(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を、
図1〜8に基づいて説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態による空気調和機の冷凍サイクル系統図であり、空気調和機110は、圧縮機101、室外四方弁112、室内熱交換器102、室内膨張弁104、室外熱交換器105、アキュームレータ107、そして元に戻って圧縮機101の吸込側を順次連結した冷凍サイクルを有している。そして、室内を冷房する場合に、圧縮機101で圧縮された冷媒は、室外熱交換器105で凝縮して液化した後、室内膨張弁104で減圧され室内熱交換器102で蒸発し、圧縮機101に戻るようになっている。なお、室内熱交換器102及び室内膨張弁104は室内機109に備えられており、室内機109には熱交換を促進するための室内送風機103が設けられている。
【0012】
また、圧縮機101、室外熱交換器105、及びアキュームレータ107等は室外機108に備えられており、室外機108には熱交換を促進するための室外送風機106が設けられている。圧縮機101は永久磁石同期モータ111によって駆動され、このモータ111の回転数(運転周波数)がインバータ装置210によって可変制御されている。
【0013】
これにより、冷凍サイクルに必要な能力に対応するようになっている。また、圧縮機101の回転数以外に冷媒流量を調整する室内膨張弁104又は室外膨張弁(図示せず)の開度、室内送風機103及び室外送風機106の回転数、冷房/暖房の運転モードを切り替える室外四方弁112などが制御され、そのための情報として運転モード、温度設定などを行うリモコンによる操作指令信号、各部の温度(圧縮機の吐出ガス温度、外気温度、熱交換器温度、蒸発温度、吸込温度、吸出温度、凍結温度、ガス管温度など)を検出した信号などが
図2に示す室外制御基板227へ入力される。
【0014】
また、インターフェイス用コネクタ240を介して室外制御基板227から出力されたインバータ要求周波数が入力されると共に、インバータ装置210から室外制御基板227へ運転周波数及び圧縮機用モータ111運転電流を出力する。
【0015】
室外制御基板227へ入力される検出信号及び指令信号は、インターフェイス用コネクタ240を介してマイクロコンピュータ(マイコン)231へ入力されることにより、冷凍サイクル制御をインバータ装置210にて行い、各種制御機構(室外膨張弁、室外送風機106、冷房/暖房の運転モードを切り換える室外四方弁112)を制御する。
【0016】
図2は、上記インバータ装置210の構成を表すブロック図を示す。以下、
図3〜8を適宜参照しながら
図2について詳細に説明する。まず、回路構成について説明し、詳細な制御については後述する。
【0017】
インバータ装置210は、三相交流電源273からの交流電力を直流電力に変換するコンバータ回路225と、このコンバータ回路225で生成された直流電力から交流電力を生成して圧縮機用モータ111の運転周波数を可変して駆動するインバータ回路221と、インバータ回路221をスイッチング動作させるインバータ用ドライバ回路232と、シャント抵抗224に発生する電圧を取り込みスイッチング素子222を保護する保護回路B275と、シャント抵抗224を用いてインバータ回路221に流れる直流電流を検出する電流検出回路233と、インバータ回路221の定格電流を超えて運転しないようにソフト保護を行う保護回路A274とを備えたインバータ・コンバータ基板201と、室外制御基板227との通信をする通信回路239と、インバータ回路221を制御するマイクロコンピュータ(マイコン)231と、マイコン231及びドライバ回路232等にコンバータ回路225で生成された高電圧を例えば5V又は15V程度の制御電源を供給する電源回路235と、直流電圧から不足電圧でないか確認する直流電圧検出回路234とを備えたマイコン基板204から構成されている。
【0018】
従来、インバータ装置210は、インバータ回路221およびドライバ回路232から構成されるIPMとIPMを制御するマイコン231とが同じ基板に実装され一体に構成されていたのに対し、
図2に示す回路構成では、IPMが配置されるインバータ・コンバータ基板201と、マイコン231が配置されるマイコン基板とが、それぞれ分離した基板として別体で構成される。このように基板を分割したことで、例えば生産中止に伴うIPMあるいはマイコン231交換作業において必要となる基板単位でのノイズ試験等が、インバータ・コンバータ基板201またはマイコン基板204単体で実施可能となる。そのため、インバータ装置210の基板全体での試験を省略することができ、試験工数および時間を短縮することができる。また、各基板の取替え作業が発生してもインバータ・コンバータ基板201またはマイコン基板204ごとに取り換えることができる。
【0019】
また、インバータ装置210を構成しているインバータ・コンバータ基板201は、インバータ回路221やドライバ回路232により構成されるIPMとDM(Diode Module)であるコンバータ回路225とを併せ持つ。IPMやDMの半導体素子203を交換する必要があるときは、IPM定格25A、30A、50A、75Aが存在し、DMについても、20A、30A、40A、50A、60A、100Aが存在するため、IPMやDMの外形寸法および制御部のピン間隔が同等であるものを選定する。これにより、インターフェイスの組合せを変えないで、半導体素子203の新旧代替を行う。
【0020】
図3は、インバータ・コンバータ基板201と半導体素子203との実装状態を表す。半導体素子203は発熱をするために、回路部品が実装される実装面の裏側の部品がハンダ付されるハンダ面側に配置し、放熱フィン236が取り付けられることで放熱を行う。この放熱フィン236への固定ネジ穴も複数の半導体素子203に対応できるように、実装する半導体素子203とは異なる半導体素子203に取り付ける放熱フィン236の固定ネジ穴も設けておくと良い。
【0021】
図4は、マイコン基板204の実装状態を示す。マイコン202には電源として5Vを供給する必要がある。この電圧は強電部から入力された直流電圧をスイッチングトランス4にて、5Vを生成している。
【0022】
室外制御基板227は、外気温度サーミスタ261を用いて外気温度を検出する外気温度検出回路262と、吐出温度サーミスタ263を用いて圧縮機101の吐出温度を検出する吐出温度検出回路264と、吐出圧力センサ265を用いて圧縮機101の吐出圧力を検出する吐出圧力検出回路266とを備えている。
【0023】
ファンコントロール基板228は、ファン用インバータ回路221と、ファン用インバータ回路221を制御するマイクロコンピュータ(マイコン)231と、ファン用インバータ回路221をスイッチング動作させるインバータ用ドライバ回路232と、電流検出回路233と、通信回路239と、ファンモータ分離ジャンパー線113とから構成される。
【0024】
また、ファンコントロール基板228は、インバータ装置210のコンバータ回路225から生成された直流電圧が入力される。インバータ装置210と室外制御基板227とは接続されている。ファンコントロール基板228は、室外送風機106のファンを駆動させる。
【0025】
ファンコントロール基板228は、従来ファンモータ114と一体に構成されていたが、ファンモータ114とファンモータ114の制御基板であるファンコントロール基板228とを分離し別体として構成することで、ファンモータ114が故障した場合にもファンモータ114だけを取り換えることが可能となる。したがって、ファンコントール基板228の交換費用が発生せず、ファンモータ114の交換にかかるコストを低減することができる。
【0026】
また、ファン用インバータ回路221への入力電圧は、インバータ装置210のコンバータ回路225から生成された直流電圧を利用することで、ファンコントロール基板228に従来のように別途コンバータ回路225を設ける必要がなくなり、電気箱の省スペース、回路構成を簡略化およびコストを低減することができる。
【0027】
また、ファンコントロール基板上で、ファン用インバータ回路221とファンモータ114とを電気的に接続する配線の一部をファンモータ分離ジャンパー線113により構成することで、ファンモータ114が過電流または過電圧によって故障した場合にファンモータ分離ジャンパー線113を切断することができるため、ファンモータ114に過電流または過電圧が再印加されること防止できる。
【0028】
図5は、ファンコントロール基板228の実装状態を示す。入力された直流電圧を平滑するために平滑コンデンサ5を実装している。半導体素子203は、発熱するためにハンダ面側に実装し、放熱フィン236が取り付けられる。この半導体素子203は、ファンが2つの場合には2つ、ファンが1つの場合には1つファンコントロール基板228に実装される。また、マイコン基板204との伝送のためにリード線による接続がされるコネクタ202が取り付けられる。
【0029】
図6は、インバータ・コンバータ基板201、マイコン基板204、ファンコントロール基板228を配線にて実際に接続した状態を示す。各基板には配線用にコネクタ202を実装している。これらのコネクタ202を介して、マイコン基板204とファンコントロール基板228とを第1の配線206で電気的に接続し、マイコン基板204とインバータ・コンバータ基板201とを第2の配線207で電気的に接続している。ファンコントロール基板228及びインバータ・コンバータ基板201において、問題となるエラーによって停止した場合に、エラー情報がマイコン231に送られる。
【0030】
図7は、インバータ装置210の断面図であり、基板と半導体素子203の実装状態を示す。図示するように基板のハンダ面に実装された半導体素子203の背面側に放熱フィン236を設けることで、半導体素子203の放熱を行う。この放熱フィン236は、他の実装された回路部品と接触し干渉する虞があるため、また、放熱に大面積のフィンが必要となることからハンダ面に実装することが通常である。
【0031】
図8は、3種類の基板の実装状態の別例を示す。
図6と同じ接続を行うが、配線ではなく各基板の一端部に取り付けられた第1のリードピン229と第2のリードピン230によって電気的に接続している。
【0032】
インバータ・コンバータ基板201とマイコン基板204とは、マイコン基板204が基板平面方向にずらされた配置で重ねられ、マイコン基板204がずらされた方向のインバータ・コンバータ基板201の一端部と、ずらされた方向と反対方向のマイコン基板204の一端部が重なった位置で、第1のリードピン229および第2のリードピン230により電気的に接続される。また、マイコン基板204とファンコントロール基板228も同様に基板同士を平面方向にずらして接続を行う。マイコン基板204とファンコントロール基板228とは、ファンコントロール基板228がインバータ・コンバータ基板201と反対方向にずらされた配置で重ねられて、端部に設けられた接続部で第1のリードピンにより接続する。リードピンにより接続および固定することによって、配線とは違い省スペース化、配線にノイズが乗ることによる誤動作を防げる。
【0033】
このように各基板を接続するときに、基板平面の上方から見て基板同士が重なり合う面積が減るように平面方向にずらして配置することで、インバータ・コンバータ基板201およびファンコントロール基板228に実装したIPM等から生じている誘導ノイズ等の影響による誤動作を抑制することができる。また、コンデンサのように背の高い部品が基板上に配置される場合、基板平面部の上方向に別の基板が接続されると、各基板に実装された部品同士または部品と基板が接触し干渉する虞があるが、各基板をずらして接続することで、ハンダ面に存在する部品と実装面に存在する部品間の空間距離を広げることができ、干渉を防ぐことができる。
【0034】
三相交流電源273からの交流電圧は、コンバータ回路225にて直流にされ、直流/交流変換器であるインバータ回路221は、複数のスイッチング素子222が三相ブリッジ結線された回路である。コンバータ225は、複数の整流素子226がブリッジ結線された回路を設ける。
【0035】
また、電源投入時などに閉路する電磁接触器253が平滑コンデンサ270に流れる過大な突入電流で溶着しないよう電磁接触機253と並列に突入電流制限抵抗器254を設ける。コンバータ回路225とインバータ回路221との間には、力率改善用リアクトル252と、電解コンデンサ270とが接続されている。
【0036】
インバータ回路221は、スイッチング素子222がスイッチング時に発生する逆起電力を回生するため、スイッチング素子222と併設してフライホイール素子223が設けられている。ドライバ回路232は、マイコン231からの微弱な信号(後述するPWM信号)を増幅して、スイッチング素子222のスイッチング動作を制御するようになっている。これにより、インバータ回路221で交流電力が生成されるとともに交流周波数として制御され、圧縮機用モータ111が駆動される。
【0037】
マイコン231は、センサレスタイプのベクトル制御機能を有している。圧縮機用モータ111の回転速度や位相(磁極位置)を推定するようになっており、速度センサや磁極位置センサを不要としている。すなわち、圧縮機用モータ111に供給される電流は、駆動電流を電流検出回路233にて電流を増幅してマイクロコンピュータ231に取り込まれ、駆動電流を再現するようになっており、圧縮機用モータ111に出力している正弦波交流電流を再現して監視される。
【0038】
マイコン231とスイッチング素子222との間にはマイコン231からの微弱な信号にてスイッチング素子222を駆動できるレベルまで増幅するインバータ用ドライバ回路232が設けられる。
【0039】
通信回路239は室外制御基板227からの信号が入力されるインターフェイス用コネクタ240と、入力された信号をマイコン231へ光信号により伝達するフォトカプラ241とから構成され、電気的隔離が得られた状態で送受信する。
【0040】
インバータ回路221、つまりIPMは入力された直流を交流に変換し、圧縮機用モータ111の運転周波数を可変速で駆動する。また、インバータ装置210は過電流に対する保護機能と制御電源電圧の低下に対して、インバータ回路221を停止するという保護機能を備えている。各保護機能が作動したときには異常信号をマイコン231へ出力し、インバータ回路221を停止させる。インバータ回路221はドライバ回路232によって制御されているが、ドライバ回路232からインバータ回路221へのパルス信号を停止することでインバータ回路221は停止する。
【0041】
シャント抵抗224に流れる電流を監視し、過電流が流れていないかを確認することも可能である。シャント抵抗224に流れる電流を監視し、シャント抵抗に設定値以上の電流が流れた場合に、過電流が流れたと判定できる。
【0042】
また、シャント抵抗224に過電流が発生した場合のインバータ回路221を保護するため、保護回路A274とB275を備える。保護回路A274を備えることによりインバータ回路221の定格電流を超えて運転しないようにソフト保護を行う。また、Fo信号を出力するスイッチング素子222を使用する場合には保護回路B275を実装しない。保護回路A274はスイッチング素子222の定格電流の1倍の過電流からスイッチング素子222を保護している。Fo信号を出力しないスイッチング素子222を使用する場合には保護回路A274に代えて保護回路B275を実装することによりスイッチング素子222を保護する。保護回路B275はスイッチング素子222の定格電流の1.3倍の過電流からスイッチング素子222を保護している。パワー素子定格の1.3倍を超える過電流発生時に、ドライバ回路232に信号を送り、ドライバ回路232からFo信号がマイコン231に送られる。ドライバ回路232に過電流保護回路内蔵型のパワー素子を使用する場合は、保護回路B275を備えなくてよい。
そして、インバータ装置210が停止したという過電流信号をマイコン231に送信し、マイコン231は過電流を受信したという信号を室外制御基板227に送信する。室外制御基板227はインバータ装置210が故障しているのかどうかの判断をするため何度かリトライを試みて、所定の回数のリトライを試みても保護機能が作動するようであれば故障であると判断される。
【0043】
また、前述した特許文献1では、過電流検出手段の出力を自由に可変することで、過電流発生時の圧縮機用モータ111(DCブラシレスモータ)の磁石が減磁する電流値以下となるような過電流保護値を設定し、基板構成について同一にしないことから従来通り、ノイズ試験などを基板単位にて実施しなければならない。
【0044】
本実施例のような構成によれば、半導体素子203の生産中止によって、交換が行われる際に、インバータ・コンバータ基板201をノイズ試験することによって、不安点の抽出をして早期に製品展開が可能となる。よって、基板全体としての試験を省略することができる。従来と違いインバータ・コンバータ基板201のみを試験すればよい点が特徴であり、インバータ・コンバータ基板201の大きさ及び部品高さを新旧互換性のあるように製作して、シャント抵抗224と保護回路B275の定数を圧縮機用モータ111の減磁しない過電流保護値に調節して、インバータ装置210を駆動させることができる。
【0045】
一方、ファンモータ114が過電流あるいは過電圧によって故障した場合に、ファンモータ分離ジャンパー線113あるいはヒューズを切断することで、故障したファンモータを基板から分離することができ、故障したファンモータ114に対する電圧供給をとめることが出来るため、過電流もしくは過電圧の再印加を予防する。このため、故障したファンモータ114は新規のモータと交換することができるため、ファンコントロール基板228の交換を省略することで、基板交換費用が発生しないように処置できる。
【0046】
また、圧縮機駆動用のインバータ・コンバータ基板201は、インバータ電流が大きい場合、もしくはインバータ電流が小さい場合にそれぞれのインバータ電流に合ったインバータ・コンバータ基板201に交換して圧縮機101を運転させることができる。
【0047】
一方、マイコン基板204、ファンコントロール基板228、インバータ・コンバータ基板201の3種類に分けることにより、製造が細分化されるため、製造コストの低減が見込める。基板毎の部品原価の見直しにより、部品の原価低減が行える。