(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、目標とする成形品形状が板状のものが多く、比較的大きいサイズの板状の成形品を成形する場合には、一定の重量分布を持ったマット形状の植物繊維が扱いやすく、生産性及び生産効率も高い。バルク状の繊維の塊を補強材として応用する場合は、まず植物繊維を型内に配分してからでないと、ウレタン樹脂の反応原液を植物繊維に応用できない。
本発明の目的は、いわゆる合成木材よりも遥かに軽い成形品を作ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、寸法安定性および衝撃強度に優れた極めて軽量の植物繊維で補強されたポリウレタン発泡体の成形品および成形品の製造法に関する。
本発明において、発泡体である硬質ウレタンフォームを主部材として使い、低密度であるが故の弱点である強度不足、あるいは不充分な寸法安定性を、平均長さ少なくとも10mmの植物繊維で構成される植物繊維マットで補強する。
本願発明の要旨は、充分な隙間を持ったマット状の植物繊維を補強材として使った低密度の繊維補強硬質ウレタン成形品に存する。植物繊維で補強された発泡ポリウレタン成形品は、形状保持性を持った基材として応用される。
成形品の密度は成形品の全体平均として、0.15〜0.5g/cm
3であることが好ましい。成形品は補強された硬質ウレタンであるが、「硬質」とは、外力に応じて、自由に変形し、外力が無くなると元の形に復元するゴム体あるいはクッション体としての性質を持ち、セルは基本的に外気とつながったオープンセルからなる軟質ウレタンフォームと異なり、分子中に3次元的な架橋点を持ち、一部を除いてセルクローズ構造を持ち、外力に対して形状保持し、一定以上の外力に対しては、破損あるいは変形し、外力が無くなっても元の形に回復しないタイプのウレタンフォームを意味する。硬質ウレタンのショアA硬さは、一般に60〜95である。
【0009】
本発明は、
マット状の植物繊維で補強された硬質ポリウレタン発泡体からなる成形品であって、
A)成形品の平均密度は0.15〜0.5g/cm
3であり、
B)マット状の植物繊維の見かけの密度は0.02〜0.25g/cm
3であり、
C)補強された硬質ポリウレタン発泡体中の植物繊維含有率は33重量%〜75重量%であり、
D)成形品の−20℃〜20℃の温度範囲で測定した線膨張率が 18*10
−6/K以下である
ことを特徴とする硬質発泡ポリウレタン成形品
を提供する。
【0010】
さらに、本発明は、
(1)マット状の植物繊維を型に供給する工程、
(2)ポリオール成分とポリイソシアネート成分からなるポリウレタン原料を型に供給する工程、
(3)型中で、ポリウレタン原料を硬化させる工程
あるいは
(1)ポリオール成分とポリイソシアネート成分からなるポリウレタン原料をマット状の植物繊維に供給する工程、
(2) ポリウレタン原料が表面に供給されたマット状の植物繊維を型に供給する工程、
(3)型中で、ポリウレタン原料を硬化させる工程
からなる、マット状植物繊維で補強されたポリウレタン成形品の製造方法を提供する。
ポリウレタン原料をマット状の植物繊維に供給した後にマットを型に入れる製法には、成型型を閉じてから原料が硬化して型を開けるまでの待ち時間に、次のサイクルの原料供給作業を並行して始められるため、全体的には成形サイクルの短縮に寄与するという利点がある。
さらに加えて、本発明は、
上記のポリウレタン成形品、および
ポリウレタン成形品を覆う表皮
を有してなるポリウレタン物品をも提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリウレタン成形品は、寸法安定性および衝撃強度に優れている。
本発明によれば、植物繊維を補強材に使う事で従来の技術で述べたガラスファイバー補強の成形品が持つ皮膚刺激、痛みあるいは、ガラスファイバーを含む廃棄物処理などの問題を避ける事が出来る。
低密度で生産性に優れた植物繊維で補強されたポリウレタン発泡体を提供することができる。成形品は非常に低い線膨張率、つまり寸法安定性を示す。
成形品は、一般に、表面にエンボス模様を施された装飾表皮と組み合わされ、自動車用内装トリム材、天井材、あるいはシェルフ等の自動車用内装品あるいは室内家具として使われる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の成形品の製造方法は、
(1) マット状の植物繊維を型に供給する工程、
(2) マット状の植物繊維にポリオール成分とポリイソシアネート成分からなるポリウレタン原料を供給する工程、
(3) 型中で、ポリウレタン原料を硬化させる工程
を有してなる。工程(1)と工程(2)はどちらを先に行ってもよい。すなわち、工程(1)の後に工程(2)を行ってもよいし、あるいは工程(2)の後に工程(1)を行ってもよい。
【0013】
工程(1)において、マット状の植物繊維(植物繊維マット)を型内へ入れる。
本発明において、植物繊維マットの密度は、(圧縮を受けていない状態で)0.02〜0.25g/cm
3、より望ましくは0.04〜0.15g/cm
3である。植物繊維マットは、綿状の構造を有することが好ましい。
本発明において植物繊維としては、例えば麻、亜麻、黄麻、サイザル麻、ジュート、サボテン繊維、サトウキビ繊維が挙げられる。植物繊維の太さは、10〜2000μm、特に20〜1000μm、植物繊維の長さは、10〜400mm、特に20〜200mmであってよい。ガラスファイバーに比べ、植物繊維は、明らかに柔らかく、皮膚あるいは人体に対する刺激も少なく、軽い。植物繊維を使う事で、ガラスファイバーが持っていた皮膚刺激、バリ取り時の危険性等は改良され、またガラスと植物繊維の真密度は大きく異なることから、補強された成形品の低密度化が可能になる。
【0014】
植物繊維マットは、植物から発酵その他の処理によって繊維成分を取り出し、繊維成分を開綿した後、ふんわりとシート状に重ねたもので、JIS L 0222 に言う植物繊維から作られたウエブか、あるいはJIS L 0222 に言うバインダーや溶融繊維やニードルパンチ等不織布のもとになる結合方法を使い、緩やかに結合したものである。ただし、不織布のように繊維どうしは互いに固着せず、固着は部分的な固着に限定される。バインダーや溶融繊維やニードルパンチ用化学繊維を含むとしても、植物繊維マット中の植物繊維の含有率は60%以上、より望ましくは80%以上であることが好ましい。
本発明において植物繊維は、数ミリ〜数センチ程度のサイズの木粉、木屑あるいは木繊維、あるいは竹屑、竹繊維を意味せず、これらをウレタン系あるいはイソシアネート系の接着剤で固めたいわゆるチップボードとは異なる。補強繊維は、ウレタン樹脂硬化時型の中に存在するので、硬質ウレタンフォームの表面に存在する可能性はほとんど無く、硬質ウレタンフォームの内部に存在し、成形品の表面は硬質ウレタンフォームで覆われている。
【0015】
たとえば、植物繊維の束の内部を熱可塑性樹脂系接着剤の熱融着で固めた構造の成形品は、植物繊維自体が表面に露出するので、植物繊維から派生したその植物特有のあるいはその植物の処理剤の臭気が発生し、実際の使用において問題になる場合がある。この種の植物繊維を本来は液体である熱硬化性樹脂である硬質ウレタン発泡体で固めた本発明の場合、表面は硬質ウレタン発泡体で覆われており、植物繊維は直接大気とは接触しない。その結果、成形品を使用時に植物繊維特有の臭いが空気中に飛散する程度を低下させることが可能である。また、表面を硬質ウレタン発泡体でカバーする事により、実使用に際して、水や汗が比較的親水性をもつ植物繊維にしみこむことをも防いでくれる。
【0016】
植物繊維にウレタン原液を塗布あるいはスプレーした後で、それを型に運んで成形するとすれば、少なくとも植物繊維は一定の単位広さ重量のマット形状を持っており、且つウレタン原液が簡単に内部に含浸できるように繊維間の距離は空いており、重要なことはそのマットが厚さおよび寸法両面で自由度を持っており、三次元形状の成形品にも追随し、必要に応じて重ねあわした上で薄肉に圧縮され、あるいは必要方向に引き延ばし得る事である。
【0017】
本発明において、他の補強材、特に無機補強材、例えば、ガラスファイバーマットあるいはガラスクロスあるいは他の無機補強材を併用してもよい。これは成形品の特定部分を、成形品の用途の必要性に応じて、他の補強材により補強することができる。他の補強材の量は、植物繊維100重量部に対して、20重量部以下、例えば1〜15重量部であってよい。
また、曲面を持った成形品を均一に補強するためには、補強繊維マットは極力厚さ、寸法共に柔軟性を持っている事が望ましい。
【0018】
また、成形品が必要な曲げ剛性を補強によって得るためには、成形前の補強材の厚さは、成形品厚さを超え、その結果、成型時点で補強材は型の内面で直接圧縮されることになり、その結果、表面近くまで補強材が分散配置されていることが好ましい。その為には、補強に使用する繊維マットは、少なくとも最終成形品の厚さより厚いことが好ましい。
上型を閉じる事により繊維マットが圧縮されても、発泡体原液が繊維間に充分に含浸する。
【0019】
工程(2)において、マット状の植物繊維を配置した型にポリウレタン原料を入れ、植物繊維の間の空間を充填する。
ウレタン樹脂発泡原液をマット状の植物繊維へ供給する際に、マット状の植物繊維はウレタン樹脂発泡原液が内部に含浸しやすいだけの繊維間隔を持っている必要がある。発泡ウレタン樹脂原液をマット状の植物繊維へ供給するに際して、マット状植物繊維は見かけ密度が充分に低く、植物繊維は、所定の間隔を持っている。ただし、型の中で植物繊維が圧縮されるのは、発泡原液が植物繊維に供給された後であることが好ましい。
一般的には、ウレタン樹脂発泡原液と植物繊維は互いに親和性は高く、発泡原液がスプレーあるいは注型あるいは、フローコーター等を通じて植物繊維に比較的均一に供給されれば、発泡原液は粘度がよほど高くない限り、植物繊維の間に含浸していく。
また水で発泡するように設計されたウレタン樹脂原液は従来反応混合液が表面で突沸して成形には不向きと考えられていた100℃以上の型温でも、非常に隙間を充填する性能に優れた挙動をしめすことが本実験の結果確認された。本願発明においては、成形に際して設定される型温度は、80℃〜150℃が望ましい。より望ましくは、110℃〜150℃である。80℃〜150℃の型温度により、ウレタン樹脂の熱分解が無く、脱型時間も短く、補強材の間を発泡液が自由に充填できる。
【0020】
この植物繊維に供給される発泡ウレタン樹脂原液について説明する。
植物繊維の間を充填するポリウレタン発泡体を形成する樹脂は、ポリイソシアネート成分とポリオール成分より成る硬質ポリウレタン発泡体用原料が使われる。ポリイソシアネート成分としては、芳香族系ポリイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、脂肪族系ポリイソシアネート(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート)が例示される。それらのポリイソシアネートを単独あるいは2種以上の混合系で使用しても良い。
【0021】
ポリオール成分は、ポリオール、界面活性剤、発泡剤、触媒、必要に応じて着色剤を混合した処方配合ポリオールが使われる。
使用されるポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、蔗糖などの水酸基含有化合物、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアミノ基と水酸基を共に含有するアルカノールアミン化合物、あるいはエチレンジアミン、ジアミノトルエンなどのアミノ基含有化合物や、これらのアルカノールアミンやアミノ基あるいは水酸基含有化合物にエチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドを付加した分子中に2〜6個の水酸基を含有し、平均水酸基当量が40〜2000のポリエーテルポリオール、あるいはこれらのポリエーテルポリオールにビニル化合物を付加重合したポリマーポリオールなどか用いられる。
また、ポリカルボン酸と低分子量の水酸基含有化合物から得られるポリエステルポリオール、カプロラクトンを開環重合して得られるポリカプロラクトンポリオール、ジアルキルカーボネートとジオールのエステル交換や環状カーボネートの開環重合から得られるポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオールの水酸基をアミノ化し、あるいはポリエーテルポリオールのイソシアネートプレポリマーを加水分解して得られるポリエーテルポリアミンであって、平均活性水素当量が100〜3000のものも併用できる。
【0022】
植物繊維マットにウレタン反応混合液を適切に供給する為に必要な比較的ゆっくりした初期の反応性を確保した上で型の中でウレタン樹脂が反応固化してから出来るだけ短時間で型から取り出せるためには、単なる触媒の選定と使用だけでは無く、上記のポリオール成分の内、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアミノ基と水酸基を共に含有するアルカノールアミン化合物、あるいはエチレンジアミン、ジアミノトルエン、ジエチルトルエンジアミンなどのアミン化合物、これらのアミノ基含有化合物にエチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドを付加した多官能のアミノ基含有アルコールあるいはポリエーテルポリオールをポリオールに2.0重量部〜20.0重量部程度含む事は非常に有効である。アミノ基含有アルコールあるいはポリエーテルポリオールアミンが存在することにより、成形品の型内部での硬化反応が適切な速度で進む。
【0023】
発泡剤としては水を使用することが好ましい。
フロンなどの他の発泡剤(特に、物理的発泡剤)を併用することも出来る。発泡剤の量は、ポリオール100重量部に対して、0.5〜6.0重量部であってよい。
【0024】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤または両イオン性界面活性剤を使用出来る。界面活性剤の例は、高級アルコールおよびアルキルフェノールにエチレンオキサイドを付加させた非イオン性界面活性剤、および有機シリコーン系界面活性剤(例示すれば、ポリオキシアルキレンシリコーンコポリマー)などである。界面活性剤の量は、ポリオール100重量部に対して、0.1〜2.0重量部であってよい。
【0025】
触媒としては、トリエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、1,8−ジアザビシクロ−5,4,0−ウンデセン−7、ジメチルアミノエタノール、テトラメチルエチレンジアミン、ジメチルベンジルアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、ペンタメチルジエチレントリアミン、ジメチルエタノールアミン、ジアザビシクロウンデセンなどの第3級アミンやジブチル錫ジラウレート、オクタン酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ビスマスオクトエートなどの有機金属化合物、酢酸カリウム、酢酸ナトリウムなどのアルカリ金属塩などが用いられる。
特に初期反応が遅く、加温されてから急激に反応する事が期待される本発明では有機金属化合物やアルカリ金属塩などの使用が望ましい。
触媒の量は、ポリオール100重量部に対して、0.5〜3.0重量部であってよい。
【0026】
ポリウレタン樹脂発泡体は水を発泡剤に使い、また、一級および/または二級アミノ基をもつアミノポリオール等を成形に際して使う場合もあることから、結合反応において、ウレタン結合と必要に応じてウレア結合をも内部に含むウレタン/ウレア樹脂をも意味する。樹脂はポリイソシアネートとポリエーテルポリオールを主成分とする2液タイプの硬質ポリウレタンであり、この樹脂は植物繊維に供給されている間は、液状を保ち比較的長いクリームタイムを持つことが好ましく、発泡工程では、補強用植物繊維の間を発泡しながら充填するだけの泡の安定性と流れ性とを持つことが好ましい。
【0027】
工程(3)において、ポリウレタン原料を硬化させて、ポリウレタン成形品を得る。型温度は50℃〜150℃であることが、軽量で低密度の良好な成形品を得るのに適している。50〜150℃の型温度によって、短い脱型時が達成され、同時にポリウレタンの熱分解が防止される。型温度は、70〜140℃であることが好ましい。表皮一体成形を行う場合、表皮の劣化変形を避けるために比較的低い型温で成形することが望ましい。
【0028】
最終成形品が示す発泡体としての密度より、自由発泡密度は遥かに低い必要性があり、また成形品が一定時間で型から取り出される為には、その時間内に硬化反応を一定程度終了する必要がある。
植物繊維で補強される硬質ウレタン発泡体の原料システムを型に入れずに、いわゆるハンドフォーミングで自由発泡した場合に、
i)自由発泡密度が45Kg/m
3〜150Kg/m
3であるように調整されており、
ii)このフォームの独立気泡率は90%以上であり、
iii)液温35℃で測定されたウレタン樹脂の反応性が、クリームタイムが20〜40秒、かつゲルタイムが60〜130秒 の範囲内である
ことが好ましい。
【0029】
本発明によれば、
上記のポリウレタン成形品、および
ポリウレタン成形品を覆う表皮
を有してなるポリウレタン物品が提供される。
一般的に密度が0.5g/cm
3以下の発泡した硬質ウレタンフォームの表面硬さは、(たとえ植物繊維で補強されていたとしても)使用に際して人が通常接触する部品が充分な表面強度を持つことはまれであり、先端がとがった物で容易に傷がついてしまう。また、一般的なウレタン発泡体は、光によって変色する性質を持つこともある。したがって、ポリウレタン成形品は、実用に際しては、少なくとも表面は、0.2mm以上の厚さを持つ硬質あるいは軟質表皮でカバーされていることが一般である。軟質表皮の表面はエンボス加工されている事が望ましい。この表皮はウレタン樹脂でできていてもよい。また、この表皮はウレタン成形に際して、型内に設置していわゆる成形時一体成形するか、あるいは後工程で成形後に表皮材を接着することも可能である。この基材(ポリウレタン成形品)は装飾表皮で表面をカバーされた上で、自動車用内装トリム、成形天井材等の自動車用内装品あるいは室内家具の部品として、あるいは要求される耐候性を満足する表皮材と組み合わせて、機器の外装カバーとして応用される。
【0030】
既に述べたように、本発明は自動車用内装トリム材、天井材等の自動車用内装品あるいは室内家具の基材として使われるに充分な機械的強度と大量生産も可能な生産性を持つ軽量のポリウレタン発泡体の成形品およびその製造方法に関する。
【0031】
成形品は、実用に際しては、一般に、植物繊維で補強された硬質ポリウレタン発泡品である基材と、別途に作られた表皮で表面をカバーされて使われる。表皮でカバーされる前の、その表皮を含まない成形品の目標平均密度は0.15〜0.5g/cm
3であることが好ましい。ただし、成形品の一部分が設計上の必要に基づいて、型内で圧縮されてより高密度(例えば、0.15〜1.0g/cm
3)になってよい。
【0032】
本発明に使用される補強用植物繊維マットは、植物繊維が押し固められた布状の不織布というよりも、外形がマット状のからみあった綿状の繊維体である。樹脂発泡体原液が植物繊維の間に有効に含浸していくためには、1)反応原液を供給する際の型による圧縮を受けていない植物繊維マットの(見かけの)密度は0.02〜0.25g/cm
3、より望ましくは0.04〜0.15g/cm
3であることが好ましい。
ここで言う見かけの密度とは、(マット重量/幅*長さ*圧縮する前の見かけの厚さ)をいう。
【0033】
この低密度のマット状の植物繊維のマット形状を保持して、簡単に破れないようにするするために、植物繊維以外のたとえば(長い)化学繊維を植物繊維に混ぜ、補強することも出来る。また当然ながら成形品のある一部を特別に補強する必要があれば、型内部の対象部分にガラスマットあるいはガラスクロスあるいは金属製インサートを追加で入れて補強することも出来る。
ポリウレタン成形に際しては、植物繊維マットは、型によって、少なくとも30%は圧縮を受けて均等密度に調整され、0.03〜0.37g/cm
3に圧縮されることが好ましい。その繊維の隙間を、結果的には0.13〜0.40g/cm
3に匹敵する密度の硬質ウレタンで充填し隙間を完全に埋めることが好ましい。
ウレタン樹脂の使用量は、植物繊維マット100重量部に対して、繊維最低使用時に最大で200重量部であり、繊維含有率は33重量%となることが好ましい。繊維最重大使用時ではウレタン樹脂の使用量は約33重量部程度となり、繊維含有率は75重量%であることが好ましい。植物繊維マットの割合が多いほど、ウレタン樹脂は流れにくくなり、その分、いわゆるオーバーパック率を上げる必要がある。成形品中に占める植物繊維の含有量は、望ましくは33重量%〜75重量%であり、より望ましくは35重量%〜67重量%である。
【0034】
また、これらの植物繊維が多量の水分を含むことも、ウレタン樹脂成形においてはイソシアネート成分が水と反応して炭酸ガスを発生する性質を持つために品質管理上望ましくない。その意味で、この用途に使用する植物繊維マットの100℃一時間の加熱減量率は12%以下である事が望ましい。
【0035】
植物繊維製マットは、200g/m
2 〜1500g/m
2 、好ましくは400g/m
2 〜1000g/m
2 、例えば500g/m2 の単位面積重量を有してよい。
次に本願発明で使用する硬質ウレタンフォームについて説明する。上記の植物繊維マットと組み合わせて、平均密度が0.15〜0.5g/cm
3である植物繊維で補強された軽量のポリウレタン発泡体を成形する為に、最も適したポリウレタン樹脂の性状につき、発明者等は種々検討した結果、以下の結論に達した。その条件を以下に示す。
【0036】
ポリイソシアネート成分としては、ポリフェニルメタンポリイソシアネートが最も適している。
ポリオール成分は、多官能ポリエーテルポリオールが最も適している。
このシステムの主たる発泡剤は水であり、ポリオール成分100重量部に対して1〜6重量部程度加えられるのが望ましく、この発泡剤は、この硬質ウレタン発泡体の原料システムを型に入れずに、いわゆるハンドフォーミングで自由発泡した場合の自由発泡密度が45Kg/m
3〜150Kg/m
3、より望ましくは50Kg/m
3〜120Kg/m
3であるように調整されている事が望ましい。密度が45Kg/m
3未満では、オーバーパック率が高くなりすぎて、型から取り出した際に成形品が膨れ、あるいは割れなどのトラブルを生じることがあり、150Kg/m
3を超えると、繊維補強材の間隙を完全に充填できないことがある。
【0037】
植物繊維の間をウレタン原料が破泡することなく流れ膨らんでいくためには、このウレタンフォームのセルは充分に安定であることが好ましく、そのためには整泡剤を使用することが好ましく、このウレタン原料を補強繊維なしで単独発泡した場合の得られたフォームの独立気泡率は90%以上であることが好ましい。
【0038】
植物繊維マットに原料が充分に均等に供給されたのち、型を閉じるまでの一定時間を確保し、また、所定の時間内に型を開き、成形品を問題なく取り出すためには、液温35℃で測定されたウレタン樹脂の反応性が、クリームタイムが20〜40秒、かつゲルタイムが60〜130秒である事が望ましい。
【0039】
この比較的ゆっくりした反応性のウレタン反応液が、型の中では20秒〜90秒で反応固化して、膨れあるいは内部割れなどのトラブル無く、型から取り出される為には、ポリオール混合物中のポリオール成分100重量部中に、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアミノ基と水酸基を共に含有するアルカノールアミン化合物、あるいはエチレンジアミン、ジアミノトルエン、ジエチルトルエンジアミンなどのアミン化合物、これらのアミノ基含有化合物にエチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドを付加した多官能のアミノ基含有ポリエーテルポリオールを3.0重量%〜11.0重量%含むことが好ましい。アミン化合物およびアミノ基含有ポリエーテルポリオール水酸基価が170〜800mgKOH/gである事が望ましい。
【0040】
また、クリームタイムが長く、且つ反応が急激に進み、成形品の臭いが少ない為には、主たる触媒が金属触媒(3量化触媒)であることが望ましい。
【0041】
本発明によれば、成形品は所定の時間内でトラブルなく成形可能である事が確認された。
また、成形品は、自動車用内装トリム材、天井材等の自動車用内装品あるいは室内家具の基材として使われるに適した優れた衝撃強度を含む機械的強度物性を示した。
さらに、植物繊維で補強した結果 JIS K 7197に従って測定した、−20℃〜20℃の温度範囲で測定した線膨張率が 15*10
−6/K以下である事を確認して本発明を完成した。
【実施例】
【0042】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明する。%は、特記しない限り、重量%である。
【0043】
以下の例において成形品の評価は、次のように行った。
(1)反応性
ポリオールとイソシアネート(共に液温35℃)を、ラボミキサーにより3000rpmで15秒間撹拌し、反応性を測定した。
独立気泡率は、JIS K 7138によって測定した。
(2)外観
OK:成型品の割れ、膨れなどが観察されない。
(3)PUR含浸度
OK:ウレタン原液が充分発泡して型全体を満たし、一部、植物繊維が見えるというような欠陥が無い。
【0044】
(4)線膨張係数
JIS K 7197に記載のプラスチックの熱機械分析による線膨張率の測定方法に準じて測定を行なった。温度範囲−20〜+20℃で測定した。
(5)アイゾット衝撃吸収エネルギー
JISK6911アイゾット衝撃吸収試験に準じて測定を行なった。衝撃エネルギーを測定値とした。
(6)最大曲げ強度
JISK6301に準じて最大曲げ強度を測定した。成形品より長さ150mm、幅50mmのサンプルを切り出し、支点間距離100mm、テストスピード50mm/minで測定した。
【0045】
比較例1
1.約140℃に加温した金型(200mm×250mm×6mm)上型、下型に離型剤を塗布
2.キャノン高圧ポリウレタンスプレー機を用い
原料温度:ポリオール混合物/イソシアネート=約30℃/30℃
配合比:ポリオール混合物/イソシアネート=100/232(重量比)
ポリウレタン吐出量:30g/秒
吐出圧力:ポリオール混合物/イソシアネート=約130Bar/130Bar
の条件で約60グラムのウレタンを下型にオープン注入
3.閉型
4.型閉め完了後から30秒後に型を開き200mm×250mm×6mmのサンプルを得た
【0046】
実施例1
1.比較例1と同じ型およびスプレー機条件の下で、
スプレーブースにおいて見かけの密度が約0.03g/cm
3(サイズ:200x250x10mm, 重量15グラム)のジュート繊維マットの両面に約22.5グラム(片面=11.25グラム)のウレタンをスプレー塗布し、
2.両面にウレタンを所定量塗布した植物繊維を金型に配置し閉型
3.型閉め完了後から30秒後に型を開き200mm×250mm×6mmの植物繊維で補強された発泡ポリウレタン成形品を得た。
【0047】
実施例2
スプレーブースにおいて見かけの密度が約0.045g/cm
3(サイズ:200x250x10mm, 重量22.5グラム)のジュート繊維マットの両面に約33.8グラム(片面=約16.9グラム)のウレタンをスプレー塗布した事以外は実施例1と同じ条件で
植物繊維で補強された発泡ポリウレタン成形品を得た。
【0048】
実施例3
スプレーブースにおいて見かけの密度が約0.075g/cm
3(サイズ:200x250x10mm, 重量37.5グラム)のジュート繊維マットの両面に約75グラム(片面=約37.5グラム)のウレタンをスプレー塗布した事以外は実施例1と同じ条件で
植物繊維で補強された発泡ポリウレタン成形品を得た。
【0049】
比較例2〜5および実施例4〜6
比較例2〜5および実施例4〜6のサンプル作成条件と物性を含む成型結果を表2に示す。
基本的には実施例1〜3で説明した条件に基づき、変更点については表2に具体的に示す条件を用いて、植物繊維で補強された発泡ポリウレタン成形品を得た。
【0050】
処方その他の条件と結果を表1および表2に示す。
【0051】
表1に成形品密度の異なる植物繊維補強ポリウレタン基材の物性と、その成形に使用した使用原料、処方および成形条件を示す。
使用原料は次のとおりであった。
(1)イソシアネート (住化バイエルウレタン株式会社製、SBU イソシアネート 0418)
ポリメリックMDI NCO%=30.5%
(2)ポリオール 混合物
多官能ポリエーテルブレンド−1:官能度約3.1水酸基価410mgKOH/g
アミン化合物-1:芳香族アミン ジエチルトルエンジアミン
アミン化合物-2:エチレンジアミン+PO 水酸基価630mgKOH/g
(3)触媒
酢酸カリウムのDEG溶液+ジブチルチンジラウレート
(4)シリコーン整泡剤
Tegostab B8462 (硬質ウレタン用整泡剤)
(5)安定剤 リン酸エステル
(6)ジュート繊維マットを使用。密度その他は、実施例と表1,2に示す。
【0052】
【0053】
表1から次のことが理解できる。
植物繊維で補強されていない密度0.2g/cm
3の硬質ウレタンフォームのアイゾット衝撃強度が0.51kJ/mであったに対し、実施例2に示すように、ジュート繊維で補強された本願発明成形品は4.65kJ/mの衝撃強度を示した。
また、密度0.2g/cm
3の硬質ウレタンフォームの線熱膨張係数(CLTE)が65*10−6であったに対し、実施例1、2、3に示すように、本願発明に応じた補強されたウレタン樹脂成形品は、全ての密度で線熱膨張係数(CLTE)が15*10−6以下となり、寸法安定性の優れた成形品基材が得られた事を確認した。
【0054】
【0055】
表2から次のことが理解できる。
比較例2および比較例3と実施例4〜6は、ポリオール混合物中のポリオール成分の内、アミン化合物およびアミン含有化合物から作ったポリオールが占める割合が3%〜11%である事が本発明の目的に合致して、所定時間内に外観および補強繊維へのウレタン原料の含浸程度において問題が無い成形品を得られる条件である事を示す。
また、比較例4および比較例5は実施例4〜6に対して発泡剤としての水の使用料、応用される硬質ウレタン発泡体の原料システムを型に入れずに、いわゆるハンドフォーミングで自由発泡した場合の自由発泡密度が45Kg/m
3〜150Kg/m
3である事が好ましいことを示している。