(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シール蒸気制御装置は、前記蒸気タービンを急停止させるタービントリップ時の前記主蒸気制御弁の上流側の主蒸気圧力と前記シール蒸気圧制御弁の開度との関係を設定した第1関数設定部を有したことを特徴とする請求項1記載の蒸気タービンのグランドシール装置。
前記シール蒸気制御装置は、前記発電機を電力系統から解列して蒸気タービンを無負荷運転させる発電機解列時の前記主蒸気制御弁の上流側の主蒸気圧力とシール蒸気圧制御弁の開度との関係を設定した第2関数設定部を有したことを特徴とする請求項1記載の蒸気タービンのグランドシール装置。
前記第1関数設定部に設定された関係は、前記主蒸気制御弁の上流側の主蒸気圧力が高くなるに従って前記シール蒸気圧制御弁の開度が小さくなるように設定されていることを特徴とする請求項2記載の蒸気タービンのグランドシール装置。
前記第2関数設定部に設定された関係は、前記主蒸気制御弁の上流側の主蒸気圧力が高くなるに従って前記シール蒸気圧制御弁の開度が小さくなるように設定されていることを特徴とする請求項3記載の蒸気タービンのグランドシール装置。
前記蒸気タービンからグランド部へ漏洩したグランドリーク蒸気が前記グランド部のシール蒸気として前記シール蒸気圧制御弁の下流側のグランドシール通路に供給されることを特徴とする請求項1記載の蒸気タービンのグランドシール装置。
【背景技術】
【0002】
通常、復水式蒸気タービンにおいては、タービン停止時であっても、タービン車室内の真空度を保持しているため、グランド部にシール蒸気を供給して、外部から空気等が侵入してタービン車室内の真空度が低下するのを防止するようになっている。
【0003】
このタービングランドシール蒸気は、タービン入口蒸気を減圧して使用する場合が多いが、このタービン入口蒸気を減圧して使用する場合、運転状態からタービントリップが生じた際には、主蒸気止弁が閉じられ、また、発電機解列が生じた場合には無負荷運転状態にするため主蒸気加減弁が微開状態にされるため、グランドシール蒸気が十分に得られずグランドシール性が悪化する問題があった。
【0004】
また、定圧運転の蒸気タービンの場合には、タービン入口蒸気圧力が一定であるため、運転状態からタービントリップや発電機解列が生じた際に、必要とする所定のシール蒸気圧の確保が容易である。
【0005】
しかし、変圧運転の蒸気タービンの場合には、タービン入口蒸気圧力が変わるため、シール蒸気圧制御弁を介してのシール蒸気圧の制御領域が変わる。このため、運転中の状態からタービントリップまたは発電機解列が生じた際に、シール蒸気圧力を必要とする所定圧力に保持することが困難であった。
【0006】
このため、タービン入口蒸気圧力が変化する変圧運転タービンの場合においても、運転中の状態からタービントリップまたは発電機解列が生じた際の過渡時にシール蒸気圧力の変動を抑えて一定に制御可能とすることが要求されていた。
【0007】
なお、タービングランドシール蒸気を、タービン入口蒸気を使用する例として、特許文献1(特開2010−209858号公報)を挙げることができる。
この特許文献1の
図1、2等には、蒸気タービン装置について開示され、高圧タービンと低圧タービンとが設けられ、各グランドシールに蒸気を供給または各グランドシール部の蒸気を回収して復水器に導くグランドシール系統配管を備え、低圧タービンのグランドシール部へのシール蒸気が、高圧タービンから低圧タービンに導かれる主蒸気を分岐して、供給する構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記特許文献1には、低圧タービンのグランドシール部へのシール蒸気が、高圧タービンから低圧タービンに導かれる主蒸気を分岐して、供給する構成が開示されているに止まり、タービントリップ時や、発電機解列のような過渡時におけるグランドシール部へのシール蒸気圧の供給制御、さらには変圧運転のタービンにおけるシール蒸気圧の安定制御を可能とすることまでは開示されていない。
【0010】
また前述のように、変圧運転の蒸気タービンの場合には、タービン入口蒸気圧力が変わるため、運転中にタービントリップまたは発電機解列が生じた際に、シール蒸気圧力を一定圧力に効率よく保持することが困難であったため、変圧運転のタービンにおけるタービントリップ時または発電機解列時におけるシール蒸気圧の安定制御が要求されていた。
【0011】
そこで、本発明は前記課題に鑑みて、タービングランドシール蒸気を、タービン入口蒸気を減圧して使用する場合において、変圧運転の蒸気タービンであってタービン入口圧力が変動しても、タービントリップ時や発電機解列時の場合にシール蒸気圧力を一定圧力に保持して、シール蒸気圧力の制御性を向上できる蒸気タービンのグランドシール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる課題を解決するために、本発明は、蒸気タービンのグランド部をシールするグランドシール蒸気を、タービン入口蒸気を減圧して使用する蒸気タービンのグランドシール装置において、
蒸気タービンへの主蒸気の流入を遮断して蒸気タービンを急停止する場合、または蒸気タービンによって駆動される発電機を電力系統から解列して蒸気タービンを無負荷運転する場合に、蒸気タービンへの主蒸気の流入を制御する主蒸気制御弁と、該主蒸気制御弁の上流側から分岐して前記グランド部へシール蒸気を導くシール蒸気分岐通路と、該シール蒸気分岐通路に設けられて、前記グランド部に作用するシール蒸気圧力を制御するシール蒸気圧制御弁と、該シール蒸気圧制御弁の開度を制御するシール蒸気制御装置と、を備え、該シール蒸気制御装置は、グランド部へのシール蒸気圧を一定の目標圧力に保持するようにシール蒸気圧制御弁の開度を制御する目標制御部と、前記蒸気タービンを急停止する場合または発電機を電力系統から解列して蒸気タービンを無負荷運転する場合の少なくともいずれかの場合に、シール蒸気圧制御弁の開度を、前記主蒸気制御弁の上流側の主蒸気圧力に対応した開度に可変制御する過渡制御部と、を有
し、前記過渡制御部によるシール蒸気圧制御弁の開度制御は一定時間だけ実行され、その後は前記目標制御部による制御が行われることを特徴とする。
【0013】
蒸気タービンへの主蒸気の流入を遮断して蒸気タービンを急停止させるタービントリップ時の場合、または発電機を電力系統から解列して蒸気タービンを無負荷運転させる発電機解列時の場合においても、クランド部にはタービン車室内の真空度を保持するために、グランド部にシール蒸気を供給して、外部から空気等が侵入してタービン車室内の真空度が低下するのを防止する必要がある。
【0014】
本発明では、主蒸気制御弁の上流側から分岐して前記グランド部へシール蒸気を導くシール蒸気分岐通路と、該シール蒸気分岐通路に設けられて、前記グランド部へのシール蒸気圧力を制御するシール蒸気圧制御弁と、該シール蒸気圧制御弁の開度を制御するシール蒸気制御装置と、を備え、該シール蒸気制御装置は、蒸気タービンを急停止する場合または発電機を電力系統から解列して蒸気タービンを無負荷運転する場合の少なくともいずれかの場合に、シール蒸気圧制御弁の開度を、前記主蒸気制御弁の上流側の主蒸気圧力に対応した開度に可変制御する過渡制御部を有しているため、主蒸気制御弁による主蒸気の遮断若しくは微開の影響を受けることなく、グランド部へシール蒸気を供給することが可能になる。
【0015】
さらに、この過渡制御部では、シール蒸気圧制御弁の開度を、主蒸気制御弁の上流側の主蒸気圧力に対応した開度に可変制御するため、主蒸気圧力を変えて蒸気タービンへの流入蒸気量を調整して出力制御を行う変圧運転の蒸気タービンにおいても、タービントリップや発電機解列時のグランド部へのシール蒸気圧力を一定にする制御が可能になり、シール蒸気圧力の制御性を向上できる。
また、本発明では、前記過渡制御部によるシール蒸気圧制御弁の開度制御は一定時間だけ実行され、その後は前記目標制御部による制御が行われる。
すなわち、タービントリップや発電機解列が発生して、主蒸気がタービンに供給されない過渡的な状態の一定時間だけ、過渡制御部によってシール蒸気圧制御弁を開作動せしめてシール蒸気を確保してシール蒸気圧の変動を抑えて、その後は、目標制御部による一定圧力の目標圧力への制御へと切り替えることで、シール蒸気圧力を安定制御できる。
【0016】
また、本発明において好ましくは、前記シール蒸気制御装置は、前記蒸気タービンを急停止させるタービントリップ時の前記主蒸気制御弁の上流側の主蒸気圧力と前記シール蒸気圧制御弁の開度との関係を設定した第1関数設定部を有するとよい。
【0017】
このように、タービントリップ時のシール蒸気制御弁の開度を、主蒸気制御弁の上流側の主蒸気圧力に応じて設定した第1関数設定部のデータを基に算出するため、タービントリップ時において主蒸気圧力に応じた適切なシール蒸気制御弁の弁開度に制御できる。
【0018】
また、本発明において好ましくは、前記シール蒸気制御装置は、前記発電機を電力系統から解列して蒸気タービンを無負荷運転させる発電機解列時の前記主蒸気制御弁の上流側の主蒸気圧力とシール蒸気圧制御弁の開度との関係を設定した第2関数設定部を有するとよい。
【0019】
このように、発電機解列時のシール蒸気制御弁の開度を、主蒸気制御弁の上流側の主蒸気圧力に応じて設定した第2関数設定部のデータを基に算出するため、発電機解列時において主蒸気圧力に応じた適切なシール蒸気制御弁の弁開度に制御できる。
【0020】
また、本発明において好ましくは、前記第1関数設定部に設定された関係、及び前記第2関数設定部に設定された関係は、前記主蒸気制御弁の上流側の主蒸気圧力が高くなるに従って前記シール蒸気圧制御弁の開度が小さくなるように設定されるとよい。
【0021】
このように、主蒸気圧力が高くなるに従って、シール蒸気圧制御弁の開度を小さくすることで、また、逆に主蒸気圧力が低くなるに従って、シール蒸気圧力制御弁の開度を大きくすることで、いかなる運転領域からタービントリップや発電機解列が発生しても、グランド部へのシール蒸気量が一定量供給できるようになり、シール蒸気圧力の変動を抑えることができる。
【0023】
また、本発明において好ましくは、前記蒸気タービンからグランド部へ漏洩したグランドリーク蒸気が前記グランド部のシール蒸気として前記シール蒸気圧制御弁の下流側のグランドシール通路に供給されるとよい。
【0024】
このように、蒸気タービンの高負荷時に、例えば50%以上の負荷時に、蒸気タービンの高圧側のグランド部から漏洩するグランドリーク蒸気を前記グランド部のシール蒸気として前記シール蒸気圧制御弁の下流側のグランドシール通路に供給して利用するようになっているので、高負荷運転時には、グランドシール通路の圧力が上昇してシール蒸気圧を確保することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明によれば、変圧運転をする蒸気タービンのタービングランドシール蒸気を、タービン入口蒸気を減圧して使用する場合において、タービントリップ時や発電機解列時の場合に、タービン入口圧力が変動しても、シール蒸気圧制御弁の開度を、主蒸気制御弁の上流側の主蒸気圧力に対応して変化させるため、シール蒸気圧力を一定圧力に保持できるようになり、これによってシール蒸気圧力の制御性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0028】
図1は、本発明に係る復水式変圧運転の蒸気タービンのグランドシール装置の全体構成ブロック図を示す。
タービン1は、タービン車室3内に、回転軸5に取り付けられたタービンブレード7を有しており、その両端部分に高圧側グランド部9、及び低圧側グランド部11が配置され、それぞれのグランド部にはグランドシールフィン13が配置されている。また、回転軸5には直結されて発電機15が設けられている。
【0029】
一方、図示しないプラント中の適宜の蒸気発生源から主蒸気通路17を経て主蒸気がタービン1に供給される。主蒸気通路17には、主蒸気の流量を計測するためのノズル流量計(ノズル19の前後差圧を計測して流量を算出)21が設置され、その下流側には、主蒸気圧力計23が、その下流側には主蒸気制御弁である主蒸気止弁25と蒸気加減弁27とが直列に設置されている。
【0030】
本実施形態は、変圧運転を行う蒸気タービンであり、通常運転時においては、主蒸気止弁25は全開状態に保持され、図示しない蒸気発生源から主蒸気の圧力が制御されて供給され、該圧力制御された主蒸気の流入量を蒸気加減弁27によって調整して出力制御を行うようになっている。
【0031】
また、主蒸気止弁25及び蒸気加減弁27は、タービン1への主蒸気の流入を遮断してタービン1を急停止するタービントリップの際には、共に全閉され、またはタービン1によって駆動される発電機15を電力系統から解列してタービン1を無負荷運転にする発電機解列の際には、主蒸気止弁25は全開状態で蒸気加減弁27が微開に制御される。
【0032】
また、タービン1に供給された主蒸気は、タービンブレード7を回転駆動した後に排出されて、図示しない復水器に導かれて凝縮されて復水となる。
【0033】
主蒸気通路17の主蒸気止弁25及び蒸気加減弁27の上流側で分岐して前記高圧側グランド部9及び低圧側グランド部11へグランドシール蒸気を導くシール蒸気分岐通路29が設けられている。
【0034】
このシール蒸気分岐通路29には、シール蒸気圧制御弁31、その下流側にはグランド部へ供給される蒸気圧を計測するシール蒸気圧計33が設けられている。また、シール蒸気圧制御弁31の下流側は、高圧側グランド部9へシール蒸気を供給する高圧側グランドシール通路35と、低圧側グランド部11へシール蒸気を供給する低圧側グランドシール通路36とが接続され、低圧側グランドシール通路36には、低圧側グランド部11へ供給されるシール蒸気温度を計測する温度計37、減温水噴射装置39が設けられている。
【0035】
さらに、シール蒸気を冷却する減温水が、減温水通路41に設けられた温度調整弁42によって制御されて、減温水噴射装置39に供給されるようになっており、これにより温度計37の検出値を基に、低圧側グランド部11へのシール蒸気が一定温度になるように冷却される。
【0036】
また、低圧側グランドシール通路36から分岐してスピルオーバ弁38を介して余剰蒸気が復水器に排出される排出通路40が設けられている。該排出通路40を通って図示しない復水器へ回収されて凝縮して復水となる。
このスピルオーバ弁38は手動によって一定開度に設定されている。例えば、高負荷運転時(例えば100%負荷時)に、シール蒸気圧計33で検出される圧力によって制御されるシール蒸気圧制御弁31が全閉に制御される圧力になるように設定されている。なお、スピルオーバ弁38は開度設定が自動のものを用いてもよい。
【0037】
以上のようなタービン1では、図示しない蒸気発生源で発生した主蒸気は、主蒸気通路17を通って、ノズル流量計21、主蒸気圧力計23で流量、圧力が検出され、その後、主蒸気止弁25、蒸気加減弁27を通り、タービン車室3内に供給され、回転軸5に取り付けられたタービンブレード7に対して蒸気による膨張仕事をして回転せしめる。そして、回転軸5が回転されて、発電機15により発電される。また、膨張仕事をした後の蒸気は図示しない復水器へ排出されて凝縮されて復水となる。
【0038】
また、主蒸気の一部は、シール蒸気分岐通路29を通って、さらに、シール蒸気圧制御弁31を介してシール蒸気の圧力を調整して、高圧側グランドシール通路35及び低圧側グランドシール通路36に導かれる。
その後は、高圧側グランド部9及び低圧側グランド部11へシール蒸気として供給され、回収蒸気として回収通路45を通ってグランドコンデンサーを経由し、復水器へ回収されて復水される。
【0039】
まず、「立上げ時」には、
主蒸気止弁25は全開で、蒸気加減弁27は回転数制御中であり中間開度となっている。そして、主蒸気はタービン1に流入して、回転数が上昇を開始する。この時はまだ、立上げ時で低負荷であるため、蒸気タービン1から高圧側グランド部9へ漏洩するグランドリーク蒸気はほとんど発生しない状態である。
【0040】
従って、高圧側グランドシール通路35及び低圧側グランドシール通路36の蒸気圧力は、シール蒸気圧制御弁31が、シール蒸気分岐通路29を通って流入する主蒸気を調整するために、中間開度で制御される。その中間開度の制御は、シール蒸気圧制御弁31の下流側に設けられたシール蒸気圧計33の検出信号を基に、一定の目標圧力、つまり高圧側グランド部9及び低圧側グランド部11において、外部から蒸気タービン内への空気の侵入を防止するための適切な圧力(大気圧より若干高い正圧力)に制御される。
なお、シール蒸気圧力が低いとシール性が不足し、高すぎると外部へシール蒸気の漏洩量が増大する。
【0041】
次に、「負荷運転時」には、
主蒸気止弁25は全開で、蒸気加減弁27は負荷に応じた中間開度となり、図示しない蒸気発生源からの主蒸気の圧力制御、及び、蒸気加減弁27によるタービン流入蒸気量を調整して負荷に対応した出力制御を行う。
中高負荷運転になると、蒸気圧力が上昇、また蒸気流量が増えることで、高圧側グランド部9のグランドシールフィンと回転軸5との隙間から高圧側グランド部9へ蒸気が漏洩するようになる。
【0042】
そして、高圧側グランド部9へ漏洩したグランドリーク蒸気の圧力は、高圧側グランドシール通路35から供給されるシール蒸気の圧力より高くなるので、グランドリーク蒸気は、これに打ち勝って高圧側グランドシール通路35に流れるとともに、低圧側グランドシール通路36を通って低圧側グランド部11にも流入するようになる。
【0043】
なお、この時、高圧側グランドシール通路35の圧力が上昇するため、シール蒸気圧制御弁31の下流側に設けられたシール蒸気圧計33の検出信号も上昇するので、その信号を基に制御されるシール蒸気圧制御弁31は閉弁方向に制御される。これにより、シール蒸気圧制御弁31は、圧力制御をしながら負荷上昇に伴い全閉となる。
【0044】
次に、「タービントリップ時」には、
タービン1への主蒸気の流入を遮断してタービン1を急停止するタービントリップの場合には、主蒸気止弁25及び蒸気加減弁27は共に急速に全閉状態となる。
このため、タービン1に主蒸気が流入しなくなる。これによって、グランドリーク蒸気もなくなり高圧側グランドシール通路35及び低圧側グランドシール通路36の圧力は負圧状態となる。
【0045】
このとき、シール蒸気圧計33の検出値も低下するため、シール蒸気圧制御弁31は開弁方向に制御されるが、高圧側グランドシール通路35及び低圧側グランドシール通路36の圧力低下の検出とそれに伴うシール蒸気圧制御弁31の開方向の制御は遅い。このため、タービントリップ時のシール蒸気の確保に急速に対応するため後述のシール蒸気制御装置47の過渡制御部49によって急速な対応が可能なように制御している。
【0046】
次に、「発電機解列時」には、
タービン1によって駆動される発電機15を電力系統から解列してタービンを無負荷運転する発電機解列の場合には、タービン1への主蒸気の流入は微量に制御される。
【0047】
すなわち、発電機解列の場合には、主蒸気止弁25は全開で、蒸気加減弁27は微開状態で、且つ無負荷制御中である。
タービン1には、主蒸気は流入しているが、前記「立上げ時」と同様に、蒸気タービン1から高圧側グランド部9へ漏洩するグランドリーク蒸気はほとんど発生しない、若しくは僅かに流れている状態であり、高圧側グランドシール通路35及び低圧側グランドシール通路36の圧力は負側に低下する。
【0048】
従って、前記のタービントリップ時の作動と同様に、高圧側グランドシール通路35及び低圧側グランドシール通路36の圧力が負圧の検出とそれに伴うシール蒸気圧制御弁31の開方向の制御は遅い。このため、急速な対応を可能とするように後述するシール蒸気制御装置47の過渡制御部49によって急速な対応が可能なように制御される。
【0049】
次に、タービン1の作動を制御する主蒸気制御装置51、及びグランドシール蒸気圧を制御するシール蒸気制御装置47について説明する。
主蒸気制御装置51は、タービントリップ信号53、発電機解列信号55、主蒸気のノズル流量計21からの信号、さらにタービンの回転数や負荷等の運転状態の信号が入力されて、主蒸気止弁25及び蒸気加減弁27の開度を制御して、タービン1の運転を制御している。すなわち、前述の「立上げ時」、「負荷運転時」、「タービントリップ時」、「発電機解列時」の際の主蒸気止弁25及び蒸気加減弁27の開度を制御して、タービン1の運転を制御している。
シール蒸気制御装置47は、
図1に示すように、主に目標制御部57と過渡制御部49とを有している。
【0050】
目標制御部57では、高圧側グランド部9、及び低圧側グランド部11へのシール蒸気圧を一定の目標圧力に保持するようにシール蒸気圧制御弁31の開度を、シール蒸気圧計33の検出値を基に、フィートバック制御によって一定目標値になるように制御する。
高圧側グランドシール通路35の蒸気圧力が目標値に対して低下した場合に、シール蒸気圧制御弁31を開いて、主蒸気を導入して圧力を高めるように制御される。
【0051】
すなわち、目標制御部57は、前記「立上げ時」、および前記「負荷運転時」の制御を行い、「立上げ時」では、前述したようにタービンのグランドリーク蒸気はほとんど発生しないため、シール蒸気圧制御弁31は、シール蒸気分岐通路29を通って流入する主蒸気を調整することでシール蒸気圧力を、シール蒸気圧制御弁31の下流側に設けられたシール蒸気圧計33の検出信号を基に、一定の目標圧力になるように制御される。
【0052】
また、「負荷運転時」では、前述したように中高負荷運転時には高圧側グランド部9へ蒸気が漏洩してグランドリーク蒸気が発生し、高圧側グランドシール通路35から供給されるシール蒸気の圧力より高くなり、高圧側グランドシール通路35の圧力が上昇するので、シール蒸気圧制御弁31の下流側に設けられたシール蒸気圧計33の検出信号も上昇するため、シール蒸気圧制御弁31は閉弁方向に制御される。
【0053】
過渡制御部49では、蒸気タービン1を急停止する場合、または発電機15を電力系統から解列してタービン1を無負荷運転する場合において、シール蒸気圧制御弁31の開度を急速開弁して、トリップ発生後若しくは解列発生後暫く回転が継続している回転軸5の高圧側グランド部9及び低圧側グランド部11へのシール蒸気を確保するように制御する。
【0054】
急速開弁する際の開弁開度を主蒸気制御弁である主蒸気止弁25と蒸気加減弁27との上流側、つまり、シール蒸気分岐通路29の主蒸気圧力計23で検出してその検出値の大きさに対応して変化させている。
従って、主蒸気圧力を変えて蒸気タービンへの流入蒸気量を調整して出力制御を行う変圧運転の蒸気タービンにおいても、タービントリップや発電機解列時のグランド部へのシール蒸気圧力を一定にする制御が可能になり、シール蒸気圧力の制御性を向上できる。
【0055】
シール蒸気制御装置47の制御構成ブロック図を
図2に示す。
図2において、目標制御部57によるシール蒸気圧を一定にするようなシール蒸気圧制御弁31への開度信号Gが出力され、タービントリップや発電機解列による異常事態がない場合には、その開度信号Gがそのままシール蒸気圧制御弁31の開度信号Pxとして出力される。
シール蒸気圧制御弁31の開度信号Pxと開度量との関係は、
図3に示すように比例関係のなっており、開度信号Pxに応じた開度が設定される。
【0056】
一方、過渡制御部49においては、発電機解列信号55によって、発電機15が解列して無負荷状態となったことを受信した時に、すなわち発電機遮断器が開となったときに、反転部61で信号が立ち上がり、例えば1.5秒間のON信号が出力されて、選択部63に選択信号S=1が入力されて、入力IN2からの開度信号が出力OUTされる。
【0057】
発電機解列時の入力IN2からの開度信号は、第1関数設定部65に記憶されている関数F(x)Aの関係を基に算出される。関数F(x)Aは、
図4のように横軸が主蒸気圧力計23からの主蒸気圧力であり、縦軸がシール蒸気圧制御弁31の開度が設定されている。マップとして記憶していても関数式として記憶していてもよい。
【0058】
また、タービン1がトリップして停止状態となったタービントリップ信号53を受信した時には、例えば1.5秒間のON信号が出力されて、選択部67に選択信号S=1が入力されて、入力IN2からの開度信号が出力OUTされる。
【0059】
タービントリップ時の入力IN2からの開度信号は、第2関数設定部69に記憶されている関数F(x)Bの関係を基に算出される。関数F(x)Bは、
図5のように横軸が主蒸気圧力計23からの主蒸気圧力であり、縦軸がシール蒸気圧制御弁31の開度が設定されている。マップとして記憶していても関数式として記憶していてもよい。
【0060】
図4に示した第1関数設定部65に設定された関係、及び
図5に示した第2関数設定部69に設定された関係は、主蒸気圧力計23からの主蒸気圧力が高くなるに従ってシール蒸気圧制御弁31の開度が小さくなるように設定され、逆に主蒸気圧力が低くなるに従って、シール蒸気圧力制御弁の開度が大きくなる。
具体的には、第1関数設定部65は
図4に示すように、開度が20%〜50%の範囲を、主蒸気圧力の高さに応じて可変制御され、第2関数設定部69は、
図5に示すように、開度が20%〜55%の範囲を、主蒸気圧力の高さに応じて可変制御される。
【0061】
発電機解列時に用いる第1関数設定部65の最大開度の方が、タービントリップ時に用いる第2関数設定部69の最大開度より小さく設定されている。発電機解列時には、主蒸気の流入はほとんどないが、ゼロではないため、グラドリーク蒸気もゼロとは言えずその僅かな上昇分を考慮したものである。
【0062】
従って、いかなる運転領域からタービントリップや発電機解列が発生しても、急速にグランド部へのシール蒸気量が一定量供給できるようになり、シール蒸気圧力の変動を抑えて、安定したシールを可能とする。
【0063】
また、例えば1.5秒間のON信号が出力されて、選択部63、67において選択信号S=1が入力されて、入力IN2からの開度信号が出力OUTされるので、過渡制御部49によるシール蒸気圧制御弁31の開度制御は一定時間だけ実行され、その後は目標制御部57による制御が行われるため、タービントリップや発電機解列が発生して、主蒸気がタービン1に供給されない過渡的な状態の一定時間だけ、過渡制御部49によってシール蒸気圧制御弁31を急速に開作動せしめてシール蒸気を確保してシール蒸気圧の変動を抑えることができ、その後は、目標制御部57による一定圧力の目標圧力への制御へと切り替えることで、シール蒸気圧力を安定制御できる。
【0064】
以上の実施形態によれば、シール蒸気圧制御弁31の開度を、主蒸気止弁25及び蒸気加減弁27の上流側の主蒸気圧力に対応して設定した開度に制御する過渡制御部49を有しているため、タービントリップや発電機解列時における主蒸気止弁25及び蒸気加減弁27による主蒸気のタービン1への流入制御に影響を受けることなく、高圧側グランド部9、及び低圧側グランド部11へシール蒸気を供給することが可能になる。
【0065】
また、この過渡制御部49は、シール蒸気圧制御弁31の開度を、主蒸気止弁25及び蒸気加減弁27の上流側の主蒸気圧力に対応して変化させたので、主蒸気圧力を変えることで蒸気タービンへの流入蒸気量を調整して出力制御を行う変圧運転の蒸気タービンにおいても、タービントリップや発電機解列時のグランド部へのシール蒸気圧力を一定にする制御が可能になり、シール蒸気圧力の制御性を向上できる。