(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6121437
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】鋳物部品製造用鋳型
(51)【国際特許分類】
B22C 21/08 20060101AFI20170417BHJP
【FI】
B22C21/08 Z
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-545096(P2014-545096)
(86)(22)【出願日】2012年12月5日
(65)【公表番号】特表2015-500144(P2015-500144A)
(43)【公表日】2015年1月5日
(86)【国際出願番号】DE2012001162
(87)【国際公開番号】WO2013083113
(87)【国際公開日】20130613
【審査請求日】2015年11月12日
(31)【優先権主張番号】102011120220.3
(32)【優先日】2011年12月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514140436
【氏名又は名称】イェルク レーヴェンシュタイン
【氏名又は名称原語表記】LOEWENSTEIN, Joerg
(74)【代理人】
【識別番号】100120662
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 桂子
(74)【代理人】
【識別番号】100112715
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(72)【発明者】
【氏名】イェルク レーヴェンシュタイン
【審査官】
荒木 英則
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許発明第102004014100(DE,B3)
【文献】
特開昭53−070921(JP,A)
【文献】
米国特許第02367727(US,A)
【文献】
実開平06−005738(JP,U)
【文献】
特開2002−013510(JP,A)
【文献】
特開昭55−048465(JP,A)
【文献】
特開2001−096588(JP,A)
【文献】
米国特許第02304899(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 21/00−21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳物部品製造用鋳型であり、
互いに対して開放位置から閉鎖位置へ可動である、2つの鋳型部を備え、
前記鋳型部は、閉鎖位置にある時、溶湯を充填することができる鋳型凹部を形成し、開放位置にある時、鋳物部品、特に少なくとも部分的に冷却することにより凝固された鋳物部品、を取り外すことができ、閉鎖位置にある時、前記二つの鋳型部を解除可能に接合する固定装置を用いて固定可能であり、
前記鋳型部は、接液させる鋳型凹部の形、順序及び領域を調節する鋳造プログラムにより、保持装置を用いて、所定の軸を中心に揺動可能であり、
前記鋳型部は、互いに対して可動であり、2つの鋳型板(10、12)の面に対して垂直な運動軸に沿った直線上を互いに対して開放位置から閉鎖位置へ可動である2つの前記鋳型板(10、12)であり、前記鋳型板(10、12)を解除可能に接合する固定装置(16、18、20)が、前記鋳型板を、閉鎖位置で押し合わせた状態で固定し、鋳型板が閉鎖位置にある間、その固定圧が維持された状態であり、
さらに、前記固定装置は、鋳型に付随する閉鎖装置により前記鋳型板を押し合わせた後、前記鋳型板(10、12)を押し合わせる閉鎖圧力を維持するガス圧バネを有するエネルギー貯蔵手段(22)を有し、前記閉鎖装置は、前記鋳型板の中心面に対して垂直に作用し、前記固定装置は、一方の前記鋳型板(10)に固定スリーブ(16)を有し、もう一方の前記鋳型板(12)に張力スリーブ(18)を有し、前記張力スリーブ(18)は、固定スリーブ(16)と一列に並べられ、さらに、固定スリーブ(16)及び張力スリーブ(18)と互いに作用し合う可動張力ボルト(20)を有し、前記ボルト(20)は、前記鋳型板の前記面に対して垂直な方向に可動であり、一方の前記鋳型板に設けられた固定容器(24)に軸方向に取り付けられ、エネルギー貯蔵手段(22)の圧力の作用により前記ボルト(20)が動く、鋳型。
【請求項2】
前記鋳型板(10、12)は矩形である、請求項1に記載の鋳型。
【請求項3】
さらに、前記鋳型板(10)の解除機構(32)を備え、前記鋳造プログラムの終了後に、少なくともおおむね凝固されている鋳物部品を取り出す、請求項1又は2に記載の鋳型。
【請求項4】
前記解除機構(32)は、少なくとも部分的に凝固された鋳物部品を型から外すための、ガス圧アクチュエータ(22)、前記ガス圧アクチュエータ(22)により圧力がかけられる、押し込みロッド(33)及び取り出しロッド(34)を有する、請求項3に記載の鋳型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに対して、開放位置から閉鎖位置へ可動である2つの鋳型部を有する鋳物部品製造用鋳型に関する。鋳型部は閉鎖位置にある時、溶湯(液状の鋳物材料)を充填できる鋳型凹部を形成し、開放位置にある時、鋳物部品(特に、少なくとも部分的に冷却することにより、凝固されたもの)を取り出すことができる。また、鋳型部は、閉鎖位置にある時、二つの鋳型部を解除可能に接合する固定装置を用いて、固定可能である。また、接液される鋳型凹部の形、順序、領域を調節する鋳造プログラムにより、鋳型部は、保持装置(特に、ロボットアーム)を用いて、所定の軸を中心に回転できる。
【背景技術】
【0002】
この種類の鋳型は、独国特許(一次公報)DE 10 2004 014 100 B3により知られている。そこに記載される、鋳型の5軸傾斜鋳造のための装置配列では、傾斜鋳造鋳型の鋳型部を閉鎖位置で固定する固定装置については、寸法が定義されていない傾斜鋳造鋳型が使用されている。この配列で、鋳型は、所定の鋳造プログラムにより、ロボットアームを用いて、そのつど、所望の位置に傾斜させることができる。この装置では、鋳型部の相互の接触圧力の維持に問題がある。この既知の装置を適切に改良すれば、鋳型は、重い鋳造装置などから独立して、自由に揺動させられる。
【0003】
本発明は、この既知の鋳型の根本的な問題を改善するためのものであり、鋳造プログラムにより鋳型が揺動している間、鋳型は、鋳型に属する固定機構を介し固定され、鋳型部が押し合わされた後、鋳型に所望の圧力がかけられ、鋳型に組み込まれている固定機構を用いた固定が行われる。
【0004】
本発明の目的は、既存の鋳型の改良であり、互いに対して可動である鋳型部は、互いに対して、開放位置から閉鎖位置へ可動である二つの鋳型板である。鋳型部は、基本的には、鋳型部の面に垂直な運動軸に沿った直線に沿って、可動であり、(二つの鋳型板を解除可能に接合する)固定装置により閉鎖位置で固定される。固定圧が維持されることにより、鋳型板は閉鎖位置にあり、押し合わされた状態で固定される。固定装置は、鋳型に付随する閉鎖装置により鋳型板を押し合わせた後に、鋳型板を押し合わせる閉鎖圧を維持するガス圧バネを有するエネルギー貯蔵手段を備える。閉鎖装置は、基本的に鋳型板の中心面に対して垂直に作用し、固定装置は、一方の鋳型板に固定スリーブを有し、もう一方の鋳型板に張力スリーブを有し、張力スリーブは、基本的に固定スリーブと一列に並べられ、さらに固定スリーブ及び張力スリーブと互いに作用し合う可動張力ボルトを有し、可動張力ボルトは、基本的に、鋳型板の面に対して垂直な方向に可動であり、一方の鋳型板に設けられた固定容器に軸方向に取り付けられ、エネルギー貯蔵手段により圧力がかけられた場合、縦方向で位置を変えることができる。
【0005】
よって、鋳型板は、好ましくは、矩形である。
【0006】
本発明の他の実施形態は、鋳型板の非常解除機構を有し、前記鋳造プログラムの終了後に、少なくともおおむね凝固されている鋳物部品を取り出すことを特徴とする。
【0007】
非常解除機構は、少なくとも部分的に凝固された鋳物部品を型から外すための、ガス圧アクチュエータ、 前記ガス圧アクチュエータにより圧力がかけられる、押し込みロッド及び取り出しロッドを有して設けられてもよい。
【0008】
本発明の上記の実施形態は、請求項に記載された種類の非常解除装置が設けられ、これにより、凝固中又は凝固後の鋳造物を、その時点で鋳型がおかれる、所定の位置及び処理段階で、個別に、確実に型から外すことができる。
【0009】
概して、本発明の根本的概念は、鋳型自体に「自立した状態で」本発明による固定機構を設けるという洗練された方法で既存の問題を解決することができる。それにより、一対の鋳型板が押し合わされて鋳型板、つまり、鋳型(又は、一対の鋳型)が形成され、鋳型板に所望の閉鎖圧がかけられた後、強固に密閉した鋳型板で形成される鋳型凹部を確実に維持することが可能になり、同時に、ロボットアームなどを用いたほぼ制限のない運動能力により、形成された鋳型凹部の全領域を容易に接液させることができる。
【0010】
本発明により提供される種類の固定装置は、DE−PS 1 243 331、DE−OS 25 45 178、および/又は、DE 34 22 171に開示された種類または既知の鋳型にかかる装置に関連しては開示されていない。これら公報は、閉じる力を維持することにより自動的に固定され、(例えば、ロボットアームにより)自在に揺動することができる鋳型又は鋳造鋳型、又はその両方について開示していない。むしろ、これら公報は、その設計、操作が本発明の鋳型よりも複雑な、重い全体的な装置に、鋳造鋳型の操作手段が組み入れられた鋳造装置を扱っている。
【0011】
特に、従来技術は、本発明により提供される種類の実施形態の非常解除機構についても何ら記載していない。
【発明の概要】
【0012】
本発明のその他の特徴及び利点は請求項及び以下の説明に起因する。以下に、図面を参照し、実施形態を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】開放位置にある固定機構を有する、本発明による鋳型の一実施形態を部分的に切り取った概略側面図である。
【
図2】
図1と同様の、
図1の実施形態の図であるが、閉鎖状態の固定機構を有する。
【
図3】非常解除機構を備える、固定されていない状態の鋳型の一実施形態を部分的に切り取った概略側面図である。
【
図5】非常解除が完了した状態の
図3及び
図4の実施形態を示す。
【0014】
図1に示すように、本発明による鋳型の実施形態は、鋳造金属部品用鋳型であり、垂直方向に重ねられた、(図面下側に示される)第1鋳型板10及び(図面上側に示される)第2鋳型板12を備える。図面に概要が示されるように、
図2の閉じられた状態の時に、鋳型凹部14が形成される。第2鋳型板12は、揺動固定可能な鋳型の基本部品であり、一般的に矩形の鋳型部の片側であり、
図1及び
図2に示される位置に水平に配置され、
図1では、第1鋳型板10の上に少し離れて配置される。これにより、特に、完成した鋳造金属部品を取り出す必要がある際に、横方向で鋳型凹部14に手が届きやすくなる。
図1及び
図2で鋳型の右側に位置するのは、固定装置であり、第1鋳型板10に配置された固定スリーブ16、第2鋳型板12に設けられた張力スリーブ18、及びエネルギー貯蔵手段として働くガス圧バネ22により圧力がかけられる張力ボルト20を備える。張力ボルト20は、固定容器24内で(
図1及び
図2に示されるように垂直方向に)高さを変えることができる。
【0015】
図1及び
図2の実施形態において、本発明による鋳型は以下のように使用される。まず、例えば、従来の揺動鋳型で使用されるのと同様の鋳造装置の加圧装置を介して、第2鋳型板12に対して、閉じる力が矢印26の方向に働き、鋳型板10、12を押し合わせる(つまり、第2鋳型板12を、
図1の上側の位置から第1鋳型板10のそばの下側の位置になるよう、下向きに押さえる)。(
図1の矢印26の方向に作用する)閉じる力により、第2鋳型板12が第1鋳型板10に対して押さえられるとすぐに、それによって、
図2に示すように、(実際には、エネルギー貯蔵手段として働くガス圧バネ22に反して)鋳型の空間が閉じられ、(
図2の矢印28の方向に作用する)ガス圧バネ22の力により、張力スリーブ18が上に向かって押され、張力ボルト20が、鋳型板10、12を閉鎖位置で持続的に固定する。
【0016】
このように、ガス圧バネ22の張力により(又は、閉じる力により)固定された状態で、(固定された鋳型板10、12からなる)鋳型は「自立した状態で」固定され、操作装置を用いて、自由に揺動させることができるので、その間に注入された液状の鉄で鋳型凹部14を接液させる、又は、鋳型凹部14の必要な領域に液状の鉄を行き渡らせることが必要な場合、鋳型板10、12を押し合わせる閉じる力を維持する必要がない。鋳造処理が完了し、鋳型を冷却した後、第2鋳型板12を
図2の固定位置から持ち上げて、鋳型板10、12を
図1の開放位置に戻すことができる。そこで、鋳造金属部品を鋳型凹部14から取り外すことができる。
【0017】
図3〜5の実施形態では、強力に冷やされた場合に、凝固中の鋳物部品が縮み、鋳型部の鋳造表面から「縮んで離れて」しまう状況を考慮して、非常解除機構が設けられている。このような収斂性のある溶湯(特に、例えば、軽金属の合金)は、鋳型凹部に定着しやすいが、鋳物部品を鋳型から取り出す際に手間がかかる。それだけではなく鋳物部品、それどころか鋳型の破損が考えられる。
【0018】
従来の鋳造装置は、一対の鋳型部が、重く、密集した鋳造装置に組み込まれていて、所定の時間が経過した後、取り出し機能を使用することで、上記問題を解決する。このような取り出し機能は、通常操作時に同様に鋳型から鋳物部品を取り出す機構にあたる。
【0019】
これとは反対に、(
図1及び
図2の実施形態に示され、それら図面を参照し説明される)自由に移動可能な鋳型は、処理の全ての段階において、鋳物部品を取り外すための鋳造装置の機構に接続されることがない。よって、取り外しが求められる時間にいたっても、鋳物部品を取り出すことができない処理状態が起こりえる。
【0020】
このため、
図3〜5の実施形態による非常解除機構が設計されていて、鋳型がおかれている、各位置や処理段階で、鋳物部品を個別に型から外すことができる。
【0021】
図3〜5の実施形態には、非常解除機構32が設けられる。非常解除機構32は、弁の開閉によって加圧することができるガス圧バネを有する。それによる力が鋳型の固定手段に対して作用する。その力は
図1及び2のガス圧バネ22による閉じる力よりも弱い。その結果、(非常解除機構を除いた残りの構成は、
図1及び
図2の実施形態と同様である)
図3〜5の鋳造鋳型は、ガス圧バネ22によって、
図3の固定されていない位置から
図4の固定される位置に移動させることができ、(ガス圧バネによって実現される)非常解除機構32内の力を用いずに、一対の鋳型部を離すことができる。
【0022】
しかしながら、
図1〜5のガス圧バネ22の圧力が解除されると、ガス圧バネ22は、(非常解除機構32を用いて作動できる取り出し板35に配置される)押し込みロッド33及び取り出しロッド34を
図4の位置から
図5の位置へ動かし、(押し込みロッド33により)一対の鋳型部はそれぞれ離れたところに移動され、(取り出しロッド34により)鋳物部品は型から外される。
【0023】
ガス圧バネによる固定システムを用いた場合、固定システムの圧縮ガスアクチュエータをガス圧バネと併用することができ、固定システムに蓄えられた圧力を非常解除装置で使用することができる。これにより、ガス圧バネ22に蓄えられた圧力が、弁を開放することにより、ガス圧バネ32に伝えられ、非常解除機構を操作する働きをする。
【0024】
従来の鋳造装置の機構に関連し、
図3〜5による非常解除システムは、必要に応じて、両側で型からの取り外しができるように、一対の鋳型部の両方で用いられてもよい。
【0025】
上記の説明、図面、及び請求項で開示される本発明の特徴は、本質的なものであり、個別に、又は、組み合わせることで、本発明を様々な実施形態で実現するためのものである。