特許第6121488号(P6121488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6121488物体の認識及び距離測定のための距離測定センサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6121488
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】物体の認識及び距離測定のための距離測定センサ
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/88 20060101AFI20170417BHJP
   G01S 17/10 20060101ALI20170417BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   G01S17/88
   G01S17/10
   G01C3/06 120Q
   G01C3/06 140
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-140442(P2015-140442)
(22)【出願日】2015年7月14日
(65)【公開番号】特開2016-24191(P2016-24191A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2015年7月14日
(31)【優先権主張番号】10 2014 110 203.7
(32)【優先日】2014年7月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591005615
【氏名又は名称】ジック アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ナッツ
(72)【発明者】
【氏名】ティモ クンツェ
(72)【発明者】
【氏名】マルティン フィッシャー
【審査官】 三田村 陽平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−128075(JP,A)
【文献】 特開2011−089986(JP,A)
【文献】 特開2003−216973(JP,A)
【文献】 特開2008−309603(JP,A)
【文献】 特開2009−110124(JP,A)
【文献】 特開2010−151788(JP,A)
【文献】 特開2011−053005(JP,A)
【文献】 特開2013−205356(JP,A)
【文献】 特開2013−156718(JP,A)
【文献】 特表2009−529665(JP,A)
【文献】 特開2011−095253(JP,A)
【文献】 特開2011−174889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48− 7/51
G01S 17/00−17/95
G01C 3/00− 3/32
G01B 11/00−11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域(4)内における光伝播時間に基づいて物体(2)の距離を測定するための距離測定用光電センサであって、発信光線を送出するための発光器(6)と、監視領域(4)内の物体(2)により拡散反射又は直反射された発信光から受信信号(18)を生成する受光器(8)と、前記受光信号(18)をサンプリングするためのA/D変換器(10)と、前記受信信号(18)を評価するための評価ユニット(12)とを備え、前記発信光線は前記物体(2)を一方向に走査するように周期的に送出され、前記受信信号(18)は周期的にサンプリングされ、該受信信号(18)を保存するために記憶部(14)が設けられ、
前記記憶部(14)に基準受信信号(20)が保存され、
前記評価ユニット(12)は前記受信信号(18)と前記基準受信信号(20)とを比較するように構成され、
更に前記評価ユニット(12)は前記比較に応じて少なくとも1つの物体確認信号を信号出力部(16)へ出力するように構成され、
前記物体確認信号は前記基準受信信号(20)が前記受信信号(18)と一定の許容域内で一致するか否かを示し、それにより、許容しうる物体(22)又は許容できない物体(24)を確認することが可能である、距離測定用光電センサにおいて、
前記評価ユニット(12)は、第1ステップにおいて、予備走査受信信号(26)を用いて前記物体(2)の走査を行うことにより該物体(2)の長さを確定するように構成されており、その際に前記物体(2)が前記センサ(1)のそばを通るように動かされ、
更に前記評価ユニット(12)は、第2ステップにおいて、前記物体(2)を走査することにより、物体の輪郭の基準受信信号(20)を該物体(2)の長さの範囲内で確定するように構成されており、その際に該物体(2)が改めてセンサ(1)のそばを通るように動かされることを特徴とする距離測定用光電センサ。
【請求項2】
前記評価ユニット(12)が、基準受信信号(20)と受信信号(18)の差分の形成に基づいて、許容しうる物体(12)又は許容できない物体(24)を確認するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の距離測定用光電センサ。
【請求項3】
前記評価ユニット(12)が、基準受信信号(20)と受信信号(18)の乗算に基づいて、許容された物体(22)又は許容できない物体(24)を確認するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の距離測定用光電センサ。
【請求項4】
前記評価ユニット(12)が、前記予備走査受信信号(26)に基づいて前記基準受信信号(20)の走査点の数を確定するように構成されていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の距離測定用光電センサ。
【請求項5】
前記評価ユニット(12)が、前記予備走査受信信号(26)に基づいて前記基準受信信号(20)の走査点を確定するように構成されていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の距離測定用光電センサ。
【請求項6】
前記評価ユニット(12)が、前記予備走査受信信号(26)に基づいて前記基準受信信号(20)の測定範囲及び/又は距離分解能を確定するように構成されていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の距離測定用光電センサ。
【請求項7】
前記評価ユニット(12)が、複数の物体から基準受信信号(20)を取得するために複数の同種の物体(2)を次々に走査するように構成されており、更に該評価ユニット(12)が、前記基準受信信号(20)から、いくつかの物体(2)の同一の位置においてそれぞれ平均値を算出するように構成されていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の距離測定用光電センサ。
【請求項8】
前記評価ユニット(12)が、物体の輪郭の一致度が最も高い第1の基準物体である第1の物体(2)の第1の基準受信信号(20)と、物体の輪郭の一致度が最も低い第2の基準物体である第2の物体(2)の第2の基準受信信号(20)とを教え込むように構成されており、更に該評価ユニット(12)が、前記第1の基準受信信号(20)と前記第2の基準受信信号(20)との差から、許される許容値を算出するように構成されていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の距離測定用光電センサ。
【請求項9】
物体の移動速度が一定であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の距離測定用光電センサ。
【請求項10】
変化する物体移動速度を検出するために外部のトリガ信号を読み取ることができることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の距離測定用光電センサ。
【請求項11】
前記評価ユニット(12)が、複数の基準物体を教え込み、異なる許容しうる物体(22)及び/又は異なる許容できない物体(24)を区別するように構成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の距離測定用光電センサ。
【請求項12】
前記基準受信信号(18)に対する前記受信信号(20)の一致度を示すために表示ユニットが形成されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の距離測定用光電センサ。
【請求項13】
前記少なくとも1つの物体確認信号がデジタル式のスイッチ信号であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の距離測定用光電センサ。
【請求項14】
前記少なくとも1つの物体確認信号が連続的なアナログ信号であることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の距離測定用光電センサ。
【請求項15】
入力手段が設けられ、該入力手段が物体の長さ、記録速度、トリガ及び/又は許容域を設定するために構成されていることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の距離測定用光電センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプレアンブルに記載の距離測定センサに関する。
【背景技術】
【0002】
光伝播時間法により監視区間に沿って標的までの距離又は物体までの距離を測定する手段として単一ビーム方式の検知器として光電式の距離測定センサが知られている。
【0003】
数多くのセンサが信号伝播時間原理を用いている。この原理では、信号伝播時間、つまり信号の送信と受信の間の時間間隔が伝播速度を介して距離に換算される。この方法では、マイクロ波や光など電磁スペクトルの様々な周波数領域が利用される。マイクロ波の用途の1つは充填レベルの測定である。この場合、充填レベルを測定すべき媒質の境界面で信号が反射されるまでの伝播時間が測定される。放射されたマイクロ波はプローブに導入されるか(時間領域反射測定法、TDR)、あるいはレーダの場合のようにそのまま放射されて境界面で反射される。
【0004】
光伝播時間法の原理による光電センサの場合、光信号が送信され、物体により拡散反射又は直反射された光信号が受信されるまでの時間が測定される。光電式の距離測定は、例えば乗り物の安全確保、物流や工場の自動化、安全技術といった分野で必要とされることがある。多くの場合、求められる出力値は距離の測定値である。また、光伝播時間法による距離測定装置にはスイッチのように動作するものもある。この場合、所定の距離にあることが期待される反射器もしくは直反射性又は拡散反射性の物体の距離の変化が認識される。特別な用途として反射器との間隔を監視する反射式光遮断機がある。さらに光通過時間法は、監視平面又は3次元空間領域をも周期的に走査する距離測定用レーザスキャナの動作原理でもある。
【0005】
距離測定のために、監視領域内の表面で拡散反射又は直反射された光信号の発信から受信までの光伝播時間が測定される。従来より、パルス伝播時間法と位相法という2つの異なる方法がある。パルス伝播時間法では、個別の短い光パルスが送出され、該パルスの何らかの特徴(例えば極大)を利用してその伝播時間が特定される。位相法では、光が振幅変調され、受信光に対する発信光の位相差が評価される。位相法の場合、初めは一意性の範囲が光の変調に用いられる周波数により制限されるが、これは追加の手段により拡大可能である。
【0006】
特許文献1には防護領域の監視方法が開示されている。この方法では、少なくとも1つの光信号が送出され、防護領域を通過し、該防護領域の境界を少なくともある一定の範囲内で画定する境界要素へと向かい、該境界要素により受光器へと直反射又は拡散反射され、該光信号の発信から受信までの光伝播時間が算出される。そして、算出された光伝播時間が所定の最大の光伝播時間から既定の閾値以上ずれていた場合、割り込み信号が出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】EP 1 089 030 B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、物体をより良く認識し、距離測定センサ内で直ちにより高速に評価を行うことができる、改良された距離測定用光電センサを距離測定のために提供することである。また別の課題は、より安定性が高く確実な物体認識を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は請求項1に係る発明により解決される、本発明に係る距離測定用光電センサは、監視領域において光伝播時間に基づいて物体の距離を測定するためのセンサであって、発信光線を送出するための発光器と、前記監視領域内の物体により拡散反射又は直反射された発信光から受信信号を生成するための受光器と、前記受信信号をサンプリングするためのA/D変換器と、前記受信信号を評価するための評価ユニットとを備える。前記発信光線は周期的に送出され、前記受信信号は周期的にサンプリングされる。また、受信信号を保存するために記憶部が設けられ、該記憶部には基準受信信号が保存される。前記評価ユニットは前記受信信号と前記基準受信信号とを比較するように構成され、更に該評価ユニットは前記比較に応じて少なくとも1つの物体確認信号を信号出力部へ出力するように構成されている。該物体確認信号は前記基準受信信号が前記受信信号と一定の許容域内で一致するか否かを示し、それにより、許容しうる物体又は許容できない物体を確認することができる。また前記評価ユニットは、第1ステップにおいて、予備走査受信信号を用いて前記物体の走査を行うことにより該物体の長さを確定するように構成され、その際に該物体が前記センサのそばを通るように動かされる。また前記評価ユニットは、第2ステップにおいて、前記物体を走査することにより、物体の輪郭の基準受信信号を該物体の長さの範囲内で確定するように構成されており、その際に該物体が改めて前記センサのそばを通るように動かされる。
【0010】
予備走査受信信号を用いた物体の走査により、物体の長さ、特に物体の大まかな輪郭を評価ユニットによって把握することができる。その後、その大きさに応じて、基準受信信号を用いた物体の正確な走査が行われる。その際、認識対象の物体から、限られた数の基準受信信号だけを最適な方法で取得することができる。なぜなら、物体の長さは既に分かっており、場合によっては既に物体の大まかな輪郭の情報さえあるからである。それゆえ、物体に沿って基準受信信号を最適に分配することができる。
【0011】
前記予備走査受信信号と前記基準受信信号は例えば教え込み(ティーチイン)工程により算出される。そのために、距離測定用光電センサに、教え込みモードを作動させる適宜の操作手段又は入力装置を設けることができる。その場合、教え込み工程の枠内で、教え込み対象の物体を、例えば受信信号に基づく物体認識の場合と同じ速度又はそれより低い速度でセンサのそばを通るように動かすことができる。その際、予備走査受信信号に応じて様々な分布又は様々な密度で基準受信信号を取得することができる。
【0012】
本発明において、評価ユニットは距離測定用光電センサのケーシング内に統合される。
【0013】
本発明の好ましい実施形態では、評価ユニットが、基準受信信号と受信信号の差分の形成に基づいて、許容しうる又は許容できない物体を確認するように構成される。差分の形成は、許容しうる物体と許容できない物体の区別を非常に簡単に確認できる方法である。基準受信信号と受信信号の差分が数量的に一定の許容域内にあり且つ所定の閾値より小さければ、その物体は許容しうる物体に分類される。基準受信信号と受信信号の差分が数量的に一定の許容域内にあり且つ所定の閾値より大きければ、その物体は許容できない物体に分類される。これにより、許容しうる物体と許容できない物体を非常に簡単に区別できる。
【0014】
差分の形成は、例えば次の式により行うことができる。

【数1】

ここで「Teach」は基準受信信号、「Shape」は受信信号、「i」は連番である。
【0015】
別の実施形態では、評価ユニットが、基準受信信号と受信信号の乗算に基づいて、許容された又は許容できない物体を確認するように構成される。個々の走査点の差分を形成する代わりに、この実施形態では、基準受信信号の個々の走査点と受信信号の走査点の乗算が行われる。この計算処理も評価ユニットにより簡単に実行できる。
【0016】
更に別の実施形態では、評価ユニットが、基準受信信号の最初の導出と受信信号の最初の導出に基づいて、許容された又は許容できない物体を確認するように構成される。この計算処理も評価ユニットにより簡単に実行できる。
【0017】
本発明の発展形態では、評価ユニットが、予備走査受信信号に基づいて基準受信信号の走査点の数を確定するように構成される。この実施形態では、走査された輪郭の複雑さに応じて走査点の数を設定できる。物体の輪郭が、単純な幾何学図形のようにあまり複雑でない場合、走査点の選択数を少なくすることができる。例えば走査点を8個程度から64個程度にすることができる。これにより評価時間を大幅に短縮できる。一方、幾何学的に不規則な輪郭を持つ物体のように、物体の輪郭がより複雑又は非常に複雑である場合は走査点の選択数を多くすることができる。例えば、64個程度から256個程度又はより多くの走査点を設定することができる。このようにすると評価時間が若干長くなるものの、より正確な物体認識が保証される。
【0018】
本発明の発展形態では、評価ユニットが、予備走査受信信号に基づいて基準受信信号の走査点を確定するように構成される。このようにすれば、物体の不連続な走査を行うことが可能である。例えば、物体の開始部及び終了部、物体の輪郭の開口部又は中断部、並びに物体の急峻な縁の少し前又は少し後であって物体の形状の勾配が大きく変化している部分において、基準受信信号を取得する。このようにすると、許容されたものとして走査されることが少なくとも期待される物体について、該物体の輪郭に対して最適な分解能を得るために、利用可能な最大数の走査点が最適に配分される。
【0019】
本発明の発展形態では、評価ユニットが、予備走査受信信号に基づいて基準受信信号の測定範囲及び/又は距離分解能を確定するように構成される。このようにすれば、少なくとも存在が期待されている許容しうる物体について、できるだけ正確な距離値を取得するために、該許容しうる物体に最も適した測定範囲及び/又は距離分解能を設定することができるため、物体の分類や認識の精度が高まる。
【0020】
好ましい実施形態では、評価ユニットが、複数の物体から基準受信信号を取得するために複数の同種の物体を次々に走査するように構成され、更に該評価ユニットが、前記基準受信信号から、いくつかの物体の同一の位置においてそれぞれ平均値を算出するように構成される。これにより、同種ではあるが僅かに異なる複数の許容しうる物体から決められる許容域を定義することができる。このようにすれば、評価ユニットは、物体の輪郭の若干のずれ又は物体の位置の若干のずれを許容できる。その場合、評価ユニットは、同種の許容しうる物体の基準受信信号に基づいて自動的に許容域を決める。
【0021】
本発明の発展形態では、評価ユニットが、物体の輪郭の一致度が最も高い第1の基準物体である第1の物体の第1の基準受信信号と、物体の輪郭の一致度が最も低い第2の基準物体である第2の物体の第2の基準受信信号とを教え込むように構成され、更に該評価ユニットが、前記第1の基準受信信号と前記第2の基準受信信号との差から、許される許容値を算出するように構成される。これにより、2つの基準物体だけで、許容域を示す許容値を確定することができる。これにより、非常に簡単且つ高速にセンサへの教え込みを行うことができる。
【0022】
特に好ましい実施形態では物体の移動速度が一定である。これにより、様々な物体に対する走査の尺度が常に等しくなる。物体の一定の移動速度は本実施形態のセンサ又は評価ユニットに分かっている必要はない。全ての物体の速度が同じであるため、物体の歪みが生じることがなく、それゆえ常に物体の輪郭を正しく比較することができる。
【0023】
更なる発展形態では、変化する物体移動速度を検出するために外部のトリガ信号を読み取ることができる。この場合、外部のトリガ信号を通じて、実際に用いられている物体移動速度がセンサに伝えられる。この実際の物体移動速度に基づいて、受信信号を基準受信信号と比較し、圧縮又は伸張により歪みを解消することができる。
【0024】
更なる発展形態では、評価ユニットが、複数の基準物体を教え込み、異なる許容しうる物体及び/又は異なる許容できない物体を区別するように構成される。このようにすれば、単一のセンサによって、センサのそばを次々に通過する様々な異なる物体を区別し、様々に割り当て又は分類を行うことができる。例えば、ベルトコンベア上の様々な大きさの荷物を仕分けることができる。この場合、仕分け装置が距離測定用光電センサにより制御される。
【0025】
好ましい実施形態では、基準受信信号に対する受信信号の一致度を示すために表示ユニットが形成される。これにより、ユーザは比較の結果をセンサ上で直接読み取ることができる。
【0026】
本発明の発展形態では、前記少なくとも1つの物体確認信号がデジタル式のスイッチ信号である。この1つ又は複数のデジタル式のスイッチ信号は単純に後段の制御装置で読み取って処理することができる。例えば、この1つ又は複数のデジタル式のスイッチ信号により仕分け装置を直接制御することができる。
【0027】
もっとも、その物体確認信号を他の出力部、インターフェイス又はフィールドバスを通じて出力してもよい。それはスイッチ出力でもよいし、例えばIO−Linkの出力でもよい。
【0028】
好適なフィールドバスは、例えばプロフィバス(PROFIBUS)、インターバス(INTERBUS)又はデバイスネット(DeviceNet)である。
【0029】
IO−Linkはインテリジェントなセンサやアクチュエータを自動化システムに接続するための通信システムであり、IEC61131−9において「Single-drop digital communication interface for small sensors and actuators」(SDCI)という名称で規格化されている。
【0030】
本発明の発展形態では、前記少なくとも1つの物体確認信号が連続的なアナログ信号、特に4mAから20mAまでの範囲の値を有する電流信号又は特に0Vから10Vまでの範囲の値を有する電圧信号である。このようなアナログ信号は数多くの制御装置により処理することができる。その場合、アナログ信号を通じて比較対象のずれに関する信号を直接伝送することができる。例えば品質管理に応用する場合、あるべき輪郭からのずれの度合いをアナログ信号から取得して、連続的な品質監視を行うこともできる。この実施形態では少なくとも1つのアナログ出力が設けられる。
【0031】
本発明の発展形態では入力手段が設けられ、該入力手段は物体の長さ、記録速度、トリガ閾値及び/又は許容域を設定するために構成されている。
【0032】
以下、本発明について、更なる利点及び特徴をも考慮しつつ、添付の図面を参照しながら、実施例に基づいて詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】一次元の光電式距離検知器として構成された本発明の模範的な一実施形態に係る距離測定センサのブロック回路図。
図2】監視領域内にある物体の距離を測定するための距離測定用光電センサ。
図3】物体の長さの教え込みのための図。
図4】物体の輪郭の教え込みのための図。
図5】50%の許容閾値を示す図。
図6】30%から90%までの許容域を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下の図において同一の部分には同一の符号が付されている。
【0035】
図1は一次元の光電式距離検知器として構成された本発明の一実施形態である距離測定センサ1のブロック回路図である。発光器6は、発射光が分割鏡36を透過した後、レンズ34を通って監視領域4に達するように方向付けられている。この領域内の光路上に物体2があれば、発射光はその物体2により直反射又は拡散反射され、再びレンズ34を通って分割鏡36へ戻り、そこで受光器8へと反射され、そこで捕捉される。なお、分割鏡36を用いた構成は単なる例と理解すべきであり、例えば二重眼方式のような分割鏡36のない構成も本発明に含まれる。また、一次元光電センサに関する説明であることも単に例示的なものと理解すべきである。というのも本センサは、光格子やレーザスキャナのような多次元の装置にすることも、あるいはTDR方式の充填レベルセンサのように全く異なる電磁信号で動作する装置にすることも可能だからである。
【0036】
評価ユニット12は発光器6を制御し、受光器8の信号を評価する。物体2の距離測定のために光伝播時間を算出するために、光パルスが送出され、再度受信されて、発光時点と受光時点の間の時間差が求められる。ただしこの評価は、光パルスが1つしかない個別事象に基づいて行われる必要はなく、多数の個別事象から成るヒストグラムを用いて評価を行ってもよい。つまり、本発明においては、単一の光パルスや光パルス群のほか、ヒストグラム解析に基づく信号も受信信号と理解される。
【0037】
図2は、監視領域4内における光伝播時間に基づいて物体2の距離を測定するための距離測定用光電センサ1を示している。センサ1は、発信光線を送出するための発光器6と、監視領域4内の物体2により拡散反射又は直反射された発信光から受信信号18を生成する受光器8と、受光信号18をサンプリングするためのA/D変換器10と、受信信号18を評価するための評価ユニット12とを備えている。発信光線は周期的に送出され、受信信号18は周期的にサンプリングされる。また、受信信号18を保存するために記憶部14が設けられ、該記憶部14には基準受信信号20が保存される。評価ユニット12は受信信号18と基準受信信号20とを比較するように構成され、更に評価ユニット12は前記比較に応じて少なくとも1つの物体確認信号を信号出力部16へ出力するように構成されている。物体確認信号は基準受信信号20が受信信号18と一定の許容域内で一致するか否かを示し、それにより、許容しうる物体22又は許容できない物体24を確認できる。また評価ユニット12は、第1ステップにおいて、予備走査受信信号26を用いて物体2の走査を行うことにより該物体2の長さを確定するように構成されており、その際に物体2がセンサ1のそばを通るように動かされる。また評価ユニット12は、第2ステップにおいて、物体2を走査することにより、物体の輪郭の基準受信信号20を該物体2の長さの範囲内で確定するように構成されており、その際に物体2が改めてセンサ1のそばを通るように動かされる。
【0038】
図3は物体2の長さの教え込みのための図である。評価ユニットは、第1ステップにおいて、予備走査受信信号26を用いて物体2の走査を行うことにより該物体2の長さを確定するように構成されており、その際に物体2がセンサ1のそばを通るように動かされる。物体2の長さの教え込みの際、まずバックグラウンド38(例えばベルトコンベア28)を確定してもよい。このために、走査レートに応じていくつかの測定値又は受信信号が集められ、平均値が算定される。床面(つまりベルトコンベアの上面)とトリガ閾値との間の間隔は例えば25mmである。この値はセンサ内にパラメータとして設定可能である。
【0039】
物体の長さの教え込み段階の継続時間はユーザが自ら決定する。例えば、距離値がトリガ閾値40を下回ったら直ちに物体2の走査が始まる。最新の数の予備走査受信信号26が例えば変数Aに保存される。そして距離値がトリガ閾値40を越えたら、最新の数の予備走査受信信号26が変数Aから変数Bにコピーされる。こうして、記憶部内の変数Bには、物体2の潜在的な長さが走査点の形で保持される。距離値がトリガ閾値40を再び下回った後再び越えると、変数Bが更新される。教え込み工程の間に予備走査受信信号26の距離値がトリガ信号40を下回らなければ、教え込み工程は無効である。これは、例えば物体の長さの教え込み工程の終了後に表示手段を通じて通知される。
【0040】
図4は物体の輪郭の教え込みのための図である。評価ユニットは、第2ステップにおいて、前記物体を走査することにより、物体の輪郭の基準受信信号20を該物体の長さの範囲内で確定するように構成されており、その際に該物体が改めてセンサのそばを通るように動かされる。
【0041】
予備走査受信信号を用いた物体の長さの把握が予め行われていなければ、物体の輪郭の教え込みは行われない。例えば物体の長さが与えられていない場合、表示ユニットにエラーレポートが出力され、直ちに物体の輪郭の認識が終了する。
【0042】
一方、物体の長さの把握が行われていれば、センサは、例えばトリガ閾値40を下回ったら物体を走査し、基準受信信号20を記憶部に格納する。走査の間、例えば各測定値が妥当性検査にかけられる。例えば256個の走査点すなわち基準受信信号20が記録されたら、評価ユニットにおいてこれらの基準データの処理が始まる。使用されない走査点は記憶部において0に設定される。というのも、例えば有効な走査点が194個であれば、62個の走査点はバックグラウンドつまりベルトコンベアに当たるからである。バックグラウンドつまりベルトコンベアは比較結果に影響を与えてはならない。図4は走査点のゼロ設定を示している。
【0043】
物体の輪郭の教え込みの際の移動速度が物体の長さの教え込みの際よりも速い場合、認識された物体の輪郭が圧縮される。図4の「事例1」のように、最初にトリガ閾値を下回った走査点まで全ての走査点が0に設定される。
【0044】
物体の輪郭の教え込みの際の移動速度が物体の長さの教え込みの際よりも遅い場合、物体の輪郭が引き伸ばされる。物体の長さの走査点つまり予備走査受信信号の数よりも物体の輪郭の走査点つまり基準受信信号20の数の方が多い場合、図4の「事例2」のように、物体の輪郭の走査点の数が物体の長さの走査点の数に設定される。続いて、教え込まれた物体の輪郭を例えば256個の値を持つ尺度に縮小するために、物体の輪郭の基準受信信号20から倍率が算出される。
【0045】
図5は50%の許容閾値30を示している。これに対して評価ユニットは、物体の輪郭の一致度が最も高い第1の基準物体である第1の物体の第1の基準受信信号と、物体の輪郭の一致度が最も低い第2の基準物体である第2の物体の第2の基準受信信号とを教え込むように構成され、更に該評価ユニットは、第1の基準受信信号と第2の基準受信信号との差から、許される許容値つまり許容閾値30を算出するように構成される。図5に示した50%の許容閾値30は、信号出力部から出力されるデジタル式の物体確認信号のためのスイッチング閾値を規定する。
【0046】
図6は信号出力部から出力されるアナログ式の物体確認信号に対する30%から90%までの許容域32を示している。
【符号の説明】
【0047】
1…距離測定用光電センサ
2…物体
4…監視領域
6…発光器
8…受光器
10…A/D変換器
12…評価ユニット
14…記憶部
16…信号出力
18…受信信号
20…基準受信信号
22…許容しうる物体
24…許容できない物体
26…予備走査受信信号
28…ベルトコンベア
30…許容閾値
32…許容域
34…レンズ
36…分割鏡
38…バックグラウンド
40…トリガ閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6