特許第6121351号(P6121351)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6121351直列弾性アクチュエータの力およびインピーダンスのロバスト制御のための構成
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6121351
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】直列弾性アクチュエータの力およびインピーダンスのロバスト制御のための構成
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/40 20160101AFI20170417BHJP
   H02K 11/21 20160101ALI20170417BHJP
   H02K 11/24 20160101ALI20170417BHJP
   B25J 17/00 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   H02P29/40
   H02K11/21
   H02K11/24
   B25J17/00 E
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-55990(P2014-55990)
(22)【出願日】2014年3月19日
(62)【分割の表示】特願2011-15325(P2011-15325)の分割
【原出願日】2011年1月27日
(65)【公開番号】特開2014-140300(P2014-140300A)
(43)【公開日】2014年7月31日
【審査請求日】2014年3月19日
(31)【優先権主張番号】12/698,832
(32)【優先日】2010年2月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505212049
【氏名又は名称】ジーエム・グローバル・テクノロジー・オペレーションズ・インコーポレーテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】510149563
【氏名又は名称】ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ・アズ・リプレゼンテッド・バイ・ジ・アドミニストレーター・オブ・ザ・ナショナル・エアロノーティクス・アンド・スペース・アドミニストレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ジェイ・レイランド
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・ハーグレイヴ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・プラット
(72)【発明者】
【氏名】ムハマド・イー・アブダラー
(72)【発明者】
【氏名】フランク・ノーブル・パーメンター
【審査官】 マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−336879(JP,A)
【文献】 米国特許第05650704(US,A)
【文献】 特許第2580502(JP,B2)
【文献】 米国特許第05910720(US,A)
【文献】 特開平03−213288(JP,A)
【文献】 特表2002−524192(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/013985(WO,A1)
【文献】 特開平04−020403(JP,A)
【文献】 特表2004−515187(JP,A)
【文献】 特開2000−253689(JP,A)
【文献】 特開平03−243193(JP,A)
【文献】 特開2009−190122(JP,A)
【文献】 特開平05−305584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/40
B25J 17/00
H02K 11/21
H02K 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷を動かす直列弾性アクチュエータの力制御を提供するための直列弾性アクチュエータ構成であって、前記構成は、
前記負荷に連結されるバネと、
モーターシャフトおよびギアボックスを含むモーターと、を有し、前記モーターシャフトは前記バネに連結され、
前記構成はさらに、前記モーターの前記ギアボックスの出力部に設けられ、絶対測定をする第1位置センサを有し、前記第1位置センサは前記モーターシャフトの回転位置を測定し、
前記構成はさらに、前記バネの反対側の端部に設けられ、絶対測定をする第2位置センサを有し、前記第2位置センサは前記負荷の回転位置を測定し、
前記構成はさらに、前記モーターに近接して設けられ、前記第1位置センサおよび前記第2位置センサからセンサ位置信号を受け取る埋め込みプロセッサを有し、前記埋め込みプロセッサは、前記モーターシャフトの回転位置と前記負荷の回転位置との差、およびバネ定数に基づいて、バネの実際のトルクを計算し、
前記構成はさらに、前記埋め込みプロセッサに参照トルク信号を提供するリモートコントローラを有し、前記埋め込みプロセッサは、前記参照トルクと前記バネ上の実際のトルクとの間の差分を決定し、前記参照トルクと前記実際のトルクが同一になるように前記モーターシャフトの位置を制御し、
前記埋め込みプロセッサは、前記リモートコントローラよりも高速で動作し、
前記埋め込みプロセッサ内のサーボループが、前記参照トルク、前記バネ定数及び前記モーターシャフトの前記回転位置と前記負荷の前記回転位置に基づいて所望のモーター位置を計算する、構成。
【請求項2】
請求項1に記載の構成であって、前記直列弾性アクチュエータは、回転式直列弾性アクチュエータである、構成。
【請求項3】
請求項1に記載の構成であって、前記負荷はロボットリンクである、構成。
【請求項4】
請求項3に記載の構成であって、前記ロボットリンクはロボットの腕部である、構成。
【請求項5】
請求項1に記載の構成であって、前記リモートコントローラは、複数の直列弾性アクチュエータを制御する複数の埋め込みプロセッサにトルク参照信号を提供する、構成。
【請求項6】
請求項1に記載の構成であって、前記第1位置センサおよび前記第2位置センサは、絶対位置センサである、構成。
【請求項7】
請求項1に記載の構成であって、前記ギアボックスは減衰ギアボックスである、構成。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本明細書で説明される本発明は、ロイヤリティの支払いなく米国政府(すなわち非商業的な)の目的のために、米国政府によりまた米国政府のために製造および使用され得る。
【0002】
[0002]本発明は、概ね、直列弾性アクチュエータにより提供されるインピーダンスと力を制御するための構成に関し、より具体的には、バネの一端部におけるモーターシャフトの位置を決定するための位置センサと、バネの反対の端部における負荷の位置を決定する位置センサと、センサからの測定信号を受け取る、埋め込まれた高速プロセッサと、を含む、直列弾性アクチュエータにより提供されるインピーダンスと力を制御するための構成に関する。高速プロセッサは、モーターシャフトの向きを制御して、負荷の向きを制御するためにバネにトルクを提供する。埋め込まれたプロセッサは、リモートコントローラからトルク参照命令を受け取る。
【背景技術】
【0003】
[0003] 直列弾性アクチュエータ(series elastic actuator,SEA)は、モーターと
アクチュエータの出力部との間にバネまたは他の弾性素子を用い、モーターの運動をアクチュエータ出力部の運動に伝達する。バネの変位は、典型的には、アクチュエータ出力部に作用するトルクを測定するために用いられる。SEAsは、典型的にはロボットに用いられ、ここで、アクチュエータはロボットの関節およびリンクを動作させるのに用いられる。
【0004】
[0004]SEAsを用いる2つの主な利点がある。第1に、モーターのトランスミッションに対して弾性素子の相対的に高いコンプライアンスは、高周波数においてアクチュエータ出力部をモーターから分断(decouple)する。これは、モーターおよびモータートランスミッションが大きな慣性を備える場合でも、ロボットリンクの受動的な慣性を減少させる。結果として、低い高周波受動慣性は、SEA駆動ロボットを人間の周りで安全にする。
【0005】
[0005]SEAsの第2の利点は、アクチュエータにより付与される力を制御する改良された能力であり、それゆえ、アクチュエータのインピーダンスを制御する能力が改善される。弾性素子が環境に対して相対的に高いコンプライアンスを備える場合、モーター位置の小さな変動に対するアクチュエータの力の感度は減少する。結果として、位置制御されたモーターを用いて付与されるアクチュエータの力を制御するのが容易になる。また、弾性素子のバネ定数が正確に分かる場合、バネの変位を測定することにより、アクチュエータの出力の力を測定することが可能である。これは、付与される力の直接的な測定を不要にすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0006]多くのSEAsの機械的な実現手段は類似しているが、SEA制御にはいくつかの異なるアプローチがある。多くのSEA制御の以前の構成は、SEA出力の力を制御する方法に集中している。初期のSEA制御戦略の1つは、本質的に力エラーのPID(proportional-integral-derivative)制御である。付与される力は、弾性素子に取り付けられたひずみゲージを用いて測定される。これは、参照力およびこの誤差の差分と比較される。
【0007】
[0007]SEA制御の他のアプローチは、力コントローラに連結される内部モーター位置コントローラまたは速度コントローラを用いる。力コントローラは、付与された力と参照力の差分を計算することで力誤差を計算する。PDコントローラは、力誤差に応じて動作し、所望のモーター速度を計算する。この速度参照は、モーター速度コントローラに入力される。モーター速度コントローラは、フィードバックパスに微分器を備えるPIDコントローラとして実装される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0008]本発明の教示によれば、力誤差を計算することなく、または、直接的に弾性SEA素子をひずみゲージで測定することなく、SEAにより付与されるトルクを制御するためのSEA構造が開示される。ここで、この構造は、ロボットリンクの位置を制御するための特定の用途を備える。SEA構造は、弾性バネの一端部に連結されるモーターと、弾性バネの反対側の端部に連結される負荷とを有し、モーターはバネを通じて負荷を駆動する。モーターのシャフトの向きは第1位置センサにより測定され、負荷の向きは第2位置センサにより測定される。位置センサからの位置信号は、埋め込まれたプロセッサに送られ、このプロセッサが、モーターシャフトに対する負荷の向きを決定し、バネのトルクを決定する。埋め込まれたプロセッサは、リモートコントローラから参照トルク信号を受け取り、埋め込まれたプロセッサは、所望のジョイントトルクに関して高速サーボループを実行する。リモートコントローラは、インピーダンスまたは位置目標により高次の目標に基づいて望ましいジョイントトルクを決定する。リモートコントローラは、ロボット内のいくつかのSEA構成にトルク命令を提供する。
【0009】
[0009]本発明の追加的な特徴は、添付図面とともに以下の説明および添付の特許請求の範囲を参照することにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】SEAを含むロボットアームの斜視図である。
図2】弾性アクチュエータ列を制御するためのSEA構成のブロック図である。
図3図2に示すSEA構成のための制御構成の概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0013]本発明の、弾性アクチュエータの力およびインピーダンスのロバスト制御のSEA構造に関する実施形態の以下の説明は、本来的に単なる例示であり、本発明の用途や使用を限定することを意図するものではない。
【0012】
[0014]本発明はnジョイントマニピュレータ、または、各ジョイントが直列弾性アクチュエータ(SEA)により駆動されるロボットに関する。SEAは、アクチュエータの力を検知および制御するためのビルトインコンプライアンスを活用する装置である。典型的なSEAは、バネのような高コンプライアンス素子が直列(またはインライン)に設けられる低コンプライアンス素子を備える従来のアクチュエータからなる。各SEAは、大きなギア減速を備えるハーモニックドライブが直列に設けられた電気モーターを含む。弾性素子は、低静止摩擦であり且つ大きな線形範囲を備えるねじりバネであり、ハーモニックドライブの出力をSEA出力およびロボットリンクに接続する。高分解能位置センサがハーモニックドライブ出力およびSEA出力上に取り付けられる。モーター制御は、ジョイント出力トルクを制御するための一体モーターコントローラを備える、高速埋め込みマイクロコントローラを用いて局所的に提供される。埋め込みマイクロコントローラは、10kHzのような高速で動作できる。埋め込みマイクロコントローラに追加して、リモートコントローラが外に設けられ、参照トルクおよび/またはインピーダンスを計算するために低速で動作する。2つのコントローラは高速通信バスにより互いに接続されてもよい。
【0013】
[0015]
図1は、上腕リンク12、中腕リンク16、および下腕リンク14を含むロボットアーム10の斜視図を示し、ここで、下腕リンク14および中腕リンク16はジョイント18により接続され、中腕リンク16および上腕リンク12はジョイント20により接続される。各ジョイント18、20は、当業者によく知られた方法で2つの隣接するリンクの間にトルク制御を提供するために直列弾性アクチュエータを含む。この実施形態において、直列弾性アクチュエータは、回転バネを含む回転アクチュエータである。ロボットアームは、当業者によく知られているように様々なロボットアーム設計のいくつかの回転自由度を含む。
【0014】
[0016]図2は、大きな減衰ギアボックス34を備えるモーター32を含むSEA構造30の平面図である。モーター32は、バネ36の一端部に連結され、バネ36の反対側の端部に連結された慣性負荷38を駆動させる。モーター32は、バネ36を回転させて負荷38にインピーダンスおよびトルクを提供するモーターシャフト(図示せず)を含む。負荷38は、任意の負荷とすることができる。モーター32のシャフトの向きは、高分解能位置センサ42により測定され、負荷38の向きは、高分解能位置センサ42により測定される。センサ40、42からの信号は、バネ36がどれくらい変位または回転したかの測定値を提供する。バネ定数が分かっており入力と出力との位置が測定されるなら、負荷38に作用するバネ36上のトルクを決定することができる。したがって、付与されるトルク測定値において、バネを介して所望のトルクが生成されるように、フィードバックループを実現することができる。
【0015】
[0017]構造30は、ここではモーター32に連結された埋め込みプロセッサ44を含む。ただし、プロセッサ44はSEAの任意の位置に設けることができる。埋め込みプロセッサは、位置センサ40、42から位置信号を受け取り、バネ定数とともにモーターシャフトおよび負荷38の向きに基づいて、バネ36に作用するトルクを計算し、負荷38に付与されるインピーダンスを計算する。埋め込みプロセッサ44は、通信バス48を介して低速リモートコントローラ46から参照力信号または参照トルク信号を受け取り、これは、バネ36上の望ましいトルクまたは負荷38の位置を提供する。
【0016】
[0018]リモートコントローラ46から提供される参照トルクは、埋め込みプロセッサ44により提供されるモーターシャフトの制御のためのトルク設定値を提供する。このトルクは、負荷の動作のための所望の位置、トルク、またはインピーダンスに基づいてリモートコントローラで計算することができる。埋め込みプロセッサ44は、アクチュエータにより付与されるトルク値を制限するための高速サーボループを利用する。サーボループは、所望のトルク、バネ剛性およびリンク位置に基づいて所望のモーター位置を計算する、モーター32上の位置コントローラを含むことができる。このトルクサーボループは、バス48の通信遅れなしに、埋め込みプロセッサ44により高速で動作し、トルク制御のためのよりよい性能および安定性を提供する。増分位置センサまたは相対位置センサではなく絶対位置センサ40、42を使用することにより、活動ルーチン無く付与されるトルクの絶対測定が可能になる。
【0017】
[0019]図3は、図2に示すSEA構成30のための制御構成50の概略ブロック図である。制御構成50は、ボックス52においてアクチュエータおよびセンサを含み、ジョイントトルクサーボ54からアクチュエータへのモーター命令信号を受け取り、センサ40、42からの位置信号をジョイントトルクサーボ54に提供する。位置信号は、センサ40からのモーターシャフトの位置信号θを含み、センサ42からの負荷38の向きの位置信号qを含む。ジョイントトルクサーボ54は、位置信号qを力制御法則ボックス56に提供し、力制御法則ボックス56はサーボ54に参照トルク信号を提供する。ジョイント
トルクサーボ54は、複数の埋め込みプロセッサを示し、力制御法則ボックス56は、リモートコントローラ46を示す。
【0018】
[0020]リモートコントローラ46は、高速通信バス48によりロボットシステム内の任意の埋め込みプロセッサを制御することができ、高速通信バス48は、他のロボットジョイントにおいて、SEAを制御する他の埋め込みコントローラに個別的に連結される。
【0019】
[0021]存在する制御アプローチに関する直列弾性アクチュエータのインピーダンス制御のために提案される構成の利点は、以下のように要約することができる。外部で低速で命令トルクを計算し、ジョイントのところで高速マイクロコントローラにより局所的にトルクが制御されることにより、従来のアプローチよりも増加したレベルの感度および安定性を提供する。さらに、付与されるトルクを計算するためのSEA上での位置センサの使用は、ひずみセンサを用いるアプローチよりも高い信号対ノイズ比を提供する。
【0020】
[0022]上述の議論は、本発明の単なる例示的な実施形態を開示および説明するものである。以上の議論からおよび添付の図面及び特許請求の範囲から、当業者は、特許請求の範囲により画定される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更例、修正例、変形形態を容易に認識することができる。
図1
図2
図3