特許第6121355号(P6121355)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6121355吸音板補強補修材及び吸音板補強補修方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6121355
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】吸音板補強補修材及び吸音板補強補修方法
(51)【国際特許分類】
   E01F 8/00 20060101AFI20170417BHJP
【FI】
   E01F8/00
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-67234(P2014-67234)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2015-190160(P2015-190160A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2015年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】509077200
【氏名又は名称】株式会社ネクスコ・メンテナンス東北
(74)【代理人】
【識別番号】100131026
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 博
(74)【代理人】
【識別番号】100194124
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 まゆみ
(74)【代理人】
【識別番号】100083437
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 實
(72)【発明者】
【氏名】水嶋 清光
【審査官】 須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−023852(JP,A)
【文献】 特開2006−241966(JP,A)
【文献】 特開2013−227838(JP,A)
【文献】 特開2013−083112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 8/00−8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面板と背面板との間に吸音体が収納され、正面板には、水平方向に伸長された複数の穴あき部が縦方向及び横方向にそれぞれ並べて配置された吸音板を補強し又は補修するものであり、
前記正面板の前面下部に配設され、前面挿入孔が設けられた前面板部と、
前記正面板の下端部を覆うように前記前面板部の下端部から上方に向かい折り返した折り返し部と、
前記前面挿入孔、及び、前記前面挿入孔に対応して前記正面板に設けられる正面挿入孔に挿入されて前記前面板部を前記正面板に固定するリベットとを備え、
前記前面板部の横方向の幅は、30mm以上44mm以下であり、前記前面板部の縦方向の長さは、前記正面板の下端部から前記穴あき部の縦方向における下から1段目に対応する位置を超える長さであり、
前記折り返し部の縦方向の長さは、3mm以上9mm以下であり、
前記前面挿入孔は、前記前面板部の横方向における中央部に1つ設けられ、
前記前面挿入孔の縦方向の位置は、前記折り返し部を前記正面板の下端部に合わせて前記前面板部を前記正面板の前面下部に配置した際に、前記穴あき部の縦方向における下から1段目に対応する位置よりも上側である
ことを特徴とする吸音板補強補修材。
【請求項2】
前記前面板部及び前記折り返し部の下端部には、排水孔が設けられたことを特徴とする
請求項1記載の吸音板補強補修材。
【請求項3】
正面板と背面板との間に吸音体が収納され、正面板には、水平方向に伸長された複数の穴あき部が縦方向及び横方向にそれぞれ並べて配置された吸音板を補強し又は補修する方法であって、
1つの前面挿入孔が設けられた前面板部と、前記正面板の下端部を覆うように前記前面板部の下端部から上方に向かい折り返した折り返し部と、前記前面板部を前記正面板に固定するリベットとを備えた吸音板補強補修材を用い、
前記折り返し部を前記正面板の下端部に合わせて前記前面板部を前記正面板の前面下部に配置した際に、前記前面挿入孔に対応する前記正面板の位置に、前記リベットを挿入する正面挿入孔を開ける工程と、
前記折り返し部を前記正面板の下端部の下から挿入し、前記前面挿入孔と前記正面挿入孔との位置を合わせて、前記前面板部を前記正面板の前面下部に配置する工程と、
前記前面挿入孔及び前記正面挿入孔に前記リベットを挿入し、前記前面板部を前記正面板に固定する工程とを含み、
前記前面板部の横方向の幅は、30mm以上44mm以下であり、前記前面板部の縦方向の長さは、前記正面板の下端部から前記穴あき部の縦方向における下から1段目に対応する位置を超える長さであり、
前記折り返し部の縦方向の長さは、3mm以上9mm以下であり、
前記前面挿入孔は、前記前面板部の横方向における中央部に1つ設けられ、
前記前面挿入孔の縦方向の位置は、前記折り返し部を前記正面板の下端部に合わせて前記前面板部を前記正面板の前面下部に配置した際に、前記穴あき部の縦方向における下から1段目に対応する位置よりも上側である
ことを特徴とする吸音板補強補修方法。
【請求項4】
前記前面板部及び前記折り返し部の下端部には、排水孔が設けられたことを特徴とする
請求項記載の吸音板補強補修方法。
【請求項5】
前記正面板は、前記穴あき部が縦方向に複数配置された穴あき領域と、前記穴あき部が設けられていない平板領域とを横方向に交互に有し、かつ、横方向の両端部は平板領域であり、
前記吸音板補強補修材は、平板領域のうち、横方向において両端部から1つ内側の領域、及び、そこから1つ置きの領域に対して配設する
ことを特徴とする請求項3又は請求項4記載の吸音板補強補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路等の騒音対策に用いられる遮音壁の吸音板を補強補修する吸音板補強補修材及び吸音板補強補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路等に設置されている遮音壁は、複数の吸音板を縦方向及び横方向に並べて配設することにより形成されている。吸音板は、例えば、正面板と背面板との間に吸音体を収納した構造を有しており、正面板の下部にはハゼ折り部が設けられ、背面板の端部が正面板のハゼ折り部に挿入されて固定されている。また、正面板には、ガラリと言われる水平方向の穴あき部が縦方向及び横方向に複数ずつ並べて配置され、音を通過させるようになっている(例えば、特許文献1参照)。ところが、この穴あき部からは音だけでなく雨水や凍結防止剤なども侵入してしまう。穴あき部から侵入した雨水や凍結防止剤などは正面板の下部に設けられているハゼ折り部に溜まり、これにより背面板の端部が錆びて膨張し、前面板にひび割れが生じてしまうという問題があった。
【0003】
このひび割れは、正面板の穴あき部の最下段において折曲げ加工がされている下側の辺に沿い、背面板の端部に対応して水平方向に伸びるように発生する。一部にこのひび割れが発生すると、その進行は早く、正面板全幅に拡大してしまう。正面板は、吸音材を固定し、背面板に定着させる役割があり、このようなひび割れが進行すると、正面板の飛散や、吸音材の破損に至る恐れがあるため、早期の対応が求められている。対応策としては、新しい吸音板に交換するという方法があるが、古い吸音板を撤去したのち、新しい吸音板を配設するという大掛かりな工事となり、時間がかかってしまう。また、一部にひび割れが生じただけの吸音板は、他の部分については何の問題もなく使用できるものであるにもかかわらず廃棄されてしまうことになり、材料の無駄づかいや、産業廃棄物の増加にもなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平06−21933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、早期に対応することができ、吸音板長寿命化を図ることができる吸音板補強補修材及び吸音板補強補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の吸音板補強補修材は、正面板と背面板との間に吸音体が収納され、正面板には、水平方向に伸長された複数の穴あき部が縦方向及び横方向にそれぞれ並べて配置された吸音板を補強し又は補修するものであり、正面板の前面下部に配設され、前面挿入孔が設けられた前面板部と、正面板の下端部を覆うように前面板部の下端部から上方に向かい折り返した折り返し部と、前面挿入孔、及び、前面挿入孔に対応して正面板に設けられる正面挿入孔に挿入されて前面板部を正面板に固定するリベットとを備え、前面板部の横方向の幅は、30mm以上44mm以下であり、前面板部の縦方向の長さは、正面板の下端部から穴あき部の縦方向における下から1段目に対応する位置を超える長さであり、折り返し部の縦方向の長さは、3mm以上9mm以下のものである。
【0007】
本発明の吸音板補強補修方法は、正面板と背面板との間に吸音体が収納され、正面板には、水平方向に伸長された複数の穴あき部が縦方向及び横方向にそれぞれ並べて配置された吸音板を補強し又は補修するものであって、前面挿入孔が設けられた前面板部と、正面板の下端部を覆うように前面板部の下端部から上方に向かい折り返した折り返し部と、前面板部を正面板に固定するリベットとを備えた吸音板補強補修材を用い、折り返し部を正面板の下端部に合わせて前面板部を正面板の前面下部に配置した際に、前面挿入孔に対応する正面板の位置に、リベットを挿入する正面挿入孔を開ける工程と、折り返し部を正面板の下端部の下から挿入し、前面挿入孔と正面挿入孔との位置を合わせて、前面板部を正面板の前面下部に配置する工程と、前面板部を配置したのち、前面挿入孔及び正面挿入孔にリベットを挿入し、前面板部を正面板に固定する工程とを含むものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前面挿入孔が設けられた前面板部と、正面板の下端部を覆うように前面板部の下端部から上方に向かい折り返した折り返し部と、前面板部を正面板に固定するリベットとを備えるようにしたので、前面挿入孔の位置に合わせて正面板に正面挿入孔を開け、折り返し部を正面板の下端部の下から挿入し、前面挿入孔と正面挿入孔との位置を合わせて、前面板部を正面板の前面下部に配置し、前面挿入孔及び正面挿入孔にリベットを挿入して固定することにより、正面板の下部を押さえることができる。よって、極めて簡単な作業により、正面板の穴あき部の最下段において折曲げ加工がされている下側の辺に沿って水平方向に発生したひび割れが伸びることを抑制することができ、また、ひび割れが発生しても正面板の飛散や吸音材の破損を抑制することができる。従って、吸音板の損傷に対して早期に対応することができると共に、吸音板の長寿命化を図ることができる。
【0009】
また、前面板部の幅、長さ、折り返し部の長さを所定の大きさとするようにすれば、又は、前面挿入孔を所定の位置に設けるようにすれば、より高い効果を得ることができる。
【0010】
更に、前面板部及び折り返し部の下端部に排水孔を設けるようにすれば、下端部に雨水等が溜まることを抑制することができ、錆等による損傷の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態に係る吸音板補強補修材の構成を表す図である。
図2図1に示した吸音板補強補修材を用いて補強又は補修を行う吸音板の構成を表す断面図である。
図3図2に示した吸音板を前側から見た構成を表す図である。
図4図1に示した吸音板補強補修材を図2に示した吸音板に配設した状態を表す拡大断面図である。
図5図4に示した吸音板補強補修材及び吸音板を前側から見た構成を表す図である。
図6図5の一部を拡大して表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施の形態に係る吸音板補強補修材10の構成を表すものであり、(A)は縦方向の断面図、(B)は前側から見た図、(C)は後側から見た図である。図2は、吸音板補強補修材10を用いて補強又は補修を行う吸音板20の断面構成を表すものであり、図3は、吸音板20を前側から見た構成を表すものである。図4は、吸音板補強補修材10を吸音板20に配設した状態を表す断面構成を拡大して表すものである。図5は、吸音板補強補修材10及び吸音板20を前側から見た構成を表すものであり、図6は、図5の一部を拡大して表すものである。
【0014】
吸音板補強補修材10は、道路等に設置される遮音壁を形成する吸音板20の補強又は補修に用いるものである。吸音板20は、例えば、正面板21と背面板22との間に吸音体23が収納され、側部には側面板24が配設されている。正面板21の下部には例えばハゼ折り部21Aが設けられ、背面板22の端部が正面板21のハゼ折り部21Aに挿入されて固定されている。正面板21には、例えば、ガラリと言われる水平方向に伸長された複数の穴あき部21Bが縦方向及び横方向にそれぞれ並べて配置されており、この穴あき部21Bから音を通過させて吸音体23により吸収するようになっている。
【0015】
また、正面板21は、例えば、穴あき部21Bが縦方向に複数配置された穴あき領域21Cと、穴あき部21Bが設けられていない平板領域21Dとを横方向に交互に有し、横方向の両端部は、平板領域21Dとなっている。吸音板20は、例えば、9個の平板領域21Dと8個の穴あき領域21Cとが横方向に交互に設けられた幅2mタイプと、17個の平板領域21Dと16個の穴あき領域21Cとが横方向に交互に設けられた幅4mタイプとがある。なお、図3では、2mタイプを示している。
【0016】
吸音板補強補修材10は、正面板21の前面下部に配設され、前面挿入孔11Aが設けられた前面板部11と、正面板21の下端部を覆うように前面板部11の下端部から上方に向かい折り返した折り返し部12とを備えている。前面板部11及び折り返し部12は、例えば、1枚のステンレス板の一方の端部を折り返すことにより形成されている。吸音板補強補修材10は、また、前面挿入孔11A、及び、前面挿入孔11Aに対応して正面板21に設けられる正面挿入孔21Eに挿入されて、前面板部11を正面板21に固定するリベット13を備えている。リベット13としては、例えば、ブラインドリベットが好ましい。なお、図1では、(A)にのみリベット13を表し、(B)及び(C)ではリベット13の表示を省略している。
【0017】
前面板部11の横方向の幅W1は、30mm以上44mm以下の範囲内であることが好ましく、35mm以上44mm以下の範囲内であればより好ましい。幅W1が狭すぎると正面板21を押さえるのに十分な強度を得ることができず、幅W1が広くなりすぎると正面板21の平板領域21Dの幅よりも広くなってしまうからである。
【0018】
前面板部11の縦方向の長さH1は、正面板21の下端部から穴あき部21Bの縦方向における下から1段目に対応する位置を超える長さであることが好ましく、下から2段目に対応する位置を超える長さであればより好ましい。また、前面挿入孔11Aの位置は、折り返し部12を正面板21の下端部に合わせて前面板部11を正面板21の前面下部に配置した際に、穴あき部21Bの下から1段目に対応する位置よりも上側であることが好ましく、穴あき部21Bの下から1段目に対応する位置と下から3段目に対応する位置の間であればより好ましい。正面板21の穴あき部21Bの最下段において折曲げ加工がされている下側の辺に沿い、背面板22の端部に対応して水平方向に発生するひび割れ21Fを押さえるためである。なお、図6において、穴あき部21Bの下から1段目(最下段)に対応する位置は一点鎖線で示し、穴あき部21Bの下から2段目に対応する位置は二点鎖線で示し、穴あき部21Bの下から3段目に対応する位置は一点二短鎖線で示し、ひび割れ21Fの位置は点線で示している。
【0019】
具体的には、前面板部11の縦方向の長さH1は、例えば、43mmよりも長いことが好ましく、63mmよりも長い方がより好ましい。また、前面挿入孔11Aの位置は、例えば、前面板部11の下端部から43mmよりも上側であることが好ましく、前面板部11の下端部から43mmよりも上側で83mmよりも下側であればより好ましい。
【0020】
なお、前面板部11の縦方向の長さH1は必要以上に長くする必要はなく、例えば、正面板21の下端部から穴あき部21Bの縦方向における下から5段目に対応する位置を超える長さとする必要はない。具体的には、例えば、123mmよりも長くする必要はない。
【0021】
折り返し部12の横方向の幅W2は、例えば、前面板部11の横方向の幅W1と同一である。折り返し部12の縦方向の長さH2は、3mm以上9mm以下であることが好ましい。短すぎると前面板部11の下端部を正面板21に固定することが難しくなるからである。また、長すぎると、コンクリート基礎の上に複数の吸音板20が積層されている状態において、コンクリート基礎と正面板21の下端部の間、又は、積層されている吸音板20の正面板21の間に折り返し部12を挿入することが難しくなるからである。
【0022】
前面板部11及び折り返し部12の下端部には、前面板部11から折り返し部12にかけて排水孔14が設けられていることが好ましい。下端部に雨水等が溜まることを抑制し、錆等による損傷の発生を抑制することができるからである。
【0023】
この吸音板補強補修材10は、例えば、次のようにして吸音板20の補強又は補修に用いられる。例えば、図6に示したように、正面板21の穴あき部21Bの最下段において折曲げ加工がされている下側の辺に沿い、背面板22の端部に対応して水平方向にひび割れ21Fが発生してしまった場合、正面板21の下端部に折り返し部12を掛け、前面板部11を正面板21の平板領域21Dにおける前面下部に配置して、ひび割れ21Fを押さえる。
【0024】
具体的には、例えば、折り返し部12を正面板21の下端部に合わせて前面板部11を正面板21の前面下部に配置した際に、前面挿入孔11Aに対応する正面板21の位置に、リベット13を挿入する正面挿入孔21Eを開ける。その際、穴あき部21Bからヘラ等を挿入して前面板21と吸音体23との間に配置し、吸音体23に穴を開けないようにすることが好ましい。次いで、例えば、折り返し部12を正面板21の下端部の下から挿入して下端部に掛け、前面挿入孔11Aと正面挿入孔21Eとの位置を合わせて、前面板部11を正面板21の前面下部に配置する。続いて、例えば、前面挿入孔11A及び正面挿入孔21Eにリベット13を挿入して取り付け、前面板部11を正面板21に固定する。
【0025】
これにより、正面板21の穴あき部21Bの最下段において折曲げ加工がされている下側の辺に沿って水平方向に発生したひび割れ21Fを押さえることができる。なお、吸音板補強補修材10は、正面板21の平板領域21Dのうち、横方向において両端部から1つ内側の領域、及び、そこから1つ置きの領域に対して配設することが好ましい。このように配設することにより、少ない手間で高い効果を得ることができるからである。
【0026】
正面板21の穴あき部21の最下段において折曲げ加工がされている下側の辺に沿って水平方向に全幅にわたってひび割れ21Fが生じてしまった吸音板20について、上述したように吸音板補強補修材10を配設して補修し、補修後の吸音板20について強度試験を行った。強度試験は、吸音板20を遮音壁に使用する際に義務付けられている強度試験方法に従った。荷重(風荷重相当)は橋梁部2.0kN/m、土工部1.5kN/mとした。その結果、補修後の吸音板20は、荷重に耐えうる強度を有していることが分かった。
【0027】
このように本実施の形態によれば、前面挿入孔11Aが設けられた前面板部11と、正面板21の下端部を覆うように前面板部11の下端部から上方に向かい折り返した折り返し部12と、前面板部11を正面板12に固定するリベット13とを備えるようにしたので、前面挿入孔11Aの位置に合わせて正面板21に正面挿入孔21Eを開け、折り返し部12を正面板21の下端部の下から挿入し、前面挿入孔11Aと正面挿入孔21Eとの位置を合わせて、前面板部11を正面板21の前面下部に配置し、前面挿入孔11A及び正面挿入孔21Eにリベット13を挿入して固定することにより、正面板21の下部を押さえることができる。よって、極めて簡単な作業により、正面板21の穴あき部21B最下段において折曲げ加工がされている下側の辺に沿って水平方向に発生したひび割れ21Fが伸びることを抑制することができ、また、ひび割れ21Fが発生しても正面板21の飛散や吸音材23の破損を抑制することができる。従って、吸音板20の損傷に対して早期に対応することができると共に、吸音板20の長寿命化を図ることができる。
【0028】
また、前面板部11の幅、長さ、折り返し部12の長さを所定の大きさとするようにすれば、又は、前面挿入孔11Aを所定の位置に設けるようにすれば、より高い効果を得ることができる。
【0029】
更に、前面板部11及び折り返し部12の下端部に排水孔14を設けるようにすれば、下端部に雨水等が溜まることを抑制することができ、錆等による損傷の発生を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
道路等の騒音対策に用いられる遮音壁の吸音板の補強又は補修に用いることができる。
【符号の説明】
【0031】
10…吸音板補強補修材、11…前面板部、11A…前面挿入孔、12…折り返し部、13…リベット、14…排水孔、20…吸音板、21…正面板、21A…ハゼ折り部、21B…穴あき部、21C…穴あき領域、21D…平板領域、21E…正面挿入孔、21F…ひび割れ、22…背面板、23…吸音体、24…側面板
図1
図2
図3
図4
図5
図6