【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0037】
<実施例1−1>
[正極活物質の作製]
Li源としてのLi
2CO
3と、Co
3O
4で表される酸化物とを、Liと遷移金属元素のモル比が1:1になるように石川式らいかい乳鉢にて混合した後、空気雰囲気中にて950℃で20時間熱処理後に粉砕することにより、平均二次粒子径が約16μmのLiCoO
2を得た。
【0038】
[正極添加剤であるLi含有化合物の作製]
Li源としてのLi
2Oと、Fe
2O
3で表される酸化物とを、Liと遷移金属元素のモル比が5:1になるように石川式らいかい乳鉢にて混合した後、窒素雰囲気中にて600℃で12時間熱処理後に粉砕することにより、平均二次粒径が約10μmのLi
5FeO
4を得た。ここで、得られた正極添加剤のみ正極として、以下に記載の単極セルを作製し、15mAの定電流で、正極の電位がリチウム基準で4.2V(vs.Li/Li
+)になるまで初回充電を行った結果、単極セルの電池膨れが確認された。単極セル内のガスをガスクロマトグラフィーにて分析した結果、酸素ガスが確認された。すなわち、得られた正極添加剤は、初回充電時に4.2V(vs.Li/Li
+)以下でガス発生することが確
認された。
【0039】
[正極の作製]
上記のようにして得られた正極活物質(LiCoO
2)と、正極添加剤(Li
5FeO
4)とを、質量比で98:2となるように混合し、活物質混合物を得た後、導電剤としての炭素粉末と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)と、分散媒としてのN−メチル−2−ピロリドンを、活物質混合物と導電剤と結着剤との質量比が95:2.5:2.5の割合になるように加えた後に混練して、正極スラリーを調製した。この正極スラリーを、正極集電体としてのアルミニウム箔(厚み15μm)の両面に塗布、乾燥し、アルミニウム箔上に正極活物質層を作製し後、圧延ローラにより圧延し、正極活物質層の空孔率を27%として、正極を作製した。なお、正極添加剤は大気中の水分と反応し分解する場合があるため、正極の作製においては、露点−30℃のドライ雰囲気下にて実施した。また、得られた正極に正極リードを取り付けた。
【0040】
[非水電解質の調製]
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを、3:7の体積比で混合した混合溶媒に対し、六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)を1.0モル/リットルの濃度になるように溶解させて、非水電解質(電解液)を調製した。
【0041】
[単極式セル]
単極式セルA1は、上記のように作製した正極、負極(対極:リチウム金属)、正極と負極との間に配置されるセパレータ、を有する測定極部と、測定極部と所定の間隔を設けて配置される参照極(リチウム金属)と、上記のように作製した非水電解質と、それらを収容する外装体としてのアルミラミネートフィルムとから構成されている。測定極部及び参照極を収容するアルミラミネートフィルム内は、非水電解液で満たされている。負極は、正極に対して対向可能な寸法となっている。作製された単極式セルA1の理論容量は100mAhである。
【0042】
<実施例1−2>
正極活物質(LiCoO
2)と、正極添加剤(Li
5FeO
4)とを、質量比で96:4となるように混合して正極を作製したこと以外は実施例1−1と同様に単極式セルを作製し、これを単極式セルA2とした。実施例1−2の正極中の正極活物質層の空孔率を27%とした。
【0043】
<実施例1−3>
正極活物質(LiCoO
2)と、正極添加剤(Li
5FeO
4)とを、質量比で94:6となるように混合して正極を作製したこと以外は実施例1−1と同様に単極式セルを作製し、これを単極式セルA3とした。実施例1−3の正極中の正極活物質層の空孔率を27%とした。
【0044】
<比較例1>
正極添加剤を添加せず、正極活物質(LiCoO
2)のみを用いたこと以外は実施例1−1と同様に単極式セルを作製し、これを単極式セルA4とした。比較例1の正極中の正極活物質層の空孔率を27%とした。
【0045】
[単極式セルA1〜A4の評価]
上記作製した単極式セルを0.15It(=15mA)の定電流により、正極の電位がリチウム基準で4.50Vとなるまで充電し、その後、4.50Vの定電圧で電流が1/50It(=2mA)となるまで充電を行った。この時に流れた電気量を測定して、初期充電容量(mA/g)を求め、以下の式により、充電容量(mAh/cc)を算出した。
充電容量(mAh/cc)=初期充電容量(mAh/g)
×充電前の正極活物質層密度(g/cc)
【0046】
次いで、0.10It(=10mA)の定電流で電池電圧が2.50Vとなるまで放電を行い、このときに流れた電気量を測定することにより、初期放電容量(mAh/g)を求めた。なお単極式セルA1〜A3では、初期充電後にガス発生による電池膨れが確認された。次いで、上記と同じ条件で充電した後、2.0It(=200mA)の定電流で電池電圧が2.50Vとなるまで放電を行い、このときに流れた電気量を測定して、放電負荷容量(mAh/g)を求め、以下の式により負荷特性を算出した。
負荷特性(%)=[放電負荷容量(2.0It)/初期放電容量(0.1It)]×100
【0047】
上記充放電後、単極式セルA1〜A4を分解し、正極を取り出して、正極活物質層の空孔率を測定した。実施例1−1〜1−3の正極活物質層の空孔率は29%であり、比較例1の正極活物質層の空孔率は28%であった。
【0048】
表1に、実施例1−1〜1−3及び比較例1の正極活物質及び正極添加剤の組成、正極活物質に対する正極添加剤の混合比率、正極活物質層の空孔率、充電容量及び負荷特性(2.0It)の結果をまとめた。
【0049】
【表1】
【0050】
表1の結果から分かるように、正極添加剤として、初回充電時に4.2V(vs.Li/Li
+)以下でガス発生するLi含有化合物を用いた実施例1−1〜1−3は、上記Li含有化合物を添加してない比較例1と比較して、負荷特性の低下が抑制された。また、正極活物質層の空孔率が30%以下である実施例1−1〜1−3(及び比較例1)は、いずれも高い充電容量が得られた。また、実施例1―1〜1−3の結果から分かるように、Li含有化合物の混合比率を増加させるほど負荷特定の低下が抑制される。なお、Li含有化合物の混合比率を10質量%以上とする正極の作製を試みたが、正極スラリーのゲル化が起こりやすく、正極の作製が困難であった。したがって、Li含有化合物の混合比率は2質量%以上10質量%未満の範囲とすることが好ましい。なお、Li含有化合物の添加比率が2質量%未満であると、2質量%以上の場合と比較して、ガス発生量が少なく、正極活物質層の空孔率緩和効果が小さくなるため、負荷特性が低下すると考えられる。また、Li含有化合物の添加量が10質量%以上である正極を作製した場合でも、10質量%未満の場合と比較して、ガス発生量が多くなり、正極活物質間の電子伝導が阻害され、負荷特性が低下すると考えられる。
【0051】
<実施例2−1>
正極活物質(LiCoO
2)と、正極添加剤(Li
5FeO
4)とを、質量比で96:4となるように混合し、圧延ローラの圧力を調整して、正極中の正極活物質層の空孔率を20%として正極を作製したこと以外は、実施例1−1と同様に単極式セルを作製し、これを単極式セルB1とした。
【0052】
<実施例2−2>
正極活物質(LiCoO
2)と、正極添加剤(Li
5FeO
4)とを、質量比で96:4となるように混合し、圧延ローラの圧力を調整して、正極中の正極活物質層の空孔率を27%として正極を作製したこと以外は、実施例1−1と同様に単極式セルを作製し、これを単極式セルB2とした。
【0053】
<実施例2−3>
正極活物質(LiCoO
2)と、正極添加剤(Li
5FeO
4)とを、質量比で96:4となるように混合し、圧延ローラの圧力を調整して、正極中の正極活物質層の空孔率を28%として正極を作製したこと以外は、実施例1−1と同様に単極式セルを作製し、これを単極式セルB3とした。
【0054】
<比較例2−1>
正極添加剤を添加せず、正極活物質(LiCoO
2)のみを用い、圧延ローラの圧力を調整して、正極中の正極活物質層の空孔率を27%として正極を作製したこと以外は、実施例1−1と同様に単極式セルを作製し、これを単極式セルB4とした。
【0055】
<比較例2−2>
正極添加剤を添加せず、正極活物質(LiCoO
2)のみを用い、圧延ローラの圧力を調整して、正極中の正極活物質層の空孔率を33%として正極を作製したこと以外は、実施例1−1と同様に単極式セルを作製し、これを単極式セルB5とした。
【0056】
<比較例2−3>
正極活物質(LiCoO
2)と、正極添加剤(Li
5FeO
4)とを、質量比で96:4となるように混合し、圧延ローラの圧力を調整して、正極中の正極活物質層の空孔率を32%として正極を作製したこと以外は、実施例1−1と同様に単極式セルを作製し、これを単極式セルB6とした。
【0057】
単極式セルB1〜B6の充放電を単極式セルA1と同様に行い、充電容量(mAh/cc)及び負荷特性(%)を算出した。充放電後、単極式セルB1〜B6を分解し、正極を取り出して、正極活物質層の空孔率を測定した。その結果、実施例2−1の正極活物質層の空孔率は22%であり、実施例2−2の正極活物質層の空孔率は29%であり、実施例2−3の正極活物質層の空孔率は31%であり、比較例2−1の正極活物質層の空孔率は28%であり、比較例2−2及び2−3の正極活物質層の空孔率は34%であった。
【0058】
表2に、実施例2−1〜2−3及び比較例2−1〜2−3の正極活物質及び正極添加剤の組成、正極活物質に対する正極添加剤の混合比率、正極活物質層の空孔率、充電容量及び負荷特性(2.0It)の結果をまとめた。
【0059】
【表2】
【0060】
表2の結果から分かるように、正極活物質層の正極添加剤として、初回充電時に4.2V(vs.Li/Li
+)以下でガス発生するLi含有化合物を用いた実施例2−1〜2−3は、上記Li含有化合物を添加してない比較例2−1と比較して、負荷特性の低下が抑制された。また、正極活物質層の空孔率が30%以下である実施例2−1〜2−3は、正極活物質層の空孔率が30%を超える比較例2−2〜2−3と比較して、高い充電容量を確保することができた。
【0061】
また、実施例2−1〜2−3の結果から分かるように、正極活物質層の空孔率が20%超30%以下の実施例2−2,2−3は、正極活物質層の空孔率が20%の実施例2−1と比較して、より負荷特性の低下が抑制された。正極活物質層の空孔率が20%以下であると、20%超の場合と比較して、Li含有化合物を添加しても非水電解質の保液量が十分に増加せず、負荷特性が低下したと考えられる。したがって、初回充電前の正極活物質層の空孔率は20%超から30%以下の範囲であることが好ましい。なお、初回充電前の正極活物質層の空孔率が30%を超える比較例2−2は、Li含有化合物を添加しなくて
も、実施例2−1と同等の負荷特性が得られるが、実施例2−1と比較して、低い充電容量を示した。
【0062】
また、実施例2−3は、充電後の正極活物質層の空孔率が31%であるが、高い充電容量が確保され、負荷特性の低下が抑制されている。また、充電後の正極活物質層の空孔率が34%である比較例2−2及び2−3は、負荷特性の低下は抑制されているが、高い充電容量が得られなかった。したがって、初回充電時に4.2V(vs.Li/Li
+)以下でガス発生するLi含有化合物を用い、初回充電後の正極活物質層の空孔率が33%以下であれば、高容量で、負荷特性の低下が抑制される。
【0063】
<実施例3−1>
実施例1−1と同様に単極式セルを作製し、これを単極式セルC1とした。実施例3−1の正極中の正極活物質層の空孔率を27%とした。
【0064】
<実施例3−2>
正極活物質(LiCoO
2)と、正極添加剤(Li
5FeO
4)とを、質量比で96:4となるように混合して正極を作製したこと以外は実施例1−1と同様に単極式セルを作製し、これを単極式セルC2とした。実施例3−2の正極中の正極活物質層の空孔率を27%とした。
【0065】
<実施例3−3>
[正極添加剤としてのLi
6CoO
4の作製]
Li源としてのLi
2Oと、CoOで表される酸化物とを、Liと遷移金属元素のモル比が6:1になるように石川式らいかい乳鉢にて混合した後、窒素雰囲気中にて700℃で12時間熱処理後に粉砕することにより、平均二次粒径が約10μmのLi
6CoO
4を得た。
【0066】
正極添加剤として、上記のように得られたLi
6CoO
4を用い、正極活物質(LiCoO
2)と、正極添加剤(Li
6CoO
4)とを、質量比で98:2となるように混合して正極を作製したこと以外は実施例1−1と同様に単極式セルを作製し、これを単極式セルC3とした。実施例3−3の正極中の正極活物質層の空孔率を27%とした。
【0067】
<実施例3−4>
正極添加剤として、上記のように得られたLi
6CoO
4を用い、正極活物質(LiCoO
2)と、正極添加剤(Li
6CoO
4)とを、質量比で96:4となるように混合して正極を作製したこと以外は実施例1−1と同様に単極式セルを作製し、これを単極式セルC4とした。実施例3−4の正極中の正極活物質層の空孔率を27%とした。
【0068】
<実施例3−5>
正極添加剤としてLi
2Oを用い、正極活物質(LiCoO
2)と、正極添加剤(Li
2O)とを、質量比で96:4となるように混合して正極を作製したこと以外は実施例1−1と同様に単極式セルを作製し、これを単極式セルC5とした。実施例3−5の正極中の正極活物質層の空孔率を27%とした。
【0069】
<実施例3−6>
[正極添加剤としてのLi
6MnO
4の調製]
Li源としてのLi
2Oと、MnOで表される酸化物とを、Liと遷移金属元素のモル比が6:1になるように石川式らいかい乳鉢にて混合した後、窒素雰囲気中にて950℃で12時間熱処理後に粉砕することにより、平均二次粒径が約10μmのLi
6MnO
4を得た。
【0070】
正極添加剤として、上記のように得られたLi
6MnO
4を用い、正極活物質(LiCoO
2)と、正極添加剤(Li
6MnO
4)とを、質量比で96:4となるように混合して正極を作製したこと以外は実施例1−1と同様に単極式セルを作製し、これを単極式セルC6とした。実施例3−6の正極中の正極活物質層の空孔率を27%とした。
【0071】
[単極式セルC1〜C6の評価]
上記作製した単極式セルを0.15It(=15mA)の定電流により、正極の電位がリチウム基準で4.50Vとなるまで充電し、その後、4.50Vの定電圧で電流が1/50It(=2mA)となるまで充電を行った。この時に流れた電気量を測定して、初期充電容量(mA/g)を求め、上記と同様に充電容量(mAh/cc)を算出した。次いで、0.10It(=10mA)の定電流で電池電圧が2.50Vとなるまで放電を行い、このときに流れた電気量を測定することにより、初期放電容量(mAh/g)を求めた。なお、初期充電後にはガス発生による電池膨れが確認された。次いで、上記と同じ条件
で充電した後、0.50It(=50mA)の定電流で電池電圧が2.50Vとなるまで放電を行い、このときに流れた電気量を測定して、放電負荷容量(mAh/g)を求め、以下の式により負荷特性を算出した。
負荷特性(%)=[放電負荷容量(0.50It)/初期放電容量(0.1It)]×100
【0072】
充放電後、単極式セルC1〜C6を分解し、正極を取り出して、正極活物質層の空孔率を測定した。その結果、実施例3−1〜3−6の正極活物質層の空孔率は29%であった。
【0073】
表3に、実施例3−1〜3−6の正極活物質及び正極添加剤の組成、正極活物質に対する正極添加剤の混合比率、正極活物質層の空孔率、充電容量及び負荷特性(0.5It)の結果をまとめた。
【0074】
【表3】
【0075】
表3の結果から分かるように、Li含有化合物としてLi
5FeO
4、Li
6CoO
4、Li
6MnO
4を用いた実施例3−1〜3−4、3−6は、Li
2Oを用いた実施例3−5と比較して、負荷特性の低下がより抑制された。特に、Li
5FeO
4を用いた実施例3−1、3−2は、Li
6CoO
4、Li
6MnO
4を用いた実施例3−3、3−4、3−6と比較しても、負荷特性の低下がさらにより抑制された。これは、初回充電の際に、Co、Mn、Fe元素が、結晶構造中の酸素の分解反応の触媒として働き、特にFe元素が良好な触媒作用を発揮することで、正極活物質層中の空孔形成状態が良化するためと考えられる。
【0076】
<実施例4−1>
正極活物質(LiCoO
2)と、正極添加剤(Li
5FeO
4)とを、質量比で96:4となるように混合して正極を作製したこと以外は実施例1−1と同様に単極式セルを作製し、これを単極式セルD1とした。実施例4−1の正極中の正極活物質層の空孔率を27%とした。
【0077】
<実施例4−2>
[希土類元素が付着した正極活物質の調製]
上記LiCoO
2粒子1000質量部を用意し、この粒子を3000質量部の純水に添加し攪拌して、LiCoO
2が分散した懸濁液を調製した。次に、この懸濁液に、硝酸エルビウム5水和物[Er(NO
3)
3・5H
2O]1.05質量部が200質量部の純水に溶解された溶液を加えた。この際、LiCoO
2を分散した溶液のpHを9に調整するために、10質量%の硝酸水溶液、或いは、10質量%の水酸化ナトリウム水溶液を適宜加えた。次いで、上記硝酸エルビウム5水和物溶液の添加終了後に、吸引濾過し、更に水洗を行った後、得られた粉末を120℃で乾燥し、上記LiCoO
2の表面の一部に水酸化エルビウム化合物が固着したものを得た。その後、得られた粉末を300℃で5時間空気
中にて熱処理した。このように300℃で熱処理すると、全部或いは大部分の水酸化エルビウムがオキシ水酸化エルビウムに変化するので、正極活物質粒子の表面の一部にオキシ水酸化エルビウムが固着した状態となる。但し、一部は水酸化エルビウムの状態で残存する場合があるので、正極活物質粒子の表面の一部には水酸化エルビウムが固着されている場合もある。得られた正極活物質について、走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、正極活物質の表面の一部に、平均粒子径100nm以下のエルビウム化合物が固着していることが認められた。また、エルビウム化合物の固着量をICPにより測定したと
ころ、エルビウム元素換算で、LiCoO
2に対して0.06質量%であった。この得られた正極活物質のBET値を測定すると0.60m
2/gであった。以下、このようにして得られた正極活物質を(コートLCO)と称する。
【0078】
正極活物質として、上記のように得られたコートLCOを用い、正極活物質(コートLCO)と、正極添加剤(Li
5FeO
4)とを、質量比で96:4となるように混合して正極を作製したこと以外は実施例1−1と同様に単極式セルを作製し、これを単極式セルD2とした。実施例4−2の正極中の正極活物質層の空孔率を26%とした。
【0079】
<実施例4−3>
[正極活物質としてのNCM333の調製]
Li
2CO
3と、Ni
1/3Co
1/3Mn
1/3(OH)
2で表される共沈水酸化物を、Liと遷移金属全体のモル比が1.08:1になるように石川式らいかい乳鉢にて混合した後、空気雰囲気中にて950℃で20時間熱処理後に粉砕することにより、平均二次粒子径が約12μmのLi
1.04Ni
0.32Co
0.32Mn
0.32O
2(NCM333と称する)を得た。
【0080】
正極活物質として、上記のように得られたNCM333を用い、正極活物質(NCM333)と、正極添加剤(Li
5FeO
4)とを、質量比で96:4となるように混合して正極を作製したこと以外は実施例1と同様に単極式セルを作製し、これを単極式セルD3とした。実施例4−3の正極中の正極活物質層の空孔率を23%とした。
【0081】
<実施例4−4>
[正極活物質としてのNCM523の調製]
Li
2CO
3と、Ni
0.5Co
0.2Mn
0.3(OH)
2で表される共沈水酸化物を、Liと遷移金属全体のモル比が1.08:1になるように石川式らいかい乳鉢にて混合した後、空気雰囲気中にて950℃で20時間熱処理後に粉砕することにより、平均二次粒子径が約12μmのLi
1.04Ni
0.5Co
0.2Mn
0.3O
2(NCM523と称する)を得た。
【0082】
正極活物質として、上記のように得られたNCM523を用い、正極活物質(NCM523)と、正極添加剤(Li
5FeO
4)とを、質量比で96:4となるように混合して正極を作製したこと以外は実施例1−1と同様に単極式セルを作製し、単極式セルD4とした。実施例4−4の正極中の正極活物質層の空孔率を25%とした。
【0083】
<実施例4−5>
[正極活物質としてのNCAの調製]
LiOHと、Ni
0.8Co
0.17Al
0.03(OH)
2で表される共沈水酸化物を、Liと遷移金属全体のモル比が1.08:1になるように石川式らいかい乳鉢にて混合した後、酸素雰囲気中にて800℃で20時間熱処理後に粉砕することにより、平均二次粒子径が約12μmのLi
1.04Ni
0.8Co
0.17Al
0.03O
2(NCAと称する)を得た。
【0084】
正極活物質として、上記のように得られたNCAを用い、正極活物質(NCA)と、正極添加剤(Li
5FeO
4)とを、質量比で96:4となるように混合して正極を作製したこと以外は実施例1−1と同様に単極式セルを作製し、これを単極式セルD5とした。実施例4−5の正極中の正極活物質層の空孔率を24%とした。
【0085】
<比較例4−1>
正極添加剤を添加せず、正極活物質(LiCoO
2)のみを用いたこと以外は実施例1−1と同様に単極式セルを作製し、これを単極式セルD6とした。比較例4−1の正極中の正極活物質層の空孔率を27%とした。
【0086】
<比較例4−2>
正極添加剤を添加せず、正極活物質(NCM333)のみを用いて、正極を作製したこと以外は、実施例1−1と同様に単極式セルを作製し、これを単極式セルD7とした。比較例4−2の正極中の正極活物質層の空孔率を27%とした。
【0087】
<比較例4−3>
正極添加剤を添加せず、正極活物質(NCM523)のみを用いて、正極を作製したこと以外は、実施例1−1と同様に単極式セルを作製し、これを単極式セルD8とした。比較例4−3の正極中の正極活物質層の空孔率を24%とした。
【0088】
<比較例4−4>
正極添加剤を添加せず、正極活物質(NCA)のみを用いて、正極を作製したこと以外は、実施例1−1と同様に単極式セルを作製し、これを単極式セルD9とした。比較例4−4の正極中の正極活物質層の空孔率を28%とした。
【0089】
単極式セルD1〜D9の充放電を単極式セルA1と同様に行い、充電容量(mAh/cc)及び負荷特性(%)を算出した。充放電後、単極式セルD1〜D9を分解し、正極を取り出して、正極活物質層の空孔率を測定した。その結果、実施例4−1及び比較例4−4の正極活物質層の空孔率は29%であり、実施例4−2、4−4、比較例4−1、4−2の正極活物質層の空孔率は28%であり、実施例4−3の正極活物質層の空孔率は25%であり、比較例4−3の正極活物質層の空孔率は26%であり、実施例4−5の正極活物質層の空孔率は27%であった。
【0090】
表4に、実施例4−1〜4−5及び比較例4−1〜4−4の正極活物質及び正極添加剤の組成、正極活物質に対する正極添加剤の混合比率、正極活物質層の空孔率、充電容量及び負荷特性(2.0It)の結果をまとめた。
【0091】
【表4】
【0092】
表4の結果から分かるように、正極活物質層の正極添加剤として、初回充電時に4.2V(vs.Li/Li
+)以下でガス発生するLi含有化合物を用いた実施例4−1〜4−5は、上記Li含有化合物を添加してない比較例4−1〜4−4と比較して、負荷特性の低下が抑制された。また、正極活物質層の空孔率が30%以下である実施例4−1〜4−5は、いずれも高い充電容量が得られた。
【0093】
また、実施例4−1〜4−5の結果から分かるように、種々の正極活物質を用いても、同様に負荷特性の低下が抑制されたが、特に、正極活物質に希土類元素を付着させた実施例4−2は、正極活物質に希土類元素を付着させていない実施例4−1、4−3〜4−5と比較して、負荷特性の低下がより抑制された。これは、正極活物質の表面上の希土類元素の触媒作用により、初回充電時のLi含有化合物の分解反応が特に正極活物質表面で促進され、正極活物質層中の空孔形成状態が良化し、活物質表面に効果的に電解液が供給されるためと考えられる。