【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。但し、本発明は、その主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
温度計、攪拌機および還流冷却管を備えた反応容器内に、プラクセル205U(株式会社ダイセル製 カプロラクトンジオール)50質量部、イソホロンジイソシアネート42質量部、およびジブチルスズジラウレート0.01質量部を入れ、攪拌下で、前記反応容器の内容物温度を60℃に昇温させ2時間反応させた。その後、ジブチルスズジラウレート0.08質量部および4−ヒドロキシブチルビニルエーテル20質量部を投入し、さらに2時間反応させた。反応終了は、反応液の一部を取り出し、赤外線吸収スペクトル(IR)でイソシアネート由来の2250cm
−1のピークが消失したことにより確認した。このようにして、透明液体であるウレタン骨格とビニルエーテル基とを有する化合物113gを得た。この化合物に、光重合開始剤である4−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(サンアプロ社製、商品名CPI−210S)を1.13質量部配合して、ビニルエーテル系樹脂組成物を得た。
このビニルエーテル系樹脂組成物を、塗布膜厚90μmのアプリケータ―を用いてポリプロピレンフィルム上にコーティングし、照射強度160Wの高圧水銀ランプを用いて、照射量200mJ/cm
2の条件で光を照射することでコーティング膜を得た。
【0037】
(実施例2)
照射量を1000mJ/cm
2の条件にした以外は、実施例1と同様にしてコーティング膜を得た。
【0038】
(実施例3)
温度計、攪拌機および還流冷却管を備えた反応容器内に、ポリテトラメチレングリコール(三菱化学社製 商品名 PTMG1000)50質量部、イソホロンジイソシアネート22質量部、およびジブチルスズジラウレート0.01質量部を入れ、攪拌下で、前記反応容器の内容物温度を60℃に昇温させ2時間反応させた。その後、ジブチルスズジラウレート0.05質量部、及び4−ヒドロキシブチルビニルエーテル11質量部を投入し、さらに2時間反応させた。反応終了は、反応液の一部を取り出し、赤外線吸収スペクトル(IR)でイソシアネート由来の2250cm
−1のピークが消失したことにより確認した。このようにして、透明液体であるウレタン骨格とビニルエーテル基とを有する化合物83gを得た。この化合物に、光重合開始剤である4−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(サンアプロ社製、商品名CPI−210S)を0.83質量部配合して、ビニルエーテル系樹脂組成物を得た。
このビニルエーテル系樹脂組成物を用いて、実施例1と同じ手順によりコーティング膜を得た。
【0039】
(実施例4)
照射量を1000mJ/cm
2の条件にした以外は、実施例3と同様にしてコーティング膜を得た。
【0040】
(実施例5〜20、比較例1〜7)
表1に示す配合および照射条件に従い、実施例1、実施例2と同様の手順で、それぞれの実施例および比較例のコーティング膜を得た。実施例5〜8で用いた光重合開始剤は、4-イソプロピル-4‘-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(ローディア社製 商品名Rhodorsil Photoinitiator 2074)、実施例9〜12で用いた光重合開始剤(B)は、エタノン,1,1’−[1,3−プロパンジイルビス(オキシ-4,1-フェニレン)]ビス[2,2,2-トリフルオロ-1,1’ビス[O-プロピルスルフォニル)オキシム](BASFジャパン社製 商品名Irgacure PAG 203)、実施例13〜16で用いた光重合開始剤は、4-イソブチルフェニル(4-メチルフェニル)ヨードニウム・ヘキサフルオロホスファート(BASFジャパン社製 商品名Irgacure250)、実施例17〜20で用いた光重合開始剤は、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート(サンアプロ社製 商品名CPI−100P)、比較例1〜5で用いた光重合開始剤は、4−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(サンアプロ社製、商品名CPI−210S)および比較例6、7で用いた光重合開始剤は、トリス(4-メチルフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート(三和ケミカル社製 商品名TS−91)である。
【0041】
(溶解性試験)
溶解性試験は、化合物に光重合開始剤が溶解するかを評価することで行った。表1に示す配合に従い、化合物と光重合開始剤とを含むビニルエーテル系樹脂組成物を調製し、2時間室温に静置後、光重合開始剤が溶解しているものを○と、また、不溶化物として光重合開始剤が析出したものを×とそれぞれ評価した。
【0042】
(硬化性試験)
硬化性試験は、ビニルエーテル系樹脂組成物に光を照射し、硬化するかを評価することでおこなった。表1に示す配合に従い、化合物と光重合開始剤とを含むビニルエーテル系樹脂組成物を調製後、塗布膜厚90μmのアプリケーターを用いてポリプロピレンフィルム上にビニルエーテル系樹脂組成物を塗工し、次いで照射強度160Wの高圧水銀ランプを用いて、照射量200または1000mJ/cm
2のいずれかの条件で光を照射した。
表1の評価結果において、硬化したものは、○と判定した。
【0043】
(引張強度試験)
伸び特性を評価するための引張強度試験は、JIS K7127に準じ、引張速度10mm/minの条件にて伸び率(%)と強度(MPa)とを測定することでおこなった。試験片は、硬化性試験で得た厚さ70〜80μmのコーティング膜を、幅15mmの短冊型に切断し、チャック間の距離25mmの条件で測定した。
コーティング膜の伸度が60%以上のものを○、60%未満のものを×と評価した。
【0044】
(柔軟性試験)
柔軟性試験は、引張強度試験と同様にして調製した試験片を用いて行った。柔軟性は、各実施例および比較例の試験片を、5mm径のステンレス棒に試験片を巻きつけた際、試験片が割れや破断等の外観異常がおきるかで判断した。測定は実施例および比較例につきそれぞれ5回繰り返して行った。
【0045】
(表面硬度試験)
強度を評価するための表面硬度試験は、引張強度試験と同様にして調製した試験片を用いて行った。表面硬度の評価は、JIS K5600に準じ、各実施例および比較例の試験片表面を硬度Bの鉛筆を用いてひっかき、割れ等の外観異常が起きるかでおこなった。測定は実施例および比較例につきそれぞれ5回繰り返しておこなった。
なお、各実施例、比較例の試験片とも表面硬度試験において外観異常はなかった。
【0046】
表1に、ビニルエーテル系樹脂組成物の化合物と光重合開始剤との配合と、ビニルエーテル系樹脂組成物を含むコーティング膜の評価結果とをまとめた。
なお、比較例6、7のビニルエーテル系樹脂組成物は、化合物に光重合開始剤が溶解しなかった。さらに、化合物と光重合開始剤との混合物に光を照射しても硬化しなかった。そのため、コーティング膜の評価はおこなわなかった。
【0047】
【表1】
【0048】
表1に示した評価結果によれば、実施例1〜20に示したとおり、本発明のビニルエーテル系樹脂組成物を含むコーティング膜は、伸度が60%以上であり、したがって優れた伸び特性を有することがわかる。
また、実施例1〜20に示したコーティング膜は、ビニルエーテル系樹脂組成物の特徴である柔軟性(可とう性)を有することがわかる。
一方、比較例1〜5に示したとおり、化合物以外のビニルエーテル化合物を含有する樹脂組成物を含むコーティング膜は、伸度が60%未満であり、化合物単体の実施例1〜20に示すコーティング膜と比べて伸度が小さいことがわかる。
さらに、比較例6、7では、化合物に光重合開始剤が溶解せず、コーティング膜が得られない。したがって、本発明のコーティング膜は、化合物に溶解する特定の光重合開始剤を用いる必要があることがわかる。
さらに、本発明のビニルエーテル系樹脂組成物は、有機溶剤を含まないため、コーティング膜として有用な強度を有し、溶剤を用いることができない用途にも使用することができる。
以上により、本発明のビニルエーテル系樹脂組成物は、コーティング膜に用いた際に優れた伸び特性を有することがわかる。