【文献】
N. F. Verster,Regenerative Beam Extration from the 150-MeV Synchrocyclotron at the Laboratoire Curie,Proc. of Sector-Focused Cyclotrons,米国,1959年,第224−229頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記磁場減算器が矩形のプレートであり、前記磁場減算器が周囲の磁束を引き込み、前記強磁性四重極が前記背景磁場を前記第2の形状に変えるのを助けるように構成される、請求項2に記載の粒子加速器。
強磁性四重極の傾斜面が磁場減算器の広い面に対角線上に面するように前記強磁性四重極の隣りに水平方向に整列される、磁場減算器をさらに備える、請求項10に記載の粒子加速器。
【発明を実施するための形態】
【0017】
様々な図面内の類似の参照符号は、類似の要素を示す。
【0018】
概要
本明細書では、陽子又はイオン治療システムなどの、例示的なシステムにおいて使用するための粒子加速器の一例について説明する。システムは、ガントリー上に取り付けられた粒子加速器−−この例では、シンクロサイクロトロン−−を含む。ガントリーは、以下に詳述するように、加速器を患者の位置の周りに回転させることを可能にする。幾つかの実施例では、ガントリーは鋼製であり、患者の両側に配設された2つの軸受それぞれに回転するように取り付けられた2つの脚部を有する。粒子加速器は、患者が横たわる治療領域を跨設するに十分に長い鉄骨トラスによって支持されており、鉄骨トラスは、その両端においてガントリーの回転式脚部に安定して取り付けられている。患者の周りをガントリーが回転する結果、粒子加速器も回転する。
【0019】
例示的な一実施例において、粒子加速器(例えば、シンクロサイクロトロン)は、磁場(B)を発生する電流を伝導するための超電導コイルを保持する低温保持装置を含む。この例では、低温保持装置は、コイルを超電導温度、例えば4ケルビン(K)に維持するために液体ヘリウム(He)を使用する。磁気ヨークは、低温保持装置に隣接し(例えば、その周囲にあり)、粒子が加速される空洞を画成する。低温保持装置は、ストラップなどを通じて磁気ヨークに取り付けられる。
【0020】
この例示的な実施例では、粒子加速器は、プラズマ柱を空洞に供給するために粒子源(例えば、ペニングイオンゲージ−−PIG源)を含む。水素ガスは電離されてプラズマ柱を生成する。電圧源は、高周波(RF)電圧を空洞に印加して粒子をプラズマ柱から加速する。指摘されているように、この例では、粒子加速器はシンクロサイクロトロンである。したがって、プラズマ柱から粒子を引き出すときに、粒子に対する相対論的効果(例えば、粒子質量が増加する)を考慮してRF電圧が一定範囲の周波数にわたって掃引される。コイルによって発生した磁場により、プラズマ柱から加速された粒子は空洞内の軌道上で加速する。強磁性体材料配置構成部(例えば、磁気再生器)は、空洞の内側の既存の磁場を調整するために空洞の外側の近く(例えば、空洞の縁)に位置決めされ、これにより、プラズマ柱から加速された粒子の連続的な軌道の配置を変更し、最終的に、粒子がヨークを通る引き出しチャネルに出力される。引き出しチャネルは、プラズマ柱から加速された粒子を受け、受けた粒子を空洞から出力する。
【0021】
幾つかの場合において、ある種の治療を行うために、粒子ビームの断面積は、特定のサイズ及び/又は形状を有しているべきである。例えば、粒子ビームの断面は、実質的に円形であり、また数ミリメートルから数センチメートルのオーダーの直径を有することが可能である。粒子が、特定の断面サイズ及び/又は形状を形成するように集束されない場合、ビーム内の粒子の一部が非ターゲット組織に当たり、ターゲットにおける放射線量が減少し得る。引き出しチャネルは、少なくとも一部は、ビームが患者に照射される前に、粒子ビームを集束するように構成され得る。
【0022】
集束は、領域内で磁力線を曲げることによって引き起こされ得る。軸方向集束及び径方向集束を含む、幾つかの種類の集束がもたらされ得る。軸方向集束は、粒子ビームの断面形状が径方向平面(例えば、粒子軌道の水平面)内で拡大され、軸方向平面(例えば、粒子軌道の平面に垂直な垂直面)内で圧縮されることを引き起こし得る。対照的に、径方向集束は、粒子ビームの断面形状が径方向平面内で圧縮され、軸方向平面内で拡大されることを引き起こし得る。集束は、本明細書では集束領域と称される領域内で磁力線の形状を変えることによって実現され得る。磁力線の形状を変えることは、比較的大きな磁場勾配の存在下では困難な場合がある。
【0023】
この点で、空洞内の磁場は、中心において最高であり、空洞の縁に向かって減少する。粒子が空洞から出力され、引き出しチャネルによって受けられると、これらは、比較的大きな負の磁場勾配(例えば、短距離における磁場強度の比較的大きな減少)の作用を受ける。例えば、粒子は、10から15センチメートルの距離(距離が粒子の軌跡に垂直に測定される場合)にわたって8テスラを超える磁場減少を受け得る。
【0024】
幾つかの実施例では、矩形又は正方形の断面形状を有する強磁性四重極は、磁力線を集束に適切な形状に変えるために使用され得る。しかし、幾つかの実施例では、空洞の中心から引き出しチャネルへの比較的大きな負の磁場勾配のせいで(上で説明されているように)、矩形又は正方形の断面形状を有する強磁性四重極は、磁力線を適切な量の集束をもたらす形状に変えることができないことがある。したがって、幾つかの実施例において使用される集束要素は、比較的高い磁場勾配の存在下で磁場を適切な磁場形状に変えることができる、傾斜面を備える実質的に直角の台形の断面形状を有する強磁性四重極を含むものとしてよい。
【0025】
よく知られているように、粒子ビームは、同時に径方向平面及び軸方向平面内に集束させることはできない。したがって、複数の異なる集束領域を使用して、粒子ビームを径方向平面と軸方向平面とに交互に集束させ、それによって両平面内に正味の焦点を形成することができる。一例では、引き出しチャネルは、複数の集束領域を収容する。集束領域は、1つ又は複数の集束空間及び1つ又は複数の集束要素を含むことができる。高磁場シンクロサイクロトロン内の集束空間は、典型的には空隙、何もない空間又は軸方向集束をもたらす他の領域である。この集束空間内の磁力線は、背景磁場、例えば、超電導コイルによって生成される磁場の磁力線に対応する。集束要素は、典型的には、径方向集束を行うように背景磁場を変える、上で説明されている1つ又は複数の強磁性四重極などの構造体である。
【0026】
引き出しチャネル内には、典型的には2つよりも多い集束領域があり、径方向集束と軸方向集束とを順に交互に配置させる。引き出しチャネル内には、任意の適切な数の集束領域を含めることができる。軸方向及び/又は径方向集束の量は、集束領域の数及び構成と共に、システム特有のものであり、治療の種類、並びに必要とされる集束の量及び種類に応じて変わり得る。
【0027】
粒子加速器の引き出しチャネル内の粒子ビームを集束させるための前述の技術が、単一の粒子加速器内で個別に使用され得るか、又はこれらの技術のうちの2つ若しくはそれ以上が、単一の粒子加速器内で任意の適切な組み合わせで使用され得る。前述の技術が使用され得る粒子治療システムの一例を以下に提示する。
【0028】
例示的な粒子治療システム
図1に表すように、荷電粒子線治療システム500は、ビーム発生粒子加速器502を備えており、ビーム発生粒子加速器502の重量及び大きさは、ビーム発生粒子加速器502の出力が加速器ハウジングから患者50に向かう直線方向に(すなわち、実質的に直接)方向づけられている状態において、向けられた出力を有する回転式ガントリー504に取り付け可能とされる大きさである。
【0029】
幾つかの実施例では、鋼製ガントリー504は、2つの脚部508、510を有しており、2つの脚部508、510は、患者の両側に配設された2つの軸受512、514それぞれに回転するように取り付けられている。ビーム発生粒子加速器502は、患者が横たわる治療領域518を跨設するに十分に長い(患者の所望のターゲット領域をビームライン上に維持した状態で空間内において背の高いヒトを完全に回転させることができるように、例えば当該背の高いヒトの身長の2倍の長さとされる)鉄骨トラス516によって支持されており、その両端においてガントリーの回転式脚部に安定に取り付けられている。
【0030】
幾つかの実施例では、ガントリー504の回転が360°未満の範囲520、例えば、約180°に制限され、これにより、治療システムを収納するボールト524の壁から患者治療領域内部に至るまで床522を延在させることができる。また、ガントリー504の回転範囲520が制限されることによって、患者治療領域の外側に居る人々を放射線から遮蔽するための壁のうち幾つかの壁の必要な厚さを薄くすることができる。ガントリー504の回転範囲520の180°とすれば、すべての治療アプローチ角に対応するのに十分であるが、移動範囲を拡大することは優位である。例えば、回転範囲520は、180°〜330°としても、依然として治療のための床面積に対するクリアランスを確保することができる。
【0031】
ガントリー504の水平回転軸線532は、患者と療法士とが治療システムをインタラクティブに操作する場所の床より公称1メートル上方に配置されている。この床は、荷電粒子線治療システム500を遮蔽しているボールト524の最下床より約3メートル上方に位置決めされている。ビーム発生粒子加速器502は、治療ビームを回転軸線の下方から照射するために高床の下方において旋回可能とされる。患者用カウチは、ガントリー504の回転軸線532に対して略平行とされる水平面内において移動及び回転する。カウチは、このような構成によって水平面内において約270°の範囲534にわたって回転可能とされる。ガントリー504及び患者の回転範囲520、534と自由度との組み合わせによって、療法士は、ビームについての任意のアプローチ角を実質的に選択することができる。必要に応じて、患者を反対の向きでカウチに載置することによって、想定し得るすべての角度が利用可能となる。
【0032】
幾つかの実施例では、ビーム発生粒子加速器502は、超高磁界超電導電磁構造体を有しているシンクロサイクロトロンを利用する。所定の運動エネルギーを具備する荷電粒子の曲率半径は、当該荷電粒子に印加される磁場の増大に正比例して小さくなるので、超高磁界磁場超電導磁気構造体を利用することによって、加速器を小型かつ軽量にすることができる。シンクロサイクロトロンは、回転角度が一様とされる磁場であって、半径が大きくなるに従って強度が低下する磁場を利用する。このような磁場形状は、磁場の規模に関係なく実現されるので、シンクロサイクロトロン内で利用可能とされる磁場の強度(ひいては、固定された半径において結果として得られる粒子エネルギー)についての上限は理論上存在しない。
【0033】
非常に高い磁場の存在下において、超電導体はその超電導特性を失う。非常に高い磁場を実現するために、高性能な超電導線からなる巻線が利用される。
【0034】
超電導体は、一般に、その超電導特性が得られる低温状態に至るまで冷却される必要がある。本明細書で説明されている幾つかの実施例では、超電導コイル巻線を絶対零度近傍の温度に冷却するために、冷凍機が利用される。冷凍機を利用することによって、複雑性及びコストが低減される。
【0035】
シンクロサイクロトロンは、ビームが患者に対して直接生成されるようにガントリーに支持されている。ガントリーは、患者の体内の点又は患者の近傍の点(アイソセンター540)を含む水平回転軸線を中心としてサイクロトロンを回転させることができる。水平回転軸線に対して平行とされる分割式トラスが、サイクロトロンをその両側で支持している。
【0036】
ガントリーの回転範囲は、制限されているので、アイソセンターを中心とする広い領域内に患者支持領域を収容することができる。アイソセンターを中心として広範囲にわたって床を延在させることができるので、患者支持台は、アイソセンターを通過する垂直軸線542に対して相対的に移動するように、かつ垂直軸線542を中心として回転するように位置決めされ、ガントリーの回転と患者支持台の移動及び回転との組み合わせによって、患者の任意の部位に向けて任意の角度でビームを方向づけることができる。2つのガントリーアームは、背の高い患者の身長の2倍を超える長さで離隔されているので、高床の上方に位置する水平面内において、患者を乗せたカウチを回転及び並進運動させることができる。
【0037】
ガントリーの回転角度を制限することによって、治療室を囲む壁のうちの少なくとも1つの壁の厚さを低減することができる。一般にコンクリートから構成された厚肉の壁によって、治療室の外に居るヒトは放射線から防護される。陽子ビームを阻止するための下流側の壁は、同等のレベルの防護を実現するために、治療室の反対側の壁の約2倍の厚さとされる場合がある。ガントリーの回転を制限することによって、治療室を3つの側面においてアースグレード(earth grade)より低く設定することができる一方、占有領域を最も薄肉の壁に隣接させることができるので、治療室を建築するコストを低減することができる。
【0038】
図1に示されている例示的な実施例において、超電導シンクロサイクロトロン502は、シンクロサイクロトロンの磁極間隙において8.8テスラのピーク磁場で動作する。シンクロサイクロトロンは、250MeVのエネルギーを有する陽子ビームを発生する。他の実施例では、場の強度は、4から20テスラ又は6から20テスラの範囲内とすることが可能であり、陽子エネルギーは、150から300MeVの範囲内とすることが可能である。
【0039】
この例で説明されている放射線治療システムは陽子放射線治療に使用されるが、同じ原理及び詳細は、重イオン(イオン)治療システムで使用するための類似のシステムにおいて適用され得る。
【0040】
図2、
図3、
図4、
図5、及び
図6に示されているように、例示的なシンクロサイクロトロン10(例えば、
図1の502)は、粒子源90を収容する磁石システム12、高周波駆動システム91、及びビーム引き出しシステム38を含む。磁石システムによって確立される磁場は、環状超電導コイル40、42の分割されたペアと成形された強磁性(例えば、低炭素鋼)磁極面44、46のペアとの組み合わせを使用して、内部に存在する陽子ビームの集束を維持するのに適切な形状を有する。
【0041】
2つの超電導磁気コイルは、共通軸47を中心とし、この軸に沿って相隔てて並ぶ。
図7及び
図8に示されているように、コイルは、撚り合わせたケーブルインチャネル導体形態で配設される直径0.8mmのNb
3Sn系超電導線48(最初に、銅シースによって囲まれているニオブスズコアを備える)から形成される。7本の個別の線がまとめられてケーブルにされた後、これらは加熱され、ワイヤ状の最終(脆い)超電導体を形成する反応を引き起こす。材料が反応した後、ワイヤは銅チャネル(外径3.18×2.54mm及び内径2.08×2.08mm)内にハンダ付けされ及び、絶縁体52(この例では、ガラス繊維織布)で覆われる。次いで、ワイヤ53を収容する銅チャネルコイル状に巻き取られ、これは8.55cm×19.02cmの矩形の断面を有し、26の層を有し、層毎に49回の巻き数を有する。次いで、この巻きコイルは、エポキシ化合物で真空含浸される。完成したコイルは、環状ステンレスリバースボビン56上に取り付けられる。ヒーターブランケット55は間隔をあけて巻線の層内に入れられ、磁石クエンチが生じた場合にアセンブリを保護する。
【0042】
次いで、コイル全体を銅板で覆って熱伝導性及び機械的安定性を付与し、次いで、追加エポキシ層内に収容する。コイルの事前圧縮は、ステンレス製リバースボビンを加熱し、コイルをリバースボビン内に嵌め込むことによって行われ得る。リバースボビンの内径は、質量全体が4Kまで冷却されたときに、リバースボビンがコイルと接触したままになり、ある程度の圧縮をもたらすように選択される。ステンレス製のリバースボビンを約50℃に加熱し、コイルを100度のケルビン温度でコイルを嵌合すると、これが達成され得る。
【0043】
コイルの幾何学的形状は、コイルを矩形リバースボビン56内に取り付けて、コイルが通電されたときに発生する歪みを起こす力に抗して作用する復元力60を与えることによって維持される。
図5に示されているように、コイル位置は、一組の高温−低温支持ストラップ402、404、406を使用して磁石ヨーク及び低温保持装置に対して維持される。低温質量を細いストラップで支持することにより、剛体支持システムによって低温質量に与えられる熱漏洩が低減される。ストラップは、磁石が搭載された状態でガントリーを回転するときにコイルにかかる変化する重力に耐えるように構成される。これらは、重力と、磁気ヨークに対して完全対称位置から摂動したときにコイルによって生じる大きな偏心力との複合効果に耐える。それに加えて、リンクは、位置が変わった場合にガントリーが加減速する際にコイルに与えられる動的な力を低減する働きをする。それぞれの高温−低温支持体は、1つのS2ガラス繊維リンクと1つの炭素繊維リンクとを含む。炭素繊維リンクは、高温のヨークと中間温度(50〜70K)との間のピン上で支持され、S2ガラス繊維リンク408は、中間温度ピン及び低温質量に取り付けられたピン上で支持される。それぞれのリンクは長さ5cm(ピン中心からピン中心までの間)、幅17mmである。リンクの厚さは、9mmである。それぞれのピンは、高張力ステンレス鋼から作られ、直径は40mmである。
【0044】
図3を参照すると、半径の関数としての場の強度プロファイルは、大部分がコイルの幾何学的形状及び磁極面の形状の選択によって決定され、透磁性ヨーク材料の磁極面44、46は、磁場の形状を微調整して加速時に粒子ビームの集束を確実に保つように、起伏が付けられ得る。
【0045】
超電導コイルは、限定された一組の支持点71、73を除き、コイル構造体の周りに自由空間を設ける真空にされた環状アルミニウム又はステンレス製低温保持槽70の内側にコイルアセンブリ(コイル及びボビン)を封じ込めることによって絶対零度近くの温度(例えば、約4ケルビン)に維持される。代替的バージョン(
図4)において、低温保持装置の外壁は、低炭素鋼で作られ、磁場に対する追加の帰還磁路をもたらすことができる。
【0046】
幾つかの実施例では、絶対零度近くの温度は、1つの単段ギフォードマクマホン冷凍機と3つの2段ギフォードマクマホン冷凍機とを使用して達成され、維持される。それぞれの2段冷凍機は、ヘリウム蒸気を液体ヘリウムに再凝縮する凝縮器に取り付けられた第2段低温端部を有する。冷凍機のヘッドには、圧縮機から圧縮ヘリウムが供給される。単段ギフォードマクマホン冷凍機は、電流を超電導巻線に供給する高温(例えば、50〜70ケルビン)のリード線を冷却するように構成される。
【0047】
幾つかの実施例では、絶対零度近くの温度は、コイルアセンブリ上の異なる位置に配置された2つのギフォードマクマホン冷凍機72、74を使用して達成され、維持される。それぞれの冷凍機は、コイルアセンブリと接触する低温端部76を有する。冷凍機のヘッド78には、圧縮機80から圧縮ヘリウムが供給される。他の2つのギフォードマクマホン冷凍機77、79は、電流を超電導巻線に供給する高温(例えば、60〜80ケルビン)のリード線を冷却するように構成される。
【0048】
コイルアセンブリ及び低温保持槽は、ピルボックス形状の磁石ヨーク82の2つの半分81、83内に取り付けられ、完全に封じ込められる。この例では、コイルアセンブリの内径は、約74.6cmである。鉄ヨーク82は、帰還磁束84に対する経路となり、磁極面44、46の間の容積部86を磁気遮蔽して外部からの磁気的影響がその容積部内の磁場の形状を摂動するのを防ぐ。ヨークは、加速器の付近の漂遊磁場を減少させる働きもする。幾つかの実施例では、シンクロサイクロトロンは、漂遊磁場を低減する能動的帰還システムを有するものとしてよい。能動的帰還システムの一例は、その内容が参照により本明細書に組み込まれている、2013年5月31日に出願した米国特許出願第13/907,601号で説明されている。能動的帰還システムにおいて、本明細書で説明されている比較的大きな磁気ヨークは、磁極片と称される、より小さな磁気構造体で置き換えられる。超電導コイルは、本明細書で説明されている主コイルの反対側に電流を流し、磁気帰還をもたらし、それによって、漂遊磁場を低減する。
【0049】
図3及び
図9に示されているように、シンクロサイクロトロンは、磁気構造体82の幾何学的中心92の近くに配置されているペニングイオンゲージ形態の粒子源90を含む。粒子源は、以下に説明されている通りであるか、又は粒子源は、参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願第11/948,662号で説明されている種類のものであってよい。
【0050】
粒子源90は、水素の供給部99からガス管路101及び気体水素を送達する管194を通して供給される。電気ケーブル94は電流源95から電流を運び、磁場200の方向に揃えられた陰極192、190からの電子の放出を刺激する。
【0051】
幾つかの実施例では、ガス管101内のガスは、水素と1つ又は複数の種類の他のガスとの混合物を含み得る。例えば、混合物は、水素と希ガス、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、及び/又はラドンのうちの1つまたは複数を含み得る(混合物は希ガスとの使用に制限されない)。幾つかの実施例では、混合物は、水素とヘリウムとの混合物であってもよい。例えば、混合物は、水素を約75%以上、ヘリウムを約25%以下(残留ガスが含まれ得る)含有することができる。別の例では、混合物は、水素を約90%以上、ヘリウムを約10%以下(残留ガスが含まれ得る)含有することができる。例えば、水素/ヘリウム混合物は、>95%/<5%、>90%/<10%、>85%/<15%、>80%/<20%、>75%/<20%などのうちのどれかであってよい。
【0052】
粒子源中で希ガス(又は他のガス)を水素と組み合わせて使用する利点として考えられるのは、ビーム強度の増大、陰極の寿命の増加、及びビーム出力の定常性の増大である。
【0053】
この例では、放出される電子は、管194から小さな穴を通して出て来るガスを電離し、磁石構造体と1つのダミーディープレート102とによって囲まれた空間の半分にかかる1つの半円形(ディー形状)高周波プレート100によって加速する陽イオン(陽子)の供給部を形成する。遮断された粒子源の場合(その一例は、米国特許出願第11/948,662号で説明されている)、プラズマを収容する管の全部(又は実質的な部分)が加速領域で取り除かれ、これにより、比較的高い磁場内でイオンをより高速に加速することができる。
【0054】
図10に示されているように、ディープレート100は、磁石構造体によって囲まれた空間の周りの回転の半分において陽子が加速される空間107を囲む2つの半円形表面103、105を有する中空金属構造体である。空間107内に開いているダクト109は、ヨークを通り、真空ポンプ111が取り付けられ得る外部の場所に延在し、これにより、空間107及び、加速が行われる真空槽119内の空間の残り部分を真空にする。ダミーディー102は、ディープレートの露出されている縁の近くに間隔をあけて並ぶ矩形の金属リングを備える。ダミーディーは、真空槽及び磁気ヨークに接地される。ディープレート100は、高周波伝送路の終端部に印加される高周波信号によって駆動され、電場を空間107内に発生させる。高周波電場は、加速された粒子ビームが幾何学的中心からの距離を増やすにつれ時間に関して変化させられる。高周波電場は、その内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願第11/948,359号、名称「Matching A Resonant Frequency Of A Resonant Cavity To A Frequency Of An Input Voltage」で説明されているように制御され得る。
【0055】
ビームが中央に配置された粒子源から現れて粒子源構造体をクリアし、外向きに螺旋を描き始めると、高い電圧差が高周波プレート上に必要になる。高周波プレートに20,000Vが印加される。幾つかのバージョンでは、8,000から20,000ボルトが高周波プレートに印加され得る。この高い電圧を駆動するために必要な電力を低減するために、磁石構造体は、高周波プレートと接地との間の静電容量を減らすように構成される。これは、高周波構造から外側ヨーク及び低温保持装置ハウジングまで十分な間隔をあけて穴を形成し、磁極面の間に十分な空間を確保することによって行われる。
【0056】
ディープレートを駆動するこの高電圧の交流電位は加速サイクルにおいて、陽子の増大する相対論的質量と減少する磁場とを考慮して、周波数が低くなるように掃引される。ダミーディーは、真空槽壁と共に接地電位にあるので中空半円筒形構造体を必要としない。基本周波数の異なる位相又は倍数の周波数で駆動される加速電極の複数のペアなどの、他のプレート構成も使用することが可能である。RF構造は、例えば、互いにかみ合う回転及び静止ブレードを有する回転コンデンサを使用することによって、必要な周波数掃引においてQを高く保つように調整することができる。ブレードのかみ合い毎に、静電容量が増加し、したがって、RF構造の共振周波数が下がる。ブレードは、必要な正確な周波数掃引がもたらされる形状に成形され得る。回転コンデンサ用の駆動モータは、正確な制御を行うためにRF発生器に位相固定され得る。一群の粒子が、回転コンデンサのブレードのかみ合い毎に加速される。
【0057】
加速が行われる真空槽119は、中央が薄く、縁が厚い、一般的に円筒形の容器である。真空槽は、RFプレート及び粒子源を封じ込め、真空ポンプ111によって真空にされる。高真空を維持することで、加速するイオンが気体分子との衝突で失われないことが保証され、アーク地絡を生じることなくRF電圧をより高いレベルに保つことが可能になる。
【0058】
陽子は、粒子源から始まる一般的に螺旋状の軌道経路を横断する。螺旋経路のそれぞれのループの半分において、陽子は、空間107内のRF電場を通過するときにエネルギーを獲得する。イオンがエネルギーを獲得すると、螺旋経路のそれぞれの連続するループの中心軌道の半径は、ループ半径が磁極面の最大半径に達するまで前のループより大きくなる。その位置で、磁場及び電場摂動はイオンを磁場が急速に減少する領域内に導き、イオンは高い磁場の領域から出て、本明細書では引き出しチャネルと称される真空管38に通され、サイクロトロンのヨークから出る。磁場摂動を変えてイオンの向きを決めるために磁気再生器が使用され得る。サイクロトロンから出たイオンは、サイクロトロンの周りの部屋内に存在する著しく減少する磁場の領域に入ると分散する傾向を有する。引き出しチャネル38内のビーム成形要素107、109は、イオンが空間的広がりを制限された直線的なビーム状態を保つようにイオンの向きを変える。
【0059】
磁極間隙内の磁場は、加速するときに真空槽内にビームを維持する幾つかの特性を有している必要がある。磁場指数nは、式
n = −(r/B)dB/dr
で表され、この「弱い」集束を維持するように正に保たれなければならない。ここで、rはビームの半径であり、Bは磁場である。それに加えて、幾つかの実施例では、磁場指数は、0.2未満に維持される必要があるが、それは、この値では、ビームの径方向振動及び鉛直方向振動の周期がvr=2v
zの共振で一致するからである。ベータトロン周波数は、v
r=(1−n)
1/2及びv
z=n
1/2によって定義される。強磁性磁極面は、磁場指数nが所定の磁場内で250MeVのビームと一致する最小の直径において正に維持され、0.2未満となるようにコイルによって生成される磁場を成形するように設計される。
【0060】
ビームが引き出しチャネルから出るときに、ビームはビームに対する散乱角、及び飛程変調の所望の組み合わせを形成するようにプログラム可能に制御され得るビーム形成システム125(
図5)に通される。ビーム形成システム125は、ビームを患者に導くために内側ガントリー601(
図14)と共に使用され得る。
【0061】
動作時に、プレートは、プレートの表面に沿った導通抵抗の結果として、印加される高周波場からエネルギーを吸収する。このエネルギーは、熱として現れ、熱交換器113(
図3)内に熱を放出する水冷管路108を使用してプレートから取り出される。
【0062】
サイクロトロンから出る漂遊磁場は、ピルボックス磁石ヨーク(シールドとしても働く)と別の磁気シールド114の両方によって制限される。別の磁気シールドは、空間116によって隔てられる、ピルボックスヨークを囲む強磁性体材料(例えば、鋼又は鉄)の層117を含む。ヨーク、空間、及びシールドのサンドイッチを含むこの構成は、より低い重量で所定の漏れ磁場に対する適切な遮蔽を形成する。
【0063】
上述のように、ガントリー504は、シンクロサイクロトロンを水平回転軸線532を中心として回転させる。トラス構造体516は、2つの略平行なスパン580、582を有する。シンクロサイクロトロンは、脚部508、510同士の間における略中央にかつスパン580、582同士の間に配設されている。ガントリーは、トラスの反対側に位置する脚部508、510の端部に取り付けられた釣合いおもり122、124を利用することによって軸受512、514を中心として回転するようにバランスされている。
【0064】
ガントリー504は電気モータによって回転駆動され、電気モータはガントリー504の少なくとも1つの脚部に取り付けられており、駆動歯車を介して軸受ハウジングに接続されている。ガントリー504の回転位置は、ガントリー504の駆動モータ及び駆動歯車に組み込まれた軸角エンコーダによって付与される信号から導き出される。
【0065】
イオンビームがサイクロトロンから出る位置において、ビーム形成システム125は、患者の治療に適した特性をイオンビームに付与するようにイオンビームに作用する。例えば、ビームを拡散させ、当該ビームの貫入深さを変化させることによって、所定の目標体積に対して均一に放射することができる。ビーム形成システムは、能動的走査要素に加えて、受動的散乱要素を備えている場合がある。
【0066】
シンクロサイクロトロンの能動的システムのすべて(例えば、電流駆動式超電導コイル、RF駆動式プレート、真空加速室のための真空ポンプ、超電導コイル冷却室のための真空ポンプ、電流駆動式粒子源、水素ガス源、及びRFプレート冷却装置)が、例えば制御を効果的に実施するために適切なプログラムでプログラムされた1つ以上のコンピュータを含む、適切なシンクロサイクロトロンを制御するための電子機器(図示しない)によって制御される。
【0067】
ガントリー、患者支持体、能動的ビーム成形要素、及びシンクロサイクロトロンは、適切な治療を制御するための電子機器(図示しない)によって、治療セッションを実施するために制御される。
【0068】
図1、
図11、及び
図12に表すように、ガントリー504の軸受512、514は、サイクロトロンのボールト524の壁によって支持されている。ガントリー504は、患者の上方位置、側方位置、及び下方位置を含む180°(又は180°以上)の回転範囲520にわたって、サイクロトロンを旋回させることができる。ボールト524は、ガントリー504の運動の上端及び下端点においてガントリー504が通過可能とされるのに十分な高さを有している。壁148、150を側面とする迷路146は、療法士及び患者のための出入り口経路とされる。少なくとも1つの壁152は、サイクロトロンからの直接的な陽子ビームの照射範囲に存在しないので、当該壁は、比較的薄くすることができ、依然として遮蔽機能を発揮させることができる。治療室の他の3つの側壁154、156、150/148は、遮蔽を比較的厳重にする必要があり、盛り土(図示しない)に埋設されている。土自体が必要な遮蔽の一部分を果たすことができるので、側壁154、156、158の必要な厚さは低減される。
【0069】
図12及び
図13に表すように、安全上及び美観上の理由から、治療室160は、ボールト524の内部に構成されている。治療室160は、旋回するガントリーが通過可能とされるように、かつ、治療室の床面積164の範囲を最大限に拡張するように、壁154、156、150及び収容室の基部162からガントリー504の脚部508、510同士の間に形成された空間の内部に向かって片持ち梁として形成されている。ビーム発生粒子加速器502の定期的整備は、高床の下方の空間内で実施可能とされる。ビーム発生粒子加速器502がガントリー504の下方位置に至るまで回転された場合、治療領域から離隔された空間内において、加速器全体に対してアクセス可能とされる。電源、冷却機器、真空ポンプ、及び他の支援機器は、当該離隔された空間内において高床の下方に配置されている。患者支持体170は、支持体を上下動させると共に患者を様々な位置及び向きに回転及び移動させることができる様々な態様で、治療室160の内部に取り付け可能とされる。
【0070】
図14に表すシステム602では、本明細書で説明されているタイプのビーム発生粒子加速器が、当該実施例ではシンクロサイクロトロン604が回転式ガントリー605に取り付けられている。回転式ガントリー605は、本明細書で説明されているタイプのものであり、患者支持体606の周りで角度的に回転することができる。この特徴によって、シンクロサイクロトロン604は、様々な角度から粒子ビームを患者に直接照射することができる。例えば、
図14に表すように、シンクロサイクロトロン604が患者支持体606の上方に位置している場合には、粒子ビームは患者に向かって下方に方向づけられている。代替的には、シンクロサイクロトロン604が患者支持体606の下方に位置している場合には、粒子ビームは患者に向かって上方に方向づけられている。中間ビーム経路指定機構が必要ないという意味では、粒子ビームは患者に直接印加される。本発明では、成形又はサイズ決定機構がビームの経路変更をするのではなく、同一かつ一般的なビーム軌道を維持しつつビームのサイズ及び/又は形状を決定するという点において、中間ビーム経路指定機構は成形又はサイズ決定機構と相違する。
【0071】
上述のシステムの例示的な実施例に関するさらなる詳細は、米国特許第7728311号明細書及び米国特許出願第12/275103号に開示されている。これら特許文献の内容は、参照により本明細書に組み込まれている。幾つかの実施例では、シンクロサイクロトロンは、米国特許出願第13/916401号明細書で説明されている可変エネルギーデバイスとされる場合がある。当該特許文献の内容は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0072】
例示的な実施例
図15は、粒子が軌道上で(例えば、外向きの螺旋状軌道内で)加速される空洞700の一部の上面図を示している。例が上で説明されている粒子源701は、空洞のほぼ中心に配設されている。荷電粒子(例えば、陽子又はイオン)は、粒子源701によって生成されるプラズマ柱から引き出される。荷電粒子は磁気再生器702の方へ軌道内で外向きに加速して、最終的に磁気再生器702に到達する。この例示的な実施例では、再生器702は、例えば、鋼鉄、鉄、又は任意の他の種類の強磁性体材料から作られる強磁性構造体である。再生器702は、外向きの軌道上の加速を引き起こす背景磁場を変化させる。この例では、再生器702は、その磁場を増大させる(例えば、場にバンプをもたらす)。背景磁場内のバンプは、軌道を引き出しチャネル703の方へ外向きに移動させる形で粒子軌道に影響を及ぼす。最終的に、軌道は、引き出しチャネル703に入り、そこから出る。引き出しチャネル703は、粒子を集束させるための1つ又は複数の集束要素(例えば、
図19Aの711)及び1つ又は複数の集束空間(例えば、
図20Aの713)を含む1つ又は複数の集束領域751〜760を収容し、適切なサイズ及び/又は形状の粒子ビームを得ることができる。
【0073】
さらに詳しく述べると、粒子ビーム軌道は、再生器702に接近し、相互作用する。磁場の増大の結果、粒子ビームはそこで少し向きを変え、円形である代わりに、引き出しチャネル703へ歳差運動する。
図16は、粒子源701について半径(r)に対してプロットされた磁場(B)を示している。
図16は、2つの超電導コイル709、710の間に引き出しチャネル703を有するボビン706の断面707に関する磁場のプロットも示している。
図16に示されているように、この例では、Bは約9テスラ(T)から約−2Tまで変化する。9Tは、空洞700のほぼ中心のところで出現する。磁場の極性は、磁場が超電導コイルを横切った後に変化し、その結果コイルの外に約−2Tが生じ、最終的に、約0まで減少して行く。磁場バンプ705は、再生器の地点に生じる。再生器によって引き起こされる磁場バンプ705に続いて、比較的大きい負の磁場勾配がある(例えば、空洞700内の磁場強度は半径の関数として急激に低下する)。
図16に示されているように、この例では、Bは約20cmのスパン(r=30cmからr=50cm)にわたって約9テスラ(T)から約0Tまで低下する。したがって、磁場強度は、粒子ビームが引き出しチャネル703内に入ったときには比較的大きく、粒子ビームがコイルの径方向中間点を通過するときに比較的小さい。
【0074】
幾つかの場合において、ある種の治療を行うために、粒子ビームの断面積は、特定のサイズ及び/又は形状を有しているべきである。例えば、粒子ビームの断面は、実質的に円形であり、また数ミリメートルから数センチメートルのオーダーの直径を有することが可能である。引き出しチャネル703は、適切なサイズ及び/又は形状の粒子ビームを得るために患者に照射される前に粒子ビームを集束させるように構成され得る。
【0075】
図17は、2つの超電導コイル709、710の間に引き出しチャネル703を有する例示的なシンクロサイクロトロンの断面図である。背景磁力線712は、背景磁場の形状を示している。空洞700内の背景磁場、例えば、超電導コイルによって生成される磁場は、背景磁力線712によって示されているように、弓なりに曲がった形状を有し得る。幾つかの実施例では、磁力線712は、コイル709、710の近くでより急激に外へ曲がる。磁場の弓なりに曲がった形状は、粒子ビームの軸方向集束を引き起こすことができ、これは以下でより詳しく説明されている。磁力線712の曲がりが急であればあるほど、磁場がもたらす集束力は大きくなる。
【0076】
図18は、軌道が図のページに対して出入りしている、空洞700内の例示的な粒子軌道の正面図である。
図18では、シンクロサイクロトロン及び空洞700は、図示されず、2本の磁力線712のみが図示されているが、
図17に示されている同じ磁場が存在し得る。粒子は、外向きに加速され、図のページに対して垂直な平面内で外向きの螺旋状の軌道を描く。粒子ビームは、径方向平面(例えば、粒子軌道の水平面)内で拡大され、軸方向平面(例えば、粒子軌道の平面に垂直な垂直面)内で圧縮される第1の位置714と第2の位置716の両方に示されている断面を有する。粒子ビームは、実質的に軸方向に集束され、これは以下でさらに詳しく説明されている。
【0077】
粒子が軌道に乗ると、背景磁場は、弾道を描いて伝搬する粒子が拡散するのを抑える。背景磁力線712によって示されている、背景磁場の形状も、粒子ビームの軸方向集束(例えば、弱集束)を引き起こす。軌道に乗っているときに、粒子は、軸方向平面内の軌道経路から外れることがある。磁場718の影響を受ける粒子に対する力(F)は、以下の通りである。
F=qv×B
ここで、Fは粒子に加えられる力であり、qは粒子の電荷であり、vは粒子の速度であり、Bは磁場である。F、v、及びBは、ベクトルである。これらの変数の外積の関係により、粒子は軸方向平面内で圧縮される。
【0078】
引き出しチャネルの出口で適切なサイズ及び/又は形状の粒子ビームを得るために、軸方向集束と併せて径方向集束が使用され得る。径方向集束によって、粒子ビームの断面形状が径方向平面内で圧縮され、軸方向平面内で拡大される。ここでまた
図15に表すように、引き出しチャネル703は、粒子ビームを集束させるための1つ又は複数の集束要素711を収容することができる。集束要素711は、背景磁力線(
図17の712)によって示されているように、背景磁場と実質的に反対の方向に弓なりに曲がるように磁場を変化させることによって径方向集束を実現することができる。
【0079】
図19Aは、例示的な集束要素711の断面図である。集束要素711は、強磁性四重極728(例えば、2つの強磁性四重極728)及び磁場減算器730を含む。この例示的な実施例では、強磁性四重極728は、対向する形で上下に配置構成される。磁場減算器730は、強磁性四重極728の隣りに水平方向に整列される。しかし、とりわけ、他の種類の強磁性四重極及び/又は強磁性四重極の他の構成を有する他の種類の集束要素も使用され得る。
【0080】
強磁性四重極728は、強磁性四重極の磁力線732によって示されているように、磁場が背景磁場と実質的に反対の方向に弓なりに曲がるように磁場を変化させる。磁場減算器730は、磁場減算器の磁力線734によって示されているように、周囲の磁束を引き込む。磁場減算器730は、強磁性四重極728が磁場を適切な形状に変えるのを補助する。強磁性四重極728及び磁場減算器730によって変えられる背景磁場の正味の結果は、背景磁場と実質的に反対の方向に弓なりに曲がる集束要素の磁場形状である。
【0081】
上で説明されているように、強磁性四重極728の実質的に直角の台形の断面形状は、強磁性四重極728が比較的大きな磁場勾配の存在下で背景磁場を再成形し、それでも、粒子ビームが通過するために十分に開いた開口を残すのを助けることができる。幾つかの例では、それぞれの強磁性四重極728は、傾斜面を有する。強磁性四重極728は、強磁性四重極728の傾斜面が部分的に互いに向き合うように配置構成される。磁場減算器730は、強磁性四重極728の傾斜面が磁場減算器730の広い面に対角線上に面するように強磁性四重極728の隣りに水平方向に整列される。磁束線は、強磁性体材料の表面から垂直に出て来る。傾斜面が、径方向にビームを十分に集束させられるように強磁性四重極728が磁場形状を変えるのを助ける方向に磁力線を導く。
【0082】
磁場減算器730は、集束要素の磁場形状が背景磁場と反対の方向に極端に弓なりに曲がるのを防ぐ。磁場減算器730は、図示されているように矩形のプレートであってよく、これは磁束を引き込み、磁場が強磁性四重極の間に過剰に伸長するのを防ぐ。
【0083】
強磁性四重極728は、鉄又は鋼鉄などの強磁性体材料から作ることができる(ただし、鋼鉄の代わりに、又はそれに加えて、他の材料を使用することもできる)。磁場減算器730は、強磁性四重極728を作る材料と異なるか、又は同じである強磁性体材料から作ることもできる。
【0084】
図19Bは、空洞700及び引き出しチャネル703に関する例示的な集束要素711を示している。この例では、粒子738は軌道内で外に加速し引き出しチャネル703の方へ向かう。最終的に、軌道は、引き出しチャネル703に入る。引き出しチャネル703は、例示的な集束要素711を収容する。例示的な集束要素711は、背景磁場と実質的に反対の方向に弓なりに曲がる、集束要素の磁力線736によって示されている、集束要素の磁場形状を形成するように磁場を変化させる。例示的な集束要素711は、粒子ビームを、径方向平面内で圧縮し、軸方向平面内で拡大することによって径方向に集束させることができる。
【0085】
上で説明されているように、粒子ビームは、同時に径方向平面及び軸方向平面の両方に集束させることはできない。例えば、粒子ビームが、径方向平面内で圧縮されると、これは軸方向平面内では拡大され、またその逆も同様である。したがって、1つ又は複数の集束領域を使用して、正味の焦点が適切なサイズ及び/又は形状を有する粒子ビームを形成するまで粒子ビームを径方向平面と軸方向平面とに交互に集束させることができる。
【0086】
一例では、引き出しチャネル703は、複数の集束領域を収容する。集束領域は、1つ又は複数の集束空間713及び1つ又は複数の集束要素711を含むことができる(例えば、
図20A及び20B)。幾つかの実施例では、それぞれの集束空間713は、粒子ビームが通過する空虚な空間である。集束空間713は、背景磁場、例えば、超電導コイルによって生成される磁場の磁力線の形状に対応する磁場形状を有することができる。集束空間713は、
図18に示されているように、軸方向に集束することができる。
【0087】
一例では、引き出しチャネル703は、少なくとも10個の集束領域を収容するが、任意の適切な数の集束領域を引き出しチャネル703内に含めることができる。引き出しチャネル703内の集束領域は、集束空間713と集束要素711との間に交互に配置され得る。複数の集束領域及び交互配置タイプ(交互配置された磁界形状を有する)は、粒子ビームの断面形状の軸方向又は径方向への望ましくない拡大を抑制するように働き、それにより、粒子ビームを引き出しチャネル703を通るときに集束させることができる。
【0088】
一例では、それぞれの集束領域は、集束するように構成される平面内で粒子ビームを完全焦点の約1/6に圧縮する(例えば、集束空間713に対する軸方向平面及び集束要素711に対する径方向平面)。これは、完全焦点の1/6の点の付近で次の集束領域を順に位置決めすることによって実現される。完全焦点は、ビームが各平面内で過剰集束される(例えば、増幅される)ことが始まる直前の点であってもよい。より簡単に言うと、集束領域は、典型的には、所定の平面内の粒子ビームをビームの直径の約1/6以上に圧縮することはないが、それは、その点で、粒子ビームが次の反対の集束領域(例えば、集束要素又は集束空間)に入るからである。例えば、軸方向に集束する集束領域は、粒子ビームの軸方向直径を軸方向直径の約1/6以上に軸方向に縮小しない。同様に、径方向に集束する集束領域は、粒子ビームの径方向直径を径方向直径の約1/6以上に径方向に縮小しない。
【0089】
例えば、
図20Aは、軸方向平面内に(例えば、集束空間713によって)集束される粒子ビームを示している。この例では、集束空間713は、粒子ビームを軸方向平面内に完全焦点の約1/6で集束させるように構成される。粒子ビームが集束空間713から出ると、これは、集束空間713に入ったときに有していたのと比べてより小さな軸方向直径及びより大きな径方向直径を有している。この点で、軸方向平面741内の完全焦点の点は、粒子ビームをもうこれ以上正確に特定の平面内に集束させることができない点である。完全焦点741の点に到達した後、追加の集束により、粒子ビームは特定の平面内で増幅される。過剰集束は、粒子ビームの断面形状の望ましくない拡大を引き起こし得るので、大部分の治療には典型的には望ましくない。この例では、粒子ビームがそれぞれの集束領域の出力のところで完全焦点の約1/6に圧縮されるように集束領域を配置構成することによって、粒子ビームが過剰集束される危険性が少なくなる(例示的な過剰集束ビーム742によって示されているように)。
【0090】
一例では、
図20Bに表すように、
図20Aからの粒子ビームは、集束空間713を出た直後に、集束要素711内に入る。集束要素711は、別の集束領域を1/6の焦点に置くことによって粒子ビームを径方向平面内に完全焦点の約1/6で集束させるように構成される。他の実施例では、1/6と異なる焦点のレベルが使用され得る。粒子ビームが集束要素711から出ると、これは、集束要素711に入ったときに有していたのと比べてより大きな軸方向直径及びより小さな径方向直径を有している。しかし、粒子ビームの軸方向直径は、集束空間713に入ったときよりも小さく、粒子ビームの径方向直径は、集束空間713に入ったときよりも大きい。すなわち、この例における粒子ビームは、集束空間713と集束要素711の両方を通過した後に円形度のより高い断面形状を有する。正味の結果は、より適切なサイズ及び/又は形状を有する粒子ビームである。
図20Bに示されている引き出しチャネル703の例示的な部分は、2つの集束領域のみを含むが、上述のように、より多くの集束領域を含めることは適切な場合があり、また望ましい場合が多い。
【0091】
ここでまた
図15に表すように、例示的な引き出しチャネル703は、複数の集束領域751〜760を収容する。
図21は、空洞700及び
図15の集束領域によって集束される例示的な粒子ビームを示している。この例では、実質的に円形である断面形状を備える集束ビームが適切である。例示的な引き出しチャネル703は、説明のために直線的な(曲がっていない)構成として概念的に説明されている。上で説明されているように、空洞700内の背景磁場の形状は、粒子ビームを軸方向に集束する。粒子ビームが空洞700から引き出しチャネル703に出力されるときまで、これは実質的に軸方向に集束される。
【0092】
引き出しチャネル703内の第1の集束領域は、集束要素751である。集束要素751は、粒子ビームを径方向に集束させる。粒子ビームは、集束要素751を出るときには、わずかに大きい軸方向直径とわずかに小さい径方向直径とを有する。次いで、粒子ビームは、粒子ビームを軸方向に集束させる集束空間752内に入る。粒子ビームは、集束空間752を出るときには、わずかに小さい軸方向直径とわずかに大きい径方向直径とを有する。しかし、粒子ビームの軸方向直径は、集束要素751に入ったときよりも大きく、粒子ビームの径方向直径は、集束要素751に入ったときよりも小さい。すなわち、この例における粒子ビームは、集束要素751と集束空間752の両方を通過した後に円形度のより高い断面形状を有する。
【0093】
集束要素753は、粒子ビームを径方向に集束させる。粒子ビームは、集束要素753を出るときには、わずかに大きい軸方向直径とわずかに小さい径方向直径とを有する。粒子ビームの軸方向直径は、集束要素751を出たときよりも大きく、粒子ビームの径方向直径は、集束要素751を出たときよりも小さい。集束空間754は、粒子ビームを軸方向に集束させる。粒子ビームは、集束空間754を出るときには、わずかに小さい軸方向直径とわずかに大きい径方向直径とを有する。しかし、粒子ビームの軸方向直径は、集束要素753に入ったときよりも大きく、粒子ビームの径方向直径は、集束要素753に入ったときよりも小さい。すなわち、この例における粒子ビームは、集束要素753と集束空間754とを通過した後に円形度のなおいっそう高い断面形状を有する。
【0094】
この交互配置集束は、粒子ビームが交互配置タイプの集束領域755、756、757、758、759、及び760を通過するときに続けられる。それぞれの集束領域は、粒子ビームを所定の平面内にその平面内におけるビームの直径の1/6で集束させる。この例では、引き出しチャネル703を通って進行する間に、粒子ビームは、円形度のより高い断面形状を付与する正味の集束がなされる。
【0095】
軸方向及び/又は径方向集束の量は、システムに特有の量である。一例では、超電導コイルによって生成される磁場の大きさは、適切なサイズ及び/又は形状の粒子ビームを得るために径方向集束(例えば、集束要素711からの)よりも軸方向集束(例えば、集束空間713からの)を必要とし得る。別の例では、超電導コイルによって生成される磁場の大きさは、適切なサイズ及び/又は形状の粒子ビームを得るために軸方向集束よりも径方向集束を必要とし得る。何が適切なサイズ及び/又は形状の粒子ビームを構成するかは、治療のシステム及び種類に依存し得る。一例では、実質的に円形の断面を有する粒子ビームが適切であり得る。別の例では、径方向又は軸方向平面内で細長い楕円断面を有する粒子ビームが適切であり得る。別の例では、粒子ビームの断面積が比較的大きい(cm
2のオーダー)ことが適切であり得る。別の例では、粒子ビームの断面積が比較的小さい(mm
2のオーダー)ことが適切であり得る。
【0096】
集束領域の数及び構成は、システムに特有であり、任意の適切な種類の集束が実現されるように変更され得る。一例では、集束領域の数を増やす/減らすと適切である場合がある。別の例では、集束領域は、集束空間713と集束要素711との間で交互配置するのが適切でないこともあり得る。集束領域の適切な数及び構成は、治療の種類に依存する可能性がある。
【0097】
引き出しチャネルは、1つ又は複数の磁場減少要素770を収容することができる。
図22は、例示的な磁場減少要素770の断面図である。磁場減少要素770は、2つの磁場減算器730を含む。磁場減算器730は、一方の磁場減算器730の広い面が他方の磁場減算器730の広い面に面するように互いに隣り合い、また互いに平行になるように水平方向に整列される。
【0098】
幾つかの例では、引き出しチャネル703内の磁場を減少させることが適切である場合がある。磁場は、粒子ビームの軌跡を引き出しチャネル703内の中心に保持するように減少させる必要があり得る。磁場減少要素770は、磁場減少要素の磁力線774によって示されているように粒子ビームの経路から遠ざかる方へ磁束を引き込むことができる。
【0099】
引き出しチャネルは、1つ又は複数の磁場増加要素780も収容することができる。
図23は、例示的な磁場増加要素780の断面図である。磁場増加要素780は、2つの磁場加算器782を含む。磁場加算器782は、一方の磁場加算器782の広い面が他方の磁場加算器782の広い面に面するように上下に、また互いに平行になるように垂直方向に整列される。
【0100】
幾つかの例では、引き出しチャネル703内の磁場を増加させることが適切である場合がある。磁場は、粒子ビームの軌跡を引き出しチャネル703内の中心に保持するように増加させる必要があり得る。磁場増加要素780は、磁場増加要素の磁力線784によって示されているように粒子ビームの経路内に磁束を押し込むことができる。幾つかの実施例では、磁場は、引き出しチャネルからの粒子ビームの出口点あたりで増加又は減少し得る。これが必要かどうか及び/又は増加若しくは減少の量は、典型的にはシステムに特有である。
【0101】
可変エネルギー粒子加速器
本明細書で説明されている例示的な粒子治療システムにおいて使用される粒子加速器は、可変エネルギー粒子加速器であるものとしてよい。
【0102】
引き出される粒子ビーム(加速器から出力される粒子ビーム)のエネルギーは、治療時の粒子ビームの使用に影響を及ぼし得る。幾つかの機械では、粒子ビーム(又は粒子ビーム中の粒子)のエネルギーは、引き出し後に増加しない。しかし、エネルギーは、引き出し後と治療前に治療の必要性に基づき低減され得る。
図24に表すように、例示的な治療システム910は、加速器912、例えば、シンクロサイクロトロンを備え、そこから可変エネルギーを有する粒子(例えば、陽子)ビーム914が引き出され、身体922のターゲット容積部924に照射される。適宜、走査ユニット916若しくは散乱ユニット916、1つ又は複数の監視ユニット918、及びエネルギーデグレーダ920などの、1つ又は複数の追加のデバイスが、照射方向928に沿って置かれる。これらのデバイスは、引き出されたビーム914の断面をインターセプトし、治療用の引き出されたビームの1つ又は複数の特性を変える。
【0103】
治療のため粒子ビームを照射されるターゲット容積部(照射ターゲット)は、典型的には、3次元構成を有する。幾つかの例では、治療を実施するために、ターゲット容積部は、照射が層毎に行われるように粒子ビームの照射方向に沿って幾つかの層に分割される。陽子などの幾つかの種類の粒子について、ターゲット容積部内の貫入深さ(又はビームが到達する層)は、もっぱら、粒子ビームのエネルギーによって決定される。所定のエネルギーの粒子ビームは、そのエネルギーに対する対応する貫入深さを実質的に超えて到達することはない。ターゲット容積部の一方の層から他方の層にビーム照射を移動するために、粒子ビームのエネルギーが変えられる。
【0104】
図24に示されている例において、ターゲット容積部924は、照射方向928に沿って9つの層926a〜926iに分割される。例示的なプロセスにおいて、照射は、最も深い層926iから始まり、1回に層1つずつ徐々により浅い層に進み、最も浅い層926aで終わる。身体922に印加する前に、粒子ビーム914のエネルギーは、実質的に身体又はターゲット容積部、例えば、層926e〜926iの中にさらに、又は身体のさらに奥深くまで貫入することなく、粒子ビームが所望の層、例えば、層926dで停止できるレベルに制御される。幾つかの例では、粒子ビーム914の所望のエネルギーは、治療層が粒子加速に対して浅くなって行くにつれ減少する。幾つかの例では、ターゲット容積部924の隣接する層を治療するためのビームエネルギーの差は、約3MeVから約100MeV、例えば、約10MeVから約80MeVであるが、他の差も、例えば、層の厚さ及びビームの特性に応じて可能である。
【0105】
ターゲット容積部924の異なる層を治療するためのエネルギー変化は、幾つかの実施例では、加速器912から粒子ビームが引き出された後に追加のエネルギー変化が不要になるように加速器912において実行され得る(例えば、加速器側でエネルギーを変化させることができる)。したがって、治療システム10内のオプションのエネルギーデグレーダ920は、システムから排除され得る。幾つかの実施例では、加速器912は、約100MeVから約300MeVまでの間、例えば、約115MeVから約250MeVまでの間で変化するエネルギーを有する粒子ビームを出力することができる。変化は、連続的又は非連続的、例えば、1回1ステップずつであってよい。幾つかの実施例では、連続的な、又は非連続的な変化は、比較的高い速度、例えば、毎秒約50MeVまで又は毎秒約20MeVまでの速度で生じ得る。非連続的変化は、約10MeVから約90MeVのステップサイズで1回に1ステップずつ実行され得る。
【0106】
1つの層で照射が完了すると、加速器912は、次の層を照射するために、例えば、数秒以内、又は1秒未満の間に、粒子ビームのエネルギーを変化させることができる。幾つかの実施例では、ターゲット容積部924の治療は、実質的な中断なしで、又はいかなる中断も伴わずに、継続することができる。幾つかの状況において、非連続的エネルギー変化のステップサイズは、ターゲット容積部924の2つの隣接する層を照射するために必要とされるエネルギーの差に対応するように選択される。例えば、ステップサイズは、エネルギーの差と同じであるか、又は何分の1かであってよい。
【0107】
幾つかの実施例では、加速器912及びデグレーダ920は、一体となって、ビーム914のエネルギーを変化させる。例えば、加速器912で粗調整を行い、デグレーダ920で微調整を行う、又はその逆を行う。この例では、加速器912は、約10〜80MeVの変化ステップでエネルギーを変化させる粒子ビームを出力することができ、デグレーダ920は、約2〜10MeVの変化ステップでビームのエネルギーを調整する(例えば、低減する)。
【0108】
飛程調整器を備え得る、エネルギーデグレーダの使用を減らす(か、又は使用しない)ことで、加速器からの出力ビームの特性及び品質、例えば、ビーム強度が維持しやすくなる。粒子ビームの制御は、加速器で実行され得る。副作用、例えば、粒子ビームがデグレーダ920を通るときに発生する中性子からの副作用が低減されるか、又は排除され得る。
【0109】
粒子ビーム914のエネルギーは、ターゲット容積部924における治療の完了後に別の身体又は身体部分922’内の別のターゲット容積部930を治療するように調整され得る。ターゲット容積部924、930は、同じ身体(又は患者)内にあるか、又は異なる患者に属していてもよい。身体922’の表面からのターゲット容積部930の深さDは、ターゲットターゲット容積部924の深さと異なることがあり得る。デグレーダ920によって何らかのエネルギー調整が実行され得るが、デグレーダ912は、ビームエネルギーを低減するだけであって、ビームエネルギーを増大させることはあり得ない。
【0110】
この点で、幾つかの場合において、ターゲット容積部930を治療するのに必要なビームエネルギーは、ターゲット容積部924を治療するのに必要なビームエネルギーより大きい。このような場合に、加速器912は、ターゲット容積部924を治療した後、ターゲット容積部930を治療する前に、出力ビームエネルギーを増大させることができる。他の場合には、ターゲット容積部930を治療するのに必要なビームエネルギーは、ターゲット容積部924を治療するのに必要なビームエネルギーより小さい。デグレーダ920は、エネルギーを低減し得るが、加速器912は、デグレーダ920の使用を減らすか、又は排除するためにより低いビームエネルギーを出力するように調整することができる。ターゲット容積部924、930の幾つかの層への分割は、異なることも、同じであることもあり得る。また、ターゲット容積部930は、ターゲット容積部924の治療と層毎に類似の仕方で治療され得る。
【0111】
同じ患者の異なるターゲット容積部924、930の治療は、実質的に連続的である、例えば、停止時間を2つの容積部が約30分以内より長くない、例えば、25分以内、20分以内、15分以内、10分以内、5分以内、又は1分以内となるものとしてよい。本明細書で説明されているように、加速器912は、移動可能なガントリー上に取り付けることができ、ガントリーの移動で、加速器を異なるターゲット容積部をねらって移動させることができる。幾つかの状況において、加速器912は、治療システムがターゲット容積部924の治療を完了した後、及びターゲット容積部930の治療を開始する前に(ガントリーを移動するなどの)調整を行っているときに出力ビーム914のエネルギー調整を完了することができる。加速器とターゲット容積部930との整列が行われた後、治療は調整された所望のビームエネルギーで開始することができる。異なる患者に対するビームエネルギー調整は、比較的効率よく完了させることもできる。幾つかの例において、ビームエネルギーを増大/低減するステップ及び/又はガントリーを移動するステップを含む、すべての調整は、約30分以内、例えば、約25分以内、約20分以内、約15分以内、約10分以内、又は約5分以内に行われる。
【0112】
ターゲット容積部の同じ層において、走査ユニット916を使用してビームを層の2次元表面の端から端まで移動する(走査ビームとも称される)ことによって照射線量が印加される。代替的に、層は、散乱ユニット16の1つ又は複数の散乱体に引き出されたビーム(散乱ビームとも称される)を通すことによって照射を受けるものとしてよい。
【0113】
エネルギー及び強度などの、ビーム特性は、治療前に選択され得るか、又は治療中に、加速器912及び/又は、走査ユニット/散乱体916、デグレーダ920、及び図示されていない他のものなどの、他のデバイスを制御することによって調整され得る。この例示的な実施例において、上で説明されている例示的な実施例と同様に、システム910は、システム内の1つ又は複数のデバイスと通信する、コンピュータなどの制御装置932を備える。制御は、1つ又は複数のモニター918によって実行される監視、例えば、ビーム強度、線量、ターゲット容積部内のビーム配置、などの監視の結果に基づくものとしてよい。モニター918は、デバイス916とデグレーダ920との間にあるものとして図示されているが、1つ又は複数のモニターをビーム照射経路に沿った他の適切な配置に置くことができる。制御装置932は、(同じ患者及び/又は異なる患者の)1つ又は複数のターゲット容積部に対する治療計画を格納することもできる。治療計画は治療が開始する前に決定され、ターゲット容積部の形状、照射層の数、それぞれの層に対する照射線量、それぞれの層が照射を受ける回数、などのパラメータを備えることができる。システム910内のビーム特性の調整は、治療計画に基づき実行され得る。追加の調整は、治療時、例えば、治療計画からの逸脱が検出されたときに実行され得る。
【0114】
幾つかの実施例では、加速器912は、粒子ビームが加速される磁場を変化させることによって出力粒子ビームのエネルギーを変化させるように構成される。例示的な一実施例において、1つ又は複数のコイルセットが、変動電流を受けて、空洞内に変動磁場を発生する。幾つかの例では、1つのコイルセットが固定電流を受けるが、1つ又は複数の他のコイルセットはコイルセットが受ける全電流が変化するように変動電流を受ける。幾つかの実施例では、すべてのコイルセットが超電導である。他の実施例では、固定電流に対するセットなどの幾つかのコイルセットは、超電導であるが、変動電流に対する1つ又は複数のセットなどの他のコイルセットは、非超電導である。幾つかの例では、すべてのコイルセットが非超電導である。
【0115】
一般的に、磁場の大きさは、電流の大きさと共に増減し得る。コイルの全電流を所定の範囲内に調整することで、対応する所定の範囲内で変化する磁場を発生することができる。幾つかの例では、電流の連続的調整により、磁場の連続的変動及び出力ビームエネルギーの連続的変動を引き起こすことができる。或いは、コイルに印加される電流が、非連続的、段階的に調整される場合、磁場及び出力ビームエネルギーも、それに応じて非連続的に(段階的に)変化する。磁場を電流に応じて増減させることにより、ビームエネルギーを比較的正確に変化させることができるが、場合によっては、入力電流以外の微調整を実施することができる。
【0116】
幾つかの実施例では、可変エネルギーを有する粒子ビームを出力するために、加速器912は、それぞれの範囲が異なる出力ビームエネルギーに対応する、異なる周波数範囲にわたって掃引するRF電圧を印加するように構成される。例えば、加速器912が、3つの異なる出力ビームエネルギーを発生するように構成されている場合、RF電圧は、3つの異なる周波数範囲にわたって掃引することができる。別の例では、連続的ビームエネルギー変化に対応することで、RF電圧は、連続的に変化する周波数範囲にわたって掃引する。異なる周波数範囲は、異なる下限周波数境界及び/又は上限周波数境界を有することができる。
【0117】
引き出しチャネルは、可変エネルギー粒子加速器によってもたらされる異なるエネルギーの範囲に適応するように構成され得る。異なるエネルギーを有する粒子ビームは、単一のエネルギーを有する粒子ビームを引き出すために使用される再生器の特徴を変えることなく加速器912から引き出され得る。他の実施例では、可変粒子エネルギーに適応するために、再生器を移動して上で説明されているように異なる粒子軌道を乱し(例えば、変化させて)、及び/又は鉄製ロッド(磁気シム)を加えるか、又は取り外して再生器によってもたらされる磁場バンプを変化させることができる。より具体的には、異なる粒子エネルギーは、典型的には、空洞内で異なる粒子軌道にある。再生器を本明細書で説明されているように移動することによって、粒子軌道を特定のエネルギーのところで妨げ、それによって、特定のエネルギーにおける粒子が引き出しチャネルに到達するようにその軌道の正しい摂動をもたらすことが可能である。幾つかの実施例では、再生器の移動(及び/又は磁気シムの追加/取り外し)は、加速器によって出力される粒子ビームエネルギーのリアルタイムの変化と一致するようにリアルタイムで実行される。他の実施例では、粒子エネルギーは、治療毎に調整され、再生器の移動(及び/又は磁気シムの追加/取り外し)は、治療の前に実行される。いずれの場合の、再生器の移動(及び/又は磁気シムの追加/取り外し)は、コンピュータ制御され得る。例えば、コンピュータは、再生器及び/又は磁気シムの移動を引き起こす1つ又は複数のモータを制御することができる。
【0118】
幾つかの実施例では、再生器は、適切な配置に移動するように制御可能である1つ又は複数の磁気シムを使用して実装される。
【0119】
例えば、表1は、例示的な加速器912が粒子ビームを出力することができる3つの例示的なエネルギーレベルを示している。3つのエネルギーレベルを生成するための対応するパラメータも一覧に挙げてある。この点で、磁石電流は、加速器912内の1つ又は複数のコイルセットに印加される全電流を指しており、最高及び最低周波数は、RF電圧が掃引する範囲を定義し、「r」は、ある場所から粒子が加速される空洞の中心までの径方向距離である。
【0121】
可変エネルギーを有する荷電粒子を生成する例示的な粒子加速器に含まれ得る詳細について以下で説明する。加速器はシンクロサイクロトロンであり、粒子は陽子であるものとしてよい。粒子は、パルスビームとして出力される。粒子加速器から出力されるビームのエネルギーは、患者体内の一方のターゲット容積部を治療している間、又は同じ患者若しくは異なる患者の異なるターゲット容積部の治療から次の治療までの間に、変化させることができる。幾つかの実施例では、加速器の設定は、加速器からビーム(又は粒子)が出力されないときにビームエネルギーを変化させるように変更される。エネルギー変化は、所望の範囲にわたって連続的又は非連続的であってよい。
【0122】
図1に示されている例に表すように、上で説明されている加速器912のような可変エネルギー粒子加速器であってよい、粒子加速器(シンクロサイクロトロン502)は、可変エネルギーを有する粒子ビームに対して構成され得る。可変エネルギーの範囲は、約200MeVから約300MeV以上、例えば、200MeV、約205MeV、約210MeV、約215MeV、約220MeV、約225MeV、約230MeV、約235MeV、約240MeV、約245MeV、約250MeV、約255MeV、約260MeV、約265MeV、約270MeV、約275MeV、約280MeV、約285MeV、約290MeV、約295MeV、又は約300MeV以上である上限境界を有することができる。この範囲は、約100MeV以下から約200MeVまで、例えば、約100MeV以下、約105MeV、約110MeV、約115MeV、約120MeV、約125MeV、約130MeV、約135MeV、約140MeV、約145MeV、約150MeV、約155MeV、約160MeV、約165MeV、約170MeV、約175MeV、約180MeV、約185MeV、約190MeV、約195MeV、約200MeVである下限境界も有することができる。
【0123】
幾つかの例では、この変化は、非連続的であり、変化ステップは、約10MeV以下、約15MeV、約20MeV、約25MeV、約30MeV、約35MeV、約40MeV、約45MeV、約50MeV、約55MeV、約60MeV、約65MeV、約70MeV、約75MeV、又は約80MeV以上のサイズを有することができる。エネルギーを1ステップサイズだけ変化させるのに要する時間は、30分以内、例えば、約25分以内、約20分以内、約15分以内、約10分以内、約5分以内、約1分以内、又は約30秒以内であり得る。他の例では、この変化は、連続的であり、加速器は粒子ビームのエネルギーを比較的高い率、例えば、毎秒最大約50MeVまで、毎秒最大約45MeVまで、毎秒最大約40MeVまで、毎秒最大約35MeVまで、毎秒最大約30MeVまで、毎秒最大約25MeVまで、毎秒最大約20MeVまで、毎秒最大約15MeVまで、又は毎秒最大約10MeVまで調整することができる。加速器は、粒子エネルギーを、連続的にも、非連続的にも調整するように構成され得る。例えば、連続的変化と非連続的変化の組み合わせを、1つのターゲット容積部の治療に、又は異なるターゲット容積部の治療に使用することができる。柔軟な治療計画及び柔軟な治療が実現され得る。
【0124】
可変エネルギーを有する粒子ビームを出力する粒子加速器は、照射治療を正確にすることができ、また治療に使用される追加のデバイス(加速器以外)の数を減らすことができる。例えば、出力粒子ビームのエネルギーを変化させるためのデグレーダの使用が低減されるか、又は使用しないようにできる。強度、集束などの粒子ビームの特性は、粒子加速器において制御され、粒子ビームは、追加のデバイスからの実質的な妨害を受けることなくターゲット容積部に到達することができる。ビームエネルギーの比較的高い変化率は、治療時間を短縮し、治療システムの効率的な使用を可能にし得る。
【0125】
幾つかの実施例では、
図1のシンクロサイクロトロン502などの加速器は、加速器内の磁場を変化させることによって粒子又は粒子ビームを可変エネルギーレベルまで加速するが、これは、磁場を発生させるためにコイルに印加される電流を変化させることによって実現され得る。
図3、
図4、
図5、
図6、及び
図7に示されているように、例示的なシンクロサイクロトロン10(例えば、
図1の502)は、粒子源90を収容する磁石システム、高周波駆動システム91、及びビーム引き出しシステム38を含む。
図27は、可変エネルギー粒子加速器で使用され得る磁石システムの一例を示している。この例示的な実施例では、磁石システム1012によって確立される磁場は、2つのコイルセット40aと40b、42aと42bが発生することができる磁場の最大値の約5%から約35%まで変化し得る。磁石システムによって確立される磁場は、2つのコイルセットと成形された強磁性(例えば、低炭素鋼)磁気構造体のペアとの組み合わせを使用して収容されている陽子ビームの集束を維持するのに適切な形状を有し、その例は上に提示されている。
【0126】
それぞれのコイルセットは、電流を受けるための環状コイルの分割ペアであってよい。幾つかの状況において、両方のコイルセットが超電導である。他の状況では、ただ1つのコイルセットのみが超電導であり、他のセットは非超電導又は常電導である(以下でさらに説明されているように)。また、両方のコイルセットが非超電導であることも可能である。コイルに使用するのに適した超電導体は、ニオブ3スズ(Nb
3Sn)及び/又はニオブチタンを含む。他の常電導体は、銅を含むことができる。コイルセットの作製例について以下でさらに説明する。
【0127】
2つのコイルセットは、直列又は並列に電気的に接続され得る。幾つかの実施例では、2つのコイルセットが受ける全電流は、約200万アンペア回数から約1000万アンペア回数、例えば、約250万から約750万アンペア回数、又は約375万アンペア回数から約500万アンペア回数までを含み得る。幾つかの例では、一方のコイルセットは、全可変電流の固定(又は一定)部分を受けるように構成され、他方のコイルセットは、全電流の可変部分を受けるように構成される。2つのコイルセットの全電流は、一方のコイルセット内の電流の変化と共に変化する。他の状況では、両方のコイルセットに印加される電流は変化し得る。2つのコイルセット内の可変全電流は、変化する大きさを有する磁場を発生することができ、次いで、これは、粒子の加速経路を変化させ、可変エネルギーを有する粒子を発生する。
【0128】
一般的に、コイルによって生成される磁場の大きさは、コイルに印加される全電流の大きさに応じて増減し得る。この増減に基づき、幾つかの実施例では、磁場強度の直線的変化はコイルセットの全電流を直線的に変化させることによって実現され得る。全電流は比較的高速で調整することができ、これにより、磁場及びビームエネルギーが比較的高速で調整される。
【0129】
上記の表1に反映されている例では、コイルリングの幾何学的中心における電流の値と磁場の値との比は、1990:8.7(約228.7:1)、1920:8.4(約228.6:1)、1760:7.9(約222.8:1)である。したがって、超電導コイルに印加される全電流の大きさを調整することで、磁場の大きさを比例調整することができる(比に基づき)。
【0130】
表1の例における全電流に対する磁場の増減も、
図24のプロットに示されており、BZは、Z方向に沿った磁場であり、Rは、Z方向に垂直な方向に沿ったコイルリングの幾何学的中心から測定された径方向距離である。磁場は、幾何学的中心に最高値を有し、距離Rが増大するにつれ減少する。曲線1035、1037は、それぞれ1760アンペア及び1990アンペアである異なる全電流を受ける同じコイルセットによって生成される磁場を表す。引き出される粒子の対応するエネルギーは、それぞれ、211MeV及び150MeVである。2つの曲線1035、1037は、実質的に同じ形状を有し、曲線1035、1037の異なる部分は、実質的に平行である。結果として、曲線1035又は曲線1037のいずれかが、他方の曲線と実質的に一致するように直線的にシフトされるものとしてよく、これは磁場がコイルセットに印加される全電流に応じて増減し得ることを示す。
【0131】
幾つかの実施例では、全電流に対する磁場の増減は、完全でない場合がある。例えば、磁場と表1に示されている例に基づき計算された電流との間の比は一定でない。また、
図25に示されているように、一方の曲線を直線的にシフトさせても、他方の曲線と完全には一致し得ない。幾つかの実施例では、全電流は、増減が完全であるという仮定の下でコイルセットに印加される。ターゲット磁場(増減が完全であるという仮定の下)は、それに加えてコイルの特徴、例えば、幾何学的形状を、増減の不完全さを相殺するように変えることによって生成され得る。一例では、強磁性体材料(例えば、鉄)のロッド(磁気シム)を磁気構造体(例えば、磁極片)の一方又は両方から挿入するか、又は取り出すことができる。コイルの特徴は、増減が完全であり電流のみを調整すればよいという状況と比較して磁場調整の速度が実質的な影響を受けないように比較的高速に変えることができる。鉄製ロッドの例では、ロッドは、秒又は分の時間尺度、例えば、5分以内、1分以内、30秒未満、又は1秒未満の時間で追加又は取り外しを行うことができる。
【0132】
幾つかの実施例では、コイルセットに印加される電流などの、加速器の設定は、コイルセット内の全電流に対する磁場の実質的な増減に基づき選択され得る。
【0133】
一般的に、所望の範囲内で変化する全電流を発生させるために、2つのコイルセットに印加される電流の任意の組み合わせが使用され得る。一例において、コイルセット42a、42bは、磁場の所望の範囲の下限境界に対応する固定された電流を受けるように構成され得る。表1に示されている例では、固定された電流は、1760アンペアである。それに加えて、コイルセット40a、40bは、磁場の所望の範囲の上限境界と下限境界との間の差に対応する上限境界を有する可変電流を受けるように構成され得る。表1に示されている例では、コイルセット40a、40bは、0アンペアと230アンペアとの間で変化する電流を受けるように構成される。
【0134】
別の例では、コイルセット42a、42bは、磁場の所望の範囲の上限境界に対応する固定された電流を受けるように構成され得る。表1に示されている例では、固定された電流は、1990アンペアである。それに加えて、コイルセット40a、40bは、磁場の所望の範囲の下限境界と上限境界との間の差に対応する上限境界を有する可変電流を受けるように構成され得る。表1に示されている例では、コイルセット40a、40bは、−230アンペアと0アンペアとの間で変化する電流を受けるように構成される。
【0135】
粒子を加速するための可変全電流によって生成される全可変磁場は、4テスラより大きい、例えば5テスラより大きい、6テスラより大きい、7テスラより大きい、8テスラより大きい、9テスラより大きい、又は10テスラより大きく、最大約20テスラまで、例えば、最大約18テスラまで、最大約15テスラまで、又は最大約12テスラまでの、最大の大きさを有するものとしてよい。幾つかの実施例では、コイルセット内の全電流の変化により、磁場は約0.2テスラから約4.2テスラ以上、例えば、約0.2テスラから約1.4テスラ又は約0.6テスラから約4.2テスラまで変化し得る。幾つかの状況において、磁場の変化量は、最大の大きさに比例し得る。
【0136】
図26は、粒子ビームのそれぞれのエネルギーレベルについて一定のRF周波数範囲にわたってディープレート100上で電圧を掃引し、粒子ビームエネルギーが変化するときに周波数範囲を変化させるための例示的なRF構造体を示している。ディープレート100の半導体表面103、105は、内部導体1300に接続され、外部導体1302内に収納される。電源を内部導体に結合する電力結合デバイス1304を通して電源(図示せず、例えば、振動電圧入力)から高電圧がディープレート100に印加される。幾つかの実施例では、結合デバイス1304は、内部導体1300上に位置し、電源からディープレート100への電力伝送を行う。それに加えて、ディープレート100は可変リアクタンス素子1306、1308に結合されており、それぞれの粒子エネルギーレベルについてRF周波数掃引を実行し、異なる粒子エネルギーレベルについてRF周波数範囲を変更する。
【0137】
可変リアクタンス素子1306は、モータ(図示せず)によって回転可能である複数のブレード1310を有する回転コンデンサであってよい。RF掃引のそれぞれのサイクルにおいてブレード1310をかみ合わせるか、又はかみ合わせを外すことによって、RF構造体のキャパシタンスが変化し、そのため、RF構造体の共振周波数が変化する。幾つかの実施例では、モータの1/4サイクル毎に、ブレード1310は互いにかみ合う。RF構造体のキャパシタンスが大きくなり、共振周波数が下がる。このプロセスは、ブレード1310のかみ合わせが外れるときに逆転する。結果として、ディープレート103に印加される高電圧を発生させるために要求される、またビームを加速するために必要な電力を、大幅に減らすことができる。幾つかの実施例では、ブレード1310の形状を、時間に対する共振周波数の必要な依存性を生じるように機械加工する。
【0138】
RF周波数の発生は、共振器内のRF電圧の位相を感知し、RF空洞の共振周波数の近くでディープレート上の交流電圧を維持することによってブレード回転と同期する。(ダミーディーは、接地されるが、
図26には示されていない)。
【0139】
可変リアクタンス素子1308は、プレート1312と内部導体1300の表面1316とによって形成されるコンデンサであるものとしてよい。プレート1312は、表面1316に向かう、又は表面1316から遠ざかる方向1314に沿って移動可能である。コンデンサのキャパシタンスは、プレート1312と表面1316との間の距離Dが変化すると変化する。1つの粒子エネルギーについて掃引されるそれぞれの周波数範囲について、距離Dは設定値にあり、周波数範囲を変化させるために、プレート1312は出力ビームのエネルギーの変化に応じて移動される。
【0140】
幾つかの実施例では、内部導体1300及び外部導体1302は、銅、アルミニウム、又は銀などの、金属材料から形成される。ブレード1310及びプレート1312も、導体1300、1302と同じ、又は異なる金属材料から形成され得る。結合デバイス1304は、導電体とすることができる。可変リアクタンス素子1306、1308は他の形態を有することができ、他の方法でディープレート100に結合し、それによりRF周波数掃引及び周波数範囲変更を実行することができる。幾つかの実施例では、単一の可変リアクタンス素子は、両方の可変リアクタンス素子1306、1308の機能を実行するように構成され得る。他の実施例では、2つよりも多い可変リアクタンス素子が使用され得る。
【0141】
可変エネルギー加速器(例えば、可変エネルギーシンクロサイクロトロン)を使用する粒子治療システムの例示的な実施例において、1つ又は複数の集束要素(例えば、
図19Aの711)及び1つ又は複数の集束空間(例えば、
図20Aの713)を含む、1つ又は複数の集束領域751〜760は、上で説明されている範囲を含む、加速器によって生成される異なる粒子エネルギーの範囲にわたって動作するように構成(例えば、サイズ設定、形成、制御可能に)される。例えば、一実施例では、集束要素は、粒子加速器の最高動作可能エネルギーと粒子加速器の最低動作可能エネルギーとの間の中間点に最良の集束をもたらすが、それでも、エネルギーの上限及び下限において十分な集束をもたらすように構成される。集束要素の正確な構造は、エネルギー範囲に依存する。同様に、集束領域は、このエネルギー範囲に同様に対応できるサイズにされる。
【0142】
幾つかの実施例では、集束要素は、異なる量又は種類の異なる粒子エネルギーをもたらすように構成可能であるものとしてよい。例えば、幾つかの実施例では、磁気シムは、これらの1つ又は複数の集束要素によってもたらされる磁場の摂動を制御するために集束要素の1つ又は複数の中へ、そこから外へ、又は近くに移動可能であるものとしてよい。磁気シムの一例は、集束要素の中へ、そこから外へ、又は近くに移動可能である強磁性ロッド又は他の構造体である。幾つかの実施例では、磁気シムの移動は、コンピュータ制御されるものとしてよく、その移動は加速器の粒子ビームエネルギーの変化に応答し(例えば、トリガーされ)得る。幾つかの実施例では、磁気シムの移動は、リアルタイムで、又は実質的にリアルタイムで行われ得る。他の実施例では、磁気シムの移動は、予め、例えば、特定の粒子ビームエネルギーで治療する前に、行うことができる。
【0143】
幾つかの実施例では、集束要素は、引き出しチャネル内で互いに対して移動可能であるものとしてよい(それによって、集束空間のサイズも変更する)。この移動は、引き出しチャネル内にもたらされる集束の量及び質を増減するために実行され得る。幾つかの実施例では、引き出しチャネル内の集束要素の移動は、コンピュータ制御されるものとしてよく、その移動は加速器の粒子ビームエネルギーの変化に応答し(例えば、トリガーされ)得る。幾つかの実施例では、集束要素の移動は、リアルタイムで、又は実質的にリアルタイムで行われ得る。他の実施例では、集束要素の移動は、予め、例えば、特定の粒子ビームエネルギーで治療する前に、行うことができる。幾つかの実施例では、集束要素の移動は、上で説明されているように、磁気シムの使用と組み合わされ得る。
【0144】
上で説明されている例示的な実施例において、集束要素は、強磁性構造体である。可変エネルギー粒子加速器を使用するものを含む、幾つかの実施例において、強磁性構造体の集束要素のうちの1つ又は複数(最大ですべて)を引き出しチャネル内でコイル巻線によって置き換えることができる。コイル巻線は、超電導又は非超電導とすることができる。コイル巻線は、粒子加速器のエネルギーに基づく電流を通し、電流の流れに応答して、引き出しチャネル内に、背景磁場に影響を及ぼす、したがって強磁性構造体によって他の何らかの形で形成された集束を引き起こす磁場を発生させるように構成され得る。幾つかの実施例では、それぞれのそのようなコイルは、別の電流源から電流を受けることができ、それによって、それぞれのコイルに異なる磁場を発生させることができる。幾つかの実施例では、複数のコイルを直列に接続して共通電流源から電流を受けることができる。幾つかの実施例では、複数のコイルは異なるインピーダンスを持ち得るので、異なる電流を許容し、異なる磁場を生成することができる。
【0145】
1つ又は複数のコイルを集束要素として使用する実施例では、指摘されているように、様々なコイル内を流れる電流は、異なる時点に粒子加速器によって生成されるエネルギーに対応し得る。電流の印加は、コンピュータ制御されるものとしてよい。例えば、制御コンピュータシステムは、所定の時刻(例えば、現在若しくは未来の時刻)に粒子ビームのエネルギーを識別し、そのエネルギーに対して適切な電流を供給することができる。電流の変化はリアルタイム又は実質的にリアルタイムで生じ得るか、又は電流は予想される粒子ビームエネルギーによる治療の前に設定され得る。
【0146】
前述の集束領域の構成はどれも、引き出しチャネル内に粒子ビームを集束させるために適切な組み合わせで使用することができる。同様に、前述の集束領域構成のうちのいずれの個別の特徴も、同じ目的のために適切な組み合わせで使用され得る。
【0147】
本明細書で説明されている異なる実施例の要素は、特に上で述べていない他の実施例を形成するように組み合わせることもできる。要素は、その動作に悪影響を及ぼすことなく本明細書で説明されているプロセス、システム、装置などから外してもよい。本明細書で説明されている機能を実行するために、様々な別々の要素を1つ又は複数の個別の要素に組み合わせることができる。
【0148】
本明細書で説明されている例示的な実施例は、粒子治療システムと共に使用すること、又は本明細書で説明されている例示的な粒子治療システムと共に使用することに限定されない。むしろ、例示的な実施例は、加速された粒子を出力に導く適切なシステム内で使用され得る。
【0149】
本明細書で説明されているようなシステム内で使用され得る粒子加速器の例示的な実施例の設計に関する追加の情報は、参照により本明細書に組み込まれている2006年1月20日に出願した米国仮出願第60/760,788号、名称「High−Field Superconducting Synchrocyclotron」、2006年8月9日に出願した米国特許出願第11/463,402号、名称「Magnet Structure For Particle Acceleration」、及び2006年10月10日に出願した米国仮出願第60/850,565号、名称「Cryogenic Vacuum Break Pneumatic Thermal Coupler」に記載されている。
【0150】
以下の出願は、参照により本出願に組み込まれている。米国仮出願、名称「CONTROLLING INTENSITY OF A PARTICLE BEAM」(出願第61/707,466号)、米国仮出願、名称「ADJUSTING ENERGY OF A PARTICLE BEAM」(出願第61/707,515号)、米国仮出願、名称「ADJUSTING COIL POSITION」(出願第61/707,548号)、米国仮出願、名称「FOCUSING A PARTICLE BEAM USING MAGNETIC FIELD FLUTTER」(出願第61/707,572号)、米国仮出願、名称「MAGNETIC FIELD REGENERATOR」(出願第61/707,590号)、米国仮出願、名称「FOCUSING A PARTICLE BEAM」(出願第61/707,704号)、米国仮出願、名称「CONTROLLING PARTICLE THERAPY」(出願第61/707,624号)、及び米国仮出願、名称「CONTROL SYSTEM FOR A PARTICLE ACCELERATOR」(出願第61/707,645号)。
【0151】
以下の参考文献も、参照により本出願に組み込まれている。2010年6月1日に発行された米国特許第7,728,311号、2007年11月30日に出願した米国特許出願第11/948,359号、2008年11月20日に出願した米国特許出願第12/275,103号、2007年11月30日に出願した米国特許出願第11/948,662号、2007年11月30日に出願した米国仮出願第60/991,454号、2011年8月23日に発行された米国特許第8,003,964号、2007年4月24日に発行された米国特許第7,208,748号、2008年7月22日に発行された米国特許第7,402,963号、2010年2月9日に出願した米国特許出願第13/148,000号、2007年11月9日に出願した米国特許出願第11/937,573号、2005年7月21日に出願した米国特許出願第11/187,633号、名称「A Programmable Radio Frequency Waveform Generator for a Synchrocyclotron」2004年7月21日に出願した米国仮出願第60/590,089号、2004年9月24日に出願した米国特許出願第10/949,734号、名称「A Programmable Particle Scatterer for Radiation Therapy Beam Formation」、及び2005年7月21日に出願した米国仮出願第60/590,088号。
【0152】
本出願の任意の特徴は、以下の1つ又は複数の適切な特徴と組み合わせることができる。米国仮出願、名称「CONTROLLING INTENSITY OF A PARTICLE BEAM」(出願第61/707,466号)、米国仮出願、名称「ADJUSTING ENERGY OF A PARTICLE BEAM」(出願第61/707,515号)、米国仮出願、名称「ADJUSTING COIL POSITION」(出願第61/707,548号)、米国仮出願、名称「FOCUSING A PARTICLE BEAM USING MAGNETIC FIELD FLUTTER」(出願第61/707,572号)、米国仮出願、名称「MAGNETIC FIELD REGENERATOR」(出願第61/707,590号)、米国仮出願、名称「FOCUSING A PARTICLE BEAM」(出願第61/707,704号)、米国仮出願、名称「CONTROLLING PARTICLE THERAPY」(出願第61/707,624号)、及び米国仮出願、名称「CONTROL SYSTEM FOR A PARTICLE ACCELERATOR」(出願第61/707,645号)、2010年6月1日に発行された米国特許第7,728,311号、2007年11月30日に出願した米国特許出願第11/948,359号、2008年11月20日に出願した米国特許出願第12/275,103号、2007年11月30日に出願した米国特許出願第11/948,662号、2007年11月30日に出願した米国仮出願第60/991,454号、2013年5月31日に出願した米国特許出願第13/907,601号、2013年6月12日に出願した米国特許出願第13/916,401号、2011年8月23日に発行された米国特許第8,003,964号、20007年4月24日に発行された米国特許第7,208,748号、2008年7月22日に発行された米国特許第7,402,963号、2010年2月9日に出願した米国特許出願第13/148,000号、2007年11月9日に出願した米国特許出願第11/937,573号、2005年7月21日に出願した米国特許出願第11/187,633号、名称「A Programmable Radio Frequency Waveform Generator for a Synchrocyclotron」、2004年7月21日に出願した米国仮出願第60/590,089号、2004年9月24日に出願した米国特許出願第10/949,734号、名称「A Programmable Particle Scatterer for Radiation Therapy Beam Formation」、及び2005年7月21日に出願した米国仮出願第60/590,088号。
【0153】
本特許出願が優先権を主張する仮出願及び上で参照により組み込まれている文献を除き、他のいかなる文献も参照により本特許出願に組み込まれない。
【0154】
本明細書で特に説明されていない他の実施例も、以下の請求項の範囲内に収まる。