(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6121275
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】緊急非常扉報知装置
(51)【国際特許分類】
B61B 1/02 20060101AFI20170417BHJP
B61L 25/02 20060101ALI20170417BHJP
G08B 23/00 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
B61B1/02
B61L25/02 A
G08B23/00 510A
G08B23/00 510D
G08B23/00 520C
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-147051(P2013-147051)
(22)【出願日】2013年7月12日
(65)【公開番号】特開2015-16842(P2015-16842A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年6月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(72)【発明者】
【氏名】酒井 慎一
【審査官】
前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−286689(JP,A)
【文献】
特開2011−105292(JP,A)
【文献】
特開2013−100009(JP,A)
【文献】
特開2010−174589(JP,A)
【文献】
実用新案登録第3145570(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 1/02
B61L 25/02
G08B 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラットホームの可動ホーム柵のホーム長手方向に設け、緊急非常扉を備えた報知装置であって、
前記緊急非常扉のプラットホーム側の側面に映像出力手段を設け、緊急時に該映像出力手段から緊急案内情報を出力し、
列車の先頭車両又は最後尾車両の所定停止位置近傍の前記可動ホーム柵の列車側側面に緊急入力部を配置し、該緊急入力部からの緊急入力信号に基づいて前記映像出力手段は前記緊急案内情報の出力を開始することを特徴とする緊急非常扉報知装置。
【請求項2】
前記緊急非常扉に音声出力手段を設け、前記緊急時に該音声出力手段から緊急案内情報を出力することを特徴とする請求項1に記載の緊急非常扉報知装置。
【請求項3】
前記緊急非常扉又は前記可動ホーム柵の開閉扉の戸袋部にバッテリを内蔵し、前記緊急時には前記バッテリから前記出力手段に電力を供給することを特徴とする請求項1又は2に記載の緊急非常扉報知装置。
【請求項4】
前記緊急非常扉に点灯又は点滅を行う発光手段を設け、前記緊急入力部からの緊急入力信号に基づいて前記発光手段は点灯又は点滅を開始することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の緊急非常扉報知装置。
【請求項5】
前記緊急案内情報には、前記緊急非常扉が開く旨を案内する案内情報を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の緊急非常扉報知装置。
【請求項6】
前記緊急案内情報には、早期地震警報システムからの情報に基づく地震予告情報を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の緊急非常扉報知装置。
【請求項7】
前記緊急案内情報には、火災警報装置からの情報に基づく災害情報、誘導情報を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の緊急非常扉報知装置。
【請求項8】
前記緊急時でない通常時においては、前記映像出力手段は運行情報、広告情報及び天候情報のうち少なくとも何れかを含む通常案内情報を出力することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の緊急非常扉報知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動ホーム柵に配置され、火災等の緊急時に使用する緊急非常扉を備え、緊急時に画像、音、光点滅等を用いてその非常扉の位置を報知する緊急非常扉報知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の段落番号0054及びその
図8等には、緊急時や故障時等の緊急時において、乗客が列車側からプラットホーム32側に避難するための緊急非常扉41が開示されている。緊急非常扉41の扉部分は、ヒンジ部42を中心にしてプラットホーム32の内側に向かって開動することによって開状態となる。
【0003】
可動ホーム柵11の開閉扉が閉じた状態であって、車両事故等の車両異常が発生した場合や、可動ホーム柵11の故障や電力供給が遮断した場合に、可動ホーム柵11の一部である緊急非常扉41を利用して、列車内の乗客がプラットホーム32側に移動することができる。
【0004】
特許文献2の段落番号0082及びその
図4等にも、車両火災のような緊急時にはプラットホーム側に押すことにより開くことが可能で、列車内の乗客がプラットホームに避難するための非常脱出パネルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−245840号公報
【特許文献2】特開2001−311351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の緊急非常扉41、特許文献2の非常脱出パネル等の緊急非常扉は、緊急時以外の通常時には利用することがないので、列車内の乗客は可動ホーム柵のどこの部分が緊急非常扉であるのかを知らず、又は緊急非常扉が存在することすら知らない。特に、夜間や地下鉄において緊急時に照明が遮断された場合は、乗客は可動ホーム柵の緊急非常扉を探し出すことが容易ではない。
【0007】
また、プラットホームにいる乗客にとっても、可動ホーム柵のどの個所が緊急非常扉であるかを知らない。そのため、車両火災や停電等の緊急時に車両側から緊急非常扉をプラットホーム側に向かって開いた場合に、開いた緊急非常扉の一部がプラットホームにいる乗客に接触して怪我をさせたりする。また、緊急非常扉の近傍のプラットホームに多くの乗客がいる場合には、列車からプラットホームに避難する乗客がプラットホームの乗客に邪魔されてプラットホーム側に避難することができないという問題もある。
【0008】
本発明の目的は、上記課題を解消し、緊急時に容易に緊急非常扉の位置を乗客に知らせると共に、乗客に対して緊急案内情報を報知する緊急非常扉報知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための請求項1に記載の緊急非常扉報知装置は、プラットホームの可動ホーム柵のホーム長手方向に設け、緊急非常扉を備えた報知装置であって、前記緊急非常扉のプラットホーム側の側面に映像出力手段を設け、緊急時に該映像出力手段から緊急案内情報を出力
し、列車の先頭車両又は最後尾車両の所定停止位置近傍の前記可動ホーム柵の列車側側面に緊急入力部を配置し、該緊急入力部からの緊急入力信号に基づいて前記映像出力手段は前記緊急案内情報の出力を開始することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の緊急非常扉報知装置は、前記緊急非常扉に音声出力手段を設け、前記緊急時に該音声出力手段から緊急案内情報を出力することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の緊急非常扉報知装置は、前記緊急非常扉又は前記可動ホーム柵の開閉扉の戸袋部にバッテリを内蔵し、前記緊急時には前記バッテリから前記出力手段に電力を供給することを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の緊急非常扉報知装置は、列車の先頭車両又は最後尾車両の所定停止位置近傍の前記可動ホーム柵の列車側側面に緊急入力部を配置し、該緊急入力部からの緊急入力信号に基づいて前記出力手段は前記緊急案内情報の出力を開始することを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の緊急非常扉報知装置は、前記可動ホーム柵の列車側の側面、駅管理室、及び業務用携帯端末装置の何れかに緊急入力部を設け、該緊急入力部からの緊急入力信号に基づいて前記出力手段は前記緊急案内情報の出力を開始することを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の緊急非常扉報知装置は、前記緊急非常扉に点灯又は点滅を行う発光手段を設け、前記緊急入力部からの緊急入力信号に基づいて前記発光手段は点灯又は点滅を開始することを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の緊急非常扉報知装置は、前記緊急案内情報には前記緊急非常扉が開く旨を案内する案内情報を含むことを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の緊急非常扉報知装置は、前記緊急案内情報には早期地震警報システムからの情報に基づく地震予告情報を含むことを特徴とする。
【0017】
請求項9に記載の緊急非常扉報知装置は、前記緊急案内情報には火災警報装置からの情報に基づく災害情報、誘導情報を含むことを特徴とする。
【0018】
請求項10に記載の緊急非常扉報知装置は、前記緊急時でない通常時においては前記出力手段は運行情報、広告情報及び天候情報のうち少なくとも何れかを含む通常案内情報を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る緊急非常扉報知装置は、緊急時に列車の乗客に対して、音や光を介して緊急非常扉を開くことの案内情報を報知するので、列車の乗客は速やかにプラットホーム側に避難することができる。
【0020】
また緊急時に、プラットホームにいる乗降客に対しても映像、音及び光を介して案内情報を報知し、プラットホーム側の緊急非常扉の付近に乗降客が立ち入らないようにすることができる。
【0021】
更に、緊急時でない通常時において、緊急非常扉報知装置は運行情報や広告情報等を映像及び音声により提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】プラットホームに列車が停車した場合の可動ホーム柵の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1はプラットホームPに配置された緊急非常扉報知装置を含む可動ホーム柵1の正面図であり、左右にスライドする1対の開閉扉2と、この開閉扉2を収納する戸袋部3と、これらの戸袋部3間であって、ホーム長手方向に配置された報知装置4とから構成されている。
【0024】
図2はプラットホームPに列車Tが停車した場合の可動ホーム柵1の平面図である。可動ホーム柵1はプラットホームPに沿って、列車Tの上り下り各方面毎に設置された報知装置4が1台又は複数台配置されている。
【0025】
開閉扉2は列車Tの乗降口Taと同じ設置間隔で可動ホーム柵1に配置されており、プラットホームPに列車Tが到着すると、その列車Tの乗降口Taに合わせて開閉するように制御される。
【0026】
報知装置4はプラットホームP側に開く緊急非常扉4aを備えている。緊急非常扉4aの一方の端部に、緊急非常扉4aを開放するように回動する支軸部4bが設けられ、緊急非常扉4aの他方の端部の列車T側の側面に錠部4cが設けられている。普段はこの錠部4cにより緊急非常扉4aは施錠されている。錠部4cは例えば引っ掛け式のものであり、誰でも容易に列車T側から手動で解錠できるようにされている。錠部4cは実施例の引っ掛け式以外にも、手動操作であれば閂式等の適宜の施錠手段を用いることができる。
【0027】
また、戸袋部3の列車T側の側面には後述する緊急入力部5が配置されている。緊急非常扉4aは実施例のような片開きではなく、観音開き式或いは引戸式であってもよいが、
図2に示すような回動式の場合は乗客の邪魔とならないように180度開くようになっていることが好ましい。
【0028】
緊急非常扉4aの大きさは、横幅600〜800cm程度、高さは1500cm程度であり、緊急非常扉4aのプラットホームP側の側面には、横幅450〜600cm、高さ800〜1000cm程度の映像出力手段である表示パネル部4dが設けられている。この表示パネル部4dは液晶ディスプレイやLED表示器等を用いることが好適である。
【0029】
図3は報知装置4のブロック回路構成図である。緊急非常扉4aには、表示パネル部4dと、緊急非常扉4aの両面にそれぞれ設置したスピーカ部4e、4fと、発光部4gと、制御部4hと、バッテリ部4iと、スイッチ部4jとが設けられている。制御部4hは表示パネル部4d、スピーカ部4e、4f、発光部4gに接続し、これらの各部4d〜4gの出力を制御する。また、制御部4hには外部装置である緊急入力部5が接続されている。
【0030】
バッテリ部4iは電源システム6が接続されており、停電時にスイッチ部4jを切換えてバッテリ部4iから各部4d〜4hに電力を供給する。
【0031】
音声出力手段であるスピーカ部4eは、緊急非常扉4aのプラットホームP側の側面に設け、プラットホームP側の乗客に対して、緊急案内情報等を音声出力するものである。スピーカ部4fは緊急非常扉4aの列車T側の側面に設けられており、プラットホームP側の乗客に対して音声出力するスピーカ部4eに加えて、列車T側の乗客に対して音声出力を行う。スピーカ部4e、4fは緊急非常扉4aの頂部に、1個のスピーカを配置するようにしてもよく、スピーカ部4e、4fの何れか一方は省略してもよい。また、スピーカ部4e、4fは緊急非常扉4aに配置するのではなく、その近傍、例えば戸袋部3などに設けてもよい。
【0032】
発光部4gは緊急時にフラッシュ点滅を行うものであり、列車T側の錠部4cの近傍に設置されている。設置個所は列車T側の緊急非常扉4aの側面の任意個所でもよく、更には列車T側の緊急非常扉4aの側面の発光部4gに加えて、プラットホームP側の緊急非常扉4aの側面にも設けてもよい。また、
図1、
図2に示すように緊急非常扉4aの頂部に1個の発光部4gを設けてもよく、発光部4gはフラッシュによる点滅以外にも、赤色のLEDによる文字情報を点滅表示や連続点灯によって行ってもよい。
【0033】
緊急非常扉4aに内蔵する制御部4hは、戸袋部3に設けた緊急入力部5、又は駅務室や中央管理センター等の駅管理室に設けた緊急入力部5と有線又は無線により接続されている。
【0034】
緊急入力部5は
図2に示すように戸袋部3の列車T側の側面、或いは駅管理室の何れかに配置してもよいし、双方に配置してもよい。緊急入力部5を列車T側の戸袋部3に配置する場合は、列車Tの運転手又は車掌等の列車関係者が操作することを考慮して、先頭車両又は/及び最後尾車両の所定停止位置近傍の側面に設置することが好適である。
【0035】
更には、緊急入力部5を駅員が所持する業務用携帯端末装置に備えるようにしてもよい。プラットホームPにいる駅員の判断によって、報知装置4を通常モードから緊急報知モードに切換えることができる。
【0036】
緊急入力部5はボタン状のスイッチ等を適宜に使用し、誤操作防止のため列車関係者が有する鍵等によりロックを解除した後に操作するようにしてもよい。緊急入力部5を駅管理室等に配置する場合は、緊急入力部5を駅員が手動で操作する。
【0037】
緊急時でない通常時においては、報知装置4は
図4に示すように、表示パネル部4dの表示内容は先発、次発の列車案内の運行情報等の通常案内情報を表示している。プラットホームPにいる乗降客は、通常モードの表示パネル部4dの通常案内情報を見ることで、
図4に示すような運行情報等の各種情報を得ることが可能である。運行情報以外にも広告情報や天候情報等の各種情報を文字情報や画像情報により表示パネル部4dに表示することができ、周期的に表示内容を切換える。
【0038】
乗客が遊び半分で錠部4cをプラットホームP側から開放することも考えられるため、表示パネル部4dを設けた個所が、緊急時に緊急非常扉4aになることを通常時に乗客には知らせない。緊急入力部5から緊急入力信号があった緊急時にのみ、
図5に示すように緊急案内情報を報知する緊急報知モードに切換わり、表示パネル部4dの個所が緊急非常扉4aであることをプラットホームPの乗降客に対して知らせる。
【0039】
なお、緊急入力部5の入力により報知装置4を緊急報知モードに切換えるのは、主に停電や災害等の不具合により開閉扉2が開かない状態のときである。停電時においては、乗客は列車Tの乗降口Taを手動により開いた後に、緊急非常扉4aを介して列車TからプラットホームPに避難することになる。
【0040】
通常モードから緊急報知モードの切換えでは、表示パネル部4dの表示内容を通常時の先発、次発等の列車案内の運行情報の表示から、緊急入力部5からの緊急入力信号に基づいて、緊急案内情報である「緊急非常扉が開きます。ご注意下さい。」の表示に切換わる。更に、緊急案内情報として「緊急非常扉の近くにいる方は離れて下さい。」などの文字を交互に表示してもよい。
【0041】
可動ホーム柵1の各報知装置4は、内蔵する制御部4hにアドレス情報を設定可能であり、緊急入力部5からのアドレスを付与した緊急入力信号を受信することにより個々の緊急非常扉4aに対して、通常モード、緊急報知モードの表示を切換えることも可能である。
【0042】
また、緊急報知モードに切換わっていないプラットホームPを隔てた反対側の可動ホーム柵1の報知装置4の表示パネル部4dに対して、緊急入力部5からの表示指示に基づいて、「プラットホームの右方向に避難して下さい。」などの文字情報や経路図を用いた避難経路等の誘導情報を表示してもよい。このような表示により、プラットホームPにいる乗降客は誘導情報の指示に従って円滑に安全な場所に避難、退避できる。
【0043】
また、
図4、
図5では運行情報及び緊急案内情報を文字情報で例示したが、イラスト等の図形情報を含むようにしてもよいし、緊急案内情報の表示では目立つ表示色で表示するのが好ましい。更には、通常モード時には何も表示パネル部4dに表示せずに、緊急報知モード時のみ表示出力することもできる。
【0044】
スピーカ部4e、4fは表示パネル部4dと同様に、緊急入力部5からの緊急入力信号に基づいて乗客に対して緊急案内情報の音声出力を行う。例えば、「ここは緊急非常扉です。開きますのでご注意下さい。」との音声情報をスピーカ部4e及びスピーカ部4fから繰り返して出力する。
【0045】
この場合に、スピーカ部4e、4fは表示パネル部4dと同様に、通常モード時は運行情報や広告のBGM等を流していて、緊急報知モード時に緊急案内情報の音声出力を行ってもよいし、通常モード時は音声出力せずに緊急報知モード時のみ音声出力することもできる。
【0046】
緊急報知モード時の音声出力の例として、プラットホームP側に出力するスピーカ部4eからは、「ここは緊急非常扉です。開きますのでご注意下さい。」と音声出力を行い、列車T側に出力するスピーカ部4fからは、「ここは緊急非常扉です。ロックを解除して開いて下さい。」と音声出力を行う。このような場合に、例えばプラットホームP側は男性の音声出力とし、列車T側を女性の音声出力にすることで、乗客は音声内容を聞き分けることができる。また、緊急非常扉4aの頂部に1台のスピーカ部4eを配置した場合は、「ここは緊急非常扉です。開きますのでご注意下さい。」との音声を繰り返し出力する。
【0047】
発光部4gは表示パネル部4dと同様に、緊急入力部5からの緊急入力信号に基づいて点滅を開始する。この点滅により、緊急非常扉4aが何処にあるのかを、列車T内の乗客は離れていても認識することが可能である。また、発光部4gを錠部4c近くの緊急非常扉4a側面に設置した場合は、発光部4gがフラッシュ点滅することで、列車Tの乗客は何処に錠部4cがあるのかを容易に知ることができる。そして、列車T内の乗客は
図2の点線に示すように乗降口TaからプラットホームP縁部を可動ホーム柵1に沿って歩いて、緊急非常扉4aの錠部4cを解錠してプラットホームPの中央に避難することができる。
【0048】
このように、制御部4hは緊急入力部5からの緊急入力信号に基づいて、表示パネル部4dの表示内容を通常モードから緊急案内情報の表示する緊急報知モードに切換えると同時に、スピーカ部4e、4f及び発光部4gも緊急報知モードに切換える。
【0049】
また、緊急入力部5から入力される解除信号又は2回目の緊急入力信号を制御部4hが受信すると、制御部4hは表示パネル部4d、スピーカ部4e、4f及び発光部4gの緊急報知モードを通常モードに切換える。この通常モードには、出力を停止状態をすることも含まれる。
【0050】
表示パネル部4d〜制御部4hの電源は、通常時は可動ホーム柵1等のプラットホーム設備の電源システム6から得ている。緊急時においては、電源システム6の遮断時のスイッチ部4jの切換えにより、電源システム6からの接続状態から常時蓄電を行っているバッテリ部4iによる接続状態に切り換わり、バッテリ部4iから表示パネル部4d〜制御部4hに電力が供給される。
【0051】
スイッチ部4jは電源が切断されると同時に、電磁石等により接続していた状態が切断され、バッテリ部4iへの接続の切換えを行うスイッチであるが、電源が切れると切換わる各種のスイッチを適宜に採用することもできる。バッテリ部4iは緊急非常扉4aに内蔵させる以外に、緊急非常扉4aの軽量化又は設置スペースの確保のため、戸袋部3に内蔵してもよい。
【0052】
通常時には、報知装置4は制御部4hに接続する表示パネル部4d〜発光部4gを作動させることなく、電力を極力使用しないように運用し、緊急入力部5からの信号入力時のみ制御部4hが表示パネル部4d〜発光部4gを起動してもよい。
【0053】
また、錠部4cは電気錠にしてもよく、制御部4hが緊急入力信号を受信した場合に、この電気錠を解錠するようにしてもよい。
【0054】
更に、報知装置4は緊急入力部5として早期地震警報システムを接続することもできる。この場合に、遠隔地で発生した地震の到達直前に通知される地震予告信号を、無線等により制御部4hに入力し、表示パネル部4d及びスピーカ部4e、4fの出力内容を切換える。運行情報や広告情報の出力から、例えば
図6に示すように「地震が発生します。ご注意下さい。」等の地震予告情報の映像出力、音声出力に切換える。この場合に、表示パネル部4dに地震警報、震度、津波到達予測時間等を映像出力、音声出力すると同時に、避難方向の矢印や避難経路等を合わせて映像出力、音声出力してもよい。
【0055】
早期地震警報システム以外にも、プラットホームP内や駅構内で火災が発生した場合に、設置した火災警報装置から火災発生信号に基づいて、災害が発生した内容と避難情報を報知することもできる。
【0056】
また、報知装置4は戸袋部3の側面、又は駅管理室等に設置した緊急入力部5と上述の早期地震警報システムとを併せて運用することもできる。プラットホームPに列車Tが停車している可動ホーム柵1において、地震予告信号が入力された場合は最初に
図6の地震が発生する旨の映像出力、音声出力を開始し、その後に緊急入力信号に基づいて、
図5の映像出力、音声出力に切換わることになる。
【0057】
列車Tが停車していないプラットホームPを隔てた反対側の可動ホーム柵1の報知装置4については、
図6の地震が発生する旨の映像出力、音声出力が開始し、地震の発生と共に避難経路情報等を継続して表示してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 可動ホーム柵
2 開閉扉
3 戸袋部
4 報知装置
4a 緊急非常扉
4b 支軸部
4c 錠部
4d 表示パネル部
4e、4f スピーカ部
4g 発光部
4h 制御部
4i バッテリ部
4j スイッチ部
5 緊急入力部
6 電源システム
P プラットホーム
T 列車