 20060101AFI20170417BHJP
   B01D 53/73 20060101ALI20170417BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20170417BHJP
   B01D 53/80 20060101ALI20170417BHJP
   B01D 53/81 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   B01D53/50 100
   B01D53/50 110
   B01D53/50 240
   B01D53/50 245
   B01D53/73
   B01D53/78
   B01D53/80
   B01D53/81
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-282971(P2012-282971)
(22)【出願日】2012年12月26日
(65)【公開番号】特開2014-124580(P2014-124580A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】吉元 貴志
(72)【発明者】
【氏名】香川 晴治
(72)【発明者】
【氏名】福田 俊大
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 良三
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−110109(JP,A)
【文献】 特開2011−125814(JP,A)
【文献】 特開2010−221085(JP,A)
【文献】 実開平06−064715(JP,U)
【文献】 特開平10−305210(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0162269(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/50
B01D 53/73
B01D 53/78
B01D 53/80
B01D 53/81
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼排ガス中に含まれる硫黄分を除去する排ガス処理装置であって、
燃焼排ガスが流通する煙道に処理剤を供給する処理剤供給手段であって、前記処理剤が前記煙道内において燃焼排ガス中のSOミストを吸着する作用を有する処理剤である処理剤供給手段と、
前記処理剤が供給された燃焼排ガスを冷却し、燃焼排ガス中のSO成分を凝縮させる温度降下手段と、
前記温度降下手段の排ガス後流側の煙道に設けられた電気集塵装置と、
前記電気集塵装置の排ガス後流側に設けられた石灰石膏法に基づく脱硫装置と、
前記電気集塵装置で回収された粉塵の一部を、前記温度降下手段の排ガス上流側の煙道に供給し、処理剤として循環使用させる循環手段と
を備え、
前記排ガス処理装置が、時間(t)において、以下の式(I):
D(t)=Z(t)×Y/(X+Y)×K(t)
R(SO)(t)=Z(t)−D(t)
X(SO)(t)=X−R(SO)(t)
(式中、D(t)は、前記電気集塵装置で回収された粉塵のうち廃棄される粉塵の量を表し、Z(t)は、前記電気集塵装置での粉塵の全回収量を表し、Xは、循環開始前の処理剤の供給量を表し、Yは、燃焼排ガスからのSOの除去量を表し、R(SO)(t)は、前記循環手段による粉塵の循環使用量を表し、X(SO)(t)は、処理剤の追加供給量を表し、K(t)は、廃棄補正量を表す。)
を満たすように、粉塵の廃棄量、粉塵の循環使用量、および処理剤の追加供給量を制御する制御手段をさらに備える排ガス処理装置。
【請求項2】
前記処理剤が、炭酸カルシウム、活性炭、灰、および石膏からなる群から選択される、請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項3】
燃焼排ガス中に含まれる硫黄分を除去する排ガス処理装置であって、
燃焼排ガスが流通する煙道に処理剤を供給する処理剤供給手段であって、前記処理剤が前記煙道内において燃焼排ガス中のSOミストを吸着する作用を有する処理剤である処理剤供給手段と、
前記処理剤が供給された燃焼排ガスを冷却し、燃焼排ガス中のSO成分を凝縮させる温度降下手段と、
前記温度降下手段の排ガス後流側の煙道に設けられた電気集塵装置と、
前記電気集塵装置の排ガス後流側に設けられた石灰石膏法に基づく脱硫装置と、
前記電気集塵装置で回収された粉塵の一部を、前記温度降下手段の排ガス上流側の煙道に供給し、処理剤として循環使用させる循環手段と、
前記電気集塵装置で回収された粉塵の他の一部を前記脱硫装置に供給する再使用手段とを備え、
前記排ガス処理装置が、時間(t)において、以下の式(II):
D(t)=Z(t)×Y/(X+Y)×K(t)
R(SO)(t)=F
R(SO)(t)=Z(t)−D(t)−R(SO)(t)
X(SO)(t)=R(SO)(t)×Y/(X+Y)×K(t)
X(SO)(t)=X−R(SO)(t)
(式中、D(t)は、前記電気集塵装置での回収後に廃棄される粉塵の量を表し、Z(t)は、前記電気集塵装置での全回収量を表し、Xは、循環開始前の処理剤の供給量を表し、Yは、燃焼排ガスからのSOの除去量を表し、R(SO)(t)は、前記循環手段による粉塵の循環使用量を表し、X(SO)(t)は、処理剤の追加供給量を表し、K(t)は、廃棄補正量を表し、R(SO)(t)は、前記脱硫装置への粉塵の再使用量を表し、Fは、前記脱硫装置での要求量を表し、X(SO)(t)は、前記脱硫装置への脱硫剤の追加供給量を表す。)
を満たすように、粉塵の廃棄量、粉塵の循環使用量、処理剤の追加供給量、粉塵の脱硫装置への再使用量、および脱硫剤の脱硫装置への追加供給量を制御する制御手段をさらに備える排ガスの処理装置。
【請求項4】
前記処理剤が、炭酸カルシウムまたは活性炭である、請求項3に記載の排ガス処理装置。
【請求項5】
燃焼排ガス中に含まれる硫黄分を除去する排ガス処理方法であって、
燃焼排ガスが流通する煙道に処理剤を供給する工程であって、前記処理剤が前記煙道内において燃焼排ガス中のSOミストを吸着する作用を有する処理剤である工程と、
前記処理剤が供給された前記燃焼排ガスを温度降下手段により冷却する工程と、
前記冷却後の燃焼排ガスを電気集塵装置により除塵する工程と、
除塵後の前記燃焼排ガスを石灰石膏法に基づく脱硫装置により処理する工程とを含む排ガス処理方法であって、
前記電気集塵装置で回収された粉塵の一部を前記温度降下手段の上流側の煙道内に供給し、処理剤として循環使用し、
時間(t)において、以下の式(I):
D(t)=Z(t)×Y/(X+Y)×K(t)
R(SO)(t)=Z(t)−D(t)
X(SO)(t)=X−R(SO)(t)
(式中、D(t)は、前記回収された粉塵のうち廃棄される粉塵の量を表し、Z(t)は、前記電気集塵装置での粉塵の全回収量を表し、Xは、処理剤の循環開始前の供給量を表し、Yは、燃焼排ガスからのSOの除去量を表し、R(SO)(t)は、前記粉塵の循環使用量を表し、X(SO)(t)は、処理剤の追加供給量を表し、K(t)は、廃棄補正量を表す。)
を満たすように、粉塵の廃棄量、粉塵の循環使用量、および処理剤の追加供給量を制御する排ガス処理方法。
【請求項6】
前記処理剤が、炭酸カルシウム、活性炭、灰、および石膏からなる群から選択される、請求項5記載の排ガス処理方法。
【請求項7】
燃焼排ガス中に含まれる硫黄分を除去する排ガス処理方法であって、
燃焼排ガスが流通する煙道に処理剤を供給する工程であって、前記処理剤が前記煙道内において燃焼排ガス中のSOミストを吸着する作用を有する処理剤である工程と、
前記処理剤が供給された前記燃焼排ガスを温度降下手段により冷却する工程と、
前記冷却後の燃焼排ガスを電気集塵装置により除塵する工程と、
除塵後の前記燃焼排ガスを石灰石膏法に基づく脱硫装置により処理する工程と
を含む排ガス処理方法であって、
前記電気集塵装置で回収された粉塵の一部を前記温度降下手段の上流側の煙道内に供給し、処理剤として循環使用し、前記電気集塵装置で回収された粉塵の他の一部を、前記脱硫装置内に供給して再使用し、
時間(t)において、以下の式(II):
D(t)=Z(t)×Y/(X+Y)×K(t)
R(SO)(t)=F
R(SO)(t)=Z(t)−D(t)−R(SO)(t)
X(SO)(t)=R(SO)(t)×Y/(X+Y)×K(t)
X(SO)(t)=X−R(SO)(t)
(式中、D(t)は、前記除塵工程後に廃棄される粉塵の量を表し、Z(t)は、前記粉塵の全回収量を表し、Xは、処理剤の循環開始前の供給量を表し、Yは、燃焼排ガスからのSOの除去量を表し、R(SO)(t)は、前記粉塵の循環使用量を表し、X(SO)(t)は、処理剤の追加供給量を表し、K(t)は、廃棄補正量を表し、R(SO)(t)は、前記粉塵の再使用量を表し、Fは、前記脱硫装置での要求量を表し、X(SO)(t)は、前記脱硫装置への脱硫剤の追加供給量を表す。)
を満たすように、粉塵の廃棄量、粉塵の循環使用量、処理剤の追加供給量、粉塵の脱硫装置への再使用量、および脱硫剤の脱硫装置への追加供給量を制御する燃焼排ガスの処理方法。
【請求項8】
前記処理剤が、炭酸カルシウムまたは活性炭である、請求項7に記載の燃
焼排ガスの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼排ガス中に含まれる硫黄分を除去する排ガスの処理装置および排ガスの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重油、石炭等の化石燃料には、硫黄分が含まれており、その燃料をボイラ等で燃焼させると、硫黄分は炉内で酸化し大部分は亜硫酸(SO)ガスとなるが、その一部はさらに酸化が進んで無水硫酸(SO)ガスに転化される。SOガスは、排煙系統内で冷却されると硫酸(SO)ミストとなる。SOミストは凝縮された硫酸分であり、石炭を燃料とする場合は、SOミストは大量の石炭灰に「まぶされ」るため腐食の原因となることは少ないが、油などの灰分の少ない燃料を用いる場合には、SOミストが「まぶされ」る灰分が少ないため、しばしば腐食の原因となる。特に重質油のような非常に硫黄分の高い燃料を使用する場合には、発生するSOも多いため、排煙系統に設置される集塵装置などの機器や煙道のSOによる腐食は特に深刻な問題である。
【0003】
SOミストは、気相で析出する非常に微細な粒子であり、排煙脱硫装置を設置してもほとんど捕集されずに、大部分がそのまますり抜けて煙突から紫煙として放出されてしまう。このため、排ガス中の灰分が少なく、SOの発生量が多い(Sの転換率が高い)発電設備対応の排ガス処理施設では、脱硝装置の後流に炭酸カルシウム(CaCO)を注入して吸着させ、石膏として分離除去することにより、SOによる設備の腐食を防止することが知られている(特許文献1)。
【0004】
また、排ガス温度を排ガス中のSOがSOフュームに変化する温度まで降温させ、電荷を帯電させた炭酸カルシウム等の帯電固体粒子にSOフュームを吸着させて分離除去する装置も知られている(特許文献2)。このような装置の概略図を、図3に示す。
この装置では、炭酸カルシウム供給手段22によって炭酸カルシウムが燃焼排ガス中に注入され、燃焼排ガスが温度降下手段3において冷却されると、SOは凝縮して炭酸カルシウムに吸着される。脱硫装置5では、SOと反応せずに余った炭酸カルシウムが石灰石膏法の原料として利用され、SOが石膏として分離される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−145818号公報
【特許文献2】特開2007−245074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、図3の装置では、SOと炭酸カルシウムの接触確率を高めるために、炭酸カルシウムを大量に投入する必要があり、炭酸カルシウム消費量の増大のため、運転コストが増大するという問題がある。さらに、多量の炭酸カルシウムが使用され、硫黄分に対するカルシウム分が過剰となり、脱硫装置5で生成する石膏の純度が低下するという問題もある。また、炭酸カルシウムの使用量が過剰であると、脱硫装置出口の煤塵濃度が高くなるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、一定水準以上のSO除去効率を保持しつつ、従来の装置と比較して運転コストを飛躍的に抑えることが可能な排ガス処理装置および排ガス処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は、燃焼排ガス中に含まれる硫黄分を除去する排ガス処理装置であって、燃焼排ガスが流通する煙道に処理剤を供給する処理剤供給手段と、前記処理剤が供給された燃焼排ガスを冷却し、燃焼排ガス中のSO成分を凝縮させる温度降下手段と、前記温度降下手段の排ガス後流側の煙道に設けられた電気集塵装置と、前記電気集塵装置の排ガス後流側に設けられた石灰石膏法に基づく脱硫装置と、前記電気集塵装置で回収された粉塵の一部を、前記温度降下手段の排ガス上流側の煙道に供給し、処理剤として循環使用させる循環手段とを備えている。
【0009】
本発明に係る排ガス処理装置は、その一態様において、時間(t)において、以下の式:
D(t)=Z(t)×Y/(X+Y)×K(t)
R(SO)(t)=Z(t)−D(t) 式(I)
X(SO)(t)=X−R(SO)(t)
(式中、D(t)は、前記電気集塵装置で回収された粉塵のうち廃棄される粉塵の量を表し、Z(t)は、前記電気集塵装置での粉塵の全回収量を表し、Xは、循環開始前の処理剤の供給量を表し、Yは、燃焼排ガスからのSOの除去量を表し、R(SO)(t)は、前記循環手段による粉塵の循環使用量を表し、X(SO)(t)は、処理剤の追加供給量を表し、K(t)は、廃棄補正量を表す。)
を満たすように、粉塵の廃棄量、粉塵の循環使用量、および処理剤の追加供給量を制御する制御手段をさらに備えることが好適である。
【0010】
本発明に係る排ガス処理装置は、その一態様において、前記処理用粉末が、炭酸カルシウム、活性炭、灰、および石膏からなる群から選択されることが好適である。
【0011】
本発明に係る排ガス処理装置は、別の態様において、前記電気集塵装置で回収された粉塵の他の一部を前記脱硫装置に供給する再使用手段をさらに備えることが好適である。
【0012】
本発明に係る排ガス処理装置は、その一態様において、時間(t)において、以下の式:
D(t)=Z(t)×Y/(X+Y)×K(t)
R(SO)(t)=F
R(SO)(t)=Z(t)−D(t)−R(SO)(t) 式(II)
X(SO)(t)=R(SO)(t)×Y/(X+Y)×K(t)
X(SO)(t)=X−R(SO)(t)
(式中、D(t)は、前記電気集塵装置での回収後に廃棄される粉塵の量を表し、Z(t)は、前記電気集塵装置での全回収量を表し、Xは、循環開始前の処理剤の供給量を表し、Yは、燃焼排ガスからのSOの除去量を表し、R(SO)(t)は、前記循環手段による粉塵の循環使用量を表し、X(SO)(t)は、処理剤の追加供給量を表し、K(t)は、廃棄補正量を表し、R(SO)(t)は、前記脱硫装置への粉塵の再使用量を表し、Fは、前記脱硫装置での要求量を表し、X(SO)(t)は、前記脱硫装置への脱硫剤の追加供給量を表す。)
を満たすように、粉塵の廃棄量、粉塵の循環使用量、処理剤の追加供給量、粉塵の脱硫装置への再使用量、および脱硫剤の脱硫装置への追加供給量を制御する制御手段をさらに備えることが好適である。
【0013】
本発明に係る排ガス処理装置は、その一態様において、前記処理用粉末が、炭酸カルシウムまたは活性炭であることが好適である。
【0014】
本発明は、別の側面において、燃焼排ガス中に含まれる硫黄分を除去する排ガス処理方法であって、燃焼排ガスが流通する煙道に処理剤を供給する工程と、前記処理剤が供給された前記燃焼排ガスを温度降下手段により冷却する工程と、前記冷却後の燃焼排ガスを電気集塵装置により除塵する工程と、除塵後の前記燃焼排ガスを石灰石膏法に基づく脱硫装置により処理する工程とを含む排ガス処理方法であって、前記電気集塵装置で回収された粉塵の一部を前記温度降下手段の上流側の煙道内に供給し、処理剤として循環使用する。
【0015】
本発明に係る排ガス処理方法は、その一態様において、時間(t)において、以下の式:
D(t)=Z(t)×Y/(X+Y)×K(t)
R(SO)(t)=Z(t)−D(t) 式(I)
X(SO)(t)=X−R(SO)(t)
(式中、D(t)は、前記回収された粉塵のうち廃棄される粉塵の量を表し、Z(t)は、前記電気集塵装置での粉塵の全回収量を表し、Xは、処理剤の循環開始前の供給量を表し、Yは、燃焼排ガスからのSOの除去量を表し、R(SO)(t)は、前記粉塵の循環使用量を表し、X(SO)(t)は、処理剤の追加供給量を表し、K(t)は、廃棄補正量を表す。)
を満たすように、粉塵の廃棄量、粉塵の循環使用量、および処理剤の追加供給量を制御することが好適である。
【0016】
本発明に係る排ガス処理方法は、その一態様において、前記処理用粉末が、炭酸カルシウム、活性炭、灰、および石膏からなる群から選択されることが好適である。
【0017】
本発明に係る排ガス処理方法は、別の態様において、前記回収された粉塵の他の一部を、前記脱硫装置内に供給して再使用する工程をさらに含むことが好適である。
【0018】
本発明に係る排ガス処理方法は、その一形態において、時間(t)において、以下の式:
D(t)=Z(t)×Y/(X+Y)×K(t)
R(SO)(t)=F
R(SO)(t)=Z(t)−D(t)−R(SO)(t) 式(II)
X(SO)(t)=R(SO)(t)×Y/(X+Y)×K(t)
X(SO)(t)=X−R(SO)(t)
(式中、D(t)は、前記除塵工程後に廃棄される粉塵の量を表し、Z(t)は、前記粉塵の全回収量を表し、Xは、処理剤の循環開始前の供給量を表し、Yは、燃焼排ガスからのSOの除去量を表し、R(SO)(t)は、前記粉塵の循環使用量を表し、X(SO)(t)は、処理剤の追加供給量を表し、K(t)は、廃棄補正量を表し、R(SO)(t)は、前記粉塵の再使用量を表し、Fは、前記脱硫装置での要求量を表し、X(SO)(t)は、前記脱硫装置への脱硫剤の追加供給量を表す。)
を満たすように、粉塵の廃棄量、粉塵の循環使用量、処理剤の追加供給量、粉塵の脱硫装置への再使用量、および脱硫剤の脱硫装置への追加供給量を制御することが好適である。
【0019】
本発明に係る排ガス処理方法は、その一形態において、前記処理用粉末が、炭酸カルシウムまたは活性炭であることが好適である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、一定水準以上のSO除去効率を保持しつつ、運転コストを飛躍的に抑えることが可能な排ガス処理装置および排ガス処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の排ガス処理装置の一実施形態の全体構成を示す系統図である。
図2図2は、本発明の排ガス処理装置の他の実施形態の全体構成を示す系統図である。
図3図2は、従来の排ガス処理装置を示す系統図である。
図4図3は、粉塵中のSO濃度を示す図である。
図5図4は、SO除去用炭酸カルシウムの追加供給率(追加供給量/初期供給量)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る排ガス処理装置および排ガス処理方法について、さらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0023】
図1に、本発明に係る排ガス処理装置について、その一実地形態を示す。図1に示す排ガス処理装置は、主たる構成要素として、処理剤供給手段2、温度降下手段3、電気集塵装置4、脱硫装置5、および循環ライン6を備えている。温度降下手段3、電気集塵装置4、および脱硫装置5は、この順に煙道を介して配設されている。
【0024】
本実施形態の排ガス処理装置は、ボイラ1の排ガス後流に、煙道11を介して配設された温度降下手段3を備えている。ボイラ1と温度降下手段3とを連結する煙道11には、処理剤供給手段2が連結されている。温度降下手段3の排ガス後流側の煙道11には、電気集塵装置4が配設されている。電気集塵装置4には、粉塵移送ライン12が連結されており、粉塵移送ライン12は、分配手段9を始点として、ボイラ1と温度降下手段3とを連結する煙道11に接続する循環ライン6、および残りの粉塵を廃棄するための廃棄ライン14に分岐する。電気集塵装置4の排ガス後流側には、煙道11を介して連結される脱硫装置5が設置される。脱硫装置5には、炭酸カルシウム供給手段8が管路を介して連結される。脱硫装置5の排ガス後流側には、煙道で連結される煙突13が設置される。
【0025】
ボイラ1は、排ガス処理装置の排ガス前流側に設けられ、重油、石炭等の化石燃料を燃焼させ、排ガスを排出する。ボイラ1は、重質油のような硫黄分が高く、灰分の少ない燃料を使用し、SOの発生量が多いものであることが好適である。一例として、IGCC(石炭ガス化複合発電)などのボイラが適している。ボイラ1と排ガス処理装置との間の煙道11には、脱硝装置、電気集塵装置、熱回収器などの装置が設置されていてもよい。
【0026】
処理剤供給手段2は、燃焼排ガス100が流通する煙道11に処理剤102を供給する手段である。処理剤供給手段2は、ボイラ1と温度降下手段3とを連結する煙道11に連結されている。処理剤供給手段2としては、処理剤102を貯留するタンクまたはホッパ、該処理剤タンクまたはホッパと煙道11とを連結する管路、および該処理剤タンクまたはホッパから管路を通して処理剤102を搬送する手段を備えるものなどが挙げられる。処理剤102を搬送する手段としては、気流搬送する手段としては、ブロワまたは空気圧縮機等が挙げられる。スラリ搬送する手段としては、例えば、処理剤粒子を液中に混入させてスラリとする攪拌槽と、攪拌槽で生成されたスラリを圧送するためのスラリポンプとよりなるものが挙げられる。管路出口には、煙道11内の燃焼排ガス中に処理剤102を噴射する手段、例えば複数の噴射ノズルを備える噴射グリッドなどが設けられていることが好適である。処理剤供給手段2による処理剤の供給量は、好ましくは後述する制御装置7により制御される。
【0027】
処理剤102は、好ましくは、炭酸カルシウム、活性炭、灰、および石膏からなる群から選択される固体粒子である。これらの処理剤は、煙道内において燃焼排ガス中のSOミストを吸着する作用を有する。活性炭は、SOミストの吸着に加え、有機物(例えばフミン酸等のTOC検出成分)、重金属(例えば、Hg)、HCl、HSとも結合する作用があり、これらの物質を燃焼排ガスから除去することを可能とする。処理剤は、好ましくは粉体またはスラリとして煙道11内に供給される。スラリとして供給される場合は、SOが処理剤粒子表面に吸着される作用が高くなるように、スラリを構成する液を燃焼排ガスの熱により即座に蒸発するものとすることが好ましいが、このような液としては、例えば一般的な工業用水等の水を使用することができる。
【0028】
温度降下手段3は、処理剤102が供給された燃焼排ガス100を冷却し、燃焼排ガス中のSO成分を凝縮させる手段である。温度降下手段3は、ボイラ1の排ガス後流側に、煙道11を介して設けられている。温度降下手段3は、排ガス温度を、好ましくは90〜150℃に低下させる。温度降下手段3としては、排ガスの温度をSO成分が凝縮するまで降下できるものであれば特に限定されないが、例えば、GGH等の熱回収器、および排ガス中に冷却媒体を噴射する冷却スプレー等が挙げられる。
【0029】
電気集塵装置4は、温度降下手段3で冷却された排ガスを除塵する手段である。電気集塵装置4では、燃焼排ガス100と接触後の処理剤が粉塵101として回収される。電気集塵装置4は、温度降下手段3の排ガス後流側の煙道11に配設されている。電気集塵装置4の排出口には、回収された粉塵を移送する粉塵移送ライン12が連結されている。粉塵移送ライン12は、分配手段9を始点として、ボイラ1と温度降下手段3とを連結する煙道11に接続する循環ライン6、および残りの粉塵を廃棄するための廃棄ライン14に分岐する。分配手段9は、例えば、移送されてきた粉塵101を受けるホッパと、そこから循環ライン6と廃棄ライン14に分岐する2つの弁、煤塵を各ラインに移送するコンベア、またはブロアの組み合わせを備える。粉塵移送ライン12には、分配手段9の粉塵前流側において、電気集塵装置4から搬出される粉塵101の流量を計測する流量計、および粉塵101のSO濃度を計測するSO濃度計測器が接続されている。流量計およびSO濃度計測器による計測値は、制御手段7に出力される。
【0030】
循環ライン6は、粉塵を、煙道11内に、粉体またはスラリとして供給する。循環ライン6は、好ましくは、粉塵を気流搬送するブロアまたは空気圧縮機等の気流搬送する手段、または粉塵を液中に混入させてスラリとする攪拌槽と、攪拌槽で生成されたスラリを圧送するためのスラリポンプとを組み合わせたものなどのスラリ搬送する手段を備えている。循環ライン6の煙道11内出口には、燃焼排ガス中に粉塵を噴射する手段、例えば複数の噴射ノズルを備える噴射グリッドなどが設けられていることが好適である。
【0031】
脱硫装置5は、燃焼排ガス中のSO成分を石灰石膏法に基づき除去する手段である。脱硫装置5は、電気集塵装置4の排ガス後流側に、電気集塵装置4と煙道11を介して設けられる。脱硫装置5としては、公知のものを使用することができるが、例えば、炭酸カルシウムを主成分とする吸収液に燃焼排ガス中の硫黄分を吸収させる吸収塔を備えるものを使用することができる。脱硫装置5には、吸収液の調製のための炭酸カルシウム103を供給する炭酸カルシウム供給手段8が管路を介して接続されている。炭酸カルシウム供給手段8は、例えば、炭酸カルシウムを貯留するホッパを備える。脱硫装置5には、脱硫装置5の吸収塔で生成した石膏スラリを排出口から搬出し、脱水・回収するベルトフィルタ等の装置が接続されていてもよい。
【0032】
煙突13は、脱硫装置5の排ガス後流側に、煙道11を介して配設されており、排ガスを排ガス処理装置の外に排出する。
【0033】
制御手段7は、粉塵の流量計、SO濃度計測器から出力される計測値に基づいて、粉塵の廃棄量、粉塵の循環使用量、および処理剤の追加供給量を制御する。制御手段7は、粉塵の廃棄量を、例えば、廃棄ホッパ開度やブロア出力調整により制御する。粉塵の循環使用量は、例えば、コンベアとホッパ開度の組み合わせにより制御される。処理剤追加供給量は、例えば、ホッパ開度により制御される。
【0034】
制御手段7は、時間(t)において、好ましくは、以下の式:
D(t)=Z(t)×Y/(X+Y)×K(t)
R(SO)(t)=Z(t)−D(t) 式(I)
X(SO)(t)=X−R(SO)(t)
を満たすように、粉塵の廃棄量D(t)、粉塵の循環使用量R(SO)(t)、および処理剤の追加供給量X(SO)(t)を制御する。ここで、時間(t)は、粉塵の循環を開始した後の任意の時間を表す。
【0035】
式(I)において、D(t)は、電気集塵装置4で回収された粉塵のうち廃棄される粉塵の量を表す。Z(t)は、電気集塵装置4での粉塵の単位時間当たりの全回収量(単位は、ton/h)を表し、例えば、粉塵移送ライン12の分配手段9の粉塵前流側に設けられた粉塵101の流量を測定する流量計による計測値に基づいて算出される。Xは、粉塵の循環開始前の処理剤の供給量(単位は、ton/h)を表し、粉塵の循環を行わずに排ガス処理を行った場合に燃焼排ガス中のSO成分を、0ppmまで除去するために必要な処理剤の量である。Xの値は、燃焼排ガス中に同伴されるSOの質量のおよそ10〜30倍として求めることができる。Yは、燃焼排ガスからのSOの除去量(単位は、ton/h)を表し、例えば粉塵移送ライン12の分配手段9の粉塵前流側に設けられた粉塵101のSO濃度を計測するSO濃度計測器により計測することができる。R(SO)(t)は、循環ライン6による粉塵の循環使用量(単位は、ton/h)、X(SO)(t)は、処理剤の追加供給量(単位は、ton/h)をそれぞれ表し、式(I)に従って決定することができる。なお、SOとCaCOの反応や吸着などが生じるため、必ずしもZ(t)=X+Yとはならないことに注意が必要である。
【0036】
(t)は、廃棄補正量を表し、粉塵の循環を繰り返すたびに処理剤としての純度が下がるのを防止するように調整される。K(t)は、任意の値とすることができ、定数であってもよく、または変数であってもよい。K(t)は、事前にマスバランス計算を行い、粉塵の循環が定常状態に達した後の有効な処理剤成分濃度、すなわちSO除去に利用可能な処理剤濃度を高い状態に保つ値となるように決定することが好ましい。マスバランスの計算は、式(I)を経時変化で求めることにより行うことができる。例えば、SO成分の除去効率を60%以上に保持するためには、定常時に達したときの有効な処理剤成分濃度は、電気集塵装置4での全回収物中に60質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上、あるいは、定常時に達したときに、電気集塵装置4で回収される粉塵中のSO濃度が、40質量%以下であることが好ましく、30質量%であることがより好ましい。このマスバランス計算に基づくと、K(t)は、好ましくは2.5以上であり、より好ましくは3.5〜4.0である。K(t)は、K(t)をこの範囲とすることにより、粉塵中のSO濃度を一定以下に抑え、粉塵の循環使用によるSOの除去率の低下を防止するという定常状態を保持できるように制御することができる。
【0037】
図4に、廃棄補正量K(t)を様々な値にしたときの、粉塵中のSO濃度の計算値を示すグラフを示す。粉塵中のSO濃度は、粉塵中の粗悪炭酸カルシウム率と同一視することができる。この計算値は、処理剤として炭酸カルシウムを使用した場合について行ったものである。K(t)は1、1.50、2、3、もしくは10、または起動時に2とし、6時間から3.5とした。その他の条件は、初期供給量X=150ton/h、SO除去量Y=10ton/hとして計算した。なお、この計算では、SOと水分との反応による質量の増減は考慮されていない。図4のグラフによれば、廃棄補正量K(t)を循環開始時に低い値(例えば、K(t)=2)に抑えて、一定時間後、例えば6時間以降にK(t)を高い値(例えば、K(t)=3.5)とすることにより、粉塵中の粗悪炭酸カルシウム率を、例えば30質量%以下に抑えることができることが分かる。
【0038】
図5には、処理剤供給手段2によって供給されるSO除去用の炭酸カルシウムの追加供給率(追加供給量/初期供給量)を示す。図5に示すグラフは、図4と同一の条件を用いて算出したものである。
【0039】
次に、本実施形態の排ガス処理装置を用いた排ガス処理方法の一形態を説明する。本実施形態に係る排ガス処理方法は、燃焼排ガス100が流通する煙道11に処理剤102を供給する工程と、処理剤102が供給された燃焼排ガス100を温度降下手段3により冷却する工程と、冷却後の燃焼排ガスを電気集塵装置4により除塵する工程と、除塵後の燃焼排ガスを石灰石膏法に基づく脱硫装置5により処理する工程とを含み、電気集塵装置4で回収された粉塵101の一部を前記温度降下手段の上流側の煙道11内に供給し、処理剤として循環使用する。
【0040】
燃焼排ガス100が流通する煙道11に処理剤102を供給する工程では、処理剤102を、処理剤供給手段2により、ボイラ1の排ガス後流側であって、温度降下手段3の排ガス前流側の煙道11内に供給する。処理剤102は、粉体またはスラリとして煙道11内に供給することができる。処理剤102の供給量は、制御手段7により制御する。処理剤102は、好ましくは、煙道11内の燃焼排ガス中に噴射され、均一に分散される。
【0041】
燃焼排ガス100を冷却する工程では、燃焼排ガス100を温度冷却手段3により冷却し、燃焼排ガス中のSO成分を凝縮させる。燃料排ガス100は、好ましくは、90〜150℃の温度まで冷却される。燃焼排ガス100が冷却されると、ほぼ全てのSO成分が凝縮してSOのミストに変化する。SOミストは、燃焼排ガス中の処理剤に吸着され、処理剤とともに排ガス流に乗って電気集塵装置4に送られる。
【0042】
燃焼排ガスを電気集塵装置4により除塵する工程では、電気集塵装置4を用いて燃焼排ガスからSO成分が吸着した処理剤を粉塵として分離・回収する。この工程により、燃焼排ガス中のSOミストはほぼ完全に除去され、除塵後の燃焼排ガスにはほとんど残留しない。回収された粉塵は、粉塵移送ライン12に搬出され、その一部は分配手段9を介して循環ライン6に移送され、残りの粉塵は廃棄ライン14を介して廃棄される。循環ライン6に移送される粉塵の量および廃棄される粉塵の量は、制御手段7により制御される。
【0043】
脱硫装置5により処理する工程では、除塵後の燃焼排ガスを、脱硫装置5において石灰石膏法に基づき脱硫する。脱硫装置5には、石灰石膏法の吸収液の調製のために、炭酸カルシウム供給手段8により炭酸カルシウム103が供給される。炭酸カルシウム103の供給量は、入口SO濃度と要求脱硫率、要求石膏純度に基づいて決定する。脱硫装置5により処理する工程により、燃焼排ガス中の硫黄成分、主にSO成分を吸収液に吸収させて、石膏を生成する。吸収液中に沈殿する石膏スラリは、例えば、ベルトフィルタ等により脱水し、石膏として回収する。処理剤として活性炭を使用する場合は、吸収液中のHgが活性炭に吸着され、燃焼排ガスから除去される。脱硫装置5から流出した燃焼排ガスは、煙突13から排出する。
【0044】
第一実施形態の排ガス処理装置および排ガス処理方法によれば、燃焼排ガスの処理剤を循環使用できるため、処理剤の投入量を減少させることができ、運転コストを低下させることができる。さらに、循環使用する処理剤の割合を制御することにより、処理剤の有効成分濃度を一定以上に維持し、処理剤の循環使用によるSOの除去率の低下を防止することができる。本実施形態では、燃焼排ガスが電気集塵装置4により除塵され、処理剤がそのまま脱硫装置5に流入してカルシウム分が過剰になることがないため、生成する石膏の純度低下、または脱硫装置出口の煤塵濃度が高くなるという問題が生じない。
【0045】
図2に、本発明に係る排ガス処理装置について、第二の実施形態を示す。図2に示す排ガス処理装置は、主たる構成要素として、処理剤供給手段2、温度降下手段3、電気集塵装置4、脱硫装置5、循環ライン6、および供給ライン10を備えている。温度降下手段3、電気集塵装置4、および脱硫装置5は、この順に煙道を介して配設されている。本実施形態に係る排ガス処理装置は、電気集塵装置4で回収された粉塵の一部を温度降下手段3の排ガス上流側の煙道11に供給して処理剤として循環使用することに加え、粉塵101の他の一部を、脱硫装置5に供給することを特徴としている。図1と同じ符号を付した構成要素は、同様の構成・作用を持つ。
【0046】
本実施形態に係る排ガス処理装置では、粉塵移送ライン12に、分配手段9を始点として分岐し、脱硫装置5に接続する供給ライン10がさらに配設されている。分配手段9は、例えば、移送されてきた粉塵101を受けるホッパと、そこから循環ライン6、廃棄ライン14、および供給ライン10に分岐する3つの弁、煤塵を各ラインに移送するコンベア、またはブロアの組み合わせを備える。供給ライン10は、電気集塵装置4で回収された粉塵101のうち、循環ライン6に移送される一部の粉塵とは別の一部の粉塵を脱硫装置5に供給し、吸収液の調製のために再使用させることができる。供給ライン10により脱硫装置5に供給される粉塵の量は、制御手段7により決定される。
【0047】
本実施形態では、処理剤102は、炭酸カルシウムまたは活性炭である。活性炭を使用する場合、SO成分に加え、有機物(例えばフミン酸等のTOC検出成分)、重金属(例えば、Hg)、HCl、HSも燃焼排ガスから吸着・除去することが可能となる。
【0048】
本実施形態に係る排ガス処理装置には、脱硫装置5と煙突13を連結する煙道11に、脱硫装置5から流出する燃焼排ガス中のSO濃度を計測するSO濃度測定器がさらに設けられている。SO濃度測定器による測定値は、制御手段7に出力される。
【0049】
制御手段7は、流量計、SO濃度計測器、SO濃度計測器から出力される計測値に基づいて、粉塵の廃棄量、粉塵の循環使用量、処理剤の追加供給量、粉塵の脱硫装置への再使用量、および脱硫剤の脱硫装置への追加供給量を制御する。制御手段7は、粉塵の廃棄量を、例えば、廃棄ホッパ開度やブロア出力調整により制御する。粉塵の循環使用量は、例えば、コンベアとホッパ開度の組み合わせにより制御される。処理剤追加供給量は、例えば、ホッパ開度により制御される。粉塵の脱硫装置への再使用量は、例えば、コンベアとホッパ開度の組み合わせにより制御される。脱硫剤の脱硫装置への追加供給量は、例えば、ホッパ開度により制御される。
【0050】
制御手段7は、好ましくは、時間(t)において、以下の式:
D(t)=Z(t)×Y/(X+Y)×K(t)
R(SO)(t)=F
R(SO)(t)=Z(t)−D(t)−R(SO)(t) 式(II)
X(SO)(t)=R(SO)(t)×Y/(X+Y)×K(t)
X(SO)(t)=X−R(SO)(t)
を満たすように、粉塵の廃棄量、粉塵の循環使用量、処理剤の追加供給量、粉塵の脱硫装置への再使用量、および脱硫剤の脱硫装置への追加供給量を制御する。
【0051】
式(II)において、D(t)は、電気集塵装置4で回収された粉塵のうち廃棄される粉塵の量を表す。Z(t)は、電気集塵装置4での単位時間当たりの全回収量(単位は、ton/h)を表し、例えば、粉塵移送ライン12の分配手段9の粉塵前流側に設けられた粉塵101の流量を測定する流量計による計測値に基づいて算出される。Xは、循環開始前の処理剤の供給量(単位は、ton/h)を表し、粉塵の循環を行わずに排ガス処理を行った場合に燃焼排ガス中のSO成分を0ppmまで除去するために必要な処理剤の量である。Xの値は、ガス中に同伴されるSOの質量のおよそ10〜30倍として求めることができる。Yは、燃焼排ガスからのSOの除去量(単位は、ton/h)を表し、例えば粉塵移送ライン12の分配手段9の粉塵前流側に設けられた粉塵101のSO濃度を計測するSO濃度計測器により計測することができる。Fは、脱硫装置5での炭酸カルシウムの要求量を表し、入口SO濃度と要求脱硫率、要求石膏純度等によって求めることができる。R(SO)(t)は、循環ライン6による粉塵の循環使用量(単位は、ton/h)、X(SO)(t)は、処理剤の追加供給量(単位は、ton/h)、R(SO)(t)は、脱硫装置5への粉塵の再使用量(単位は、ton/h)、X(SO)(t)は、脱硫装置5への炭酸カルシウムの追加供給量(単位は、ton/h)をそれぞれ表し、式(II)によって決定することができる。なお、SOとCaCOの反応や吸着などが生じるため、必ずしもZ(t)=X+Yとはならないことに注意が必要である。
【0052】
(t)は、廃棄補正量を表し、粉塵の循環を繰り返すたびに処理剤としての純度が下がるのを防止するように調整される。K(t)は、定数であってもよく、または変数であってもよい。K(t)は、任意の値とすることができ、事前にマスバランス計算を行い、粉塵の循環が定常状態に達した後の有効な処理剤成分濃度、すなわちSO除去に利用可能な処理剤濃度を高い状態、好ましくは電気集塵装置4で回収された粉塵中に60質量%以上、より好ましくは70質量%以上に保つ値となるように決定することが好ましい。マスバランスの計算は、(II)を経時的に解くことにより行うことができる。
【0053】
次に、本実施形態に係る排ガス処理装置を用いた排ガス処理方法の一形態を説明する。本実施形態に係る排ガス処理方法は、電気集塵装置4で回収された粉塵の他の一部を、脱硫装置5内に供給して再使用する工程をさらに含む点で、第一の実施形態と異なる。
【0054】
電気集塵装置4で回収された粉塵の他の一部を、脱硫装置5内に供給して再使用する工程では、電気集塵装置4で回収された粉塵のうち、循環ライン6に移送した一部の粉塵とは他の一部の粉塵を、分配手段9を介して供給ライン10に移送し、脱硫装置5内に吸収液の調製のために供給する。脱硫装置5に供給する粉塵の量は、制御手段7により制御する。脱硫装置5から流出する燃焼排ガス中のSO濃度は、脱硫装置5と煙突13を連結する煙道11に接続されたSO濃度測定器を用いて計測することができる。
【0055】
本実施形態に係る排ガス処理装置およびこれを用いた排ガス処理方法によれば、処理剤の投入量の低減による運転コストの低下および一定水準以上のSOの除去率の保持に加え、脱硫装置5に流入する硫黄分を適正な範囲に制御することができるため、脱硫装置5で生成する石膏の純度を定常的に高水準に保つことができるという効果を有する。
【符号の説明】
【0056】
1 ボイラ
2 処理剤供給手段
3 温度降下手段
4 電気集塵装置
5 脱硫装置
6 循環ライン
7 制御手段
8 炭酸カルシウム供給手段
9 分配手段
10 供給ライン
11 煙道
12 粉塵移送ライン
13 煙突
14 廃棄ライン
22 炭酸カルシウム供給手段
100 燃焼排ガス
101 粉塵
102 処理剤
103 炭酸カルシウム
図1
図2
図3
図4
図5