(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カバー層と前記伝達層との下に位置する創傷接触層をさらに備え、前記少なくとも1つのバッフル素子は、前記創傷接触層にシールされた前記カバー層を有するシーリング領域を備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
前記素子は、創傷滲出液が前記オリフィスに向けて移動する速度を落とすよう構成され、前記伝達層内にビアの列を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
創傷滲出液が前記オリフィスに向けて移動する速度を落とすよう構成されている前記素子が、前記伝達層の縁部領域から延在し、かつ前記伝達層を前記オリフィスに連結する空気経路を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図において、同類の符号は同類の部材を意味する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態における創傷被覆材100の断面図を示す。創傷被覆材100の上からの平面図が、
図1に示す断面図の位置を示す直線A−Aと共に
図2に示される。
図1が装置100の一般化された概略図であることが理解されるだろう。本発明の実施形態が、局所負圧(TNP)システムにおいて一般的に適用可能であることが理解されるだろう。簡単に、負圧創傷治療は、組織浮腫を軽減すること、血流および微粒子状細胞の形成を促進すること、余分な滲出液を取り除くことにより、多くの形状の「治り難い」創傷を閉じて治癒するのに役立ち、細菌負荷(およびそれにより感染リスク)を軽減することもできる。また、治療は、より早い治癒に繋がるように創傷の弊害を減らすことができる。TNPシステムは、流体を取り除くことのより、また、閉じたところに近接する位置の組織を安定させること助長することにより、手術で閉じた創傷の治癒にも役立つ。TNPのさららなる有効利用は、余分流体の除去が重要であり、組織の移植片の近くで閉じることが組織生存性を確かにするために必要であるところの移植片および組織弁において認められる。
【0018】
創傷被覆材100は、処理される傷口を覆うように位置することができる。創傷被覆材100は、傷口を覆うシールされた空洞を形成する。当然のことながら、本明細書の参考例は創傷について述べられている。このような意味で、創傷との用語は、幅広く解釈されるべきであり、皮膚が破れた、切られた、または刺された、あるいは、外傷が打撲傷を引き起こすところの、開いた、または閉じた創傷を包含する。つまり、創傷は、流体が生じるまたは生じないところの組織のあらゆる創傷した領域として幅広く定義される。このような創傷の例は、限定することなく、切開、裂傷、擦り傷、打撲、火傷、糖尿病性潰瘍、褥瘡、ストーマ、手術の傷、外傷、および静脈性潰瘍などを含む。本発明を実施する装置の負圧範囲は、−20mmHg〜−200mmHである(これらの圧力は通常の環境大気圧に対するものであり、よって、−200mmHgは、実際的な言い方をするなら訳560mmHgであろうことに留意されたい)。適切に、圧力範囲は、約−40mmHg〜−150mmHgであってもよい。または、−75mmhgまで、−80mmhgまで、または−80mmhgを超えるある力範囲が使用されてもよい。または適切に、−75mmHgより低い圧力範囲が使用されるかもしれない。または、−100mmHgを超える、または−150mmHgを超える圧力範囲が使用されるかもしれない。
【0019】
ある実施形態では、傷口に部分的または完全に創傷填塞材が充填されることが好ましい場合がある。この創傷填塞材は付随的であるが、所定の創傷、例えばより深い創傷には所望される場合がある。創傷填塞材は、創傷被覆材100に追加して使用され得る。創傷填塞材は、一般的に多孔質かつ従順な材料、例えば、発泡体(および網状発泡体を含む)から成ってもよい。好ましくは、創傷填塞材は全ての空間を満たすために傷口内に適合するサイズまたは形状である。創傷被覆材100は、次いで、傷口および傷口を覆う創傷填塞材の上に配置される。創傷填塞材が使用されるとき、一度創傷被覆材100で傷口が塞がれると、TNPは、創傷被覆材100を通過して、創傷填塞材を通過して傷口にポンプから伝達される。この負圧は、創傷滲出液および他の流体または分泌物を傷口から引き出す。
【0020】
当然のことながら、本発明のある実施形態によると、もたらされる圧力は、1つ以上の所望かつ所定の圧力プロファイルに従って時間周期で調節されてもよい。例えば、このようなプロファイルは、2つの所定の負圧P1およびP2間で負圧を調整するステップを含んでもよく、これにより、所定周期時間T1の間、P1で略一定に保たれ、次いで、可変ポンプ動作または流体の限定などの適切な手段により、新しい所定に圧力P2へ調整される。この圧力は、別の所定の周期時間T2の間、略一定に保たれてもよい。
2つ、3つ、4つまたはそれ以上の所定圧力値と対応する時間周期とが付随的に利用されてもよい。適切に、例えば、正弦波、痛む歯、収縮−拡張などのより複雑な振幅/周波数の波形が、用意されてもよい。
【0021】
図1に図示するように、創傷被覆材100の下面101は、付随的な創傷接触層102によって設けられる。創傷接触層102は、ポリウレタン層またはポリエチレン層、あるいは、例えば熱針工程、レーザーアブレーション工程、超音波工程、または別の方法で穿孔された、または、液低および気体が投下できるように作られた別の可塑性層であり得る。創傷接触層は、下面101と上面103とを有する。貫通孔104は、創傷接触層における貫通した穴であり、これにより、流体がこの層を通過して流れることを可能にする。創傷接触層は、創傷被覆材の別の材料内への組織の内部成長の防止に役立つ。貫通孔は、この必要条件を満たすほど小さいが、同時に流体を通すことができる。例えば、0.025mm〜1.2mmの範囲のサイズを有する、スリットまたは穴として成形された貫通孔が、被覆材内に創傷滲出液を流すことを可能にしつつ、創傷被覆材内への組織の内部成長の防止に役立つほど小さいと考えられる。創傷接触層は、創傷被覆材全体を一緒に保持するのに役立ち、かつ、創傷での負圧を保持するために吸収パッドに周りに気密シールを作り出すことに役立つ。創傷接触層はまた、付随的な下および上接着層(図示せず)のキャリアとして機能する。例えば、下の感圧接着層が、創傷被覆材の下面101上に設けられ、一方、上の感圧接着層は、創傷接触層の上面103上に設けられる。シリコーン、ホットメルト、親水コロイドまたはアクリル基質接着剤、あるいは他の類似した接着剤であってもよい感圧接着剤は、創傷接触層の両面、または、付随的に、選択された一面上に形成されてもよいし、どちらの面にも形成されてなくてもよい。下の感圧接着層が利用されると、このことが傷口周辺の皮膚へ創傷被覆材の貼着に役立つ。
【0022】
多孔質材料の層105は、創傷接触層に上に位置する。この多孔質層または伝達層105は、傷口からの液体および気体を含む流体の創傷被覆材の上の層への伝達を可能にする。特に、伝達層105は、オープンな空気経路が、吸収層がかなりの量の滲出液を吸収したときでさえ、創傷エリア上に負圧を伝えることを維持できることを確実にする。層は、上述の負圧創傷治療の間に適用されるだろう一般的な圧力下でオープンであり続けるべきであり、これにより、傷口全体が均一の負圧を受ける。層105は、連続気泡発泡体、スペーサ編みまたは織布(例えば、ウェフトニットポリエステルBaltex7970(登録商標))、または不織布を含む3次元構造を有する材料で形成される。
【0023】
適切には、伝送層は、84/144加工のポリエステルである最上層(つまり、使用中の創傷床から離れた層)と、100デニールフラットポリエステルである最下層(つまり、使用中の創傷床に近接する層)と、編まれたポリエステルビスコース、セルロースまたは同類のモノフィラメント繊維によって画定された領域である、これら2つの層の間に挟まれた第3の層と、を含む3Dポリエステルスペーサ布層を備える。もちろん、他の材料および他の線量密度の繊維が使用される場合もある。
【0024】
本明細書を通して、モノフィラメント繊維について述べられている一方で、当然、マルチフィラメントの代用物が利用されることもある。
【0025】
つまり、上スペーサ布は、下スペーサ布を形成するために使用される糸を作るフィラメントの数より、上スペーサ布を形成するために使用される糸においてより多くのフィラメントを有する。
【0026】
離間した層間におけるフィラメントの数の違いは、伝送層を横断する水分流を調整するのに役立つ。特に、上層においてより多くの数のフィラメントを有する、すなわち、上層が下層に使用される糸より多くのフィラメントを有する糸から作られることによって、液体は、下層より、上層に沿ってより多く逃がされる傾向にある。使用において、この違いは、吸収層が液体を封入する、または、液体が放出される被覆層に向けて液体を逃がすことを促進する被覆材の中央領域に創傷床から液体を引き出しやすくする。
【0027】
適切には、伝送層を横断する(言い換えると、上および下スペーサ層間に形成される経路領域に垂直に)液流を改善するために、3D布は、ドライクリーニング剤(つまり限定することなく、パークロロエチレンなど)で処理され、鉱油、伝送層の親水許容性の妨げになる、前に使用された油脂および/またはワックスなどのあらゆる工業製品を取り除くのに役立つ。適切には、付随的な製造ステップが、3Dスペーサ布が親水性物質(限定することなく、Rudolphグループから入手可能なFeran Ice 30g/lなど)で洗浄されることおいて続いて実行され得る。この工程ステップは、材料の表面張力が、水などの液体が3Dニット織物に接触するとすぐ織物に進入し得るほど低いことを確実にする。また、このことは、任意の滲出液の液体損傷成分の流れを調整するのに役立つ。
【0028】
吸収材の層110は、伝達層105の上に設けられる。発泡体、不織天然または合成材料であってよい、かつ、付随的に超吸収材を含む、またはであってよい吸収材は流体、特に、傷口から除かれ、カバー層140に向かうこれらの流体を引き込む流体の貯留層を形成する。また、吸収層の材料は、創傷被覆材内に集められた液体がスロッシング方式で流れることを防止する。また、吸収層110は、ウィッキング作用を介して層全体に流体が分散することを促し、これにより、流体が傷口から引かれ吸収層全体に貯留される。このことは、吸収層の領域における凝集を防ぐ。吸収材の限度容量は、負圧がかけられた際に創傷滲出液の流速を管理するのに十分なものでなくてはならない。使用中、吸収層は、負圧を受けるため、吸収層の材料は、このような環境下で液体を吸収するものが選択される。例えば、超吸収材など、負圧下において液体を吸収できる複数の材料が存在する。吸収層110は、主として、Freudenberg 114−224−4及び/またはChem−Posite
TM11C−450のALLEVYN
TM発泡体から形成されてもよい。
【0029】
適切には、吸収層は、全体に分散された乾燥粒子の形で超吸収材を有する不織セルロース繊維の層である。セルロース繊維の使用は、即座に作用する素早いウィッキング素子を導入し、被覆材によって取り上げられる液体を均一に分配する。複数の束状の繊維の並置は、液体を分散させるのに役立つ繊維パッドにおける強度な毛管現象を引き起こす。このようにして、超吸収材には、効果的に液体が供給される。また、吸収層の全領域には液体が供給される。
【0030】
また、ウィンキング作用は、上カバー層と接触するように液体を運ぶことを促し、被覆材の蒸散側速度の向上に役立つ。
【0031】
また、ウィンキング作用は、滲出が遅いまたは止まった際に創傷床に向けて下方に液体を伝送することを促進する。この伝送工程は、伝達層および下方の創傷床領域を湿った状態に保つことに役立ち、このことが、被覆材内の痂皮形成(ブロックを引き起こし得る)を防止し、創傷治癒のための最適な環境を維持することに役立つ。
【0032】
適切には、吸収層は、空気を含む材料であってもよい。熱可融繊維が、パッド構造を一緒に保持すること助けるために付随的に使用されてもよい。当然のことながら、超吸収粒子を使用するより、または、このような使用に追加して、超吸収繊維が、本発明のいくつかの実施形態において利用されてもよい。適切な素材の例は、米国のEmerging Technologies Inc (ETi)から入手可能なChem−Posite
TM 11Cという製品がある。
【0033】
付随的に、本発明のある実施形態によると、吸収層は合成安定繊維および/または2成分安定繊維および/または天然安定繊維および/または超吸収繊維を含んでもよい。吸収層の繊維は、ラテックス結合または熱結合または任意の結合技術の組合せまたは別の固定機構によって一緒に固定されてもよい。適切には、吸収層は、吸収層内に超吸収粒子を固定するように作用する繊維によって形成される。このことは、超吸収粒子が吸収層の外に、また、下にある創傷底に向けて移動しないことを確実にすることに役立つ。負圧がかけられた際に、吸収パッドが下方に崩れる傾向があり、超吸収粒子が吸収層の繊維構造によって固定されていない場合、この動作は超吸収粒子を創傷床に向けた方向に押すだろうから、このことは特に役立つ。
【0034】
吸収層は、複数の繊維の層を備える。適切には、繊維は、束状であり、セルロース、ポリエステル、ビスコースなどから作られる。適切には、乾燥吸収粒子は、使用される吸収層全体に分散される。適切には、吸収層は、セルロース繊維のパッドと、複数の超吸収粒子とを備える。適切には、吸収層は、不規則に配向されたセルロース繊維の不織層である。
【0035】
超吸収粒子/繊維は、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムまたはカルボメトキシ・セルロース材料など、または液体において自体の重量の何倍も吸収することができる任意の材料であってよい。適切には、材料は、自重の5倍より多くの0.98W/Wの生理食塩水などを吸収できる。適切には、材料は、自重の15倍より多くの0.98W/Wの生理食塩水などを吸収できる。適切には、材料は、自重の20倍より多くの0.98W/Wの生理食塩水などを吸収できる。適切には、材料は、自重の30倍より多くの0.98W/Wの生理食塩水などを吸収できる。
【0036】
適切には、超吸収材の粒子は、非常に水を吸収しやすく、被覆材に進入し接触するまで上がってくるとすぐにその流体を取り込む。平衡が被覆材の芯内で生じ、これにより、水分は超吸収材から乾燥環境領域内に通過し、水分が最上フィルムに当たると、このフィルムが切り替わり、流体蒸気が蒸発し始める。水分傾斜は、創傷床から連続して流体を取り除き、被覆材が滲出液で重くならないように被覆材内で確立される。
【0037】
適切には、吸収層は、吸気ポートの下に位置するように配置された少なくとも1つの貫通孔を含む。
図1に示すように、1つの貫通孔は、ポート150の下に位置する開口を創出するように使用され得る。付随的に、本発明のある実施形態において2つ以上のポートが使用されるべきであり、1つのまたは複数の開口が、対応する各ポートと組み合わされて超吸収層内に作られてもよい。本発明のある形態では必須ではないが、超吸収層内の貫通孔の使用は、特に下方に位置する流体の流路を設け、このことは、ある環境では役立つ。
【0038】
開口が吸収層に設けられると、層自体の厚みが、任意の上を覆う層を伝達層105の上表面(言い換えると、使用中に創傷の反対に向けた表面)から分離させる絶縁体として作用するだろう。このことの利点は、ポートのフィルターが送達層の材料から分断されることである。このことは、フィルターが濡れてしまい、さらなら作用を塞ぎ、ブロックしてしまうようなことを少なくするのに役立つ。
【0039】
また、吸収層内の1つ以上の孔の使用は、使用中、吸収層が超吸収材としてゲル形成材料を含む場合、この材料が液体を吸収して拡張することが、さらなる液体の移動および通常の流体の移動が通過できなくなるバリアを形成しない利点がある。このように、吸収層の各開口は、フィルターの創傷に向けた表面に直接面する伝達層間と、次いでポートの内部に進む流体経路を提供する。
【0040】
気体不浸透性だが、水蒸気浸透性のカバー層140は、創傷被覆材の幅に亘って延在する。一側に粘着剤を有する、例えばポリウレタンフィルム(例えばElastollan SP9109)であってよいカバー層は、気体に対しては不浸透性であり、従ってこの層は創傷を覆い、創傷被覆材が配置される創腔をシールするように機能する。こうすると、効果的なチャンバが、カバー層と負圧がかけられ得る創傷口との間に作られる。カバー層140は、被覆材の周辺の境界領域200内の創傷接触層102にシールされ、例えば、接着剤または溶着技術を介して、空気が境界領域を通過して引き込まれないことを確実にする。カバー層140は、外的な細菌汚染から創傷を保護し(細菌バリア)、創傷からの滲出液からの液体が、層を通過して移動し、フィルムの外表面から蒸発することを可能にする。カバー層140は、通常、ポリウレタンフィルムおよびフィルム上に広げられた接着剤パターンの2つの層を備える。ポリウレタンフィルムは、水蒸気浸透性であり、湿潤時に水分透過速度が高くなる材料から製造されてもよい。
【0041】
吸収層110は、
図1に示すように伝達層105より大きな面積であってよく、これにより、吸収層は、伝達層105の縁部を覆い、これにより伝達層がカバー層140に接触しないことを確実にする。このことが、創傷接触層102と直接接触する、吸収層110の外側経路115を提供し、吸収層への滲出液のより急速な吸収を促進する。また、この外側経路115は、液体が創腔の周辺に溜まらないことを確実し、そうしなければ、被覆材の周辺のシールから滲出し、漏出の形成の原因になりかねない。
【0042】
創腔に真空がかけられたときに空気経路が開いたままであることを確かににするために、伝達層105は、差圧による力に対抗するのに十分強度があり、屈しない必要がある。しかしながら、この層が、比較的繊細なカバー層140と接触する場合、創腔内に空気の漏れを許すカバー層140にピンホール開口の形成を引き起こし得る。このことは、湿潤時に弱くなる、切り替え可能なタイプのポリウレタンフィルムが使用される際に得に問題になり得る。吸収層110は、通常、伝達層の材料と比べると、比較的なやわらかい、磨耗防止の剤料から作られるので、カバー層のピンホール開口の形成を引き起こさない。従って、伝達層105より広い面積を有し、かつ、伝達層105の端部を覆う、吸収層110を供給することによって、伝達層とカバー層との接触が免れ、カバー層140のピンホール開口の形成が避けられる。
【0043】
吸収層110は、カバー層140と接触して配置される。吸収層が創傷からの滲出液を吸収すると、滲出液は、カバー層140に向けて引き込まれ、滲出液の水分を水蒸気透過性カバー層と接触させる。この水分は、カバー層自体の中に引き込まれ、次いで、被覆材の最上面から蒸発する。このように、創傷からの滲出液の水分は、被覆材から放出され、吸収層110によって吸収される創傷からの滲出液の量が減り、かつ、一杯になり交換が必要になるまで時間が増える。この放出工程は、負圧が創腔にかけられている際ですら起こり、負圧が創腔にかけられる際のカバー層全域における差圧は、カバー層を横断する水蒸気透過速度に悪い影響を与えることが分かっている。
【0044】
オリフィス145は、カバーフィルム140に設けられ、負圧が被覆材100にかけられるようにする。吸気ポート150は、オリフィス145の上のカバーフィルム140の最上面にシールされ、オリフィス145を通して負圧を伝える。長いチューブ220は、吸気ポート150に第1の端部で、かつ、被覆材から流体をポンプで出せるようにするポンプユニット(図示せず)に第2の端部で結合されてもよい。ポートは、アクリル、シアノアクリレート、エポキシ、UV硬化またはホットメルト接着剤などの接着剤を使ってカバーフィルム140に接着され、シールされてもよい。ポート150は、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、シリコーン、またはポリウレタンなどのショアAで30〜90の硬度を有するソフトポリマーから形成される。
【0045】
孔が、オリフィス145の下の吸収層110に設けられ、これにより、オリフィスが、伝達層105に直接連結される。このことが、ポート150に負圧がかけられるようにし、吸収層110を通過することなく伝達層105に伝えられる。このことが、負圧が創傷口にかけられることが、吸収層が創傷からの滲出液を吸収して制限されないことを確実にする。別の実施形態では、孔が吸収層110に設けられず、オリフィス145の下に位置する複数の孔が代わりに設けられてもよい。
【0046】
図1に示すように、創傷被覆材100の一実施形態は、ポート150の下に位置する、吸収層110の孔を備える。使用中、例えば、負圧が被覆材100にかけられる際に、ポート150の創傷に向いている部分が、伝達層105と接触するようになり、吸収層110が創傷の流体で一杯のときでさえ、創傷への負圧を伝達することを促進することができる。
ある実施形態は、カバー層140を伝達層105に少なくとも部分的に接着させてもよい。ある実施形態では、孔はポート150またはオリフィス145の直径の少なくとも1〜2mm大きい。
【0047】
液体に対して不透過性だが、気体には透過性のフィルター素子130は、液体バリアとして作用するように設けられ、創傷被覆材から液体が漏れることが不可能であることを確実にする。フィルター素子は、また、細菌バリアとして機能してもよい。通常細孔のサイズは0.2mmである。フィルター素子130のフィルター材料の適切な材料は、MMT範囲からPTTに拡張された0.2 micron Gore
TM、PALL Versapore
TM 200R、および、Donaldson
TM TX6628を含む。より大きい細孔のサイズが使用可能だが、これらは、完全なバイオバーデンの封じ込めを確実にするための副フィルター層を必要とするかもしれない。創傷流体が脂質を含むことから、必須ではないが、例えば、1.0ミクロンMMT−332から0.2ミクロンMMT−323までの油をはじくフィルター膜を使うことが好ましい。このことが、脂質が親水性フィルターをブロックすることを防止する。フィルター素子は、オリフィス145の上でポートおよび/またはカバーフィルム140に接着またはシールされ得る。例えば、フィルター素子130は、ポート150内に形成されてもよく、または、UV硬化剤などの接着剤を使ってカバー層140の最上部とポート150の最下部との両方に接着されてもよい。
【0048】
他のタイプの材料がフィルター素子130用に使用されてもよいことが理解できるだろう。より一般的に、ポリマー材料の薄く、平坦なシートである微小孔性膜が使用され得る。これは無数の微小孔を含む。上記の選択された膜により、これらの細孔は、0.01μmから10μmより大きいサイズのサイズ範囲であり得る。微小孔性膜は、親水性(水フィルター)と疎水性(撥水)との両方の発泡体で入手可能である。
本発明のある実施形態では、フィルター素子130は、支持層と、支持層上に形成されるアクリル共重合体膜とを備える。適切には、本発明のある実施形態における創傷被覆材100は、微小孔疎水性膜(MHMs)を使用する。複数のポリマーがMHMsを形成するために採用されてもよい。例えば、PTFE、ポリプロピレンmPVDFおよびアクリル共重合体。これらの付随的なポリマー全ては、疎水性および疎油性の両方であり得る特定の表面性能を取得するために処理され得る。このことにより、これらは、マルチビタミン注入、脂質、界面活性剤、オイル、および有機溶剤などの低い表面張力を有する液体をはじく。
【0049】
MHMsは、空気を膜を通して流通させつつ、液体をブロックする。またMHMsは、感染可能なエアロゾルおよび粒子を除外する、効果の高いエアフィルターである。一片のMHMsは、バルブまたは通気口の代替のオプションとして周知である。すなわち、MHMsを組み入れることは、製品の組立コストを削減し、利益と、一患者に対するコスト/利得の割合とを改善させることができる。
【0050】
また、フィルター素子130は、例えば、活性炭、カーボン繊維布、または、Vitec Carbotec−RT Q2003073発泡体などの臭気吸収材を含んでもよい。例えば、臭気吸収材は、フィルター素子130の層を形成してもよく、あるいは、フィルター素子内の微小孔疎水性膜で挟まれていてもよい。
【0051】
従って、フィルター素子130は、オリフィス145を通して気体を排出することができる。しかしながら、液体、微粒子および病原体は被覆材内に封じ込められる。
【0052】
特に、1つのポート150と貫通孔とを具備する実施形態には、ポート150および貫通孔が、
図1および2に示すように中心からずらして配置されることが好ましい。このような配置は、ポート150が被覆材100の残部に関連して持ち上げられるように被覆材100が患者に置かれることを可能にする。このように位置すると、ポート150およびフィルター130は、フィルター130を時期尚早に塞ぎ、傷口への負圧の伝達を損なう創傷流体と接触し難くする。
【0053】
図11は、本発明のある実施形態における吸気ポート150の平面図を示す。吸気ポートは、創傷被覆材でポートを創傷被覆材にシールするためのシーリング面152と、吸気ポート150を負圧源に接続するコネクター154と、シーリング面152とコネクター154との間に配置される半球体部分156と、を備える。シーリング面152は、ポート150がカバー140にシールされた際に良好なシールをもたらすための略平坦な領域を提供するフランジを備える。コネクター154は、長いチューブ220を介して外部の負圧源に結合されるように構成される。
【0054】
ある実施形態によると、フィルター素子130は、傷口を覆う細菌バリアの一部を形成し、従って、フィルター素子の周りで良好なシールが形成され、維持されることが重要である。しかしながら、フィルター素子をカバー層140に接着することによって形成されるシールには、十分な信頼性がないことが分かっている。これは、水蒸気透過性カバー層が使用される際に特に問題である。なぜなら、カバー層140から放出する水蒸気が接着剤に影響し、フィルター素子とカバー層との間のシールの破損を引き起こす。従って、本発明のある実施形態によると、液体がコネクター154に侵入することを防止するようにフィルター素子130をシールするための代替案が採用される。
【0055】
図12は、本発明のある実施形態における
図11の吸気ポート150の断面図を示し、線
図11のA−Aが断面の位置を示している。
図12の吸気ポートにおいて、吸気ポート150は、吸気ポート150の本体部分156内に配置されたフィルター素子130を備える。吸気ポート150とフィルター素子130との間のシールは、吸気ポートの本体部分内にフィルター素子を形成することによって達成される。
【0056】
図13は、本発明のある実施形態における
図11の吸気ポート150の断面図を示す。
図13の吸気ポートにおいて、フィルター素子130は、吸気ポート150のシーリング面152にシールされる。フィルター素子は、接着剤を使って、または、シーリング面でフィルター素子を溶着することによってシーリング面にシールされてもよい。
【0057】
吸気ポート150の一部としてフィルター素子130を設けることによって、
図12および
図13に示すように、フィルター素子をカバー層140に付着することに関連する問題は回避され、信頼性の高いシールが設けられることを可能にする。また、吸気ポート150の一部として含まれるフィルター素子130を有するサブアセンブリを設けることは、より簡単でより効率のよい創傷被覆材100の製造を可能にする。
【0058】
吸気ポート150が
図1の創傷被覆材100の内容において説明されてきたが、
図12および
図13の実施形態は、創傷から引き込まれる創傷からの滲出液が被覆材内に保持される、創傷に負圧をかける任意の創傷被覆材に適用可能であることが理解できるだろう。本発明のある実施形態によると、吸気ポート150は、使用者によって吸気ポート150内に創傷からの滲出液が入ることを視覚的に確認可能にするために透明の材料で製造されてもよい。
【0059】
実施中、創傷被覆材100は創腔を形成する傷口を覆ってシールされる。ポンプユニット(
図17に示し、下記に詳述する)は、吸気ポート150のコネクター154に負圧をかけ、オリフィス145を通して伝達層105に伝えられる。流体は、創傷接触層102の下の傷口から創傷被覆材を通してオリフィスに向けて引き込まれる。流体は、伝達層105を通してオリフィスに向けて移動する。流体が伝達層105を通して引き込まれると、創傷からの滲出液は、吸収層110内に吸収される。
【0060】
本発明の実施形態に関連する創傷被覆材100を示す
図2に戻ると、被覆材の中央から外側に向けて、伝達層105と吸収層110との上に位置する中央の隆起した領域201を囲む境界領域200内に延在する、カバー層140の上表面を確認できる。
図2に示すように、創傷被覆材の一般的な形状は、丸められたコーナー領域202を備える矩形である。本発明の別の実施形態における創傷被覆材は、正方形、円形、または楕円形の被覆材など異なる形状であり得る。
【0061】
創傷被覆材100は、使用される創傷のサイズおよびタイプに必要なサイズで作られてよい。ある実施形態では、創傷被覆材100は、20cm〜40cmの長軸の長さであり、10cm〜25cmの短軸の長さであってよい。例えば、被覆材は、10cm×20cm、10cm×30cm、10cm×40cm、15cm×20cm、および15cm×30cmのサイズで構成されてもよい。ある実施形態では、創傷被覆材100は、両辺が15cm〜25cmの長さの正方形の被覆材であってもよい(例えば、15cm×15cm、20cm×20cm、および25cm×25cm)。吸収層110は、被覆材全体より小さな面積を有してもよく、ある実施形態は、被覆材全体よりそれぞれ3cm〜19cm短い長さと幅とを有してもよく、より好ましくは、約5cm短い。ある矩形形状の実施形態では、吸収層110は、長軸が15cm〜35cmで、短軸が5cm〜10cmの長さであってよい。例えば、吸収層は、5.6cm×15cm(10cm×20cmの被覆材用に)、5.6cm×35cm(10cm×40cmの被覆材用に)、10cm×15cm(15cm×20cmの被覆材用に)、および10cm×25cm(15cm×30cmの被覆材用に)のサイズで構成されてもよい。ある正方形形状の実施形態では、吸収層110は、10cm〜20cmの長さ(例えば、15cm×15cmの被覆材用に10cm×10cm、20cm×20cmの被覆材用に15cm×15cm、または25cm×25cmの被覆材用に20cm×20cm)の長さの両辺を有してもよい。伝達層105は、好ましくは、吸収層より小さく、ある実施形態では、吸収層よりも長さと幅が両方ともに0.5cm〜2cm短い、より好ましくは約1cm短い、長さおよび幅を有してもよい。ある矩形形状の実施形態では、伝達層は、その長軸が14cm〜34cmで、その短軸が3cm〜5cmの長さであってもよい。例えば、伝達層は、4.6cm×14cm(10cm×20cmの被覆材用に)、4.6cm×24cm(10cm×30cmの被覆材用に)、4cm×34cm(10cm×40cmの被覆材用に)、9cm×14cm(15cm×20cmの被覆材用に)、および9cm×24cm(15cm×30cmの被覆材用に)のサイズで構成されてもよい。ある正方形形状の実施形態では、伝達層は、9cm〜19cmの長さ(例えば、15cm×15cmの被覆材用に9cm×9cm、20cm×20cmの被覆材用に14cm×14cm、または25cm×25cmの被覆材用に19cm×19cm)の長さの両辺を有してもよい。
【0062】
本発明の実施形態によると、創傷接触層は付随的であることが理解できるだろう。この層は、使用される場合、水に対して多孔性であり、下方に位置する傷口に面する。連続気泡発泡体、あるいは編まれたまたは織られたスペーサ布などの伝達層105は、創傷の全域が同じ圧力になるように気体と流体の排除とを分散するために使用される。フィルター層と一緒にカバー層は、実質的に液密のシールを創傷上に形成する。従って、負圧がポート150にかけられる際に、負圧はカバー層の下の創腔に伝えられる。この負圧は、従って、目標の傷口に与えられる。空気および創傷からの滲出液を含む流体は、創傷接触層および伝達層105を通して引き込まれる。創傷被覆材の下層を通して引き込まれた創傷からの滲出液は、吸収層110内に消散され吸収され、そこで収集され貯蔵される。空気および水蒸気は、フィルター層を通して創傷被覆材を通して情報に引き込まれ、吸気ポートを通して被覆材から外に出る。創傷からの滲出液の水分の一部は、吸収層を通してカバー層140内に引き込まれ、被覆材の表面から蒸発する。
【0063】
上述のように、負圧が傷口を覆ってシールされた創傷被覆材にかけられた際、創傷からの滲出液を含む流体は、傷口から伝達層105を通してオリフィス145に向けて引き込まれる。創傷からの滲出液は、次いで、吸収層110内に引き込まれ、そこで吸収される。しかしながら、いくらかの創傷からの滲出液は、吸収されず、オリフィス145に移動する場合がある。フィルター素子130は、創傷からの滲出液のいかなる液体が吸気ポート150のコネクター154に進入することを素子するバリアを設ける。従って、吸収されなかった創傷からの滲出液は、フィルター素子130の下に集まる。かなりの創傷からの滲出液がフィルター素子に集まった場合、液体の層が、フィルター素子の表面に亘って形成し、フィルター素子が、液体がフィルター素子130を通過できないようにブロックされた状態になり、液体層によって気体がフィルター素子に届くことを阻止するようになる。
一度フィルター素子がブロックされた状態になると、吸収層の総限度容量には達していなくても、もはや負圧が傷口に伝えられない。
【0064】
好適な実施形態では、ポート150は、その下に位置する吸収層110の任意の孔146に沿って、
図2に示す中央長手軸A−Aに一致する。好ましくは、ポート150と任意のこのような孔146は、中央位置に対して創傷の一端近くに配置される。ある実施形態では、ポートは被覆材100の角に配置されてもよい。例えば、ある矩形の実施形態において、ポート150は、被覆材の端から4cm〜6cmに配置され、孔146は、吸収層の端から2cm〜3mmに配置される。ある正方形の実施形態では、ポート150は、被覆材の角から4cm〜8cmに配置され、孔146は、吸収層の角から3cm〜5mmに配置される。
【0065】
ある創傷被覆材の配向は、フィルター素子130がこのようにブロックされた状態になることを助長する。これは、伝達層を通る創傷からの滲出液の移動が重力の影響で助長されるからである。従って、傷口および創傷被覆材の配向のために、重力が、創傷からの滲出液がオリフィスに向けて引き込まれる速度を早くするように作用する場合、フィルターは、より早く創傷からの滲出液でブロックされる状態になるかもしれない。これにより、創傷被覆材は、吸収層110の吸収限度容量に達する前に、もっと頻繁に交換されなくてはならない。
【0066】
オリフィス145に向けて引き込まれた創傷からの滲出液によって創傷被覆材100の早すぎるブロックを避けるために、本発明のある実施形態は、創傷からの滲出液がオリフィス145に向けて移動する速度を落とすように構成された少なくとも1つの素子を含む。この少なくとも1つの素子は、オリフィス145に達する前に吸収層内に吸収される滲出液の量を増やし、かつ/または、オリフィス145に達する前の被覆材を通るより長い経路を創傷からの滲出液がたどるように強いてもよい。
【0067】
図3は、本発明の一実施形態におけるオリフィスに向けて創傷からの滲出液が移動する速度を落とすバッフル素子を含む創傷被覆材の平面図を示す。
図3に示す創傷被覆材は、
図1および
図2に示すものと類似するが、中央の隆起した領域201を亘って配置された複数のバッフル素子310を含む。バッフル素子310は、オリフィスに向かう創傷からの滲出液の移動を阻む、被覆材の中央領域内のバリアを形成する。
【0068】
本明細書に記載される創傷被覆材に使用されてもよいバッフル素子の実施形態は、好ましくは少なくとも部分的に可撓性であり、これにより、創傷被覆材を湾曲し、傷口を覆う患者の肌と同調することを可能にする。創傷被覆材においてそうであるとき、バッフル素子は、好ましくは、創傷被覆材のポートまたはオリフィスおよび設けられている場合はその関連するフィルターに直接液体が流れることを少なくとも部分的に防止するように構成される。つまり、バッフル素子は、液体がポートに達するために必要な距離を長くし、このことが創傷被覆材の吸収または超吸収材料内にこれらの流体を吸収することを助長してもよい。
【0069】
本発明のある実施形態によると、バッフル素子は、吸収層110および伝達層105が存在せず、カバー層140が創傷接触層101にシールされるシーリング領域を備えてもよい。これにより、バッフル素子は、滲出液の動きに対するバリアをなし、従って、創傷からの滲出液はバッフル素子を避ける経路をたどらなければならない。これにより、創傷からの滲出液が、オリフィスに達するのにかかる時間が増える。
【0070】
ある実施形態では、バッフル素子は、被覆材内に配置された、例えば、独立気泡ポリエチレン発泡体などの実質的に無孔性の材料の挿入物であってもよい。あるケースでは、1つ以上の吸収層110および/または伝達層105が存在しないシーリング領域に、このような挿入されたバッフル素子を配置することが好ましい。バッフル素子を形成するために薄いストリップのように配置されまたは射出され得る、例えば、シリコーンシーリング材などの粘性の硬化シーリング材といったシーリング材は、実質的に流体不透過性である。
このようなバッフル素子は、伝達層105および/または吸収層110の領域、あるいは、吸収層110および/または伝達層105が存在しないシーリング領域内に配置または射出され得る。
【0071】
図6は、本発明のさらなる実施形態におけるバッフル素子を含む創傷被覆材を示す。1つのバッフル素子610は、吸収層110のバルクとオリフィス145との間にカップ形状のバリアを設ける。これにより、バッフル素子610によって画定される領域内の傷口から初めに引き込まれる、創傷からの滲出液は、オリフィス145に達するためにカップ形状のバリアの外側を迂回する経路をたどらなくてはならない。気付かれるだろうが、バッフル素子610は、創傷滲出液がオリフィス145に移動するのにかかる時間を短くする重力の影響を減らし、創傷被覆材の殆どの配向に関しては、創傷からの滲出液がたどる経路の少なくとも一部は、重力に反することになる。
【0072】
図3および
図6の実施形態は、
図1に示す構造を有する創傷被覆材に関して説明してきた。しかしながら、バッフル素子が、伝達層105が存在しない創傷被覆材にも同様に適用され得ることが理解できるだろう。
【0073】
図4は、本発明の一実施形態における少なくとも1つの素子を含む創傷被覆材の平面図を示す。創傷被覆材の中央領域201の幅に亘って延在する複数のバッフル素子410が、オリフィス145の周りに半円形経路状態で形成されたさらなるバッフル素子412に共に設けられる。
【0074】
図5、本発明のある実施形態におけるバッフル素子410の構成を示す。バッフル素子は、伝達層105の下に位置する吸収材510の経路を備える。吸収層110の経路は、バッフル素子410の上に位置することで、伝達層がバッフル素子410の領域内のカバー層140と接触する。これにより、伝達層105の下面に沿って移動することで吸収層110内に引き込まれない創傷滲出液は、吸収材510の経路と接触するようになり、吸収材510の経路によって吸収される。代替案として、または、付随的に、バッフル素子は、吸収層110の下に位置して当接する伝達層105の表面内に設けられる1つ以上の経路を備えてもよい。使用において、負圧が創傷被覆材にかけられる際、吸収層110は、経路内に引き込まれる。伝達層内の経路は、伝達層の厚み略同じ深さを有してよく、あるいは、伝達層の深さより浅い深さを有してもよい。経路の寸法は、負圧が創傷被覆材にかけられる際、経路が吸収層110によって充填されることを確実にするように選定さてもよい。ある実施形態によると、伝達層の経路は、伝達層105内の吸収材の経路をから成る。
【0075】
バッフル素子は、ある範囲の形状およびパターンに形成されてもよく、例えば、
図14A〜
図14Lは、バッフル素子の複数の異なる例示的構成を有する創傷被覆材を示す。
図14Aは、ポートまたはオリフィスの方向に揃えられた垂直な構成における直線的なバッフル素子を示す。
図14C〜
図14Eは、通常対角線上、水平線上、または垂直線上に揃えられた、複数のバッフル素子を具備する創傷被覆材の実施形態を示す。
【0076】
図14Fは、中央部分が開いた状態の中心から6方向に延びるように配置されたバッフル素子を示す。
図14Gは、ポートまたはオリフィスに遠位位置における、創傷被覆材上のW形状のバッフル素子を示す。
図14Hでは、3×3列のX形状のバッフル素子が創傷被覆材に設けられが、より多いまたはより少ないX形状のバッフル素子が使用されてもよいことが理解できるだろう。
図14Tは、複数の矩形のバッフル素子を有する実施形態を示し、1つ以上のバッフル素子は、創傷被覆材内のポートの下に配置される。
図14J〜
図14Kは、より長い対角線および水平線のバッフル素子を有する創傷被覆材の実施形態を示す。
図14Lでは、異なるサイズの矩形のバッフル素子が、創傷被覆材のこの実施形態上に存在する。
【0077】
本発明のある実施形態によると、少なくとも1つの素子は、伝達層105内にビアの列、または谷を備える。
図15は、ダイアモンド形状のビア210で穿孔した伝達層105を図示する。ビア210は、1つ以上のビア210と交差しない、ビアのパターンを通過する直線的な通路が存在しないように配置される。
【0078】
負圧が創傷被覆材にかけられる際、吸収層110は、ビア210内に引き込まれ、伝達層105を通して引き込まれる創傷滲出液と接触する吸収層の面積を大きくする。または、ビア210は、伝達層105を通して引き込まれる創傷滲出液を吸収するためのさらなる吸収材料が充填されてもよい。ビアは、伝達層105の深さを貫通して延在してもよいし、伝達層の一部だけを通過して延在してもよい。
【0079】
重力の影響下で伝達層105を通って移動する創傷滲出液は、略直線的に伝達層を通って落ちるであろう。任意のこのような直線的な通路は、あるポイントで、ビア210の1つと交差する、そしてこれにより、滲出液は、ビア210内で吸収材料との接触に持ち込まれるであろう。吸収材料と接触する傷滲出液は吸収され、伝達層105を通る創傷滲出液の流れが止められ、そして吸収されなければオリフィスに周辺に溜まることになる創傷滲出液の量を削減する。当然ながら、ビアはダイアモンド形状に限定されず、任意のビアのパターンが使用されてもよい。好ましくは、ビアは、伝達層105を通る全ての直線的な通路が、少なくとも1つビアと交差すること確かにするように配置される。ビアのパターンは、ビアにぶつかり吸収されるまでの、伝達層を通って創傷滲出液が移動できる距離を最短化するように選定されてもよい。
【0080】
図7は、本発明のある実施形態における創傷被覆材を示す。この実施形態では、少なくとも1つの素子が、創傷被覆材の中央領域201をオリフィス145に連結する空気経路710を備える。
図7の実施形態では、空気経路710は、伝達層105の縁部領域から延在し、かつ、伝達層をオリフィス145に連結する。
【0081】
使用において、創傷滲出液は、吸気ポート150に負圧をかけることによってオリフィス145に向けて引き込まれる。しかしながら、空気経路710は、創傷滲出液がオリフィス145に達する前に創傷滲出液によって辿られる、比較的長く曲がりくねった進路である。この長い進路は、創傷滲出液が伝達層とオリフィスとの間の距離を横断し、フィルター素子130をブロックする前に負圧が被覆材かられ得る時間を長くし、これにより、被覆材が、交換が必要になるまで使用できる時間を長くする。
【0082】
図8は、本発明の一実施形態における創傷被覆材を示し、少なくとも1つの素子は、オリフィス145に創傷被覆材の中央領域201を連結する空気経路810および812を備える。経路810および812は、中央領域201の対向するコーナー付近で伝達層に結合される。
【0083】
図8に示す創傷被覆材は、オリフィスがブロックされるようになるのにかかる時間における重力の影響を小さくする。創傷被覆材は、創傷滲出液が空気経路810に連結された伝達層の縁部領域に向けて重力の影響下で移動する配向にある場合、重力の影響は、空気経路812に結合された伝達層の縁部領域から離れるように創傷滲出液を移動させるだろうし、その逆もいえる。これにより、
図8の実施形態は、伝達層に負圧を結合するための別の空気経路を提供することで、1つの空気経路がブロックされても、残りの空気経路は開いたままで、負圧を伝達層105に伝えることができ、これにより、負圧が創傷被覆材にかけられず、被覆材を交換しなくてはならなくなるまでの時間を長くする。
【0084】
本発明のさらなる実施形態は、オリフィスに伝達層105を連結する、より大きな数の空気経路を備えてもよい。
【0085】
本発明のある実施形態によると、2つ以上のオリフィスがカバー層140内に設けられ、創傷被覆材に負圧をかけてもよい。2つ以上のオリフィスは、カバー層140に亘って分配され得、1つのオリフィスが特定の配向にある創傷被覆材のために創傷滲出液によってブロックされた場合、少なくとも1つの残りのオリフィスが、ブロックされないままであることが予期される。各オリフィスは、創傷被覆材によって画定される創腔と流体連結していることで、傷口に負圧を伝えることができる。
【0086】
図9は本発明のさらなる実施形態における創傷被覆材を示す。
図9の創傷被覆材は
図1の創傷被覆材と類似するが、カバー層140内に設けられる2つのオリフィス145および845を具備する。流体連結通路は、2つのオリフィスを連結することで、オリフィスの1つにかけられた負圧が、流体連結通路を介して残りのオリフィスにかけられる。オリフィス145、845は、カバー層140の対向するコーナー領域に位置する。流体連結通路は、カバー層140の上面の可撓性成形品910を使用して形成される。当然ながら、可撓性成形品は、別の適切な方式、例えば、オリフィス145および845間にカバー層140上に配置された伝達ストリップまたは連続多孔性発泡体層と、ストリップを覆うように溶着または接着されることでカバー層にシールされ、かつ発泡体を通過する通路を形成するさらなるフィルムと、で形成されてもよい。次いで、導管が、負圧をかけるためにシーリングフィルムに既知の方式で取り付けられてもよい。
【0087】
使用において、2つのオリフィスを有する創傷被覆材は、傷口の上にシールされ、創腔を形成し、外部負圧源がオリフィス145、845の1つにかけられ、負圧が、流体連結通路を介して残りのオリフィスに伝えられる。これにより、負圧は、2つのオリフィス145、845を介して伝達層105に、これにより傷口に伝えられる。オリフィス145、845の1つが重力の影響下でオリフィスに集まる創傷滲出液のせいでブロックされるようになる場合、残りのオリフィスは、きれいなままであり、傷口に負圧を伝え続けることを可能にする。実施形態によると、伝達層105は省かれてもよく、2つのオリフィスは、吸収層110を介して傷口に負圧を伝える。
【0088】
図10は、
図9の実施形態の流体連結通路の側面図を示す。成形品910は、カバー層140の最上面にシールされ、オリフィス145および845を覆う。気体透過性、液体不透過性のフィルター素子130は、各オリフィスに設けられる。成形品910は、チューブ素子220を介して外部負圧源に結合される。
【0089】
ある実施形態によると、1つのフィルター素子は、長い流体連結通路と2つのオリフィスとの下に延在するように使用されてもよい。上記例示的実施形態が2つのオリフィスを有するものとして説明されてきたが、3つ以上のオリフィスが使われ得、流体連結通路が負圧がオリフィス間で伝えられることを可能にすることが理解できるだろう。
【0090】
図16は、1つの細長いオリフィス350がカバー層140内に設けられる変形配置を示す。オリフィス350の第1および第2の端部355、356は、カバー層140の対抗するコーナー領域に位置する。可撓性成形品360は、オリフィス350の周辺にシールされ、負圧がオリフィス350の長さに沿ってカバー層140を通って伝えられることを可能にする。可撓性成形品360は、可撓性成形品910に関連する上述の任意の適切な手段によって成形されてもよい。
【0091】
使用において、創傷被覆材は傷口の上にシールされ、創腔を形成し、外部負圧源が、オリフィスに適用される。創傷被覆材の配向のせいで、創傷滲出液が、オリフィス350の一端部355辺りに集まるように重力の影響下で移動する場合、端部355に近いオリフィス350の一部がブロックされる。しかしながら、残りの端部356に近いオリフィスの一部は、きれいなままであり、傷口に負圧をかけ続けることを可能にする。
【0092】
さらなるオプションとして、被覆材は、吸収層内に抗菌剤、例えば、創傷接触層上に銀ナノ結晶剤、および/または、吸収層内にサルファジアジン銀を含むことができる。これらは別々または一緒に使われてもよい。これらはそれぞれ、創傷の中の細菌および吸収マトリックス内の細菌を殺す。さらなるオプションとして、他の活性成分、例えば、イブプロフェンなどの痛み止めが含まれてもよい。また、細胞活性を高める成長因子などの化学物質、または、マトリクス・メタロプロテイナーゼ防止剤など、メタロプロテイナーゼの組織阻害剤(TIMPS)または亜鉛木レート剤などの酵素阻害薬が利用されてもよい。
さらなるオプションとして、活性炭素、シクロデキストリン、ゼオライトなどの消臭素子が吸収層に、または、フィルター層の上のさらなる層として含まれてもよい。
【0093】
使用において被覆材は、所定角度でまたは垂直方向に上下反対に使用されてもよいことに留意されたい。従って、上下は、例示目的だけで使用される。
【0094】
図17は、ポンプ800と組み合わせた創傷被覆材100を備えるTNP創傷治療の実施形態を示す。ここで、被覆材100は、前述のように創傷の上に配置されてもよく、導管220が次いでポート150に連結されてもよいが、ある実施形態では、被覆材100には、ポート150に事前に取り付けられた導管220の少なくとも一部が設けられてもよい。好ましくは、被覆材100は、1つのユニットに事前に取り付けられ一体化された、全ての創傷被覆材素子(ポート150を含む)を具備する1つの物品として設けられる。創傷被覆材100は次いで、導管220を介してポンプ800などの負圧源に連結されてもよい。好ましくは、ポンプ800は、小型化され持ち運び可能であるが、より大きな通常のポンプが被覆材100と共に使用されてもよい。ある実施形態では、ポンプ800は、被覆材100の上または近くに取り付け設置されてもよい。コネクター221は、創傷被覆材100に繋がる導管220をポンプから外すことを可能にするために設けられ、このことは、例えば被覆材を交換する上で便利かもしれない。
【0095】
図18A〜
図18Dは、患者の傷口を治療するために使用されるTNP創傷治療の実施形態の利用を図示する。
図18は、洗浄され治療の準備ができた傷口190を示す。ここで、傷口190の周りの健康な皮膚は、好ましくは洗浄され、余計な毛が除かれるまたは剃られる。傷口190は、必要に応じて、無菌食塩水溶液で流されてもよい。付随的に、皮膚保護剤が、傷口190の周りの皮膚に塗布されてもよい。必要に応じて、発泡体またはガーゼなどの創傷填塞材が、傷口190に配置されてもよい。これは、傷口190がより深い創傷の場合に好ましい。
【0096】
傷口190の周りの皮膚を乾燥した後、
図18Bを参照に、創傷被覆材100が傷口190の上に配置されてもよい。好ましくは、創傷被覆材100は、傷口190の上および/または傷口190と接触して創傷接触層102と共に配置される。ある実施形態では、接着層が、創傷接触層102の下面101の上に配置され、これは、あるケースでは、傷口190の上に創傷被覆材100を配置する前に取り除かれる、付随的なリリース層によって保護されてもよい。好ましくは、被覆材100は、ポート150が、ポート周辺に流体が溜まることを避けるために被覆材100の残部に対して隆起した位置にくるように配置される。ある実施形態では、被覆材100は、ポート150が直接傷口の上に位置せず、傷口と同じまたはより高いレベルになるように配置される。TNPのために適切なシーリングを確かなものするために、被覆材100の縁部は、好ましくは、しわや折り目になららにように丸く収められている。
【0097】
ここで
図18Cを参照すると、被覆材100はポンプ800に連結される。ポンプ800は、被覆材100介して、特に導管を介して傷口に負圧をかけるように構成される。ある実施形態では、また、
図17で説明したように、被覆材100からポンプ800への導管を結合するためにコネクターが使用されてもよい。ポンプ800で負圧をかける上で、被覆材100は、ある実施形態では、被覆材100の下でいくらかまたは全ての空気が排気された結果、部分的に崩壊し、しわしわな状態になってもよい。ある実施形態では、ポンプ800は、被覆材100と傷口190の周りの皮膚との間の接触面などで、被覆材100において任意の漏れが起きたかを検知するように構成されてもよい。漏れが見つかった場合、この漏れは、好ましくは、治療を続ける前に修復されるべきである。
【0098】
図18Dに戻ると、追加的な固定ストリップ195が、被覆材100の縁部周辺に取り付けられてもよい。このような固定ストリップ195は、傷口190周辺の患者の皮膚に対する追加的なシーリングを提供するので、ある状況において有利である。例えば、固定ストリップ195は、患者がより活発なときのために追加的なシーリングを提供する。あるケースでは、固定ストリップ195は、特に、被覆材100が、届き難いまたは起状のあるエリアの上に配置される場合、ポンプ800を作動する前に使用されてもよい。
【0099】
傷口190の治療は、好ましくは、創傷が所望の治癒レベルに達するまで続けられる。ある実施形態では、所定の期間が経過してから、または、被覆材が創傷流体で一杯の場合、被覆材100が交換されることが望ましい。このような交換中、ポンプ800は維持され、被覆材100だけが交換される。
【0100】
本願の明細書および特許請求の範囲を通して、「備える」および「含む」と用語、ならびに例えば「備えている」などの用語の変形は、「含むが限定しない」ことを意味し、他の成分、添加物、構成要素、数値、またはステップを除外する意味ではない(除外しない)。
【0101】
本願の明細書および特許請求の範囲を通して、単数形は、文脈上必要でない限り複数形を含む。特に、不定の物品が使われる場合、その特性は、文脈上必要でない限り複数および単数を含むように理解されるべきである。
【0102】
本発明の特定の態様、実施形態、または事例に関連する特徴、数値、特性、合成物、化学成分またはグループは、不整合が生じない限り、本明細書に記載の任意の別の態様、実施形態、事例に適用可能であると理解されるべきである。