特許第6121421号(P6121421)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バルネバ オーストリア ジーエムビーエイチの特許一覧 ▶ インターセル ユーエスエー, インコーポレイテッドの特許一覧

特許6121421C.ディフィシルの毒素Aおよび毒素Bタンパク質の単離ポリペプチドならびにその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6121421
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】C.ディフィシルの毒素Aおよび毒素Bタンパク質の単離ポリペプチドならびにその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/08 20060101AFI20170417BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20170417BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20170417BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20170417BHJP
   C07K 14/33 20060101ALI20170417BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20170417BHJP
【FI】
   A61K39/08ZNA
   A61K37/02
   A61P1/12
   A61P31/04
   C07K14/33
   !C12N15/00 A
【請求項の数】13
【全頁数】77
(21)【出願番号】特願2014-527505(P2014-527505)
(86)(22)【出願日】2011年9月5日
(65)【公表番号】特表2014-525249(P2014-525249A)
(43)【公表日】2014年9月29日
(86)【国際出願番号】EP2011065304
(87)【国際公開番号】WO2012028741
(87)【国際公開日】20120308
【審査請求日】2014年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】514054812
【氏名又は名称】バルネバ オーストリア ジーエムビーエイチ
(73)【特許権者】
【識別番号】514055358
【氏名又は名称】インターセル ユーエスエー, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ラリー エリングスワース
(72)【発明者】
【氏名】デビット フライヤー
(72)【発明者】
【氏名】ジング‐フイ チアン
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン フフルマン
(72)【発明者】
【氏名】ステファニー クルエプフェル‐スタール
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー グレン
(72)【発明者】
【氏名】カースティン ウェストリトスチニグ
【審査官】 北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/017383(WO,A1)
【文献】 特表2002−514886(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/146139(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/152429(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/00−14/825
C07K 19/00
C12N 15/00−15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)配列番号4に記載のアミノ酸配列を有する単離ポリペプチド、又は
b)配列番号4に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する単離ポリペプチドであって、クロストリジウム・ディフィシル毒素A及びBに対する免疫反応を誘導することができる、前記単離ポリペプチド
を含む、クロストリジウム・ディフィシル毒素A及びBに対する免疫反応を誘導するための、免疫原性組成物又はワクチン組成物。
【請求項2】
前記ポリペプチドが、致死用量の10、10および10のクロストリジウム・ディフィシル芽胞の胃内投与後における、前記単離ポリペプチドをワクチン接種されたハムスターの100%生存率をもたらす、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリペプチドが、クロストリジウム・ディフィシルの毒素AのC末端ドメインから得られる19反復単位を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリペプチドが、クロストリジウム・ディフィシルの毒素BのC末端ドメインから得られる23反復単位を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリペプチドが、配列番号4に対して少なくとも99%の配列同一性を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
アジュバントをさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記アジュバントがalumを含む、請求項記載の組成物。
【請求項8】
C.ディフィシル関連疾患(CDAD)の予防および治療における使用のための、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
CDADのリスクを有する対象におけるCDADの予防における使用のための、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
CDADのリスクを有する前記対象は、i)65歳を超える対象、もしくは2歳未満の対象;ii)AIDSを有する対象;iii)免疫抑制薬を投与されている、もしくは投与される予定がある対象;iv)入院の予定がある対象、もしくは入院している対象;v)集中治療を受けている、もしくは受ける予定がある対象;vi)消化管手術を受けている、もしくは受ける予定がある対象;vii長期介護を受けている、もしくは受ける予定がある対象;viii)頻繁な、および/もしくは長期的な抗生物質の使用を必要とする共存症を有する対象;またはix)再発性CDADを有する対象である、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
C.ディフィシル関連疾患(CDAD)の予防および治療における使用のための単離ポリペプチドであって
a)該単離ポリペプチドが、配列番号4に記載のアミノ酸配列を有するか、又は
b)該単離ポリペプチドが、配列番号4に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、かつ、配列番号4に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する該ポリペプチドが、クロストリジウム・ディフィシル毒素A及びBに対する免疫反応を誘導することができる、
前記単離ポリペプチド
【請求項12】
CDADのリスクを有する対象におけるCDADの予防における使用のための、請求項11記載のポリペプチド。
【請求項13】
CDADのリスクを有する前記対象は、i)65歳を超える対象、もしくは2歳未満の対象;ii)AIDSを有する対象;iii)免疫抑制薬を投与されている、もしくは投与される予定がある対象;iv)入院の予定がある対象、もしくは入院している対象;v)集中治療を受けている、もしくは受ける予定がある対象;vi)消化管手術を受けている、もしくは受ける予定がある対象;vii長期介護を受けている、もしくは受ける予定がある対象;viii)頻繁な、および/もしくは長期的な抗生物質の使用を必要とする共存症を有する対象;またはix)再発性CDADを有する対象である、請求項12記載のポリペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロストリジウム・ディフィシル毒素Aおよび毒素Bの受容体結合ドメインを含有する単離ポリペプチド、ならびにそのワクチンとしての使用に関する。この単離ポリペプチドは、両毒素に対する抗毒素免疫を提供する。
【背景技術】
【0002】
クロストリジウム・ディフィシルは、院内感染抗生物質関連下痢の主要な原因であり、病院、養護施設および他の介護施設における大きな健康問題となっている。病院に対する費用は、欧州において20億ドル、米国において32億ドルと見積もられている。
【0003】
原因物質は、環境全体に一般的に見られるが、健常成人人口の2〜3%の腸管にも存在する、グラム陽性芽胞形成性嫌気性細菌である。C.ディフィシル関連疾患(CDAD)は、通常は抗生物質投与の結果である正常な結腸細菌叢の破壊により誘導される。環境中のC.ディフィシル芽胞への暴露後、生物は腸粘膜においてコロニー形成する可能性があり、そこで疾患原因毒素の産生がCDADをもたらし得る。疾患は、軽度の合併症を伴わない下痢から、重度の偽膜性大腸炎および中毒性巨大結腸症まで様々となり得る。
【0004】
CDADは、医療環境においてますます問題となってきている。最近の研究では、抗生物質を与えられた入院患者の31%においてC.ディフィシルがコロニー形成し、コロニー形成したそれらの患者の56%が、続いてCDADを発症することが報告されている。概して、C.ディフィシルは、全ての抗生物質関連下痢の10〜25%、抗生物質関連大腸炎の50〜75%、および抗生物質関連偽膜性大腸炎の90〜100%の原因である。CDADの治療には、原因抗生物質の停止と、それに続くメトロニダゾールまたはバンコマイシンによる処置が伴う。抗生物質治療が停止された後の再発は、患者の約20%に生じ、これは多くの場合C.ディフィシル(C.difficile)によるコロニー再形成の結果である。
【0005】
2003年、カナダのケベック州におけるC.ディフィシルの発生は、North American Phenotype 1/027(NAP1)として知られるC.ディフィシルのより毒性の強い株の出現を示した。NAP1は、以前の株と比較して、より高い毒性、より低い転帰、ならびにより高い疾病率および死亡率に関連している。この株の出現は、CDADの発生の阻止の試みにおいてすでに生じている問題を増大させる。
【0006】
再発性疾患の予防のためのフィダキソマイシン(Dificid(登録商標))は、狭域大環状抗生物質の新たなクラスにおいて最初の物質である(Revill,P.;Serradell,N.;Bolos,J.(2006).”Tiacumicin B:macrolide antibiotic treatment of C.difficile−associated diarrhea”.Drugs of the Future 31 (6):494-497).これは、放線菌ダクチロスポランギウムアウランチアクム(Dactylosporangium aurantiacum)亜種ハムデネシス(hamdenesis)から得られる発酵産物である。フィダキソマイシンは、非全身性、つまり血流への吸収が極僅かであり、殺菌性であり、また、病原性クロストリジウム・ディフィシルの選択的根絶を示し、正常な健康腸細菌叢を構成する複数種の細菌に対する破壊が極僅かである。結腸における正常な生理学的状態の維持は、クロストリジウム・ディフィシル感染症再発の可能性を低減し得る(Johnson,Stuart(2009−06).”Recurrent Clostridium difficile infection:a review of risk factors,treatments,and outcomes”.Journal of Infection 58(6):403−410)。この新たなクラスの抗生物質の導入はCDADの治療を改善することが考えられるが、特に高齢者および免疫力のない患者等の高リスク患者においては、まだ予防薬の医学的必要性が存在する。
【0007】
CDADは、C.ディフィシルにより産生される2つの外毒素、毒素Aおよび毒素B(それぞれCTAおよびCTBとも呼ばれる)の作用の結果である。それらの毒素は共に、複数の官能性ドメインを有する高分子量(〜300kDa)の分泌タンパク質である(Voth DE and Ballard JD,Clinical Microbiology Reviews 18:247−263(2005))。両毒素のN末端ドメインは、Rho様GTPaseを修飾するADP−グルコシルトランスフェラーゼ活性を含有する。この修飾は、アクチン重合の損失および細胞骨格の変化を引き起こし、結腸上皮密着結合の破壊をもたらす。これは、結腸への過度の流体滲出、および結果として下痢をもたらす。中央ドメインは、疎水性ドメインを含有し、膜輸送に関与すると推測される。両毒素のC末端ドメインは、標的細胞への毒素結合に関与する反復単位(RU)と呼ばれる複数の相同領域を含有する(Ho et al,PNAS 102:18373−18378(2005))。反復単位は、短鎖(21〜30アミノ酸)または長鎖(〜50アミノ酸)として分類される。反復単位は、組み合わさってクラスタを形成し、それぞれ、通常1つの長鎖および3〜5個の短鎖反復単位を含有する。全長毒素Aは、8個のクラスタに組織化される39個の反復単位(ARU)を有し(Dove et al.Infect. Immun.58:480−488(1990)、一方全長毒素Bは、5個のクラスタに組織化される24個の反復単位(BRU)を含有する(Barroso et al,Nucleic Acids Res.18:4004(1990); Eichel−Streiber et al,Gene 96:107−113 (1992))。
【0008】
動物モデルおよび臨床の両方からのいくつかの研究では、C.ディフィシル関連疾患からの保護における抗毒素抗体の役割が示されている。ホルマリン不活性化毒素Aおよび毒素Bで免疫化されたハムスターは、高レベルの抗毒素抗体を生成し、C.ディフィシル細菌の致死的負荷から保護された(Giannasca PJ and Warny M,Vaccine 22:848−856(2004))。さらに、マウス抗毒素抗体の受動伝達は、用量依存的にハムスターを保護した。Kyne Lら(The Lancet 357:189−193 (2001))は、CDADの初期発現時の抗毒素A抗体反応の発達が、疾患再発に対する保護と相関することを報告した。
【0009】
保護的抗毒素抗体により認識される決定基は、受容体結合ドメインとして機能する反復単位を含有するC末端ドメインに局在している。最初に、Lyerlyら(Current Microbiology 21 :29−32 (1990))は、33個の反復単位を含有する毒素AのC末端ドメインが、中和抗毒素抗体の産生を誘導することができ、C.ディフィシル感染から保護し得ることを明らかにした。この研究において、ハムスターには、細菌による負荷の前に精製組み換えポリペプチドが複数回皮下投与されたが、部分的な保護しか達成されなかった。別の研究(Ryan et al,Infect.Immun.65:2941 −49(1997))では、CTAのC末端からの720アミノ酸残基を含有する単離ポリペプチド、および大腸菌溶血素A(コレラ菌において発現)の分泌シグナルが、ウサギCDADモデルにおいて、少用量のCTAに対して保護的な全身性および粘膜免疫を誘導することが示された。
【0010】
また、両毒素AおよびBのC末端ドメインに対する抗体反応は、完全保護を達成するために必要であることが報告された(Kink and Williams,Infect.Immun.66:2018−25 (1998),U.S.Pat.No.5,736,139(1998))。この研究は、各毒素のC末端ドメインが、毒素中和抗体の産生において最も効果的であることを明らかにした。これは、ハムスター致死モデルにおいてCTAおよびCTBのC末端ドメインに対して惹起された、経口送達トリ抗体(抗毒素)の有効性を実証した。結果はまた、抗毒素が、人間におけるCDADの治療および管理において効果的となり得ることを示している。別の研究において、ヒト抗毒素AおよびBモノクローナル抗体が、ハムスターにおけるC.ディフィシル誘導死に対する保護を付与すると報告された(Babcock et al.,Infect.Immun.74:6339−6347(2006))。いずれかの毒素の受容体結合ドメインに対する抗体によってのみ保護が観察され、また両抗毒素AおよびB抗体による処置後に、向上した保護が観察された。
【0011】
一方、Wardら(Infect.Immun.67:5124−32(1999))は、アジュバント活性の研究のために、C.ディフィシル毒素Aからの14反復単位(14CTA)を考慮した。反復単位は、N末端ポリヒスチジンタグでクローン化および発現され(14CTA−HIS)、または、破傷風毒素からの非毒性結合ドメインに融合された(14CTA−TETC)。鼻腔内投与された両方の融合タンパク質は、マウスにおいて抗毒素A血清抗体を産生したが、粘膜表面における反応を示さなかった。大腸菌易熱性毒素(LT)またはその突然変異型LTR72との併用投与後に、向上した全身性および粘膜抗毒素A反応が観察された。データに基づき、Wardらは、クロストリジウム病原体に対するヒトワクチンにおける粘膜アジュバントとしての、非毒性14CTA−TETC融合の使用を示唆した。
【0012】
C.ディフィシル毒素の反復単位ドメインに対する最近の生化学的研究は、安定な三元構造を形成するための最小配列要件に注目している(Demarest S J et al.,J.Mol.Bio.346:1197−1206(2005))。毒素Aから得られる11反復単位ペプチドは、正しい三元構造を有するが、毒素AおよびBからの6および7反復単位はそれを有さないことが判明した。正しく折り畳まれた11反復単位セグメントは、受容体結合特性を維持することが判明した。第2の研究は、6、11または15反復単位を含有する毒素A断片の機能的特性を検査した(Dingle T,Glycobiology 18:698−706(2008))。11および15反復単位のみが、抗毒素A抗体の毒素中和能力を競合的に阻害することができた。3つ全ての断片が、赤血球凝集活性を有することが判明したが、より長い断片は、より短いものよりも高い赤血球凝集活性を示した。データは、毒素受容体結合ドメイン構造および免疫原性が、11〜14を超える反復を含有するドメイン断片において保持されることを示している。
【0013】
また、Thomasら(WO97/02836、米国特許第5,919,463号(1999))は、粘膜アジュバントとしてのC.ディフィシル毒素A、毒素Bおよびそのある特定の断片(例えば、反復単位の一部または全てを含有するC末端ドメイン)を開示した。彼らは、CTAまたはCTBの鼻腔内投与が、複数のマウス区画において、ヘリコバクター・ピロリウレアーゼ、オボアルブミン、またはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)等の異種抗原への粘膜免疫反応を大幅に向上させ、ヘリコバクターによる負荷に対する保護に関連することを示した。さらに、毒素A融合タンパク質のアジュバント活性が評価され、ARU(毒素A反復単位)を含むCTAの794C末端アミノ酸残基が、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)に融合し、結果的なポリペプチドGST−ARUが大腸菌において発現した。この研究は、血清および粘膜分泌物における併用投与された抗原に対するGST−ARUによる免疫反応の著しい向上を実証した。
【0014】
これらの研究は全て、C.ディフィシル毒素Aもしくは毒素B、またはそれらの断片、またはそれらの組み合わせを含む非毒性組み換えタンパク質の、CDADに対する活性ワクチンの生成のための潜在的な使用を示唆している。現在、C.ディフィシルに対するワクチンは市販されていないが、ホルマリン解毒全毒素AおよびBからなる候補ワクチンが、人間におけるフェーズIおよびIIa試験において評価されている。このワクチンによる非経口免疫化は、抗毒素IgGおよび毒素中和抗体反応を誘導することが報告されている(Kotloff KL et al.,Infect.Immun.69:988−995(2001);Aboudola S et al.,Infect.Immun.71:1608−1610(2003))。
【0015】
文献は、さらに、C.ディフィシルの毒素AおよびB受容体結合ドメインの両方を含有する組み換え融合タンパク質の構築が、全体またはその断片において、ワクチン開発のための効率的および商業的に実行可能な手法であることを示している。そのような手法は、Varfolomeevaらにより、毒素Aの700塩基対断片および毒素Bの1300塩基対断片の2つの部分からなる融合タンパク質として試みられている(Mol.Genetics,Microb.and Virol.3:6−10(2003))。この手法はまた、BelyiおよびVarfolomeeva(FEMS Letters 225:325−9(2003))により説明されており、3つの部分:C.ディフィシル毒素Aおよび毒素Bの反復単位で構成される2つのC末端ドメインに続く、ウェルシュ菌エンテロトキシンCpeの断片からなる組み換え融合タンパク質の構築を示している。融合タンパク質は、大腸菌において発現されたが、生成物は封入体内に蓄積し、安定ではなかった。さらに、この研究において達成された純粋な生成物の収量(培地100ml当たり50μg)は、著しく低いものであった。
【0016】
Wilkinsら(WO00/61762、米国特許第6,733,760号(2004))もまた、組み換えC.ディフィシル毒素AおよびB反復単位(組み換えARUおよび組み換えBRU)、ならびにCDADに対するワクチンの調製のための多糖類複合体の使用を説明している。得られる組み換えARUタンパク質は、867個のアミノ酸残基を含み、一方組み換えBRUタンパク質は、622個のアミノ酸の長さを含有している。前に言及した研究とは異なり、この研究は、大腸菌における組み換えARUおよびBRU可溶性タンパク質の高レベルの発現を実証した。組み換えARUおよび多糖類複合化組み換えARUをワクチン接種されたマウスは、共に高レベルの中和抗毒素A抗体を有し、またC.ディフィシル毒素Aによる致死的負荷から極めて保護された。さらに、Wilkinsらは、ワクチン調製のための、ARUおよびBRUの両方からなる組み換え融合タンパク質の使用を示唆した。
【0017】
CDADに対するワクチンの開発に関心が集まっている。ARUおよびBRUからなる組み換え融合タンパク質が、ワクチンとして潜在的に有用となり得る。
【発明の概要】
【0018】
本発明は、C.ディフィシルからの毒素Aおよび毒素Bの設計、生成および使用のための新たなツールおよび方法を提供する。本発明は、配列番号2(C−TAB.G5)またはその誘導体、配列番号4(C−TAB.G5.1)を含む単離ポリペプチドC−TABを提供する。C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1は、毒素BのC末端ドメインの23反復単位に融合した、毒素AのC末端ドメインの19反復単位を含む。本発明はまた、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドを含む組成物および製剤を含む。組成物または製剤は、単離ポリペプチド、追加の抗原、アジュバント、および/または賦形剤を含有してもよい。代替として、組成物または製剤は、本質的に、アジュバントまたは他の活性成分を含まない単離ポリペプチドからなってもよい(但し、担体、緩衝剤および/または安定剤等の賦形剤を随意に含む)。さらに、本発明の組成物または製剤は、特に、例えば再発性CDADを有する対象、または頻繁および/もしくは長期の抗生物質の使用を必要とする対象において、抗生物質等の他の薬物と併用して投与されてもよい。
【0019】
本発明はまた、本発明の単離ポリペプチドを含むワクチンを提供する。ワクチンは、さらに、アジュバント、例えば例えばalum、ADP−リボシル化外毒素から得られるアジュバント、またはその他を含んでもよい。ワクチンは、単一投薬計画、2回投薬計画(例えば最初の投薬から3日から20日以内、例えば10日から15日後に投与される)、3回投薬計画(例えば最初の投薬から約7日後および約21日後に投与される)、または4回以上の投薬計画、好ましくは2回または3回投薬計画で投与されてもよく、用量は、20μgから200μgの量の本発明のポリペプチドを含む。
【0020】
本発明は、それを必要とする対象に、本発明の単離ポリペプチドを投与することにより、CDAD等の疾患の1つ以上の症状を予防、治療、または軽減する方法を提供する。C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドは、筋肉内または他の送達経路により対象に投与され得る。
【0021】
一実施形態において、本発明は、例えば以下のプロファイルを有する対象等のCDADのリスクを有する対象に、本発明の単離ポリペプチドまたは前記ポリペプチドを含む組成物を投与することにより、CDAD等の疾患を予防する方法を提供する:i)より弱い免疫系を有する対象、例えば高齢対象(例えば65歳を超える対象)もしくは2歳未満の対象等;ii)免疫力のない対象、例えばAIDSを有する対象等;iii)免疫抑制薬を投与されている、もしくは投与される予定がある対象;iv)入院の予定がある対象、もしくは入院している対象;v)集中治療(ICU)を受けている、もしくは受ける予定がある対象;vi)消化管手術を受けている、もしくは受ける予定がある対象;vii)養護施設等の長期介護を受けている、もしくは受ける予定がある対象;viii)頻繁な、および/もしくは長期的な抗生物質の使用を必要とする共存症を有する対象;ix)上述のプロファイルの2つ以上を有する対象である対象、例えば消化管手術を受ける予定がある高齢対象等;x)炎症性大腸炎を有する対象;ならびに/またはxi)再発性CDADを有する対象、例えばCDADの1つ以上のエピソードを経験している対象等。
【0022】
一実施形態において、本発明は、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドを生成する方法を提供する。C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドは、大腸菌発現系等の細菌発現系を使用して、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドをコードする核酸から生成され得る。
【0023】
一実施形態において、本発明は、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドを提供し、毒素Aの19反復単位が、少なくとも4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸残基からなるリンカーを介して、毒素Bの23反復単位に接続している。例として、本発明のリンカーは、配列RSMH(Arg−Ser−Met−His)(配列番号2または配列番号4のアミノ酸439〜442)を含んでもよい。
【0024】
別の実施形態において、本発明は、例えばARUおよび/またはBRUにおいて少なくとも1つの突然変異(例えば、挿入、置換または欠失)を含む、単離ポリペプチドの変異体を提供する。変異体の配列は、配列番号2に対する85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一性を有してもよい。
【0025】
本発明はまた、組み換えDNA操作、細菌発酵およびタンパク質精製により、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドまたはその変異体を生成するための方法を提供する。一実施形態において、本発明は、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドをコードする核酸を構築するための方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、大腸菌発現系等の細菌発現系を使用して、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドを生成する方法を提供する。
【0026】
本発明は、さらに、それを必要とする人間等の対象におけるCDADを予防および治療するための方法を提供する。この方法において、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1は、対象に単独で投与されるか、またはalumもしくはその他等の1種以上のアジュバントと併用投与される。対象は、C.ディフィシルへの暴露のリスクがある健常個人、C.ディフィシル感染症の治療を受けた、もしくはそれから回復したが、C.ディフィシルによる再感染のリスクがある人間対象、または、現在C.ディフィシルに感染しており、その状態がC.ディフィシル毒素中和抗体の誘導により改善され得る人間対象であってもよい。
【0027】
本発明は、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1を含む免疫原性組成物を提供する。免疫原性組成物は、さらに、抗原特異的免疫応答を向上させるアジュバントおよび/または薬学的に許容される担体および/またはそれを必要とする対象への適用に好適な製剤中の他の構成成分を含んでもよい。免疫原性組成物は、筋肉内(IM)送達、皮内(ID)送達、皮下(SC)送達、腹腔内(IP)送達、経口送達、経鼻送達、口腔送達、または直腸送達により送達され得る。
【0028】
本発明の別の実施形態において、免疫原性組成物は、天然C.ディフィシル毒素に結合してその細胞毒性活性を中和する抗体を生じさせ、そのようにしてC.ディフィシル関連疾患(CDAD)に対する長期活性保護、および/または治療を提供する。
【0029】
したがって、本発明は、それを必要とする対象におけるC.ディフィシル関連疾患の予防または治療に有用な免疫原性組成物を提供する。
【0030】
別の実施形態において、本発明は、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1をコードする核酸およびその断片または変異体を提供する。本発明はまた、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1をコードする核酸を含む発現ベクターを提供する。
【0031】
本発明の別の実施形態は、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1に特異的な、中和、ヒト化、モノクローナル、キメラおよびポリクローナル抗体等の抗体およびその断片を提供する。抗体またはその断片は、毒素Aおよび/または毒素Bを認識することができる。
【0032】
別の実施形態は、配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むワクチンを提供する。
【0033】
本発明の別の実施形態は、本発明の核酸、ポリペプチドおよび/または抗体を含む診断キットを提供する。
【0034】
本発明の他の実施形態および利点は、以下の説明において部分的に記載され、また一部は本説明から明らかとなり得るか、または本発明の実践から学習され得る。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1A】C−TAB.G5単離ポリペプチド(配列番号1)をコードする核酸を示す図である。
図1B】C−TAB.G5単離ポリペプチド(配列番号2)のアミノ酸配列を示す図である。毒素Aと毒素Bとの間のアミノ酸リンカーに下線が引かれている。
【0036】
図2A】C−TAB.G5.1単離ポリペプチド(配列番号3)をコードする核酸を示す図である。
図2B】C−TAB.G5.1単離ポリペプチド(配列番号4)のアミノ酸配列を示す図である。毒素Aと毒素Bとの間のアミノ酸リンカーに下線が引かれている。
【0037】
図3】C−TAB.G5の用量の増加およびalumアジュバントとの併用送達による、C−TAB.G5ワクチン接種マウスにおける抗体産生の向上を示す表である。マウスは、IM注射により2回のワクチン接種を受けた。第1および第2の注射から2週間後に、抗C−TAB、抗毒素Aおよび抗毒素B抗体のIgG力価をELISAにより評価した。
【0038】
図4】2回のIM注射によりalumあり、およびなしで増加用量のC−TAB.G5を受けたマウスにおける、抗C−TAB、抗毒素A、および抗毒素B IgG誘導のグラフ表示である。
【0039】
図5】alumの存在下または非存在下でC−TAB.G5で免疫化されたマウスにおける、片対数用量範囲にわたる抗体力価を示す表である。IgG力価は、第2の免疫化から2週間後にELISAにより評価した。データは、alumがワクチン接種マウスにおける抗体産生を大幅に増強することを示している。
【0040】
図6】C−TAB.G5をワクチン接種され(alumありおよびalumなし)、次いで致死用量の毒素Aまたは毒素Bに暴露されたマウスにおける保護効果を示す表である。2週間間隔で2回のワクチン接種(IM)を受けたマウスを、3週間後に負荷(IP)した。毒素Aおよび毒素B中和抗体(TNA)を、第2の注射から2週間後に評価し、致死的負荷後に生存した動物のパーセントを決定した。C−TAB.G5の増加用量は、より高いTNA産生と共に、致死的負荷に対する増加した保護をもたらした。alumの存在はTNA産生をさらに増加させると共に、より低い用量でのより高い生存率をもたらした。
【0041】
図7】ワクチン接種幼若(6〜7週齢)および老齢(18ヶ月齢)マウスにおける、抗体反応およびC−TAB.G5の保護有効性の比較を示す表である。2週間間隔で2回のワクチン接種(IM)を受けたマウスに、3週間後に負荷した(IP)。抗C−TAB、抗毒素Aおよび抗毒素B抗体のELISA IgG力価、TNA産生ならびに全体的な生存率を評価した。幼若マウスは、alumなしであってもより高い抗体反応を示し、両群とも、alumの存在下でワクチン接種された場合、改善された生存率を示した。
【0042】
図8】ワクチン接種幼若および老齢マウスにおける、抗C−TAB IgG抗体増加の反応速度の比較を示すグラフである。幼若マウスは、より速い速度およびより早期のIgG産生を示し、両群とも、alumの存在下でワクチン接種された場合、改善された反応を示した。
【0043】
図9】C−TAB.G5.1またはトキソイドAおよびB混合物(1:1)で免疫化されたマウスにおける、抗C−TAB、抗毒素Aおよび抗毒素B抗体産生の比較を示す表である。マウスは、IM注射により2回のワクチン接種を受けた。第2の注射から2週間後に、抗C−TAB、抗毒素Aおよび抗毒素B抗体のIgG力価をELISAにより評価した。トキソイドによる免疫化は、毒素分子のN末端部分に対する抗体を誘導し、一方で、C−TABによる免疫化は、毒素分子のC末端部分に対する抗体を誘導する。
【0044】
図10】C−TAB.G5.1またはトキソイドAおよびB混合物により免疫化されたマウスにおける、TNA産生および毒素AまたはBによる負荷に対する保護の比較を示す表である。2週間間隔で2回のワクチン接種(IM)を受けたマウスに、3週間後に毒素Aまたは毒素Bの致死用量を負荷した(IP)。
【0045】
図11】alumありおよびなしでC−TAB.G5.1で免疫化されたハムスターにおける、抗C−TAB(A)、抗毒素A(B)、および抗毒素B(C)IgG産生を示す表である。ハムスターは、0日目および14日目にIM注射により3回のワクチン接種を受けた。14、28および35日目に、抗C−TAB、抗毒素Aおよび抗毒素B抗体のIgG力価をELISAにより評価した。
【0046】
図12】alumありまたはなしでC−TAB.G5.1で免疫化されたハムスターにおける、抗C−TAB IgG抗体増加のグラフ表示である。
【0047】
図13】alumありまたはなしでC−TAB.G5.1で免疫化されたハムスターにおける、TNAおよび保護の比較を示す表である。第3のワクチン接種から2週間後、ハムスターは、IP注射により致死用量の毒素Aまたは毒素Bを受けた。
【0048】
図14】致死用量のC.ディフィシル芽胞の胃内投与後の、C−TAB.G5.1でワクチン接種されたハムスターの生存率を示すグラフである。生存率データは、Kaplan−Meier生存率適合曲線としてプロットし、統計分析はログランク分析を使用して行った。全ての芽胞用量(10、10および10)において、ワクチン接種群内のハムスターの100%生存率が観察され、プラセボ群と比較して生存率が有意に向上した。
【0049】
図15】alumの存在下または非存在下でC−TAB.G5.1で免疫化されたカニクイザルにおける、抗C−TAB、抗毒素A、および抗毒素B抗体産生を示す表である。サルの2つの群(各群3匹、4〜6歳)が、250μgのalumあり、またはなしで、200μgのC−TAB.G5.1を受けた。試験の0、14、28および42日目に、血液試料を採取した。ELISA法を使用して、抗C−TAB、抗毒素Aおよび抗毒素B IgG力価を評価した。
【0050】
図16】PBSまたはヒスチジン緩衝液中1μg〜30μgの用量範囲にわたり送達されたC−TAB.G5およびC−TAB.G5.1の免疫原性の比較を示すグラフである。マウスは、2週間間隔で2回のワクチン接種(IM)を受けた。第2の注射から2週間後に、抗C−TAB、抗毒素Aおよび抗毒素B抗体のIgG力価をELISAにより評価した。PBSまたはヒスチジン緩衝液中で送達されたC−TAB.G5とヒスチジン緩衝液中で送達されたC−TAB.G5.1との間で、3つ全ての抗体力価は有意には異ならなかった(T−検定分析)。
【0051】
図17】マウスにおけるC−TAB.G5、C−TABNCTBおよびC−TADCTBの免疫原性の比較を示す表である。マウスは、IM注射により、2週間間隔で各組み換えタンパク質の2回のワクチン接種を受けた。全ての免疫化は、alumアジュバントの非存在下で行った。第2の注射から2週間後に、抗C−TAB、抗毒素Aおよび抗毒素B抗体のIgG力価をELISAにより評価した。3つ全ての融合タンパク質が、高い免疫原性を示す。
【0052】
図18】マウスにおける天然毒素Bによる負荷に対する保護を示す表である。マウスは、図17に関して示したように免疫化され、3週間後に、IP注射により致死用量の天然毒素Bを負荷された。
【0053】
図19】alumの非存在下または存在下でC−TAB.G5.1またはC−TADCTBをワクチン接種されたハムスターにおける、TNAおよび保護の比較を示す表である。第3のワクチン接種から2週間後、ハムスターは、IP注射により致死用量の毒素Aまたは毒素Bを受けた。
【0054】
図20】異なる計画においてC−TAB.G5.1で免疫化されたマウスにおける、TNA産生および毒素Aまたは毒素Bによる負荷に対する保護を示す表である。0、3および14日目、または0、7および21日目、または0、14、および28日目にIM注射により3回ワクチン接種されたマウスの群の間の、TNA産生および保護の比較。最後の注射から3週間後に、マウスに致死用量の毒素Aまたは毒素Bを負荷した(パネルAは表形式、パネルBはグラフ形式である)。
【0055】
図21】10μgのC−TAB.G5.1および12.5μgのalum(100μl中)の単回投与で免疫化されたマウスにおける、C.ディフィシル毒素A(55ng/マウス)での負荷に対する保護(生存率)を示すグラフである。前記負荷は、免疫化から21日後、35日後または49日後に行われた。
【発明を実施するための形態】
【0056】
概説
本発明は、毒素Aの19反復単位(RU)および毒素Bの23反復単位(RU)またはそのペプチド断片もしくは変異体を含む、単離ポリペプチドC−TAB.G5(配列番号2)またはその誘導体、C−TAB.G5.1(配列番号4)の使用を含む、C.ディフィシル毒素AおよびBに対する保護的および/または治療的免疫反応を誘導するための免疫原性組成物を提供する。
【0057】
本発明はまた、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドを生成する方法、ならびに哺乳動物におけるCDADの予防および/または治療に有用な組成物(例えばワクチン)を調製する方法を提供する。以下の説明は、組み換え単離ポリペプチドの構築、発現、および精製、特異的免疫反応を誘導するため、および対象における保護を評価するための抗原としてのその使用のさらなる詳細および例を提供する。対象は、動物または人間であってもよい。
【0058】
本発明の方法および組成物における使用のためのC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドは、いくつかの標準的方法のいずれかを使用して調製され得る。例えば、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1は、標準的組み換えDNA技術を使用して生成されてもよく、好適な宿主細胞は、毒素コード核酸断片の一部を含有する適切な発現ベクターにより形質転換される(例えば、Dove et al.,Infect.Immun.58:480−8(1990)、およびBarroso et al.,Nucleic Acids Research 18:4004(1990)を参照されたい)。広範な発現系のいずれも、組み換えポリペプチドを生成するために使用され得る。C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1は、原核宿主細胞(例えば、大腸菌または桿菌等の細菌)または真核宿主細胞(例えば、酵母細胞、哺乳動物細胞(例えば、COS1、NIH3T3、もしくはJEG3細胞)、または昆虫細胞(例えば、ヨトウガ(SF9)細胞))において産生され得る。そのような細胞は、例えば、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)から入手可能である。形質転換およびトランスフェクションの方法、ならびに発現ベクターの選択は、選択される宿主系に依存する。形質転換およびトランスフェクションの方法は、例えば、Ausubel et al.,ISBN:047132938Xにより説明されている。また、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1、特に短鎖断片は、化学合成により、例えば、Solid Phase Peptide Synthesis,1984,2nd ed.,Stewart and Young,Eds.,Pierce Chemical Co.,Rockford,Ill.において説明されている方法、または標準的in vitro翻訳方法により生成され得る。
【0059】
C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1配列に加えて、本発明は、機能的に活性で免疫原性であるその変異体を提供する。変異体は、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1と同じレベルの免疫原性を有してもよい。変異体は、配列番号2または配列番号4と比較してアミノ酸置換、欠失、または挿入を有してもよい。C−TAB.G5もしくはC−TAB.G5.1またはその変異体をコードする遺伝子は、標準的方法を使用して作製され得る(以下を参照されたく、また、例えば Ausubel et al.,上記参照も参照されたい)。
【0060】
C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1配列に加えて、本発明は、追加的な反復を含むC−TAB.G5のさらなる誘導体を提供する。例として、融合タンパク質、C−TABNCTB(配列番号18、配列番号17によりコードされる)は、C−TAB.G5と同様に、CTAの19反復単位(アミノ酸2272〜2710)、CTBの23反復単位(アミノ酸1850〜2366)、およびCTBのC末端に融合したCTBのさらなる追加的な10反復(アミノ酸1834〜2057)を含む。さらなる変異体、C−TADCTB融合タンパク質(配列番号20、配列番号19によりコードされる)は、C−TAB.G5(CTAの19反復およびCTBの23反復)、ならびにC−TAB.G5のC末端に融合したCTBの追加的な24反復単位(アミノ酸1834〜2366)を含む。また、変異体は、C−TAB.G5の追加的な複製またはその一部を含んでもよい。例えば、C−TADCTBは、C−TAB.G5に存在するCTBの反復単位の二重部分を含んでもよい。
【0061】
本発明は、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1をコードする核酸を細菌宿主細胞に導入すること、およびC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1を発現させることを含む、大腸菌等の細菌系における高レベル発現C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1のための方法を提供する。
【0062】
さらに、本発明のC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドは、アジュバントに共有結合または架橋してもよい(例えば、Cryz et al.,Vaccine 13:67−71(1994);Liang et al.,J.Immunology 141:1495−501(1988)およびCzerkinsky et al.,Infect.Immun.57:1072−77(1989)を参照されたい)。
【0063】
本発明は、CDADから保護し、それに対する治療を提供する、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドを含むワクチンを提供する。本発明のワクチンは新規な抗体を含み、筋肉内(IM)、皮内(ID)、皮下(SC)、経口、経鼻、口腔、または直腸経路で送達され得る。ワクチンは、免疫保護を提供するか、または受動免疫化のための抗体を誘導し得る。
【0064】
本発明のC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドは、CDADに対し免疫化するためのワクチンを提供する。本発明のC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドまたはその変異体は、C.ディフィシル関連疾患、例えばCDADに対する保護範囲を、これまで知られていない、または公開されていないレベルまで拡大することを目標とする組合せワクチン候補である。C.ディフィシル関連疾患からの保護またはその重症度の低下を提供する単一ワクチンのこの概念は、世界規模での公衆衛生管理、特に流行病の重症度の低減(例えば、養護施設、クルーズ船)における独特の進歩を示す。
【0065】
本明細書において使用される場合、「毒素Aタンパク質」または「毒素Bタンパク質」とは、CDADの主な原因であるC.ディフィシルの毒性タンパク質を指す。毒素Aおよび毒素Bは、C末端結合ドメインにおける免疫原性を担う複数の反復単位を含む。
【0066】
本明細書において使用される場合、「野生型」または「天然」とは、宿主細胞において内因的に見られるような核酸またはアミノ酸配列を含む全長タンパク質を指す。
【0067】
本明細書において使用される場合、「クロストリジウム・ディフィシル関連疾患」、「クロストリジウム・ディフィシル関係疾患」、「クロストリジウム・ディフィシル−関連疾患」、「クロストリジウム・ディフィシル毒素媒介疾患」、「クロストリジウム・ディフィシル感染」および「CDAD」という用語は、直接的または間接的に、クロストリジウム・ディフィシルの感染により引き起こされる疾患を指す。
【0068】
「抗原」は、生物の免疫細胞に提示されると特定の免疫反応を誘導する物質を指す。例えば、抗原は、核酸、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、糖タンパク質、炭水化物、脂質、糖脂質、リポタンパク質、融合タンパク質、リン脂質、またはそれらの組合せの複合体であってもよい。抗原は、B細胞受容体(すなわち、B細胞の膜上の抗体)またはT細胞受容体により認識される、単一の免疫原性エピトープ、または複数の免疫原性エピトープを含んでもよい。抗原は、ウイルス様粒子(VLP)または病原菌もしくは微生物全体、例えば細菌もしくはビリオン等として提供されてもよい。抗原は、不活性または弱毒化生ウイルスであってもよい。抗原は、細胞全体もしくは膜のみからの、抽出物もしくは溶解物から得られてもよく、または、抗原は、化学合成または組み換え手段により生成されてもよい。抗原は、単独で、またはアジュバントと共に投与され得る。単一の抗原分子は、抗原およびアジュバント特性の両方を有してもよい。
【0069】
「アジュバント」とは、おそらくは抗原提示細胞の活性化による抗原特異的免疫反応を特異的または非特異的に増強するために使用される任意の物質を意味する。アジュバントの例は、油エマルジョン(例えば、完全または不完全フロイントアジュバント)、Montanide不完全Seppicアジュバント、例えばISA、水中油エマルジョンアジュバント、例えばRibiアジュバント系、ムラミールジペプチドを含有するシンタックスアジュバント製剤、アルミニウム塩アジュバント(ALUM)、ポリカチオン性ポリマー、特にポリカチオン性ペプチド、特にポリアルギニンまたは少なくとも2つのLysLeuLysモチーフを含有するペプチド、特にKLKLLLLLKLK、定義された塩基コンテクスト内に非メチル化シトシン−グアニンジヌクレオチド(CpG)を含有する免疫刺激オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)(例えばWO96/02555に記載)またはイノシンおよびシチジンに基づくODN(例えばWO01/93903に記載)またはデオキシイノシンおよび/もしくはデオキシウリジン残基を含有するデオキシ核酸(WO01/93905およびWO02/095027に記載)、特にOligo(dIdC)13(WO01/93903およびWO01/93905に記載)、神経活性化合物、特にヒト成長ホルモン(WO01/24822に記載)、またはそれらの組み合わせ、ケモカイン(例えば、デフェンシン 1もしくは2、RANTES、MIP1−α、MIP−2、インターロイキン−8、またはサイトカイン(例えば、インターロイキン−1β、−2、−6、−10もしくは−12;インターフェロン−γ;腫瘍壊死因子−α;または顆粒球単球コロニー刺激因子)(Nohria and Rubin,1994において考察されている)、ムラミールジペプチド変異体(例えば、ムラブチド、トレオニル−MDPまたはムラミールトリペプチド)、MDPの合成変異体、熱ショックタンパク質または変異体、森林型熱帯リーシュマニアLeIFの変異体(Skeiky et al.,1995,J.Exp.Med.181: 1527−1537)、トリプシン切断部位での変異体を含む細菌ADP−リボシル化外毒素の非毒性変異体(bARE)(Dickenson and Clements,(1995)Infection and Immunity 63 (5):1617-1623)および/または作用性ADP−リボシル化(Douce et al.,1997)または化学的解毒bARE(トキソイド)、QS21、Quill A、N−アセチルムラミール−L−アラニル−D−イソグルタミル−L−アラニン−2−[1,2−ジパルミトイル−s−グリセロ−3−(ヒドロキシホスホリルオキシ)]エチルアミド(MTP−PE)ならびに代謝可能な油および乳化剤を含有する組成物を含む。アジュバントは、抗原の経路と同じ経路により、または抗原の経路とは異なる経路により、抗原と共に投与されてもよく、または単独で投与されてもよい。単一のアジュバント分子は、アジュバントおよび抗原特性の両方を有してもよい。
【0070】
「効果的な量」とは、抗原に関しては、抗原特異的免疫反応を誘導もしくは向上させる、または薬物に関しては、状態を治療もしくは診断するのに十分な治療薬剤の量を意味する。免疫反応のそのような誘導は、例えば免疫保護、脱感作、免疫抑制、自己免疫疾患の調整、癌の免疫学的監視の増強、または確立された感染性疾患に対する治療的ワクチン接種等の治療を提供し得る。治療は、治癒、改善、または予防を含む。
【0071】
「核酸」とは、単一のデオキシリボ核酸塩基もしくはリボ核酸、またはホスホジエステル結合により繋がったその配列を意味する。
【0072】
「治療薬剤」とは、疾患の処置、疾患の症状の軽減、疾患の予防、または疾患の診断において使用され得る任意の分子を意味する。例えば、治療薬剤は、抗原または薬物であってもよい。
【0073】
「対象」とは、動物を意味する。対象は、任意の脊椎動物を含む任意の動物であってもよい。対象は、家畜、実験動物(ラット、ハムスター、スナネズミ、もしくはマウス等のげっ歯類を含むがこれらに限定されない)またはペット動物であってもよい。一実施形態において、動物は、哺乳動物であってもよい。哺乳動物の例は、人間、霊長類、有袋類、イヌ、サル、げっ歯類、ネコ、類人猿、クジラ、イルカ、ウシ、ブタ、およびウマを含む。対象は、疾患の処置を必要としていてもよく、または予防的処置を必要としていてもよい。
【0074】
本明細書において使用される場合、「抗体」という用語は、特定の抗原に特異的に結合する能力を有する免疫グロブリン分子または免疫グロブリン分子の断片を意味する。抗体は、免疫学の分野における当業者に周知である。本明細書において使用される場合、「抗体」という用語は、全長抗体分子だけでなく、抗原結合能力を保持する抗体分子の断片も意味する。そのような断片はまた、当該技術分野において周知であり、通常in vitroおよびin vivoの両方で使用される。具体的には、本明細書において使用される場合、「抗体」という用語は、全長免疫グロブリン分子だけでなく、周知の活性断片F(ab’)2、Fab、Fv、およびFd等の抗原結合活性断片も意味する。
【0075】
本明細書において使用される場合、「変異体」は、野生型ポリペプチドとは異なるタンパク質および/またはポリペプチドおよび/またはペプチドを含んでもよく、1つ以上の残基が機能的に類似した残基で保存的に置換されており、さらにこれは、野生型ポリペプチドの実質的に同一の機能的特性を示す。保存的置換の例は、1つの非極性(疎水性)残基の別の残基(例えばイソロイシン、バリン、ロイシンもしくはメチオニン)別の残基との置換、1つの極性(親水性)残基の別の残基との置換(例えばアルギニンとリシンとの間、グルタミンとアスパラギンとの間、グリシンとセリンとの間)、1つの塩基性残基の別の残基(例えばリシン、アルギニンもしくはヒスチジン)との置換、または1つの酸性残基の別の残基(例えばアスパラギン酸もしくはグルタミン酸)との置換を含む。変異体は、本明細書に記載のポリペプチドの機能的特性も示す、本発明のポリペプチドに実質的に同一の三元構造を有する任意のポリペプチドを含んでもよい。変異体は、野生型ポリペプチドの突然変異であってもよい。
【0076】
本明細書において使用される場合、「治療」は、個人または細胞の自然経過を改変する試みにおいて使用される任意の種類の干渉を含み得る。治療は、例えば、単独の、または当該技術分野において一般的に知られている他の治療法と組み合わせた薬学的組成物の投与を含み得るが、これに限定されない。「治療」は、予防的に、または病理学的事象の開始後に行われてもよい。
【0077】
本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、活性成分と組み合わされると、成分が生物活性を保持するのを可能にし、対象の免疫系と非反応性である任意の材料を含み得る。薬学的に許容される担体および/または賦形剤は、緩衝剤、安定剤、希釈剤、保存剤、および可溶化剤を含み得る。一般に、担体または賦形剤の性質は、使用されている具体的な投与様式に依存する。例えば、非経口製剤は、通常、ビヒクルとして、水、生理食塩水、平衡塩溶液、デキストロース水溶液、グリセロール等の薬学的および生理学的に許容される流体を含む注射液を含む。固体組成物(例えば、粉末、ピル、錠剤、またはカプセル形態)の場合、従来の非毒性固体担体は、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムを含み得る。生物学的に中性の担体に加えて、投与される薬学的組成物は、微量の非毒性補助物質、例えば湿潤または乳化剤、保存剤、およびpH緩衝剤等、例えば酢酸ナトリウムまたはモノラウリン酸ソルビタンを含有してもよい。
【0078】
本明細書において使用される場合、「融合」は、本発明に従い配置される順番またはコンテクストにおいて、互いに自然に関連して見られない配列を含む核酸およびポリペプチドを示し得る。融合核酸またはポリペプチドは、核酸またはポリペプチドの自然配列全体を含むとは限らない。融合タンパク質は、通常のペプチド結合により互いに結合した、2つ以上のセグメントを有する。融合核酸は、通常のホスホジエステル結合により互いに結合した、2つ以上のセグメントを有する。
単離ポリペプチド
【0079】
本発明は、C.ディフィシル毒素Aの19反復単位およびC.ディフィシル毒素Bの23反復単位を含む、それぞれ配列番号2および配列番号4に記載のC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドを提供する。C−TAB.G5のホモログ、例えばC−TAB.G5.1は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸だけC−TAB.G5と異なってもよい。C−TAB.G5.1ポリペプチドは、C−TAB.G5と同じ毒素BのC末端ドメインを含有するが、C.ディフィシル630株から得られる対応するC−TAB.G5ポリペプチドのホモログであるC.ディフィシルVPI−10463株から得られる毒素AのC末端ドメインを含有しない融合タンパク質であり、155〜156位において2個のアミノ酸だけ異なる。配列番号3に記載されるC−TAB.G5.1コード配列は、大腸菌宿主細胞内での改善された発現のためにコドン最適化された。本発明のC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドは、C.ディフィシル毒素Aおよび毒素Bの毒性作用の中和に効果的となり得る。
【0080】
毒素Aおよび毒素Bは、それぞれC.ディフィシル株630のtrdA(配列番号5)およびtrdB(配列番号7)遺伝子によりコードされる。構造的には、C.ディフィシル毒素は、ADP−グリコシルトランスフェラーゼドメイン、システインプロテアーゼドメイン、疎水性領域、および受容体結合領域を含む。C末端ドメインは、極めて反復的な単位(RU)(組み合わせ反復オリゴペプチド(CROPS)としても知られる)を含有する。RUは、長鎖または短鎖オリゴペプチドであってもよく、反復するコンセンサスYYFモチーフを有する20から50個のアミノ酸を含み得る。RUは、クラスタとしてグループ化される。一例として、毒素A、野生型trdA遺伝子(配列番号5)によりコードされた株630(配列番号6)は、39個のRUを有する。39個のRUは、8個のクラスタにグループ化される。毒素B、野生型trdB遺伝子(配列番号7)によりコードされた株630(配列番号8)は、5個のクラスタにグループ化される24個のRUを含有する。以下の表1および2は、trdA遺伝子およびtrdB遺伝子によりコードされたC.ディフィシル毒素Aおよび毒素BにおけるRUのそれぞれのアミノ酸位置を示す。
【0081】
表1:毒素A反復単位(ARU)
【表1】
【0082】
表2:毒素B反復単位(BRU)
【表2】
【0083】
したがって、C−TAB.G5およびC−TAB.G5.1単離ポリペプチドは、それぞれ、C.ディフィシル毒素AのC末端ドメインからの19RU、およびC.ディフィシル毒素BのC末端ドメインからの23RUを含む。C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1は、配列番号8の毒素Bアミノ酸1850〜2366に融合した配列番号6の毒素Aアミノ酸2272〜2710を含む。C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドは、それぞれ、配列番号2および配列番号4に記載のアミノ酸配列を含む。
【0084】
また、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドにおける各RUは、C.ディフィシル毒素Aまたは毒素Bの変異体からのものであってもよい。C−TAB単離ポリペプチドにおけるこれらのRUはまた、C.ディフィシル毒素Aまたは毒素Bの自然発生物または変異体の組み合わせであってもよい。
【0085】
C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドにおけるRUは、長鎖RUおよび短鎖RUを含み、長鎖RUおよび短鎖RUは、クラスタとして配列される。本発明のC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドは、C.ディフィシル毒素Aの3個から5個の短鎖RUに続く1個の長鎖RUの4個のクラスタ、およびC.ディフィシル毒素Bの3個から5個の短鎖RUに続く1個の長鎖RUの5個のクラスタを含む。
【0086】
短鎖および長鎖RUは、保存されたモチーフを含有する。短鎖反復単位は、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、または26個のアミノ酸を含んでもよい。各短鎖反復単位は、YYF、FYF、YFF、FYI、またはHYF等の保存されたチロシンモチーフを含んでもよい。短鎖反復単位は、続く反復単位が長鎖反復単位である場合、チロシンモチーフの前にアスパルテート/ヒスチジン残基をさらに含んでもよい。長鎖反復単位は、27、28、29、30、31、32、33、34、または35個のアミノ酸を含んでもよい。各長鎖反復単位は、FEYF、FKYF、またはYKYF等のチロシン反復モチーフを含んでもよい。
【0087】
本発明において、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドの毒素Aおよび毒素B部分は、直接互いに融合していてもよい。毒素Aおよび毒素B部分は、リンカー領域により隔てられていてもよい。リンカー領域は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11から15、20から30、40、45、または50個のアミノ酸を含んでもよい。C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドにおける各毒素反復単位が、その発現および折り畳まれた形状において、潜在的エピトープを最適に暴露し、その免疫原性を保持するように位置付けられるように、リンカー領域は、毒素Aおよび毒素B部分の位置付けを改変するために適合されてもよいことが、当業者に認識される。C−TAB単離ポリペプチドにおけるRUおよびクラスタもまた、リンカーにより隔てられていてもよい。一実施形態において、リンカーは、ペプチドRSMH(配列番号2または配列番号4の439〜442)を含む。
【0088】
本発明のC−TAB単離ポリペプチドは、配列番号2または配列番号4と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性または配列類似性を有してもよい。当該技術分野において知られているように、2つのポリペプチドまたはポリヌクレオチドの間の「類似性」は、1つのポリヌクレオチドまたはポリペプチドのアミノ酸またはヌクレオチド配列およびその保存されたヌクレオチドまたはアミノ酸置換を、第2のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列と比較することにより決定される。また、2つのポリペプチドまたは2つのポリヌクレオチド配列の2つの鎖の間の照合の同一性により決定される、そのような配列の間の配列関連性の程度を意味する「同一性」が、当該技術分野において知られている。同一性および類似性は共に、容易に計算され得る(Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part I,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987;およびSequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M Stockton Press,New York,1991)。2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の間の同一性および類似性を測定するいくつかの方法が存在するが、「同一性」および「類似性」という用語は、当業者に周知である(Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987;Sequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M Stockton Press,New York,1991;およびCarillo,H.,and Lipman,D.,SIAM J.Applied Math.,48:1073(1988)。2つの配列の間の同一性または類似性を決定するために一般的に使用される方法は、Guide to Huge Computers,Martin J.Bishop,ed.,Academic Press,San Diego,1994およびCarillo,H.,and Lipman,D.,SIAM J.Applied Math.48:1073(1988)において開示されるものを含むが、これらに限定されない。
【0089】
本発明のC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドは、免疫原性である。例えば、本発明のC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドは、対応する細菌毒素Aの免疫活性の少なくとも50%、60%、70%、80%、または90%を有してもよく、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドは、対応する細菌毒素Bの免疫活性の少なくとも50%、60%、70%、80%、または90%を有してもよい。本発明のC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドは、CDADの症状の治療、予防、または軽減のためのワクチンとして使用され得る。
【0090】
また、本発明のC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドは、それぞれ配列番号2または配列番号4を有するC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドの変異体を含む。変異体は、単離ポリペプチドの活性、機能または形状に対する影響が僅かである、または影響を有さないアミノ酸挿入、置換および/または欠失を有してもよい。そのような置換の例は、1つの非極性残基の別の残基との置換、1つの極性残基の別の残基との置換、1つの塩基性残基の別の残基との置換、または1つの酸性残基の別の残基との置換を含む。C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチド変異体は、さらに、天然毒素Aまたは毒素Bの細胞外ドメインのアミノ酸配列と比較して、ポリペプチドの活性、機能および/または構造に対する影響が僅かであるアミノ酸の挿入、置換および/または欠失を含んでもよい。当業者には、非天然アミノ酸が使用されてもよいことが認識される。非天然アミノ酸は、例えば、ベータ−アラニン(ベータ−Ala)、または他のオメガ−アミノ酸、例えば3−アミノプロピオン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸(2,3−diaP)、4−アミノ酪酸等、アルファ−アミンイソ酪酸(Aib)、サルコシン(Sat)、オルニチン(Orn)、シトルリン(Cit)、t−ブチルアラニン(t−BuA)、t−ブチルグリシン(t−BuG)、N−メチルイソロイシン(N−MeIle)、フェニルグリシン(Phg)、およびシクロヘキシルアラニン(Cha)、ノルロイシン(Nle)、システイン酸(Cya)2−ナフチルアラニン(2−Nal);1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸(Tic);ベータ−2−チエニルアラニン(Thi);ならびにメチオニンスルホキシド(MSO)を含む。
【0091】
本発明のC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、様々な宿主細胞における発現を向上させるようにコドン最適化されてもよい。コドン最適化は、対象宿主細胞におけるタンパク質発現を向上させるために、天然配列の1つ以上のコドンを、その宿主細胞の遺伝子、または細胞が由来する宿主の遺伝子においてより頻繁に使用されるコドンで置き換えることにより、ヌクレオチド配列を変更することを指す。様々な種が、特定のアミノ酸のある特定のコドンに対する特定の偏りを示す。本発明は、大腸菌における向上した発現のために、C−TAB.G5.1単離ポリペプチドをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列を提供する。
【0092】
本発明のC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドは、任意の既知の技術により調製され得る。例えば、単離ポリペプチドは、遺伝子操作により発現され得る。例として、組み換えDNAの翻訳である。C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドはまた、合成的に調製され得る。例として、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドは、Merrifield(J.Am Chem.Soc.85:2149−2154)(参照により本明細書に組み入れられる)により最初に説明された固相合成技術を使用して合成され得る。他のポリペプチド合成技術は、例えば、Kentら(1985)のSynthetic Peptides in Biology and Medicine,eds.Alitalo et al.,Elsevier Science Publishers,295−358.において見出すことができる。
【0093】
本発明のC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドは、実質的に純粋な形態で単離する、または得ることができる。実質的に純粋とは、タンパク質および/またはポリペプチドおよび/またはペプチドが、自然またはin vivoシステムにおいて共に見出すことができる他の物質を、その使用目的のために現実的および適切な程度まで実質的に含まないことを意味する。具体的には、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドは、例えば、抗体生成、配列決定、または薬学的調製物の生成において有用となるように、十分に純粋であり、宿主細胞の他の生物学的構成物質を十分に含まない。当該技術分野において周知の技術により、実質的に純粋なポリペプチドは、本明細書に開示される核酸およびアミノ酸配列に照らして生成され得る。本発明の実質的に精製された単離ポリペプチドは、薬学的調製物中の薬学的に許容される担体と混合され得るため、単離ポリペプチドは、調製物のある特定の重量パーセントのみを占めることができる。それにもかかわらず、単離ポリペプチドは、生体系内で関連し得る物質から実質的に分離されているという点で、実質的に純粋である。
【0094】
本発明は、さらに、追加的なポリペプチドを含む単離C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドを提供する。追加的なポリペプチドは、より大きなポリペプチドの断片であってもよい。一実施形態において、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドに融合した、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の追加的なポリペプチドがある。いくつかの実施形態において、追加的なポリペプチドは、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドのアミノ末端に対して融合している。他の実施形態において、追加的なポリペプチドは、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドのカルボキシル末端に対して融合している。さらなる実施形態において、追加的なポリペプチドは、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドに隣接している。さらなる実施形態において、追加的なポリペプチドは、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドの毒素A部分と毒素B部分との間に分散している。
【0095】
いくつかの実施形態において、追加的なポリペプチドは、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドの分泌または細胞内局在の誘導を補助する。そのようなポリペプチドは、「シグナル配列」と呼ばれる。分泌シグナルは、例えば、共に参照により全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第6,291,212号および米国特許第5,547,871号において説明されている。分泌シグナル配列は、分泌ペプチドをコードする。分泌ペプチドは、細胞からのC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1の分泌を誘導するように作用するアミノ酸配列である。分泌ペプチドは、一般に、疎水性アミノ酸のコアを特徴とし、典型的には、新たに合成されたタンパク質のアミノ末端に見られる(但しこれに限らない)。分泌ペプチドは、分泌中に、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドから切断されてもよい。分泌ペプチドは、分泌経路を通過する際に成熟タンパク質からのシグナルペプチドの切断を可能とするプロセシング部位を含有してもよい。プロセシング部位は、シグナルペプチド内にコードされてもよく、または、例えばin vitro突然変異誘発により、シグナルペプチドに追加されてもよい。分泌シグナル配列は、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1の分泌を可能とするための複雑な一連の翻訳後プロセシングステップに必要となり得る。シグナル配列は、開始コドンのすぐ後に続いてもよく、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1のアミノ末端部でシグナルペプチドをコードする。シグナル配列は、停止コドンに先行してもよく、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1のカルボキシ末端部でシグナルペプチドをコードする。ほとんどの場合、シグナル配列は、シグナルペプチダーゼと呼ばれる特定のプロテアーゼにより切断される。分泌シグナル配列の例は、ompA、pelB、およびST pre−proを含むが、これらに限定されない。
【0096】
いくつかの実施形態において、追加的なポリペプチドは、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドの安定化、構造および/または精製を補助する。いくつかの実施形態において、追加的なポリペプチドは、エピトープを含んでもよい。他の実施形態において、追加的なポリペプチドは、親和性タグを含んでもよい。例として、エピトープおよび/またはC−TAB.G5もしくはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドへの親和性タグを含むポリペプチドの融合は、ポリペプチドの精製および/または同定を補助し得る。例として、ポリペプチドセグメントは、His−タグ、myc−タグ、S−ペプチドタグ、MBPタグ(マルトース結合タンパク質)、GSTタグ(グルタチオンS−トランスフェラーゼ)、FLAGタグ、チオレドキシンタグ、GFPタグ(緑色蛍光タンパク質)、BCCP(ビオチンカルボキシル担体タンパク質)、カルモジュリンタグ、Strepタグ、HSV−エピトープタグ、V5−エピトープタグ、およびCBPタグであってもよい。そのようなエピトープおよび親和性タグの使用は、当業者に知られている。
【0097】
さらなる実施形態において、追加的なポリペプチドは、ポリペプチドの切断のための部位を含むC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドを提供し得る。一例として、ポリペプチドは、ペプチド結合の加水分解により切断され得る。いくつかの実施形態において、切断は、酵素により行われる。いくつかの実施形態において、切断は、細胞内で生じる。他の実施形態において、切断は、切断酵素の人為的操作および/または人為的導入により生じる。例として、切断酵素は、ペプシン、トリプシン、キモトリプシン、トロンビン、および/または第Xa因子を含み得る。切断は、ポリペプチドからのC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドの容易な単離を可能とする。切断は、さらに、毒素B部分からの毒素A部分の分離を可能とし得る。切断はまた、例えば発現タンパク質を精製するために使用されるエピトープの切断により、ポリペプチドに融合したC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドの他のポリペプチドからの単離を可能とし得る。
【0098】
C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドは、さらに、同じ有機合成ペプチドと共有しない追加の構造的変化、例えばアデニル化、カルボキシル化、グリコシル化、ヒドロキシル化、メチル化、リン酸化またはミリスチル化を有してもよい。これらの追加の構造的変形は、さらに、組み換え発現系の適切な選択により、選択または優先されてもよい。一方、融合ポリペプチドは、その配列が、有機合成の原理および慣習により延長されてもよい。
【0099】
本発明はまた、C.ディフィシル毒素Aから得られるポリペプチド部分およびC.ディフィシル毒素Bから得られるポリペプチド部分を含む、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドをコードする核酸を提供する。核酸は、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドまたはそのポリマーの一本鎖もしくは二本鎖形態を含んでもよい。本発明は、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドをコードするリボ核酸を提供する。本発明はまた、ストリンジェントな条件下で、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドをコードする核酸およびその補体にハイブリダイズする核酸を提供する。ストリンジェントな条件とは、プローブとフィルタ結合核酸との間の相同性の程度を指し、ストリンジェンシーが高い程、プローブとフィルタ結合核酸との間のパーセント相同性が高い。ストリンジェントな洗浄のための温度は、核酸のTmに基づいて決定され得る(G/C含量に基づく)。ストリンジェントな条件は、さらに、標準クエン酸ナトリウム(SSC)等の緩衝液中の塩の濃度に影響され得る。本発明は、配列番号1との約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列類似性または配列同一性を有する核酸を提供する。
【0100】
C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドは、さらに、リンカー領域、例えば約50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1アミノ酸残基未満のリンカーを含んでもよい。リンカーは、毒素Aから得られたポリペプチド部分またはその一部、および毒素Bから得られたポリペプチド部分に、またはそれらの間に共有結合し得る。
【0101】
本発明は、それぞれ配列番号1または配列番号3に縮重するC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドをコードする核酸を提供する。遺伝子コードの縮重は、毒素Aタンパク質、毒素Bタンパク質および/または対象単離ポリペプチドのヌクレオチド配列の多様性を可能とするが、依然として天然DNA配列によりコードされるポリペプチドと同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを生成する。「コドン最適化」(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,547,871号に記載されている)として知られるこの手順は、そのような改変されたDNA配列を設計する手段を提供する。コドン最適化遺伝子の設計は、生物におけるコドン使用頻度、最近接頻度、RNA安定性、2次構造形成の可能性、合成経路、およびその遺伝子の意図される将来のDNA操作を含む、様々な因子を考慮すべきである。特に、酵母発現系が使用される場合は酵母により、または昆虫細胞発現系が使用される場合は昆虫細胞により最も容易に認識されるコドンで所与の単離ポリペプチドをコードするコドンを改変するために、利用可能な方法が使用され得る。また、遺伝子コードの縮重は、同じアミノ酸配列がコードされ、多くの異なる様式で翻訳されることを可能にする。例えば、ロイシン、セリンおよびアルギニンは、それぞれ6個の異なるコドンによりコードされるが、バリン、プロリン、トレオニン、アラニンおよびグリシンは、それぞれ4個の異なるコドンによりコードされる。しかしながら、そのような同義コドンの使用頻度は、真核生物および原核生物の間のゲノム間で変動する。例えば、哺乳動物の間での同義コドン選択パターンは非常に類似しているが、酵母(例えばS.セレビシアエ)、細菌(例えば大腸菌)および昆虫(例えばキイロショウジョウバエ)等の進化的に遠い生物は、明確に異なるゲノムコドン使用頻度パターンを示す(Grantham,R.,et al.,Nucl.Acid Res.,8,49−62(1980);Grantham,R.,et al.,Nucl.Acid Res.,9,43−74(1981);Maroyama,T.,et al.,Nucl. Acid Res.,14,151−197(1986);Aota,S.,et al.,Nucl.Acid Res.,16,315−402(1988);Wada,K.,et al.,Nucl.Acid Res.,19 Supp.,1981−1985(1991);Kurland,C.G.,FEBS Lett.,285,165−169(1991))。コドン選択パターンのこれらの差は、ペプチド延長速度の調整により、個々の遺伝子の全体的発現レベルに寄与するようである(Kurland,C.G.,FEBS Lett.,285,165−169(1991);Pedersen,S.,EMBO J.,3,2895−2898 (1984);Sorensen,M.A.,J.Mol.Biol.,207,365−377(1989);Randall,L.L.,et al.,Eur. J.Biochem.,107,375−379(1980);Curran,J.F.,and Yarus,M.,J.Mol.Biol.,209,65−77(1989);Varenne,S.,et al.,J.Mol.Biol.,180,549−576(1984)、Varenne,S.,et al.,J.Mol,Biol.,180,549−576(1984);Garel,J.−P.,J.Theor.Biol.,43,211−225(1974);Ikemura,T.,J.Mol.Biol.,146,1−21(1981);Ikemura,T.,J.Mol.Biol.,151,389−409(1981))。
【0102】
合成遺伝子のための好ましいコドン使用頻度は、組み換えタンパク質発現に使用されることが意図される細胞/生物の抽出(または可能な限り密接に関連した)ゲノムから得られる核遺伝子のコドン使用率を反映すべきである。
【0103】
同一性を決定するための好ましい方法は、試験される2つの配列の間の最大の一致を与えるように設計される。同一性および類似性を決定する方法は、コンピュータプログラムにおいて体系化される。2つの配列間の同一性および類似性を決定するための好ましいコンピュータプログラム方法は、GCGプログラムパッケージ(Devereux, et al.,Nucl.Acid Res.12(1):387(1984))、BLASTP、BLASTN、FASTA(Atschul,et al.,J.Mol.Biol.215:403(1990))を含むが、これらに限定されない。上述の類似性または同一性の程度は、2つの配列間の同一性の程度として決定され、しばしば第2の配列からの第1の配列の誘導を示す。2つの核酸間の同一性の程度は、当該技術分野において知られたコンピュータプログラム、例えばGCGプログラムパッケージ内に提供されるGAPを使用して決定され得る(Needleman and Wunsch J.Mol.Biol.48:443−453 (1970))。本発明のために2つの核酸間の同一性の程度を決定する目的で、GAPは、以下の設定で使用される:GAP生成ペナルティ5.0およびGAP伸長ペナルティ0.3。
【0104】
また、本発明は、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドをコードする核酸を含むベクターを提供する。ベクターは、異なる生成環境の間の移送のため、または宿主細胞における発現のための制限およびライゲーションにより、所望の配列が挿入されてもよいいくつかの核酸のいずれであってもよい。ベクターは、典型的にはDNAで構成されるが、RNAベクターもまた利用可能である。ベクターは、プラスミドおよびファージミドを含むが、これらに限定されない。クローニングベクターは、宿主細胞内で複製することができ、さらに1つ以上のエンドヌクレアーゼ制限部位を特徴とするベクターであり、その部位では、ベクターは、測定可能な様式で切断されてもよく、また、新たな組み換えベクターが宿主細胞内で複製する能力を保持するように所望のDNA配列がライゲーションされてもよい。プラスミドの場合、所望の配列の複製は、プラスミドが宿主細菌内でコピー数の増加を示すと共に何回も、または宿主が有糸分裂により再生する前に宿主当たり1回だけ生じ得る。ファージの場合、複製は、溶解段階の間能動的に、または溶原段階の間受動的に生じ得る。
【0105】
ベクターは、さらに、プロモーター配列を含有してもよい。プロモーターは、通常、核酸の転写を開始するための部位を含有するコード領域の上流に位置する、非翻訳核酸を含んでもよい。また、プロモーター領域は、遺伝子発現の調節因子として機能する他の要素を含んでもよい。本発明のさらなる実施形態において、発現ベクターは、発現ベクターが組み込まれた細胞の選択を補助するための追加的領域を含有する。プロモーター配列は、多くの場合、転写開始部位によりその3’末端で境界され(包含的)、上流側(5’方向)に伸長して、バックグラウンドを超える検出可能なレベルで転写を開始するために必要な最少数の塩基または要素を含む。プロモーター配列内では、転写開始部位、およびRNAポリメラーゼの結合を担うタンパク質結合ドメインが見られる。真核プロモーターは、必ずではないが、「TATA」ボックスおよび「CAT」ボックスを含有することが多い。
【0106】
ベクターは、さらに、ベクターで形質転換またはトランスフェクトされた細胞の同定および選択における使用に好適な、1つ以上のマーカー配列を含有してもよい。マーカーは、例えば、抗生物質または他の化合物に対する抵抗性または感受性を増加または低下させるタンパク質をコードする遺伝子、当該技術分野において知られている標準的アッセイによりその活性が検出可能な酵素(例えば、β−ガラクトシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)をコードする遺伝子、および、形質転換またはトランスフェクトされた細胞、宿主、コロニーまたはプラークの表現型に明らかに影響する遺伝子を含む。好ましいベクターは、作用可能に結合したDNAセグメント内に存在する構造遺伝子産物の自己複製および発現が可能なベクターである。
【0107】
発現ベクターは、調節配列に作用可能に結合し、RNA転写産物として表現され得るように、所望の核酸が制限およびライゲーションにより挿入され得るベクターである。発現は、内在性遺伝子、導入遺伝子または細胞内のコード領域の転写および/または翻訳を指す。
【0108】
コード配列および調節配列は、コード配列の発現または転写を調節配列の影響または制御下に置くように共有結合している場合に、作用可能に結合している。コード配列が機能タンパク質に翻訳されることが望ましい場合は、5’調節配列におけるプロモーターの誘導がコード配列の転写をもたらす場合、および2つのDNA配列の間の結合の性質が、(1)フレームシフト突然変異の導入をもたらさない、(2)コード配列の転写を誘導するプロモーター領域の能力に干渉しない、または(3)タンパク質に翻訳される対応するRNA転写産物の能力に干渉しない場合、2つのDNA配列は作用可能に結合していると言われる。したがって、プロモーター領域が、得られる転写産物が所望のタンパク質またはポリペプチドに翻訳され得るようにそのDNA配列の転写をもたらすことができる場合、プロモーター領域はコード領域に作用可能に結合している。
【0109】
本発明のC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドは、宿主細胞内にコード核酸を発現させることにより生成され得る。核酸は、宿主細胞に形質転換またはトランスフェクトされ得る。したがって、本発明のいくつかの態様は、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドをコードする核酸の形質転換および/またはトランスフェクションを含む。形質転換は、外来または異種核酸の原核細胞の内部への導入である。トランスフェクションは、外来または異種核酸の真核細胞の内部への導入である。形質転換またはトランスフェクト核酸は、細胞のゲノムを構成する染色体DNA内に統合(共有結合)されてもよく、またはされていなくてもよい。例えば、原核細胞においては、形質転換核酸は、プラスミドまたはウイルスベクター等のエピソーム要素上で維持され得る。真核細胞に関しては、安定にトランスフェクトされた細胞は、トランスフェクト核酸が染色体複製を通して娘細胞により遺伝されるように染色体内に統合された細胞である。この安定性は、トランスフェクトされた核酸を含有する娘細胞の集団を含む細胞株またはクローンを確立する真核細胞の能力により示される。
【0110】
高等真核細胞培養を使用して、脊椎動物または昆虫を含む無脊椎細胞から本発明のタンパク質を発現させてもよく、その増殖手順は既知である(例えば、Kruse et al. (1973) Tissue Culture, Academic Pressを参照されたい)。
【0111】
また、核酸の複製およびコードされたC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドの発現のための宿主細胞およびベクターも提供される。原核細胞または真核細胞の任意のベクターまたは宿主細胞が使用され得る。そのような目的のための多くのベクターおよび宿主細胞が、当該技術分野において知られている。所望の用途のための適切な組を選択することは、十分に当該技術の範囲内である。
【0112】
毒素Aおよび毒素BをコードするDNA配列、またはその一部は、C.ディフィシル、ならびに当該技術分野において知られている他の既知の毒素Aおよび毒素B発現原核生物から得られる、様々なゲノムまたはcDNAライブラリからクローニングされ得る。プローブベースの方法を使用してそのようなDNA配列を単離するための技術は、従来の技術であり、当業者に周知である。そのようなDNA配列を単離するためのプローブは、公開されたDNAまたはタンパク質配列に基づいてもよい。代替として、Mullisら(米国特許第4,683,195号)およびMullis(米国特許第4,683,202号)(参照により本明細書に組み込まれる)により開示されているポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法が使用されてもよい。ライブラリの選択およびそのようなDNA配列の単離のためのプローブの選択は、当該技術のレベルの範囲内である。
【0113】
好適な宿主細胞は、原核生物または真核生物から得ることができる。好適な原核宿主は、シュードモナス属、例えば緑膿菌、大腸菌、ブドウ球菌属、例えば黄色ブドウ球菌およびS.エピデルミス、セラチア・マルセッセンス、桿菌属、例えば枯草菌および巨大菌、クロストリジウム・スポロゲネス、エンテロコッカス・フェカリス、マイクロコッカス属、例えばM.ルテウスおよびM.ロゼウス、ならびにプロテウス・ブルガリスを含む。高等真核細胞において本発明のポリペプチドを発現させるための好適な宿主細胞は、酵母、例えばサッカロマイセス(例えばS.セレビシアエ);293(ヒト胎児腎臓)(ATCC CRL−1573);293F(Invitrogen、Carlsbad CA);293Tおよび変異体293T/17(293tsA1609neoおよび変異体ATCC CRL−11268)(SV40 T抗原により形質転換されたヒト胎児腎臓);COS−7(SV40で形質転換されたサル腎臓CVI系)(ATCC CRL1651);BHK(ベビーハムスター腎臓細胞)(ATCC CRL10);CHO(チャイニーズハムスター卵巣細胞);マウスセルトリ細胞;CVI(サル腎臓細胞)(ATCC CCL70);VERO76(アフリカミドリザル腎臓細胞)(ATCC CRL1587);HeLa(ヒト子宮癌細胞)(ATCC CCL2);MDCK(イヌ腎臓細胞)(ATCC CCL34);BRL3A(バッファローラット肝臓細胞)(ATCC CRL1442);W138(ヒト肺細胞)(ATCC CCL75);HepG2(ヒト肝細胞)(HB8065);ならびにMMT 060652(マウス乳腺腫瘍)(ATCC CCL51)を含む。
【0114】
他の実施形態において、本発明は、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドを含む単離ポリペプチドならびに追加的なポリペプチドをコードする核酸を提供する。融合ポリペプチドの産生のための真核発現系を構築するために有用なベクターは、適切な転写活性化配列、例えばプロモーターおよび/またはオペレーターに作用可能に結合した単離ポリペプチドをコードする核酸を含む。他の典型的な特徴は、適切なリボソーム結合部位、停止コドン、エンハンサー、ターミネーター、またはレプリコン要素を含み得る。これらの追加的な特徴は、従来のスプライス技術、例えば制限エンドヌクレアーゼ分解およびライゲーション等により、適切な部位(複数を含む)でベクターに挿入され得る。
【0115】
いくつかの実施形態において、追加的な核酸は、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドをコードする核酸に融合されてもよい。融合核酸は、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドのコドンリーディングフレームをシフトさせずに、精製および/または免疫原性および/または安定性を補助し得るポリペプチドをコードしてもよい。融合核酸は、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドから切断されてもよい、またはされなくてもよい分泌配列をコードしてもよい。融合核酸は、発現ポリペプチドを大きく延長しなくてもよい。融合核酸は、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドに対して、60個未満の余分なアミノ酸をコードしてもよい。いくつかの実施形態において、融合核酸は、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドをコードする核酸に続く。他の実施形態において、融合核酸は、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドをコードする核酸に先行する。他の実施形態において、融合核酸は、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドをコードする核酸に隣接している。
【0116】
いくつかの実施形態において、融合核酸は、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドの精製を補助するポリペプチドをコードしてもよい。いくつかの実施形態において、融合核酸は、エピトープおよび/または親和性タグをコードする。精製を補助するポリペプチドの例は、His−タグ、myc−タグ、S−ペプチドタグ、MBPタグ、GSTタグ、FLAGタグ、チオレドキシンタグ、GFPタグ、BCCP、カルモジュリンタグ、Strepタグ、HSV−エピトープタグ、V5−エピトープタグ、およびCBPタグを含むが、これらに限定されない。他の実施形態において、融合核酸は、切断へと誘導される、または切断されやすい部位を有するC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドをコードしてもよい。一実施形態において、融合核酸は、酵素的切断の部位を含むポリペプチドをコードしてもよい。さらなる実施形態において、酵素的切断は、さらに他のポリペプチドからのC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチド、および他の融合ポリペプチドセグメントの単離を補助し得る。例として、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドをコードする核酸とエピトープとの間に配置される酵素的切断部位をコードする中間核酸が、発現されたC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドおよびエピトープの後の分離を可能としてもよい。そのような部位はまた、毒素A部分と毒素B部分との間に存在してもよい。
【0117】
また、本発明は、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドの発現および提供を補助するように設計される発現系を提供する。発現系は、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドをコードする核酸で形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞を含んでもよい。宿主細胞は、原核生物であってもよい。原核生物は、大腸菌であってもよい。宿主細胞は、真核細胞であってもよい。
【0118】
発現系は、さらに、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドをコードする核酸での形質転換またはトランスフェクトに成功した宿主細胞の選択を補助する薬剤を含んでもよい。例えば、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドをコードする核酸は、さらに、抗生物質に抵抗する宿主細胞を補助する遺伝子、例えばカナマイシンまたはゲンタマイシンまたはアンピシリンまたはペニシリンに抵抗する遺伝子を発現してもよい。そのような抵抗性遺伝子は、当業者に知られているように、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドをコードする核酸を適切に組み込んだ宿主細胞の選択を可能とする。
【0119】
本発明の別の態様は、抗体の生成に関する。本発明に包含される抗体の例は、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドで対象を免疫化することにより生成される抗体を含むが、これに限定されない。C−TAB.G5もしくはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドでの免疫化により生成される抗体は、毒素Aもしくは毒素Bに特異的に結合することができ、または、それらはC−TAB.G5もしくはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドと交差反応することができる。本発明のC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドにより生成される抗体は、当該技術分野において周知の方法を使用して特性決定され得る。
【0120】
本発明のC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドを使用することにより生成される抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、Fc等)、キメラ抗体、二重特異性抗体、重鎖のみの抗体、ヘテロ結合抗体、単鎖(ScFv)、単一ドメイン抗体、その変異体、抗体部分を含む単離ポリペプチド、ヒト化抗体、ならびに、抗体のグリコシル化変異体、抗体のアミノ酸配列変異体、および共有結合的に修飾された抗体を含む、必要な特性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の修飾構造を包含し得る。好ましい抗体は、マウス、ラット、ヒト、ウサギ、イヌ、ブタ、ヒトコブラクダ、ラクダ、ラマ、ネコ、霊長類、または任意の他の源から得られる(キメラ、断片および/またはヒト化抗体を含む)。
【0121】
他の実施形態において、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドでの免疫化により生成された抗体は、次いで、当該技術分野において知られている方法によりヒト化される。ヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリンから得られる最小配列を含有する免疫グロブリン分子である。さらに他の実施形態において、特定のヒト免疫グロブリンタンパク質を発現するように操作された市販のマウスを使用することにより、完全ヒト抗体が得られる。他の実施形態において、抗体は、キメラである。キメラ抗体は、2つの異なる抗体からの特性を組み合わせた抗体である。キメラ抗体を調製する方法は、当該技術分野において知られている。
【0122】
他の実施形態において、抗体をコードするヌクレオチド配列が得られ、次いで発現または増殖のためにベクターにクローニングされる。別の実施形態において、抗体は、当該技術分野において知られている方法を使用して、組み換えにより作製および発現される。例として、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドは、これらの技術により組み換え抗体を単離するために、抗原として使用され得る。抗体は、宿主細胞内で組み換えにより抗体を発現させるために、遺伝子配列を使用して組み換えにより作製され得る。抗体の変異体および組み換え抗体を作製するための方法は、当該技術分野において知られている。
【0123】
他の実施形態において、抗体は、例えば天然毒素Aもしくは毒素Bの単離もしくは精製、または生物学的試料もしくは検体中の天然毒素Aもしくは毒素BもしくはC.ディフィシルの検出における使用のために、当該技術分野における従来の方法により担体に結合される。
組成物および製剤
【0124】
本発明はまた、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドを含む組成物を提供する。組成物は、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドおよび薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物であってもよい。本発明の方法において使用される組成物は、一般に、限定ではなく例として、効果的な量の本発明のC−TAB.G5もしくはC−TAB.G5.1単離ポリペプチド(例えば、免疫反応を誘導するのに十分な量)、またはC−TAB.G5もしくはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドに対する抗体(例えば、感染症を緩和する、感染症の症状を軽減する、および/もしくは感染症を予防するのに十分な量の中和抗体の量)を含む。薬学的組成物は、さらに、当該技術分野において知られている薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤を含んでもよい(一般に、Remington,(2005)The Science and Practice of Pharmacy,Lippincott,Williams and Wilkinsを参照されたい)。
【0125】
本発明のC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドは、CDADに罹患した人間および/または動物を免疫化または治療するための方法に使用され得る。したがって、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドは、薬学的組成物中で使用され得る。本発明の薬学的組成物は、さらに、薬学的に許容される担体および/または賦形剤を包含し得る。本発明において有用な薬学的に許容される担体および/または賦形剤は、従来のものであり、緩衝剤、安定剤、希釈剤、保存剤、および可溶化剤を含み得る。E.W.MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,PA,15th Edition (1975)は、本明細書において開示されるポリペプチドの薬学的送達に好適な組成物および製剤を説明している。一般に、担体または賦形剤の性質は、使用されている具体的な投与様式に依存する。例えば、非経口製剤は、通常、ビヒクルとして、水、生理食塩水、平衡塩溶液、デキストロース水溶液、グリセロール等の薬学的および生理学的に許容される流体を含む注射液を含む。固体組成物(例えば、粉末、ピル、錠剤、またはカプセル形態)の場合、従来の非毒性固体担体は、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムを含み得る。生物学的に中性の担体に加えて、投与される薬学的組成物は、微量の非毒性補助物質、例えば湿潤または乳化剤、保存剤、およびpH緩衝剤等、例えば酢酸ナトリウムまたはモノラウリン酸ソルビタンを含有してもよい。
【0126】
一実施形態において、薬学的組成物は、さらに、アジュバント等の免疫刺激性物質を含んでもよい。アジュバントは、投与方法に基づいて選択することができ、鉱物油系アジュバント、例えばフロイント完全および不完全アジュバント、Montanide不完全Seppicアジュバント、例えばISA、水中油エマルジョンアジュバント、例えばRibiアジュバント系、ムラミールジペプチドを含有するシンタックスアジュバント製剤、水酸化アルミニウムまたはアルミニウム塩アジュバント(alum)、ポリカチオン性ポリマー、特にポリカチオン性ペプチド、特にポリアルギニンまたは少なくとも2つのLysLeuLysモチーフを含有するペプチド、特にKLKLLLLLKLK、定義された塩基コンテクスト内に非メチル化シトシン−グアニンジヌクレオチド(CpG)を含有する免疫刺激オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)(例えば、WO96/02555に記載)またはイノシンおよびシチジンに基づくODN(例えばWO01/93903に記載)またはデオキシイノシンおよび/もしくはデオキシウリジン残基を含有するデオキシ核酸(WO01/93905およびWO02/095027に記載)、特にOligo(dIdC)13(WO01/93903およびWO01/93905に記載)、神経活性化合物、特にヒト成長ホルモン(WO 01/24822に記載)、またはそれらの組み合わせを含み得る。そのような組み合わせは、例えば、WO01/93905、WO02/32451、WO01/54720、WO01/93903、WO02/13857、WO02/095027およびWO03/047602に記載のものに従う。好ましくは、アジュバントは、水酸化アルミニウムアジュバントである。
【0127】
許容される担体、賦形剤、または安定剤は、投与される用量および濃度で被投与者に対し非毒性である。担体、賦形剤または安定剤は、さらに緩衝剤を含んでもよい。賦形剤の例は、炭水化物(例えば単糖類および二糖類)、糖(例えばスクロース、マンニトール、およびソルビトール)、ホスフェート、シトレート、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸およびメチオニン)、保存剤(例えば、フェノール、ブタノール、ベンザノール;アルキルパラベン、カテコール、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、塩化ヘキサメトニウム、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、およびm−クレゾール)、低分子量ポリペプチド、タンパク質(例えば、血清アルブミンまたは免疫グロブリン)、親水性ポリマーアミノ酸、キレート剤(例えばEDTA)、塩形成対イオン、金属錯体(例えばZn−タンパク質錯体)、ならびに非イオン性界面活性剤(例えばTWEEN(商標)およびポリエチレングリコール)を含むが、これらに限定されない。
【0128】
本発明の薬学的組成物は、さらに、所望の効果を向上および/または補完するように作用する追加的薬剤を含んでもよい。例として、サブユニットワクチンとして投与されている本発明のC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドの免疫原性を向上させるために、薬学的組成物は、さらにアジュバントを含んでもよい。
【0129】
薬学的組成物の例は、免疫原性組成物であってもよい。本発明は、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドを含む免疫原性組成物を提供する。免疫原性組成物は、さらに、哺乳動物における注射に好適な製剤中の薬学的に許容される担体もしくは他の担体および/または賦形剤を含んでもよい。免疫原性組成物は、免疫原性組成物が注射または別様に導入された場合に哺乳動物宿主において免疫反応を惹起する材料の任意の組成物である。免疫反応は、液性、細胞性、またはその両方であってもよい。ブースター効果は、同じ免疫原性組成物に対する哺乳動物宿主の後の暴露後の、免疫原性組成物に対する増加した免疫反応を指す。液性反応は、免疫原性組成物に対する暴露後の哺乳動物宿主による抗体の産生をもたらす。
【0130】
本発明の免疫原性組成物は、人間および他の動物を含む哺乳動物宿主における免疫反応を惹起する。免疫反応は、細胞依存的反応または抗体依存的反応またはその両方であってもよく、さらに、反応は、哺乳動物宿主における免疫記憶またはブースター効果を提供し得る。これらの免疫原性組成物は、ワクチンとして有用であり、C.ディフィシルの株による感染に対する、哺乳動物対象または宿主による保護反応を提供し得る。
【0131】
本発明は、さらに、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドをコードする核酸を構築して、微生物宿主においてC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチド構成成分を発現させ、宿主の培養物からC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドを回収し、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドを第2のタンパク質構成成分に複合化し、複合タンパク質および多糖類構成成分を回収することにより、免疫原性組成物を生成するための方法を含む。C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドをコードする核酸は、一定および安定な選択的圧力により宿主の成長を通して維持され得る。発現ベクターの維持は、選択的遺伝子型をコードする遺伝子配列の発現ベクターへの組込みによりもたらすことができ、微生物宿主細胞におけるその発現は、選択的発現型をもたらす。また、選択的遺伝子型配列は、条件致死突然変異を補完する遺伝子を含んでもよい。他の薬物耐性遺伝子または致死突然変異を補完する遺伝子等の他の遺伝子配列が、発現ベクター内に組み込まれてもよい。微生物宿主は、グラム陽性細菌、大腸菌等のグラム陰性細菌、酵母、糸状菌、哺乳動物細胞、昆虫細胞、または植物細胞を含み得る。
【0132】
また、本発明の方法は、約50mg/リットル(培養物)を超えるレベル、約100mg/リットルを超えるレベル、約500mg/リットルを超えるレベル、または約1g/リットルを超えるレベルの、宿主におけるC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドの発現のレベルを提供する。本発明はまた、タンパク質が、硫酸アンモニウム沈殿に続くイオン交換クロマトグラフィー等の、タンパク質の単離および回収の技術分野における当業者に知られた任意の数の方法により回収され得ることを提供する。
【0133】
本発明は、さらに、アミド化反応等の当業者に知られたいくつかの手段のうちの1つにより、タンパク質構成成分が第2のタンパク質構成成分に複合化されることを提供する免疫原性組成物を調製するための方法を含む。
【0134】
また、本発明は、CDADを治療および予防するための、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドを含む製剤を提供する。一実施形態において、製剤は、本発明のC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチド、アジュバント、および薬学的に許容される担体を含んでもよい。別の実施形態において、製剤は、本発明のC−TAB.G5もしくはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドを含む、または本質的に1つ以上の本発明のC−TAB.G5もしくはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドからなる。製剤は、本発明のC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドおよびアジュバントを含んでもよい。製剤は、さらに、追加的な抗体または薬物を含んでもよい。さらに、製剤は、1つ以上の薬物を含んでもよく、また単離ポリペプチドおよび/またはアジュバントに加えて1つ以上の薬物を含んでもよい。
【0135】
C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドを含む製剤は、液体または乾燥形態であってもよい。乾燥製剤は、容易に保存および輸送され得る。乾燥製剤は、ワクチンの製造場所からワクチン接種が行われる地点までに必要なコールドチェーンを打破する。代替として、製剤の乾燥活性成分自体が、抗体提示細胞により取り込まれ処理される固体微粒子形態を提供することによる改善であってもよい。これらの可能なメカニズムは、本発明またはその均等物の範囲を制限するように議論されず、本発明の作用に対する洞察を提供し、免疫化およびワクチン接種における本製剤の使用をガイドするように議論される。
【0136】
C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドの乾燥製剤は、微細または顆粒粉末、凍結乾燥粉末、均一膜、ペレット、および錠剤等の様々な形態で提供され得る。製剤には、空気乾燥、高温による乾燥、凍結乾燥、フリーズドライもしくは噴霧乾燥、固体基板上へのコーティングもしくは噴霧後の乾燥、固体基板上への振り掛け、急速冷凍に次ぐ真空下での低速乾燥、またはそれらの組み合わせが行われてもよい。異なる分子が製剤の活性成分である場合、それらは、溶液中で混合されてから乾燥されてもよく、または乾燥形態のみで混合されてもよい。
【0137】
液体または固体形態、例えば乾燥形態のC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドを含む製剤は、同じもしくは離れた部位において、または同時もしくは頻繁な繰り返しの適用により1つまたはそれ以上のアジュバントが適用されてもよい。製剤は、製剤の投与が複数の抗原に対する免疫反応を誘導するように、他の抗原を含んでもよい。そのような場合、他の抗原は、異なる抗原に特異的な免疫反応を誘導するように、異なる化学構造を有してもよい。投与前に、少なくとも1つの抗原および/またはアジュバントが乾燥形態で維持されてもよい。後の貯蔵部からの液体の放出または製剤の乾燥成分を含有する貯蔵部への液体の進入は、少なくとも部分的にその成分を溶解する。
【0138】
また、固体(例えば、ナノメートルまたはマイクロメートル寸法の粒子)が製剤中に組み込まれてもよい。固体形態(例えば、ナノ粒子またはマイクロ粒子)は、活性成分の分散または可溶化を補助する、抗原提示細胞によりオプソニン化され得る基質への、アジュバント、C−TAB.G5もしくはC−TAB.G5.1単離ポリペプチド、またはその両方の結合点を提供する、あるいはそれらの組み合わせを提供することができる。シート、ロッド、またはビーズとして形成された多孔質固体からの製剤の持続放出は、デポー製剤として作用する。
【0139】
製剤の少なくとも1つの成分または構成成分(すなわち、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチド、アジュバント、または薬物)は、製剤の投与前に乾燥形態で提供されてもよい。この製剤はまた、従来の腸内、粘膜、または非経口免疫化技術と併せて使用されてもよい。
【0140】
C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドを含む製剤は、生物製剤およびワクチンの適切な規制当局(例えば、食品医薬品局、EMEA)に認可される無菌条件下で製造され得る。随意に、乾燥剤、賦形剤、安定剤、保湿剤、保存剤、またはそれらの組み合わせ等構成成分が、免疫学的に不活性であるとしても、製剤中に含まれてもよい。しかしながら、それらは、他の所望の特性または特徴を有し得る。
【0141】
薬学的製剤を製造するためのプロセスは周知である。製剤の構成成分は、薬学的に許容される担体またはビヒクル、および随意の添加剤(例えば、希釈剤、結合剤、賦形剤、安定剤、乾燥剤、保存剤、着色剤)の任意の組み合わせと組み合わされてもよい。固体担体の使用、および乾燥構成成分または免疫原性もしくはアジュバント活性の安定剤の可溶化を補助する賦形剤の添加が、好ましい実施形態である。一般に、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,6th Ed.(electronic edition,2003);Remington’s Pharmaceutical Sciences,22nd(Gennaro,2005,Mack Publishing);Pharmaceutical Dosage Forms,2nd Ed.(様々な編集者、1989−1998,Marcel Dekker);およびPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(Ansel et al.,2005,Williams&Wilkins)を参照されたい。
【0142】
製薬産業において適正製造基準が知られており、政府機関(例えば食品医薬品局、EMEA)により規制されている。無菌液体製剤は、製剤の意図される構成成分を十分な量の適切な溶媒に溶解し、続いて汚染微生物を除去するための濾過により滅菌することにより調製され得る。一般に、製剤の様々な滅菌された構成成分を、基本的分散媒を含有する無菌ビヒクルに組み込むことにより、分散液が調製される。無菌であることが要求される固体形態の生成には、真空乾燥またはフリーズドライが使用され得る。
【0143】
一般に、固体剤形(例えば、粉末、顆粒、ペレット、錠剤)は、製剤の少なくとも1つの活性成分または構成成分から作製され得る。
【0144】
好適な錠剤化手順が知られている。また、製剤は、少なくとも1つの活性成分の固体形態をカプセル化する、または区画もしくはチャンバ内で液体から隔離することにより生成されてもよい。各用量のサイズおよび対象への投薬の間隔を使用して、錠剤、カプセル、区画またはチャンバの好適なサイズおよび形状を決定することができる。
【0145】
製剤は、人間または動物への投与に好適な薬学的に許容される組成物を提供するために、担体または好適な量のビヒクルと共に、効果的な量の活性成分(例えば、薬物、抗原およびアジュバント)を含有する。
【0146】
用量内の活性成分の相対量、例えばC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドの量、および投薬スケジュールは、対象(例えば、動物または人間)に対する有効な投与のために、適切に調節され得る。この調節はまた、対象の具体的な疾患または状態、および治療または予防が意図されるかどうかに依存し得る。対象への製剤の投与を単純化するために、各単位用量は、単一ラウンドの免疫化のための所定量の活性成分を含有する。
【0147】
加水分解および変質を含むポリペプチドの不安定性または分解のいくつかの場合が存在する。変質の場合、タンパク質の配置または三次元構造が乱され、タンパク質は、その通常の球状構造から広がる。自然の配置へのリフォールディングではなく、疎水性相互作用が分子同士の凝塊化(すなわち凝集)、または異常な配置へのリフォールディングを引き起こし得る。これらの結果のいずれも、免疫原性またはアジュバント活性の減退または喪失を伴い得る。そのような問題を低減または防止するために、安定剤が添加されてもよい。
【0148】
製剤、またはその生成における任意の中間体は、保護薬剤(すなわち、抗凍結剤および乾燥安定剤)で前処理され、次いで氷結晶形成を最小限化する冷却速度および最終温度に供されてもよい。抗凍結薬剤の適切な選択および事前に選択された乾燥パラメータの使用により、ほぼいずれの製剤も、好適な所望の最終用途のために凍結調製され得る。
【0149】
以下の議論において、賦形剤、安定剤、乾燥剤、および保存剤等の随意の添加剤は、その機能により説明されることを理解されたい。したがって、特定の化学物質は、賦形剤、安定剤、乾燥剤、および/または保存剤のある組み合わせとして作用し得る。そのような化学物質は、直接的に免疫反応を誘導しないため、免疫学的に不活性であるが、抗原またはアジュバントの免疫活性を向上させることにより、例えば、抗原もしくはアジュバントの改質、または乾燥および溶解サイクル中の変質を低減することにより、反応を増加させる。
【0150】
安定剤は、シクロデキストリンおよびその変異体を含む(米国特許第5,730,969号を参照されたい)。スクロース、マンニトール、ソルビトール、トレハロース、デキストラン、およびグリセリン等の好適な保存剤もまた、最終製剤を安定化するために添加され得る(Howell and Miller, 1983)。非イオン性界面活性剤、D−グルコース、D−ガラクトース、D−キシロース、D−グルクロン酸、D−グルクロン酸の塩、トレハロース、デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン、およびそれらの混合物から選択される安定剤が、製剤に添加されてもよい。随意に血清アルブミンを含むアルカリ金属塩または塩化マグネシウムの添加は、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドを安定化することができ、フリーズドライによりさらに安定性が向上され得る。C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドはまた、デキストラン、コンドロイチン硫酸、デンプン、グリコーゲン、インスリン、デキストリン、およびアルギニン酸塩からなる群から選択されるサッカリドと接触させることにより安定化され得る。添加され得る他の糖は、単糖類、二糖類、糖アルコール、およびそれらの混合物(例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、スクロース、マルトース、ラクトース、マンニトール、キシリトール)を含む。ポリオールは、ポリペプチドを安定化することができ、水混和性または水溶性である。好適なポリオールは、マンニトール、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチルグリコール、ビニルピロリドン、グルコース、フルクトース、アラビノース、マンノース、マルトース、スクロース、およびそれらのポリマーを含む、ポリヒドロキシアルコール、単糖類および二糖類であってもよい。血清アルブミン、アミノ酸、ヘパリン、脂肪酸およびリン脂質、界面活性剤、金属、ポリオール、還元剤、金属キレート剤、ポリビニルピロリドン、加水分解ゼラチン、ならびに硫酸アンモニウムを含む様々な賦形剤もまた、ポリペプチドを安定化し得る。
【0151】
一例として、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチド製剤は、賦形剤または安定剤の好適な選択により、スクロース、トレハロース、ポリ(乳酸)(PLA)およびポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)ミクロスフェア内で安定化され得る(Sanchez et al., 1999)。スクロース、またはトレハロースは、非還元性サッカリドであり、したがってタンパク質等のアミノ基を有する物質とアミノカルボニル反応を引き起こさないため、添加剤として有利に使用され得る。スクロースまたはトレハロースは、サッカリド等の他の安定剤と組み合わされてもよい。
【0152】
さらに、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドを含む製剤は、例えば麻酔薬、鎮痛剤、抗炎症剤、ステロイド、抗生物質、抗関節炎薬、食欲減退薬、抗ヒスタミン剤、および抗新生物薬剤等の治療薬剤を含んでもよい。そのような治療薬剤の例は、リドカインおよび非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を含む。別の実施形態において、治療薬剤は、抗原およびアジュバントである。さらに別の実施形態において、抗原および/またはアジュバントを含む製剤が、別個であるが、例えば麻酔薬、鎮痛剤、抗炎症剤、ステロイド、抗生物質、抗関節炎薬、食欲減退薬、抗ヒスタミン剤、および抗新生物薬剤等の他の治療薬剤と共に適用されてもよい。好ましい実施形態において、抗生物質は、フィダキソマイシン、メトロニダゾールまたはバンコマイシンである。
【0153】
C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドを含む製剤は、例えば筋肉内等の様々な投与経路を介して送達され得る。
【0154】
ポリマーは、製剤に添加されてもよく、活性成分の賦形剤、安定剤、および/または保存剤として作用すると共に、乾燥形態の活性成分を溶解するために使用される溶液を飽和する活性成分の濃度を低減し得る。そのような低減は、ポリマーが、「空」の空間を充填することにより溶液の有効体積を低減するために生じる。したがって、抗原/アジュバントの量は、飽和溶液の量を低減することなく保存され得る。重要な熱力学的考慮は、飽和溶液中の活性成分が、より低濃度の領域に「駆動」されるという点である。溶液中では、ポリマーもまた製剤の可溶化された成分の抗原/アジュバント活性を安定化および/または保存することができる。そのようなポリマーは、エチレンまたはプロピレングリコール、ビニルピロリドン、ならびに0−シクロデキストリンポリマーおよびコポリマーを含む。
【0155】
投与に好適なC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドを含む製剤の単一または単位用量が提供される。単位用量のアジュバントおよび/またはC−TAB.G5もしくはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドの量は、約0.001μgから約10mgの広い範囲内のいずれかとなり得る。この範囲は、約0.1μgから約1mgであってもよく、より狭い範囲は、約5μgから約500μgである。他の好適な範囲は、約20μgから約200μgの間、例えば約20μg、約75μg、または約200μg等である。C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドの好ましい用量は、約20μgから、または200μg以下である。C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドとアジュバントとの間の比は、約1:1または約1:1.25であってもよいが、より高い比が使用されてもよく(例えば、約1:10以下)、または、アジュバントに対するC−TAB単離ポリペプチドのより低い比が使用されてもよい(例えば、約10:1以上)。
【0156】
C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドは、抗原として使用されてもよく、免疫細胞に提示されてもよく、抗原特異的免疫反応が誘導される。これは、C.ディフィシル等の病原体による感染の前、間、または後に生じ得る。製剤の免疫原性がアジュバント活性を必要としない程十分である場合は、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドのみが必要で、追加的なアジュバントが必要でなくてもよい。製剤は、製剤の適用が複数の抗原に対して免疫反応を誘導する(すなわち多価である)ように、追加的な抗原を含んでもよい。抗原特異的リンパ球が免疫反応に関与してもよく、Bリンパ球が関与する場合、抗原特異的抗体が免疫反応の一端を担い得る。上述の製剤は、当該技術分野において知られた乾燥剤、賦形剤、保湿剤、安定剤、および保存剤を含んでもよい。
【0157】
本発明のC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドを含む製剤は、対象(例えば、疾患の予防、感染症の影響からの保護、CDAD等の疾患の症状の低減もしくは軽減、またはそれらに組み合わせ等の治療を必要とする人間または動物)を治療するために使用され得る。例えば、本発明のC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドを含む製剤は、例えば以下のプロファイルを有する対象等のCDADのリスクを有する対象を治療するために使用され得る:i)より弱い免疫系を有する対象、例えば高齢対象(例えば65歳を超える対象)もしくは2歳未満の対象等;ii)免疫力のない対象、例えばAIDSを有する対象等;iii)免疫抑制薬を投与されている、もしくは投与される予定がある対象;iv)入院の予定がある対象、もしくは入院している対象;v)集中治療(ICU)を受けている、もしくは受ける予定がある対象;vi)消化管手術を受けている、もしくは受ける予定がある対象;vii)養護施設等の長期介護を受けている、もしくは受ける予定がある対象;viii)頻繁な、および/もしくは長期的な抗生物質の使用を必要とする共存症を有する対象;ix)上述のプロファイルの2つ以上を有する対象である対象、例えば消化管手術を受ける予定がある高齢対象等;x)炎症性大腸炎を有する対象;ならびに/またはxi)再発性CDADを有する対象、例えばCDADの1つ以上のエピソードを経験している対象等。
【0158】
治療は、病原体による感染に対して、または毒素分泌により引き起こされるもの等の病原性作用に対して対象にワクチン接種してもよい。製剤は、既存の疾患を治療するため、保護的に疾患を予防するため、疾患の重症度および/もしくは期間を低減するため、疾患の症状を改善するため、またはそれらの組み合わせのために治療的に使用され得る。
【0159】
C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドを含む製剤は、経口、皮下、皮内、静脈内、動脈内、筋肉内、心臓内、髄腔内、胸腔内、腹腔内、心室内、および/または舌下経路を含むがこれらに限定されない様々な投与経路により送達され得る。
【0160】
また、製剤は、1つ以上のアジュバントまたはアジュバントの組み合わせを含んでもよい。通常、アジュバントおよび製剤は、抗原への提示の前に混合されるが、代替として、短い時間間隔内に別個に提示されてもよい。
【0161】
アジュバントは、例えば、油エマルジョン(例えば、完全または不完全フロイントアジュバント)、Montanide不完全Seppicアジュバント、例えばISA、水中油エマルジョンアジュバント、例えばRibiアジュバント系、ムラミールジペプチドを含有するシンタックスアジュバント製剤、水酸化アルミニウムまたはアルミニウム塩アジュバント(ALUM)、ポリカチオン性ポリマー、特にポリカチオン性ペプチド、特にポリアルギニンまたは少なくとも2つのLysLeuLysモチーフを含有するペプチド、特にKLKLLLLLKLK、定義された塩基コンテクスト内に非メチル化シトシン−グアニンジヌクレオチド(CpG)を含有する免疫刺激オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)(例えばWO96/02555に記載)またはイノシンおよびシチジンに基づくODN(例えばWO01/93903に記載)またはデオキシイノシンおよび/もしくはデオキシウリジン残基を含有するデオキシ核酸(WO01/93905およびWO02/095027に記載)、特にOligo(dIdC)13(WO01/93903およびWO01/93905に記載)、神経活性化合物、特にヒト成長ホルモン(WO01/24822に記載)、またはそれらの組み合わせ、ケモカイン(例えば、デフェンシン 1もしくは2、RANTES、MIP1−α、MIP−2、インターロイキン−8、またはサイトカイン(例えば、インターロイキン−1β、−2、−6、−10もしくは−12;インターフェロン−γ;腫瘍壊死因子−α;または顆粒球単球コロニー刺激因子)(Nohria and Rubin,1994において考察されている)、ムラミールジペプチド変異体(例えば、ムラブチド、トレオニル−MDPまたはムラミールトリペプチド)、MDPの合成変異体、熱ショックタンパク質または変異体、森林型熱帯リーシュマニアLeIFの変異体(Skeiky et al.,1995)、トリプシン切断部位での変異体を含む細菌ADP−リボシル化外毒素の非毒性変異体(bARE)(Dickenson and Clements,1995)および/または作用性ADP−リボシル化(Douce et al.,1997)または化学的解毒bARE(トキソイド)、QS21、Quill A、N−アセチルムラミール−L−アラニル−D−イソグルタミル−L−アラニン−2−[1,2−ジパルミトイル−s−グリセロ−3−(ヒドロキシホスホリルオキシ)]エチルアミド(MTP−PE)ならびに代謝可能な油および乳化剤を含有する組成物であって、油および乳化剤は、実質的に全てが1ミクロン未満の直径を有する油滴を有する水中油エマルジョンの形態で存在する組成物(例えば、EP0399843を参照されたい)を含む。また、免疫化に有用な他のアジュバントに関して、Richards et al.(1995)を参照されたい。
【0162】
アジュバントは、抗体もしくは細胞エフェクター、特定の抗体アイソタイプ(例えば、IgM、IgD、IgA1、IgA2、分泌IgA、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、および/もしくはIgG4)、または特定のT細胞サブセット(例えば、CTL、Th1、Th2および/もしくはTDTH)(例えば、Munoz et al.,1990;Glenn et al.,1995を参照されたい)を優先的に誘導するように選択され得る。
【0163】
非メチル化CpGジヌクレオチドまたはモチーフは、B細胞およびマクロファージを活性化することが知られている(Stacey et al.,1996)。DNAの他の形態がアジュバントとして使用されてもよい。細菌DNAは、免疫系にその病原性の源を認識させ、先天性免疫応答を刺激して適応免疫反応をもたらすパターンを有する構造のクラスに含まれる(Medzhitov and Janeway,1997,Curr.Opin.Immunol.9(1):4−9)。これらの構造は、病原体関連分子パターン(PAMP)と呼ばれ、リポ多糖類、テイコ酸、非メチル化CpGモチーフ、二本鎖RNA、およびマンニン(mannin)を含む。PAMPは、炎症反応を媒介し、T細胞機能の共刺激因子として作用し、エフェクター機能を制御することができる内因性シグナルを誘導する。これらの反応を誘導するPAMPの能力は、アジュバントとしての可能性において役割を果たし、その標的は、マクロファージおよび樹枝状細胞等のAPCである。PAMPはまた、異なる共刺激分子を誘導し、異なるエフェクター機能を制御して、免疫反応、例えばTh2からTh1の反応をガイドするために、他のアジュバントと併せて使用されてもよい。
【0164】
本発明の他の態様は、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドのワクチン剤としての使用に関する。本発明のワクチンまたは免疫原性組成物は、効果的な量の抗原を使用し得る。後のC.ディフィシルに対する暴露からの対象の保護をもたらすように、対象に特定の十分な免疫反応を生成させる量の抗原が含まれる。抗原は、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドであってもよい。一実施形態において、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドは、単独で、またはアジュバントと組み合わせて投与される。
【0165】
本発明の別の態様は、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドのサブユニットワクチンとしての使用を含む。サブユニットワクチンは、病原体の断片の接種薬剤としての使用を指す。当業者には、サブユニットワクチンが、病原体の特定部分または領域に対する抗体を生成する手段を提供することが分かる。
【0166】
ワクチン投与の投薬スケジュールおよびその有効性は、当該技術分野において知られている方法により決定され得る。ワクチンの量および免疫化計画は、特定の抗原および使用されるアジュバント、投与の様式および頻度、ならびに所望の効果(例えば、保護および/または治療)に依存し得る。一般に、本発明のワクチンは、1μgから100mgの間、例えば60μgから600μgの間等の範囲の量で投与され得る。C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドを含むワクチンの単一用量は、約1μgから約1mg、好ましくは約5μgから約500μg、より好ましくは約20μgから約200μgの範囲内であってもよい。C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドとalum等のアジュバントとの間の比は、約1:1、例えば1:1.25等であってもよいが、より高い比が使用されてもよく(例えば、約1:10以下)、またはより低い比が使用されてもよい(例えば、約10:1以上)。一実施形態において、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドを含むワクチンにおいて、アジュバントである水酸化アルミニウムが、約50μg/mLから約200μg/mLの範囲内、好ましくは約125μg/mL(最終製剤)の量で使用される。
【0167】
C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドを含むワクチンは、経口、静脈内、皮下、動脈内、筋肉内、心臓内、髄腔内、胸腔内、腹腔内、心室内、および/または舌下により投与され得る。
【0168】
免疫化計画は、当該技術分野において知られている方法により決定され得る。ワクチンの投与は、当業者により必要に応じて決定されるように繰り返されてもよい。例えば、準備用量に続いて1回、2回、3回、またはより多くのブースター用量が、1週間毎、2週間毎または1月毎の間隔で投与されてもよい。本発明の一実施形態において、準備用量に続いて1回または2回のブースター投与が、約7日から約14日の間隔で、例えば初回投薬から7日後および21日後等に投与される。好ましい実施形態において、治療上効果的な量のワクチンが、2回または3回、14日+/−1、2または3日(2週間毎)の間隔で対象に投与される。本発明の一実施形態において、治療上効果的な量のワクチンが1回投与される。
【0169】
さらに別の態様は、本発明に従い治療され得る集団に関する。一実施形態において、集団は、C.ディフィシルへの暴露のリスクを有する健常個人、特に入院または介護施設での滞在間際の個人、ならびに病院、養護施設および他の介護施設内の者を含む。別の実施形態において、集団は、抗生物質治療の停止後に再発した以前に感染していた患者、または抗生物質治療が効果的でない患者を含む。
【0170】
本発明の1つのさらなる実施形態において、集団は、少なくとも18歳以上の個人を含む。1つの好ましい実施形態において、人間対象は、18歳から65歳である。別の好ましい実施形態において、人間対象は、65歳を超える高齢者である。後者の年齢群は、C.ディフィシル感染を受ける最も脆弱な集団である。いくつかのさらなる実施形態において、人間対象は、18歳より若い。
C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドの使用方法
【0171】
本発明はまた、単離ポリペプチドを使用する方法を提供する。例えば、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドは、C.ディフィシルに関連した疾患を予防または治療するために使用され得る。例として、本発明の単離ポリペプチドを対象の免疫系に導入することは、対象が単離ポリペプチドに対する抗体を産生することを含む免疫反応を誘導し得る。そのような抗体は、C.ディフィシルの認識に有用である。
【0172】
本発明は、単離ポリペプチドを対象に送達する方法であって、単離ポリペプチドを対象に投与することを含む方法を提供する。単離ポリペプチドは、液体または固体として投与され得る。単離ポリペプチドは、さらに、薬学的に許容される担体を含んでもよい。
【0173】
また、本発明は、毒素Aおよび/または毒素Bを認識しそれに結合する抗体の可変ドメインを識別および単離するための方法であって、免疫反応を生成するためのC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドの使用と、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドに応答して生成された抗体を精製し、次いで特性決定することとを含む方法を提供する。識別されたエピトープは、さらなる抗体またはその断片のクローニングに使用され得る。
【0174】
本発明の一態様は、1つには、C.ディフィシルの治療、予防、および検出に関する。いくつかの実施形態において、動物等の対象は、C.ディフィシルの治療および/または予防および/または検出を受ける。他の実施形態において、動物は人間である。例えば、本発明のポリペプチドは、in vivoでC.ディフィシルに対する抗体を惹起するために使用され得る。さらなる例として、本発明のポリペプチドは、対象がC.ディフィシルに対する抗体を生成するかどうかを決定するために使用され得る。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、抗体を単離するために使用され得る。例として、ポリペプチドは、親和性マトリックスに結合され得る。
【0175】
さらなる例として、本発明の核酸は、細胞を形質転換および/またはトランスフェクトして、本発明のポリペプチドおよび/または抗体を組み換えにより生成するために使用され得る。本発明の核酸はまた、例えば、対象がC.ディフィシルに感染しているかどうかを決定するために使用され得る。例として、これは、放射性標識ハイブリダイゼーションの方法を使用して達成され得る。
【0176】
さらなる例として、本発明の抗体は、C.ディフィシルによる感染を認識するために使用され得る。例として、抗体は、天然毒素Aおよび/または毒素Bを抗原として認識し得る。本発明の抗体はまた、C.ディフィシルによる感染と闘うために使用され得る。例として、ヒト化抗体または抗体断片またはモノクローナル抗体は、C.ディフィシル感染に対する対象自身の免疫反応を使用し得る。さらなる例として、本発明の抗体は、サイトカインまたは毒素または酵素またはマーカーと結合して、感染症の治療および検出を補助し得る。
【0177】
本発明のさらなる態様は、診断アッセイに関する。本発明は、当該技術分野において知られた多くのアッセイと共に使用される。当業者には、本発明のポリペプチド、核酸および抗体の、広範な研究ベースの使用が認識される。本発明のポリペプチド、抗体および核酸は、例えば、放射性、化学発光性、蛍光性および/または染色分子等で標識化され得る。本発明の抗体、核酸およびポリペプチドは、DNAアッセイ(例えばサザンブロット法)、RNAアッセイ(例えばノーザンブロット法)、タンパク質アッセイ(例えばウェスタンブロット法)、クロマトグラフィー分析(例えばガス、液体、HPLC、サイズ排除)、免疫測定法(例えばELISA)、ならびに構造アッセイ(例えば結晶学およびNMR分光法)等のアッセイにおける使用に役立つ。本発明の抗体、ポリペプチドおよび核酸は、さらに、プローブとして使用され得る。プローブからのシグナルを増幅するアッセイもまた、当業者に知られている。
キット
【0178】
本発明は、例として、これらに限定されないが、C−TAB.G5もしくはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドをコードする核酸、C−TAB.G5もしくはC−TAB.G5.1単離ポリペプチド、および/またはC−TAB.G5もしくはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドに対する抗体を含むキットを提供する。キットは、1つ以上の容器と、本明細書に記載の本発明の方法のいずれかに従う使用のための説明とを含んでもよい。本発明のC−TAB.G5もしくはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドおよび/または抗体は、C.ディフィシルを検出するための免疫測定法を含む様々なアッセイにおいて使用され得る。一実施形態において、C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1単離ポリペプチドは、生体試料中の抗体の検出を目的とした抗原として機能するように役立つ。容器は、単位用量、大量包装(例えば、複数用量包装)または副次的単位用量であってもよい。本発明のキットは、好適な包装内にある。また、特定のデバイス、例えば吸入器、経鼻投与デバイス、または注入デバイスと組み合わせた使用のための包装も企図される。キットは、無菌アクセスポートを有してもよい。容器もまた、無菌アクセスポートを有してもよい。キットは、随意に、緩衝剤等の追加的構成成分および解釈情報を提供し得る。
【0179】
キットは、C.ディフィシルの存在を検出するために、またはC.ディフィシルに関連した疾患、例えばCDADを検出するために使用され得る。また、キットは、C.ディフィシルに関連した疾患を予防または治療するために使用され得る。また、本発明のキットは、C.ディフィシルに関連した疾患の症状を軽減するために使用され得る。
【0180】
さらなる説明なしに、当業者は、上記説明および以下の例示的な実施例を使用して、請求される発明を作製および利用することができると考えられる。したがって、以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を具体的に指摘するものであり、決して本開示の残りを制限するものとして解釈されるべきではない。本出願を通して参照される全ての論文、出版物、特許および文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0181】
実施例1:C−TAB.G5およびC−TAB.G5.1単離ポリペプチドの調製。
本実施例は、大腸菌細胞における発現のためのC.ディフィシル毒素A(CTA)およびB(CTB)の一部を含む単離ポリペプチドの調製を説明する。後述の方法は、CTAおよびCTBを含む様々な単離ポリペプチドを作製するために使用され得る。一例として、CTAのC末端ドメインの一部およびCTBのC末端ドメインの一部を含む単離ポリペプチドが説明される。
実施例1.1:C−TAB.G5およびC−TAB.G5.1遺伝子コンストラクトのクローニング。
【0182】
C末端ドメインのアミノ酸2026から2710をコードするCTA遺伝子(Accession番号YP−001087137)の一部を、以下のプライマーを使用して、C.ディフィシル株630(ATCC BAA−1382)のゲノムDNAからPCRにより増幅した。
順方向:5’−caccACTAGTatgaacttagtaactggatggc−3’(配列番号9)および
逆方向:5’−CTCGAGttagccatatatcccaggggc−3’(配列番号10)。
順方向プライマーによる増幅は、SpeI部位を形成し、逆方向プライマーによる増幅は、Xhol部位を形成した。
【0183】
C末端ドメインのアミノ酸1850から2366をコードするCTB遺伝子(Accession番号:YP−00108735)の一部を、以下のプライマーを使用してPCRにより増幅した。
順方向:5’−caccATGCATatgagtttagttaatagaaaacag−3’(配列番号11)および
逆方向:5’−ggcCTCGAGctattcactaatcactaattgagc−3’(配列番号12)。
順方向プライマーによる増幅は、Nsil部位を形成し、逆方向プライマーによる増幅は、Xhol部位を形成した。
【0184】
PCR反応は、PCR Super−Mix(Invitrogen社)を使用して行った。サイクル条件は、95℃で2分、95℃で45秒、55℃で50秒、68℃で8分(30サイクル)、および72℃で10分であった。PCR生成物は、迅速遺伝子抽出キット(Invitrogen社)で精製し、PCR 2.1 TOPOベクター(Invitrogen社)にライゲーションした。ライゲーション混合物を使用して、大腸菌Mech−1細胞を熱ショックにより形質転換した。形質転換体をImMedia Amp Blue(Invitrogen社)のプレート上に播種した。白色コロニーを採取し、100μg/mlのアンピシリンを含有する4mlのLB培地を有する15ml管内で培養した。培養物を37℃で一晩インキュベートし、プラスミドを迅速プラスミドミニプレップキット(Invitrogen社)で抽出した。
【0185】
PCR 2.1−TOPO/TAベクター中のCTA遺伝子断片をSpeIおよびXhoI,で分解させ、断片を、同じくT4 DNA Ligaseを使用してSpeIおよびXhoIで分解させた中間ベクターにクローン化した。次いで、3つの制限部位(BgLII−NsiI−SacI)を含有するリンカーを、以下の合成プライマーの組を使用して、PCRによりCTA遺伝子断片の3’端部に挿入した。
順方向:5’−AGATCTATGCATGAGCTCctcgagcccaaaacgaaaggctcagc−3’(配列番号13)
逆方向:5’−cggtccggggccatatatcccaggggcttttactcc−3’(配列番号14)。
【0186】
PCR 2.1−TOPO/TB中のCTB遺伝子断片を、Nsil およびXholで分解させ、分解されたCTB遺伝子断片を、同じくNsiIおよびXhoIで分解させたCTA遺伝子およびリンカーを含有する中間ベクターにライゲーションした。CTB遺伝子をリンカーに3’位で挿入し、コンストラクト配列5’−CTA−リンカー−CTB−3’を形成した。この融合コンストラクトは、C−TAB.V1中間ベクターと呼ばれる。
【0187】
C−TAB.G5遺伝子を、以下のプライマーを使用して、C−TAB.V1中間ベクターからPCRにより増幅した。
順方向:5’−caccCCATTGatggtaacaggagtatttaaagga(配列番号15)
逆方向:5’−CTCGAGctattcactaatcactaattgagctg(配列番号16)。
PCR反応は、PCR Super mix(Invitrogen社)を使用して行った。サイクル条件は、95℃で2分、95℃で45秒、55℃で50秒、68℃で4分(30サイクル)および72℃で10分であった。PCR生成物は、迅速遺伝子抽出キット(Invitrogen社)で精製し、PCR2.1−TOPOベクター(Invitrogen社)にライゲーションした。ライゲーション混合物を使用して、大腸菌Mech−1細胞を熱ショックにより形質転換した。形質転換体をImMedia Amp Blue(Invitrogen社)のプレート上に播種した。白色コロニーを採取し、100μg/mlのアンピシリンを含有する4mlのLB培地を有する15ml管内で培養した。培養物を37℃で一晩インキュベートし、プラスミドを迅速プラスミドミニプレップキット(Invitrogen社)で抽出した。PCR 2.1−TOPOTAベクター中のC−TAB.G5融合遺伝子を、NcoIおよびXhoI 制限酵素で分解させた。これらのC−TAB断片を、同じ制限酵素で分解させたpET28発現ベクターにライゲーションした。この得られたコンストラクトは、アミノ酸1851から2366からの毒素BのC末端ドメインに融合した、アミノ酸2272から2710からの毒素AのC末端ドメインをコードする。pET28/C−TAB.G5コンストラクトを、発現のために大腸菌BL21(DE3)に形質転換した。C−TAB.G5融合遺伝子を含有する5つのコロニーを、分析のために選択した。
【0188】
C−TAB.G5.1コード配列は、大腸菌宿主細胞内での改善された発現のためのコドン最適化により得られた。コドン使用量は、大腸菌遺伝子のコドンバイアスに基づいて適合させた。さらに、mRNA半減期を延長するようにGC含量を調節し、非常に高い(>80%)または非常に低い(<30%)GC含量の領域を回避した。したがって、最適化された遺伝子は、大腸菌における高く安定な発現率を可能とする。コドン最適化されたC−TAB.G5.1遺伝子は、in situで合成し、発現ベクターpET−28b(+)にサブクローニングした。
【0189】
DNA配列決定:d−ローダミン染色によるダイターミネーターサイクル配列決定化学を使用して、プラスミドDNA配列を確認した。Jellyfishソフトウェアを使用して配列決定データを分析した。
実施例1.2:大腸菌における組み換えC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1融合タンパク質の発現
【0190】
C−TAB.G5およびC−TAB.G5.1遺伝子コンストラクトの発現は、大腸菌における発現のための標準的手順を使用して行うことができる。
【0191】
組み換えC−TAB融合タンパク質の発現のためのコロニーのスクリーニング:スクリーニングのために、コロニーを採取し、50μg/mlのカナマイシンを含む4mlのLB培地を有する15mlのFalcon管内で成長させた。管を250rpmで混合しながら37℃で一晩培養した。初期成長期の後、各管からの1mlの培養物を24ウェル組織培養プレートに移し、1mMのイソプロピル−β−D−1−チオガラクト−プラノシド(IPTG)で30℃で3時間発現を誘導した。微小遠心分離機での12,000gで1分間の遠心分離により、細胞ペレットを回収した。細胞ペレット溶解物を調製し、可溶性分画をC−TAB融合タンパク質の発現に関してSDS−PAGEおよびウェスタンブロット分析により分析した。陽性クローンをさらなる評価のために選択した。
【0192】
C−TAB.G5発現のための回分発酵:それぞれ30μg/mlカナマイシンを添加した150mlのSuper Broth培地を含有する500mlの振とうフラスコ内で、種培養物を成長させた。OD600が2〜2.5に達するまで、培養物を275rpmで連続撹拌しながら28℃で12時間成長させた。振とうフラスコを使用して、10LのSuper Brothを含有する発酵槽を植菌した。OD600=3.5〜4となるまで、培養物を37℃で約4.5時間成長させた。生成物発現の誘導のため、0.1mMのIPTGを添加し、25℃でさらに4時間成長を継続させた。次いで、遠心分離により細胞を回収し、細胞ペーストを−70℃で凍結保存した。この発酵プロセスにより達成された典型的な生成物特異的発現速度は、約200mg/mlであった。
【0193】
C−TAB.G5.1調製のための流加回分発酵:500μlの一定量の種バンクのグリセロールストック(−75℃で保存)を使用して、1L振とうフラスコ内の30μg/mlカナマイシンを添加した100mlの前培養培地を植菌した。前培養物を、OD600=1.0〜2.0に達するまで、約150rpmでの一定撹拌下で37℃で約7時間インキュベートした。流加回分発酵を行うことができるプロセス制御システムを装備した標準的産業用15L発酵槽内で、25mLの前培養物を使用して7Lの回分発酵培地を植菌した。グルコースが枯渇するまで、7Lの回分培養段階を37℃で12時間実行した(OD600=12〜15)。次いで、急激供給モードにより、特定の成長速度定数μ=0.25/時間で37℃で6時間(OD600=40〜50)、グルコース供給段階(バイオマス生成)を開始した。一定供給段階への切り替えおよび1mM IPTG(生成物生成)の最終濃度での誘導の1時間前に、温度を30℃に低下させて、封入体形成のリスクを低減した。30℃における一定供給での生成物発現段階をさらに5時間継続し(OD600=約100)、23時間の全発酵プロセス時間および約8.2Lの最終培養物体積を得た。遠心分離により約1.2kgの湿潤細胞バイオマスを回収し、−70℃以下で保存した。そのような流加回分発酵により達成された典型的な生成物特異的発現速度は、最大1.3g/Lであった。
実施例1.3:組み換えC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1融合タンパク質の精製。
【0194】
C−TAB.G5分析試料の精製:凍結細胞ペーストを解凍して、pH5.6の10mMクエン酸/NaOH緩衝液中に再懸濁し、細胞スラリーを550バールでホモジナイザ(GEA Niro Soaviホモジナイザ)に2回通過させた。懸濁液を2回、つまり13500rpmで30分を1回、および2回目に超遠心分離機内で18000rpmで1時間遠心分離した。上澄みをプールし、50mMクエン酸緩衝液(pH3)でpHを5.6に調節した。浄化された細胞溶解物を、pH5.6の10mMクエン酸/NaOH緩衝液と共にSP急速流動カラムに通過させた。タンパク質を、20mM NaPi中0mMから500mMに増加する塩化ナトリウムの線形勾配で溶出した。C−TAB.G5を含有する分画をプールした。蒸留HOにより伝導度を5mS/cmまで下方調節した。25mMの最終濃度までトリスを添加した。プールした分画をDEAE急速流動カラムに通過させた。タンパク質を、25mMトリス中50mMから500mMに増加する塩化ナトリウムの線形勾配で溶出した。再び、C−TAB.G5を含有する分画をプールし、0.4Mの最終濃度まで1.5Mクエン酸Na(pH7.5)を添加した。C−TAB.V1プールを、25mMトリス、0.4Mクエン酸Na(pH 7.5)で平衡化されたフェノールセファロースHPカラムに投入した。C−TAB.G5融合タンパク質を、5mMトリス(pH7.5)を使用して線形勾配で低下する塩濃度で溶出した。全てのカラムを、AKTA Primeクロマトグラフィーシステムにより監視した。精製されたC−TAB融合タンパク質を、50K膜を使用してPBSに緩衝液交換した。

C−TAB.G5.1バルク調製物の精製:バイオマスを、処理まで−80℃で保存した。450gの凍結細胞ペースト(2.90Lの発酵槽に相当)を、4体積の溶解緩衝液(20mM Hepes、pH7.5、約0.6mS/cm)で希釈し(例えば450gのペースト+1800mLの緩衝液)、このようにして約1時間±0.5時間、機械的撹拌下で解凍した。随意の残りの塊を、Ultraturraxを使用して(例えば8000rpmで5分間)再懸濁することができる。細胞溶解は、Niro Soavi Panda高ホモジナイザで行う(640±25バール、3サイクル)。熱交換器を使用して溶解物を10℃未満まで冷却し、遠心分離までこの温度で維持する。粗細胞溶解物を、14000rpm(30000g)で4℃で30分間、バッチ遠心分離ステップ(Beckmann Avanti JLA 60.25)に供する。上澄みを回収してプールする。濾過ステップの詰まりのリスクを低減するために、ペレットの半液体部分も廃棄する。次いで、プールされた上澄みをSupercap PDH4 100/5インチ深さのフィルタカプセル(Pall社)(250cm2有効濾過面積)を通して濾過する。フィルタハウジング内の残りの溶解物を、溶解緩衝液で洗い流す。浄化後、1Mトリス原液(pH7.5)の一定量を、25mM.の最終濃度まで溶解物に添加する。最終溶解物の緩衝組成物は、20mM Hepes、25mMトリス(pH7.5、伝導度約6mS/cm)である。溶解物は濾過後もまだ若干混濁している可能性があるが、これはその後の捕捉ステップに影響しない。捕捉ステップは、直径50mm、充填層高さ20cm、充填層体積約400mLの寸法を有するXK50/30カラム(GE Healthcare社)において、DEAE Sepharose FF(GE Healthcare社)で室温で行う。投入密度は、約0.8gから1.2gバイオマス/mLゲルである。プロセスは、Akta Explorerシステム(GE Healthcare社)により行い、280nmで監視する。平衡化は、100cm/時間で、約5CVの25mMトリス、20mM Hepes、25mM NaCl(pH7.5、伝導度約5mS/cm)を用いて、pH、伝導度および280nm吸光度が安定するまで行う。溶解物を75cm/時間でカラムに投入し、通過物を廃棄する。全ての濾過された溶解物を投入したら、280nm吸光度が安定化するまで、流動を約5CVの平衡化緩衝液で再開する。5CVの25mMトリス、175mM NaCl(pH7.5、伝導度19mS/cm)による洗浄ステップ2の間に不純物をカラムから除去する。3CVの25mMトリス、375mM NaCl(pH7.5、伝導度36mS/cm)での段階的溶出により、C−TABタンパク質をカラムから溶出する。280nm吸光度が増加し始めたら(通常1CV後)、C−TAB含有分画の回収を開始し、約0.5CVから1.0CVの間継続する。C−TABを含有するプールされた分画は、2〜8℃で一晩保存することができる。中間精製ステップは、直径50mm、充填層高さ20cm、充填層体積約400mLの寸法を有するXK50/30カラム(GE Healthcare社)において、SP−Sepharose FF(GE Healthcare社)で室温で行う。最大投入密度は、約4〜5mg C−TAB/mLゲルである。プロセスは、Akta Explorerシステム(GE Healthcare社)により行い、280nmで監視する。平衡化、洗浄および線形勾配溶出ステップを、過度の背圧(>4バール)により妨げられない限り、200cm/時間(65mL/分)の最大流速で行う。pH、伝導度および280nm吸光度が安定となるまで、約5〜10CVの緩衝液Gで200cm/時間で平衡化を行う。投入前に、SP−FF樹脂上へのC−TABの結合を可能とするようにDEAEプールを調節する必要がある。最終伝導度が3.5mS/cm(pH5.5±0.1)以下となるまで、SP−FF平衡化緩衝液(10mMクエン酸、2mM EDTA(pH5.5±0.1、伝導度約2mS/cm))でDEAEプールを25倍希釈する。必要な場合は、所望の伝導度を達成するために追加のMilliQ水を添加する。SP−FF上へのC−TABの結合を可能とするためには、低い伝導度が極めて重要であることに留意されたい。試料を150cm/時間でカラムに投入し、通過物を廃棄する。試料の投入後、280nm吸光度が安定化するまで、流動を約5CVの平衡化緩衝液で200cm/時間で再開する。0%平衡化緩衝液から、10CVを超える30% 20mMリン酸ナトリウム、500mM NaCl(pH7.0)まで、100cm/時間の線形勾配により溶出を行う。分画を回収し、UV280nm吸光度によりプールを行う。プールは、ピーク最大値の15%で開始し、ピーク最大値の15%で終了する。1.5Mクエン酸原液(pH8.0)を使用して、プールをすぐに400mMのクエン酸(最終pH7、約49mS/cm)まで調節する。調節されたSPFFプールは、pH7および約49mS/cmを有するべきであり、2〜8℃で一晩保存される。
【0195】
ポリッシングクロマトグラフィーステップは、直径50mm、充填層高さ15cm、充填層体積約300mLの寸法を有するXK50/30カラム(GE Healthcare社)において、Phenyl−Sepharose HP(GE Healthcare社)で室温で行う。投入密度は、約4〜5mg C−TAB/mLゲルである。プロセスは、Akta Explorerシステム(GE Healthcare社)により行い、280nmで監視する。平衡化、投入、洗浄および溶出ステップを、過度の背圧(>4バール)により妨げられない限り、100cm/時間(33mL/分)の最大流速で行う。そのような場合、流速を低下させる必要がある。平衡化は、100cm/時間で、約5〜10CVの25mMトリス、400mMクエン酸ナトリウム(pH7.5、46mS/cm)を用いて、pH、伝導度および280nm吸光度が安定するまで行う。試料を100 cm/時間でカラムに投入し、通過物を廃棄する。試料の投入後、280nm吸光度が安定化するまで、流動を約5CVの平衡化緩衝液で100cm/時間で再開する。100%平衡緩衝液/0% 5mMトリス(pH7.5、0.5mS/cm)から、20CVを超える100% 5mMトリス(pH7.5、0.5mS/cm)まで、100cm/時間の線形勾配により溶出を行う。分画を回収し、UV280nm吸光度によりプールを行う。プールは、ピーク最大値の約10〜15%で開始し、ピーク最大値の約20%で終了する。調節されたプールを、2〜8℃で一晩保存する。最終C−TAB原薬タンパク質溶液の調製は、室温で操作される30kDaカットオフ接線流濾過(TFF、Pellicon 2膜、Millipore)により達成される。タンパク質溶液は、透過物pHが6.5±0.2と等しくなるまで、製剤緩衝液(20mMヒスチジン、75mM NaCl、5%スクロース、0.025% Tween(登録商標)80(pH6.5))に対して膜分離される。
【0196】
280nmでのUV測定に従い、C−TAB(タンパク質濃度1mg/mL、1cmキュベット)の280nmにおける比吸光係数として1.566を使用して、最終タンパク質濃度を2mg/mLに調製する。
【0197】
SDS−PAGEおよびウェスタンブロット分析:全細胞溶解物および精製C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1融合タンパク質を、ベータ−メルカプトエタノールを含有するNu−Page試料緩衝液中に再懸濁し、10分間煮沸した。試料(25μl)を3〜8%トリス−アセテートゲル上に投入した。電気泳動(150Vで1時間)後、単純に青色染色によりゲルを染色することによりタンパク質を可視化し、またはウェスタンブロット分析に使用した。
【0198】
C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1特異的発現を、毒素特異的抗体を使用したウェスタンブロット分析により決定した。10%メタノール中の1×トランスファー緩衝液を使用して、タンパク質を23Vで60分間PVDF膜に移した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中0.5%のカゼインで、膜を室温で1時間ブロックした。毒素Bに対するモノクローナル抗体(GenWay;クローンB426M)または独自に得た毒素Aに対するモルモットポリクローナル抗体(List Biological Labs)と共に、トランスファー膜を室温で2時間インキュベートした。洗浄した膜を、ホースラディッシュペルオキシダーゼ複合化抗モルモットIgGまたは抗マウスIgGと共にインキュベートした。ブロットを洗浄し、AEC基質を添加した。ブロットを穏やかに混合しながら5〜10分間インキュベートした。ブロットを水で濯ぎ、発色を停止させた。
【0199】
RBC血球凝集:毒素Bではなく毒素Aの細胞結合ドメインは、ウサギ赤血球(RBC)を凝集することができることが示されている。凝集プロセスは、毒素A がウサギRBCに対する血液抗体において見られるグリカン配列に結合した結果である。試料(C−TAB.G5および天然毒素A)を、PBS中で100μg/mlに希釈する。V字底マイクロタイタープレート内で、2倍連続希釈物をプレートにわたり2回調製し、100μg/mlから開始して50μlの希釈物を各ウェルに残す。50マイクロリットルの0.75%ウサギRBC/PBS懸濁液をマイクロタイタープレートの各ウェルに添加し、プレートを室温で1時間インキュベートする。プレート底部でのRBCペレット形成の失敗により、血球凝集が示される。試料の血球凝集力価は、RBCペレットが観察されない最大試料希釈物を有するウェル内に存在するタンパク質の濃度により表現される。
実施例2:マウスにおけるalumの存在下および非存在下での組み換えC−TAB.G5融合タンパク質の用量力価測定。
【0200】
本試験は、C−TAB有効性アッセイとしての、alumアジュバントあり、およびなしでのC−TAB.G5のin vivo用量力価測定の実現可能性を決定するためのものであった。使用したalumは、Alydragel(水酸化alum、Brenntag社)であった。8週から9週齢の間のC57BL/6雌マウス(Charles River Labs.)を、免疫化に使用した。全ての動物は、0日目に右大腿筋への筋肉内(IM)注射(50μl)による第1の免疫化を受けた。第2の免疫化は、14日目に左大腿筋へのIM注射により行った。全部で72匹のマウスを、以下のようにワクチン接種された12の群に分割した。
・群1:PBSのみ
・群2:100(154)ngのC−TAB.G5
・群3:300(462)ngのC−TAB.G5
・群4:1,000(1,540)ngのC−TAB.G5
・群5:3,000(4,620)ngのC−TAB.G5
・群6:10,000(15,400)ngのC−TAB.G5
・群7:50μgのalumを含むPBS
・群8:50μgのalum OHを含む10.0(15.4)ngのC−TAB.G5
・群9:50μgのalum OHを含む30.0(46.2)ngのC−TAB.G5
・群10:50μgのalum OHを含む100(154)ngのC−TAB.G5
・群11:50μgのalum OHを含む300(462)ngのC−TAB.G5
・群12:50μgのalum OHを含む1,000(1,540)ngのC−TAB.G5
【0201】
本試験では、まず、標準プロトコルQuick Start(商標)Bradford Protein Assay(Bio−Rad社)に従い、タンパク質濃度を測定した。後に、実施例1.3に記載の手順に従い、280nmでのUV測定によりタンパク質濃度(括弧内に示す)を再び測定した。追跡調査では、UV法によりタンパク質濃度を測定した。
【0202】
第1の免疫化から2週間後(試験14日目)、および第2の免疫化から2週間後(試験28日目)に、全ての動物から血液試料を回収した。分析まで血清を−20℃で保存した。
【0203】
血清IgG ELISA:C−TAB.G5もしくはC−TAB.G5.1(C−TABと呼ばれる)、毒素Aおよび毒素Bまたはそのトキソイドに対し惹起された血清抗体を、酵素免疫測定法(ELISA)において評価した。簡潔に述べると、1.0μg/mlの毒素A、毒素BまたはC−TAB.G5単離ポリペプチドの原液を、PBS中で調製し、100μlを96ウェルプレートの各ウェルに加えた。4℃で一晩のインキュベーション後、プレートを洗浄し、0.5%カゼインブロック緩衝液でブロックした。プレートを再び洗浄し、試験血清の連続2倍希釈物をプレートに加えた。第2の4℃で一晩のインキュベーション後、プレートを洗浄し、ペルオキシダーゼ複合化抗マウスIgG(H+L)と共にインキュベートした。室温で2時間のインキュベーション後、プレートを再び洗浄し、ペルオキシダーゼ基質(2,2’−アジノビス(3−エチルベンズチアゾリン−6−スルホネート)を添加し、室温で2時間発色させた。50μlの2%SDSをウェルに添加することにより、反応を停止させた。プレートを405nmの吸収でELISAプレートリーダーで読み出した。血清抗体力価は、ELISA単位の幾何平均として報告されるが、これは、1.0のOD 405nm読み出しをもたらす血清希釈である。陰性対照として、第1の免疫化の前にプレブリードされた動物から得られた事前免疫化血清のプール試料を使用して、抗体反応を評価した。
【0204】
C−TAB.G5を与えられた動物は、抗体力価の用量依存的な増加を示し、alumアジュバントは、より低いC−TAB.G5の用量で大幅に改善された抗体力価を可能にした。図3は、抗C−TAB、抗毒素Aおよび抗毒素B IgGの力価を示す。図4は、alumの存在下または非存在下での抗体力価のグラフ比較を示す。
実施例3:マウスにおけるC−TAB.G5の免疫原性および保護効果
【0205】
本試験は、C.ディフィシル毒素Aまたは毒素Bの致死的負荷を受けたワクチン接種マウスにおける、C−TAB.G5の免疫原性および保護効果を評価するためのものであった。6〜7週齢の雌C57BL/6マウス(Charles River Labs.)を本試験に使用した。全ての動物は、0日目に右大腿筋への筋肉内(IM)注射(50μl)による第1のワクチン接種を受けた。第2のワクチン接種は、14日目に左大腿筋へのIM注射により行った。116匹のマウスを、以下のようにワクチン接種された群に分割した。
・群1:PBSのみ
・群2:3μgのC−TAB.G5
・群3:10μgのC−TAB.G5
・群4:30μgのC−TAB.G5
・群5:3μgのC−TAB.G5+50μgのalum OH
・群6:10μgのC−TAB.G5+50μgのalum OH
・群7:30μgのC−TAB.G5+50μgのalum OH
・群8:PBSのみ
・群9:3μgのC−TAB.G5
・群10:10μgのC−TAB.G5
・群11:30μgのC−TAB.G5
・群12:3μgのC−TAB.G5+50μgのalum OH
・群13:10μgのC−TAB.G5+50μgのalum OH
・群14:30μgのC−TAB.G5+50μgのalum OH
【0206】
第2の免疫化から2週間後(試験28日目)に、全ての動物から血液試料を回収した。分析まで血清を−20℃で保存した。次いで、C−TAB、毒素Aおよび毒素Bに対する血清抗体力価を、ELISAにより測定し、ELISA単位(EU)として報告した。
【0207】
図5は、第2の免疫化から2週間後(試験28日目)に評価された、マウスにおけるC−TAB、毒素Aおよび毒素Bに対する血清抗体力価を示す。本試験は、C−TAB.G5融合タンパク質がマウスにおいて極めて免疫原性であり、アジュバントを添加しなくても、毒素Aおよび毒素Bの両方に対して強い抗体反応を誘導し得ることを示した。C−TAB.G5免疫原性は、水酸化alumとの併用送達により大きく増強され得る(1対数超)。alumあり、またはなしでC−TAB.G5を与えられた動物は、片対数用量範囲にわたり抗体反応の2倍の増加を示した。
【0208】
抗体力価の評価に加えて、C−TAB.G5による免疫化により生成された抗体を、in vitro毒素中和アッセイ(TNA)において、天然毒素AおよびBを中和する能力に関して評価した。
【0209】
毒素中和抗体アッセイ(TNA)。in vitro分析のために、125μlの毒素A(5ng/ml)または毒素B(1ng/ml)を、免疫化マウスから得られた抗血清の125μlの連続希釈物と共にインキュベートした。37℃で1時間のインキュベーション後、毒素:血清混合物を、Vero細胞(サル腎臓細胞)を含有するマイクロタイターウェルに加え、マイクロタイタープレートを18時間インキュベートした。毒素AまたはBおよびVero細胞のインキュベーションは、細胞形態の変化、および非接着性細胞の除去後の毒素処理細胞の中性赤色染色により測定される細胞接着の喪失をもたらした。血清の毒素中和力価は、毒素活性の50%低減をもたらす血清希釈として報告される。
【0210】
TNAアッセイの結果を図6に示す。データは、C−TAB.G5のみでの免疫化後に生成された抗体が、天然毒素Aの毒性活性を中和することができるが、毒素Bは中和できないことを示している。C−TAB.G5がalumと併用送達された場合、TNA力価は、抗毒素A TNAにおいて約6倍の増加を伴って増強され、抗毒素B TNAにおいてはわずかに2分の1低い力価であった。このデータは、C−TAB.G5単離ポリペプチドが、天然毒素中に存在する抗体認識抗原エピトープを保持するだけでなく、機能的毒素中和抗体の生成に必要とされる重要な抗原エピトープも含むことを示している。このように、C−TAB.G5は、C.ディフィシル毒素Aおよび毒素Bの毒性作用の中和に効果的であり、したがってワクチン接種に有用である。
【0211】
抗体反応の評価に加えて、マウスを天然毒素の致死的負荷から保護するC−TAB.G5免疫化の能力を決定した。第2のワクチン接種から3週間後(試験35日目)に、ワクチン接種および非ワクチン接種群(N=8)内の動物は、25ngの毒素Aまたは50ngの毒素Bの致死用量を腹腔内(IP)投与により受けた。マウスの生存率をその後9日間にわたり監視したが、その結果を図6に示す。本実験は、alumアジュバントの非存在下でのC−TAB.G5によるマウスの免疫化が、天然毒素Aによる致死的負荷に対し100%の保護、および毒素B負荷に対する50%の保護を付与することができることを実証した。C−TAB.G5のAlumとの併用送達は、毒素Bに対する保護免疫を100%保護まで向上させた。このデータは、C−TAB.G5ワクチン接種が、致死的負荷モデルにおいて、マウスを毒素Aおよび毒素Bの両方の毒性作用から保護するのに十分な免疫反応を誘導することを示している。
実施例4:幼若および老齢マウスにおける、C−TAB.G5の免疫原性および保護効果の評価。
【0212】
本試験は、幼若および老齢マウスにおけるC−TAB.G5に対する免疫反応を比較するためのものであった。それぞれ6〜7週齢および18ヶ月齢の雌C57BL/6マウス(Charles River Labs.)を本試験に使用した。全ての動物は、0日目に右大腿筋への筋肉内(IM)注射(50μl)による第1のワクチン接種を受けた。第2のワクチン接種は、14日目に左大腿筋へのIM注射により行った。192匹のマウスを、以下のようにワクチン接種された群に分割した。
−群1:幼若マウスへのPBS
−群2:老齢マウスへのPBS
−群3:幼若マウスへの10μgのC−TAB.G5
−群4:幼若マウスへの30μgのC−TAB.G5
−群5:老齢マウスへの10μgのC−TAB.G5
−群6:老齢マウスへの30μgのC−TAB.G5
−群7:幼若マウスへの10μgのC−TAB.G5+50μgのalum OH
−群8:幼若マウスへの30μgのC−TAB.G5+50μgのalum OH
−群9:老齢マウスへの10μgのC−TAB.G5+50μgのalum OH
−群10:老齢マウスへの30μgのC−TAB.G5+50μgのalum OH
−群11:幼若マウスへのPBS
−群12:老齢マウスへのPBS
−群13:幼若マウスへの10μgのC−TAB.G5
−群14:幼若マウスへの30μgのC−TAB.G5
−群15:老齢マウスへの10μgのC−TAB.G5
−群16:老齢マウスへの30μgのC−TAB 5th
−群17:幼若マウスへの10μgのC−TAB.G5+50μgのalum OH
−群18:幼若マウスへの30μgのC−TAB.G5+ 50μgのalum OH
−群19:老齢マウスへの10μgのC−TAB.G5+50μgのalum OH
−群20:老齢マウスへの30μgのC−TAB.G5+50μgのalum OH
【0213】
第2のワクチン接種から3週間後(試験35日目)に、ワクチン接種および非ワクチン接種群(N=6)内の動物は、25ngの毒素Aまたは50ngの毒素Bの腹腔内(IP)注射により致死的負荷を受けた。マウスの生存率をその後9日間にわたり監視した。
【0214】
第1の免疫化から2週間後(試験14日目)、および第2の免疫化から2週間後(試験28日目)に、全ての動物から血液試料を回収した。分析まで血清を−20℃で保存した。次いで、C−TAB、毒素Aおよび毒素Bに対する血清抗体力価を、ELISAにより測定し、ELISA単位(EU)として報告した。毒素Aおよび毒素B中和抗体(TNA)を、細胞毒性量の組み換え毒素Aおよび毒素Bで処理されたVero細胞を使用して決定した。
【0215】
C−TAB.G5ワクチンを与えられた幼若動物は、老齢動物と比較してより大幅に高いレベルの試験した全ての抗体を示した。水酸化alumの存在下でC−TAB.G5をワクチン接種された幼若マウスにおいて特に高い抗体力価が得られた(図7)。毒素B TNA力価において特に顕著な改善が達成された。同時に、毒素Aおよび毒素B負荷に耐える能力において、幼若マウスと老齢マウスとの間に大きな差はなかった。しかしながら、両群とも、alumの存在下でワクチン接種された場合、改善された保護率を示した。図7は、幼若マウス対老齢マウスにおけるC−TAB.G5免疫原性および保護効果の比較を示す。図8は、幼若および老齢マウスにおける抗C−TAB抗体増加の反応速度を示す。
実施例5:C−TAB.G5.1ならびにとトキソイドAおよびBの免疫原性および保護効果の比較。
【0216】
本試験は、C−TAB.G5.1対トキソイドA/Bの免疫原性および保護効果を比較するためのものであった。使用したトキソイドA/Bは、等量(1:1)のトキソイドA(ロット#1009132)およびトキソイドB(ロット#1009133)の混合物であった。トキソイドは、ホルマリン固定により調製され、TechLabにより提供された。6〜7週齢の雌C57BL/6マウス(Charles River Labs.)を本試験に使用した。全ての動物は、0日目に右大腿筋への筋肉内(IM)注射(50μl)による第1のワクチン接種を受けた。第2のワクチン接種は、14日目に左大腿筋へのIM注射により行った。180匹のマウスを、以下のようにワクチン接種された群に分割した。
−群1:PBSのみ
−群2:10μgのC−TAB.G5.1
−群3:30μgのC−TAB.G5.1
−群4:10μgのC−TAB.G5.1+50μgのalum OH
−群5:10μgのC−TAB.G5.1+50μgのalum OH
−群6:30μgのトキソイドA/B
−群7:10μgのトキソイドA/B
−群8:30μgのトキソイドA/B+50μgのalum OH
−群9:30μgのトキソイドA/B+50μgのalum OH
−群10:PBS
−群11:10μgのC−TAB.G5.1
−群12:30μgのC−TAB.G5.1
−群13:10μgのC−TAB.G5.1+50μgのalum OH
−群14:30μgのC−TAB.G5.1+50μgのalum OH
−群15:10μgトキソイドA/B
−群16:30μgのトキソイドA/B
−群17:10μgのトキソイドA/B+50μgのalum OH
−群18:30μgのトキソイドA/B+50μgのalum OH
【0217】
第2のワクチン接種から3週間後(試験35日目)に、ワクチン接種および非ワクチン接種群(N=6)内の動物は、28ngの毒素Aまたは50ngの毒素Bの腹腔内(IP)注射により致死的負荷を受けた。マウスの生存率をその後9日間にわたり監視した。
【0218】
第1の免疫化から2週間後(試験14日目)、および第2の免疫化から2週間後(試験28日目)に、全ての動物から血液試料を回収した。分析まで血清を−20℃で保存した。次いで、C−TAB、毒素Aおよび毒素Bに対する血清抗体力価を、ELISAにより測定し、ELISA単位(EU)として報告した。毒素Aおよび毒素B中和抗体(TNA)を、細胞毒性量の組み換え毒素Aおよび毒素Bで処理されたVero細胞を使用して決定した。
【0219】
本研究は、2回のワクチン接種後のマウスにおけるC−TAB.G5.1およびトキソイドA/Bの免疫原性および保護効果を実証する。C−TAB.G5.1を与えられた動物は、トキソイドA/Bを与えられた動物と比較して、より低いが有意な抗C−TAB抗体力価を示した。また、alumの併用送達は、全ての試験された抗体反応を大きく増強した。結果として、alumの存在下でC−TAB.G5.1またはトキソイドA/Bで免疫化された動物において達成された抗C−TABおよび抗毒素A抗体のレベルは、同様である。マウスがC−TAB.G5.1で免疫化された場合、トキソイドA/Bで免疫化されたマウスと比較して、抗毒素B抗体は僅かにより低い抗体力価が観察された。注目すべきことに、毒素分子のC末端部分におけるC−TAB.G5.1認識エピトープに対して生成された抗体とは異なり、トキソイド免疫化により誘導された抗体は、毒素分子のN末端部分に特異的であり、これは抗毒素ELISAにおいて読み出された。したがって、C−TAB.G5.1およびトキソイドA/Bで免疫化されたマウスにおいて生成された抗毒素Aおよび抗毒素B抗体は、異なる特異性の抗体であり、したがって直接比較することはできない。しかしながら、データは、C−TAB.G5.1免疫化に対する抗体反応が、トキソイドによる免疫化の場合と同様に著しく高いことを示している。さらに、毒素負荷試験は、マウスを致死的負荷から保護するC−TAB.G5.1免疫化の能力が、トキソイドAおよびBの保護効果に匹敵することを実証した。図9は、C−TAB.G5.1およびトキソイドA/Bの免疫原性の比較を示す。図10は、トキソイドA/Bで免疫化されたマウスと比較して、C−TAB.G5.1で免疫化されたマウスに対する毒素中和および保護データを示す。
実施例5.1:異なる免疫化計画におけるC−TAB.G5.1の抗体力価および保護効果の比較。
【0220】
本研究は、異なる免疫化計画で3回のワクチン投薬を受けたマウスにおける、C−TAB.G5.1の免疫原性および保護効果を比較するためのものであった。6〜7週齢の雌C57BL/6マウス(Charles River Labs.)を本試験に使用した。135匹のマウスを、14の群に分割した。群番号2〜13における全ての動物は、以下に示す日に、右大腿筋または左大腿筋への筋肉内(IM)注射(50μl)により、3回のワクチン接種を受けた。群1および8内のマウスは、ワクチン接種を受けず、陰性対照として役立った。以下のように免疫化を行った。
【0221】
【表3】
【0222】
試験0、3、7、14、21、28、35および42日目に、全ての動物から血液試料を回収した。分析まで血清を−20℃で保存した。C−TAB、毒素Aおよび毒素Bに対する血清抗体力価を、ELISAにより測定し、ELISA単位(EU)として報告した。試験42日目に、毒素Aおよび毒素B中和抗体(TNA)を、細胞毒性量の組み換え毒素Aおよび毒素Bで処理されたVero細胞を使用して決定した。
【0223】
最後のワクチン接種から3週間後(試験49日目)に、ワクチン接種および非ワクチン接種群(N=8)内の動物は、28ngの毒素Aまたは50ngの毒素Bの腹腔内(IP)注射により致死的負荷を受けた。マウスの生存率をその後9日間にわたり監視した。
【0224】
本試験は、第3のワクチン接種から2週間後または試験35および42日目に測定された全ての抗体力価が、全ての免疫計画において同等であるが、0/14/28の免疫化計画が最良の免疫反応を示すことを実証している。第2のワクチン接種から2週間後に測定された抗体力価を比較すると、0/14/28の免疫化計画が、0/7/21の免疫化計画よりも良好であり、0/3/14の免疫化計画よりもはるかに良好である。本試験により、抗原が水酸化アルミニウムと併用注射された場合、抗毒素A/B抗体力価が大幅に向上することが確認された(データは示さず)。試験はまた、alumと共に2回のワクチン投薬が2週間の間隔をおいて行われた場合でも、3回のワクチン投薬後に得られるレベルに匹敵する高い抗体レベルを惹起し得ることを示している。
【0225】
毒素A/B中和抗体のレベルは、0/7/21および0/14/28の免疫化計画において、0/3/14の免疫化計画よりもはるかに高い。
【0226】
毒素Aによる負荷に対する完全な保護は、0/7/21および0/14/28の免疫化計画においてalumを必要としないが、0/3/14においては必要とする。alumありでの0/14/28の免疫化計画は、毒素B負荷に対して最も高いレベルの保護(87.5%)を誘導し、一方0/7/21の免疫化計画は、37.5%の保護を提供し、0/3/14は、28.6%の保護を示す。本試験の結果を図20に示す。
実施例6:ハムスターにおける組み換えC−TAB.G5.1融合タンパク質の免疫原性および保護効果の評価。
【0227】
本試験は、異なる動物モデルにおける、アジュバントあり、またはなしで投与された組み換え融合タンパク質C−TAB.G5.1の免疫原性をさらに評価するためのものであった。
【0228】
7週齢を超える体重80gから90gの雌ハムスター(Harlan社)を本試験に使用した。全ての動物は、0日目に右大腿筋へのボーラス(50μl)筋肉内(IM)注射による第1のワクチン接種を受けた。第2のワクチン接種は14日目に左大腿筋へのIM注射により行われ、第3のワクチン接種は28日目にIM注射により行われた。ハムスターを群(N=6)に分割し、以下のようにワクチン接種した。
・群1:製剤緩衝液のみ
・群2:10μgのC−TAB.G5.1
・群3:10μgのC−TAB.G5.1+100μgのalum OH
・群4:30μgのC−TAB.G5.1
・群5:30μgのC−TAB.G5.1+100μgのalum OH
・群6:100μgのC−TAB.G5.1
・群7:100μgのC−TAB.G5.1+100μgのalum OH
・群10:製剤緩衝液のみ
・群11.10μgのC−TAB.G5.1
・群12.10μgのC−TAB.G5.1+100μgのalum OH
・群13.30μgのC−TAB.G5.1
・群14.30μgのC−TAB.G5.1+100μgのalum OH
・群15.100μgのC−TAB.G5.1
・群16.100μgのC−TAB.G5.1+100μgのalum OH
【0229】
第3のワクチン接種から2週間後(試験42日目)に、ワクチン接種および非ワクチン接種群(N=6)内の動物は、75ngの毒素Aまたは125ngの毒素Bの腹腔内(IP)注射により致死的負荷を受けた。44日目に毒素Aまたは毒素B負荷の用量力価測定にさらに12匹のハムスターを使用した。ハムスターの生存率をその後8日間にわたり監視した。
【0230】
第1の免疫化から2週間後(試験14日目)、第2の免疫化から2週間後(試験28日目)、および第3の免疫化から2週間後(試験35日目)に、全ての動物から血液試料を回収した。分析まで血清を−20℃で保存した。次いで、C−TAB、毒素Aおよび毒素Bに対する血清抗体力価を、ELISAにより測定し、ELISA単位(EU)として報告した。毒素Aおよび毒素B中和抗体(TNA)を、細胞毒性量の組み換え毒素Aおよび毒素Bで処理されたVero細胞を使用して決定した。
【0231】
本試験は、ハムスターが、マウスと同様に、C−TAB.G5.1ワクチン接種に肯定的に反応することを実証した。C−TAB.G5.1を与えられた動物は、全ての試験された抗体力価において用量依存的な増加を示し、一方alumアジュバントは、C−TAB.G5の全ての用量において抗体力価を大幅に改善した。最大の抗体力価は、第2の投与から2週間後(試験28日目)に観察された。図11(A〜C)は、免疫化されたハムスターの各群に対する抗体力価を示す。図12は、水酸化alumの存在下または非存在下でのC−TAB.G5で免疫化されたハムスターにおける抗C−TAB抗体増加の反応速度を示す。
【0232】
TNAアッセイの結果を図13に示す。これらの結果は、マウスに対して得られたものと同様であり、ハムスターにおいてC−TAB.G5.1融合タンパク質に対して生成された抗体が、C.ディフィシル毒素Aおよび毒素Bの毒性作用の中和に効果的であることを示している。
【0233】
また、図13は、致死的毒素負荷後のC−TAB.G5.1で免疫化されたハムスターにおける保護データを示す。アジュバントの非存在下でのC−TAB.G5.1によるワクチン接種でも、高い保護が達成された。ワクチンにalumを添加することにより、保護レベルは100%まで改善された。
実施例7:クリンダマイシン処理ハムスターにおけるC.ディフィシル芽胞負荷に対するC−TAB.G5.1融合タンパク質の保護効果。
【0234】
抗生物質治療後、C.ディフィシルは、消化管にコロニー形成する可能性があり、毒素を生じる場合は、抗生物質関連下痢を引き起こし得る。人間のC.ディフィシル関連疾患(CDAD)は、動物をコロニー形成、下痢および死亡し易くするために、通常は毒素産生株での植菌から数日以内にクリンダマイシンを使用してハムスターにおいてモデル化される。C−TAB.G5.1ワクチン有効性を評価するために、ワクチン接種および非ワクチン接種ハムスターにクリンダマイシンおよびC.ディフィシル株630を負荷した。100μgのC−TAB.G5.1を、125μgの水酸化alumアジュバントと混合した。体重約100gの雌成体ハムスターが、0、14および28日目に筋肉内(IM)注射により3回のワクチン接種を受けた。プラセボはPBSであった。48匹のハムスターを、以下のようにワクチン接種される8匹の群に分割した。
群1:PBSのみ+10芽胞負荷
群2:C−TAB.G5.1+10芽胞負荷
群3:PBSのみ+10芽胞負荷
群4:C−TAB.G5.1+10芽胞負荷
群5:PBSのみ+10芽胞負荷
群6:C−TAB.G5.1+10芽胞負荷
【0235】
42日目に、全ての群内の全ての動物は、10mgリン酸クリンダマイシン/kg体重の経口投薬を受けた。43日目に、全ての群内の全ての動物に、C.ディフィシル株630の洗浄芽胞を強制経口投与により投薬した。3つのレベルの芽胞負荷を使用した(約10、10および10)。治療を行わずに観察を54日目まで継続した。試験の終了時に、全ての生存動物は、5日間以上疾患を有さなかった。
【0236】
0、14、28、42および54日目(試験終了)に、血液試料を採取して、血清学的試験のための血清を得た。1日目および42日目に、ハムスターの肛門から直接、または必要に応じて寝床の中から糞便を回収した。
【0237】
結果を、ハムスターにおける芽胞負荷後の生存率曲線を示す図14に示す。生存率データは、Kaplan−Meier生存率適合曲線としてプロットし、統計分析はログランク分析を使用して行った。全ての芽胞用量において、ワクチン接種群内のハムスターの100%生存率が観察され、プラセボ群と比較して生存率が有意に向上した:10芽胞でp=0.0245、10芽胞でp=0.0006、10芽胞でp<0.0001。
実施例8:サルにおけるC−TAB.G5.1の免疫原性および保護効果。
【0238】
本試験は、カニクイザルにおけるC−TAB.G5.1の免疫原性および保護を評価するためのものであった。4歳から6歳の間の年齢および2kgから4kgの間の体重の6匹の雌のカニクイザルを、本試験に使用した。3匹のサルの2つの群を準備し、第1の群(群1)に200μgのC−TAB.G5.1を与え、第2の群(群2)に200μgのC−TAB.G5.1および250μgのalumを与えた。alumアジュバントとして、Rehydragel(Reheis社、ロット#534401、PBS中で2mg/mlに希釈)を使用した。血液採取または免疫化の前に、(必要に応じて)動物を剃毛した。
【0239】
第1(試験0日目)および第3(試験28日目)の免疫化は左腕(三角筋)に施し、第2の免疫化(試験14日目)は右腕(三角筋)に施した。群1には、0.5ml 1×PBS中の200μgのC−TAB.G5.1のみをIM注射により与え、群2には、0.5ml 1×PBS中の200μgのC−TAB.G5.1および250μgのalumをIM注射により与えた。
【0240】
確立された時点(試験0、14、28および42日目)に、標準的方法により得た2〜3mLの全血を血清分離管に採取した。血清試料を約−20℃で凍結した。次いで、ELISA法を使用して、抗C−TAB、抗毒素Aおよび抗毒素B IgG力価を評価した。抗体力価は、ELISA単位(EU)で示された。
【0241】
図15は、増加用量のC−TAB.G5.1が、3つ全てのタンパク質を認識する抗体産生の増加をもたらし、一方alumの存在が抗体レベルを大幅に改善したことを示している。最大抗体力価は、42日目の2回のワクチン接種において観察された。これらのデータは、それを必要とする対象のワクチン接種のための組み換えC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1融合タンパク質の使用の実現可能性を明確に示している。
実施例9:C−TAB.G5およびC−TAB.G5.1の免疫原性の比較。
【0242】
本試験は、C−TAB.G5およびC−TAB.G5.1の免疫原性、ならびにC−TABが供給される2つの異なる緩衝液の効果を比較するためのものであった。8週から9週齢の間のC57BL/6雌マウス(Charles River Labs.)を免疫化に使用した。全ての動物は、0日目に右大腿筋への筋肉内(IM)注射(50μl)による第1の免疫化を受けた。第2の免疫化は、14日目に左大腿筋へのIM注射により行った。全部で72匹のマウスを、以下のようにワクチン接種された12の群に分割した。
群1:1μgのPBS中のC−TAB.G5
群2:3μgのPBS中のC−TAB.G5
群3:10μgのPBS中のC−TAB.G5
群4:30μgのPBS中のC−TAB.G5
群5:1μgのヒスチジン緩衝液中のC−TAB.G5
群6:3μgのヒスチジン緩衝液中のC−TAB.G5
群7:10μgのヒスチジン緩衝液中のC−TAB.G5
群8:30μgのヒスチジン緩衝液中のC−TAB.G5
群9:1μgのヒスチジン緩衝液中のC−TAB.G5.1
群10:3μgのヒスチジン緩衝液中のC−TAB.G5.1
群11:10μgのヒスチジン緩衝液中のC−TAB.G5.1
群12:30μgのヒスチジン緩衝液中のC−TAB.G5.1
【0243】
第2の免疫化から2週間後(試験28日目)に、全ての動物から血液試料を回収した。分析まで血清を−20℃で保存した。C−TAB、毒素Aおよび毒素Bに対する血清抗体力価を、ELISAにより測定し、ELISA単位として報告した。
【0244】
図16は、全ての抗体力価(抗C−TAB、抗毒素Aおよび抗毒素B)が、3つのワクチン製剤において1〜30μgの容量範囲にわたって有意に異ならなかったことを示している(T−検定分析により明らかなように)。PBSと比較して、ヒスチジン緩衝液中のC−TAB.G5製剤において、若干高い抗体産生が達成された。C−TAB.G5およびC−TAB.G5.1ヒスチジン製剤での免疫化の間では有意な差は観察されなかった。したがって、本試験は、C−TAB.G5およびC−TAB.G5.1コンストラクトの同等の免疫原性を実証した。
実施例10:代替C−TABNCTBおよびC−TADCTB融合タンパク質の調製および評価。
【0245】
本実施例は、C.ディフィシル VPI−10463株から得られたCTAのC末端ドメインの1つの部分およびCTBのC末端ドメインの2つの部分を含む2つの他の融合タンパク質の調製について説明する。C−TABNCTB融合タンパク質(配列番号18)は、C−TAB.G5と同様に、CTAの19反復単位(アミノ酸2272〜2710)、CTBの23反復単位(アミノ酸1850〜2366)、およびCTBのC末端に融合したCTBのさらなる追加的な10反復(アミノ酸1834〜2057)を含む。C−TADCTB融合タンパク質(配列番号20)は、C−TAB.G5配列(CTAの19反復およびCTBの23反復)、ならびにC−TAB.G5のC末端に融合したCTBの追加的な24反復単位(アミノ酸1834〜2366)を含む。したがって、C−TADCTBは、CTBの反復単位の二重部分を含む。C−TABNCTBおよびC−TADCTB遺伝子コンストラクトのクローニングは、実施例1.1に記載のものと同様の様式で行った。組み換え融合タンパク質は、大腸菌細胞において発現され、実施例1.2に記載のような標準的手順を使用して精製した。単離ポリペプチドを、動物における免疫原性および保護試験において評価した。
実施例10.1:マウスにおけるC−TAB.G5、C−TABNCTBおよびC−TADCTBの免疫原性および保護効果の比較。
【0246】
本試験は、2対数範囲にわたる5回の抗原投薬でワクチン接種されたマウスにおける、C−TAB.G5、C−TABNCTBおよびC−TADCTBの免疫原性および保護効果を比較するためのものであった。6〜7週齢の雌C57BL/6マウス(Charles River Labs.)を本試験に使用した。全ての動物は、2回のワクチン接種を受け、第1のワクチン接種は、0日目に右大腿筋への筋肉内(IM)注射(50μl)により行われた。第2のワクチン接種は、14日目に左大腿筋へのIM注射により行った。全ての免疫化は、alumの非存在下で行った。第2の免疫化から2週間後(試験28日目)に、血液試料を回収した。分析まで血清を−20℃で保存した。C−TAB、毒素Aおよび毒素Bに対する血清抗体力価を、ELISAにより測定し、図17に示されるELISA単位(EU)として報告した。
【0247】
本試験は、代替融合タンパク質C−TADCTBおよびC−TABNCTB、ならびにC−TAB.G5が、極めて免疫原性であり、アジュバントを添加しなくても毒素Aおよび毒素Bの両方に対する強い抗体反応を誘導することができることを実証した。
【0248】
抗体反応の評価に加えて、マウスを天然毒素Bの致死的負荷から保護するC−TADCTBおよびC−TABNCTB免疫化の能力を決定した。第2のワクチン接種から3週間後(試験35日目)に、ワクチン接種および非ワクチン接種群(N=6)内の動物は、50ngの毒素Bの致死用量を腹腔内(IP)投与により受けた。マウスの生存率をその後9日間にわたり監視したが、その結果を図18に示す。本実験は、alumの非存在下での33μgのC−TADCTBによるマウスの免疫化は、天然毒素Bによる致死的負荷に対する100%の保護を付与することができるが、一方同じ用量のC−TAB.G5およびC−TABNCTBは、部分的な保護のみを誘導することを実証した。このデータは、C−TAB.G5と同様に、2つの他の融合タンパク質C−TADCTBおよびC−TABNCTBが、天然毒素による致死的負荷に対して保護的となり得ることを示している。
実施例10.2:ハムスターにおけるC−TAB.G5.1およびC−TADCTBの免疫原性および保護効果の比較。
【0249】
本試験は、異なる動物モデルにおける、alumアジュバントあり、またはなしで投与された代替融合タンパク質C−TADCTBの免疫原性をさらに評価するためのものであった。
【0250】
試験は、実施例6において説明される通りに設計された:雌ハムスターを、100μgの水酸化alumの存在下または非存在下で、IM注射により3回ワクチン接種した(試験0、14および28日目)。第3のワクチン接種から2週間後(試験42日目)に、全ての動物は、75ngの毒素Aまたは125ngの毒素Bの腹腔内(IP)注射により致死的負荷を受けた。試験14、28および35日目に血液試料を回収し、C−TAB、毒素Aおよび毒素Bに対する血清抗体力価をELISAにより決定した。毒素Aおよび毒素B中和抗体(TNA)を35日目の血清において測定した。ハムスターの生存率を監視し、保護の%として報告した。
【0251】
本試験は、融合タンパク質C−TADCTBが、マウスと同様に、ハムスターにおいて抗毒素抗体反応を誘導し得ることを実証した。alumアジュバントは、全ての試験された抗体力価を大幅に改善した。図19に示されるTNAアッセイの結果は、C−TADCTBに対して生成された抗体が、C.ディフィシル毒素Aおよび毒素Bの毒性作用の中和において効果的であることを示している。図19はまた、C−TAB.G5.1またはC−TADCTBで免疫化されたハムスターに対する保護データの比較を示す。両方の組み換え融合タンパク質でのワクチン接種により、高い保護が達成された。
実施例11:C−TAB.G5.1を含む薬学的組成物の安全性、免疫原性および用量反応を評価する非盲検第1相試験
【0252】
3つの異なる用量:Al(OH)(alum)ありで20μg、それぞれAl(OH)ありまたはなしで75μgおよび200μgで、筋肉内(IM)注射により、0、7および21日目の3回のワクチン接種で投与される、C−TAB.G5.1、切断されたクロストリジウム・ディフィシル(C.ディフィシル)毒素Aおよび毒素Bからなる組み換え融合タンパク質を含む薬学的組成物。
試験目的
主目的:
・第3のワクチン接種から6か月後までの、C−TAB.G5.1を含む薬学的組成物の安全性および忍容性を調査すること。
副次的目的:
・最適な用量および製剤の第1の指標を得るための、第1のワクチン接種後0、7、14、21、28、113、201日目における、3つの異なる用量および2種の製剤に対するワクチン抗原C−TAB.G5.1ならびにC.ディフィシルの天然毒素AおよびBに対して測定される免疫反応を調査すること。
・C.ディフィシル毒素AおよびBをin vitroで中和するC−TAB.G5.1ワクチン誘導IgG抗体の能力を調査すること。
試験デザイン
【0253】
本試験は、18歳以上65歳未満の健常成人におけるパートA、および65歳以上の健常高齢者におけるパートBからなる、非盲検部分無作為化用量増加第1相試験であり、後者の年齢群は、C.ディフィシル感染を受ける最も脆弱な集団である。パートAは、アジュバントありの20μgのC−TAB.G5.1ワクチン、およびそれぞれアジュバントありまたはなしの75μgおよび200μgのC−TAB.G5.1ワクチンの安全性およびそれに対する用量反応を試験するために、12人の健常成人対象の5つの治療群において、0、7および21日目のワクチン接種スケジュールで行う。安全性および免疫原性は、パートAの全ての成人対象が第3のワクチン接種を受けた後に分析され、全ての安全性データは、パートBからの対象の参加の前に、Data Safety Monitoring Board(DSMB)により見直される。中間解析の間に安全性のない、または効果のない治療群(すなわち、有意なIgG反応を誘導しない用量)が特定された場合、これらの治療群は中止され、パートBに持ち込まれることはない。
試験のパートBは、高齢集団における用量確定を探求するものである。したがって、パートBは、群当たり20名の高齢健常対象の5つの治療群において行う。0、7および21日目のワクチン接種スケジュールを適用する。本試験デザインにより、成人および高齢者の両方における用量反応の比較が可能となる。後者の年齢群は、C.ディフィシルワクチンの主要な標的集団であり、年齢に基づく、または年齢−リスクに基づく予防ワクチン接種手法において、C.ディフィシルワクチンの発達経路における2つの標的指標、すなわち再発性C.ディフィシル下痢の予防および原発性C.ディフィシル感染症の予防に対し最も脆弱な集団を示す。しかしながら、高齢対象は、若年成人よりもワクチン接種に対し反応性が低い可能性があり、したがって、早期発達段階からの高齢標的集団における用量確定が必要である。パートAからの全ての成人がワクチン接種された後の中間解析によって、高齢群内の対象を、ワクチンの潜在的に安全でない、または効果のない用量(例えば最低用量)および/または製剤(例えば非アジュバント製剤)に暴露するリスクを軽減するために、安全でない、または成人において有意なIgG反応を誘導しない用量/製剤を中止することができる。
C−TAB.G5.1ワクチンは、標準的方法により生成された、20mM L−ヒスチジン、75mM NaCl、5%スクロース、0.025% Tween(登録商標)80(pH6.5)中のC−TAB.G5.1の水溶液である。
配列:
【表4】
好ましい態様:
好ましいポリペプチドおよびその使用:
1.配列番号2に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む単離ポリペプチド。

2.配列番号4に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む単離ポリペプチド。

3.クロストリジウム・ディフィシルの毒素AのC末端ドメインから得られる19反復単位、およびクロストリジウム・ディフィシルの毒素BのC末端ドメインから得られる23反復単位を含む、態様1または2に記載の単離ポリペプチド。

4.配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する、態様1に記載の単離ポリペプチド。

5.配列番号4に記載のアミノ酸配列を有する、態様1に記載の単離ポリペプチド。

6.配列番号4に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド。

7.前記単離ポリペプチドをワクチン接種されたハムスターは、全ての芽胞用量(10、10および10)において、致死用量のC.ディフィシル芽胞の胃内投与に対し生存する、態様6に記載のポリペプチド。

8.クロストリジウム・ディフィシルの毒素AのC末端ドメインから得られる19反復単位を含む、態様6または7に記載のポリペプチド。

9.クロストリジウム・ディフィシルの毒素BのC末端ドメインから得られる23、33または47反復単位を含む、態様6から8のいずれか1つに記載のポリペプチド。

10.配列番号2、配列番号4、配列番号18、配列番号20および配列番号2、配列番号4、配列番号18または配列番号20のいずれかと95%、96%、97%、98%、99%同一であるポリペプチドからなる群から選択される、態様6から9のいずれか1つに記載のポリペプチド。

11.単離されている、態様6から10のいずれか1つに記載のポリペプチド。

12.医薬品における使用のための、態様6から11のいずれか1つに記載のポリペプチド。

13.CDADの予防および治療のための、態様6から11のいずれか1つに記載のポリペプチド。

14.CDADのリスクを有する対象におけるCDADの予防のための、態様6から11のいずれか1つに記載のポリペプチド。

15.CDADのリスクを有する対象におけるCDADの予防のための、態様6から11のいずれか1つに記載のポリペプチドであって、CDADのリスクを有する前記対象は、i)65歳を超える対象、もしくは2歳未満の対象;ii)AIDSを有する対象;iii)免疫抑制薬を投与されている、もしくは投与される予定がある対象;iv)入院の予定がある対象、もしくは入院している対象;v)集中治療を受けている、もしくは受ける予定がある対象;vi)消化管手術を受けている、もしくは受ける予定がある対象;vii)養護施設等の長期介護を受けている、もしくは受ける予定がある対象;viii)頻繁な、および/もしくは長期的な抗生物質の使用を必要とする共存症を有する対象;またはix)再発性CDADを有する対象である、ポリペプチド。

16.医薬品における使用のための医薬の製造のための、態様6から11のいずれか1つに記載のポリペプチドの使用。

17.CDADの予防および治療のための医薬の製造のための、態様6から11のいずれか1つに記載のポリペプチドの使用。

18.CDADのリスクを有する対象におけるCDADの予防のための医薬の製造のための、態様6から11のいずれか1つに記載のポリペプチドの使用。

19.CDADのリスクを有する対象におけるCDADの予防のための医薬の製造のための、態様6から11のいずれか1つに記載のポリペプチドの使用であって、CDADのリスクを有する前記対象は、i)65歳を超える対象、もしくは2歳未満の対象;ii)AIDSを有する対象;iii)免疫抑制薬を投与されている、もしくは投与される予定がある対象;iv)入院の予定がある対象、もしくは入院している対象;v)集中治療を受けている、もしくは受ける予定がある対象;vi)消化管手術を受けている、もしくは受ける予定がある対象;vii)養護施設等の長期介護を受けている、もしくは受ける予定がある対象;viii)頻繁な、および/もしくは長期的な抗生物質の使用を必要とする共存症を有する対象;またはix)再発性CDADを有する対象である、使用。

20.態様1から11のいずれか1つに記載のポリペプチドを含む、対象におけるC.ディフィシル感染を検出するための診断キット。

好ましい核酸:
1a.態様1から11のいずれか1つに記載のポリペプチドのいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む核酸。

2a.態様1から11のいずれか1つのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列から本質的になる、態様1aに記載の核酸。

3a.配列番号1、配列番号3、配列番号17および配列番号19の群から選択されるヌクレオチド配列を含む、態様1aまたは2aに記載の核酸。

4a.配列番号1、配列番号3、配列番号17および配列番号19の群から選択されるヌクレオチド配列から本質的になる、態様1aまたは2aに記載の核酸。

好ましい薬学的組成物:
1c.態様1から11のいずれか1つに記載のポリペプチドまたは態様1aから4aのいずれか1つに記載の核酸、および薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、薬学的組成物。

2c.C.ディフィシル毒素AおよびBの両方を中和する抗体を惹起する、態様1cに記載の薬学的組成物。

3c.C.ディフィシル毒素AおよびBに対する、対象における防御免疫反応を惹起する、態様1cまたは態様2cに記載の薬学的組成物。

4c.アジュバントをさらに含む、態様1cから3cのいずれか1つに記載の薬学的組成物。

5c.アジュバントが、alumを含む、態様4cに記載の薬学的組成物。

6c.追加的な抗原または薬物をさらに含む、態様1cから5cのいずれか1つに記載の薬学的組成物。

好ましい抗体:1d.態様1から11のいずれか1つに記載のポリペプチドに対する抗体であるが、C.ディフィシル毒素A(配列番号6)およびB(配列番号8)のいずれかまたは両方を認識しない抗体。

好ましい方法
1e.態様1から10のいずれか1つに記載のポリペプチドを生成するための方法であって、宿主細胞内に、ポリペプチドをコードする核酸を導入することと、ポリペプチドの発現を可能とする条件下で宿主細胞を培養することと、ポリペプチドを単離することとを含む方法。

2e.宿主細胞は、大腸菌である、態様1eに記載の方法。

3e.対象におけるC.ディフィシル関連疾患(CDAD)を治療および/または予防する方法であって、それを必要とする対象に、態様1から11のいずれか1つに記載の単離ポリペプチドを投与することを含む方法。

4e.対象においてC.ディフィシルの毒素AおよびBの両方に対する特異的免疫反応を誘導する方法であって、態様1から11のいずれか1つに記載のポリペプチドを対象に、または態様1cから6cのいずれか1つに記載の薬学的組成物を投与することを含む方法。

5e.対象におけるC.ディフィシル感染により引き起こされる原発性疾患を予防する方法であって、態様1から11のいずれか1つに記載のポリペプチドを対象に、または態様1cから6cのいずれか1つに記載の薬学的組成物を投与することを含む方法。

6e.C.ディフィシル関連疾患(CDAD)のリスクを有する対象における C.ディフィシル感染により引き起こされる原発性疾患を予防する方法であって、CDADのリスクを有する前記対象は、i)65歳を超える対象、もしくは2歳未満の対象;ii)AIDSを有する対象;iii)免疫抑制薬を投与されている、もしくは投与される予定がある対象;iv)入院の予定がある対象、もしくは入院している対象;v)集中治療を受けている、もしくは受ける予定がある対象;vi)消化管手術を受けている、もしくは受ける予定がある対象;vii)養護施設等の長期介護を受けている、もしくは受ける予定がある対象;viii)頻繁な、および/もしくは長期的な抗生物質の使用を必要とする共存症を有する対象;またはix)再発性CDADを有する対象であり、前記方法は、態様1から11のいずれか1つに記載のポリペプチドを前記対象に、または態様1cから6cのいずれか1つの薬学的組成物を投与することを含む方法。 7e.ポリペプチドまたは薬学的組成物は、対象に、筋肉内、皮内、皮下、経口、経鼻、または経直腸投与、好ましくは筋肉内投与される、態様1eから6eのいずれか1つに記載の方法。

8e.ポリペプチドまたは薬学的組成物は、短い間隔(1週間毎または2週間毎)に少なくとも2回以内の投薬で対象に投与される、態様1eから7eのいずれか1つに記載の方法。

9e.生体試料中のC.ディフィシルを検出する方法であって、生体試料を態様1から11のいずれか1つに記載のポリペプチドと接触させることと、生体試料に対するポリペプチドの結合を検出することとを含み、ポリペプチドの結合は、生体試料中のC.ディフィシルの存在を示す方法。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B-C】
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20A
図20B
図21
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]