特許第6121305号(P6121305)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6121305
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】焼成装置
(51)【国際特許分類】
   F27B 5/10 20060101AFI20170417BHJP
   F27B 5/16 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   F27B5/10
   F27B5/16
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-211828(P2013-211828)
(22)【出願日】2013年10月9日
(65)【公開番号】特開2015-75280(P2015-75280A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2015年11月10日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成24年度〜平成25年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「固体酸化物型燃料電池を用いた事業用発電システム要素技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】後藤 征司
(72)【発明者】
【氏名】川水 努
(72)【発明者】
【氏名】城島 孝洋
(72)【発明者】
【氏名】樋渡 研一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 慎
【審査官】 田口 裕健
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−174380(JP,A)
【文献】 特開昭64−014588(JP,A)
【文献】 特開2004−357525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 5/00− 5/18
F27B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被焼成物が配置される焼成空間を形成するマッフル炉と、
前記マッフル炉が配置される炉内空間に高温ガスを供給するバーナとを備え、
前記マッフル炉は、
下側炉壁と、
前記下側炉壁の鉛直上側に配置される上側炉壁とを有し、
前記炉内空間は、
前記下側炉壁に接する下側炉空間と、
前記上側炉壁に接する上側炉空間とを含み、
前記焼成空間は、
前記上側炉壁に接する上側焼成空間と、
前記下側炉壁に接する下側焼成空間とを含み、
前記高温ガスは、前記下側炉空間を流れた後に前記上側炉空間を流れ、前記上側炉空間を流れた後に前記上側焼成空間を流れ、前記上側焼成空間を流れた後に前記下側焼成空間を流れ、
前記マッフル炉は、前記下側炉壁を介して前記炉内空間から前記焼成空間に伝熱される熱量が、前記上側炉壁を介して前記炉内空間から前記焼成空間に伝熱される熱量より大きくなるように、形成される焼成装置。
【請求項2】
前記下側炉壁の単位面積当たりの熱容量は、前記上側炉壁の単位面積当たりの熱容量より小さい請求項1に記載される焼成装置。
【請求項3】
前記下側炉壁は、前記上側炉壁より薄い請求項2に記載される焼成装置。
【請求項4】
前記下側炉壁の密度は、前記上側炉壁の密度より小さい請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項に記載される焼成装置。
【請求項5】
前記マッフル炉は、前記下側炉壁と前記上側炉壁との間に配置される中間炉壁をさらに備え、
前記マッフル炉は、前記下側炉壁を介して前記炉内空間から前記焼成空間に伝熱される熱量が前記中間炉壁を介して前記炉内空間から前記焼成空間に伝熱される熱量より大きくなるように、かつ、前記中間炉壁を介して前記炉内空間から前記焼成空間に伝熱される熱量が前記上側炉壁を介して前記炉内空間から前記焼成空間に伝熱される熱量より大きくなるように、形成される請求項1〜請求項4のうちのいずれか一項に記載される焼成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼成装置に関し、特に、長尺の被焼成物を焼成するときに利用される焼成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物型燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)に備えられる複数のセルは、長尺の被焼成物を焼成することにより作製される。長尺の被焼成物が焼成されることにより形成される焼成物のそりを低減することが望まれている(特許文献1〜6参照。)。長尺の被焼成物は、吊り下げられた状態で焼成されることにより、焼成物のそりが低減されることが知られている(特許文献2〜6参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−161596号公報
【特許文献2】特開2006−151749号公報
【特許文献3】特許第4424899号公報
【特許文献4】特許第2608671号公報
【特許文献5】特許第4335345号公報
【特許文献6】特許第3930963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
長尺の焼成物を適切に量産することが望まれ、燃焼ガスを用いて長尺の被焼成物を加熱することにより焼成することが望まれている。被焼成物は、加熱時の被焼成物の温度分布のばらつきが大きいときに、適切に焼成されないことがある。被焼成物を適切に焼成することが望まれ、加熱時の被焼成物の温度分布のばらつきを低減することが望まれている。
【0005】
本発明の課題は、被焼成物を適切に焼成する焼成装置を提供することにある。
本発明の他の課題は、加熱時の被焼成物の温度分布のばらつきを低減する焼成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による焼成装置は、被焼成物が配置される焼成空間を形成するマッフル炉と、そのマッフル炉が配置される炉内空間に高温ガスを供給するバーナとを備えている。そのマッフル炉は、下側炉壁と、その下側炉壁の鉛直上側に配置される上側炉壁とを有している。その炉内空間は、その下側炉壁に接する下側炉空間と、その上側炉壁に接する上側炉間とを含んでいる。その焼成空間は、その上側炉壁に接する下側焼成空間と、その下側炉壁に接する下側焼成空間とを含んでいる。このとき、その高温ガスは、その下側炉空間を流れた後にその上側炉空間を流れ、その上側炉空間を流れた後にその下側焼成空間を流れ、その下側焼成空間を流れた後にその下側焼成空間を流れる。そのマッフル炉は、その下側炉壁を介してその炉内空間からその焼成空間に伝熱される熱量が、その上側炉壁を介してその炉内空間からその焼成空間に伝熱される熱量より大きくなるように、形成されている。
【0007】
高温ガスは、下側炉空間から上側炉空間へと流れ、マッフロ炉の上部開口部を介して、上側焼成空間へ、更には下側焼成空間へと順に流れていく。高温ガスは、炉壁や焼成炉内の被焼成物へ熱を奪われていくため、一般に、焼成炉内のガス流方向で、下流に行くにしたがって高温ガスの温度が低下することで温度分布が発生する。上記現象は、特に昇温時などの非定常状態において顕著となる。このような焼成装置は、下側炉壁を介して下側炉空間から下側焼成空間に伝熱される熱量が、上側炉壁を介して上側炉空間から側焼成空間に伝熱される熱量より大きくすることにより、マッフル炉の炉壁を介して下側焼成空間を上側焼成空間以上に加熱することができ、被焼成物の鉛直方向の温度分布のばらつきを低減することができる。これにより、被焼成物の温度分布のばらつきを低減することができ、被焼成物を適切に焼成することができる。
【0008】
その下側炉壁の単位面積当たりの熱容量は、その上側炉壁の単位面積当たりの熱容量より小さい。このような焼成装置は、下側炉壁が上側炉壁より高速に温度上昇し、マッフル炉の炉壁を介して下側焼成空間を上側焼成空間以上に加熱することができる。このため、このような焼成装置は、被焼成物の鉛直方向の温度分布のばらつきを低減することができ、被焼成物を適切に焼成することができる。
【0009】
その下側炉壁は、その上側炉壁より薄い。このような焼成装置は、下側炉壁が上側炉壁より高速に温度上昇し、マッフル炉の炉壁を介して下側焼成空間を上側焼成空間以上に加熱することができる。このため、このような焼成装置は、被焼成物の鉛直方向の温度分布のばらつきを低減することができ、被焼成物を適切に焼成することができる。さらに、このようなマッフル炉は、下側炉壁と上側炉壁とが同一の材料から形成されることもでき、より容易に作製されることができる。
【0010】
その下側炉壁の密度は、その上側炉壁の密度より小さい。このような焼成装置は、下側炉壁が上側炉壁より高速に温度上昇し、マッフル炉の炉壁を介して下側焼成空間を上側焼成空間以上に加熱することができる。このため、このような焼成装置は、被焼成物の鉛直方向の温度分布のばらつきを低減することができ、被焼成物を適切に焼成することができる。さらに、このようなマッフル炉は、下側炉壁の厚さが上側炉壁の厚さと等しくなるように形成されることもできる。
【0011】
そのマッフル炉は、その下側炉壁とその上側炉壁との間に配置される中間炉壁をさらに備えている。このとき、そのマッフル炉は、その下側炉壁を介してその炉内空間からその焼成空間に伝熱される熱量がその中間炉壁を介してその炉内空間からその焼成空間に伝熱される熱量より大きくなるように、かつ、その中間炉壁を介してその炉内空間からその焼成空間に伝熱される熱量がその上側炉壁を介してその炉内空間からその焼成空間に伝熱される熱量より大きくなるように、形成されている。
【0012】
このような焼成装置は、マッフル炉の炉壁を鉛直方向に熱伝達が互いに異なる3つ以上の部分に分割することにより、被焼成物の鉛直方向に温度分布のばらつきを高精度に低減することができる。このような焼成装置は、被焼成物の鉛直方向の温度分布のばらつきを低減することにより、被焼成物を適切に焼成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明による焼成装置は、加熱時の被焼成物の温度分布のばらつきを低減することにより、被焼成物を適切に焼成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】焼成装置を示す断面図である。
図2】マッフル炉本体を示す斜視図である。
図3】マッフル炉本体を示す断面図である。
図4】他のマッフル炉本体を示す断面図である。
図5】さらに他のマッフル炉本体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照して、焼成装置の実施の形態を以下に記載する。その焼成装置10は、図1に示されているように、焼成炉1とバーナ2とマッフル炉3とを備えている。焼成炉1は、外部環境から隔離される炉内空間5を内部に形成している。バーナ2は、燃料を燃焼させることにより高温ガスを生成し、その高温ガスを炉内空間5の下部に噴射する。
【0016】
マッフル炉3は、マッフル炉本体6とセル吊り下げ部材7とマッフル炉上部構造体8とを備えている。マッフル炉本体6は、筒状に形成され、内部に焼成雰囲気11を形成している。マッフル炉本体6は、焼成雰囲気11の長手方向が鉛直方向に沿うように、炉内空間5に配置されている。マッフル炉本体6は、マッフル炉本体6の上端に上向き開口部12が形成されている。焼成雰囲気11は、上向き開口部12を介して炉内空間5のうちのマッフル炉本体6の外側に接続されている。焼成雰囲気11は、さらに、マッフル炉本体6の下端を介して炉内空間5の外部に接続されている。
【0017】
セル吊り下げ部材7は、上向き開口部12の近傍に配置され、マッフル炉本体6に固定されている。セル吊り下げ部材7は、長尺の複数の被焼成物13の一端を把持し、複数の被焼成物13が鉛直方向に沿って焼成雰囲気11に配置されるように、かつ、複数の被焼成物13がマッフル炉本体6に接触しないように、複数の被焼成物13を支持する。複数の被焼成物13は、筒状に形成され、焼成されることにより、固体酸化物型燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)に備えられる複数のセルに形成される。
【0018】
マッフル炉上部構造体8は、上向き開口部12の上部を覆うように、マッフル炉本体6の鉛直上方に配置されている。マッフル炉上部構造体8は、上向き開口部12の鉛直上方から落下する異物が上向き開口部12を通って焼成雰囲気11に侵入することを防止する。マッフル炉上部構造体8は、さらに、バーナ2により生成された高温ガスが上向き開口部12を介して鉛直上側から焼成雰囲気11に流入することを防止し、焼成雰囲気11に流入する高温ガスの流入流量の水平方向の分布を均一化する。
【0019】
マッフル炉本体6は、図2に示されるように、複数のレンガが積み上げられることにより、炉壁が形成されている。マッフル炉本体6は、図3に示されるように、さらに、鉛直上端に近づくにつれ炉壁の厚さが概ね単調に増加するように、形成されている。すなわち、マッフル炉本体6は、炉壁のうちの任意の下側炉壁部分が、その下側炉壁部分より鉛直上側に配置される上側炉壁部分より薄い。
【0020】
マッフル炉本体6は、下側炉壁14と上側炉壁15とを備えている。上側炉壁15は、下側炉壁14の鉛直上側に配置されている。下側炉壁14は、上側炉壁15より薄い。炉内空間5は、下側炉内空間16と上側炉内空間17とを含んでいる。下側炉内空間16は、下側炉壁14に接している。上側炉内空間17は、上側炉壁15に接している。焼成雰囲気11は、下側焼成雰囲気18と上側焼成雰囲気19とを含んでいる。下側焼成雰囲気18は、下側炉壁14に接している。上側焼成雰囲気19は、上側炉壁15に接している。
【0021】
焼成装置10は、複数の被焼成物13を焼成するときに利用される。複数の被焼成物13は、まず、マッフル炉本体6に接触しないように、かつ、鉛直方向に沿ってマッフル炉本体6の炉内の焼成雰囲気11に配置されるように、一端がセル吊り下げ部材7に把持される。バーナ2は、複数の被焼成物13が焼成雰囲気11に適切に配置された後に、燃料を燃焼させることにより高温ガスを生成し、その高温ガスを焼成炉1の炉内空間5の下部に供給する。バーナ2は、さらに、複数の被焼成物13が所定の温度変化をするように、その高温ガスの温度を制御する。
【0022】
その高温ガスは、炉内空間5の下部に供給されることにより、炉内空間5を上昇する。すなわち、その高温ガスは、下側炉内空間16を流れ、下側炉内空間16を流れた後に上側炉内空間17を流れる。その高温ガスは、炉内空間5を上昇した後に、上向き開口部12を通ってマッフル炉本体6の炉内の焼成雰囲気11に供給される。その高温ガスは、焼成雰囲気11に供給されると、焼成雰囲気11を下降する。すなわち、その高温ガスは、上側焼成雰囲気19を流れ、上側焼成雰囲気19を流れた後に下側焼成雰囲気18を流れる。その高温ガスは、焼成雰囲気11を下降した後に、マッフル炉本体6の下端を介して炉内空間5の外部に排気される。
【0023】
高温ガスは、炉内空間5を上昇するときにマッフル炉本体6の外側表面に接触し、焼成雰囲気11を下降しているときにマッフル炉本体6の内側表面に接触する。マッフル炉本体6は、バーナ2により高温ガスが生成される前に、高温ガスに比較して、低温である。このため、高温ガスは、炉内空間5を上昇するときに温度が低下し、すなわち、上側炉内空間17を流れる高温ガスは、下側炉内空間16を流れる高温ガスより低温である。高温ガスは、さらに、焼成雰囲気11を下降するときに温度が低下し、下側焼成雰囲気18を流れる高温ガスは、上側焼成雰囲気19を流れる高温ガスより低温である。このため、複数の被焼成物13は、上側焼成雰囲気19に配置される上側部分に比較して、下側焼成雰囲気18に配置される下側部分が高温ガスにより加熱される程度が小さい。
【0024】
マッフル炉本体6の下側炉壁14は、下側炉内空間16を流れる高温ガスより加熱され、下側焼成雰囲気18に熱線を放射する。マッフル炉本体6の上側炉壁15は、上側炉内空間17を流れる高温ガスより加熱され、上側焼成雰囲気19に熱線を放射する。下側炉壁14は、下側炉壁14が上側炉壁15より薄いことにより、熱容量が上側炉壁15の熱容量より小さい。下側炉壁14は、熱容量が小さいことにより、また、下側炉内空間16を流れる高温ガスが上側炉内空間17を流れる高温ガスより高温であることにより、上側炉壁15に比較してより速く昇温する。このため、下側炉壁14から放射される熱線の熱量は、上側炉壁15から放射される熱線の熱量に比較して、大きい。このため、複数の被焼成物13は、上側焼成雰囲気19に配置される上側部分に比較して、下側焼成雰囲気18に配置される下側部分がマッフル炉本体6の放射により加熱される程度が大きい。すなわち、焼成装置10は、高温ガスとマッフル炉本体6の放射との両方により複数の被焼成物13を加熱するときに、複数の被焼成物13の鉛直方向の温度分布のばらつきが十分に小さくなるように、複数の被焼成物13を適切に加熱することができる。
【0025】
複数の被焼成物13は、鉛直方向の温度分布のばらつきが十分に小さくなるように加熱されることにより、適切に焼成されることができる。このため、焼成装置10は、焼成雰囲気11の温度分布のばらつきを低減することにより、複数の被焼成物13を適切に焼成することができる。
【0026】
焼成装置の実施の他の形態は、既述の実施の形態におけるマッフル炉本体6が他のマッフル炉本体に置換されている。そのマッフル炉本体21は、既述の実施の形態におけるマッフル炉本体6と同様にして、図4に示されるように、筒状に形成され、内部に焼成雰囲気22を形成している。マッフル炉本体21は、さらに、炉壁の厚さが概ね一様であるように、形成されている。
【0027】
マッフル炉本体21は、下側炉壁23と中間炉壁24と上側炉壁25とを備えている。中間炉壁24は、下側炉壁23の鉛直上側に配置されている。中間炉壁24が形成される材料の密度は、下側炉壁23が形成される材料の密度より大きい。上側炉壁25は、中間炉壁24の鉛直上側に配置されている。上側炉壁25が形成される材料の密度は、中間炉壁24が形成される材料の密度より大きい。
【0028】
このとき、炉内空間5は、下側炉内空間26と中間炉内空間27と上側炉内空間28とを含んでいる。下側炉内空間26は、下側炉壁23に接している。中間炉内空間27は、中間炉壁24に接している。上側炉内空間28は、上側炉壁25に接している。焼成雰囲気22は、下側焼成雰囲気31と中間焼成雰囲気32と上側焼成雰囲気33とを含んでいる。下側焼成雰囲気31は、下側炉壁23に接している。中間焼成雰囲気32は、中間炉壁24に接している。上側焼成雰囲気33は、上側炉壁25に接している。
【0029】
その高温ガスは、炉内空間5の下部に供給されることにより、下側炉内空間26を流れ、下側炉内空間26を流れた後に中間炉内空間27を流れ、中間炉内空間27を流れた後に上側炉内空間28を流れる。その高温ガスは、炉内空間5を上昇した後に、上側焼成雰囲気33を流れ、上側焼成雰囲気33を流れた後に中間焼成雰囲気32を流れ、中間焼成雰囲気32を流れた後に下側焼成雰囲気31を流れる。その高温ガスは、焼成雰囲気11を下降した後に、マッフル炉本体21の下端を介して炉内空間5の外部に排気される。
【0030】
高温ガスは、マッフル炉本体21が低温である場合、炉内空間5を上昇するときに温度が低下し、焼成雰囲気11を下降するときに温度が低下する。すなわち、上側炉内空間28を流れる高温ガスは、中間炉内空間27を流れる高温ガスより低温である。中間炉内空間27を流れる高温ガスは、下側炉内空間26を流れる高温ガスより低温である。下側焼成雰囲気31を流れる高温ガスは、中間焼成雰囲気32を流れる高温ガスより低温である。中間焼成雰囲気32を流れる高温ガスは、上側焼成雰囲気33を流れる高温ガスより低温である。
【0031】
下側炉壁23は、下側炉壁23の密度が中間炉壁24の密度より小さいことにより、単位面積当たりの熱容量が中間炉壁24の単位面積当たりの熱容量より小さい。下側炉壁23は、下側炉壁23の熱容量が中間炉壁24の熱容量より小さいことにより、中間炉壁24に比較してより速く昇温する。このため、下側炉壁23が下側焼成雰囲気31に与える輻射熱は、中間炉壁24が中間焼成雰囲気32に与える輻射熱より大きい。同様にして、中間炉壁24の密度が上側炉壁25の密度より小さいことにより、中間炉壁24が中間焼成雰囲気32に与える輻射熱は、上側炉壁25が上側焼成雰囲気33に与える輻射熱より大きい。
【0032】
このため、複数の被焼成物13は、上側焼成雰囲気33に配置される上側部分に比較して、中間焼成雰囲気32配置される中間部分がマッフル炉本体21の輻射熱により加熱される程度が大きく、その中間部分に比較して、下側焼成雰囲気18に配置される下側部分がマッフル炉本体21の輻射熱により加熱される程度が大きい。すなわち、このような焼成装置は、高温ガスとマッフル炉本体21の輻射熱との両方により複数の被焼成物13を加熱するときに、複数の被焼成物13の鉛直方向の温度分布のばらつきが十分に小さくなるように、複数の被焼成物13を適切に加熱することができる。このような焼成装置は、複数の被焼成物13の鉛直方向の温度分布のばらつきを低減することにより、複数の被焼成物13を適切に焼成することができる。
【0033】
マッフル炉本体21は、密度が異なる複数の材料から形成されることにより、炉壁の厚さが概ね一様であるように形成されることができ、従来のマッフル炉本体の形状と同様の形状に形成されることができる。対して、既述の実施の形態におけるマッフル炉本体6は、同一の材料から形成されることができ、マッフル炉本体21に比較して、より容易に作製されることができる。
【0034】
焼成装置の実施のさらに他の形態は、既述の実施の形態におけるマッフル炉本体6がさらに他のマッフル炉本体に置換されている。そのマッフル炉本体41は、既述の実施の形態におけるマッフル炉本体6と同様にして、図5に示されるように、筒状に形成され、内部に焼成雰囲気42を形成している。マッフル炉本体41は、さらに、鉛直上端に近づくにつれ炉壁の厚さが概ね単調に増加するように、形成されている。
【0035】
マッフル炉本体41は、下側炉壁43と中間炉壁44と上側炉壁45とを備えている。中間炉壁44は、下側炉壁43の鉛直上側に配置されている。中間炉壁44が形成される材料の密度は、下側炉壁43が形成される材料の密度より大きい。中間炉壁44は、下側炉壁43より薄い。上側炉壁45は、中間炉壁44の鉛直上側に配置されている。上側炉壁45が形成される材料の密度は、中間炉壁44が形成される材料の密度より大きい。上側炉壁45は、中間炉壁44より薄い。
【0036】
このとき、炉内空間5は、下側炉内空間46と中間炉内空間47と上側炉内空間48とを含んでいる。下側炉内空間46は、下側炉壁43に接している。中間炉内空間47は、中間炉壁44に接している。上側炉内空間48は、上側炉壁45に接している。焼成雰囲気42は、下側焼成雰囲気51と中間焼成雰囲気52と上側焼成雰囲気53とを含んでいる。下側焼成雰囲気51は、下側炉壁43に接している。中間焼成雰囲気52は、中間炉壁44に接している。上側焼成雰囲気53は、上側炉壁45に接している。
【0037】
その高温ガスは、炉内空間5の下部に供給されることにより、下側炉内空間46を流れ、下側炉内空間46を流れた後に中間炉内空間47を流れ、中間炉内空間47を流れた後に上側炉内空間48を流れる。その高温ガスは、炉内空間5を上昇した後に、上側焼成雰囲気53を流れ、上側焼成雰囲気53を流れた後に中間焼成雰囲気52を流れ、中間焼成雰囲気52を流れた後に下側焼成雰囲気51を流れる。その高温ガスは、焼成雰囲気42を下降した後に、マッフル炉本体41の下端を介して炉内空間5の外部に排気される。
【0038】
高温ガスは、マッフル炉本体41が低温である場合、焼成雰囲気42を下降するときに温度が低下する。すなわち、下側焼成雰囲気51を流れる高温ガスは、中間焼成雰囲気52を流れる高温ガスより低温である。中間焼成雰囲気52を流れる高温ガスは、上側焼成雰囲気53を流れる高温ガスより低温である。
【0039】
下側炉壁43は、下側炉壁43の密度が中間炉壁44の密度より小さいことにより、かつ、下側炉壁43が中間炉壁44より薄いことにより、単位面積当たりの熱容量が中間炉壁44の単位面積当たりの熱容量より小さい。下側炉壁43は、下側炉壁43の熱容量が中間炉壁44の熱容量より小さいことにより、中間炉壁44に比較してより速く昇温する。このため、下側炉壁43が下側焼成雰囲気51に与える輻射熱は、中間炉壁44が中間焼成雰囲気52に与える輻射熱より大きい。同様にして、中間炉壁44の密度が上側炉壁45の密度より小さいことにより、かつ、中間炉壁44が上側炉壁45より薄いことにより、中間炉壁44が中間焼成雰囲気52に与える輻射熱は、上側炉壁45が上側焼成雰囲気53に与える輻射熱より大きい。
【0040】
このため、複数の被焼成物13は、上側焼成雰囲気53に配置される上側部分に比較して、中間焼成雰囲気52配置される中間部分がマッフル炉本体41の輻射熱により加熱される程度が大きく、その中間部分に比較して、下側焼成雰囲気51に配置される下側部分がマッフル炉本体41の輻射熱により加熱される程度が大きい。すなわち、このような焼成装置は、高温ガスとマッフル炉本体41の輻射熱との両方により複数の被焼成物13を加熱するときに、複数の被焼成物13の鉛直方向の温度分布のばらつきが十分に小さくなるように、複数の被焼成物13を適切に加熱することができる。このような焼成装置10は、複数の被焼成物13の鉛直方向の温度分布のばらつきを低減することにより、複数の被焼成物13を適切に焼成することができる。
【0041】
マッフル炉本体41は、鉛直上端に近づくにつれ炉壁の厚さが増加するように形成され、かつ、鉛直上端に近づくにつれ炉壁の密度が増加するように形成されていることにより、既述の実施の形態におけるマッフル炉本体6、21に比較して、鉛直上端に近づくにつれ単位面積当たりの熱容量がより大きく増加するように形成されることができる。マッフル炉本体41は、鉛直上端に近づくにつれ単位面積当たりの熱容量がより大きく増加するように形成されることにより、焼成雰囲気42の輻射熱の分布のばらつきを大きくすることができる。このため、マッフル炉本体41を備える焼成装置は、焼成雰囲気42を流れる高温ガスの温度差が大きい場合でも、複数の被焼成物13の鉛直方向の温度分布のばらつきが十分に小さくなるように、マッフル炉本体41の輻射熱により複数の被焼成物13を適切に加熱することができる。
【0042】
なお、マッフル炉本体6、21、41は、炉壁を介して炉内空間5から複数の被焼成物13に伝熱される熱量が鉛直下端に近づくにつれ増加する他のマッフル炉本体に置換されることができる。そのマッフル炉本体としては、下側炉壁を形成する材料の熱伝導率が、下側炉壁より鉛直上側に配置される上側炉壁を形成する材料の熱伝導率より大きいものが例示される。このようなマッフル炉本体を備える焼成装置も、既述の実施の形態における焼成装置と同様にして、複数の被焼成物13の鉛直方向の温度分布のばらつきが十分に小さくなるように複数の被焼成物13を適切に加熱することができ、複数の被焼成物13を適切に焼成することができる。
【0043】
なお、複数の被焼成物13は、固体酸化物型燃料電池のセルと異なる他の製品に形成される他の複数の被焼成物に置換されることができる。その製品としては、エキシマレーザ層の銅電極を固定する高純度アルミナ製チューブが例示される。既述の実施の形態における焼成装置は、その複数の被焼成物の温度分布のばらつきを低減することにより、このような複数の被焼成物も適切に焼成することができる。
【符号の説明】
【0044】
2 :バーナ
5 :炉内空間
6 :マッフル炉本体
10:焼成装置
11:焼成雰囲気
13:複数の被焼成物
14:下側炉壁
15:上側炉壁
16:下側炉内空間
17:上側炉内空間
18:下側焼成雰囲気
19:上側焼成雰囲気
21:マッフル炉本体
22:焼成雰囲気
23:下側炉壁
24:中間炉壁
25:上側炉壁
26:下側炉内空間
27:中間炉内空間
28:上側炉内空間
31:下側焼成雰囲気
32:中間焼成雰囲気
33:上側焼成雰囲気
41:マッフル炉本体
42:焼成雰囲気
43:下側炉壁
44:中間炉壁
45:上側炉壁
46:下側炉内空間
47:中間炉内空間
48:上側炉内空間
51:下側焼成雰囲気
52:中間焼成雰囲気
53:上側焼成雰囲気
図1
図2
図3
図4
図5