【実施例】
【0181】
実施例1:C−TAB.G5およびC−TAB.G5.1単離ポリペプチドの調製。
本実施例は、大腸菌細胞における発現のためのC.ディフィシル毒素A(CTA)およびB(CTB)の一部を含む単離ポリペプチドの調製を説明する。後述の方法は、CTAおよびCTBを含む様々な単離ポリペプチドを作製するために使用され得る。一例として、CTAのC末端ドメインの一部およびCTBのC末端ドメインの一部を含む単離ポリペプチドが説明される。
実施例1.1:C−TAB.G5およびC−TAB.G5.1遺伝子コンストラクトのクローニング。
【0182】
C末端ドメインのアミノ酸2026から2710をコードするCTA遺伝子(Accession番号YP−001087137)の一部を、以下のプライマーを使用して、C.ディフィシル株630(ATCC BAA−1382)のゲノムDNAからPCRにより増幅した。
順方向:5’−caccACTAGTatgaacttagtaactggatggc−3’(配列番号9)および
逆方向:5’−CTCGAGttagccatatatcccaggggc−3’(配列番号10)。
順方向プライマーによる増幅は、SpeI部位を形成し、逆方向プライマーによる増幅は、Xhol部位を形成した。
【0183】
C末端ドメインのアミノ酸1850から2366をコードするCTB遺伝子(Accession番号:YP−00108735)の一部を、以下のプライマーを使用してPCRにより増幅した。
順方向:5’−caccATGCATatgagtttagttaatagaaaacag−3’(配列番号11)および
逆方向:5’−ggcCTCGAGctattcactaatcactaattgagc−3’(配列番号12)。
順方向プライマーによる増幅は、Nsil部位を形成し、逆方向プライマーによる増幅は、Xhol部位を形成した。
【0184】
PCR反応は、PCR Super−Mix(Invitrogen社)を使用して行った。サイクル条件は、95℃で2分、95℃で45秒、55℃で50秒、68℃で8分(30サイクル)、および72℃で10分であった。PCR生成物は、迅速遺伝子抽出キット(Invitrogen社)で精製し、PCR 2.1 TOPOベクター(Invitrogen社)にライゲーションした。ライゲーション混合物を使用して、大腸菌Mech−1細胞を熱ショックにより形質転換した。形質転換体をImMedia Amp Blue(Invitrogen社)のプレート上に播種した。白色コロニーを採取し、100μg/mlのアンピシリンを含有する4mlのLB培地を有する15ml管内で培養した。培養物を37℃で一晩インキュベートし、プラスミドを迅速プラスミドミニプレップキット(Invitrogen社)で抽出した。
【0185】
PCR 2.1−TOPO/TAベクター中のCTA遺伝子断片をSpeIおよびXhoI,で分解させ、断片を、同じくT4 DNA Ligaseを使用してSpeIおよびXhoIで分解させた中間ベクターにクローン化した。次いで、3つの制限部位(BgLII−NsiI−SacI)を含有するリンカーを、以下の合成プライマーの組を使用して、PCRによりCTA遺伝子断片の3’端部に挿入した。
順方向:5’−AGATCTATGCATGAGCTCctcgagcccaaaacgaaaggctcagc−3’(配列番号13)
逆方向:5’−cggtccggggccatatatcccaggggcttttactcc−3’(配列番号14)。
【0186】
PCR 2.1−TOPO/TB中のCTB遺伝子断片を、Nsil およびXholで分解させ、分解されたCTB遺伝子断片を、同じくNsiIおよびXhoIで分解させたCTA遺伝子およびリンカーを含有する中間ベクターにライゲーションした。CTB遺伝子をリンカーに3’位で挿入し、コンストラクト配列5’−CTA−リンカー−CTB−3’を形成した。この融合コンストラクトは、C−TAB.V1中間ベクターと呼ばれる。
【0187】
C−TAB.G5遺伝子を、以下のプライマーを使用して、C−TAB.V1中間ベクターからPCRにより増幅した。
順方向:5’−caccCCATTGatggtaacaggagtatttaaagga(配列番号15)
逆方向:5’−CTCGAGctattcactaatcactaattgagctg(配列番号16)。
PCR反応は、PCR Super mix(Invitrogen社)を使用して行った。サイクル条件は、95℃で2分、95℃で45秒、55℃で50秒、68℃で4分(30サイクル)および72℃で10分であった。PCR生成物は、迅速遺伝子抽出キット(Invitrogen社)で精製し、PCR2.1−TOPOベクター(Invitrogen社)にライゲーションした。ライゲーション混合物を使用して、大腸菌Mech−1細胞を熱ショックにより形質転換した。形質転換体をImMedia Amp Blue(Invitrogen社)のプレート上に播種した。白色コロニーを採取し、100μg/mlのアンピシリンを含有する4mlのLB培地を有する15ml管内で培養した。培養物を37℃で一晩インキュベートし、プラスミドを迅速プラスミドミニプレップキット(Invitrogen社)で抽出した。PCR 2.1−TOPOTAベクター中のC−TAB.G5融合遺伝子を、NcoIおよびXhoI 制限酵素で分解させた。これらのC−TAB断片を、同じ制限酵素で分解させたpET28発現ベクターにライゲーションした。この得られたコンストラクトは、アミノ酸1851から2366からの毒素BのC末端ドメインに融合した、アミノ酸2272から2710からの毒素AのC末端ドメインをコードする。pET28/C−TAB.G5コンストラクトを、発現のために大腸菌BL21(DE3)に形質転換した。C−TAB.G5融合遺伝子を含有する5つのコロニーを、分析のために選択した。
【0188】
C−TAB.G5.1コード配列は、大腸菌宿主細胞内での改善された発現のためのコドン最適化により得られた。コドン使用量は、大腸菌遺伝子のコドンバイアスに基づいて適合させた。さらに、mRNA半減期を延長するようにGC含量を調節し、非常に高い(>80%)または非常に低い(<30%)GC含量の領域を回避した。したがって、最適化された遺伝子は、大腸菌における高く安定な発現率を可能とする。コドン最適化されたC−TAB.G5.1遺伝子は、in situで合成し、発現ベクターpET−28b(+)にサブクローニングした。
【0189】
DNA配列決定:d−ローダミン染色によるダイターミネーターサイクル配列決定化学を使用して、プラスミドDNA配列を確認した。Jellyfishソフトウェアを使用して配列決定データを分析した。
実施例1.2:大腸菌における組み換えC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1融合タンパク質の発現
【0190】
C−TAB.G5およびC−TAB.G5.1遺伝子コンストラクトの発現は、大腸菌における発現のための標準的手順を使用して行うことができる。
【0191】
組み換えC−TAB融合タンパク質の発現のためのコロニーのスクリーニング:スクリーニングのために、コロニーを採取し、50μg/mlのカナマイシンを含む4mlのLB培地を有する15mlのFalcon管内で成長させた。管を250rpmで混合しながら37℃で一晩培養した。初期成長期の後、各管からの1mlの培養物を24ウェル組織培養プレートに移し、1mMのイソプロピル−β−D−1−チオガラクト−プラノシド(IPTG)で30℃で3時間発現を誘導した。微小遠心分離機での12,000gで1分間の遠心分離により、細胞ペレットを回収した。細胞ペレット溶解物を調製し、可溶性分画をC−TAB融合タンパク質の発現に関してSDS−PAGEおよびウェスタンブロット分析により分析した。陽性クローンをさらなる評価のために選択した。
【0192】
C−TAB.G5発現のための回分発酵:それぞれ30μg/mlカナマイシンを添加した150mlのSuper Broth培地を含有する500mlの振とうフラスコ内で、種培養物を成長させた。OD
600が2〜2.5に達するまで、培養物を275rpmで連続撹拌しながら28℃で12時間成長させた。振とうフラスコを使用して、10LのSuper Brothを含有する発酵槽を植菌した。OD
600=3.5〜4となるまで、培養物を37℃で約4.5時間成長させた。生成物発現の誘導のため、0.1mMのIPTGを添加し、25℃でさらに4時間成長を継続させた。次いで、遠心分離により細胞を回収し、細胞ペーストを−70℃で凍結保存した。この発酵プロセスにより達成された典型的な生成物特異的発現速度は、約200mg/mlであった。
【0193】
C−TAB.G5.1調製のための流加回分発酵:500μlの一定量の種バンクのグリセロールストック(−75℃で保存)を使用して、1L振とうフラスコ内の30μg/mlカナマイシンを添加した100mlの前培養培地を植菌した。前培養物を、OD
600=1.0〜2.0に達するまで、約150rpmでの一定撹拌下で37℃で約7時間インキュベートした。流加回分発酵を行うことができるプロセス制御システムを装備した標準的産業用15L発酵槽内で、25mLの前培養物を使用して7Lの回分発酵培地を植菌した。グルコースが枯渇するまで、7Lの回分培養段階を37℃で12時間実行した(OD
600=12〜15)。次いで、急激供給モードにより、特定の成長速度定数μ=0.25/時間で37℃で6時間(OD
600=40〜50)、グルコース供給段階(バイオマス生成)を開始した。一定供給段階への切り替えおよび1mM IPTG(生成物生成)の最終濃度での誘導の1時間前に、温度を30℃に低下させて、封入体形成のリスクを低減した。30℃における一定供給での生成物発現段階をさらに5時間継続し(OD
600=約100)、23時間の全発酵プロセス時間および約8.2Lの最終培養物体積を得た。遠心分離により約1.2kgの湿潤細胞バイオマスを回収し、−70℃以下で保存した。そのような流加回分発酵により達成された典型的な生成物特異的発現速度は、最大1.3g/Lであった。
実施例1.3:組み換えC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1融合タンパク質の精製。
【0194】
C−TAB.G5分析試料の精製:凍結細胞ペーストを解凍して、pH5.6の10mMクエン酸/NaOH緩衝液中に再懸濁し、細胞スラリーを550バールでホモジナイザ(GEA Niro Soaviホモジナイザ)に2回通過させた。懸濁液を2回、つまり13500rpmで30分を1回、および2回目に超遠心分離機内で18000rpmで1時間遠心分離した。上澄みをプールし、50mMクエン酸緩衝液(pH3)でpHを5.6に調節した。浄化された細胞溶解物を、pH5.6の10mMクエン酸/NaOH緩衝液と共にSP急速流動カラムに通過させた。タンパク質を、20mM NaPi中0mMから500mMに増加する塩化ナトリウムの線形勾配で溶出した。C−TAB.G5を含有する分画をプールした。蒸留H
2Oにより伝導度を5mS/cmまで下方調節した。25mMの最終濃度までトリスを添加した。プールした分画をDEAE急速流動カラムに通過させた。タンパク質を、25mMトリス中50mMから500mMに増加する塩化ナトリウムの線形勾配で溶出した。再び、C−TAB.G5を含有する分画をプールし、0.4Mの最終濃度まで1.5Mクエン酸Na(pH7.5)を添加した。C−TAB.V1プールを、25mMトリス、0.4Mクエン酸Na(pH 7.5)で平衡化されたフェノールセファロースHPカラムに投入した。C−TAB.G5融合タンパク質を、5mMトリス(pH7.5)を使用して線形勾配で低下する塩濃度で溶出した。全てのカラムを、AKTA Primeクロマトグラフィーシステムにより監視した。精製されたC−TAB融合タンパク質を、50K膜を使用してPBSに緩衝液交換した。
C−TAB.G5.1バルク調製物の精製:バイオマスを、処理まで−80℃で保存した。450gの凍結細胞ペースト(2.90Lの発酵槽に相当)を、4体積の溶解緩衝液(20mM Hepes、pH7.5、約0.6mS/cm)で希釈し(例えば450gのペースト+1800mLの緩衝液)、このようにして約1時間±0.5時間、機械的撹拌下で解凍した。随意の残りの塊を、Ultraturraxを使用して(例えば8000rpmで5分間)再懸濁することができる。細胞溶解は、Niro Soavi Panda高ホモジナイザで行う(640±25バール、3サイクル)。熱交換器を使用して溶解物を10℃未満まで冷却し、遠心分離までこの温度で維持する。粗細胞溶解物を、14000rpm(30000g)で4℃で30分間、バッチ遠心分離ステップ(Beckmann Avanti JLA 60.25)に供する。上澄みを回収してプールする。濾過ステップの詰まりのリスクを低減するために、ペレットの半液体部分も廃棄する。次いで、プールされた上澄みをSupercap PDH4 100/5インチ深さのフィルタカプセル(Pall社)(250cm
2有効濾過面積)を通して濾過する。フィルタハウジング内の残りの溶解物を、溶解緩衝液で洗い流す。浄化後、1Mトリス原液(pH7.5)の一定量を、25mM.の最終濃度まで溶解物に添加する。最終溶解物の緩衝組成物は、20mM Hepes、25mMトリス(pH7.5、伝導度約6mS/cm)である。溶解物は濾過後もまだ若干混濁している可能性があるが、これはその後の捕捉ステップに影響しない。捕捉ステップは、直径50mm、充填層高さ20cm、充填層体積約400mLの寸法を有するXK50/30カラム(GE Healthcare社)において、DEAE Sepharose FF(GE Healthcare社)で室温で行う。投入密度は、約0.8gから1.2gバイオマス/mLゲルである。プロセスは、Akta Explorerシステム(GE Healthcare社)により行い、280nmで監視する。平衡化は、100cm/時間で、約5CVの25mMトリス、20mM Hepes、25mM NaCl(pH7.5、伝導度約5mS/cm)を用いて、pH、伝導度および280nm吸光度が安定するまで行う。溶解物を75cm/時間でカラムに投入し、通過物を廃棄する。全ての濾過された溶解物を投入したら、280nm吸光度が安定化するまで、流動を約5CVの平衡化緩衝液で再開する。5CVの25mMトリス、175mM NaCl(pH7.5、伝導度19mS/cm)による洗浄ステップ2の間に不純物をカラムから除去する。3CVの25mMトリス、375mM NaCl(pH7.5、伝導度36mS/cm)での段階的溶出により、C−TABタンパク質をカラムから溶出する。280nm吸光度が増加し始めたら(通常1CV後)、C−TAB含有分画の回収を開始し、約0.5CVから1.0CVの間継続する。C−TABを含有するプールされた分画は、2〜8℃で一晩保存することができる。中間精製ステップは、直径50mm、充填層高さ20cm、充填層体積約400mLの寸法を有するXK50/30カラム(GE Healthcare社)において、SP−Sepharose FF(GE Healthcare社)で室温で行う。最大投入密度は、約4〜5mg C−TAB/mLゲルである。プロセスは、Akta Explorerシステム(GE Healthcare社)により行い、280nmで監視する。平衡化、洗浄および線形勾配溶出ステップを、過度の背圧(>4バール)により妨げられない限り、200cm/時間(65mL/分)の最大流速で行う。pH、伝導度および280nm吸光度が安定となるまで、約5〜10CVの緩衝液Gで200cm/時間で平衡化を行う。投入前に、SP−FF樹脂上へのC−TABの結合を可能とするようにDEAEプールを調節する必要がある。最終伝導度が3.5mS/cm(pH5.5±0.1)以下となるまで、SP−FF平衡化緩衝液(10mMクエン酸、2mM EDTA(pH5.5±0.1、伝導度約2mS/cm))でDEAEプールを25倍希釈する。必要な場合は、所望の伝導度を達成するために追加のMilliQ水を添加する。SP−FF上へのC−TABの結合を可能とするためには、低い伝導度が極めて重要であることに留意されたい。試料を150cm/時間でカラムに投入し、通過物を廃棄する。試料の投入後、280nm吸光度が安定化するまで、流動を約5CVの平衡化緩衝液で200cm/時間で再開する。0%平衡化緩衝液から、10CVを超える30% 20mMリン酸ナトリウム、500mM NaCl(pH7.0)まで、100cm/時間の線形勾配により溶出を行う。分画を回収し、UV280nm吸光度によりプールを行う。プールは、ピーク最大値の15%で開始し、ピーク最大値の15%で終了する。1.5Mクエン酸原液(pH8.0)を使用して、プールをすぐに400mMのクエン酸(最終pH7、約49mS/cm)まで調節する。調節されたSPFFプールは、pH7および約49mS/cmを有するべきであり、2〜8℃で一晩保存される。
【0195】
ポリッシングクロマトグラフィーステップは、直径50mm、充填層高さ15cm、充填層体積約300mLの寸法を有するXK50/30カラム(GE Healthcare社)において、Phenyl−Sepharose HP(GE Healthcare社)で室温で行う。投入密度は、約4〜5mg C−TAB/mLゲルである。プロセスは、Akta Explorerシステム(GE Healthcare社)により行い、280nmで監視する。平衡化、投入、洗浄および溶出ステップを、過度の背圧(>4バール)により妨げられない限り、100cm/時間(33mL/分)の最大流速で行う。そのような場合、流速を低下させる必要がある。平衡化は、100cm/時間で、約5〜10CVの25mMトリス、400mMクエン酸ナトリウム(pH7.5、46mS/cm)を用いて、pH、伝導度および280nm吸光度が安定するまで行う。試料を100 cm/時間でカラムに投入し、通過物を廃棄する。試料の投入後、280nm吸光度が安定化するまで、流動を約5CVの平衡化緩衝液で100cm/時間で再開する。100%平衡緩衝液/0% 5mMトリス(pH7.5、0.5mS/cm)から、20CVを超える100% 5mMトリス(pH7.5、0.5mS/cm)まで、100cm/時間の線形勾配により溶出を行う。分画を回収し、UV280nm吸光度によりプールを行う。プールは、ピーク最大値の約10〜15%で開始し、ピーク最大値の約20%で終了する。調節されたプールを、2〜8℃で一晩保存する。最終C−TAB原薬タンパク質溶液の調製は、室温で操作される30kDaカットオフ接線流濾過(TFF、Pellicon 2膜、Millipore)により達成される。タンパク質溶液は、透過物pHが6.5±0.2と等しくなるまで、製剤緩衝液(20mMヒスチジン、75mM NaCl、5%スクロース、0.025% Tween(登録商標)80(pH6.5))に対して膜分離される。
【0196】
280nmでのUV測定に従い、C−TAB(タンパク質濃度1mg/mL、1cmキュベット)の280nmにおける比吸光係数として1.566を使用して、最終タンパク質濃度を2mg/mLに調製する。
【0197】
SDS−PAGEおよびウェスタンブロット分析:全細胞溶解物および精製C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1融合タンパク質を、ベータ−メルカプトエタノールを含有するNu−Page試料緩衝液中に再懸濁し、10分間煮沸した。試料(25μl)を3〜8%トリス−アセテートゲル上に投入した。電気泳動(150Vで1時間)後、単純に青色染色によりゲルを染色することによりタンパク質を可視化し、またはウェスタンブロット分析に使用した。
【0198】
C−TAB.G5またはC−TAB.G5.1特異的発現を、毒素特異的抗体を使用したウェスタンブロット分析により決定した。10%メタノール中の1×トランスファー緩衝液を使用して、タンパク質を23Vで60分間PVDF膜に移した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中0.5%のカゼインで、膜を室温で1時間ブロックした。毒素Bに対するモノクローナル抗体(GenWay;クローンB426M)または独自に得た毒素Aに対するモルモットポリクローナル抗体(List Biological Labs)と共に、トランスファー膜を室温で2時間インキュベートした。洗浄した膜を、ホースラディッシュペルオキシダーゼ複合化抗モルモットIgGまたは抗マウスIgGと共にインキュベートした。ブロットを洗浄し、AEC基質を添加した。ブロットを穏やかに混合しながら5〜10分間インキュベートした。ブロットを水で濯ぎ、発色を停止させた。
【0199】
RBC血球凝集:毒素Bではなく毒素Aの細胞結合ドメインは、ウサギ赤血球(RBC)を凝集することができることが示されている。凝集プロセスは、毒素A がウサギRBCに対する血液抗体において見られるグリカン配列に結合した結果である。試料(C−TAB.G5および天然毒素A)を、PBS中で100μg/mlに希釈する。V字底マイクロタイタープレート内で、2倍連続希釈物をプレートにわたり2回調製し、100μg/mlから開始して50μlの希釈物を各ウェルに残す。50マイクロリットルの0.75%ウサギRBC/PBS懸濁液をマイクロタイタープレートの各ウェルに添加し、プレートを室温で1時間インキュベートする。プレート底部でのRBCペレット形成の失敗により、血球凝集が示される。試料の血球凝集力価は、RBCペレットが観察されない最大試料希釈物を有するウェル内に存在するタンパク質の濃度により表現される。
実施例2:マウスにおけるalumの存在下および非存在下での組み換えC−TAB.G5融合タンパク質の用量力価測定。
【0200】
本試験は、C−TAB有効性アッセイとしての、alumアジュバントあり、およびなしでのC−TAB.G5のin vivo用量力価測定の実現可能性を決定するためのものであった。使用したalumは、Alydragel(水酸化alum、Brenntag社)であった。8週から9週齢の間のC57BL/6雌マウス(Charles River Labs.)を、免疫化に使用した。全ての動物は、0日目に右大腿筋への筋肉内(IM)注射(50μl)による第1の免疫化を受けた。第2の免疫化は、14日目に左大腿筋へのIM注射により行った。全部で72匹のマウスを、以下のようにワクチン接種された12の群に分割した。
・群1:PBSのみ
・群2:100(154)ngのC−TAB.G5
・群3:300(462)ngのC−TAB.G5
・群4:1,000(1,540)ngのC−TAB.G5
・群5:3,000(4,620)ngのC−TAB.G5
・群6:10,000(15,400)ngのC−TAB.G5
・群7:50μgのalumを含むPBS
・群8:50μgのalum OHを含む10.0(15.4)ngのC−TAB.G5
・群9:50μgのalum OHを含む30.0(46.2)ngのC−TAB.G5
・群10:50μgのalum OHを含む100(154)ngのC−TAB.G5
・群11:50μgのalum OHを含む300(462)ngのC−TAB.G5
・群12:50μgのalum OHを含む1,000(1,540)ngのC−TAB.G5
【0201】
本試験では、まず、標準プロトコルQuick Start(商標)Bradford Protein Assay(Bio−Rad社)に従い、タンパク質濃度を測定した。後に、実施例1.3に記載の手順に従い、280nmでのUV測定によりタンパク質濃度(括弧内に示す)を再び測定した。追跡調査では、UV法によりタンパク質濃度を測定した。
【0202】
第1の免疫化から2週間後(試験14日目)、および第2の免疫化から2週間後(試験28日目)に、全ての動物から血液試料を回収した。分析まで血清を−20℃で保存した。
【0203】
血清IgG ELISA:C−TAB.G5もしくはC−TAB.G5.1(C−TABと呼ばれる)、毒素Aおよび毒素Bまたはそのトキソイドに対し惹起された血清抗体を、酵素免疫測定法(ELISA)において評価した。簡潔に述べると、1.0μg/mlの毒素A、毒素BまたはC−TAB.G5単離ポリペプチドの原液を、PBS中で調製し、100μlを96ウェルプレートの各ウェルに加えた。4℃で一晩のインキュベーション後、プレートを洗浄し、0.5%カゼインブロック緩衝液でブロックした。プレートを再び洗浄し、試験血清の連続2倍希釈物をプレートに加えた。第2の4℃で一晩のインキュベーション後、プレートを洗浄し、ペルオキシダーゼ複合化抗マウスIgG(H+L)と共にインキュベートした。室温で2時間のインキュベーション後、プレートを再び洗浄し、ペルオキシダーゼ基質(2,2’−アジノビス(3−エチルベンズチアゾリン−6−スルホネート)を添加し、室温で2時間発色させた。50μlの2%SDSをウェルに添加することにより、反応を停止させた。プレートを405nmの吸収でELISAプレートリーダーで読み出した。血清抗体力価は、ELISA単位の幾何平均として報告されるが、これは、1.0のOD 405nm読み出しをもたらす血清希釈である。陰性対照として、第1の免疫化の前にプレブリードされた動物から得られた事前免疫化血清のプール試料を使用して、抗体反応を評価した。
【0204】
C−TAB.G5を与えられた動物は、抗体力価の用量依存的な増加を示し、alumアジュバントは、より低いC−TAB.G5の用量で大幅に改善された抗体力価を可能にした。
図3は、抗C−TAB、抗毒素Aおよび抗毒素B IgGの力価を示す。
図4は、alumの存在下または非存在下での抗体力価のグラフ比較を示す。
実施例3:マウスにおけるC−TAB.G5の免疫原性および保護効果
【0205】
本試験は、C.ディフィシル毒素Aまたは毒素Bの致死的負荷を受けたワクチン接種マウスにおける、C−TAB.G5の免疫原性および保護効果を評価するためのものであった。6〜7週齢の雌C57BL/6マウス(Charles River Labs.)を本試験に使用した。全ての動物は、0日目に右大腿筋への筋肉内(IM)注射(50μl)による第1のワクチン接種を受けた。第2のワクチン接種は、14日目に左大腿筋へのIM注射により行った。116匹のマウスを、以下のようにワクチン接種された群に分割した。
・群1:PBSのみ
・群2:3μgのC−TAB.G5
・群3:10μgのC−TAB.G5
・群4:30μgのC−TAB.G5
・群5:3μgのC−TAB.G5+50μgのalum OH
・群6:10μgのC−TAB.G5+50μgのalum OH
・群7:30μgのC−TAB.G5+50μgのalum OH
・群8:PBSのみ
・群9:3μgのC−TAB.G5
・群10:10μgのC−TAB.G5
・群11:30μgのC−TAB.G5
・群12:3μgのC−TAB.G5+50μgのalum OH
・群13:10μgのC−TAB.G5+50μgのalum OH
・群14:30μgのC−TAB.G5+50μgのalum OH
【0206】
第2の免疫化から2週間後(試験28日目)に、全ての動物から血液試料を回収した。分析まで血清を−20℃で保存した。次いで、C−TAB、毒素Aおよび毒素Bに対する血清抗体力価を、ELISAにより測定し、ELISA単位(EU)として報告した。
【0207】
図5は、第2の免疫化から2週間後(試験28日目)に評価された、マウスにおけるC−TAB、毒素Aおよび毒素Bに対する血清抗体力価を示す。本試験は、C−TAB.G5融合タンパク質がマウスにおいて極めて免疫原性であり、アジュバントを添加しなくても、毒素Aおよび毒素Bの両方に対して強い抗体反応を誘導し得ることを示した。C−TAB.G5免疫原性は、水酸化alumとの併用送達により大きく増強され得る(1対数超)。alumあり、またはなしでC−TAB.G5を与えられた動物は、片対数用量範囲にわたり抗体反応の2倍の増加を示した。
【0208】
抗体力価の評価に加えて、C−TAB.G5による免疫化により生成された抗体を、in vitro毒素中和アッセイ(TNA)において、天然毒素AおよびBを中和する能力に関して評価した。
【0209】
毒素中和抗体アッセイ(TNA)。in vitro分析のために、125μlの毒素A(5ng/ml)または毒素B(1ng/ml)を、免疫化マウスから得られた抗血清の125μlの連続希釈物と共にインキュベートした。37℃で1時間のインキュベーション後、毒素:血清混合物を、Vero細胞(サル腎臓細胞)を含有するマイクロタイターウェルに加え、マイクロタイタープレートを18時間インキュベートした。毒素AまたはBおよびVero細胞のインキュベーションは、細胞形態の変化、および非接着性細胞の除去後の毒素処理細胞の中性赤色染色により測定される細胞接着の喪失をもたらした。血清の毒素中和力価は、毒素活性の50%低減をもたらす血清希釈として報告される。
【0210】
TNAアッセイの結果を
図6に示す。データは、C−TAB.G5のみでの免疫化後に生成された抗体が、天然毒素Aの毒性活性を中和することができるが、毒素Bは中和できないことを示している。C−TAB.G5がalumと併用送達された場合、TNA力価は、抗毒素A TNAにおいて約6倍の増加を伴って増強され、抗毒素B TNAにおいてはわずかに2分の1低い力価であった。このデータは、C−TAB.G5単離ポリペプチドが、天然毒素中に存在する抗体認識抗原エピトープを保持するだけでなく、機能的毒素中和抗体の生成に必要とされる重要な抗原エピトープも含むことを示している。このように、C−TAB.G5は、C.ディフィシル毒素Aおよび毒素Bの毒性作用の中和に効果的であり、したがってワクチン接種に有用である。
【0211】
抗体反応の評価に加えて、マウスを天然毒素の致死的負荷から保護するC−TAB.G5免疫化の能力を決定した。第2のワクチン接種から3週間後(試験35日目)に、ワクチン接種および非ワクチン接種群(N=8)内の動物は、25ngの毒素Aまたは50ngの毒素Bの致死用量を腹腔内(IP)投与により受けた。マウスの生存率をその後9日間にわたり監視したが、その結果を
図6に示す。本実験は、alumアジュバントの非存在下でのC−TAB.G5によるマウスの免疫化が、天然毒素Aによる致死的負荷に対し100%の保護、および毒素B負荷に対する50%の保護を付与することができることを実証した。C−TAB.G5のAlumとの併用送達は、毒素Bに対する保護免疫を100%保護まで向上させた。このデータは、C−TAB.G5ワクチン接種が、致死的負荷モデルにおいて、マウスを毒素Aおよび毒素Bの両方の毒性作用から保護するのに十分な免疫反応を誘導することを示している。
実施例4:幼若および老齢マウスにおける、C−TAB.G5の免疫原性および保護効果の評価。
【0212】
本試験は、幼若および老齢マウスにおけるC−TAB.G5に対する免疫反応を比較するためのものであった。それぞれ6〜7週齢および18ヶ月齢の雌C57BL/6マウス(Charles River Labs.)を本試験に使用した。全ての動物は、0日目に右大腿筋への筋肉内(IM)注射(50μl)による第1のワクチン接種を受けた。第2のワクチン接種は、14日目に左大腿筋へのIM注射により行った。192匹のマウスを、以下のようにワクチン接種された群に分割した。
−群1:幼若マウスへのPBS
−群2:老齢マウスへのPBS
−群3:幼若マウスへの10μgのC−TAB.G5
−群4:幼若マウスへの30μgのC−TAB.G5
−群5:老齢マウスへの10μgのC−TAB.G5
−群6:老齢マウスへの30μgのC−TAB.G5
−群7:幼若マウスへの10μgのC−TAB.G5+50μgのalum OH
−群8:幼若マウスへの30μgのC−TAB.G5+50μgのalum OH
−群9:老齢マウスへの10μgのC−TAB.G5+50μgのalum OH
−群10:老齢マウスへの30μgのC−TAB.G5+50μgのalum OH
−群11:幼若マウスへのPBS
−群12:老齢マウスへのPBS
−群13:幼若マウスへの10μgのC−TAB.G5
−群14:幼若マウスへの30μgのC−TAB.G5
−群15:老齢マウスへの10μgのC−TAB.G5
−群16:老齢マウスへの30μgのC−TAB 5
th
−群17:幼若マウスへの10μgのC−TAB.G5+50μgのalum OH
−群18:幼若マウスへの30μgのC−TAB.G5+ 50μgのalum OH
−群19:老齢マウスへの10μgのC−TAB.G5+50μgのalum OH
−群20:老齢マウスへの30μgのC−TAB.G5+50μgのalum OH
【0213】
第2のワクチン接種から3週間後(試験35日目)に、ワクチン接種および非ワクチン接種群(N=6)内の動物は、25ngの毒素Aまたは50ngの毒素Bの腹腔内(IP)注射により致死的負荷を受けた。マウスの生存率をその後9日間にわたり監視した。
【0214】
第1の免疫化から2週間後(試験14日目)、および第2の免疫化から2週間後(試験28日目)に、全ての動物から血液試料を回収した。分析まで血清を−20℃で保存した。次いで、C−TAB、毒素Aおよび毒素Bに対する血清抗体力価を、ELISAにより測定し、ELISA単位(EU)として報告した。毒素Aおよび毒素B中和抗体(TNA)を、細胞毒性量の組み換え毒素Aおよび毒素Bで処理されたVero細胞を使用して決定した。
【0215】
C−TAB.G5ワクチンを与えられた幼若動物は、老齢動物と比較してより大幅に高いレベルの試験した全ての抗体を示した。水酸化alumの存在下でC−TAB.G5をワクチン接種された幼若マウスにおいて特に高い抗体力価が得られた(
図7)。毒素B TNA力価において特に顕著な改善が達成された。同時に、毒素Aおよび毒素B負荷に耐える能力において、幼若マウスと老齢マウスとの間に大きな差はなかった。しかしながら、両群とも、alumの存在下でワクチン接種された場合、改善された保護率を示した。
図7は、幼若マウス対老齢マウスにおけるC−TAB.G5免疫原性および保護効果の比較を示す。
図8は、幼若および老齢マウスにおける抗C−TAB抗体増加の反応速度を示す。
実施例5:C−TAB.G5.1ならびにとトキソイドAおよびBの免疫原性および保護効果の比較。
【0216】
本試験は、C−TAB.G5.1対トキソイドA/Bの免疫原性および保護効果を比較するためのものであった。使用したトキソイドA/Bは、等量(1:1)のトキソイドA(ロット#1009132)およびトキソイドB(ロット#1009133)の混合物であった。トキソイドは、ホルマリン固定により調製され、TechLabにより提供された。6〜7週齢の雌C57BL/6マウス(Charles River Labs.)を本試験に使用した。全ての動物は、0日目に右大腿筋への筋肉内(IM)注射(50μl)による第1のワクチン接種を受けた。第2のワクチン接種は、14日目に左大腿筋へのIM注射により行った。180匹のマウスを、以下のようにワクチン接種された群に分割した。
−群1:PBSのみ
−群2:10μgのC−TAB.G5.1
−群3:30μgのC−TAB.G5.1
−群4:10μgのC−TAB.G5.1+50μgのalum OH
−群5:10μgのC−TAB.G5.1+50μgのalum OH
−群6:30μgのトキソイドA/B
−群7:10μgのトキソイドA/B
−群8:30μgのトキソイドA/B+50μgのalum OH
−群9:30μgのトキソイドA/B+50μgのalum OH
−群10:PBS
−群11:10μgのC−TAB.G5.1
−群12:30μgのC−TAB.G5.1
−群13:10μgのC−TAB.G5.1+50μgのalum OH
−群14:30μgのC−TAB.G5.1+50μgのalum OH
−群15:10μgトキソイドA/B
−群16:30μgのトキソイドA/B
−群17:10μgのトキソイドA/B+50μgのalum OH
−群18:30μgのトキソイドA/B+50μgのalum OH
【0217】
第2のワクチン接種から3週間後(試験35日目)に、ワクチン接種および非ワクチン接種群(N=6)内の動物は、28ngの毒素Aまたは50ngの毒素Bの腹腔内(IP)注射により致死的負荷を受けた。マウスの生存率をその後9日間にわたり監視した。
【0218】
第1の免疫化から2週間後(試験14日目)、および第2の免疫化から2週間後(試験28日目)に、全ての動物から血液試料を回収した。分析まで血清を−20℃で保存した。次いで、C−TAB、毒素Aおよび毒素Bに対する血清抗体力価を、ELISAにより測定し、ELISA単位(EU)として報告した。毒素Aおよび毒素B中和抗体(TNA)を、細胞毒性量の組み換え毒素Aおよび毒素Bで処理されたVero細胞を使用して決定した。
【0219】
本研究は、2回のワクチン接種後のマウスにおけるC−TAB.G5.1およびトキソイドA/Bの免疫原性および保護効果を実証する。C−TAB.G5.1を与えられた動物は、トキソイドA/Bを与えられた動物と比較して、より低いが有意な抗C−TAB抗体力価を示した。また、alumの併用送達は、全ての試験された抗体反応を大きく増強した。結果として、alumの存在下でC−TAB.G5.1またはトキソイドA/Bで免疫化された動物において達成された抗C−TABおよび抗毒素A抗体のレベルは、同様である。マウスがC−TAB.G5.1で免疫化された場合、トキソイドA/Bで免疫化されたマウスと比較して、抗毒素B抗体は僅かにより低い抗体力価が観察された。注目すべきことに、毒素分子のC末端部分におけるC−TAB.G5.1認識エピトープに対して生成された抗体とは異なり、トキソイド免疫化により誘導された抗体は、毒素分子のN末端部分に特異的であり、これは抗毒素ELISAにおいて読み出された。したがって、C−TAB.G5.1およびトキソイドA/Bで免疫化されたマウスにおいて生成された抗毒素Aおよび抗毒素B抗体は、異なる特異性の抗体であり、したがって直接比較することはできない。しかしながら、データは、C−TAB.G5.1免疫化に対する抗体反応が、トキソイドによる免疫化の場合と同様に著しく高いことを示している。さらに、毒素負荷試験は、マウスを致死的負荷から保護するC−TAB.G5.1免疫化の能力が、トキソイドAおよびBの保護効果に匹敵することを実証した。
図9は、C−TAB.G5.1およびトキソイドA/Bの免疫原性の比較を示す。
図10は、トキソイドA/Bで免疫化されたマウスと比較して、C−TAB.G5.1で免疫化されたマウスに対する毒素中和および保護データを示す。
実施例5.1:異なる免疫化計画におけるC−TAB.G5.1の抗体力価および保護効果の比較。
【0220】
本研究は、異なる免疫化計画で3回のワクチン投薬を受けたマウスにおける、C−TAB.G5.1の免疫原性および保護効果を比較するためのものであった。6〜7週齢の雌C57BL/6マウス(Charles River Labs.)を本試験に使用した。135匹のマウスを、14の群に分割した。群番号2〜13における全ての動物は、以下に示す日に、右大腿筋または左大腿筋への筋肉内(IM)注射(50μl)により、3回のワクチン接種を受けた。群1および8内のマウスは、ワクチン接種を受けず、陰性対照として役立った。以下のように免疫化を行った。
【0221】
【表3】
【0222】
試験0、3、7、14、21、28、35および42日目に、全ての動物から血液試料を回収した。分析まで血清を−20℃で保存した。C−TAB、毒素Aおよび毒素Bに対する血清抗体力価を、ELISAにより測定し、ELISA単位(EU)として報告した。試験42日目に、毒素Aおよび毒素B中和抗体(TNA)を、細胞毒性量の組み換え毒素Aおよび毒素Bで処理されたVero細胞を使用して決定した。
【0223】
最後のワクチン接種から3週間後(試験49日目)に、ワクチン接種および非ワクチン接種群(N=8)内の動物は、28ngの毒素Aまたは50ngの毒素Bの腹腔内(IP)注射により致死的負荷を受けた。マウスの生存率をその後9日間にわたり監視した。
【0224】
本試験は、第3のワクチン接種から2週間後または試験35および42日目に測定された全ての抗体力価が、全ての免疫計画において同等であるが、0/14/28の免疫化計画が最良の免疫反応を示すことを実証している。第2のワクチン接種から2週間後に測定された抗体力価を比較すると、0/14/28の免疫化計画が、0/7/21の免疫化計画よりも良好であり、0/3/14の免疫化計画よりもはるかに良好である。本試験により、抗原が水酸化アルミニウムと併用注射された場合、抗毒素A/B抗体力価が大幅に向上することが確認された(データは示さず)。試験はまた、alumと共に2回のワクチン投薬が2週間の間隔をおいて行われた場合でも、3回のワクチン投薬後に得られるレベルに匹敵する高い抗体レベルを惹起し得ることを示している。
【0225】
毒素A/B中和抗体のレベルは、0/7/21および0/14/28の免疫化計画において、0/3/14の免疫化計画よりもはるかに高い。
【0226】
毒素Aによる負荷に対する完全な保護は、0/7/21および0/14/28の免疫化計画においてalumを必要としないが、0/3/14においては必要とする。alumありでの0/14/28の免疫化計画は、毒素B負荷に対して最も高いレベルの保護(87.5%)を誘導し、一方0/7/21の免疫化計画は、37.5%の保護を提供し、0/3/14は、28.6%の保護を示す。本試験の結果を
図20に示す。
実施例6:ハムスターにおける組み換えC−TAB.G5.1融合タンパク質の免疫原性および保護効果の評価。
【0227】
本試験は、異なる動物モデルにおける、アジュバントあり、またはなしで投与された組み換え融合タンパク質C−TAB.G5.1の免疫原性をさらに評価するためのものであった。
【0228】
7週齢を超える体重80gから90gの雌ハムスター(Harlan社)を本試験に使用した。全ての動物は、0日目に右大腿筋へのボーラス(50μl)筋肉内(IM)注射による第1のワクチン接種を受けた。第2のワクチン接種は14日目に左大腿筋へのIM注射により行われ、第3のワクチン接種は28日目にIM注射により行われた。ハムスターを群(N=6)に分割し、以下のようにワクチン接種した。
・群1:製剤緩衝液のみ
・群2:10μgのC−TAB.G5.1
・群3:10μgのC−TAB.G5.1+100μgのalum OH
・群4:30μgのC−TAB.G5.1
・群5:30μgのC−TAB.G5.1+100μgのalum OH
・群6:100μgのC−TAB.G5.1
・群7:100μgのC−TAB.G5.1+100μgのalum OH
・群10:製剤緩衝液のみ
・群11.10μgのC−TAB.G5.1
・群12.10μgのC−TAB.G5.1+100μgのalum OH
・群13.30μgのC−TAB.G5.1
・群14.30μgのC−TAB.G5.1+100μgのalum OH
・群15.100μgのC−TAB.G5.1
・群16.100μgのC−TAB.G5.1+100μgのalum OH
【0229】
第3のワクチン接種から2週間後(試験42日目)に、ワクチン接種および非ワクチン接種群(N=6)内の動物は、75ngの毒素Aまたは125ngの毒素Bの腹腔内(IP)注射により致死的負荷を受けた。44日目に毒素Aまたは毒素B負荷の用量力価測定にさらに12匹のハムスターを使用した。ハムスターの生存率をその後8日間にわたり監視した。
【0230】
第1の免疫化から2週間後(試験14日目)、第2の免疫化から2週間後(試験28日目)、および第3の免疫化から2週間後(試験35日目)に、全ての動物から血液試料を回収した。分析まで血清を−20℃で保存した。次いで、C−TAB、毒素Aおよび毒素Bに対する血清抗体力価を、ELISAにより測定し、ELISA単位(EU)として報告した。毒素Aおよび毒素B中和抗体(TNA)を、細胞毒性量の組み換え毒素Aおよび毒素Bで処理されたVero細胞を使用して決定した。
【0231】
本試験は、ハムスターが、マウスと同様に、C−TAB.G5.1ワクチン接種に肯定的に反応することを実証した。C−TAB.G5.1を与えられた動物は、全ての試験された抗体力価において用量依存的な増加を示し、一方alumアジュバントは、C−TAB.G5の全ての用量において抗体力価を大幅に改善した。最大の抗体力価は、第2の投与から2週間後(試験28日目)に観察された。
図11(A〜C)は、免疫化されたハムスターの各群に対する抗体力価を示す。
図12は、水酸化alumの存在下または非存在下でのC−TAB.G5で免疫化されたハムスターにおける抗C−TAB抗体増加の反応速度を示す。
【0232】
TNAアッセイの結果を
図13に示す。これらの結果は、マウスに対して得られたものと同様であり、ハムスターにおいてC−TAB.G5.1融合タンパク質に対して生成された抗体が、C.ディフィシル毒素Aおよび毒素Bの毒性作用の中和に効果的であることを示している。
【0233】
また、
図13は、致死的毒素負荷後のC−TAB.G5.1で免疫化されたハムスターにおける保護データを示す。アジュバントの非存在下でのC−TAB.G5.1によるワクチン接種でも、高い保護が達成された。ワクチンにalumを添加することにより、保護レベルは100%まで改善された。
実施例7:クリンダマイシン処理ハムスターにおけるC.ディフィシル芽胞負荷に対するC−TAB.G5.1融合タンパク質の保護効果。
【0234】
抗生物質治療後、C.ディフィシルは、消化管にコロニー形成する可能性があり、毒素を生じる場合は、抗生物質関連下痢を引き起こし得る。人間のC.ディフィシル関連疾患(CDAD)は、動物をコロニー形成、下痢および死亡し易くするために、通常は毒素産生株での植菌から数日以内にクリンダマイシンを使用してハムスターにおいてモデル化される。C−TAB.G5.1ワクチン有効性を評価するために、ワクチン接種および非ワクチン接種ハムスターにクリンダマイシンおよびC.ディフィシル株630を負荷した。100μgのC−TAB.G5.1を、125μgの水酸化alumアジュバントと混合した。体重約100gの雌成体ハムスターが、0、14および28日目に筋肉内(IM)注射により3回のワクチン接種を受けた。プラセボはPBSであった。48匹のハムスターを、以下のようにワクチン接種される8匹の群に分割した。
群1:PBSのみ+10
2芽胞負荷
群2:C−TAB.G5.1+10
2芽胞負荷
群3:PBSのみ+10
3芽胞負荷
群4:C−TAB.G5.1+10
2芽胞負荷
群5:PBSのみ+10
4芽胞負荷
群6:C−TAB.G5.1+10
4芽胞負荷
【0235】
42日目に、全ての群内の全ての動物は、10mgリン酸クリンダマイシン/kg体重の経口投薬を受けた。43日目に、全ての群内の全ての動物に、C.ディフィシル株630の洗浄芽胞を強制経口投与により投薬した。3つのレベルの芽胞負荷を使用した(約10
2、10
3および10
4)。治療を行わずに観察を54日目まで継続した。試験の終了時に、全ての生存動物は、5日間以上疾患を有さなかった。
【0236】
0、14、28、42および54日目(試験終了)に、血液試料を採取して、血清学的試験のための血清を得た。1日目および42日目に、ハムスターの肛門から直接、または必要に応じて寝床の中から糞便を回収した。
【0237】
結果を、ハムスターにおける芽胞負荷後の生存率曲線を示す
図14に示す。生存率データは、Kaplan−Meier生存率適合曲線としてプロットし、統計分析はログランク分析を使用して行った。全ての芽胞用量において、ワクチン接種群内のハムスターの100%生存率が観察され、プラセボ群と比較して生存率が有意に向上した:10
2芽胞でp=0.0245、10
3芽胞でp=0.0006、10
4芽胞でp<0.0001。
実施例8:サルにおけるC−TAB.G5.1の免疫原性および保護効果。
【0238】
本試験は、カニクイザルにおけるC−TAB.G5.1の免疫原性および保護を評価するためのものであった。4歳から6歳の間の年齢および2kgから4kgの間の体重の6匹の雌のカニクイザルを、本試験に使用した。3匹のサルの2つの群を準備し、第1の群(群1)に200μgのC−TAB.G5.1を与え、第2の群(群2)に200μgのC−TAB.G5.1および250μgのalumを与えた。alumアジュバントとして、Rehydragel(Reheis社、ロット#534401、PBS中で2mg/mlに希釈)を使用した。血液採取または免疫化の前に、(必要に応じて)動物を剃毛した。
【0239】
第1(試験0日目)および第3(試験28日目)の免疫化は左腕(三角筋)に施し、第2の免疫化(試験14日目)は右腕(三角筋)に施した。群1には、0.5ml 1×PBS中の200μgのC−TAB.G5.1のみをIM注射により与え、群2には、0.5ml 1×PBS中の200μgのC−TAB.G5.1および250μgのalumをIM注射により与えた。
【0240】
確立された時点(試験0、14、28および42日目)に、標準的方法により得た2〜3mLの全血を血清分離管に採取した。血清試料を約−20℃で凍結した。次いで、ELISA法を使用して、抗C−TAB、抗毒素Aおよび抗毒素B IgG力価を評価した。抗体力価は、ELISA単位(EU)で示された。
【0241】
図15は、増加用量のC−TAB.G5.1が、3つ全てのタンパク質を認識する抗体産生の増加をもたらし、一方alumの存在が抗体レベルを大幅に改善したことを示している。最大抗体力価は、42日目の2回のワクチン接種において観察された。これらのデータは、それを必要とする対象のワクチン接種のための組み換えC−TAB.G5またはC−TAB.G5.1融合タンパク質の使用の実現可能性を明確に示している。
実施例9:C−TAB.G5およびC−TAB.G5.1の免疫原性の比較。
【0242】
本試験は、C−TAB.G5およびC−TAB.G5.1の免疫原性、ならびにC−TABが供給される2つの異なる緩衝液の効果を比較するためのものであった。8週から9週齢の間のC57BL/6雌マウス(Charles River Labs.)を免疫化に使用した。全ての動物は、0日目に右大腿筋への筋肉内(IM)注射(50μl)による第1の免疫化を受けた。第2の免疫化は、14日目に左大腿筋へのIM注射により行った。全部で72匹のマウスを、以下のようにワクチン接種された12の群に分割した。
群1:1μgのPBS中のC−TAB.G5
群2:3μgのPBS中のC−TAB.G5
群3:10μgのPBS中のC−TAB.G5
群4:30μgのPBS中のC−TAB.G5
群5:1μgのヒスチジン緩衝液中のC−TAB.G5
群6:3μgのヒスチジン緩衝液中のC−TAB.G5
群7:10μgのヒスチジン緩衝液中のC−TAB.G5
群8:30μgのヒスチジン緩衝液中のC−TAB.G5
群9:1μgのヒスチジン緩衝液中のC−TAB.G5.1
群10:3μgのヒスチジン緩衝液中のC−TAB.G5.1
群11:10μgのヒスチジン緩衝液中のC−TAB.G5.1
群12:30μgのヒスチジン緩衝液中のC−TAB.G5.1
【0243】
第2の免疫化から2週間後(試験28日目)に、全ての動物から血液試料を回収した。分析まで血清を−20℃で保存した。C−TAB、毒素Aおよび毒素Bに対する血清抗体力価を、ELISAにより測定し、ELISA単位として報告した。
【0244】
図16は、全ての抗体力価(抗C−TAB、抗毒素Aおよび抗毒素B)が、3つのワクチン製剤において1〜30μgの容量範囲にわたって有意に異ならなかったことを示している(T−検定分析により明らかなように)。PBSと比較して、ヒスチジン緩衝液中のC−TAB.G5製剤において、若干高い抗体産生が達成された。C−TAB.G5およびC−TAB.G5.1ヒスチジン製剤での免疫化の間では有意な差は観察されなかった。したがって、本試験は、C−TAB.G5およびC−TAB.G5.1コンストラクトの同等の免疫原性を実証した。
実施例10:代替C−TABNCTBおよびC−TADCTB融合タンパク質の調製および評価。
【0245】
本実施例は、C.ディフィシル VPI−10463株から得られたCTAのC末端ドメインの1つの部分およびCTBのC末端ドメインの2つの部分を含む2つの他の融合タンパク質の調製について説明する。C−TABNCTB融合タンパク質(配列番号18)は、C−TAB.G5と同様に、CTAの19反復単位(アミノ酸2272〜2710)、CTBの23反復単位(アミノ酸1850〜2366)、およびCTBのC末端に融合したCTBのさらなる追加的な10反復(アミノ酸1834〜2057)を含む。C−TADCTB融合タンパク質(配列番号20)は、C−TAB.G5配列(CTAの19反復およびCTBの23反復)、ならびにC−TAB.G5のC末端に融合したCTBの追加的な24反復単位(アミノ酸1834〜2366)を含む。したがって、C−TADCTBは、CTBの反復単位の二重部分を含む。C−TABNCTBおよびC−TADCTB遺伝子コンストラクトのクローニングは、実施例1.1に記載のものと同様の様式で行った。組み換え融合タンパク質は、大腸菌細胞において発現され、実施例1.2に記載のような標準的手順を使用して精製した。単離ポリペプチドを、動物における免疫原性および保護試験において評価した。
実施例10.1:マウスにおけるC−TAB.G5、C−TABNCTBおよびC−TADCTBの免疫原性および保護効果の比較。
【0246】
本試験は、2対数範囲にわたる5回の抗原投薬でワクチン接種されたマウスにおける、C−TAB.G5、C−TABNCTBおよびC−TADCTBの免疫原性および保護効果を比較するためのものであった。6〜7週齢の雌C57BL/6マウス(Charles River Labs.)を本試験に使用した。全ての動物は、2回のワクチン接種を受け、第1のワクチン接種は、0日目に右大腿筋への筋肉内(IM)注射(50μl)により行われた。第2のワクチン接種は、14日目に左大腿筋へのIM注射により行った。全ての免疫化は、alumの非存在下で行った。第2の免疫化から2週間後(試験28日目)に、血液試料を回収した。分析まで血清を−20℃で保存した。C−TAB、毒素Aおよび毒素Bに対する血清抗体力価を、ELISAにより測定し、
図17に示されるELISA単位(EU)として報告した。
【0247】
本試験は、代替融合タンパク質C−TADCTBおよびC−TABNCTB、ならびにC−TAB.G5が、極めて免疫原性であり、アジュバントを添加しなくても毒素Aおよび毒素Bの両方に対する強い抗体反応を誘導することができることを実証した。
【0248】
抗体反応の評価に加えて、マウスを天然毒素Bの致死的負荷から保護するC−TADCTBおよびC−TABNCTB免疫化の能力を決定した。第2のワクチン接種から3週間後(試験35日目)に、ワクチン接種および非ワクチン接種群(N=6)内の動物は、50ngの毒素Bの致死用量を腹腔内(IP)投与により受けた。マウスの生存率をその後9日間にわたり監視したが、その結果を
図18に示す。本実験は、alumの非存在下での33μgのC−TADCTBによるマウスの免疫化は、天然毒素Bによる致死的負荷に対する100%の保護を付与することができるが、一方同じ用量のC−TAB.G5およびC−TABNCTBは、部分的な保護のみを誘導することを実証した。このデータは、C−TAB.G5と同様に、2つの他の融合タンパク質C−TADCTBおよびC−TABNCTBが、天然毒素による致死的負荷に対して保護的となり得ることを示している。
実施例10.2:ハムスターにおけるC−TAB.G5.1およびC−TADCTBの免疫原性および保護効果の比較。
【0249】
本試験は、異なる動物モデルにおける、alumアジュバントあり、またはなしで投与された代替融合タンパク質C−TADCTBの免疫原性をさらに評価するためのものであった。
【0250】
試験は、実施例6において説明される通りに設計された:雌ハムスターを、100μgの水酸化alumの存在下または非存在下で、IM注射により3回ワクチン接種した(試験0、14および28日目)。第3のワクチン接種から2週間後(試験42日目)に、全ての動物は、75ngの毒素Aまたは125ngの毒素Bの腹腔内(IP)注射により致死的負荷を受けた。試験14、28および35日目に血液試料を回収し、C−TAB、毒素Aおよび毒素Bに対する血清抗体力価をELISAにより決定した。毒素Aおよび毒素B中和抗体(TNA)を35日目の血清において測定した。ハムスターの生存率を監視し、保護の%として報告した。
【0251】
本試験は、融合タンパク質C−TADCTBが、マウスと同様に、ハムスターにおいて抗毒素抗体反応を誘導し得ることを実証した。alumアジュバントは、全ての試験された抗体力価を大幅に改善した。
図19に示されるTNAアッセイの結果は、C−TADCTBに対して生成された抗体が、C.ディフィシル毒素Aおよび毒素Bの毒性作用の中和において効果的であることを示している。
図19はまた、C−TAB.G5.1またはC−TADCTBで免疫化されたハムスターに対する保護データの比較を示す。両方の組み換え融合タンパク質でのワクチン接種により、高い保護が達成された。
実施例11:C−TAB.G5.1を含む薬学的組成物の安全性、免疫原性および用量反応を評価する非盲検第1相試験
【0252】
3つの異なる用量:Al(OH)
3(alum)ありで20μg、それぞれAl(OH)
3ありまたはなしで75μgおよび200μgで、筋肉内(IM)注射により、0、7および21日目の3回のワクチン接種で投与される、C−TAB.G5.1、切断されたクロストリジウム・ディフィシル(C.ディフィシル)毒素Aおよび毒素Bからなる組み換え融合タンパク質を含む薬学的組成物。
試験目的
主目的:
・第3のワクチン接種から6か月後までの、C−TAB.G5.1を含む薬学的組成物の安全性および忍容性を調査すること。
副次的目的:
・最適な用量および製剤の第1の指標を得るための、第1のワクチン接種後0、7、14、21、28、113、201日目における、3つの異なる用量および2種の製剤に対するワクチン抗原C−TAB.G5.1ならびにC.ディフィシルの天然毒素AおよびBに対して測定される免疫反応を調査すること。
・C.ディフィシル毒素AおよびBをin vitroで中和するC−TAB.G5.1ワクチン誘導IgG抗体の能力を調査すること。
試験デザイン
【0253】
本試験は、18歳以上65歳未満の健常成人におけるパートA、および65歳以上の健常高齢者におけるパートBからなる、非盲検部分無作為化用量増加第1相試験であり、後者の年齢群は、C.ディフィシル感染を受ける最も脆弱な集団である。パートAは、アジュバントありの20μgのC−TAB.G5.1ワクチン、およびそれぞれアジュバントありまたはなしの75μgおよび200μgのC−TAB.G5.1ワクチンの安全性およびそれに対する用量反応を試験するために、12人の健常成人対象の5つの治療群において、0、7および21日目のワクチン接種スケジュールで行う。安全性および免疫原性は、パートAの全ての成人対象が第3のワクチン接種を受けた後に分析され、全ての安全性データは、パートBからの対象の参加の前に、Data Safety Monitoring Board(DSMB)により見直される。中間解析の間に安全性のない、または効果のない治療群(すなわち、有意なIgG反応を誘導しない用量)が特定された場合、これらの治療群は中止され、パートBに持ち込まれることはない。
試験のパートBは、高齢集団における用量確定を探求するものである。したがって、パートBは、群当たり20名の高齢健常対象の5つの治療群において行う。0、7および21日目のワクチン接種スケジュールを適用する。本試験デザインにより、成人および高齢者の両方における用量反応の比較が可能となる。後者の年齢群は、C.ディフィシルワクチンの主要な標的集団であり、年齢に基づく、または年齢−リスクに基づく予防ワクチン接種手法において、C.ディフィシルワクチンの発達経路における2つの標的指標、すなわち再発性C.ディフィシル下痢の予防および原発性C.ディフィシル感染症の予防に対し最も脆弱な集団を示す。しかしながら、高齢対象は、若年成人よりもワクチン接種に対し反応性が低い可能性があり、したがって、早期発達段階からの高齢標的集団における用量確定が必要である。パートAからの全ての成人がワクチン接種された後の中間解析によって、高齢群内の対象を、ワクチンの潜在的に安全でない、または効果のない用量(例えば最低用量)および/または製剤(例えば非アジュバント製剤)に暴露するリスクを軽減するために、安全でない、または成人において有意なIgG反応を誘導しない用量/製剤を中止することができる。
C−TAB.G5.1ワクチンは、標準的方法により生成された、20mM L−ヒスチジン、75mM NaCl、5%スクロース、0.025% Tween(登録商標)80(pH6.5)中のC−TAB.G5.1の水溶液である。
配列:
【表4】
好ましい態様:
好ましいポリペプチドおよびその使用:
1.配列番号2に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む単離ポリペプチド。
2.配列番号4に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む単離ポリペプチド。
3.クロストリジウム・ディフィシルの毒素AのC末端ドメインから得られる19反復単位、およびクロストリジウム・ディフィシルの毒素BのC末端ドメインから得られる23反復単位を含む、態様1または2に記載の単離ポリペプチド。
4.配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する、態様1に記載の単離ポリペプチド。
5.配列番号4に記載のアミノ酸配列を有する、態様1に記載の単離ポリペプチド。
6.配列番号4に記載のアミノ酸配列に対して少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド。
7.前記単離ポリペプチドをワクチン接種されたハムスターは、全ての芽胞用量(10
2、10
3および10
4)において、致死用量のC.ディフィシル芽胞の胃内投与に対し生存する、態様6に記載のポリペプチド。
8.クロストリジウム・ディフィシルの毒素AのC末端ドメインから得られる19反復単位を含む、態様6または7に記載のポリペプチド。
9.クロストリジウム・ディフィシルの毒素BのC末端ドメインから得られる23、33または47反復単位を含む、態様6から8のいずれか1つに記載のポリペプチド。
10.配列番号2、配列番号4、配列番号18、配列番号20および配列番号2、配列番号4、配列番号18または配列番号20のいずれかと95%、96%、97%、98%、99%同一であるポリペプチドからなる群から選択される、態様6から9のいずれか1つに記載のポリペプチド。
11.単離されている、態様6から10のいずれか1つに記載のポリペプチド。
12.医薬品における使用のための、態様6から11のいずれか1つに記載のポリペプチド。
13.CDADの予防および治療のための、態様6から11のいずれか1つに記載のポリペプチド。
14.CDADのリスクを有する対象におけるCDADの予防のための、態様6から11のいずれか1つに記載のポリペプチド。
15.CDADのリスクを有する対象におけるCDADの予防のための、態様6から11のいずれか1つに記載のポリペプチドであって、CDADのリスクを有する前記対象は、i)65歳を超える対象、もしくは2歳未満の対象;ii)AIDSを有する対象;iii)免疫抑制薬を投与されている、もしくは投与される予定がある対象;iv)入院の予定がある対象、もしくは入院している対象;v)集中治療を受けている、もしくは受ける予定がある対象;vi)消化管手術を受けている、もしくは受ける予定がある対象;vii)養護施設等の長期介護を受けている、もしくは受ける予定がある対象;viii)頻繁な、および/もしくは長期的な抗生物質の使用を必要とする共存症を有する対象;またはix)再発性CDADを有する対象である、ポリペプチド。
16.医薬品における使用のための医薬の製造のための、態様6から11のいずれか1つに記載のポリペプチドの使用。
17.CDADの予防および治療のための医薬の製造のための、態様6から11のいずれか1つに記載のポリペプチドの使用。
18.CDADのリスクを有する対象におけるCDADの予防のための医薬の製造のための、態様6から11のいずれか1つに記載のポリペプチドの使用。
19.CDADのリスクを有する対象におけるCDADの予防のための医薬の製造のための、態様6から11のいずれか1つに記載のポリペプチドの使用であって、CDADのリスクを有する前記対象は、i)65歳を超える対象、もしくは2歳未満の対象;ii)AIDSを有する対象;iii)免疫抑制薬を投与されている、もしくは投与される予定がある対象;iv)入院の予定がある対象、もしくは入院している対象;v)集中治療を受けている、もしくは受ける予定がある対象;vi)消化管手術を受けている、もしくは受ける予定がある対象;vii)養護施設等の長期介護を受けている、もしくは受ける予定がある対象;viii)頻繁な、および/もしくは長期的な抗生物質の使用を必要とする共存症を有する対象;またはix)再発性CDADを有する対象である、使用。
20.態様1から11のいずれか1つに記載のポリペプチドを含む、対象におけるC.ディフィシル感染を検出するための診断キット。
好ましい核酸:
1a.態様1から11のいずれか1つに記載のポリペプチドのいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む核酸。
2a.態様1から11のいずれか1つのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列から本質的になる、態様1aに記載の核酸。
3a.配列番号1、配列番号3、配列番号17および配列番号19の群から選択されるヌクレオチド配列を含む、態様1aまたは2aに記載の核酸。
4a.配列番号1、配列番号3、配列番号17および配列番号19の群から選択されるヌクレオチド配列から本質的になる、態様1aまたは2aに記載の核酸。
好ましい薬学的組成物:
1c.態様1から11のいずれか1つに記載のポリペプチドまたは態様1aから4aのいずれか1つに記載の核酸、および薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、薬学的組成物。
2c.C.ディフィシル毒素AおよびBの両方を中和する抗体を惹起する、態様1cに記載の薬学的組成物。
3c.C.ディフィシル毒素AおよびBに対する、対象における防御免疫反応を惹起する、態様1cまたは態様2cに記載の薬学的組成物。
4c.アジュバントをさらに含む、態様1cから3cのいずれか1つに記載の薬学的組成物。
5c.アジュバントが、alumを含む、態様4cに記載の薬学的組成物。
6c.追加的な抗原または薬物をさらに含む、態様1cから5cのいずれか1つに記載の薬学的組成物。
好ましい抗体:1d.態様1から11のいずれか1つに記載のポリペプチドに対する抗体であるが、C.ディフィシル毒素A(配列番号6)およびB(配列番号8)のいずれかまたは両方を認識しない抗体。
好ましい方法
1e.態様1から10のいずれか1つに記載のポリペプチドを生成するための方法であって、宿主細胞内に、ポリペプチドをコードする核酸を導入することと、ポリペプチドの発現を可能とする条件下で宿主細胞を培養することと、ポリペプチドを単離することとを含む方法。
2e.宿主細胞は、大腸菌である、態様1eに記載の方法。
3e.対象におけるC.ディフィシル関連疾患(CDAD)を治療および/または予防する方法であって、それを必要とする対象に、態様1から11のいずれか1つに記載の単離ポリペプチドを投与することを含む方法。
4e.対象においてC.ディフィシルの毒素AおよびBの両方に対する特異的免疫反応を誘導する方法であって、態様1から11のいずれか1つに記載のポリペプチドを対象に、または態様1cから6cのいずれか1つに記載の薬学的組成物を投与することを含む方法。
5e.対象におけるC.ディフィシル感染により引き起こされる原発性疾患を予防する方法であって、態様1から11のいずれか1つに記載のポリペプチドを対象に、または態様1cから6cのいずれか1つに記載の薬学的組成物を投与することを含む方法。
6e.C.ディフィシル関連疾患(CDAD)のリスクを有する対象における C.ディフィシル感染により引き起こされる原発性疾患を予防する方法であって、CDADのリスクを有する前記対象は、i)65歳を超える対象、もしくは2歳未満の対象;ii)AIDSを有する対象;iii)免疫抑制薬を投与されている、もしくは投与される予定がある対象;iv)入院の予定がある対象、もしくは入院している対象;v)集中治療を受けている、もしくは受ける予定がある対象;vi)消化管手術を受けている、もしくは受ける予定がある対象;vii)養護施設等の長期介護を受けている、もしくは受ける予定がある対象;viii)頻繁な、および/もしくは長期的な抗生物質の使用を必要とする共存症を有する対象;またはix)再発性CDADを有する対象であり、前記方法は、態様1から11のいずれか1つに記載のポリペプチドを前記対象に、または態様1cから6cのいずれか1つの薬学的組成物を投与することを含む方法。 7e.ポリペプチドまたは薬学的組成物は、対象に、筋肉内、皮内、皮下、経口、経鼻、または経直腸投与、好ましくは筋肉内投与される、態様1eから6eのいずれか1つに記載の方法。
8e.ポリペプチドまたは薬学的組成物は、短い間隔(1週間毎または2週間毎)に少なくとも2回以内の投薬で対象に投与される、態様1eから7eのいずれか1つに記載の方法。
9e.生体試料中のC.ディフィシルを検出する方法であって、生体試料を態様1から11のいずれか1つに記載のポリペプチドと接触させることと、生体試料に対するポリペプチドの結合を検出することとを含み、ポリペプチドの結合は、生体試料中のC.ディフィシルの存在を示す方法。