特許第6121304号(P6121304)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6121304
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】焼成装置及び棒状部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F27B 5/10 20060101AFI20170417BHJP
   F27B 5/16 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   F27B5/10
   F27B5/16
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-211827(P2013-211827)
(22)【出願日】2013年10月9日
(65)【公開番号】特開2015-75279(P2015-75279A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2015年11月10日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成24年度〜平成25年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「固体酸化物型燃料電池を用いた事業用発電システム要素技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】後藤 征司
(72)【発明者】
【氏名】川水 努
(72)【発明者】
【氏名】城島 孝洋
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 悠太
(72)【発明者】
【氏名】樋渡 研一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 慎
【審査官】 田口 裕健
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−277839(JP,A)
【文献】 特開2003−246679(JP,A)
【文献】 特開2002−350063(JP,A)
【文献】 特開2011−246316(JP,A)
【文献】 特公昭33−002284(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 5/00− 5/18
F27B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被焼成物が配置される焼成雰囲気を形成するマッフル炉と、
前記マッフル炉が配置される炉内空間に高温ガスを供給するバーナと、
複数の貫通孔が形成される抵抗体とを備え、
前記マッフル炉の一端には、前記炉内空間前記焼成雰囲気とを接続して、前記高温ガスを前記焼成雰囲気に流入させる上向き開口部が形成され、
前記マッフル炉の他端には、前記焼成雰囲気と前記炉内空間の外部とを接続して、前記高温ガスを前記炉内空間の外部に排気する排気口が形成され、
前記抵抗体は、前記上向き開口部を覆うように配置され
前記高温ガスは、前記複数の貫通孔を通過する焼成装置。
【請求項2】
前記上向き開口部の鉛直上側に配置される異物落下防止板をさらに備える請求項1に記載される焼成装置。
【請求項3】
前記抵抗体は、互いに接合されていない複数の棒状部材から形成される請求項1〜請求項2のうちのいずれか一項に記載される焼成装置。
【請求項4】
前記複数の棒状部材がそれぞれ挿入される複数の挿入孔が形成される抵抗体支持台をさらに備える請求項3に記載される焼成装置。
【請求項5】
前記複数の棒状部材がそれぞれ載置される複数の溝が形成される抵抗体支持台をさらに備える請求項3に記載される焼成装置。
【請求項6】
請求項3〜請求項5のうちのいずれか一項に記載される焼成装置を用いて前記棒状部材を製造する棒状部材の製造方法であって、
記複数の被焼成物焼成することにより作製される複数の焼成物から前記複数の棒状部材を形成する棒状部材の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼成装置及び棒状部材の製造方法に関し、特に、長尺の複数の被焼成物を焼成するときに利用される焼成装置及び棒状部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物型燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)に備えられる複数のセルは、長尺の被焼成物を焼成することにより作製される。長尺の被焼成物が焼成されることにより形成される焼成物のそりを低減することが望まれている(特許文献1〜6参照。)。長尺の被焼成物は、吊り下げられた状態で焼成されることにより、焼成物のそりが低減されることが知られている(特許文献2〜6参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−161596号公報
【特許文献2】特開2006−151749号公報
【特許文献3】特許第4424899号公報
【特許文献4】特許第2608671号公報
【特許文献5】特許第4335345号公報
【特許文献6】特許第3930963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
長尺の焼成物を適切に量産することが望まれ、燃焼ガスを用いて長尺の被焼成物を加熱することにより焼成することが望まれている。複数の被焼成物は、焼成時の複数の被焼成物の温度分布のばらつきが大きいときに、適切に焼成されないことがある。複数の被焼成物を適切に焼成する為には、焼成時の複数の被焼成物の温度分布のばらつきを低減することが望まれている。
【0005】
本発明の課題は、複数の被焼成物を適切に焼成する焼成装置を提供することにある。
本発明の他の課題は、複数の被焼成物を焼成する焼成雰囲気の温度分布のばらつきを低減する焼成装置を提供することにある。
本発明のさらに他の課題は、複数の被焼成物を焼成する焼成雰囲気の温度分布のばらつきを容易に低減する焼成装置を提供することにある。
本発明のさらに他の課題は、複数の被焼成物を焼成する焼成雰囲気の温度分布のばらつきを低コストで低減する焼成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による焼成装置は、複数の被焼成物が配置される焼成雰囲気を形成するマッフル炉と、そのマッフル炉が配置される炉内空間に高温ガスを供給するバーナと、複数の貫通孔が形成される抵抗体とを備えている。このとき、そのマッフル炉の一端には、その炉内空間焼成雰囲気とを接続して、前記高温ガスを前記焼成雰囲気に流入させる上向き開口部が形成されている。マッフル炉の他端には、焼成雰囲気と炉内空間の外部とを接続して、高温ガスを炉内空間の外部に排気する排気口が形成される。抵抗体は、その上向き開口部を覆うように配置され、高温ガスは、複数の貫通孔を通過する
【0007】
その高温ガスは、その複数の貫通孔を通過することによりその炉内空間からその焼成雰囲気に流入する。このような焼成装置は、高温ガスが複数の貫通孔を通過することにより、焼成雰囲気に流入する高温ガスの流入流量の分布を均一化することができ、焼成雰囲気の温度分布のばらつきを低減することができる。このような焼成装置は、焼成雰囲気の温度分布のばらつきを低減することにより、複数の被焼成物を適切に焼成することができる。
【0008】
本発明による焼成装置は、その上向き開口部の鉛直上側に配置される異物落下防止板をさらに備えている。このような異物落下防止板は、高温ガスが鉛直上側から上向き開口部に流入することを防止し、高温ガスが焼成雰囲気に流入する流入流量の分布を適切に均一化することができ、焼成雰囲気の温度分布のばらつきを適切に低減することができる。このような焼成装置は、異物落下防止板を備えることにより、さらに、上向き開口部の鉛直上側から落下する異物が焼成雰囲気に侵入することを防止することができる。このため、このような焼成装置は、焼成雰囲気の温度分布のばらつきを低減することにより、または、焼成雰囲気に異物が侵入することを防止することにより、複数の被焼成物を適切に焼成することができる。
【0009】
その抵抗体は、互いに接合されていない複数の棒状部材から形成されている。複数の棒状部材は、互いに接合されていないことにより、1つずつ取り扱うことができる。抵抗体は、複数の棒状部材を1つずつ取り扱うことにより、一体に形成される他の抵抗体に比較して、容易に取り扱うことができる。このため、このような焼成装置は、抵抗体を取り扱うことが容易であることにより、容易に組み立てることができ、複数の被焼成物を容易に焼成することができる。
【0010】
本発明による焼成装置は、その複数の棒状部材がそれぞれ挿入される複数の挿入孔が形成される抵抗体支持台をさらに備えている。このような焼成装置は、その複数の棒状部材が複数の挿入孔にそれぞれ挿入されることにより、その複数の棒状部材から抵抗体が適切に形成されるように、複数の棒状部材が容易に高精度に位置決めされることができ、焼成雰囲気の温度分布のばらつきを容易に適切に低減することができる。このような焼成装置は、焼成雰囲気の温度分布のばらつきを容易に適切に低減することにより、複数の被焼成物を容易に適切に焼成することができる。
【0011】
本発明による焼成装置は、その複数の棒状部材がそれぞれ載置される複数の溝が形成される抵抗体支持台をさらに備えている。このような焼成装置は、その複数の棒状部材が複数の溝にそれぞれ載置されることにより、その複数の棒状部材から抵抗体が適切に形成されるように、複数の棒状部材が容易に高精度に位置決めされることができ、焼成雰囲気の温度分布のばらつきを容易に適切に低減することができる。このような焼成装置は、焼成雰囲気の温度分布のばらつきを容易に適切に低減することにより、複数の被焼成物を容易に適切に焼成することができる。
【0012】
その複数の棒状部材は、複数の被焼成物を焼成することにより作製される複数の焼成物から形成されている。抵抗体は、本焼成装置により焼成された焼成物の不良品をその複数の棒状部材として利用することにより、安価に作製されることができる。このような焼成装置は、抵抗体が安価に作製されることにより、焼成雰囲気の温度分布のばらつきを低コストで低減することにより、複数の被焼成物を低コストで適切に焼成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明による焼成装置は、複数の被焼成物が配置される焼成雰囲気の温度分布のばらつきを低減することにより、複数の被焼成物を適切に焼成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】焼成装置を示す断面図である。
図2】マッフル炉上部構造体を示す斜視図である。
図3】マッフル炉上部構造体を示す断面図である。
図4】抵抗体を示す平面図である。
図5】他のマッフル炉上部構造体を示す斜視図である。
図6】他のマッフル炉上部構造体を示す側面図である。
図7】他の抵抗体を示す平面図である。
図8】他の抵抗体を示す側面図である。
図9】さらに他のマッフル炉上部構造体を示す側面図である。
図10】さらに他のマッフル炉上部構造体を示す斜視図である。
図11】異物落下防止板を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照して、焼成装置の実施の形態を以下に記載する。その焼成装置10は、図1に示されているように、焼成炉1とバーナ2とマッフル炉3とを備えている。焼成炉1は、外部環境から隔離される炉内空間5を内部に形成している。バーナ2は、燃料を燃焼させることにより高温ガスを生成し、その高温ガスを炉内空間5の下部に噴射する。
【0016】
マッフル炉3は、マッフル炉本体6とセル吊り下げ部材7とマッフル炉上部構造体8とを備えている。マッフル炉本体6は、筒状に形成され、内部に焼成雰囲気11を形成している。マッフル炉本体6は、焼成雰囲気11の長手方向が鉛直方向に沿うように、炉内空間5に配置されている。マッフル炉本体6は、マッフル炉本体6の上端に上向き開口部12が形成されている。焼成雰囲気11は、上向き開口部12を介して炉内空間5のうちのマッフル炉本体6の外側に接続されている。焼成雰囲気11は、さらに、マッフル炉本体6の下端を介して炉内空間5の外部に接続されている。
【0017】
セル吊り下げ部材7は、上向き開口部12の近傍に配置され、マッフル炉本体6に固定されている。セル吊り下げ部材7は、長尺の複数の被焼成物13の一端を把持し、複数の被焼成物13が鉛直方向に沿って焼成雰囲気11に配置されるように、かつ、複数の被焼成物13がマッフル炉本体6に接触しないように、複数の被焼成物13を支持する。複数の被焼成物13は、筒状に形成され、焼成されることにより、固体酸化物型燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)に備えられる複数のセルに形成される。
【0018】
マッフル炉上部構造体8は、図2に示されるように、マッフル炉本体6の上向き開口部12を塞ぐように、マッフル炉本体6の鉛直上方に配置されている。マッフル炉上部構造体8は、図3に示されるように、箱型に形成され、内部に内部空間14を形成している。マッフル炉上部構造体8は、内部空間14が焼成雰囲気11に接続されるように、マッフル炉本体6の鉛直上方に配置されている。
【0019】
マッフル炉上部構造体8は、抵抗体支持台15と天板16とを備えている。抵抗体支持台15は、複数の板材から形成されている。その複数の板材は、それぞれ、鉛直方向に平行である複数の平行面にそれぞれ沿うように配置され、互いに接合されている。抵抗体支持台15のうちの1対の平行面に沿う2つの板材には、横向き開口部17が形成されている。横向き開口部17は、炉内空間5を内部空間14に接続している。抵抗体支持台15は、さらに、その複数の板材に抵抗体支持面18が形成されている。抵抗体支持面18は、横向き開口部17より鉛直下側に形成され、マッフル炉上部構造体8がマッフル炉本体6の鉛直上方に配置されているときに、1つの水平面に概ね沿うように、かつ、法線が鉛直上側を向くように、形成されている。
【0020】
天板16は、板状に形成されている。天板16は、水平面に沿って配置され、マッフル炉3の上向き開口部12の鉛直上方に配置され、抵抗体支持台15に固定されている。さらに、天板16は、上向き開口部12の上部を覆うように、すなわち、天板16をある水平面に正射影した天板図形が、上向き開口部12をその水平面に正射影した上向き開口部図形を含むように、形成されている。
【0021】
焼成装置10は、さらに、抵抗体21を備えている。抵抗体21は、板状に形成され、縁が抵抗体支持面18に載置されることにより、複数の被焼成物13が抵抗体21に接触しないように、内部空間14に配置されている。抵抗体21は、このように配置されることにより、マッフル炉3の上向き開口部12を覆っている。抵抗体21は、図4に示されるように、複数の線材が交差する節が結節されることにより作製される網から形成されている。すなわち、抵抗体21は、複数の貫通孔22が形成されている。このとき、複数の貫通孔22は、複数の被焼成物13に対応している。複数の貫通孔22のうちのある被焼成物に対応する貫通孔は、その被焼成物の鉛直上側に配置されている。
【0022】
焼成装置10は、複数の被焼成物13を焼成するときに利用される。複数の被焼成物13は、まず、マッフル炉本体6に接触しないように、かつ、鉛直方向に沿ってマッフル炉本体6の炉内の焼成雰囲気11に配置されるように、一端がセル吊り下げ部材7に把持される。バーナ2は、複数の被焼成物13が焼成雰囲気11に適切に配置された後に、燃料を燃焼させることにより高温ガスを生成し、その高温ガスを焼成炉1の炉内空間5の下部に供給する。バーナ2は、さらに、複数の被焼成物13が所定の温度変化をするように、その高温ガスの温度を制御する。
【0023】
その高温ガスは、炉内空間5の下部に供給されることにより、炉内空間5のうちのマッフル炉本体6の外側を上昇する。その高温ガスは、炉内空間5を上昇した後に、横向き開口部17を通ってマッフル炉上部構造体8の内部空間14を水平方向に移動する。その高温ガスは、横向き開口部17から内部空間14に供給された後に、抵抗体21に形成された複数の貫通孔22を通って下降し、マッフル炉本体6の炉内の焼成雰囲気11に供給される。その高温ガスは、焼成雰囲気11に供給されると、焼成雰囲気11を下降し、焼成雰囲気11を加熱し、複数の被焼成物13を加熱する。複数の被焼成物13は、加熱されることにより、焼成される。複数の被焼成物13は、焼成されることにより、固体酸化物型燃料電池に利用される複数のセルに形成される。その高温ガスは、焼成雰囲気11を下降した後に、マッフル炉本体6の下端を介して炉内空間5の外部に排気される。
【0024】
その高温ガスは、抵抗体21を通過することにより、複数の貫通孔22をそれぞれ通過する複数の高温ガスの流入流量が均一化される。すなわち、焼成装置10は、抵抗体21を備えることにより、抵抗体21が設けられていない比較例の焼成装置に比較して、焼成雰囲気11に流入する高温ガスの流入流量の水平方向の分布をより均一化することができる。焼成装置10は、焼成雰囲気11に流入する高温ガスの流入流量の水平方向の分布を均一化することにより、焼成雰囲気11の温度分布のばらつきを低減することができる。複数の被焼成物13は、焼成雰囲気11の温度分布のばらつきが小さいときに、一様に加熱され、適切に焼成されることができる。このため、焼成装置10は、焼成雰囲気11の温度分布のばらつきを低減することにより、複数の被焼成物13を適切に焼成することができる。
【0025】
さらに、焼成装置10は、天板16が横向き開口部17の鉛直上方に配置されていることにより、天板16の鉛直上方から落下する異物が天板16に堆積し、その異物が抵抗体21と横向き開口部17とを通って焼成雰囲気11に侵入することを防止することができる。複数の被焼成物13は、異物が大量に付着すると、適切に焼成されないことがある。このため、焼成装置10は、異物が焼成雰囲気11に侵入することを防止することにより、複数の被焼成物13を適切に焼成することができる。
【0026】
なお、抵抗体21は、上向き開口部12を複数の流路に分割する他の抵抗体に置換されることができる。その抵抗体としては、パンチングメタルのように板を加工することにより複数の貫通孔が形成されるものが例示される。このような抵抗体を備える焼成装置も、既述の実施の形態における焼成装置10と同様にして、焼成雰囲気11の温度分布のばらつきを低減し、複数の被焼成物13を適切に焼成することができる。
【0027】
焼成装置の実施の他の形態は、既述の実施の形態における焼成装置10のマッフル炉上部構造体8が他のマッフル炉上部構造体に置換されている。そのマッフル炉上部構造体31は、図5に示されるように、マッフル炉上部構造体8と同様にして、箱型に形成され、内部空間が焼成雰囲気11に接続されるように、マッフル炉本体6の鉛直上方に配置されている。マッフル炉上部構造体31は、抵抗体支持台32と天板33とを備えている。
【0028】
抵抗体支持台32は、複数の板材から形成され、その複数の板材が鉛直方向に平行である複数の平行面にそれぞれ沿うように互いに接合されている。抵抗体支持台32は、その複数の板材の各々に横向き開口部34が形成されている。横向き開口部34は、炉内空間5をマッフル炉上部構造体31の内部空間に接続している。天板33は、板状に形成され、マッフル炉3の上向き開口部12の鉛直上方に配置されるように、抵抗体支持台32に固定されている。
【0029】
抵抗体支持台32は、さらに、図6に示されるように、その複数の板材の各々に複数の挿入孔35が形成されている。複数の挿入孔35は、横向き開口部34より鉛直下側に形成されている。その複数の板材のうちの任意の板材に形成される複数の挿入孔35は、水平方向に並んでいる。
【0030】
このような焼成装置は、さらに、既述の実施の形態における抵抗体21が他の抵抗体36に置換されている。抵抗体36は、図7に示されるように、複数の第1棒状部材37と複数の第2棒状部材38とから形成されている。複数の第1棒状部材37と複数の第2棒状部材38とは、それぞれ、複数の被焼成物13が焼成されることにより作製される複数の焼成物のうちの不良品から形成されている。複数の第1棒状部材37と複数の第2棒状部材38とは、不良品から形成されることにより、低コストで形成されることができる。
【0031】
複数の第1棒状部材37は、図8に示されるように、ある水平面に重なるように配置されている。複数の第2棒状部材38は、複数の第1棒状部材37に接するように、複数の第1棒状部材37に重なる水平面と異なる他の水平面に重なるように配置されている。抵抗体36は、図7に示されるように、複数の第1棒状部材37が複数の平行線に沿って配置され、複数の第2棒状部材38がその複数の平行線に垂直である他の複数の平行線沿って配置されることにより、網状に形成されている。すなわち、抵抗体36は、複数の貫通孔39が形成されている。このとき、複数の貫通孔39は、複数の被焼成物13に対応している。複数の貫通孔39のうちのある被焼成物に対応する貫通孔は、その被焼成物の鉛直上側に配置されている。
【0032】
複数の第1棒状部材37と複数の第2棒状部材38との各々は、抵抗体支持台32に形成される複数の挿入孔35のうちの対向する2つの挿入孔に対応している。複数の第1棒状部材37と複数の第2棒状部材38とは、各々がその2つの挿入孔に挿入されることにより、網状に形成される。すなわち、抵抗体支持台32に形成される複数の挿入孔35は、複数の第1棒状部材37と複数の第2棒状部材38とが複数の挿入孔35に挿入されたときに、複数の第1棒状部材37と複数の第2棒状部材38とが所定の網状に形成されるように、配置されている。
【0033】
複数の第1棒状部材37と複数の第2棒状部材38とは、複数の被焼成物13が焼成雰囲気11に適切に配置された後に、抵抗体36に形成されるように、一本ずつ対応する2つの挿入孔に挿入される。バーナ2は、抵抗体36が適切に形成された後に、燃料を燃焼させることにより高温ガスを生成し、その高温ガスを焼成炉1の炉内空間5の下部に供給する。その高温ガスは、既述の実施の形態における焼成装置10で利用された高温ガスと同様にして、抵抗体36の複数の貫通孔39を通って焼成雰囲気11を下降し、複数の被焼成物13を焼成する。
【0034】
このような焼成装置も、既述の実施の形態における焼成装置10と同様にして、高温ガスを抵抗体36に通過させることにより、焼成雰囲気11の温度分布のばらつきを低減し、複数の被焼成物13を適切に焼成することができる。
【0035】
抵抗体36は、複数の第1棒状部材37と複数の第2棒状部材38とを1本ずつ取り扱うことにより、既述の実施の形態における抵抗体21に比較して、より容易に取り扱うことができ、より容易に抵抗体支持台32に設置されることができる。このため、このような焼成装置は、抵抗体36が抵抗体支持台32に設置されることが容易であることにより、既述の実施の形態における焼成装置に比較して、容易に組み立てられ、複数の被焼成物13を容易に適切に焼成することができる。このような焼成装置は、さらに、複数の第1棒状部材37と複数の第2棒状部材38とが不良品から形成されることにより、低コストで形成されることができ、複数の被焼成物13を低コストで適切に焼成することができる。
【0036】
焼成装置の実施のさらに他の形態は、既述の実施の形態におけるマッフル炉上部構造体31が他のマッフル炉上部構造体に置換されている。そのマッフル炉上部構造体41は、マッフル炉上部構造体8と同様にして、箱型に形成され、内部空間が焼成雰囲気11に接続されるように、マッフル炉本体6の鉛直上方に配置されている。マッフル炉上部構造体41は、図9に示されるように、抵抗体支持台42と天板43とを備えている。
【0037】
抵抗体支持台42は、複数の板材から形成され、その複数の板材が鉛直方向に平行である複数の平行面にそれぞれ沿うように互いに接合されている。抵抗体支持台42は、その複数の板材の各々に横向き開口部44が形成されている。横向き開口部44は、炉内空間5をマッフル炉上部構造体31の内部空間に接続している。天板33は、板状に形成され、マッフル炉3の上向き開口部12の鉛直上方に配置されるように、抵抗体支持台42に固定されている。
【0038】
抵抗体支持台42は、さらに、横向き開口部44の下端に複数の溝45が形成されている。複数の第1棒状部材37と複数の第2棒状部材38との各々は、複数の溝45のうちの対向する2つの溝に対応している。複数の第1棒状部材37と複数の第2棒状部材38とは、各々がその2つの溝に載置されることにより、網状に形成される。すなわち、複数の溝45は、複数の第1棒状部材37と複数の第2棒状部材38とが複数の溝45に載置されたときに、複数の第1棒状部材37と複数の第2棒状部材38とが所定の網状に形成されるように、配置されている。
【0039】
マッフル炉上部構造体41も、既述の実施の形態におけるマッフル炉上部構造体31と同様にして、複数の第1棒状部材37と複数の第2棒状部材38とを1本ずつ取り扱うことにより、抵抗体36を容易に抵抗体支持台42に設置することができる。このため、マッフル炉上部構造体41を備える焼成装置は、既述の実施の形態におけるマッフル炉上部構造体31を備える焼成装置と同様にして、複数の被焼成物13を容易に適切に焼成することができる。
【0040】
なお、複数の第1棒状部材37と複数の第2棒状部材38とは、複数の被焼成物13が焼成されることにより作製される複数の焼成物と異なる専用の複数の棒状部材から形成されることができる。焼成装置は、抵抗体36が専用の複数の棒状部材から形成される場合でも、抵抗体36を容易に取り扱うことができ、複数の被焼成物13を容易に適切に焼成することができる。
【0041】
なお、天板16、33は、抵抗体21、36により焼成雰囲気11の温度分布のばらつきを十分に低減することができるときに、かつ、上向き開口部12の鉛直上方から落下する異物が十分に少ないときに、省略されることができる。天板16、33が省略された焼成装置は、既述の実施の形態における焼成装置と同様にして、焼成雰囲気11の温度分布のばらつきを低減することにより、複数の被焼成物13を適切に焼成することができる。
【0042】
焼成装置の実施のさらに他の形態は、既述の実施の形態におけるマッフル炉上部構造体がさらに他のマッフル炉上部構造体に置換されている。そのマッフル炉上部構造体51は、図10に示されるように、箱型に形成されている。マッフル炉上部構造体51は、マッフル炉本体6の上向き開口部12を塞ぐように、マッフル炉本体6の鉛直上方に配置されている。マッフル炉上部構造体51は、さらに、内部空間が焼成雰囲気11に接続されている。
【0043】
マッフル炉上部構造体51は、側壁52と天板53とを備えている。側壁52は、マッフル炉上部構造体51の内部空間を外部に接続する横向き開口部が形成されていない複数の板材から形成されている。天板53は、板状に形成されている。天板53は、水平面に沿って配置されるように、側壁52に接合されている。さらに、天板53は、パンチングメタルのように複数の貫通孔54が形成されている。
【0044】
マッフル炉上部構造体51は、異物落下防止板を備えている。その異物落下防止板55は、図11に示されるように、板状に形成されている。異物落下防止板55は、複数の脚部56を備えている。複数の脚部56は、マッフル炉本体6の上端に載置されることにより、または、マッフル炉上部構造体51の天板53に載置されることにより、異物落下防止板55が所定の位置に配置されるように、異物落下防止板55をマッフル炉本体6に支持している。すなわち、異物落下防止板55は、複数の脚部56に支持されることにより、水平面に沿って配置され、複数の貫通孔54の上部を覆うように配置されている。すなわち、異物落下防止板55は、異物落下防止板55をある水平面に正射影した異物落下防止板図形が、複数の貫通孔54をその水平面に正射影した貫通孔図形を含むように、形成されている。
【0045】
このとき、炉内空間5の下部に供給された高温ガスは、炉内空間5を上昇した後に、異物落下防止板55の下部を水平方向に移動し、天板53に形成された複数の貫通孔54を通って、マッフル炉本体6の炉内の焼成雰囲気11に供給される。マッフル炉上部構造体51を備える焼成装置も、既述の実施の形態における焼成装置と同様にして、高温ガスに複数の貫通孔54を通過させることにより、焼成雰囲気11の温度分布のばらつきを低減することができ、複数の被焼成物13を適切に焼成することができる。
【0046】
なお、異物落下防止板55は、天板53により焼成雰囲気11の温度分布のばらつきを十分に低減することができるときに、かつ、天板53と上向き開口部12を介して焼成雰囲気11に落下する異物が十分に少ないときに、省略されることができる。異物落下防止板55が省略された焼成装置も、既述の実施の形態における焼成装置と同様にして、焼成雰囲気11の温度分布のばらつきを低減することにより、複数の被焼成物13を適切に焼成することができる。
【0047】
なお、複数の被焼成物13は、固体酸化物型燃料電池のセルと異なる他の製品に形成される他の複数の被焼成物に置換されることができる。その製品としては、エキシマレーザ層の銅電極を固定する高純度アルミナ製チューブが例示される。既述の実施の形態における焼成装置は、焼成雰囲気11の温度分布のばらつきを低減することにより、このような複数の被焼成物も適切に焼成することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 :焼成炉
2 :バーナ
3 :マッフル炉
5 :炉内空間
6 :マッフル炉本体
7 :セル吊り下げ部材
8 :マッフル炉上部構造体
10:焼成装置
11:焼成雰囲気
12:上向き開口部
13:複数の被焼成物
14:内部空間
15:抵抗体支持台
16:天板
17:横向き開口部
18:抵抗体支持面
21:抵抗体
22:複数の貫通孔
31:マッフル炉上部構造体
32:抵抗体支持台
33:天板
34:横向き開口部
35:複数の挿入孔
36:抵抗体
37:複数の第1棒状部材
38:複数の第2棒状部材
39:複数の貫通孔
41:マッフル炉上部構造体
42:抵抗体支持台
43:天板
44:横向き開口部
45:複数の溝
51:マッフル炉上部構造体
52:側壁
53:天板
54:複数の貫通孔
55:異物落下防止板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11